○
川橋幸子君 私は、民主党・新緑風会を代表し、ただいま
議題となりました
平成十四年
度決算について、
総理及び
関係大臣に
質問いたします。
最初に、
決算の
早期審査について
質問いたします。
「
決算の
審査に当たっては、」「
国会が議決した
予算及び
関係法律が適正かつ
効率的に
執行されたかを初め
決算全般について
審査しあわせて
政策の
実績批判を行なうものとする。」、また、「
審査の結果を
国会の
予算審議及び
立法に
反映させる」。この文章は何と今から四十二年前の昭和三十七年の
参議院決算委員会で申し合わされたものですが、正に今の
状況にぴったりと当てはまるものであります。ごく当たり前のことでありながら、私たちはかくもその
実現に長い時間を要していることをまず反省しなければならないと思います。
今年は
参議院選挙の年であります。
参議院の
独自性は
決算重視にあり、その
役割を十分発揮しないままにいたずらに
参議院無用論にくみするのは、
国会が自らの怠慢を
世論迎合のポピュリズムにすり替えるものであると思います。
昨年の
通常国会におきましては、三十五年
ぶりに会期内における
決算審査が終了いたしました。今年は更に
審査内容を充実し、次
年度予算へ
反映させるための
具体化に、本院は、与野党を超えて取り組むべき年であると思います。
その
前提として、まず
決算の
国会への
早期提出を
実現することが必要であり、昨年、
委員会及び本
会議におきまして、
総理は二度にわたって、十一月二十日前後に
提出すると約束しておられます。今年秋には約束が実際に果たされることを期待いたしまして、
総理から確認の御
答弁をお願いいたします。
次に、
福祉施設の売却、処分について
質問をいたします。
参議院決算委員会は過日、五年
ぶりに
実地視察を行い、旧
勤労者リフレッシュセンター・スパウザ小田原、現
ヒルトン小田原リゾート・アンド・スパを訪問し、私も参加いたしました。
昨年の
決算審査においては、総
工費四百五十五億円に上るこの
施設が五十分の一の八億五千万の安値で売却されることが問題となりましたが、その後この
施設は、今年二月一日以降、年間四億三千万の賃料で、
譲渡先の
小田原市から
民間のホテルに運営委託されているという経緯をたどっております。
参加いたしました
委員一同の感想は、率直に言ってすごく立派な
施設という感じだというものでありました。私も、正に
バブル期の遺産との思いを強くしたところでございます。
様々な問題がありますが、ここでは、
労働保険特別会計から巨額な
出資金を受けて建てられたこの
施設をなぜ破格の値段で売り急がなければならなかったのかという問題に焦点を当てて
考えてみたいと思います。
雇用・
能力開発機構の
説明によると、第一に、
平成十三年十二月十九日に
閣議決定された
特殊法人等整理合理化計画によって、遅くも十七
年度中の廃止が決められたことから、急ぎ売却する必要に迫られたこと。第二に、元々この
施設は
公益目的を重視し、とりわけ
中小企業の
勤労者の
福祉目的で建設された
施設であり、これを、今回の
譲渡に当たり、
不動産投資の尺度となる
収益還元法で評価したために
不動産評価額が総
工費の四%にまで激減してしまったこと。第三に、
譲渡先が
地方公共団体の場合は、
公共性の
確保や
従業員の再
雇用を条件として、五割まで減額することが認められており、結果として、
価格は更に半減して総
工費の二%になったということでした。
すなわち、
公益性及び
公共性という二重の意味での公の
施設であることの要素が
施設の
譲渡価格を低下させたという
説明でありますが、実際には再
雇用の
確保も十分ではなく、こうした
説明に
国民は到底納得できるものではありません。
小泉総理は、
平成十三年四月の
就任直後から、
骨太方針を掲げて各省に
改革断行を指示されました。官から民へ、民でできるものは民でという
整理合理化方針を打ち出されましたが、現場ではこのように安値売り急ぎという
事態が生じたわけです。大
改革の前にはこの
程度のことは仕方がない、あるいは
公共性の
確保はもう問題ではないというふうにお
考えなのでしょうか。私には、政治主導、官邸主導の名の下、
