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2004-01-19 第159回国会 参議院 本会議 第1号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年一月十九日(月曜日)    午前十時一分開議     ━━━━━━━━━━━━━議事日程 第一号   平成十六年一月十九日    午前十時開議  第一 議席指定  第二 国務大臣演説に関する件     ━━━━━━━━━━━━━ ○本日の会議に付した案件  一、日程第一  一、議員井上吉夫君逝去につき哀悼の件  一、特別委員会設置の件  一、日程第二      ─────・─────
  2. 倉田寛之

    議長倉田寛之君) 第百五十九回国会は本日をもって召集されました。  これより会議を開きます。  日程第一 議席指定  議長は、本院規則第十四条の規定により、諸君議席をただいまの仮議席のとおりに指定いたします。      ─────・─────
  3. 倉田寛之

    議長倉田寛之君) 議員井上吉夫君は、昨年十月二十四日逝去されました。誠に痛惜哀悼の至りに堪えません。  同君に対しましては、議長は、既に弔詞をささげました。  ここにその弔詞を朗読いたします。    〔総員起立〕  参議院は わが国 民主政治発展のため力を尽くされ 特に院議をもって永年の功労を表彰せられ さき予算委員長 農林水産委員長等要職に就かれ また国務大臣としての重任にあたられました 議員正三位勲一等井上吉夫君の長逝に対し つつしんで哀悼の意を表し うやうやしく弔詞をささげます     ─────────────
  4. 倉田寛之

    議長倉田寛之君) 藁科滿治君から発言を求められております。この際、発言を許します。藁科滿治君。    〔藁科滿治登壇
  5. 藁科滿治

    藁科滿治君 本院議員井上吉夫先生は、昨年十月二十四日午前三時二十一分、鹿児島出水市の病院で心不全のため逝去されました。享年八十歳でありました。  先生は、三年ほど前に脳梗塞を患われましたが、持ち前の強い意志と国政への熱き思いにより、見事に議員活動に復帰されたのであります。  しかし、昨年四月、再び体調を崩され、残念ながら今期限りでの勇退を御決意されるというやむなきに至り、我々議員を始め、関係者一同は、今までの数々の御功績思いをはせ、それを心より惜しんでいたやさきの御訃報でありました。  改めて今、在りし日の先生のお姿が目に浮かび、様々なことが脳裏をよぎります。  私は、ここに皆様の御同意をいただき、議員一同を代表して、正三位勲一等井上吉夫先生のみたまに対し、謹んで哀悼言葉をささげます。  井上吉夫先生は、昭和四十九年七月、参議院議員として初当選以来、実に当選五回、議員在職二十九年三か月の長きにわたる議員活動を続けてこられました。  その間、農林水産委員長予算委員長を歴任されたほか、北海道開発庁長官沖縄開発庁長官国土庁長官を務められ、国務大臣としての重責も果たしてこられました。  また、所属する自由民主党におかれては、参議院政策審議会長参議院議員会長という要職を歴任され、正に参議院の重鎮として大きな存在でありました。  平成十一年十一月には、勲一等旭日大綬章受章の栄に浴されたほか、同年二月には、本院より永年在職議員として表彰されるなど輝かしい実績と栄誉を残されました。  しかし、井上吉夫先生真価は、こうした輝かしい経歴のみでは語り尽くせません。  先生は、山と土を愛する気さくで飾り気のない、真の薩摩隼人でありました。また、常に人への感謝を忘れず、自己に厳しく他人に優しい人でした。  このお人柄は、愛情にあふれ、また自ら率先して働くことを家風とした御家庭によってはぐくまれ、同時に、議員になられる以前からの地元青年団での活動や自ら営む林業、農業の実体験を通じて培われたものであります。  この質実にして剛健、しかも他人への限りない心遣い、愛情に裏付けられた人生哲学によって、我が国の将来を的確に見据えた政治ビジョンを構築し、日々この実現に努めてこられたところに先生政治家としての真価があったと言ってよいでありましょう。  先生は、いつもこうおっしゃっておられました。  私は、未来バラ色などとは言わないことにしている。日本世界の現在、未来をありのまま、シビアに考えようといつも言っています。同時に、人間は、これからお互いに奪い合うというのではなく、諸外国との協力を含めどうしたらお互いが幸せになれるか、もっとゆとりを持って、しかし、しっかりと考えていく。そういう姿勢が今は求められているし、私の政治家としての姿勢でもありますと。  つくづく惜しい方を失った、もっと活躍していただきたかった。その思いで一杯です。  先生は、大正十二年三月一日、鹿児島出水市に生をうけられました。代々、地元素封家として知られる井上家の一人息子でありました。  しかし、地主という立場ではあっても、井上家の家訓は勤勉、節約であり、井上少年も小学生のころから農作業を率先して行っていたと聞いております。  その後、熊本高等工業学校、現在の熊本大学工学部を御卒業になり、日本鉱業に就職されますが、一年ほどで戦時召集を受け、当時の満州の国境守備隊に配属、つらい軍隊生活だったそうでありますが、持ち前の根性と体力で乗り切り終戦を迎えられました。  そうした戦争の体験もあってか、復員後は会社に戻らず、地元農林業に従事する傍ら、地元青年団のリーダーとして、戦争で疲弊した郷土復興に若い情熱を注ぐことになったのであります。だれの話にも耳を傾け、自分に何ができるか一生懸命考え、特に社会的に弱い立場にある人には熱心に対応したと伺っております。それが先生の生き方であり、その人間性に人は信頼を寄せたのでありました。そして、昭和二十六年、郷土人々の強い要請を受け出水町議会議員に立候補、見事初当選を果たし、政治家井上吉夫の第一歩を踏み出されました。  その後、昭和三十八年、鹿児島県議会議員当選、同県議会議長を経て、昭和四十九年七月、参議院議員として国政に参加されることになったのであります。  参議院議員になられてからは、議員宿舎で夜遅くまで政策の勉強を続けられ、その活動は、中小企業、福祉、教育、離島、過疎対策など幅広い分野に広がっていきました。  先生は、参議院議員になりたての当時を振り返り、こう言っておられます。  私は、最初の議員生活において、何よりも心掛けたのは、国会議員として必要な知識を身に付け、政策に強くなり、率先していろいろな問題に取り組み、農政なら農政において参議院井上はどう考えるんだといつも言われるようにしなければならないということですと。  その幅広い活動の中で先生らしい御功績と言えるものが幾つもあります。  その一つは、平成十年二月、第百四十二回国会における総理大臣施政方針に対する自由民主党参議院議員会長としての代表質問であります。先生は、今日なお問題となっております北東アジア地域の安全の確保北朝鮮における日本人拉致疑惑への適切かつ迅速な対応必要性などにいち早く言及されたのであります。  常任委員会委員長としての御活躍も見事でありました。特に、平成五年から務められた予算委員長は、細川連立政権の発足により、これまでとは異なる野党という立場での御就任でありました。与野党の対立が緊迫、激化し、本予算会期内成立が危ぶまれる状況の中にあって、時には、委員長見解の形で与野党の歩み寄りを模索されるなど、委員会の円滑な運営に大変な御尽力をされたことに対し、強い感銘を受けたことを覚えております。  さらに、北海道開発庁長官時代には、北海道十勝岳の火砕流・泥流被害対策とその後の防災事業に尽力され、国土庁長官時代には、当時の内閣の最重要課題一つであった地域戦略プラン取りまとめ役として活躍されたことは記憶に新しいところであります。  また、先生は、国際化が急速に進む中にあって、議員交流重要性を深く認識されておられました。  平成六年九月に、伝統ある参議院日仏友好議員連盟会長就任され、両国間の対話協力強化、良好な経済関係の構築、文化交流発展に力を注がれました。さき議員連盟の総会にも、体調が十分とは言えない中、御出席になり、熱心に御発言されたことに理事として出席いたしました私は大変感動を覚えました。  このように、先生は偉大な政治家でありましたが、御家庭においてもまた、模範的な夫、父親であったと伺っております。  昭和二十八年に御結婚、二男四女の子宝に恵まれました。  先生は多忙な議員生活の中においても、まず自ら範を示す必要があるとして、時間を見付けては一家総出で山へ行ったと言われています。父が植え育てた森を子が守り、それを後の世代につなげていく、そうした人と森、人と山との関係、営みを家族と一緒に体験することが必要だとの信念からでありました。  このような井上吉夫先生政治哲学が端的に表れている言葉を最後に引用させていただきます。  四年ほど前、先生参議院日米防衛協力のための指針に関する特別委員長をしておられたときのことに触れた著述からの一節でございます。  近年、政府危機管理機能強化の論議を高めていることは大いに意義あることである、そして私は、森林の恩恵を多大に受けて営まれている国民生活を守るという意味で、森林の荒廃を防ぎ、豊かな森作りを行うことは一大国民政治課題であり、国防事業であると考えると。  先生ならでは国防観安全保障観であります。  巨星落つという例えがありますが、井上吉夫先生は正に巨星変じて人々に尊び敬われる巨大な樹木、巨樹に例えられましょう。  御遺族、御親族の皆様方の胸中はいかばかりかと察すると痛恨の極みではありますが、巨樹は倒れ土に帰るとも、その精神は新たに芽生える命に受け継がれ、とわに生き続けるものであります。  私どもも、お別れはつらく名残は尽きませんが、今は亡き井上吉夫先生をしのび、ここに謹んでその御冥福をお祈り申し上げ、参議院議員一同を代表してのお別れ言葉といたします。      ─────・─────
  6. 倉田寛之

