○佐藤(茂)
委員 公明党の佐藤茂樹でございます。
発言の
機会を与えていただきまして、感謝申し上げます。
党を代表してということでございますので、我が党は、今月末の党大会に
提出する運動方針案に、「
憲法問題への視点」として、現段階での
憲法に対する
見解を取りまとめさせていただきました。既に公明新聞等にも掲載されているんですが、読んでおられる方は少ないかと思いますので、あえてその中から、この
機会に、本日のテーマに関係する部分を前半部分では抜粋させていただきまして、後半では、時間の許す限り、私の個人的
見解を述べさせていただきたいと思います。
わが党は、現行の
日本国憲法は優れた
憲法であり、戦後の
日本の平和と安定・発展に大きく寄与してきたと高く評価しています。なかでも、「
国民主権主義」「恒久平和主義」「基本的人権の保障」の
憲法三原則は、不変のものとして、これを堅持すべきだと考えます。また、
憲法九条は、アジアの諸
国民に多大な犠牲を強いた先の戦争に対する反省と、再び戦争を繰り返さないというメッセージを諸外国に発信してきた平和主義の根拠であり、戦後の
日本の平和と経済的発展を築くうえで、
憲法九条の果たしてきた
役割は極めて大きいものがあったと認識しています。
しかしながら、例えば、
冷戦終結後、
憲法前文でうたわれた国際協調主義の具体的な実践として、国連を中心とした紛争予防、平和維持、平和構築の
活動にわが国としてどうかかわっていくか、貧困や飢餓、感染症対策など個々の人間の生命、生活、尊厳の確保を目指す「人間の安全保障」の実現にどうかかわっていくかなど、わが国を取り巻く環境も大きく変化してきています。
憲法九条の問題については、わが党においてもタブーを設けず
議論を積み重ねてきました。その主な論点は、「自衛隊の
存在」「国際貢献の
あり方」「集団的自衛権の行使の問題」などに立て分けることができますが、これまでの党内論議では、「現行九条を堅持すべき」との
議論が大勢です。
党内の九条論議を概括しますと、「平和の党」として九条を大切にし、今後も堅持すべきだという強い
意見があります。一方、専守防衛、個別的自衛権の行使主体としての自衛隊の
存在を認める記述を
憲法に置くべきだという
意見や、その反対に、既に実態として合憲の自衛隊は定着しており、あえて書く必要はないという
指摘もあります。
また、国連憲章は、国連による国際公共の価値を追求するための集団安全保障における武力行使を認めていますが、
日本政府は、集団安全保障にあっても、武力行使は許されるべきではないとしています。わが党においては、あくまで民生中心の人道復興支援を主体とすべきだとの
意見が大勢です。また、国際貢献については、明確化を望む
指摘がありますが、九条に書き加えるか、前文に盛り込むか、別建てで起こすか、また
法律に委ねるかなど
意見が分かれています。
一方、集団的自衛権の問題については、個別的自衛権の行使は現行
憲法でも認められているが、集団的自衛権の行使は認められないという
意見が大勢です。
国民の間には、
憲法九条を変えることに対する危惧があることも事実であり、見直しについては、
国民的な
合意を形成する
観点から慎重に
議論を進める必要があります。今後の九条論議に当たっては、九条の一項の戦争放棄、二項の戦力不保持の規定を堅持するという姿勢に立ったうえで、自衛隊の
存在の明記や、わが国の国際貢献の
あり方について、「加憲」の論議の対象として、より
議論を深め、慎重に
検討していく方針です。
以上が今の段階での我が党の
憲法九条及び国際貢献に関係する
見解でございますけれども、私は、その上に立って、個人的
見解としてこれから二点ほど
意見を述べさせていただきたいと思うんです。
先ほど、
冒頭、葉梨
委員の方から、国連安保理常任理事国入りに関する
見解がございましたけれども、九月二十一日の第五十九回の国連総会において、小泉総理は安保理常任理事国入りへの決意を表明されました。
日本政府は今後実現への取り組みを強化する方針と言われておりますけれども、私は、この問題に対する現段階の考え方は、ただ安保理常任理事国の地位につきたい、なる資格が
日本にはあるというだけではなくて、
日本として常任理事国入りに臨む原則と、何をやりたいのか、何で貢献するのかという
