○中津川
委員 民主党の
中津川博郷でございますが、冒頭ちょっとただいまの審議を聞いておりまして、南野
大臣、しっかりしてくださいよ。この場に
小泉総理がいない。これは、やはりこの現場を見てほしかった。任命責任は
小泉総理にあるわけですから、これだけ
委員会を混乱させて、私もしっかり
質問を用意してきて、そして本当に庶民の暮らしの問題、南野
大臣中心なんですよ。だけれども、
質問して大丈夫かな、
質問する価値があるかな、
小泉総理は何で南野さんを任命したのかな、
小泉総理、本当にやる気があるのか、私はそんなことを思いながら横におりました。
私の
質問に入りたいと思うんですが、
総理は所信表明でいいことを言っているんですよ。「いかなる困難があっても、くじけることなく
努力する。失敗しても、次の成功への挑戦と受けとめる。やればできる。勇気と誇りを持って、
日本の明るい未来を築こうではありませんか。」全くそのとおりだと思い、そして、「やればできる。」とも言っているんですね。実に教育的な言葉で、本当にこの言葉はそのとおりだと思うんです。
しかし、今の
日本の
社会は幾ら一生懸命
努力してもなかなか報われない。かつ、一度、挫折、失敗、倒産したら立ち上がれない。つまり、
小泉総理の認識とは全く違う、再チャレンジができない
社会なんですね。一度失敗したら、負の遺産を引きずったままで再起不能、家は競売にとられ、夜逃げをしたりホームレスになったり、それで最終的には自殺を考えなければいけない。残念ながら、実体
社会はそんな状況ですよ。
そして、
小泉政権になって、自殺者が三万四千人を超えています。サラリーマンの給料はもう六年連続で下がって、
国民は、この
小泉政権のもとで将来に夢や希望を持てない
社会になっている。
もう
一つ総理は自慢していましたね。「昨年二月以来、会社設立の資本金を一円でも可能とする特例を認めた結果、これまで一万七千近くの
企業が設立され、一日当たり平均三十人が会社を起こすようになりました。」と自画自賛していましたが、とんでもない。一度つまずいた人にはこういうことはできないんですよ、負の遺産を背負っていますから。
つまり、多くの中小零細事業者にとって、起業したい、うまくいきそうな事業を思いついても、今までの債務が足かせとなって新規事業へ踏み込めないという、これが現実です。このところを全くのうてんきでわかっていないのが
小泉総理の現状認識なんだなと、私は、所信表明を聞いて毎度のことながらがっかりしました。
そこで、一番大きな問題になっているのが連帯保証人
制度なんです。この
制度は多くの問題があって、私は議員になった翌日からこの問題に取り組んできましたが、実態が非常にわかりづらい、複雑、霧の中に包まれています。
そこで、
さきの
通常国会で、
民主党、それで社民党、共産党の野党の同志八十七名に賛同をいただいて、金融機関からの借り入れの連帯保証の実態に関する予備的
調査、これを要請しました。そして、ようやく三カ月半かかってでき上がってきたんです。
予算委員会の折しも二日前で、まだできたてのほやほやで、どばっと厚いのが三冊あるんですが、一生懸命読んで今精査しているところであります。専門家の人にも分析をしてもらって、今中身を
検討しているところなんですが、本当に、衆議院の
調査局の皆さん、大変だったと思います、御苦労さんでした。この予備的
調査の結果も含めて、金融問題について幾つか伺っていこうと思っております。
まず、これは私、
財務金融
委員会でも
質問しました民事訴訟法二百二十八条四項、判この問題です。
これは、昨年の二月二十七日、当時、私たちの同僚議員であります山田議員が、
予算委員会で森山
法務大臣に対してこれを
質問したんです。そうしたら、森山
法務大臣は、時代にそぐわなくなっているので法
改正の必要があるという
答弁をしてくれたんですよ。ところが、ことしの四月二十三日、私が
財務金融
委員会で改めてこの点について法務省にその進捗状況を聞いたんですが、民事局長からの答えは、「現段階において直ちに
改正しなければならないという必要性はない」という非常に不誠実でいいかげんなものだった。
そこで、今回の
調査で三たび法務省の見解を求めたんですが、その回答が出たのでお
伺いします。
南野さん、いいですか、あなたの出番ですよ。南野
大臣に、これ、よくわかるように今
説明しますから、いいですね。小学生でもわかるように、ケースを今
お話しします。