    議長倉田寛之君) この際、特別委員会設置についてお諮りいたします。  災害に関する諸問題を調査し、その対策樹立に資するため、委員二十名から成る災害対策特別委員会を、  沖縄及び北方問題に関する対策樹立に資するため、委員二十名から成る沖縄及び北方問題に関する特別委員会を、  金融問題及び経済活性化に関する調査のため、委員二十五名から成る金融問題及び経済活性化に関する特別委員会を、  政治倫理確立及び選挙制度に関する調査のため、委員三十五名から成る政治倫理確立及び選挙制度に関する特別委員会を、  また、イラクにおける人道復興支援活動及び安全確保支援活動等並びに武力攻撃事態等への対処に関する調査のため、委員四十名から成るイラク人道復興支援活動等及び武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会を、 それぞれ設置いたしたいと存じます。  まず、災害対策特別委員会沖縄及び北方問題に関する特別委員会、金融問題及び経済活性化に関する特別委員会並びに政治倫理確立及び選挙制度に関する特別委員会設置することについて採決をいたします。  以上四特別委員会設置することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  7. 倉田寛之

    議長倉田寛之君) 御異議ないと認めます。  よって、災害対策特別委員会外特別委員会設置することに決しました。  次に、イラク人道復興支援活動等及び武力攻撃事態等への対処に関する特別委員会設置することについて採決をいたします。  本特別委員会設置することに賛成諸君起立を求めます。    〔賛成者起立
  8. 倉田寛之

    議長倉田寛之君) 過半数と認めます。  よって、本特別委員会設置することに決しました。  本院規則第三十条の規定により、議長は、議席に配付いたしました氏名表のとおり特別委員を指名いたします。     ─────────────    議長の指名した委員は左のとおり ○災害対策特別委員       大仁田 厚君    太田 豊秋君       加治屋義人君    柏村 武昭君       小泉 顕雄君    田浦  直君       田村 公平君    鶴保 庸介君       森下 博之君    山下 善彦君       今泉  昭君    大渕 絹子君       勝木 健司君    藤原 正司君       本田 良一君    簗瀬  進君       白浜 一良君    日笠 勝之君       大沢 辰美君    大門実紀史君 ○沖縄及び北方問題に関する特別委員       入澤  肇君    後藤 博子君       伊達 忠一君    中川 義雄君       仲道 俊哉君    西田 吉宏君       西銘順志郎君    三浦 一水君       森山  裕君    伊藤 基隆君       木俣 佳丈君    榛葉賀津也君       谷林 正昭君    山根 隆治君       風間  昶君    遠山 清彦君       紙  智子君    小泉 親司君       大田 昌秀君    中村 敦夫君 ○金融問題及び経済活性化に関する特別委員       河本 英典君    岸  宏一君       小林  温君    清水 達雄君       関口 昌一君    田中 直紀君       野上浩太郎君    林  芳正君       日出 英輔君    福島啓史郎君       森田 次夫君    吉村剛太郎君       浅尾慶一郎君    海野  徹君       大江 康弘君    大塚 耕平君       大脇 雅子君    櫻井  充君       直嶋 正行君    平野 達男君       松岡滿壽男君    加藤 修一君       千葉 国男君    池田 幹幸君       小池  晃君 ○政治倫理確立及び選挙制度に関する特別委員       阿南 一成君    愛知 治郎君       有村 治子君    岩井 國臣君       岩城 光英君    尾辻 秀久君       扇  千景君    岡田  広君       柏村 武昭君    木村  仁君       沓掛 哲男君    陣内 孝雄君       田村 公平君    段本 幸男君       藤井 基之君    矢野 哲朗君       吉田 博美君    小川 勝也君       佐藤 道夫君    齋藤  勁君       高嶋 良充君    平田 健二君       松井 孝治君    円 より子君       山下洲夫君    山本 孝史君       藁科 滿治君    木庭健太郎君       森本 晃司君    山本  保君       井上 哲士君    池田 幹幸君       八田ひろ子君    又市 征治君       山本 正和君 ○イラク人道復興支援活動等及び武力攻撃事態等  への対処に関する特別委員       有村 治子君    大野つや子君       小泉 顕雄君    後藤 博子君       清水 達雄君    田浦  直君       田村 公平君    常田 享詳君       中原  爽君    西銘順志郎君       野上浩太郎君    福島啓史郎君       藤野 公孝君    舛添 要一君       松村 龍二君    三浦 一水君       森田 次夫君    山内 俊夫君       山崎  力君    池口 修次君       岩本  司君    神本美恵子君       佐藤 道夫君    齋藤  勁君       榛葉賀津也君    田村 秀昭君       高橋 千秋君ツルネン マルテイ君       辻  泰弘君    森 ゆうこ君       若林 秀樹君    荒木 清寛君       高野 博師君    遠山 清彦君       森本 晃司君    池田 幹幸君       小泉 親司君    吉岡 吉典君       大田 昌秀君    椎名 素夫君     ─────────────
  9. 倉田寛之

    議長倉田寛之君) これにて休憩いたします。    午前十時二十一分休憩      ─────・─────    午後三時四十一分開議
  10. 倉田寛之

    議長倉田寛之君) 休憩前に引き続き、会議を開きます。  日程第二 国務大臣演説に関する件  内閣総理大臣から施政方針に関し、外務大臣から外交に関し、財務大臣から財政に関し、竹中国務大臣から経済に関し、それぞれ発言を求められております。これより順次発言を許します。小泉内閣総理大臣。    〔内閣総理大臣小泉純一郎登壇、拍手〕
  11. 小泉純一郎

