○簗瀬進君 民主党の簗瀬進でございます。
民主党の
憲法改正問題についての
検討状況についての御
報告をさせていただきたいと思います。
民主党は、一九九九年から党内に
憲法調査会を設置をいたしまして、総論、それから
統治機構、人権、
地方分権、国際・安保と五つの小
委員会を作りまして鋭意
憲法問題について
検討を進めてまいり、本年の六月二十二日に中間
報告をまとめさせていただきました。
本日は、その中間
報告の中身についてまずは御
報告をさせていただきたいと思います。ちなみに、現在はその小
委員会が引き続きその中間
報告でまとめられた
内容について成文化等の作業を精力的に続けております。
まず、
憲法提言の
背景でございますけれども、我が国の現在の
憲法状況は大変な問題点があると。まず第一番目は空洞化であり、第二番目は形骸化であろうと。
この二つの問題点、なぜ発生をしておるのかということで分析をいたしますと、まず内政面では、中央集権システムの下で官僚による恣意的な行政指導が続いたと。そして、法の支配という大変重要な
民主主義の基本が形骸化をしていくと、こういうことが内政面での国内的な原因の一つであると。
それからまた、第二番目に、これは国際
関係の中での原因ということでありますけれども、やはり初めにアメリカありきといった外交によってルールがはっきりとしない自衛隊の海外派遣が繰り返されて、あたかも日米
関係が
憲法を超えるかのような
政治実態が生まれてしまっていると。それもやはり空洞化、形骸化の
背景を成すものかなと。
こういう
状況の中で、
憲法を本当に
国民に身近なものとして生きた
憲法にするためにどうしたらいいんだろうかと。正に創造的な
憲法の
改正についての
考え方をまとめていくべきだろうということになったわけでございます。
さて、その中で、まず第一番目の総論、これは文明史的転換に対する、対応する
憲法の創造、創憲ということをやっていくべきだと、ということでまとめさせていただきました。
文明史的な転換点というのはどういうことかというと、幾つかあるわけでございますけれども、まず第一番目は、国家概念を超える新たな問題が現代において発生している。国際テロとか民族浄化、宗教紛争、新型ウイルスの発生、地球温暖化問題等々の旧来型の国家を超える新たな問題にどのように対処していったらいいのかというのが第一番目。それから第二番目は、情報化によるコミュニケーションの革命でございます。また第三番目は、その結果として、当然、地球市民的価値が生まれてきていると。そういう地球市民的発想というようなものが生まれたというのが現代だろうと。それから四番目、そういうことで、やっぱり国境を越えた市民間の連帯というようなものが地球規模で起こっていると。このような大きな文明史的転換に対応した
憲法の姿というようなものを作っていかなければならない、これが総論におけるまず第一番目の
指摘でございます。
そのために、新たなタイプの
憲法を創造していくべきであろうと、ということで、今までの
憲法のスタイルとは若干違うかもしれませんけれども、新しいタイプの
憲法というのは、まず何よりもまず日本
国民の
意思を表明して世界に対して国の
在り方を示すという一種の宣言規定を
充実させていかなければならない。そして第二番目に、旧来型のいわゆる規範としての法であります。法規範としての
機能を
充実化させていくと。このように宣言的
機能と規範的
機能、この二つをきちんと持った
憲法を創造していくべきだろう。
それから、その上で、
憲法を
国民の手に取り戻すためには、実際その空洞化、形骸化の大きな
背景を成しているのはやっぱり
憲法九条の問題だと。世界屈指の軍隊としての実態を自衛隊はやっぱり持っている。その海外派遣を繰り返していく姿と
憲法九条のこの乖離というようなものに大変
国民は疑問を持っているということで、
憲法を
国民の手に取り戻すためにも、
国民による直接的な
意思の表明と選択が大事であると、ということを民主党として強くやっぱり受け止めるべきだと、このように考えております。
次に、第二小
委員会の
統治機構の部分でありますけれども、
国民主権に基づく確かな統治を目指してということで、九
項目にまとめさせていただいております。
第一番目は、
国民主権と権力分立であります。三権分立がやっぱり行政優位型になっていると、そういうことで、権力分立に関する明示的な規定をしっかりと作るべきだ。
それから第二点は、分権国家としての日本の姿を明らかにすべきだろう。中央政府の
役割についてはむしろ限定列記、そして
地域にできることは
地域においてこれを担うということを
憲法上明記する。
それから第三番目、これは首相主導の議院
内閣制の
制度の確立というようなものをやっていかなければならない。首相
権限の
強化とか、あるいは
内閣が遂行していくというのは行政ではなくて執行権ということで、
内閣ではなく
内閣総理大臣にこの執行権が帰属するということを明確に、
行政権が帰属するということを明確にしておくべきだろう等々がこの第三点でございます。
それから第四点、
二院制の
在り方と
政党の位置付けの明確化ということでございます。
二院制の
在り方については、先ほどの小
委員会報告でも様々な
検討が行われているわけでございまして、我が党もこの点については
検討課題として挙げております。
そこでは、
参議院議員の大臣
指名の廃止とか、
衆議院における
予算審議と
参議院の
決算審議の
役割分担とか、
長期的視野に立った
調査権限や勧告
機能の拡充等を
検討課題として挙げてございます。
また、
選挙制度を改めて、
地域代表制を
中心として、専門性も加味した選任
方法へと
改革をすべきなのではないのかということも
検討課題に挙げてございます。
さらに、
政党に
憲法上の地位を与える。
また、
選挙制度の
在り方も、
議員のお手盛りで簡単に変わるということではない、ルールをきちんと
憲法に明記しておいた方がいいのではないのかということにも触れてございます。
第五番目は、
国民投票
制度の
検討でございます。