内閣の側からはずさんな丸投げ指示がなされ、各省の側には安易な指示の丸受け体質が生じ、
国民が被るであろう損害についてはだれも真剣に
考えようとしなかった、すなわち政治と行政のもたれ合い、無責任がこのような結果をもたらしたとしか思えないのです。
今後は、赤字が膨らんでいるグリーンピアなど多数の
年金福祉施設の売却といった大きな問題を控えております。
スパウザ小田原は、シンボリックな意味で、ほんの一例にすぎません。今後の
施設処分に当たり、どのような姿勢で臨むのか、
総理及び厚生労働大臣の
所見を求めます。
次に、
税収見積りについて
質問します。
バブル崩壊後、毎年のように
税収の過大な
見積りが繰り返されており、十四年
度決算においても当初
予算に比べて約三兆円の
税収不足が生じました。本院においては、
税収見積りの
精度向上について再三
警告決議を発し、その都度
財務大臣は努力すると
答弁しておられましたが、その御
答弁どおりにいったためしはなかったように思います。
税収不足を補うために、十四
年度末の公債残高は約四百二十一兆円に上り、公債依存度は四一・八%もの高水準に達しております。日本の国家
財政は借金
財政だと言って過言ではありません。
財政再建のためには、まず
税収の正確な
見積りが不可欠であります。改めて、どうして
税収見積りの
精度向上を図るおつもりなのか、具体的な
取組について
財務大臣の見解を求めます。
平成十三
年度、
総理は
国債発行額の三十兆円枠を公約され、引き続き十四
年度もこれを
目標とすることを
骨太方針の中に明記されました。しかし、この
目標は、十三
年度は辛うじて見せ掛けだけは達成したものの、十四年
度決算における
国債発行額は三十五兆円と
目標を大幅に超過し、三十兆円枠はわずか一年で破綻しています。この問題につき、昨年、衆議院
予算委員会で
総理は、この
程度の公約違反は大したことではないと
発言をされ、ひんしゅくを買ったことはまだ記憶に新しいところでございます。改めて十四年
度決算の数字をごらんになり、大したことではないというお気持ちに今も変わりはないのでしょうか、
お尋ねいたします。
次に、
改革の痛みについて
質問します。
平成十四
年度は
総理御
就任二年目の年でした。
デフレ経済が
進行する中で、
就任当初の
改革なくして景気
回復なしというスローガンが
改革なくして成長なしへと微妙に修正され、
改革には痛みを伴うが我慢してほしいというメッセージが
国民に伝えられました。しかし、いつまでどんな痛みを我慢すれば暗いトンネルの出口が見えるようになるのかといった
説明がなく、多くの
国民は深いいら立ちを感じています。
平成十四
年度の痛みの
程度はどのようなものであったのか、また今後どのくらい我慢が続きそうなのか、数字を挙げて検証してみたいと思います。
十四
年度の
日本経済は、マイナス成長であった十三
年度に比べればやや持ち直したものの、失業率は十三
年度が五・二%、十四
年度は過去最悪の五・四%の数字を更新しております。また、
雇用の質も大きく変わりました。
雇用が安定せず、労働条件に恵まれず、
社会保険の適用もない非正規
雇用が急増し、就業構造基本
調査によれば、男性は
平成九年の一〇・一%から十四年には一四・八%へと五割の
増加、女性は同じく四二・二%から五〇・七%へと過半数を上回るようになり、女性が働こうとすると正社員になれる人は二人に一人というのが実情であります。
総理は、
骨太方針でサービス分野を中心とする五百三十万人の
雇用創出を掲げ、去る一月二十一日の衆議院本
会議では、二〇〇三年上期を二〇〇〇年上期と対比すると、全産業で百五十七万人の
雇用減がある一方、サービス業では百五十五万人の
雇用増があり、全体では二万人減となっていると
答弁されましたが、聞き方によりましては、サービス業で
雇用が伸びているのだから心配はないという楽観的な認識を示されているようにも感じられます。しかしながら、サービス業における
雇用の質は、先ほど述べたように、非正規
雇用の割合が非常に高いことが特徴です。
総理は、本当のところは労働市場の実態を御存じないばかりか、余り関心がないのではないでしょうか。
最近、景気動向に強気の
報告をされておられる竹中経済
財政担当大臣も、お金と物と情報の経済には関心があっても、人の経済にはとんと御関心が薄いように感じられます。日本も
