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国務大臣(
麻生太郎君) 戦時公債、うちにも一杯ありましたな、これ。一杯あったよ、これ。換えなかった、換えられなかったんじゃないの、これ、十円じゃ換えても値打ちがなかったのよ、インフレだから。一ドル二円ですよ、昔は。それが三百六十円になって、物価は御存じのようになったんで、正直言って、これ換えても
意味がなかったから換えなかっただけであって、別に換えなかったわけじゃないんです。これインフレになっちゃったから、もうこれは無価値みたいなものになったというのがそのおじいさんの
説明不足のところです。だから、そこのところまでよく聞いておかにゃいかぬ。もちろん換えなかったわけじゃない、これ必ず換わったの。だから、これがまず
一つです。
で、基本的にやっぱり言えるのが、戦争に負けるとはそういうことですよ。基本的に国体というものが全く変わっちゃったんだから。そういった
意味では、今の状態を見て私
どもとしてはいろんなことを考えにゃいかぬなと思うんですね。その
意味で、今の話からいきますと、私
どものところで今国債の話が出ていますが、これはやっぱり、思い返せば長い間、そうですね、八五年プラザ合意、一ドル二百四十円から百二十円にドルが暴落した、あれを境に、各企業は、製造業はあの段階からいわゆるビッグバンになって、全部海外に出ていって生き延びるということをやったんだと思うんですね。
ところが、そのときはまだ
規制があったり何だりかんだりしていろいろ動きのできなかった金融という業界においては、その金を、株と土地にその金をかなりな部分回していったことは事実でしょう。それは結果として一九九八年、三万九千九百八十円まで付けたあの騒ぎ、一九八九年十二月ですかな、あれ、それが最後。で、土地は更に三年ぐらい行きましたので、一九九二年まで土地はずっと行って九三年がどん、下がって、いわゆる
資産価格の暴落を招いた、いわゆる総量
規制という名の土地の融資に対する
規制ですよ。この
二つがやっぱり非常に大きなものだったんだと思うんですが。
やっぱり、バブルというのは常に起こり得る。昔のオランダのチューリップの話にさかのぼって、バブルっていうのは常に起きますから。南海バブル事件、もう一番古くはそれが一番
世界のバブルで一番古いんでしょうけれ
ども、南海泡沫事件と訳されているあの話にさかのぼって、バブルというのは自由主義
経済には常に起きるものなんですが、それをいかにうまくこうソフトランディングさせるかというときに、
日本の場合はソフトランディングに失敗ということだったんだと、私はそういう具合に理解をしているんですが、いずれにしても、そういった形を補うために、今猛烈な勢いで土地という名の
資産価格が暴落という結果を招いたために、土地を担保にしか金の融資をするという、いわゆる
審査能力が偏っていた
日本の
銀行においては、土地の価格の暴落という事態によって、土地を担保にできない融資というのに関しての経験が極端に少なかった等々のことがあって、一時期、貸しはがしだ、貸し渋りだ、いろんな形で金融が滞った。これが、普通の企業
経営者にとって著しくその
経営を難しくさせた背景はそれがすべてだと、私自身はそう思っております。
いずれにしても、そういった状態は今確実になくなりつつあることは事実ですが、しかし、解消されつつあることは事実ですが、不良債権がなくなったからといって景気が良くなるのとは全然関係ありません。関係があるようなことを言っている人がいますけれ
ども。間違いなく一般企業においては、債務超過の状態が債務がバランスして初めて普通の状況になるわけですから。じゃ、金をそれから投資できるかといえば、今設備投資も機械投資も進んでいますよ。しかし、
銀行貸出しはどうです。
銀行貸出しは全然増えていない。設備投資して何で
銀行貸出しが増えないんです。
銀行に金借りに行かないんですよ。みんな企業は
自分で直接金融をやり、若しくはキャッシュフローの範囲の中だけで、あなた商売しておられたからお分かりだと思いますけれ
ども、この種の単語は役人には通じないんです。やったことないんだから。資金繰りのない社会にいるんだから。単式簿記と違って企業は複式簿記でやっているんだから。
そういった内容を見たときに、今の状況というのは、多分、そうですね、高橋是清大蔵
大臣以来初めてのいわゆるデフレ下の不況というのをやっているんですが、我々は過去七十数年間、インフレ下の不況は経験したことがあってもデフレ下の不況の経験がありませんから、結果として対応が非常にもたもたもたもたした形になったのが非常な混乱を招いた大きな背景だと思っております。
いずれにしても、こういったようなことを一回経験をしましたんで、企業もかなり臆病な上にも臆病になって、これだけになっても新しく金を借りようとしない。金融に対する企業からの返済はこの六年間二十五・六兆円の返済超ですから。これはもう、金利がゼロでも
銀行に金を借りに来るという企業がないという前提で
経済学の本を書かれたことはありませんから、そういう時代が今、
日本でこの数年間起きておるという状態は、これは誠に
世界では初めての例が起きているんだと思います。
いずれにいたしましても、そういった状態をどういう具合にやっていくかというのはこれは大事なところだと思いますが、しかし
経済構造は間違いなくそういった状況にあって、強く構造が変わりつつある。特に、製造業においては非常にその内容が強いものに変わってきているという状態ではありますので、その他の業界においてもいろんな形で、少し遅れているとは思いますけれ
ども、いずれ、
日本という国は対応能力が極めて高い国だと思っておりますので、そういったものができるように、
規制とかまた
法律とかいうものがそれを邪魔しているんであればそれは外して、むしろ、より自由にということができることによってその体制を一日も早く立て直しするべく、私
どもとしては考えねばならぬものだと思っております。