例えば、EU等に見られるように、主権の移譲を伴う等の大変な重大な決断をしなければならないことがある、そういう場合には
国民投票
制度の拡充を図っていくべきだろう。
それから第六番目に、
憲法調査機能の拡充と違憲
立法審査制の確立ということで、
憲法裁判所若しくは
憲法院など、
憲法審査のできる固有の
審査機関を新たに設置するということを
検討すべきだ。
それから第七番目、会計検査、公会計、
財政に関する諸規定の整備・導入と。
それから第八番目は、準司法的
機能性を有する
独立性の高い、
裁判所ではない第三者機関、例えば人権に関する人権
委員会等も
憲法上の位置付けを与えたらいいのではないのか。
それから第九番目は、硬性
憲法と
憲法改正手続ということでございまして、先ほど、
国民の手に
憲法を取り戻すためにもやはり
憲法改正手続をもっと
国民に近いものに直していく方向を考えるべきだろうと。具体的には幾つかございますけれども、時間の
関係で省略をさせていただきたいと思います。
次に、第三小
委員会では、人権保障について
検討させていただきました。
人権保障については、まず第一番目に、国際人権法という
考え方をしっかりと
憲法上も位置付けをいたした上で、例えば
条約の尊重・遵守義務のみならず、適切な措置を講ずること等まで含めて
憲法に新たに積極的な規定をすべきなのではないのか等の国際人権法の尊重というようなものを司法の項にきちんとうたうべきだ。このような総論的な提言をさせていただいた上で、九
項目にわたる様々な
提案をさせていただいております。時間の
関係が、時間がないんでちょっとあれなんですけれども。
第一番目は、新しい人権としてプライバシー権、名誉権、知る権利、環境権、自己
決定権等を挙げてございます。
また、人権保障と第三者機関として、先ほど申し上げた国家機関から独立した人権保障についての人権
委員会等々を
憲法上に位置付けるべきだ。
それから第三番目は、法の下の平等でございますけれども、差別禁止が私人間についてもきちんと規制できるような形で、そういう方向性が出るように、国家対
個人の
関係じゃなくて、私人と私人の
関係でも
憲法十四条が及ぶような積極的な規定を新たに設けるべきだと。これが第三番目でございます。
それから第四番目は、情報化
社会と表現の自由の
関係でございまして、巨大マスメディア、インターネットなどの新しい媒体によって随分新しい表現の自由との新たな問題が出ておるので、これについての
憲法上の
考え方をきちんとしておくべきなんではないのか。
第五番目は、職業選択の自由というようなものを更に精度の高い規定にしていくべきであろう等の
議論でございます。
それから第六番目は、外国人の人権でございますが、この保障を
憲法に明文規定を設けるべきである、また永住外国人に
地方参
政権を認めるべきである等々の
提案がここでございます。
また財産権、第七番目でございますが、財産権の保障と制約ということでございまして、合理的な財産権の行使と制約というようなものを
憲法上にきちんとやっぱり、受忍限度等の判例等の積み重ねもございますが、
憲法にこれをきちんと明らかにしておいた方がいいのではないのか等々の
提案でございます。
第八番目は、子供の権利についても
憲法にこれを明記すべきであろう。
それから第九番目は、信教の自由と政教分離のルールの
在り方ということでございまして、特に、国家と宗教との厳格な分離を基本理念としながら、許容される限度、許容されるかかわり合いがどの
程度なのかという、そういうことについて
憲法上の判断基準を明らかにしておいた方がよいと、等々の
提案がございます。
新しい国家追悼施設、これはちょっと
憲法とは違うかもしれませんけれども、靖国神社参拝問題が随分これからのアジア
関係あるいは日本の外交戦略でも一つの大きなネックになっているわけで、それを解決する
意味でも新しい国家追悼施設を建設・整備をすべきなんではないのかと、等々がこの人権の
分野でございます。
それから、第四小
委員会は
地方分権ということで、分権国家の創造を目指すということで、中央集権国家から分権国家へ転換する、また自治体に優先的
立法権限を認める、また多様な自治体の
在り方を認めるべきなのではないのか、また課税自主権、
財政自治権を
憲法上しっかりと保障をする、また現在の
地方交付税の
制度に代えて新たな水平的
財政調整制度を創設する等の提言がなされてございます。
第五小
委員会は国際
関係あるいは安全保障ということでございますが、まず、
日本国憲法又は九条の原則的
立場は、徹底した平和主義とか、あるいは武力の行使について強い抑制的姿勢を貫いていくという、これが現
憲法の九条の
立場でありますけれども、これらの原則的
立場については今後もきちんと引き継いでいくべきであると、このように結論を出しております。
そして、その上で、国際協調主義に立った安全保障の枠組みの確立をということで、まず第一番目には、
憲法の中に国連の集団安全保障
活動を明確に位置付けるべきであるということが第一点。そして、第二点としては、いわゆる自衛権についてはもちろん我が国固有の権利として持っているわけでありますけれども、自衛権を行使する際の制約原理を
憲法にきちんと明記をしておくべきであるということで、その制約原理としては三つ、緊急やむを得ない場合に限ると、それから国連の集団安全保障
活動が作動するまでの期間に限る、そして
活動の展開に関しては国連に
報告をすると、このような制約原理を明確化しておくということでございます。
それから第三番目として、武力の行使については最大限抑制的であるということの宣言、あるいは集団安全保障への参加と専守防衛を
憲法上も明示した上で自衛権の行使に徹するということを
憲法規定として明らかにしておくべきなのではないのかな等々の
検討でこの中間
報告がまとめられた次第でございまして、今後はこの五小
委員会が引き続き、先ほども申し上げましたけれども、成文化等も含めての次の第二ステージでの
活動を今精力的に行っているところでございます。
以上でございます。