    内閣総理大臣小泉純一郎君) 昨年十一月に行われた総選挙において国民の信任をいただき、再び内閣総理大臣の重責を担うことになりました。構造改革なくして日本の再生と発展はないというこれまでの方針を堅持し、「天の将に大任をこの人に降さんとするや、必ずまずその心志を苦しめ、その筋骨を労せしむ」という孟子の言葉を改めてかみしめ、断固たる決意を持って改革を推進してまいります。  私は就任以来、民間にできることは民間に、地方にできることは地方にとの方針で改革を進めるとともに、国際社会の一員として我が国が建設的な役割を果たすことに全力を傾けてまいりました。  我々が目指す社会は、国民一人一人や、地域、企業が主役となり、努力が報われ再挑戦できる社会であります。現場の知恵や創意工夫は、日本潜在力を生かした経済成長につながります。国は、国民の安全と安心を確保しなければなりません。国民、地域、企業の努力を支援するとともに、科学技術を振興し我が国の将来の発展基盤を整備いたします。国際社会にあっては、世界の平和と繁栄を実現するため積極的に貢献いたします。  本年は、これまでの改革の成果を生かすとともに、郵政事業道路公団民営化地方分権を進める三位一体の改革年金改革など、これまで困難とされてきた改革を具体化し、日本再生の歩みを確実にする年であります。  私は、自由民主党、公明党による連立政権の安定した基盤に立って、改革の芽を大きな木に育て、自信と誇りに満ちた、世界から信頼される国を実現したいと思います。  昨年十一月、イラク復興支援に中心的な役割を果たす中で殉職された奥克彦大使、井ノ上正盛一等書記官のお二人に改めて心から哀悼の意を表します。  イラクに安定した民主的政権ができることは、国際社会にとっても中東にエネルギーの多くを依存する我が国にとっても極めて重要であります。国際社会がテロとの闘いを続けている中で、テロに屈してイラクをテロの温床にしてしまえば、イラクのみならず、世界にテロの脅威が広がります。イラク人によるイラク人のための政府を立ち上げて、イラク国民が希望を持って自国の再建に努力することができる環境を整備することが国際社会の責務であります。  現在、三十七か国がイラク国内活動し、九十を超える国と国際機関支援に取り組んでいます。国連もすべての加盟国に対し、国家再建に向けたイラク人の努力を支援することを要請しています。  戦後、我が国は多くの国から援助を受けて発展し、今や世界の国々を支援する立場になりました。日本の平和と安全は日本一国で確保できません。世界の平和と安定の中に日本の発展と繁栄があります。イラク復興我が国は積極的に貢献してまいります。  その際、物的な貢献は行うが人的な貢献は危険を伴う可能性があるから他の国に任せるということでは、国際社会の一員として責任を果たしたとは言えません。資金協力自衛隊復興支援職員による人的貢献を車の両輪として進めてまいります。  資金面では、当面の支援として電力、教育、水・衛生、雇用などの分野を中心に総額十五億ドルの無償資金を供与するとともに、中期的な電気通信運輸等経済基盤の整備も含め、総額五十億ドルまでの支援を実施することとしており、真にイラク復興に生かされるよう努めてまいります。  人的な面では、イラクが必ずしも安全とは言えない状況にあるため、日ごろから訓練を積み、厳しい環境においても十分に活動し、危険を回避する能力を持っている自衛隊を派遣することとしました。武力行使はいたしません。戦闘行為が行われていない地域で活動し、近くで戦闘行為が行われるに至った場合には活動の一時休止や避難等を行い、防衛庁長官の指示を待つこととしています。安全確保のため、万全の配慮をいたします。  自衛隊は、海外の平和活動で大きな成果を上げており、イランでも大地震による被災者支援のための物資の輸送に当たりました。イラクにおいても、現地社会と良好な関係を築きながら、医療、給水、学校等公共施設の復旧・整備や物資の輸送など、イラクの人々から評価される支援ができると考えています。  自衛隊は、既に現地において人道復興支援活動に着手していますが、今後、現地の情勢や治安状況を注視しつつ、本格的な支援活動を行ってまいります。困難な任務に当たる自衛隊員に敬意を表します。  世界各国が協力してイラク復興支援するよう、今後とも外交努力を重ねるとともに、中東和平に尽力し、アラブ諸国との対話を深めます。  アフガニスタンにおけるテロとの闘いは依然として続いております。昨年十二月にリビアが大量破壊兵器開発計画の廃棄と即時の査察受入れを決定したことは、大きな意義を有するものです。北朝鮮を含め、他の国にも責任ある対応を強く期待します。テロの防止、根絶及び大量破壊兵器の不拡散に向けた国際的取組に引き続き積極的に参画してまいります。  日本経済は、企業収益が改善し、設備投資が増加するなど、着実に回復しています。経済成長はこの一年半連続で実質プラスになり、名目でも過去半年プラスとなりました。雇用情勢は厳しいものの、求人が増加するなど持ち直しの動きがあり、物価にも下げ止まりの兆しがあります。平成十五年度の補正予算は、十四年ぶりに国債を増発することなく編成しました。国主導財政出動に頼らなくても、構造改革の成果が現れています。  地域の再生は、元気な日本経済を実現するかぎであります。民間の活力と地方のやる気を引き出す金融、税制、規制、歳出の改革を更に加速し、政府は日銀と一体となってデフレ克服経済活性化を目指してまいります。  民間にできることは民間にとの方針の下、最大の課題は郵貯、年金を財源とする財政投融資を通じて特殊法人が事業を行う公的部門改革であるとの認識で行財政改革を進めてまいりました。  改革の本丸ともいうべき郵政事業民営化については、現在、経済財政諮問会議において具体的な検討を進めています。本年秋ごろまでに国民にとってより良いサービスが可能となる民営化案をまとめ、平成十七年に改革法案を提出します。  道路関係四公団については、競争原理を導入し、ファミリー企業を見直すとともに、日本道路公団を地域分割した上で民営化します。九千三百四十二キロの整備計画を前提とすることなく、一つ一つの道路を厳格に精査し、自主性を確保された会社が建設する有料道路と国自らが建設する道路に分けるとともに、抜本的見直し区間を設定しました。規格の見直しなどによる建設コストの徹底した縮減により、有料道路事業費を当初の約二十兆円からほぼ半分に減らします。債務は民営化時点から増加させず、四十五年後にはすべて返済します。また、通行料金を当面平均一割程度引き下げるとともに、多様なサービスを提供してまいります。このような改革は、民営化推進委員会の意見を基本的に尊重したものであります。今国会に関連法案を提出し、平成十七年度に民営化を実現します。  財政投融資については、郵貯、年金の預託義務を既に廃止するとともに、規模の圧縮を進め、平成十六年度当初計画の規模は、平成八年度の約四十兆円から半減し、二十兆円になりました。  百六十三の特殊法人のうち既に八割を、廃止、民営化独立行政法人化することにより、事業を徹底して見直し透明性を高め、評価を厳正に行うこととしました。特殊法人独立行政法人役員退職金は大幅に引き下げ、国家公務員並みといたします。  国家公務員の定員については、治安や入国管理など真に必要な分野で増員しつつ、全体として削減します。  公務員制度改革については、公務員が国民全体の奉仕者として職務に専念できるよう、具体化を進めます。  地方にできることは地方にとの原則の下、三位一体改革は大きな一歩を踏み出しました。平成十六年度に補助金一兆円の廃止、縮減等を行うとともに、地方の歳出の徹底的な抑制を図り、地方交付税を一兆二千億円減額します。また、平成十八年度までに所得税から個人住民税への本格的な税源移譲を実施することとし、当面の措置として所得譲与税を創設し、四千二百億円の税源を移譲します。平成十八年度に向け、全体像を示しつつ、地方の自由度や裁量を拡大するため改革を推進します。  現行特例法の期限後も引き続き市町村合併を推進するための措置を講じます。  道州制については、北海道が地方の自立、再生の先行事例となるよう支援してまいります。  構造改革国民の暮らしを変えつつあります。  世界最先端のIT国家に向け、高速インターネットは世界で最も速く、かつ、安くなり、株式取引に占めるインターネット取引の割合は三年間で六%から一九%に急成長しました。本年度末には、国の行政機関への申請や届出のほぼすべてを家庭や企業のパソコンから行えるようになります。技術革新と規制改革の効果が相まって、ICカードを使った定期券が普及し、電子タグを活用して店頭で食品の産地情報を提供する試みが始まっています。家庭のIT基盤整備につながる地上デジタルテレビジョン放送の普及を促進し、暮らしの中でITを実感できる社会を実現いたします。情報通信の安全対策を強化し、信頼性を高めつつ、電子政府を推進します。