○大塚耕平君
民主党・
新緑風会の大塚耕平でございます。
ただいま
同僚の
森ゆうこ議員から、私の敬愛する
森ゆうこ議員から御提案のありました
国井厚生労働委員長の
解任決議案に賛成する立場から討論を行わせていただきます。
まず冒頭、
与党の
皆さんが御心配になるといけませんので御
説明をいたしますと、別にこれは原稿ではございません。後ほどこの中身については
説明をさせていただきます。
冒頭、この場をおかりいたしまして、昨年イラクでお亡くなりになられました私の大学時代のクラブの先輩である奥克彦大使の御冥福をお祈りさせていただきますとともに、私の勤務しておりました日銀の新潟支店の先輩御両親の娘さんである横田めぐみさんの一刻も早い帰国をお祈りをさせていただきたいと
思います。
奥大使は、外交研究会というクラブで大変貴重な論文の御指導をしていただきました立派な先輩でありました。その後、就職をいたしまして、
日本銀行で
地方に全員転勤をするわけでありますが、赴任した新潟支店で、私が赴任する三年前に社宅の目の前で横田めぐみさんは拉致をされたわけであります。私が着任しました年には、その時期になると新潟日報という
地元紙が、めぐみさんはどこにという記事を大きく載せておりましたが、当時は、
地元では北朝鮮に拉致をされたという話が既に出ておりましたが、なかなか
政府は取り合ってくれず、ようやくこの時期になって拉致問題が動き始めていることに、後ればせながら期待を持つものであります。
そのことを冒頭申し上げまして、賛成討論に入らせていただきたいと
思います。
まず、森
議員もお話しになりましたが、
野党議員の
質問権を無視して
強行採決に至った点、これはどのような理由を付けても看過できない所業でございます。
共産党の小池
議員、そして社民党の福島
議員、そして最も
日本の庶民の
皆さんの
意見を代弁していると思われる
西川きよし議員の
最後になるかもしれない
総理大臣への
質問権を侵害したことは、誠に心外でございます。そのことだけをもってしましても、
国井委員長におかれては十分に私としては解任に値するものというふうに思っております。
しかし、理由はたくさんあった方がいいと
思いますので、まずは解任決議に賛成いたします
基本的、外形的な理由を申し述べたいと
思います。
提案者である
森ゆうこ議員からも
説明がございましたように、
年金関連法案に関して、昨日、
厚生労働委員会において
国井委員長が
強行採決を認めたことは誠に遺憾であり、この一事をもってして解任決議は十分に賛成するに値するものと考えます。
更に申し上げれば、かかる
重要法案の
審議に当たり、これだけ世間を騒がせました
未納・未
加入問題について、
委員会に関係する閣僚や
議員に対して毅然とした態度で臨まなかったことも、
委員会の長として、職責に照らせば誠に遺憾であり、かつ残念でもあります。
また、
中央公聴会を
開催しなかったことに加え、
審議を重ねるにつれ、次第次第に公正中立な
運営姿勢が薄れていき、最終的には昨日の
強行採決に至ったことは、
委員長としての適格性を著しく喪失しているものと言わざるを得ません。
国井委員長、私は余り親しくお話をさせていただいたことはございませんが、これまで、
採決時の
委員長説明等でこの壇上に登壇した際の
与党議員の
皆さんからの拍手や掛け声の多さから拝察するに、なかなかの人気者であられ、そのお人柄を思わせるものと感じておりました。我が党内でも、なかなかいい人ですよという声も多く、
森ゆうこ議員も常日ごろそう申しておったわけでございます。
そのような人望厚いと思われた
国井委員長が
強行採決という蛮行、所業に及んだことは甚だ残念なことであります。
自分の議席、前から一、二、三、四列目でございますが、その議席から遠目に拝見するこの壇上の
国井委員長の風貌とかっぷくは、我が党の野田佳彦前国対
委員長の十年後をほうふつとさせるものであり、また、かの西郷隆盛公のようでもあります。議場の
皆さんはいかがお感じでありましょうか。
西郷隆盛公といえば、申し上げるまでもなく、幕末、明治維新の近代
日本の黎明期をリードした偉大な政治家であります。とりわけ、勝海舟公と直談判に至り江戸城の無血開城を実現させたことは、江戸市中の荒廃、
国民の混乱を最小限にとどめたという意味で極めて重要な歴史的業績と言えます。
この議場には、私を含め二百名余のいわゆる政治家が鎮座しております。今日は傍聴席にもたくさんの
国民の
皆さんがおいでいただいておりますが、我々政治家の一挙手一投足、その言動を注視しておられます。
