○榛葉賀津也君 私は、
民主党・
新緑風会を代表して、ただいま
議題となりました有事関連七
法案・三
条約につきまして、
賛成の
立場から
討論をいたします。
民主党は、
衆議院において、緊急事態基本法の制定について与党が歩み寄ったこと、そして
国会による民主的統制を
強化するなどの見地から
提出した
法律案の多くを与党が受け入れたことに対し、一定の評価をいたします。
私は、一年前の六月六日、
武力攻撃事態対処関連三
法案の
賛成討論に立ち、一連の有事法制は法治国家として整備をしておくべき
法律であるとしながらも、この法は絶対に使われなくて済むように政治が最大限の外交努力を払うべきだとの考えを述べさせていただき、今もその思いは変わってはおりません。
しかし、今回、有事関連
法案・
条約の
衆議院送付と相前後して、懸念を生じさせる問題が生起をいたしました。アメリカのイラクにおける捕虜虐待の問題、そして小泉総理のイラクへの多国籍軍参加表明であります。
合計十本という極めて膨大な分量になった今回の有事関連
法案は、いや応なく有事における日米関係の
強化という面を含んでおります。だからこそ我々は、九・一一以降、国際法上も議論を呼んだ先制攻撃論にはくみしない、つまり自衛権で何でもやるという
法律ではないことを国際
社会に対して示す必要がありました。特に、参議院における
審議は、イラクにおけるアメリカの正当性を根底から覆したアブグレイブ以降に始まったという経緯からも、捕虜の取扱いを
規定したジュネーヴ
条約追加議定書を批准していないアメリカと有事に共同作戦をする際にどうするのかという問題、つまり、日本は有事において国内的にも国際的にも法にのっとった
措置をする、国際法を
遵守する国であるという姿を世界にアピールする
説明責任が求められていたはずであります。
が、しかし、このような重要
法案の通過のタイミングとしては、現在、非常に憂うべき事態に陥っております。
有事法制は正に国家百年の大計であります。それが、
国民から見れば、参議院においては
審議時間が決して十分でなかったことに加え、今の政治は、年金
法案の通し方も、国連安保理決議の解釈も、憲法の読み方も、すべて何でもありなのかという印象を与えてしまっているということです。人生いろいろ、解釈いろいろでは済まされない問題であります。
イラク問題については、本院においては、
内閣法制局長官から、現在のイラク特措法の枠内で読み込むために恣意的な解釈がされたばかりでなく、小泉総理からは法制局長官の
見解とも矛盾する
答弁が先ほどもあったばかりであります。
国民への
説明よりもアメリカが先という外交における総理の議会軽視の姿勢、
政府の無理な法解釈を認めることは、参議院並びに議会そのものの存在意義を弱めることと同義であると強く同僚議員の皆様方に訴えるものであります。
少なくとも、有事法制は
法律が通ったらそれで終わりというものではありません。議会に託された役割として重要な点が二点あることを
賛成討論の中で指摘をさせていただきたいと思います。
まず、地方自治体との関係です。
今回の
国民保護法案、
特定公共施設利用
法案などによって、地方自治体やその長の責務が極めて重くなります。昨年、有事関連
法案が成立した直後から、自治体や企業、民放などから、
国民の協力の中身に関する戸惑いや不安が示されてまいりました。世論調査の中には、有事法制については
賛成、
反対よりも、分からないという回答が最も多かったものさえもありました。今回、有事においてどのように地域を守っていくのか、地域の特徴に合った地方自治体の独自の発想も必要ですし、訓練においては住民への
説明、災害時も視野に入れた自治体間や
自衛隊との連携
強化など、実質的な地方分権なくしては取り組めない課題であります。
政府には、分権問題への更なる前向きの努力と完全な三位一体改革を強く求めなければなりません。
もう一つは、有事、すなわち
武力攻撃事態などが起こる
背景、要因は時々刻々変わる
国際情勢に起因し、常に周辺地域の情勢によって左右されるものである以上、予防外交に重点を置くことが求められます。
政府の外交機能に対する議会としてのチェック機能が必要であります。更に言えば、日本の外交をODAや国連改革の面でもっとアクティブに、効率的に展開していく努力をすべきだとも思います。
民主党は、有事関連
法案・
条約には、国の安全保障に対して野党の第一党として
責任を有するべきであるとの
立場から
賛成いたします。しかし、それは小泉政権の
対応を支持するからではなく、この法制が
国民生活に重大な
影響を及ぼす法制であるからこそ、きちんとした基礎を作り、有事において国家が超法規的な行為を取らないように、また、情報等が錯綜し、情報操作や濫用の誘惑に走りがちな
政府にたがをはめるために是非とも必要だと思うからであります。
しかし、他方において、図らずもイラクへの多国籍軍参加問題が浮上してまいりました。この点については、
民主党としては
政府の姿勢を断固批判するものであります。
そもそも
民主党は、イラク特措法そのものに
反対してまいりました。国連安保理での議論に参加すらできない日本、その後の無定見なイラク攻撃支持表明、
政府による憲法のなし崩し的解釈などに対し、何度も何度も