IT分野におけるアジアとの国際協力を推進してまいります。  廃棄物の発生を減らすため、消費者のみならず生産者が積極的な役割を果たす仕組みを、家電、自動車、パソコンなどの製品の特性に応じて整えてまいりました。身近なところでは、既にほぼすべての中央省庁食堂において生ごみのリサイクルを実施しています。トウモロコシやおがくずで作る食器などのバイオマス製品の試験利用も進められています。  香川県豊島では、多くの関係者の努力により、不法投棄により損なわれた美しい島を取り戻すための事業が始まっています。このような環境汚染を二度と起こさないため、できるだけ早期に大規模な不法投棄をなくし、ごみゼロ社会を目指します。  組織の内部から公益のために違法行為を通報する人を保護する仕組みを整備してまいります。  国民の安全への備えは国の基本的な責務であります。  空港や港湾など水際での取締りや危機管理体制の整備、重要施設の警備など国内テロ対策を強化し、在外公館の警備や海外の日本人の安全確保に努めてまいります。大規模テロや武装不審船など緊急事態に的確に対処できる態勢を整備します。  有事に際して国民の安全を確保するため関連法案の成立を図り、総合的な有事法制を築き上げてまいります。  安全保障をめぐる環境の変化に対応するため、弾道ミサイル防衛システムの整備に着手するとともに、防衛力全般について見直してまいります。  「世界一安全な国、日本」の復活は急務であります。政府を挙げ、一刻も早く国民の治安に対する信頼を回復いたします。  来年度は、地方公務員全体を一万人削減する中で、空き交番の解消を目指し、三千人を超える警察官を増員し、退職警察官も活用して交番機能を強化いたします。安全な街づくりを含め、市民と地域が一体となった犯罪が生じにくい社会環境の整備を進めます。出入国管理を徹底し、暴力団や外国人組織犯罪対策を強化いたします。  被害に遭われた方々への情報提供や、保護、支援の充実に努めてまいります。  司法を国民に身近なものとするため、刑事裁判に国民が参加する裁判員制度の導入や全国どこでも気軽に法律相談できる司法ネットの整備など司法制度改革を進めます。  昨年の交通事故死者数は四十六年ぶりに八千人を下回りました。十年間で五千人以下にすることを目指します。  学校、病院など重要な建築物と住宅の耐震化を促進し、消防・防災対策を強力に推進いたします。住居の確保などの被災者支援を始め、災害復旧・復興対策を充実いたします。  若者と高齢者が支え合い、国民が安心して暮らすことができる社会保障制度を構築してまいります。  年金については、少なくとも現役世代の平均的収入の五〇%の給付水準を確保しつつ、負担が過大とならないよう保険料を極力抑制する一方、年金課税の適正化により基礎年金の国庫負担割合の二分の一への引上げに道筋を付ける改革案を取りまとめました。今国会に関係法案を提出します。  医療や介護については、将来にわたり良質で効率的なサービス国民が享受できるよう基盤を整備するとともに、安定的な運営を目指した改革を進めます。  保育所の待機児童ゼロ作戦を着実に実施し、来年度も受入れ児童を五万人増やすとともに、育児休業制度を充実いたします。児童手当の支給対象年齢を就学前から小学校第三学年修了まで引き上げます。子供を安心して産み、子育ての喜びを実感できる社会を目指し、少子化対策に政府一体で取り組んでまいります。  女性が持てる能力を発揮し、様々な分野で活躍すれば、活力や多様性に満ちた社会になります。これまで女性の進出が少なかった分野も含め、女性のチャレンジする意欲を支援してまいります。  建築物や公共交通機関のみならず、制度や意識も含めて社会のバリアフリー化を促進するとともに、人権に関する教育や啓発を進め、だれもが相互に人格と個性を尊重し支え合う社会を構築してまいります。  消費者の視点に立って、BSEへの対応を始め食の安全と信頼を確保いたします。SARSや鳥インフルエンザ対策に万全を期してまいります。  歴史と文化を生かし、自然との共生を目指す琵琶湖・淀川流域圏の再生が始まりました。稚内や石垣では、港と町の連携に加え、海外や周辺観光地との交流を促進し、観光振興と市街地の活性化に向けた施策が動き出しています。松山では、小説「坂の上の雲」をモデルに、歩きやすく住みやすい街づくりが進んでいます。地域の知恵や民間のやる気を生かし、全国で都市再生を進めてまいります。  昨年四月から開始した構造改革特区が動き出しています。群馬県太田市では、小学校から英語で授業を実施する小中高一貫校を開設することとしたところ、定員の二倍の入学希望者がありました。国際物流特区では、夜間の通関取扱件数が大幅に増加し輸出入も増えるなど、目に見える成果が上がっています。幼稚園と保育所の幼児が一緒に活動できる幼保一体化特区、農家が経営する民宿でどぶろくを造って提供できるふるさと再生特区など、各地域が知恵を絞った特区が全国に二百三十六件誕生しています。今後も特区の提案を着実に実現していくとともに、その成果を速やかに全国に広げてまいります。  二〇一〇年に日本を訪れる外国人旅行者を倍増し、住んでよし、訪れてよしの国づくりを実現するため、日本の魅力を海外に発信し、各地域が美しい自然や良好な景観を生かした観光を進めるなど、観光立国を積極的に推進いたします。  対日直接投資は、昨年五月に設置した総合案内窓口を通じて七百八十の投資案件が発掘されるなど、着実に進展しています。五年間での倍増目標に向け、外国企業にとって日本を魅力ある市場にしてまいります。  愛知県高浜市では、株式会社を設立し一括して業務を委託することにより、市職員の人件費を削減するとともに、地域の雇用を創出しています。  地方自治体や企業からの要望を一括して受け止め、行政サービスの民間開放の促進など地域の実情に合わせた制度改革や施策の連携により、経済活性化と雇用創造を通じた地域の再生を全面的に支援してまいります。  米作りを始めとする農業と流通を含む食品産業の活性化を図ります。やる気と能力のある経営を支援し、農産物の輸出も視野に置いた積極的な農政改革を展開します。美しい農山漁村づくりを目指すとともに、都市との交流を推進してまいります。  緑の雇用により森林整備の担い手の育成と地域への定住促進を図り、多様で健全な森林の育成を推進します。  雇用対策に全力を挙げます。求人と求職のミスマッチの解消や早期再就職の支援を推進してまいります。企業実習と一体となった教育訓練の実施、地域が民間を活用して実施する若者向けの職業紹介など、若者自立・挑戦プランを実施します。六十五歳までの雇用機会確保や中高年者の再就職を促進いたします。  五百三十万人雇用創出プログラムを着実に実施いたします。  主要銀行の不良債権残高は、この一年半で九兆円以上減少し、不良債権比率も目標に向け順調に低下しています。平成十六年度には不良債権問題を終結させます。金融機能の強化のため新たな公的資金制度を整備してまいります。  市場における個人の資産運用を拡大し、地域や中小企業に必要な資金を行き渡らせるため、監視機能の強化や株式のペーパーレス化により証券市場への信頼と利便性を高め、銀行と証券の連携を進めます。信託業の担い手や対象を拡大し、土地担保や個人保証に頼らない資金調達を促進いたします。  昨年発足した産業再生機構は九件の支援を決定しました。全国に設置した中小企業再生支援協議会は、二千六百社を超える企業の相談にこたえ、二百件近い再生計画を支援し、着実に成果を上げています。民間の英知と活力を最大限活用して、産業再生を着実に進めます。  これまで一千万円以上必要だった会社設立の資本金を一円でも可能とする特例を認めた結果、一年間で八千近い企業が誕生しました。ベンチャー企業への個人投資を伸ばす優遇税制を拡充し、起業や新事業への挑戦を支援してまいります。  総合規制改革会議の終了後も、民間人を主体とする新たな審議機関を設置するとともに、平成十六年度を初年度とする新たな三か年計画を策定し、規制改革を加速いたします。  二十一世紀にふさわしい競争政策を確立するため、独禁法の見直しに取り組みます。  平成十六年度予算の編成に当たっては、一般歳出を実質的に前年度の水準以下に抑制しました。財政の基礎的収支は改善しております。主要な分野で増額したのは、社会保障のほか科学技術振興と中小企業予算だけであり、それ以外についてはすべての分野を減額し、各分野においてめり張りの利いた予算配分を行いました。新たな試みとして、成果を厳しく問う一方で複数年度執行を弾力化するとともに、少子化対策など複数省庁にまたがる政策の予算を制度改革と組み合わせて効率化するなど、歳出の質の改善に努めます。  二〇一〇年代初頭には基礎的財政収支を黒字化することを目指してまいります。  多年度で税収を考え、多岐にわたる包括的かつ抜本的な改革を行った平成十五年度税制改革は着実に効果を現しつつあり、来年度も一兆五千億円の先行減税が継続します。