国民の
皆さんは、政治家といえば各々が何やら大変な
仕事をしているかのように思ってくださっている場合もありますが、現実には、私
たち政治家個々人が本当に重大かつ歴史的な
仕事ができる局面はそれほど多いものではございません。
今回は、百年安心な
年金制度を作るという触れ込みのこの局面で、
参議院の
厚生労働委員長は、江戸城無血開城を成し遂げた西郷隆盛公に勝るとも劣らない立場にあったはずであります。なぜなら、長年の因習と悪弊から疲弊化していた江戸城は、今回のこの
年金改革論議で申し上げれば
年金制度そのものではありませんか。無駄遣いと複雑な
運営、そして民意から遠ざかってしまった幕府の意思、こうした旧弊を一掃するために
厚生労働委員長が江戸城無血開城、すなわち
年金制度の抜本改革、白紙からの再検討の舞台を演出していただければ、
国井委員長はまさしく
年金制度改革の西郷隆盛公としてその名前は後世までとどめられたことでありましょう。
ところが、残念ながら、現実は全く逆でありました。江戸城に籠城して開城を拒む、それどころか、
年金制度の中身を明らかにしてほしいという開城を求める
国民の声に耳を閉ざし、門を閉ざし、悪弊、旧弊をひた隠しにしようとするその所業はいかがなものでありましょうか。西郷隆盛公が悪代官や守旧派の幕閣のごとき存在に転じてしまった
国会のこの情景は誠に寂しい限りと言わざるを得ません。事の是非は、それぞれお立場で御
意見はありましょうが、傍聴してくださっている
国民の皆様が御判断されるものと
思います。
これでは、人望厚いと思われた
国井委員長の名を後世まで汚しめることになりはしないかと、人ごとながら大いに心配せざるを得ないのが実情であります。余計なお世話でありますが。そのとおりでありますが、甚だ心配、誠に心配。
委員長の権威の失墜のみならず、邪が正を侵し、正しい者がそうでない者に圧倒されるこの
国会の惨状は、正にざんきに堪えないものであります。
かの論語の一節を
委員長には大いに感じ入っていただきたいものであります。「子曰く、紫の朱を奪うを悪む。鄭声の雅楽を乱すを悪む。利口の邦家を覆す者を悪む。」とあります。その含意は、ただいま申し上げようと
思いましたが、よく分からないというお声もありますので、もう一度だけ申し上げます。「紫の朱を奪うを悪む。鄭声の雅楽を乱すを悪む。利口の邦家を覆す者を悪む。」。
今日は
国井委員長に是非、幾つかのこうした論語の教えを聞いていただきたいと
思いますので、この一節をここでもう一度繰り返すことはいたしません。
この含意は、不正やイカサマがまかり通り、間違ったことが正当化されている現実を見て憤激し、国家の将来はどうなるのだろうかと心配でならないということを言っているのであります。
委員長、お分かりでしょうか。
さて、
委員長の御略歴を政官要覧で拝見いたしまして大変驚きました。栃木県経済
農業協同組合、現在のJA栃木経済連に御勤務された後、連合栃木総研の所長を務められ、そして連合栃木の顧問などを歴任し、
平成七年の
参議院選挙で初当選され、
平成十年には自民党に入党されたということでございます。
元々、連合の一員であり、今は自民党所属の
議員であるということは、実は、この時期の
厚生労働委員長として正に適役、
与野党の間を取り持ち、大局的見地から
委員長としての
運営、裁定を行い、この際、ゼロベースから忌憚のない議論を行ってはどうかという、そういう提案をしていただくにはまたとない方であったのであります。にもかかわらず、今回のような
強行採決に至ったことは、誠に残念と繰り返しお伝えを申し上げます。
先ほ
ども申し上げましたように、政治家として一世一代の大
仕事、しかも
日本国の国家百年の大計に資するような有意義な
仕事ができる
機会を逸し、御本人はいかがお感じなのでありましょうか。私には全く理解できない御対応でありました。
幕末の
日本を救った開明派の幕閣勝海舟公は、江戸城無血開城の談判に及んだ際の西郷隆盛公の印象を後にこう語っております。いわく、余が心中ひそかに驚く、襟度寛大、一点私意、私の気持ちということですね、私意を挟まず、ああ今日ある、実にこの人の意匠に出るなり。もう一回申し上げます。いわく、余が心中ひそかに驚く、襟度寛大、一点私意を挟まず、ああ今日ある、実にこの人の意匠に出るなり。
江戸が戦禍によって惨状を呈するか否かは、当時、海外列強の注目するところでありました。こうした中、勝海舟公と西郷隆盛公は、公平な、私ではありません、フェアという意味の公平です、公平な処置であれば朝廷の威光は生まれ、海外にもこれが聞こえ、
