○大塚耕平君 私は、
民主党・
新緑風会を代表して、
平成十六年度における公債の
発行の特例に関する
法律案及び
所得税法等の一部を
改正する
法律案に
反対する
立場で
討論を行います。
初めに、
所得税法等改正案について申し述べます。
本
法案には、投資促進を図るための租税条約締結に伴う所要の
改正や、
中小企業育成を企図したエンジェル税制の拡充など、賛意を示すべき項目も含まれてはおりますものの、幾つかの点で是正を要する
内容となっております。
第一に、
年金税制の問題です。
本案には、公的
年金等控除における
高齢者特例や老年者控除の廃止など、六十五歳以上の世代への
負担増を課す
内容が含まれています。諸控除縮小に伴う課税所得の
増加によって、
国民健康保険や介護保険の
保険料負担が
増加し、これらを含む
負担増は
年金受給額三百万円程度の世帯で約二十万円という試算が示されています。
財政難の折から、
高齢者世代にも相応の
負担をしていただくことは必要だと思います。しかし、今回の
年金税制
改革案が医療や介護の
保険料に
影響を及ぼすことは、財務省、厚生労働省とも本案が
提出された後に気が付いた次第です。準備不足、調整不足と言わざるを得ません。過度な
負担増、所管
省庁間での意思疎通の欠落に加え、これから正に
年金制度改革論議をスタートさせようとしていることをかんがみると、本案の
内容は拙速の感を否めず、
賛成するわけにはまいりません。
第二に、不動産譲渡に係る損益通算廃止についてです。
本案では、当該措置を本年一月までさかのぼって適用することとしておりますが、これは税制における不利益不遡及の原則に反するものであります。毎年年度末には損益通算制度を
前提とした土地取引が行われてきたことを考えますと、十分な周知期間もなく打ち出され、かつ税制の基本原則に反する本案の
内容は、拙速なだけではなく、
関係者にとってはだまし討ちとも言える
対応であり、
政府の見識を疑わざるを得ません。
以上のように、不適切な
内容が含まれている上に、懸案と思われる諸施策に取り組む
姿勢も見られません。例えば、
景気対策としてのローン利子控除制度等の有効な消費喚起策は盛り込まれていません。また、納税者意識を希薄化させる
消費税の総額表示制度を改めようという動きも見受けられません。租税
特別措置の抜本的改廃の必要性が叫ばれて久しいものの、今回もそうした
対応は行われず、公平、公正、簡素な税制を目指す
内容とはなっていません。
以上、様々な点から本案に
反対するものであります。
次に、公債特例
法案に
反対する
理由を申し述べます。
本
法案は、
所得税法等改正案がまともに見えてくるほど余りにもひどい
内容と背景を抱えております。現下の
財政状況を考えれば、無駄な
歳出を
削減する
努力が最大限行われていることが特例公債
発行の大
前提と言えます。しかし、
歳出における合理化、効率化、
削減の余地はまだまだ多く、
歳出官庁の
努力は不十分であり、三十兆九百億円もの特例公債を
発行するに足る
予算とは思えません。
また、本案には、
年金事業等の事務費を
保険料で賄うことを認める特例措置を一年延長することが含まれております。こうした
対応を認めるには、
社会保険庁が最大限の経費
削減努力をすることが当然の
前提となりますが、実態は全く逆であり、同庁による
年金保険料の
無駄遣い、流用の例は枚挙にいとまがありません。特例措置の延長は到底認めることができません。
一昨日の
財政金融委員会では、
年金相談施設
建設費という摩訶不思議な名目で多額の
予算が計上されていることを指摘しました。その際、
社会保険庁次長は、相談員の使うブース設置のためという
答弁をしましたが、その後の調べで、当該
予算は各地の新庁舎
建設のための費用の一部だということが判明しました。このような虚偽
答弁を行う幹部が跳梁ばっこする
社会保険庁の事務費を賄うために、特例措置を延長することには全く同意しかねます。
谷垣
大臣は、保険は
事業であり、
事業経費を
事業収入から賄うのは当然という
答弁を繰り返しておられますが、その考え方に基づけば、早晩、
医療保険や介護保険でも同じことが起きる
可能性があります。
それとも、
保険料収入から充当する
事業経費の割合に厳しいシーリングを設けることで国庫
負担を軽減し、かつ
社会保険庁の
無駄遣いにもメスを入れるという一石二鳥をねらっているのでしょうか。
衆議院での審議も含め、そういう点に関する谷垣
大臣の考え方や決意を聞くことはできませんでした。谷垣
大臣には、更に熟慮を重ね、十分な
説明責任を果たすことを求めたいと思います。
また、公債特例法の
前提となっている今後の
経済見通しに関する
内閣府の真っ赤な虚偽
答弁も目に余るものがあります。
内閣府は、二〇一三年度にプライマリーバランスを黒字化できると主張していますが、
財政金融委員会の審議において、その
前提として、二〇〇七年度から三年間にわたって
消費税率を引き上げることを想定していたことが判明しました。去る三月十一日の
予算委員会において、モデル推計上、
消費税率は変えていないとした
内閣府統括官の
発言は虚偽
答弁であり、
国会審議を冒涜するものであります。
その一方、既に本席を退席されましたが、竹中
大臣が三月十八日の
財政金融委員会において、モデルや推計の詳細を公開することに同意しました。それ自体は竹中
大臣の英断と言えます。
評価すべき点は
評価申し上げたいと思います。しかし、公開に同意してから既に一週間以上が過ぎています。データや方程式を印刷するだけのはずですが、再三の資料督促に対して、
内閣府は、今作業中ですと言うばかりです。今日の午前中に
内閣府から掛かってきた電話では、いつごろ公開できるか分かりませんということです。そうした言いぶりからは、現在、推計をやり直していることが歴然としており、
予算案や公債特例法の
前提である
政府の
経済見通しの信頼性は地に落ちたと言わざるを得ません。
内閣府を所管する竹中
大臣には、本席にはおられませんが、大いに反省を求めるとともに、
経済見通し担当部署の事務
体制を抜本的に
見直していただきたいと思います。
以上のとおり、公債特例法の
内容及び背景は余りにもずさんであり、とても
賛成できる代物ではありません。
谷垣
大臣、竹中
大臣には、健全かつ公正な
財政運営を実現することを期待するとともに、本席を既に退席したことが大変残念でございますが、小泉首相には、もう少しまじめに
財政や
経済見通しの詳細を理解しようとする
努力をすることを求めて、私の
反対討論を終わります。(
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