平成十六年度においては、住宅ローン減税の期限を延長するとともに、土地や株式投資信託の譲渡益課税を軽減し、個人資産の活用と土地・住宅市場の活性化を図ります。  公正で活力ある経済社会を実現するため、先般の与党税制改正大綱を踏まえ、社会保障制度の見直しや三位一体の改革と併せ、中長期的視点に立って税制の抜本的改革に取り組んでまいります。  地球環境の保全は小泉内閣の重要な課題であり、科学技術を活用して環境保護と経済発展の両立を図ってまいります。  京都議定書の早期発効に引き続き努力し、さらに、すべての国が参加する共通ルールの構築を目指します。  平成十六年度中にすべての公用車を低公害車に切り替える目標を掲げたことにより、企業は技術開発を加速しました。新規登録車に占める低公害車の割合は六割を超えています。ディーゼル車について世界最高水準の排出ガス規制を実施し、世界に先駆けた環境対策を進めてまいります。太陽光による発電は世界一です。中長期的な環境・エネルギー政策の下、原子力発電の安全確保に全力を挙げるとともに、燃料電池や太陽光・風力発電などクリーンエネルギーの普及を促進します。地球温暖化対策推進大綱の評価、見直しを行い、脱温暖化に向けた努力が経済の活力となる社会を構築してまいります。  科学技術創造立国の実現に向け、ヒトゲノム解読の成果を生かした革新的ながん治療など、国民の暮らしを良くし、経済活性化につながる研究開発として、「みらい創造プロジェクト」を戦略的に推進します。産学官の連携を推進し、地域や民間の活力を引き出しながら科学技術を振興してまいります。  知的財産立国を目指し、順番待ち期間ゼロの特許審査を実現し、模倣品・海賊版対策を強化します。画期的な裁判所改革として、知的財産高等裁判所を創設いたします。  能楽、人形浄瑠璃文楽が人類の優れた無形遺産としてユネスコに認定されるなど、我が国には世界に誇るべき伝統文化があります。世界で高く評価されている映画、アニメ、ゲームソフトなどの著作物を活用したビジネスを振興し、文化、芸術を生かした豊かな国づくりを進めてまいります。  新しい時代を切り開く心豊かでたくましい人材を育成し、人間力向上のための教育改革に全力を尽くしてまいります。  初等中等教育の充実による確かな学力の育成を図ってまいります。心身の健康に重要な食生活の大切さを教える食育を推進し、子供の体力向上に努めます。地域住民による学校を活用した小中学生の体験活動支援するとともに、学校の安全確保のための対策を講じ、社会全体で子供をはぐくむ環境を整備いたします。  本年四月には国立大学が法人化されます。活力に富み個性豊かな大学作りを目指します。意欲と能力のある若者が教育を受けられるよう、奨学金事業を更に拡充してまいります。  教育基本法の改正については、国民的な議論を踏まえ、精力的に取り組んでまいります。  非行問題等困難を抱える青少年を支援するとともに、青少年の社会的自立を促す対策を推進いたします。  政府の活動の記録や歴史の事実を後世に伝えるため、公文書館における適切な保存や利用のための体制整備を図ります。  海底の天然資源開発に我が国の権利が及ぶ大陸棚を画定するため、大陸棚調査を進めます。  土地の境界や権利関係を示す地籍の調査を集中的に推進いたします。  北朝鮮については、日朝平壌宣言を基本に、拉致問題と、核・ミサイルなど安全保障上の問題の包括的な解決を目指します。関係国と連携しつつ、六者会合等における対話を通じ、北朝鮮に対し、核開発の廃棄を強く求めてまいります。拉致被害者並びに御家族の意向も踏まえ、拉致問題の一刻も早い全面的解決に向け引き続き全力を尽くします。北朝鮮には、誠意ある行動を取るよう粘り強く働き掛けてまいります。  日米関係は日本外交のかなめであり、国際社会の諸課題に日米両国が協力してリーダーシップを発揮していくことは我が国にとって極めて重要であります。多岐にわたる分野において緊密な連携と対話を続け、日米安保体制の信頼性の向上に努め、強固な日米関係を構築してまいります。  沖縄に関する特別行動委員会最終報告の実施に取り組み、普天間飛行場の移設・返還を含め、県民負担の軽減に努めるとともに、地域特性を生かした経済的自立を支援します。沖縄県恩納村に、世界に開かれた最高水準の教育研究を行う科学技術大学院大学を設立する構想を推進いたします。  昨年十一月から金浦空港と羽田間の航空便運航が開始され、本年から韓国で日本語の歌の販売が解禁されるなど、日韓両国民の相互理解・交流はかつてないほど深まっています。日韓友好親善の機運を生かしながら、両国関係を一層高いレベルへと発展させていく考えです。  中国との関係は最も重要な二国間関係の一つであり、昨年発足した新指導部との間で未来志向の日中関係を発展させてまいります。日中経済関係は貿易や投資の拡大により緊密化しており、これを相互に利益となる形で進展させるとともに、日中両国はアジア地域、世界全体の課題の解決に向け協力します。  昨年一月に私とプーチン大統領の間で採択した日ロ行動計画は、幅広い分野で着実に実現されつつあります。経済分野を始めとする大きな潜在力を生かしながら日ロ関係を発展させ、我が国固有の領土である北方四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結することを目指します。  本年五月にEUの拡大を控えてダイナミックに発展する欧州は、国際社会において価値と課題を共有する大切なパートナーであり、幅広い分野において関係の強化、拡大に努めてまいります。  昨年十二月に、日本・ASEAN特別首脳会議を開催いたしました。採択された東京宣言に基づき、新しい時代の「共に歩み共に進む」パートナーとしてASEAN諸国との関係を強化します。  国際社会の平和と安全に対する脅威への対応が問われている中、国連の改革に努めてまいります。  国際社会の責任ある一員として、アフガニスタン、スリランカ、東ティモールなどで平和の定着と国づくりを支援してまいりました。我が国がより積極的に国際平和協力を推進するための体制作りに努めます。  人間一人一人を重視する人間の安全保障の視点も踏まえ、途上国の貧困克服や持続的な成長、地球規模問題の解決に向け、ODAを戦略的に活用してまいります。  多角的貿易体制を維持強化するため、WTO新ラウンド交渉の進展に努力いたします。戦略的課題として重要性が高まりつつあるメキシコ、東アジア諸国との経済連携協定の交渉については、将来にわたる日本経済の在り方を考え、積極的に取り組んでまいります。  国民との対話、タウンミーティングは通算百回を数えました。今後も様々な形で開催いたします。  さきの総選挙に関し、公職選挙法違反容疑で衆議院議員が逮捕されたことは誠に遺憾であります。信なくば立たず。国民の信頼を得ることができるよう、政治家一人一人が襟を正さなければなりません。更に政治改革を進め、信頼の政治の確立を目指します。  我が国は、日本国憲法前文において、「われらは、いづれの国家も、自国のことのみに専念して他国を無視してはならないのであつて、政治道徳の法則は、普遍的なものであり、この法則に従ふことは、自国の主権を維持し、他国と対等関係に立たうとする各国の責務であると信ずる。 日本国民は、国家の名誉にかけ、全力をあげてこの崇高な理想と目的を達成することを誓ふ。」との決意を世界に向かって明らかにしています。  青年海外協力隊の諸君は、今も世界各地で活躍しています。南太平洋のサモアで感染症対策に従事する人や、アフリカのセネガルで農業指導を行う人など、三千人を超える日本人が、厳しい環境にもめげず、自ら進んで地域の人々のために活動しており、我が国国際社会における信頼を高めています。  ゴラン高原や東ティモールにおける国連平和維持活動やインド洋におけるテロ対策の支援など、日本国際社会の一員として行うべき任務を多くの自衛官が国民を代表して遂行しております。  平和は唱えるだけでは実現できません。国際社会が力を合わせて築き上げるものであります。世界の平和と安定の中に我が国の安全と繁栄があることを考えるならば、日本も行動によって国際社会の一員としての責任を果たさなければなりません。  古代中国の思想家、墨子は、「義を為すは、毀を避け誉に就くに非ず。」と述べています。すなわち、我々が世のためになることを行うのは、悪口を恐れたり、人から褒められるためではなく、人間として当然のことをなすという意味であります。  世界の平和のため、苦しんでいる人々や国々のため、困難を乗り越えて行動するのは国家として当然のことであり、そうした姿勢こそが、憲法前文にある「国際社会において、名誉ある地位」を実現することにつながるのではないでしょうか。  国民並びに議員各位の御理解と御協力を心からお願い申し上げます。(拍手)     ─────────────
  12. 倉田寛之

