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庭野参考人 おはようございます。
東芝の執行役専務の
庭野でございます。現在、
日本電機工業会
原子力政策委員会の最高顧問をしております。
本日は、プラントメーカーの
立場から、
原子力への
取り組みと
原子力政策への期待について述べさせていただきます。日ごろの御
指導、御
支援に加え、今回このような
機会を与えられましたことに関して深く
感謝を申し上げます。
まず、
原子力における
事業環境に対する認識でございますけれども、先般まとめられました
原子力政策大綱に、
原子力発電は将来にわたって
基幹電源としての役割を担っていくことが明記されました。具体的には、二〇三〇年以降も総
発電電力量の三〇%から四〇%以上を
原子力発電が担うことを目指すということでございます。
我が国の低い
エネルギー自給率、そして、現在懸念されております地球環境問題等を考慮いたしますと、
原子力発電は、
我が国の
エネルギーの安定供給並びにCO2削減効果の観点から、今後とも国策として堅持、推進されるものと確信しております。
現在の
日本の
原子力技術及びプラントの
建設能力でございますけれども、過去三十
年間にわたる安定的かつ継続した新規プラントの
建設及び
官民一体となった高度化
技術の
開発等により、現在、世界のトップレベルにあるというふうに思っております。
また、高経年化プラントを含めた既設プラントに対しましては、各種の予防保全
技術並びに高性能機器を
開発、適用することにより、
安全性、
信頼性はもとより、プラントの価値
向上に向けた
取り組みを行ってまいりました。
このようにして
官民一体となって築かれてきました
日本の
原子力技術は、国家的な戦略
技術であるという認識でございます。
国内では、この先当面の間、新規プラント
建設が減少する見込みであります。厳しい
事業環境が予想されますが、プラントメーカーを含めた
産業界といたしまして、
原子力技術の維持
向上と
技術継承のために、人材の
確保と育成に努めているところでございます。
一方、世界におきましては、
原子力を再
評価する機運が高まってきております。米国では、ブッシュ政権のニュークリアパワー二〇一〇という
計画のもと、新規プラントの
建設に向けた動きが活発化してございます。また、中国では、二〇二〇年までに三千六百万キロワットの
原子力発電所を
建設するという
計画が進んでおります。さらに、欧州においても、フィンランド、フランス等でヨーロッパ型の新規プラント
建設計画が具体化してございます。東南アジアにおけるベトナム、インドネシア等では、
原子力発電導入の
検討が盛んに進められているという認識を持ってございます。
日本のプラントメーカーにとっても、これまでの機器レベルでの輸出に加えまして、
原子力発電プラント一式を輸出する
機会が高まってきているというふうに思ってございます。世界トップレベルの
技術と総合エンジニアリング力をもって、米国や中国、アジアなどの
海外市場にも進出すべく、メーカー各社はそれぞれ国際展開に向けた
活動に取り組んでいるところでございます。
原子力発電所の
建設や導入はいずれの国においても国策であるということから、
原子力の国際展開においては、供給国による政府レベルでのトップ外交が行われております。
日本メーカーが今後国際競争に勝ち残るために、国のより一層の御
支援を期待するところでございます。
次に、将来炉の
開発でございますが、アメリカ、フランスなども、国家プロジェクトとして国を挙げて
開発に取り組んでおります。
日本メーカーといたしましても、国家プロジェクトとしての
日本型次世代
軽水炉の
開発に期待し、それを通じて、
安全性、
信頼性、
経済性等においてよりすぐれた国際競争力のあるプラントを
確立していきたいというふうに思っております。
こうした将来に向かっての
取り組みによりまして若い
技術者が
原子力の将来に夢を持つことができ、それがひいて人材の
確保と
原子力技術の維持
向上に大いに効果があるものと考えております。
次に、
核燃料サイクルについてお話しさせていただきます。
核燃料サイクルの
確立に関しましては、
ウラン資源の有効
利用、環境への負荷低減などの観点から、
軽水炉を中心とする
軽水炉サイクルと、
高速増殖炉を中心とする
高速増殖炉サイクル、この
技術開発に取り組んでまいりました。
国産エネルギーとしての
原子力を確固たるものにする上において、再
処理技術の
確立は必須であると考えております。米国においても再
処理技術に向けた
検討が新たに開始されるなど、世界的にも再
処理の重要性が再認識されてきております。
日本では、
六ケ所村の再
処理工場が
建設中であり、
発電所での
プルサーマル計画が進められています。メーカーは
技術及び製造面からこれに
協力し、
軽水炉サイクルの
確立に
最大限の努力をしているところであります。
一方、
高速増殖炉サイクルにつきましては、その
実用化により
ウラン資源の
利用率が格段に高まり、数百年から千年オーダーという
長期にわたって
原子力エネルギーを
利用し続けることが可能となります。また、
放射性廃棄物の放射能減衰期間を、数万年オーダーから百年オーダーに短縮できる可能性もあります。環境へのより一層の負荷低減が期待できるものであります。
世界的にも、二〇三〇年ごろの
実用化を目指して、日米仏を中心とした国際プロジェクトとして、ナトリウム冷却炉を含む第四世代炉の
開発計画が進められています。また、中国、インド、ロシアでも、国策として
開発が進められています。
原型炉であります「
もんじゅ」を有する
我が国は、
高速増殖炉開発において世界をリードすることができるというふうに考えております。
高速増殖炉サイクル技術は、これまで一貫して国主導の
開発体制のもと、
産業界はプラントの設計、機器、設備の供給、
建設、
運転の分野でもって人材と
技術の両面から参画してまいりました。従来以上に
官民一体となった
取り組みを期待しております。
次に、
原子力の先端
技術の
開発について簡単に述べさせていただきます。
原子力の先端
技術は、人類の将来に多大な貢献をするポテンシャルを有しているというふうに思っております。未来の
エネルギー源である核融合
開発については、
長期的な視野に立って今後進められていくものと認識しております。クリーン
エネルギーとしての水素を
原子力エネルギーにより製造する
技術の商用化や、イオン、中性子等の量子ビーム
利用による医療、製薬等のライフサイエンス、半導体、
燃料電池等ナノテクノロジー分野への応用を目指した
研究開発も進めております。
最後になりますが、プラントメーカーは、
原子力技術は国家的戦略
技術であるという認識のもと、今後とも、その維持
向上と発展に取り組んでまいる
所存でございます。
官民一体となりました
核燃料サイクルの推進と
原子力先端
技術開発へのさらなる御
支援をお願いしまして、私のお話を終わらせていただきます。
どうもありがとうございました。(
拍手)