日本の威信が高まろう、そういう考えで一致し、無血開城に
合意したと伝えられています。
襟度寛大、一点私意を挟まずとたたえられた西郷隆盛公、そしてそうたたえた勝海舟公
自身も、いずれも、官私を捨てて、幕私を捨てて、官というのは官軍の官に私、幕私は幕府の幕に私であります、官私を捨てて、幕私を捨てて、天下と公共の政をなす、この精神で事に臨んだのであります。
これは、若かりしころの勝海舟公の才能を見抜き、幕府の中で勝海舟公を抜てきして要職に進ませた当時の幕政参与、越前藩主の松平慶永、通称春嶽が師と仰いだ、
皆さんもよく御存じだと
思います、思想家の横井小楠の理想を表す
言葉であります。歴史物が好きになってきたのは、大分年を食ったなということを感じますが。この勝海舟公だけではなく、公の、勝海舟公の配下となることから飛しょうしたかの坂本龍馬も、この横井小楠から深い
影響を受けたと言われております。
後に勝海舟公は、「氷川清話」という著書の中で、天下の中で恐ろしいものを見た、それは横井小楠と西郷南洲だと述懐しております。官私を捨てて、幕私を捨てて、天下と公共の政をなす。
西郷隆盛公をほうふつとさせる
国井委員長のお立場では、是非ともこの精神で江戸城無血開城とも言える虚構と不条理に満ちた江戸城ならぬ
年金制度の実態解明に当たり、この際、
与野党がこうして一戦交えることを回避し、海外にもこれが聞こえ、
日本の威信が高まろうとも言える御対応に終始していただきたかったことを改めて申し上げるものであります。
しかしながら、思慮浅く、一戦交えるに至った
委員長には、潔く
責任を取ってお辞めいただく以外に手だてはないと申し上げざるを得ませんが、自らお辞めにならない以上、上程されました解任決議に大いに賛成するものであります。
さて、もうちょっとお待ちください、この江戸城ならぬ現在の
年金制度がいかにおかしいものであるかを御
説明申し上げましょう。
委員長として、今から申し上げる事実も知らないままに、百年安心な
年金制度という超誇大広告の
政府案を
強行採決したことは誠に遺憾と再三再四申し上げておきます。
これは、お待ちになれない方もいるみたいですから、ちょっと先に御
説明をいたします。(「現金だぞ」と呼ぶ者あり)いや、現金ではございません。今日はマスコミの
皆さんもいらっしゃいますが、これは、
日本の一億二千万人の
年金、厚生
年金と
国民年金を計算している社会保険庁、
厚生労働省の
年金数理計算のプログラムの現物であります。本邦初公開であります。
この
説明は後ほど申し上げますが、これ読めないんです、これは機械言語で書いてありますから。世耕さん分かるでしょう、これFORTRANとC言語で書いてあります。
この
説明に入ります前に、内閣府の経済財政モデルをめぐって私が竹中
大臣及び内閣府とやり取りをしていた
経緯については、本席でも予算関連
法案の反対討論の際に御
説明をさせていただきました。御記憶をいただいていれば幸いでございます。
結局、その内閣府の経済財政モデルの概要は、竹中
大臣の御英断により、四月初旬に私の手元に届きました。そして、そのモデルでどういうふうに例えば
日本の先行きの経済やプライマリーバランスを見通すかという、そういう計算を行うために、ある一定の
前提のデータ、外生変数というものを入れなくてはならないんですが、それを公開してほしいと
お願いしておりましたところ、ようやく五月十四日になって提出をされました。一月十九日にはモデルによる試算結果を
政府は
公表しているわけでありますから、公開までに四か月掛かったことが意味している実態については
皆さんの御推察にお任せをいたしますが、大いに問題があるものであります。
要は、内閣府の経済見通しは信頼性の高いものではなかったということを証明するものであります。
とはいえ、内閣府の経済財政モデル、実はそれもここにあります。これが、遠目で分からないと
思いますが、後でごらんに入れますので。内閣府の経済財政モデル、方程式七百一本と言っておりました。そしてこれが外生変数、このモデルを明らかにするというその目的に向かって一歩前進したことは事実であります。そして、
年金数理計算もこれと部分的に連動しているわけであります。
今後は、内閣府や外部の有識者を交えて、本当で有意でかつ信頼性の高い経済見通しはどうあるべきかということを真摯に議論してまいりたいと、そのように思っております。(拍手)ありがとうございます。
内閣府の経済財政モデルは、いろいろと