    議長倉田寛之君) 川口外務大臣。    〔国務大臣川口順子君登壇、拍手〕
  13. 川口順子

    国務大臣(川口順子君) 第百五十九回国会の開会に当たり、我が国外交の基本方針について所信を申し述べます。  イラクにおいて、奥大使、井ノ上一等書記官、ジョルジース職員が殉職されてから、既に二か月近くがたとうとしています。三人の命を奪った卑劣な暴力に対し、強い憤りを感じます。厳しい環境の中で、日夜粉骨砕身、イラク復興のために尽力された三人に対し、改めて哀悼の意を表し、その功績に心からの敬意をささげます。  イラク復興は、国際社会の緊急の課題です。イラクが破綻国家となり、かつてのアフガニスタンのようにテロ活動の拠点となれば、中東のみならず、我が国を含む国際社会全体に対する大きな脅威となります。また、我が国は原油の九割近くを中東地域に頼っています。このように、我が国の国益に直結するイラク復興に可能な限り貢献することは、我が国外交の責務です。我が国テロに屈することなく、イラク復興支援に取り組んでいかなければなりません。  イラクの治安を回復し、復興を成功させるためには、イラク国民に将来への希望を与えることが不可欠です。イラク人による新しい政府の樹立に向けて、国連、中東諸国を含む国際社会全体が、統治権限の早期移譲のプロセスを支えていくべきです。我が国はこれまでも、イラク復興に関する安保理決議の採択を関係国に働き掛けるなど、国際協調体制の構築に向けて努力してきました。今後とも、国際社会の団結を維持強化するため、中東諸国との協力強化しながら、主導的な役割を果たしていきます。こうした考えの下、我が国は、昨年末に総理特使を英仏独、中東諸国、国連に派遣し、先日は私自身がイラン及びアラブ首長国連邦を訪問し、我が国の考え方を説明してまいりました。このような外交努力を今後とも継続してまいります。  四半世紀にもわたる圧政の下で、イラクの国土と国民生活は荒廃しています。イラク国民が一日も早く普通の生活に戻れるよう、イラク人々に真に必要とされ、喜ばれる支援を迅速に行っていく必要があります。我が国はフセイン政権崩壊後、イラクへの人道復興支援に積極的に取り組んできましたが、今後、更に支援強化していきます。昨年十月のマドリード支援国会合において表明した資金協力については、まずは当面の支援である十五億ドルの無償資金協力を、電力、教育、水・衛生、保健、雇用等、イラク国民の生活基盤再建や治安の改善に資する支援に重点を置きつつ、できる限り迅速に実施していきます。より中長期的には、電気通信運輸等経済基盤復興を行い、それを民間投資の呼び水としたいと考えています。イラクの債務問題については、パリ・クラブにおいて相当の債務削減を行い、また、他のパリ・クラブ債権国がその合意に沿って同様に対応する場合は、我が国もかなりの債権放棄を行う用意があります。  こうした取組を通じて、イラクの民生を安定させ、治安の回復につなげていくためには、資金面に加え人的支援が不可欠です。今国会において、イラク人復興支援特措法に基づく自衛隊対応措置の実施について御承認いただき、我が国自衛隊による給水、医療等の人道復興支援を着実に実施することが必要です。議員各位の御協力を改めてお願い申し上げます。我が国支援の実施に当たっては、自衛隊員を始め、支援に携わる人々安全確保に万全を期するとともに、自衛隊活動を含め、我が国の人道復興支援の内容や目的をイラク国民及びアラブ諸国民に紹介し、理解してもらうための広報活動にも力を入れていく考えです。  イラクを含む中東地域全体に平和と安定をもたらすためには、そのかぎとなる中東和平問題の解決が不可欠です。我が国は、イスラエル・パレスチナ間の信頼醸成のための会議の開催、和平に向けた両当事者や関係諸国への働き掛け、対パレスチナ支援を一層強化していく考えです。  北朝鮮をめぐる問題は、我が国が直面する最も重要な外交課題一つです。北朝鮮との関係では、日朝平壌宣言に基づき、拉致問題及び核やミサイルといった安全保障問題等の諸懸案を包括的に解決することを引き続き目指します。そのために、我が国は、米韓両国との緊密な連携、協力を堅持するとともに、中国やロシア等の関係国とも協力し、六者会合等における対話を通じ、北朝鮮に対し、すべての核開発計画の検証可能かつ不可逆的な放棄を強く求めていきます。また、拉致問題については、被害者とその御家族の御意向も踏まえ、問題の一刻も早い全面的解決に向けて引き続き全力を尽くしてまいります。  テロとの闘いは、引き続き深刻な挑戦であり、我が国も真剣に取り組んでいます。イラクでは国連本部や赤十字国際委員会事務所がテロ攻撃に遭い、イスタンブールの英国総領事館も標的になるなど、テロは国際的な広がりを持ち、かつ無差別化しています。テロリストの活動を封じ込めるため、各国が情報交換、出入国管理、テロ資金対策等、幅広い分野における協力を推進することが不可欠です。我が国は、テロ対策特措法に基づき、テロとの闘いに引き続き主体的にかかわる一方、関係国と協力し、テロ関連情報の収集・分析に努めています。また、不法な出入国防止を強化するため、生体情報による本人認証技術を用いた旅券を平成十七年度中に導入することを目指しています。今後とも、海外の日本人の安全確保、在外公館の警備強化に最善を尽くし、東南アジア諸国を始めとする途上国のテロ対処能力向上のための支援強化していく考えです。  テロの脅威が大量破壊兵器と結び付いたとき、その脅威は計り知れないものとなるため、懸念国やテロリストによる大量破壊兵器やミサイルの取得、使用を阻止することが重要な課題となっています。我が国は、核兵器不拡散条約、NPTを始めとする軍縮・不拡散関連の諸条約の普遍化と完全な履行を各国に働き掛けるとともに、弾道ミサイルの拡散を防止する国際的枠組みの強化に努めていきます。また、拡散安全保障イニシアチブ、PSIに積極的に参加し、さらに、アジア地域における不拡散の取組強化貢献していく考えです。  イランの核問題は、核不拡散体制にかかわる重要な問題ですが、イランによる国際原子力機関、IAEA追加議定書の署名など、前向きな動きも見られます。私は今月上旬、イランを訪問した際、このような動きを歓迎し、イランが今後ともIAEA理事会の累次決議を誠実に履行するよう働き掛けてまいりました。同時に、我が国はイランとの伝統的な友好協力関係の維持発展に努める用意がある旨伝えました。先般の地震に際しては、我が国は国際緊急援助隊の派遣や自衛隊輸送機C130による救援物資輸送といった人道支援を実施したところです。  リビアが大量破壊兵器やミサイルの開発計画を廃棄し、国際機関による査察の即時受入れを決定したことは、国際社会の平和と安全にとって大きな前進です。そこに至るまでの関係国の外交努力を高く評価します。北朝鮮を始め、大量破壊兵器等の開発疑惑が指摘されている国々がリビアに倣うことを我が国は強く期待しております。  