日本の
役割を鮮明にして取り組むべきである、そのように思っております。
我が国はこれまで八回にわたりまして非常任理事国を務め、来年から二年間、非常任理事国に再びなることが決まっております。また、国連分担金を二〇%近く拠出し、これはアメリカを除く常任理事国四カ国の
合計を上回る規模でございますけれども、国連内外においても、軍縮や不拡散、対人地雷除去、開発、人間の安全保障、非軍事分野での人道復興支援や平和維持
活動など、さまざまな貢献をしてまいりました。
現在の常任理事国とは異質かもわかりませんけれども、
我が国は、海外での武力行使を禁じる
憲法九条を持った上で、戦後の荒廃から復興へと経済をよみがえらせ経済発展をなし遂げ、世界唯一の被爆国として非核三原則を持ち、また武器禁輸三原則をみずからに課し続けてきた
国家であり、非軍事分野での国際平和協力
活動を積極的に行ってきております。
ですから、常任理事国入りについても、軍事力を行使しての紛争介入に
日本が名乗りを上げるという点ではなくて、平和
憲法を最大限に生かしながら、
日本が持てる力を総動員して、平和を構築するために多面的に行動するという、
日本独自の平和構築力で積極的に貢献するという強い意思表示を国際社会にさらに強く表明することが必要であります。
特に、最近、国際社会で大きな
課題となっているテロや
地域紛争についての対応では、武力行使による制圧や治安
活動だけでなく、非軍事分野での人道復興支援や平和維持
活動が重要となっており、ライフラインの復興や医療、さらには貧困、飢餓、感染症、環境破壊などをどう手当てするかといった、いわゆる人間の安全保障を推進することも大切です。特に、この分野は
日本の得意の分野であると思います。
そのためには、PKOやODAの活用、NGOへの支援などを有機的に組み合わせた多面的な国際平和構築能力を高めていくことが必要であると考えます。そのことによって、武力行使に参加せずとも、現行
憲法下で、
日本は常任理事国にふさわしい
役割を十分に果たすことができると考えます。
もう一点、国連の集団安全保障や平和
活動と
憲法についての考え方を簡潔に申し述べたいと思います。
現行
憲法の前文には、国際協調主義という理念が書き込んであります。しかし、
憲法の条文には、国連憲章のもとにおける集団安全保障措置やその他の国連の場における国際協力については明文規定は持っておりません。
二十一
世紀において、
日本が平和を維持し、存続していくためには、国際社会と真の協調を図らなければなりませんし、さらに、アメリカに次ぐ世界第二の経済大国として、国際社会の中でその国力にふさわしいだけの大きな
役割、責任分担を求められているわけでございます。現に、冷戦後のこの十年余り、
我が国は、平和維持
活動や各種の国際平和協力
活動、さらには災害時の緊急援助
活動などに、国際社会の平和と安定の構築のため、あらゆる努力をしてきました。実績が上がっているわけでございます。
二十一
世紀のこれからの
日本が、国際の平和の維持、人道支援
活動などの国際平和協力
活動に積極的に参加する意思を明確に打ち出すために、先ほど党内の
議論ではいろいろ分かれていると申しましたけれども、私は、
憲法の中に、国際協力あるいは国際貢献の条文を、根拠規定を設けるということが望ましいのではないか、そのように考えております。すなわち、我が党の加憲という
立場で言うならば、国際協力あるいは国際貢献の条文を加えるのが望ましい、そのように考えているわけでございます。
ただし、その際、その平和維持
活動や国際平和協力
活動が、一、国連決議に基づいていること、二、武力行使を
目的としないこと等の、幾つかの原則を明確にしておく必要があると考えます。
あわせて、この
憲法から少し離れますけれども、自衛隊による国際社会の平和と安定のための
活動、すなわち、国際平和協力業務を、自衛隊法上、現在のように運動競技会に対する協力や、南極
地域観測に対する協力と同列に扱うような付随的な任務との位置づけを改めて、自衛隊の本来任務に格上げすべきであると考えます。このことは、この十数年間のPKO
活動などの結果として、
国民の
合意は得られるものと考えております。
以上でございます。