経緯を聞いてみますと、昔の経済企画庁の時代から続いている古いモデルをベースに、言わば継ぎはぎで拡張、運用してきましたことから、今や全体像や計算結果の信頼性について担当の部署の
皆さんも十分に自信が持てないという、それが本音であったようであります。
担当の
政策統括官もこう言っておりました。自分
自身も実情が分からない、以前からモデルの
内容や信頼性を精査する必要があると感じていたと正直に述べておられます。今更、過去を問おうとは申しません。しかし、こういういい加減なデータを基に政治が行われ、経済
政策が論じられているところに
日本の病根があるものと私は考えます。
内閣府の歴代の幹部及び
国会、この
国会であります、
国会がそうした実態に十分に目を向けてこなかったことについて、この霞が関、永田町かいわいの我々住人は大いに反省する必要があると言えます。この件の詳細については後ほどゆっくりと御
説明を申し上げます。
さて、内閣府の経済財政モデルをめぐるこうした動きを踏まえ、(
発言する者あり)ありがとうございます、
同僚の
衆議院城島正光
議員が
年金数理計算のモデルの計算結果と及びその方程式群についても
厚生労働省に開示を求めました。先ほど申し上げましたように、内閣府は資料の提出に四か月掛かりました。何やっていたんですかね。
さて、城島
議員にモデルの開示を求められた
厚生労働省は、一晩掛けて資料を打ち出して、翌朝には段ボール箱三箱の資料を提出したそうです。実に偉い、この点は
厚生労働省を評価したいと
思います。その翌日、城島
議員から私にこの資料が託されました。これと、あと段ボール箱二箱ほどあります。その結果、大変興味深い事実が明らかになってまいりました。
委員長、よろしいですか。
国井委員長には是非聞いていただきたいと
思います。
この件は、財政金融
委員会の席上では概略をお話をさせていただきましたので、財政金融
委員会所属の委員各位におかれましてはあらあら御承知のことと
思いますが、
年金制度の根幹にかかわる話でありますので、
国井委員長並びに議場の
議員各位にお伝えを申し上げたいと
思います。
厚生労働省から提出されました資料ですが、三箱のうち二箱は
年金数理計算モデルによる計算結果の打ち出しでありました。数字が羅列されている表がぎっしり詰まっており、枚数を正確に数えたわけではありませんが、ざっと五千枚はあろうかという量であります。実に多いですね。もう一箱は、
厚生労働省によれば、これが方程式群ですという
説明であり、これが入っておりました。まあ、どうでしょう、ざっと五百枚ちょっとぐらいあると
思います。
さて、この一連の資料を見ても
年金数理計算モデルの全貌がよく分からないんです。分かんないです、これは。計算結果の打ち出しの五千枚はともかくとして、方程式群だと言われて受け取ったこれについては、よくよく見ると、まあ方程式群ではなくて、これはプログラムの打ち出しなんですね、先ほど申し上げましたように。つまり、
年金数理計算を行うためのモデルを機械言語でプログラミングしたものなんです、これは。それを打ち出したものです。
議員各位の中にはコンピューターや機械言語に詳しい方もおられると
思いますけれ
ども、このプログラムはFORTRANと言われる言語、そしてCと言われる言語、つまりプログラミング言語で書かれているわけであります。これは一昔、二昔前の主流であった機械言語であります。
私、一見若そうに見えますが結構年を取っておりまして、私より若い
議員の
皆さんは私が今お話をしていること、ある程度御理解いただけるものではないかと
思います。
与党の中でも、例えば、私より若い
先生方の是非御関心を持っていただけるようにここから
お願いをするわけでありますが、例えば林芳正
議員、きっと御理解いただけると
思います。私より一つお若いということを最近知りました。そして、世耕さん、専門家ですからお分かりですよね、後でごらん入れますよ。いやいや、
皆さん大変親しくさせていただいておりますので。田村耕太郎さんもその一つお下ですし、小林温さんもきっとお詳しいと
思います。このように、
与党の
皆さんだけお名前申し上げました、全部申し上げるのもいかがなものかと
思いますので。
さて、こういうプログラムを書く
前提として、当然設計書とか要件定義書、そういうふうに言われるものがなくてはなりません。建物に例えますと、設計書、要件定義書は設計図でありまして、プログラムの打ち出しは設計図に従って作成した建物そのものであります。
