○佐藤道夫君 私、言いたいことは、やっぱり最終、ぎりぎりになって物を言うのは法的な問題でしょうと、こういうことなんですよ。
あの当時は、もう世界じゅうに
イラクの大量破壊兵器を摘発するために軍を進めるんだと
アメリカははっきり言っていましたし、我々も聞いておって、多分持っておるだろうと。それを発見するのはもう
アメリカがすぐにやるだろうと思っておりましたらば、いたずらに死傷者だけがどんどん増えていって、そして大量破壊兵器、そんなものは、さっきも言いましたけれ
ども、情報機関を使って幾らでも調べ上げることができるんですけれ
ども、全然出てこない、一体どうなっているんだという声が世界じゅうに起こり出したら、最後になって
アメリカがようやく、情報機関が証拠を捏造したりいろいろやっていたものですから、こういうことになりましたということを言い出した。しかし、フセインを捕まえたということは評価してくださいと言うんですね。あんなことはもう最初から言っていたわけでも何でもないですよ。やっぱり大量破壊兵器、そんな危険な兵器を隠し持っている以上は、
アメリカにお願いして軍隊を派遣してもらって摘発すると、それでなきゃ世界の平和は保てないと、こういう発想だったんでしょうけれ
ども、それが何、平気な顔をしてフセイン大統領を捕まえたと。
そうして、もう
一つ大変な問題、法治主義の
観点からあるのは、フセインが今一体どこに何罪で入っているのか全然発表がないわけですよ。世界じゅうの人だれも知らない。一部の
アメリカの軍と情報機関だけなんでしょうね。大統領は知っているかもしれません。こんなことは許し難いことなんですよ。それから、裁判も開かないでもう何か月も入れっ放しと。新聞報道などで時たまやられますけれ
ども、何か独居房に入れておいて、便所掃除もやらされているんだと。それでもフセインは自分の説を曲げないで裁判になったら頑張ると言っておると。それも立派な態度なんですけれ
ども。
これ、裁判の法治主義、裁判に適用されるのは大変重大なことなんです。おまえの夫はこういう罪名で、こういうことで逮捕・拘留して、今どこそこに入っていると、弁護人を付けたいなら付けなさいと、裁判はいつから始まるということを告知する、関係者にも告知することによって、ようやくいわゆる独裁主義から、独裁主義というのはこのやっている方が独裁だというんですよ、私は。
何、相手が独裁主義だから、悪いことをやっているから、捕まえてきてだれも知らぬところに入れておいて、そのうち裁判の形式を踏んですぐ、フセインに対しても間もなく裁判を始めると、すぐ死刑にするということを
アメリカのさる有力者が言っていました。もう結論まで出ているんですね。これだって、きちっといつごろ裁判を開くと、弁護団はこれ以下何名で構成されている、何か問題があればその弁護団の人たちと相談しなさいと、これは当たり前のことなんで、どんなに極悪犯人であっても、捕まえてきてすぐ死刑にしちゃえなんということを言ったら、もうその国自体の存立が問われても仕方がないわけです。
オウムの麻原がそうでしょう。あれは松本サリンだ、地下鉄サリンだ、いろいろなことをやっていましたけれ
ども、あのころの
世論は、もうオウムがやったに違いないと、それは麻原がやらせたに違いないと。で、極端な人は、捕まえてすぐ死刑にしちゃえと、裁判なんか開く必要ないと、こういうことも言っておりました。それとフセインの裁判、同じことじゃないかと。
一体こんなことを世界最新の文明国だという
アメリカやイギリスが結託してやっていいんだろうかと思わざるを得ないわけで、こういうことを閣議でもやっぱりきちっと
議論をして、それを踏まえて、
日本にもいろんな
アメリカやイギリスの有力者がやってくるでしょう。こういう点、どう考えられているんでしょうかと、質問をすることも大変大事なことだと私は思っている。それから、あなた方が訪ねて、
アメリカ訪ねていっていろんな人と会う際に、こういう問題があるんだけれ
ども一体どうなのかと。今のフセインの問題については、この世界じゅうに法律を学んだというのが何十万、何百万人といるんでしょう、だれ一人おかしいということを言わないんですね。みんな、うん、しようがないな、そんなことで終わっている。東大教授だなんて威張っていて、あんた東大のどこで、法律を教えている、じゃこの問題どう考える、うん、それはねなんて、それで終わっちゃっている。
やっぱり、こういうことにきちっと
議論をすることが新しい時代を作り上げていくことなんですよ。まあ、私の一方的なお願いかもしらぬ、しりませんけれ
ども、あなた方が内閣、閣議で、あるいは海外の有力者と話し合うときにも、
一つの
議論として、こういうことが
議論されているけれ
ども、
アメリカ、イギリスに任しておいていいんでしょうかと。今度は
日本の総理
大臣も、今度はあいつ捕まえろなんという、
アメリカ勝手に言い出すかもしれませんよ。今まで
日米関係を築き上げてきたら、今度は何か裏に回って変なことやっているから、うん、捕まえろ、捕まえろなんていうことで終わってしまうかもしれません。そして、裁判はろくな裁判もしないですぐ死刑と。そういうことを人類が抜け出すために何百年と掛かったわけですよ。そして今の司法制度を作り上げて、多分に手間暇掛かるかもしらぬけれ
ども、まあしかし、きちっとやることはやっていこうというふうに私は思っておりますので、何か法学部出ていないと、別に自慢にもなることないんで、当たり前のことを言っているだけですから、大学卒業生としてどうお考えになるのか、お願いします。