雇用増なき景気
回復の時代に入ったという感があります。
雇用政策は、これまでの企業単位の内部労働市場を
対象とするのではなく、個人個人を
対象とする外部労働市場を重視すべきではないでしょうか。
以上、
雇用面における痛みの
程度とその
内容についてるる述べましたが、
総理及び経済
財政担当大臣はどのような
所見をお持ちなのか、お伺いいたします。
次に、若年失業について
質問します。
失業問題の中でも、とりわけ若年失業の問題が日本の将来にとって重大になってきています。昨年私は、
参議院における補正
予算審議の際、パネルを使用して若年失業が深刻化している現状を訴えさせていただきました。私の問題提起に
閣僚の方々はどれだけ関心を持ってくださったのでしょうか。
本日は数字で
説明いたしますと、
平成十五年三月の大学卒業者の就職率は五五%、進学も就職もしていない卒業者が二二%。
バブル期平成二年の就職率が八一%であったことを
考えますと、正に隔世の感があります。若者にとりましては、
雇用崩壊どころか人生の夢の崩壊になりかねないような
状況です。
次世代の人材が育たず、結婚しない若者が増え、
少子化に拍車が掛かり、
年金、医療の支え手が減り、犯罪
増加の
社会不安につながりかねない
状況です。日本が今こうした
状況にあることを、政治家を始め、経済、教育のリーダーの皆様は分かっておられるのかどうか、多数の
国民が心もとなく思っております。
今の若者は好んでフリーターになっているのでしょうか、それとも余儀なくされている方が多いのでしょうか。また、フリーターになった若者が再び正規
雇用のチャンスを得ようとしてチャレンジした場合、その機会を得るのはかなり困難でしょうか、あるいはそれほど難しくはないのでしょうか。あえてアンケート
調査のような
質問をいたしますが、
総理及び文部科学大臣の率直な御回答をいただきたいと思います。
最後に、
ODA、
政府開発援助について
質問します。
昨年の
決算審査では、外務省不祥事について議論が沸き、また、
会計検査院の
決算報告でも毎年、不適切な
ODA、効果が発現していない
ODAが
指摘されており、
ODAの
透明性、
効率性の
確保が強く求められていることはもちろんであります。
会計検査院と
政府の一致した
取組が必要であることは言うまでもありません。
ところで、二〇〇一年の
ODA実績は、日本は十一年
ぶりに首位を転落いたしました。首位はアメリカであります。このところ私は、むしろ、
ODAにおける国益重視が強調され、あるいは
財政難を理由とする
ODA予算を減額することに、哲学のない
我が国外交の姿を国際
社会にさらすことになるのではないかという思いがしております。決して
我が国にとって得策ではないと
考えています。
今週二月二十四日、この本
会議場にコフィ・アナン国連事務総長をお迎えし、大変感動的な
国会演説を伺いました。このうちメディアが大きく報じたのは、イラクの復興支援について自衛隊
派遣を含む日本の貢献に対する事務総長からの謝辞でしたが、演説自体はもっと広範なものでした。国連の歴史の中で最も困難な年の
一つであるこの時期に、国連が担う使命とそれを遂行するための努力など、心にしみる言葉の数々があったと思います。
特に私が注目したのは、日本の技術力と人間の
安全保障への重視なくして、世界がミレニアム開発
目標を達成することはないというくだりです。ミレニアム開発
目標、その第一に掲げられているのが極度の貧困の撲滅です。世界人口約六十億人中、一日一ドル未満で生活する人々が二〇%、十二億人もおります。
しかし
政府は、こうした地球規模の国連開発
目標について、直接
国民に訴えようとはしない。マスコミも、無駄な
ODAは報じても、感謝される
ODAは報じない。このような日本人の自国中心、自分中心の様子を故マザー・テレサは無関心と表現したそうです。国連開発
目標や人間の
安全保障に関する
ODAについて、日本としての数値
目標を示すべき時期にあると私は
考えます。
最後に、
ODAについての
総理の御見解を伺い、私の
質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小泉純一郎君
登壇、
拍手〕