年金制度は建物そのものであります。まあ江戸城ですね、先ほど申し上げましたように。そして、計算結果の打ち出しというのは、その建物で実際に
仕事をしたり
生活をするという建物を利用したあかしということになります。したがって、先ほどの段ボール箱二箱分の打ち出し結果というのは、これは建物を利用したあかしであります。
そこで、
厚生労働省の
皆さんにこう申し上げました。設計書や要件定義書など、
年金数理計算モデルの全体像が分かるものを是非見してください、決して揚げ足を取るつもりはないですと、
年金制度の全体像を今みんな知りたいと思っているんです、過去三十年、みんなこれを知りたかった、ようやくこれが出てきたことですから、設計書や要件定義書など
年金数理計算モデルの全体像が分かるものを見せてください、こう
お願いをしたわけであります。
そうしたところ、まず最初のその答えは驚くべきものでありました。何と、そういうものはございませんと言うんですね。
年金数理計算モデルといえば、建物と先ほど申し上げましたが、建物に例えれば高層ビルであります。設計図もなしで高層ビルを、これですね、高層ビルを建てることができるとは私にはとても思えません。
そこで再度聞きました。何かあるでしょうと、なければこのプログラムが書けるわけがないじゃないですかと聞きましたところ、担当の方が、いや、こんなものがありますがと言って資料をくれました。その資料は二枚の、A4二枚のフローチャートであります。フローチャートについて片仮名で分からないという方については、後ほどどなたかに聞いていただければと
思います。二枚のフローチャート図で
年金数理計算モデルのプログラムが書けるとは私にはとても思えません。
そこでさらに、世耕さんがお詳しいと
思いますので世耕さんに解説をしていただきたいと
思いますが、過日、
厚生労働省の
年金・数理課長と担当企画官と話をさせていただきました。数理課長は数学者なんですよ。実に朴訥とした方で、大変好印象の方です。職人という感じの方ですね。実際に会われた方もいらっしゃると
思いますが、まあ、どういうイメージの方かといえば、映画で言いますと「バック・トゥ・ザ・フューチャー」のアインシュタイン博士のような、そういう感じの方であります。企画官は、これは文系のキャリア官僚の方ですが、この方もまた大変まじめで信頼できる、まあ、どういいましょうか、オタク系官僚であられました。いや、本当に大変まじめな企画官で、きっと
厚生労働委員会の委員の方も
審議の準備の過程でお世話になったと
思います。
数理課長の話によれば、現在使っているプログラムは、
年金制度ができた当初からのプログラムを五年ごとの再計算時や制度変更のたびに少しずつ変更して、言わばパッチワークでだんだんと肥大化、複雑化していった、こういう代物だそうであります。したがって、確かに、関係者以外がちょっと見たから、あるいは読んだからといって理解できるような、そういう設計図や要件定義書はなくて、変更を指示されますと、担当者や数理課長がこのプログラムとにらみ合って、にらみ合って、ううんと、こううなりながら変更部分を書き上げていくと、こういうことだそうであります。そういう意味では、設計図や要件定義書がないという御
説明はうそではなかったようであります。
しかし、私は驚きました。
皆さんも驚きですよね、恐らく。
日本の
年金制度は百年安心とおっしゃるぐらいでありますから、精緻な高層ビルか、はたまた大変高度な技術を駆使した飛行機のような、そういう精密機械かと思っておりましたが、何とその実態は、労をいとわぬ職人かたぎの数理課の職員の
皆さんの勘と腕で作り上げる伝統工芸の作品だったようであります。実にすごいと同時に、驚きであります。
私は、数理課の職員の
皆さんを怒るつもりは全くないですよ。むしろその
仕事ぶりに敬意を表したいと
思います。まあ数理課長のお人柄といい、
仕事に対するまじめな取組姿勢といい、古き良き時代の
日本のサラリーマンのかがみのような気すらいたしました。
数理課長に伺ったところ、現課長は既に在任六年目。数理課長というポストができて九代目だそうであります。一年から二年でローテーションをしていく官僚組織の人事の常識に照らしてみますと異例の長さであります。だれでもできる
仕事ではなくて、余人をもって代え難いという、そういう理由から恐らくそういうことになっているのだと
思います。
まああんまり早く人事異動をさせてしまいますと、何しろ引継ぎ資料になるような設計書や要件定義書がない
仕事ですから、きっと