アフガニスタンの復興支援し、同国を再びテロ活動の拠点にしないという国際社会の決意と取組は、先般のロヤ・ジェルガでの新憲法採択に見られるように、着実に実を結びつつあります。我が国は、幹線道路や学校の建設などの支援を行ってきているほか、元兵士の武装解除・復員・社会復帰、DDRにおいて主導的な役割を果たしてきており、こうした取組を今後も継続してまいります。  イラク復興テロとの闘い等の課題国際社会が協調して取り組んでいくためには、国連が一層の役割を果たしていくことが必要です。現在、国連事務総長の下に有識者会合が設置され、国連の機能強化について検討が進められており、国連改革に向けた機運は高まっています。私自身、有識者による懇談会を設置し、議論をお願いしているところです。その成果も踏まえ、我が国が二〇〇五年の開催を提案している国連改革に関する首脳会議の実現につなげていき、国連改革に実質的な成果が得られるように努力したいと考えています。そうした取組が成果を上げ、安保理改革が実現する暁には、我が国は常任理事国として一層の責任を果たしていく考えです。その意味でも、まずは本年秋に行われる非常任理事国選挙当選し、二〇〇五年―二〇〇六年に非常任理事国として積極的な役割を果たすことが重要であり、そのために鋭意努力してまいります。また、よりバランスの取れた国連分担率の実現や国際機関で働く邦人職員の増強にも取り組んでまいります。  我が国繁栄を実現するためには、世界経済の安定と持続的な発展が不可欠です。我が国は、多角的自由貿易体制の維持強化のため、WTOのラウンド交渉の早期妥結に向けて積極的に取り組み、我が国の利益にかなった成果を目指します。同時に、多角的自由貿易体制を補完する取組として、二国間や地域的な経済連携も推進していく方針です。当面、メキシコとの協定交渉の早期妥結に鋭意取り組む一方、我が国を含む東アジア地域全体の発展確保するため、韓国、タイ、フィリピン、マレーシアとの協定交渉を推し進めてまいります。  国際社会全体が発展していくためには、開発途上国の貧困削減と持続的成長を支援することが重要です。我が国は、アジアはもちろん、TICADⅢの成功を受け、アフリカに対する開発援助を引き続き実施していきます。また、我が国は東ティモールやスリランカ等における平和の定着と国づくりを支援してきています。さらに、国際社会は、エイズやSARS等の感染症、複雑化する国際組織犯罪など、多様化する脅威にも直面しています。このような脅威に対処するため、国家による保護と人間一人一人の能力強化を内容とする人間の安全保障の理念の実現が重要です。こうした現実を踏まえ、我が国は昨年八月に政府開発援助、ODA大綱を見直し人間の安全保障の視点を基本方針一つとし、平和の構築を重点分野に掲げたところです。  深刻化する地球温暖化問題には、一刻の猶予も許されません。我が国は京都議定書の早期発効を目指し、ロシア等の未締結国に対し、今後とも早期締結を働き掛けていきます。また、明年開催される「愛・地球博」についても、自然と共生する新たな産業社会の在り方を提示する試みとして、入念に準備を進め、その広報にも努めてまいります。  豊かな世界を実現するためには、多様な文化の存在と交流が不可欠です。我が国は、途上国の文化遺産の保護や文化の振興、文明間の対話を進めていきます。また、我が国の価値観や魅力を海外へ発信し、海外の頭脳や才能を日本に招き入れることは、相互理解の促進のみならず、我が国社会の活性化に役立つものです。こうした取組にも一層力を入れていく考えです。  我が国の平和と繁栄確保する上で、日米安保体制を中核とする日米同盟関係はなくてはならないものです。本年は日米和親条約署名百五十周年に当たりますが、今後とも我が国外交の基軸である日米関係を一層強化し、世界の中の日米同盟という考え方に基づき、日米両国が協力して国際社会の諸課題対処していきます。在日米軍に係る諸問題については、沖縄県民の方々が背負っておられる御負担を軽減するため、普天間飛行場の移設・返還を含め、沖縄に関する特別行動委員会最終報告の着実な実施に努めるなど、引き続き最大限努力してまいります。  韓国は、我が国と基本的な価値観を共有し、政治上、経済上、極めて重要な隣国です。既に開始された羽田―金浦間航空便の運航や日韓FTA交渉等、昨年六月の日韓首脳共同声明に盛り込まれた施策の実施を通じて、引き続き両国関係を一層高いレベルへと発展させていく考えです。  日中関係は最も重要な二国間関係一つであり、今後とも、両国国民間の相互理解、相互信頼を深めていきます。また、北朝鮮問題を始め、地域の問題について緊密に協議し、協力を促進していきます。さらに、環境問題を含む地球規模の問題においても、引き続き協力関係を深めてまいります。  さきの日・ASEAN特別首脳会議では、「共に歩み共に進む」パートナーシップを強化していくことで一致し、今後の日・ASEAN関係の指針となる東京宣言及び行動計画が採択されました。我が国は、これらに基づき、ASEANとの具体的な協力を一層進め、日・ASEAN関係を中核とする東アジアコミュニティーの創設にも貢献していく考えです。また、最近、インドとパキスタンの歴史的な首脳会談が行われ、対話開始が合意されるなど、平和と安定に向けた動きが見られる南西アジアとの関係強化してまいります。  欧州については、存在感が増しつつあるEUとの間で、幅広い分野で一層緊密な協力関係を構築してまいります。ロシアとの間では、本年前半にも私自身が訪ロしてイワノフ外相と平和条約締結問題についてじっくり話し合う考えですが、今後も日ロ行動計画の実現を通じて日ロ関係を全体として発展させていく中で、四島の帰属の問題を解決して平和条約を締結すべく、粘り強い交渉を続けてまいります。  以上、我が国外交の基本方針について申し述べてまいりました。国際社会においては、各国が力を合わせて、次々と発生する新たな課題に取り組んでいます。我が国としても、国際社会の主要な一員として、こうした取組に主体的に参加する必要があります。我が国の安全と繁栄は、平和で安定した世界の中にあるからです。そのためには、これまで以上の外交努力が必要です。こうした問題意識の下、外務省は改革の一環として、本年夏に機構改革を行い、総合外交政策局の政策調整機能を強化する一方、国際情報局を国際情報統括官組織に改編、拡充して情報収集・分析能力の向上を図るなど、外交実施体制を一層強化していきます。また、海外における日本人の安全確保に十全を期するため、領事移住部を領事局に改編します。さらに、政府として国民への説明責任を果たし、その理解と支持を得るよう努めてまいります。  引き続き、国民皆様議員各位の御支援と御協力を心よりお願い申し上げます。(拍手)     ─────────────
  14. 倉田寛之

