○佐藤(謙)
委員 環境と経済の統合、これは耳ざわりのいい言葉ですけれども、振れ過ぎたものを真ん中に戻そうというのは、私は統合という言葉ではないと思うんですね。もうちょっとニュートラルな、五分と五分の闘いの中で今まで闘ってきたことをやめようというのは、これは統合かもしれません。余りにも経済優先の、そういう社会の中で
環境というものが今力を持とうとしている。その力を、しっかりと
環境大臣が先頭に立って、統合という言葉を超えた何かを我々は見つけ出さなければいけない時代ではないかなと思うんです。
水俣に戻って恐縮ですけれども、一九五九年、あの厚生省の水俣病食中毒部会が、水俣病の主因をなすものはある種の有機水銀化合物であるということを十一月の十二日に報告したその翌日に、閣議で、御承知のように、水俣病の原因が
企業の公害であると断定するのは早計であると異例の発言を時の通産
大臣の池田勇人さんがされたわけですね。その翌年の一九六〇年には池田勇人氏が総理
大臣になって、何をやったかというと農業基本法と全国総合
開発計画というものを一九六一年と一九六二年、相次いで打ち出した。
御承知のように農業基本法は、まさに農業土木を日本じゅうにばらまく、そうしたことをやったし、農村の小農民を低廉な労働者として都市に送り込むことをしてきた。そして、全国総合
開発計画は、御承知のように日本じゅうの緑を、
環境を全く理不尽に踏みつぶしてきた歴史というのがあるわけでありますから、もしもそうしたものを全く頭に入れないで豊かさということを維持しようとする今の
環境省があるとすれば、私は大変な間違いだというふうに考えざるを得ません。
そこで、私はここで、宇井純沖縄大学の前教授がついこの間言われた言葉にいたく共感を覚えたので、お話をさせていただきます。
今、沖縄は
環境破壊のデパートと言われています。石垣空港の白保もあります。それから中城湾の泡瀬干潟も今壊されようとしている。さらには辺野古やあるいは西表島のリゾート
開発という、そうした問題の中で、宇井純さんは、その
開発によって、その
開発は実は基地の補償による
公共事業によってかき出された赤土がもちろんサンゴや自然を破壊するわけでありますけれども、その赤土で染め抜いたシャツを着てシンポジウムに来られて、私は、今沖縄で抱えている
環境破壊の現場というものをずっと聞かされたわけであります。
そのときに宇井さんは、その後に各省庁、
環境省を初め、あるいは国土交通省それから防衛施設庁、いろいろな役所の若手の官僚を前に、昔の
環境省、
環境庁ですね、一九七一年に庁になった、あのときの高揚感というのが、二〇〇一年に
環境省になって一体あったんだろうかと。それと同時に、
環境庁ができない前からも必死で
環境を守ろうとしていた人たちがいたじゃないか、海上保安庁の田尻宗昭さんの例を挙げて、法律が整備されていなくて、そして全く
環境を守るという体制がなくても四日市の海を救った人たちがいたじゃないかと。
実は今の
環境省のOBにも、
現実にこの
環境省の役人の中にもいます。そういう人たちが、なぜか今、私が自然破壊を初めとしたいろいろな
環境問題で各地を飛び回ると、みんな及び腰で、いや、これは意見を求められれば私は意見を申し上げるとか、それはもう自治事務になったからとか、そうした根拠になる法律がないということで、みんな逃げようとしているんです。
そのケースを三点だけ申し上げます。
一点は、さっき言った沖縄の辺野古、泡瀬干潟、石垣島白保、西表島。これはまさに経済と
環境の統合どころじゃありません。しゅんせつした泥をあのすばらしい砂州干潟、泡瀬干潟のその上にかぶせようとすることが本当に経済と
環境の統合と言えるんでしょうか。
そして、あと二点だけ申し上げます。
秋田県男鹿半島の芦の倉沢の治山ダム、これは、実はきょうその治山ダムの工事が林野庁によって始められました。男鹿半島において自然の景観、生物多様性に最も富んだ国有林、私も行ってきました。国定公園第一種特別
地域、そして国有林ケヤキ遺伝子保存林に指定されている、これだけすばらしい生態系、しかもつい最近、地元の自然保護、市民の方々が新種のアザミを発見しました。三十三種の
環境省や秋田県のレッドデータブックの登録種が分布していて、新種のアザミも同定されている、そうしたところに東北森林管理局が治山ダムをつくる。
三年前に観光道路にその沢から土砂が流出した。土砂が流出されたのでありますから、道路の排水をしっかりとすれば何でもない。それを四つの治山ダムをつくろうとしていて、地元で工事中止を訴える自然保護グループだとか生態系や植物学者の声を無視して、きょうから工事が始まります。
環境省のカの字もそこには見当たらない。それどころか、
環境省のOBがそうした工事をバックアップするかのように地元の自然保護団体からとられる、そういう不幸があるわけでありますけれども、これに対して、この治山工事を許すんだろうか。これはもう氷山の一角です。
もう
一つだけ。愛知県の瀬戸市、ここは
環境を掲げる愛知万博が開かれるところです。私はここは何度も行ってきましたけれども、小牧会場と瀬戸会場、
環境万博と言われているけれども、これはとんでもないうそです。なぜならば、経済産業省の担当者が、実は、積極的に会場を誘致した瀬戸市のメンツを立てて二会場にしたんだということを公然と言い放っているんですよ。
瀬戸の会場は、たった三つのパビリオン。それは何も、
一つの会場にすることはできたはずです。だけれども、瀬戸市があれだけ誘致に熱心であった。そして、海上の森が守られて、やむなくこうした会場の設定になったときに、瀬戸市の顔を立てるために、保安林がどんどんどんどん今壊されているんです。私が行ったところは、その二会場を結ぶためのゴンドラ工事が進められています。そのために、壊さなくてもいい保安林が壊されて、モンゴリナラだとかそのほかカザグルマの群生地がどんどんどんどん破壊されていって、百軒足らずの町内会は、毎日一万二千人のお客さんがゴンドラから日常生活をのぞき込むなんということを平気でやらせるような、そういう計画が行われています。
それからもう
一つ。五十を超える産廃処分地のある瀬戸市、ここでは、ガラスの原料の珪砂採掘のために保安林指定が解除された、これは林野庁の話ですけれども。そして、採掘後の穴に産廃の処分場ができるのではないかといって、市民がおびえています。
これは、茨城県のふじみ湖、あの笠間のふじみ湖が見事に採石場の穴に、県がニューフロンティア計画といって、そこに産廃の処分場をつくった。もう日本全国採石だとか鉱業権で穴をあけて、そしてそこに処分場をつくるという、そうしたことがあちこちに見られるときに、我々は大都市近郊の本当の
環境をどうやって守ったらいいのか。それをもう必至で
環境省に頼み込んでいるけれども、
環境省のカの字が見えてこない。
どうかここで、法的には多少の勇み足があったとしても、自分が責任をとるからと言って
環境省の役人を鼓舞する、そうした一言をここで聞かせていただきたいと思います。