仕事が暗礁に乗り上げてしまうのではないか、そういう配慮からこういう人事ローテーションになっているのかなと思ったわけであります。
厚生労働省としては、歴代のまじめな数理課長の
皆さんに、一人で
年金制度の裏付け計算の重責を担わしていた、そう言えるのではないかと私は思うのであります。
そこで、数理課長に伺いました。個人的な数学者としての能力に依存して行われている
仕事でありますので、きっと
年金数理計算モデルの全体像が分かっている人は課長以外に
厚生労働省にはほとんどいないのではないですか、そう聞きました。ちょっと意地悪かなと
思いましたが、大変私とも気さくに議論をさせてくださいましたので、四人ぐらいはいますかと言って聞きましたところ、数理課長は非常にまじめに答えてくれまして、数理課の職員には分かっている人もいますと言って指折り数え始めて、ううん、五人は分かっていると
思いますと、こうお答えになられたのであります。私は、数理課の職員の
皆さんに改めて敬意を感じましたとともに、歴代の
厚生労働省や社会保険庁の幹部に強い憤りを感じたところでございます。
今までのお話でお分かりのとおり、傍聴してくださっている
皆さんもお分かりいただければ幸いでございますが、
年金制度の裏付けとなる
年金数理計算モデルの実情及びこのモデルの正確性、本当に正しく構築されているかどうかというのは、幹部はだれも分かっていないんです。職人かたぎのまじめな現場の職員に実務を押し付けたまま、御自分
たちでは全くこのモデルにバグや問題がないかということを検証していないんではないですか。いわんや、
坂口厚生労働大臣を始め政治家は、私も含めてです、だれも
年金数理計算モデルが正しいかどうかは現時点では分かっておりません。かく言う私もこれからしっかり勉強をさせていただこうかなとは
思いますけれ
ども、何しろ設計図や要件定義書がないわけですから、これはなかなか素人には分かるはずもございません。
この膨大なプログラムは非常に多くの、恐らくざっと見た感じでは三百ぐらいの、また片仮名で恐縮ですが、サブルーチンから構成されているようであると。サブルーチンといってもこれまた分かりにくいと
思いますが、先ほどの高層ビルに例えますと、一個一個が部屋であります。この高層ビルの中が三百ぐらいの部屋に分かれているというふうに考えていただければ結構かと
思います。
国会で
年金制度の数字的根拠にかかわる
質疑を行う場合、
厚生労働省は、このサブルーチンの一部を動かして
質疑の場で計算結果を提示しているものであると
思いますが、つまり、例えば三百ある部屋の一部だけに
修正を加えるとか、あるいはその部屋の電気をつけるという、こういう作業をしているにすぎないわけでありまして、そういうことを行った結果、高層ビル全体が
修正や各部屋の電圧に耐えられるかという検証は、毎回毎回これを全部回さないと分からないはずでありますが、そういう検証は行われていないのが実情ではないかと推測をいたします。これでどうして百年安心の
年金制度と言えるのでしょうか。これは、もし物を動かすプログラムであれば、多分動かないですね。飛行機を飛ばすとか、そういうことではないかと推測をいたしますが、
国井委員長はこういう実態をお分かりになっておられたでしょうか。百年安心な
年金制度などという虚構に相乗りをしまして、自分では確信の持てないことを
審議し、
強行採決までして
政府案を通そうとしていることは、この局面の
厚生労働委員長として誠に恥ずべきことだと言わざるを得ません。
厚生労働省の閣僚や幹部の
皆さんは、自分
自身で確認したわけでもなく、かつ、確信の持てないことを
良心の呵責もなく
答弁をし、まことしやかに
年金制度を論じていたことは甚だ遺憾であり、
国民を、あるいは
審議に参加していた
国会議員をだましていたと言わざるを得ない面があるのではないかと考えます。
しかし、こうして今回の
年金制度改革論議を契機にこういうものが開示をされたわけでありますので、今後、数理課と
一緒に
年金数理計算モデルの全貌を解明をいたしまして、
立法府も行
政府も正しい認識を共有して、改めて
年金制度の改革論議を進めるようにしなければならないと
思いますが、いかがでございましょうか。
厚生労働委員会で
審議が行われていた背後で、当然これは全員関心があることでございますので、こういうことが議論されていたわけですので、
委員長におかれましては、是非ここは仕切り直しをしていただく、それがここで取られるべき
行動ではないかと私は感じるわけでございます。
