○
中上参考人 住環境計画研究所の
中上でございます。
きょうお招きにあずかりましたのは、私が
経済産業省の
総合エネ調の
省エネ部会の
部会長代理をやっているというような経緯からかと存じております。私
自身は、
大学を出ましてすぐこの
研究所をつくりまして三十二年になりますけれども、一貫して
民生部門の
エネルギーの
需要解析をやってまいりました。そういった
意味では、二度ほど参議院の方ではお邪魔したことがあるんですが、私、きょう衆議院は初めてでございますので、多少雰囲気が違うので面食らっております。
きょうは二点ほど、
省エネ法の
改正の
効果及び
民生部門についての私の考え、それから全般的な
意見について、手短に陳述させていただきたいと思います。
まず、
省エネ法の
改正についてでございますけれども、
皆様方にお配りしてあるメモの中に「
向上」、これは
変換ミスでございまして、「
工場」、ファクトリーの方でございまして、
対象となる
工場、
事業場が
拡大されたわけでございますけれども、これはやはり網を広げるという
意味で当然
効果が期待されるわけでありますし、大いに
評価したいと思っております。さらに、今回は大
規模な
修繕といったものも含まれるということでございますから、かなり大きな
効果を私
自身も期待したいなと思っております。
これまでは
事業場だけでございましたけれども、今回は
一般の
住宅もこれに加えられたということ、まだ二千平米以上でございますので、
一般の
個人住宅は入っておりませんけれども、これも
住宅という
分野に初めて踏み込んだということで、大きく
評価したいと思います。
住宅の新築はともかく、
修繕、
模様がえというのはなかなかあるようでないわけでございますけれども、私
自身は、
高度成長期に建ちました多くの
公団住宅がそろそろ建てかえといいますか
模様がえ時期に入ってまいりますので、
一般ではなかなか
モデルが示しにくいと思いますので、できればこういった公的な
団体で新しい
モデル提示をしていただいて、
修繕、
改善による
省エネ効果というものを、
一定のものを示していただければさらに民間に波及するんじゃないかと思って、期待したいと思っております。
今後望みたいことは二つほどございまして、
一つは、いつもそうでございますけれども、決まった後、どういうふうに
効果があったのかというのはなかなかはっきりわからないわけでございます。やはり、これがわからないとやっている方もなかなか力が入りませんので、できれば
効果を適切に下せるような仕組みというのもあわせてお考えいただきたいと思います。
それから、
住宅にありましては、これは今回の
改正ではございませんが、
次世代基準というのが、今新しい
基準があるわけでございます。一九九九年から施行されているわけでございますけれども、
適応率が低いということを伺っております。将来的には、やはり欧米のように、こういった
基準は、建て主の
努力義務といったふうな現在のとらえ方ではなくて、何らかの
規制的な方向に組みかえるべきではないかと私
自身は思っておりますけれども、これはやはり今後の
住宅の
省エネの
切り札でございますから、
切り札をいつ切るか。本当はもう切っておかなきゃいけないのかもしれませんが、
京都以降もございますから、それを勘案しながら、
切り札をいつ切るかということを含めて、ぜひ検討していただきたいと思っております。
次に、
民生部門の
省エネ対策でございますが、
山本参考人さんの方からも、
民生部門がふえている、あるいはそこだけではなくて至るところで
民生部門がふえているというふうに、何か悪者にされておるようでございますけれども、なぜふえているのかという理由を本当はきちっと踏まえた上で
評価していただかないと、ふえるとすべて悪いというんじゃ、いかにもという気がいたします。
なぜそんなことを申しますかといいますと、
家庭部門の
エネルギー需要というのは、実は
世帯当たりでは、最近はややとまりかかっております。ただ、中身を詳しく見てみますと、
家電製品等に係るものがどんどんふえておりまして、これは、御
承知のように、
大型家電、テレビの
大型化であるとか、多
機能化とか、それから、もう
家電ではなくて
個電商品と言われるように、国際的に見ましても、
我が国の
家庭ほど多くの
家電製品を持っている
家庭はないようでございます。そういった複雑な面がございますけれども、ただ、それでも欧米先進諸国と比べてみますと、気候の差とか文化の差とか習慣の差はございますが、欧州の半分強ぐらい、それから、アメリカやカナダに至っては三倍ぐらい。だから、欧州が二倍ぐらいでアメリカが三倍ぐらい、ざっくり言ってそういう感じでございまして、
我が国の
家庭用の
エネルギー消費は決して多くない。
よくよく中身を見ますと、これは当然差があるわけでございますけれども、一番大きいのは暖房用でございまして、これは暖房用に至ると、気候の差を幾ら勘案しても開きがあり過ぎる、五分の一とか六分の一と言える程度でございます。ということは、今後この暖房
需要がいま少しふえる
可能性は決して否定できない。となると、先ほどの話とつながってまいりますけれども、
住宅構造の
省エネ化というのは、今後の増加を打ち消す
意味でも早目に早目に手を打っておかないと、私の経験からしましても、実験しましても、建ててしまった後では非常にコスト高になりまして、割が合いません。だから、建てる段階でやっておかなきゃいけないんだなというふうに思っております。
それから、確かにこの
分野、
規制になじみにくい