民主党は警笛を鳴らしてまいりました。今回、多国籍軍参加という局面において、またもやこのような重大決定を
政令レベルでやろうとする
政府に対し、とりわけ、その
法律の恣意的な扱いに対し冷静な疑義と懐疑を抱き、激しい不信と怒りを申し述べさせていただきます。
改めて、総理、総理が
国民への
説明よりもアメリカが先などということは言語道断であると言わざるを得ません。テロとの闘いのように国連が必ずしも表に出ない場合、国際的な安全保障に日本がどうかかわるのかという問題については、国内議論がまずあるべきであり、日米同盟がその淵源となるのは順序が逆だと言わざるを得ません。
有事法制については、とりわけ戦争を知る世代の方々からの懸念が強くあります。確かに、戦後幸運にも平和を享受してきた我々日本と、いまだ紛争が絶えず、治安の維持のためには軍事力も必要だとされる世界の現実とのギャップは大きく、そこで大国としての
責任ある振る舞いを求められているという構図に、日本の国内法も
国民感情も正直まだ付いていけないのではないかという印象を持ちます。
アフガニスタンでは、先週の一週間で米軍によりタリバン兵が七十三名殺されました。イラクでは、暫定政権の外務次官に続き、教育省の高官までもが暗殺をされました。世界の紛争を目の当たりにしながら、平和の尊さを私
たちは毎日痛感させられます。平和を守る努力は何よりも大事であります。そして、平和は守るだけでなく、時として作るものであるはずです。けれども、懸念されるのは、果たして
国民のコンセンサスがどれだけ取れているのか、また議会がそのためにどれだけ十分な機能を果たしているのかという点については、常に議論が必要だと思います。
イラクに関しても、
政府が本当に言うように人道復興支援だけで済むのか、参加ということは、多国籍軍本来の主要目的である治安維持にまで踏み出すことがないのか。その準備が国内法的にも、
国民感情的にも、自衛官の側にもできているのかというと、甚だ疑問もあります。
それにもかかわらず、
政府は、総理の一言を既成事実化させようとし、
自衛隊が次々と紛争地域に行き、それを
国会が追認するという状態が生じようといたしております。
国会の
審議が形骸化し、政治は別のところで加速度を増しているようにも思えます。けれども、議会の役割は
審議にあるはずです。事態の追認だけをするのでよいのなら、議会は要らないと言えるでしょう。
最近の傾向として、全体的に
国会全体が軽くなったのではないかということを肌で感じ、非常に危惧すると同時に自責の念に駆られます。与党の先輩方はいかがでしょうか。
年金
法案は、
国民の七〇%が
反対している中で、
法案提出者である
政府の官僚や自民党の議員の未納、未加入が未解決のまま、しかも
審議途中で当初の
政府の
説明とは違う数字が出てきたりという中ですら、あんなにも強引に、あんなにもあっさりと
法律を通すことができるということを強く
国民に印象付けてしまいました。
そのような事態にあるからこそ、今の日本に必要なのは、口約束だけで事態を
承認済事項として固定させ、法解釈は事後処理とばかりに軽んじる総理を頂くことではなく、議会の機能を復活、
強化させ、
国民の議論を喚起していくことではないでしょうか。
信なくば立たず。有事法制の本質は、一時的ではあれ、時の
政府に
国民の権利の制約をゆだねる側面があり、濫用の危惧と常に隣り合わせにあるということです。そのため、
政府の権限
拡大を認めるには、
国民の信頼に足り得る
政府であることが不可欠であります。
しかし、私は、たった二時間前の特別
委員会での我が党の平野貞夫
委員の
国会議員最後の質問においての総理の
答弁を聞いて、改めて総理の言葉に不信を持つようになりました。総理は、自身への損害賠償訴訟
事件に対し、
民主党議員の質問で訴訟に初めて気が付いたと
答弁をされましたが、これが事実だとしたら驚きであります。
自分への訴訟も全く知らずに他人任せということが本当にあるのでしょうか。政治家として、総理としてのリスクマネジメント能力を疑わざるを得ません。
さて、
民主党の
修正により、今回の有事法制による緊急対処
措置の終了について、
内閣総理大臣の認定による終了だけでなく、
国会がその実施の終了を決議できるものとされました。これは、ブッシュ大統領との友情を優先させるかに見える小泉総理に対する全
国会議員からの不信任感情の表れではないかとも思うところでありますが、シビリアンコントロールの観点からも、
国会の関与、参議院における
審議を充実させていくことが我々の存在意義として問われております。無法な法解釈を推し進める
政府に対して、議会がストップを掛けられない状態が生じている。与野党なく、これは参議院の、日本の議会の弱さそのものであると言えるのではないでしょうか。
その意味から、一連の有事法制が成立した後も、さきに述べた地方自治体との関係、
国民意識、外交力の充実などの面において、
国会での徹底した
審議を求めます。
特に、次期通常
国会で成立を図ることが合意された緊急事態基本法については、憲法との関係を明確にし、真に
国民の
生命、
身体、
財産を守り、
我が国の安全保障体制の確立に資する
制度としなければならないと思います。
そのための
民主党の役割、議会の役割、とりわけ参議院としての役割と決意を表明して、私の
討論を終わります。(
拍手)