過去にさかのぼって、歴代の閣僚や幹部を糾弾したいと思うのが人情ではありますが、そんなことよりも、まず今後の
年金制度を本当に安心できるものにすることが先決であります。そのためにも、
年金数理計算モデルの全貌が明らかになるまで、いったん議論は中断すべきものと考えます。今からでも遅くはないと私は思っております。
厚生労働委員長及び後ろにおられます本院
議長は、現在の混乱と、ただいま申し上げました実情をかんがみまして、昨日の
強行採決を無効として、
審議を
委員会に差し戻していただくべきではないでしょうか。
こういう話について、私も
厚生労働委員会に出向いて
質疑をさせていただきたかったと
思います。しかし、
議員各位が御承知のとおり、今年は本院は選挙の年であります。各党とも人繰りが厳しい中での
国会運営が続いております。かく言う私も、先ほど森
議員から尾辻
議員の公正無私な
委員会運営についてお
言葉がございましたが、私も尾辻
議員、
先生と申し上げますが、大変尊敬を申し上げております、この尾辻
議員と
一緒に財政金融
委員会の
理事を拝命しておりますので、他の常任
委員会に出向いていけないのが誠に残念でなりません。
厚生労働委員長としては、こうした本院の実情にも配慮をいたしまして、百年安心な
年金制度を本気で作る気がおありであったならば、
審議を秋の臨時
国会やあるいは来年の通常
国会まで延ばすことを我々に提案するのが本来期待された役割ではないでしょうか。
そうした配慮や意思に欠ける
委員長は、やはりこの重要な局面で
厚生労働委員長をお任せするわけにはまいりません。混乱と落胆、将来への悲観をもたらした
委員長の
責任は極めて重いものと言わざるを得ません。
ついでに申し上げますが、これは厚生
年金と
国民年金であります。やがて財政金融
委員会に国家公務員共済の
法案が、仮に、仮に今ここで
委員長の解任決議に絡んで議論しております
年金改革
法案本体が通った場合には財金に送られてくるわけですが、先般財務省に、我が党の財政金融部門
会議で、当然国家公務員共済もこういうものを出していただかないと議論ができませんよと申し上げたところ、プログラムだけで段ボール二十箱あると言っていました。すごいですね、どうしてそんな違うんですかね。やっぱりそういうことを我々は、きっちりと検証した上で
年金制度の改革論議をすることが本当に百年安心な
年金制度を作ることになるものと
思います。財務省は二十箱を出すというふうに言っておりますので、これを待って十分な議論をさせていただきたいものと思っております。
さて、さらに積立金運用に関する改革については、残念ながらほとんど議論をされてこなかったことも大いに憂慮されるべき問題であります。
〔
議長退席、副
議長着席〕
年金積立金運用基金の独立行政法人化
法案に対する対案も我が党の中でも作成しております。詳しいことは、これもまた後ほど申し述べますが、現在の
年金制度破綻の原因の一つが積立金の無駄遣いであるにもかかわらず、この問題を十分に議論することなく
強行採決したことは、
委員長の極めて重大な失態と言わざるを得ません。
更に言えば、
厚生労働省ではこのところ不祥事が続発しております。御承知のとおりであります。
これも後ほど詳しく申し述べますが、
厚生労働省がこういう事態を招いているにもかかわらず、その真相解明をすることもせず、どうして
年金制度改革
法案を
審議することができるのでしょうか。怪しげな不祥事を頻発させ、かつ真摯に反省しようともしない
厚生労働省が出してきた
法案について、きっと不適切なあるいは不正義な
内容が盛り込まれているのではないでしょうか。不祥事の真相解明がなされるまで、
委員会での
法案審議を待たせるのが
良識ある
委員長の取るべき
行動であったと私は
思います。
そういう観点からも、残念ながら、
国井委員長はもはやその職責を担うにはあたわずと申し上げざるを得ないところでございます。
さて、以上のような数々の問題を指摘させていただきました上で、
委員長に、(「明日までやれ」と呼ぶ者あり)ありがとうございます、あえて諫言を申し上げたいと
思います。
子いわく「由よ、汝にこれを知るを教えんか、これを知るをこれを知るとなし、知らざるを知らずとなせ」。論語、為政編の高名な一説であります。もう一回言います。子いわく「由よ、汝にこれを知るを教えんか、これを知るをこれを知るとなし、知らざるを知らずとなせ」。論語、為政編の高名な一説であります。