分野でございますけれども、何度も申し上げますが、
トップランナー基準や
住宅の
省エネ化というのは、やはり
規制に十分値するものだと私は思っております。
それから、少しニュアンスが違いますけれども、小杉先生なんかとも御一緒して勉強会をさせていただいたりしましたが、サマータイムの導入ということですね。これについて、なかなか、私も十五年間この問題に携わっておりまして、
省エネ論をそのたびにやり返しておりまして、反対派の御
意見だけが取り上げられて、大体賛成派は悪者にされるものですから、みんなから袋だたきにあっております。大抵のことはおかげさまで答弁できるようになりましたけれども、この問題、直接
効果もさることながら、欧米に調査に参りましたときには、二回切りかえるということによって、やはりアナウンス
効果といいますか、なぜサマータイムをやっているのか。諸外国すべて、
最初は省
エネルギーでございます。一番
最初、古くは戦争、戦時下でありますけれども、その後は、二度のオイルショック以降、各国で導入されたのはすべて
省エネでございます。
もちろん、ライフスタイルを変えるという
意味もございますけれども、いま一度、やはりこの問題についてもぜひ後押しをしていただきたい。ただ、向かいの官邸の主の方がなかなか賛成なさらないというふうに聞いておりますので、難しいかもしれませんが、ぜひ廃案にしないで、引き続き御審議をお願いしたいと思っております。
それから、
業務部門でございますけれども、これは、今
家庭部門では申し上げませんでしたが、まことに遺憾なことに、
我が国には消費構造を明らかにした統計がないんですね、データベースがないんです。こういう国は、先進国では残念ながら
我が国だけだ。
京都議定書から離脱したアメリカですら、二度のオイルショックの後には、詳細なセンサス、国勢調査を
実施しておりまして、経年的に統計をとっております。
消費構造がかなり詳しくわかるものですから、逆に言うと、そういうデータがないと今後の
省エネの本当の具体策が打てないはずでございまして、
民生部門といって一括してとらえて、
家庭はある
意味で
レベルがそろっておりますけれども、
業務部門というのは、おそば屋さんがあり、こういうビルがあり、国会があり、ホテルがあり、病院があるんですから、一律に論ずることが難しいことはもう一目瞭然でございますけれども、いかんせんそういうデータがないということはいまだに残念なことでございます。
業務部門の
エネルギー需要の増加というのは、これはもう釈迦に説法でございますけれども、就業構造が変われば、すなわち二次
産業から三次
産業、一次
産業から三次
産業へシフトすれば、当然この部門の
エネルギー需要は増加するわけでありまして、一律に増加したから悪いというのはいかがなものかというふうにときどき申しているわけでございます。
この部門では、ほかの同業者との差別化を強調する形で、
建築物を、奢侈化といいますか、見ばえをよくするという傾向はやはりなしとしないわけで、私も
建築の出身ですから内心じくじたるものがございますけれども、したがって、そこを勢い、
エネルギーの力で強引に制御してしまうということになりかねないわけであります。これが業態別にいろいろな形でもってあらわれるわけですから、事は簡単じゃない。
今回の法の
改正でもこの
分野に一歩踏み込んだことになっておりますけれども、これではまだ
建築側、すなわち建てる側への、エンジニアリング面での視点からの
省エネでございますけれども、できればクライアント、使い手から見てこれが
省エネビルだというのがわかりやすいような、マル適マークと言ったらちょっと語弊があるかもしれませんが、そういう、ビルが
省エネであるということを入居者にわかりやすいようにする。入っている人も我々は
省エネビルに入っているんだということが外に向かって訴えられるような、そういう
システム、これはラベリングと申しますけれども、欧米ではやはりこういうことがございますので、こんなことも御検討されてはどうかと思います。
最後でございますけれども、
京都議定書は難産の末に発効したわけでございますけれども、私
自身の個人的な感触では、
目標達成計画ができたことで、何かあたかも
京都議定書は
達成可能だという雰囲気になってしまったような気がしなくもありません。これは決して簡単ではございませんで、極めて難しいと私はいつもいろいろなところで申し上げております。その
意味からも、
皆様方のお力を十分に発揮していただいて、何とかこれが
達成できる方向に国民の意識を変えていただきたいと思います。欧米の
会議に出てまいりましたけれども、
日本の
省エネは進んでいるということで常に注目の的でございますけれども、いや、制度はできたけれども、本当にうまくいっているかなとなりますと、疑問なしとしませんので、ぜひお願いしたいと思っております。
京都議定書は、もうこれは釈迦に説法でございますけれども、ほんの一歩にすぎないわけでございまして、イギリスやドイツは、二〇五〇年に五〇%、七〇%カットという信じられないような数字を出しておりますが、私は、長期的には決して不可能ではない、短期的には極めて難しいんですが、長期的には今からやれば十分間に合うと思っております。しかし、そのためには、これまでのライフスタイルとか
社会構造、
産業構造を根本的に見直さなきゃいけないということも十分念頭に置いておかなきゃいけないんじゃないかなと思っておりますので、そういう
意味からも、ぜひ先生方の御協力をお願いしたいと思っております。
以上で私の発言を終わります。どうもありがとうございました。(
拍手)