判こが凶器になるというんです。いいですか、読み上げますよ。ある日、全く身に覚えのない巨額融資の連帯保証人に自分がなっていることを知らされる。見せられた契約書の保証人欄には、勝手に自分の名前が使われ、自分の判こが押してある。銀行は、判こがあるんだからこの契約書は有効だ、金を払え、そういうふうに言います。
契約書を証拠にどんどん裁判を銀行も起こす。そして、判こがあるから、しかもほとんどの場合、これは裁判で銀行が勝ってしまう、一〇〇%なんです。例えば、絶対に間違うはずのない自分の名前が間違っているのに、それでも、被告はみずからの意思で保証人になったんだと銀行側は主張する、判こを押してしまえばこっちのものだと。
実際は、保証人になるときの詳しい事前
説明もないし、連帯保証人になんかなりたくない。しかし、兄弟から判こを貸してくれと言われて貸したら連帯保証人になってしまった。金を払えと言われた。裁判ではその兄弟が証人となって、私が無断で判こを押して、サインもある人に依頼して偽造したんだと認めても、裁判所はただ一点、判こが押してある、それが理由と。この保証書は有効である、だから五億円払えというとんでもないこの判決が出たんですね。
〔渡海
委員長代理退席、
委員長着席〕
この法律は大正十五年にできたもので、八十年も前の法律なんですね。いまだにこの時代おくれの法律が使われている。だから、森山
大臣が当時言われたのは、これは普通の、本当に立派な見識だと思いますよ。
これは、昭和三十九年に最高裁が、本人の印鑑が押されていれば本人の意思に基づいて作成された文書であると推定されると。判こが押されていれば、契約の見た目だけでなく本人の契約するという意思まで認める判決を出してしまって、判こを押してしまえばこっちのものという傾向がずっと流れてきているんです。
だから、これでは保証人にされてしまった人たちは大変で、いかにして自分にその気がなかったかを証明するのは、これはもう不可能に近いくらい難しいんです。借り手側は立証責任をしなければならない。まずこれは無理ですね。銀行の方は契約書と印鑑証明だけ見せればいいんですから、当然、銀行がどんな裁判でも勝ってしまう。
そこで、私は、今回この
調査で法務省に対して、この条項を廃止することによってどのような不都合が生ずると考えているのか、こう聞いたところ、すごいびっくりするような回答が出てきたんです。
皆さんにお配りしております資料でありますが、この資料一の方であります。そこだけコピーしてまいりました。
これは、まず法務省は、そのとおり読んでみますと、「当該私文書に作成名義人の意思に基づく署名又は押印がされているときは、真正に成立したものと推定すると規定している。」また、「自らの意思で文書に印鑑を押した場合には、後に、その文書が自らの意思に反して作成されたものであると主張することは原則として許されず、例外的にそのような主張が許されるのは、押印後に文書が変造された疑いがある場合などに限られるという
社会常識(経験則)を法律上のルール(証拠法則)に高めたものである。」と言っているんですが、これは大問題だと思います。
民訴法二百二十八条四項はどういうことかというと、「私文書は、本人又はその代理人の署名又は押印があるときは、真正に成立したものと推定する。」これと今の法務省の、私が皆さんたちにお見せした傍線を引いてあるところを読んだんですが、条文のどこにも「作成名義人の意思に基づく」とか「自らの意思で」なんて言葉は全くない。条文は、そんなものは関係なく、判こさえあればいいんだと。
何で法務省は条文の
意味を変えて、みずからの意思で判こを押した場合のみを規定したものであると言っているんですが、ここが私は重大な点であると思うわけであります。
自分の意思の有無、あることかないことかがこの条文の抱えている問題の核心であって、自分の知らないところで判こが押された場合を問題にしているのであって、自分が押した判こならこれは責任をとらなきゃいけない、それはそうであります。
そうじゃなくて、この条文が、判この
意味や
社会において取引を円滑に進める必要性を重視し過ぎているから、自分の知らないところで連帯保証人にされてしまった人たちがかなりの数、今被害に遭っているというのを問題にしているんですね。だから、この条項がある限り、自分の意思の有無にかかわらず、判こがあれば契約が有効であるという推定がされてしまう、これが条項の問題なんですね。
ですから、これは自分の意思のある場合のみに限った規定、推定規定だとうそをついているとしか私は思えないんですが、南野
大臣、これは法務省の正式な公文書の回答です。予備的
調査、今私が申し上げました。お答えください。