この意味するところは、(「もう一回」と呼ぶ者あり)もう一回ですか。子いわく「由よ、汝にこれを知るを教えんか、これを知るをこれを知るとなし、知らざるを知らずとなせ」。これは、(「もう一回」と呼ぶ者あり)じゃ、意味を申し上げてからもう一回言います。知らないことはきっぱりと知らないと言う勇気が必要である、知らないことを知っていると
思い込んでいるのはこの上もなく愚かで危険なことであると諭しております。「汝にこれを知るを教えんか、これを知るをこれを知るとなし、知らざるを知らずとなせ」。
決して
国井委員長だけじゃなくて、私
たち国会議員全員でありますが、先ほどお話し申し上げました
年金数理計算の実情を知っていた人はほとんどいないと
思います。
厚生労働省がまじめに
仕事はやっていたのかもしれませんが、まことしやかに計算して出してくるモデルケース等の、あるいはモデル世帯等の計算結果が正しいとどうして確信が持てるんでしょうか。
さて、治世に、治世というのは世を治めるという治世でございますが、治世にかかわる人は常に正しい知識に従って物事を判断すべきであり、誤った知識で判断してはならないということをその行間に込められた
言葉ではないかと
思います。
万有引力の発見者である十八世紀イギリスの偉大な物理学者、あのニュートン博士もこう言っております。私の持っている知識は大海の水の一滴にも及ばないと、こう謙虚に語っておられるのであります。
ギリシャの哲学者ソクラテスも、私が知るすべては何も知らないことだと、そう言っています。人は多くのことを知っていると
思い込んでおりますが本当にそうだろうかという、ソクラテスと弟子の問い掛けから始まった一節の中で述べられている、有名なソクラテスの無知の知というやつですね。無知は恥ではないんです。むしろ、知らないことを認めることに意味があるということを教えてくれているわけであります。
我々は、百年安心な
年金制度を作るということであれば、もう一度ゼロベースから、まさしく
与野党が同じテーブルに着いて議論を進めるべきではないかと、ソクラテスはそう教えてくれているような気がしてなりません。
現場や実務の実情も知らずに、いわんや
年金数理計算の中身も知らずに、それでよく百年安心の
年金制度などと言えたものだと、ただただ感心するばかりでございます。
さて、論語の学而編にはこういう一節もあります。孔子の高弟、高い弟、弟子でございますね、謹厳実直なことで知られる曽子の
言葉であります。曽子いわく「吾、日に三たびわが身を省みる。人のために謀りて忠ならざるか、朋友と交わりて信ならざるか、習わざるを伝えしか」。お分かりでしょうか。もう一度申し上げます。「吾、日に三たびわが身を省みる。人のために謀りて忠ならざるか、朋友と交わりて信ならざるか、習わざるを伝えしか」、
国井委員長、御理解いただけますでしょうか。
第一に、「人のために謀りて忠ならざるか」の「忠」とは、誠実、真心を尽くすの意味であります。「人のために謀りて忠ならざるか」でございます。人のために力を発揮する、一肌脱ぐといって、知らず知らずのうちに自分本位になってしまうことを戒めている一説だそうであります。
委員長、あなたの
委員会運営は本当に国家、
国民のためになっておりましたでしょうか。知らず知らずのうちに御自分本位、党利党略のためになっていませんでしたでしょうか。本当に公正中立に
運営されていたと言えるのでしょうか。「人のために謀りて忠ならざるか」でございます。
第二に、「朋友と交わりて信ならざるか」の「信」は、約束を守ることであります。(
発言する者あり)いずれは全部暗記できるようにしたいと
思います。この一説は四文字熟語にもなっております。「信」が「有る」と書いてすなわち朋友有信と申します。
国井委員長、御存じでありましょうか。
信義を守ることは人の道であります。せっかく約束しても不誠実では何にもならない。自分の都合で勝手に約束を放棄したりすることはもってのほかであると諭しております。
委員長、
委員長の
委員会運営は、朋友有信であったと自信を持っておっしゃることができるのでしょうか。
第三に、「習わざるを伝えしか」とは、習っていないこと、すなわち、生半可な知識を無
責任に他人に受け売りしなかったかという自省、自らを反省する教えであります。そういう安直な
行動は周囲の者に多大な迷惑を及ぼすことを示すと言っております。先ほどの「知らざるを知らずとなせ」の教えと共通するものでありますが、
委員長の
委員会運営においては、この
年金制度の実情や詳しい仕組みについて、「習わざるを伝えしか」になっていたのではないでしょうか。(
発言する者多し)
委員長、ちょっと。