    議長倉田寛之君) 谷垣財務大臣。    〔国務大臣谷垣禎一君登壇、拍手〕
  15. 谷垣禎一

    国務大臣(谷垣禎一君) 平成十六年度予算及び平成十五年度補正予算の御審議に当たり、今後の財政政策等の基本的な考え方について所信を申し述べますとともに、予算の大要を御説明いたします。  日本経済の現状を見ますと、長期的な低迷の中でも、多くの国民の英知と努力によって培われてきた活力が、政府民間改革への取組によってようやく発揮され始め、経済に明るい兆しが見られます。この景気回復の動きを民間需要主導の持続的な経済成長につなげていくためには、経済の活性化、子や孫の世代に負担を先送りしない持続可能な財政の構築、国民の安心、安全の確保を目指した諸般の取組、これらを総合的に進めていくことが重要であると考えております。また、デフレ克服に向け、引き続き政府日本銀行と一体となって取り組んでまいります。  今後の財政政策等の運営に当たっては、以下に申し述べる諸課題に着実かつ的確に取り組み、構造改革努力成果を上げてまいる所存であります。  第一の課題は、財政構造改革であります。  我が国財政状況は、平成十六年度末の公債残高が四百八十三兆円程度に達する見込みであるなど、世界の先進国の中でも最悪の水準となっております。このため、政府としては、中長期的な財政運営に当たり、二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支黒字化を目指すとの目標達成に向け努力しているところであります。  こうした中、平成十六年度予算編成につきましては、引き続き歳出改革路線を堅持し、一般会計歳出及び一般歳出について、実質的に前年度の水準以下に抑制しました。一方、予算の内容については、「経済財政運営と構造改革に関する基本方針二〇〇三」等を踏まえ、例えば科学技術や治安対策など活力ある社会経済の実現や国民の安心の確保に資する分野に重点的に配分したほか、各分野においても真に必要な施策への絞り込みを行い、めり張りのある予算の配分を実現しました。また、国と地方改革年金改革などの重要課題に着実に取り組むとともに、予算編成過程について、モデル事業政策群といった手法の導入、予算執行調査の拡充を行ったほか、特別会計については、すべての特別会計を対象として幅広い見地から検討を行い、事務事業見直し等を進めております。こうした歳出改革へ向けた努力を通じ、国債発行額を極力抑制したところであり、その結果、公債依存度は前年度と同水準の四四・六%となっております。  このように、来年度予算については、私としては、基礎的財政収支の黒字化に向けて一つの手掛かりとなるものと考えておりますが、財政が危機的状況にあることに変わりはありません。今後とも手綱を緩めることなく、財政構造改革に向けた不断の努力を重ねてまいりたいと考えております。  なお、こうした財政構造改革の推進により国債に対する信認を確保しつつ、中長期的な調達コストの抑制、確実かつ円滑な国債の消化を図るため、市場のニーズや動向等を十分に踏まえ、国債管理政策を適切に運営してまいります。  第二の課題は、税制改革であります。  平成十六年度においても、持続的な経済社会の活性化に向け、広範な改革を実現した平成十五年度改正の結果として、国、地方合わせて実質一兆五千億円の減税となります。  平成十六年度改正においては、引き続き、経済活性化に向けた動きをより確かなものとするための改正を行うこととしております。  具体的には、景気動向と住宅政策の両面に配意し、住宅ローン減税を見直した上で延長するほか、個人資産の活用を促進するため、土地譲渡益課税の税率を引き下げるとともに、公募株式投資信託の譲渡益課税を上場株式並みに軽減することとしております。また、創造的な企業活動事業の再構築を支援するため、エンジェル税制の拡充を始めとする中小企業関連税制及び法人税制の見直しを行うほか、国際的な投資交流を促進するため日米租税条約の全面改正と関連国内法令の見直しを行うこととしております。このほか、世代間、高齢者間の公平確保し、年金制度改革にも対応する観点から、年金税制の見直しを行うこととしております。  今後とも、持続可能な社会保障制度の確立地方分権の推進といった諸課題対応し、公正で活力ある経済社会を実現するため、先般の与党税制改正大綱を踏まえ、改革の明確な道筋を示しつつ、税制の抜本的改革を進めてまいります。  第三の課題は、世界経済の安定と発展への貢献であります。  我が国は、国際機関やG7、アジア諸国等と協力しつつ、国際金融システムの強化や開発途上国の経済社会発展等の課題に取り組んでまいります。また、アジアにおける通貨、金融の安定化に向けて、アジア債券市場育成イニシアチブ等の取組を通じて一層の貢献を行ってまいります。  為替相場につきましては、経済の基礎的条件を反映して安定的に推移することが重要であり、今後とも、為替相場の動向を注視し、必要に応じて適切に対処してまいる所存であります。  WTO新ラウンド交渉に引き続き積極的に取り組むとともに、メキシコ、韓国、ASEAN等との自由貿易協定を含む経済連携を積極的に推進してまいります。  平成十六年度関税改正においては、知的財産権侵害物品に係る認定手続の充実、税関における水際取締りの強化等を行うこととしております。  次に、今国会に提出しております平成十六年度予算の大要について御説明いたします。  歳出面については、一般歳出の規模は四十七兆六千三百二十億円、一般会計全体の予算規模は八十二兆千百九億円となっております。  また、国家公務員の定員については、治安など真に必要な部門には適切に定員を措置しつつ、行政機関職員全体としては五百五十三人の定員の縮減を図っております。  歳入面については、租税等は、平成十六年度税制改正を織り込み四十一兆七千四百七十億円を見込んでおります。また、その他収入は三兆七千七百三十九億円を見込んでおります。  これらの結果、公債発行予定額は三十六兆五千九百億円となっております。なお、特例公債の発行については、別途、所要の法律案を提出し、御審議をお願いすることとしております。  財政投融資計画については、財投改革の趣旨を踏まえ、中小企業対策などセーフティーネットの構築等、真に必要な資金需要には的確に対応しつつ、対象事業の一層の重点化を図ることといたしました。この結果、平成十六年度財政投融資計画規模は二十兆四千八百九十四億円となっております。  次に、主要な経費について申し述べます。  社会保障関係費については、年金につき、長期的な給付と負担の均衡を図り、社会経済と調和した持続可能な制度への改革に取り組むとともに、診療報酬、薬価等の改定等を行うこととしております。  公共投資関係費については、その水準を全体として抑制しつつ、活力ある社会経済の実現に向けて、国と地方役割分担等の観点も踏まえ、重点化を行っております。  文教及び科学振興費については、義務教育費国庫負担制度の見直しを始め、確かな学力、豊かな心の育成等の教育改革の推進、競争的な環境の下での個性あふれる大学作りに努めるとともに、科学技術振興費については優先順位付けも踏まえた重点化を行いつつ拡充したところであります。  防衛関係費については、思い切った削減を行う中で、テロや弾道ミサイル等の新たな脅威に対応するための配分の重点化を図りつつ、効率的で節度ある防衛力整備を行うこととしております。  農林水産関係予算については、食の安全、安心の確保環境保全に配慮しつつ、施策の対象を意欲と能力のある経営体へ重点化し、米政策改革を始めとする農業の構造改革の着実な推進等を図っております。  経済協力費については、新ODA大綱の下、我が国の国益を重視しつつ、全体として規模を縮減する中で、援助対象の更なる戦略化、重点化を図っております。  エネルギー対策費については、エネルギーの安定供給確保と地球環境問題への対応等を着実に進めております。  中小企業対策費については、創業、経営革新の推進や人材育成、中小企業に対する円滑な資金供給を確保するための基盤強化等を図っております。  また、補助金、地方交付税、税源移譲を含む税源配分の在り方に関する、いわゆる三位一体の改革については、その成果平成十六年度予算に反映させたところであります。まず、地方向け補助金等については、「基本方針二〇〇三」や総理指示を踏まえ、一兆円の廃止、縮減等の改革を行っております。また、地方交付税については、地方財政の効率化を促し、地方の自立を促進する観点から、地方歳出の徹底した見直しを行い、地方財政運営に配慮しつつ総額を抑制しております。さらに、廃止する国庫補助負担金の対象事業の中で、引き続き地方が主体となって実施する必要があるものについては、暫定措置として国の所得税収の一部を地方へ譲与することにより税源移譲を行うほか、義務教育費国庫負担金の退職手当等に係る一般財源化分につき、特例的な交付金により暫定的に財源措置を講じております。  地方公共団体におかれましても、歳出全般にわたる一層の見直し、合理化、効率化に積極的に取り組まれるよう要請するものであります。  次に、平成十五年度補正予算について申し述べます。  平成十五年度補正予算については、歳出面において、義務的経費を中心としたやむを得ざる追加財政需要への対応として、義務的経費の追加、災害対策費及びイラク復興支援経済協力費等を計上する一方、既定経費の節減等を行うこととしております。  他方、歳入面においては、その他収入の減収を見込むとともに、前年度の決算上の剰余金を計上することとしております。また、国債の増発は行わないこととしております。なお、決算上の剰余金については、財政法第六条に基づく国債整理基金への繰入れを行わないこととしております。  以上によりまして、平成十五年度補正後予算総額は、当初予算に対し歳入歳出とも千五百五億円増加し、八十一兆九千三百九十六億円となります。  また、特別会計予算及び政府関係機関予算についても所要の補正を行うこととしております。  以上、平成十六年度予算及び平成十五年度補正予算の大要について御説明いたしました。  今の日本経済を例えますと、至る所に新たな胎動が見られるものの、過去の成功体験という厚い殻をなかなか破れずに、言わば、ひなが卵の殻を中からコツコツ一生懸命たたいている状態にあるのではないかと思います。民間経済が内側から必死に殻をたたいている今こそ、政府は外側からその殻をたたき、新たな胎動を大きなうねりにつなげていくことが必要なのではないでしょうか。平成十六年度予算は、そのための重要な一歩であると考えております。  何とぞ、関係法律案とともに御審議の上、速やかに御賛同いただきますようお願い申し上げます。(拍手)     ─────────────
  16. 倉田寛之

    議長倉田寛之君) 竹中国務大臣。    〔国務大臣竹中平蔵君登壇、拍手〕
  17. 竹中平蔵

    国務大臣(竹中平蔵君) 経済財政政策担当大臣として、その所信を申し述べます。  小泉内閣の発足以来、その経済財政運営に対して常に二つの批判が寄せられてきました。一つは、小泉内閣は緊縮財政政策を取っており、それが景気に悪影響を与えている、もっと拡大的な財政政策を取るべきだというものでした。いま一つは、財政赤字の水準はもはや受容できない限界に達しており、もっと速いテンポで財政赤字を縮小させるべきだというものでした。こうした相反する批判がなされること自体、我が国経済財政運営がいかに困難なものであるかを象徴的に示すものと言えましょう。  このような中で、小泉内閣は明確な指針の下に経済財政を運営してまいりました。徹底した構造改革によって経済を活性化し、需要面にも十分に目配りしつつ、歳出の拡大を食い止めることによって、中長期的な観点から財政の健全化を目指すというものです。これは極めて困難な狭い道ですが、それ以外に方策のないことは明白であります。そして近時の経済の動きは、厳しい環境の中にあって、我が国がこうした狭い道を着実に歩んでいることを明確に示すものとなりました。  日本経済財政出動に安易に頼ることなく、民需を中心に着実に回復しています。実質GDPは六・四半期連続して増加し、平成十五年度の実質経済成長率は当初政府見通しの〇・六%程度を上回って二・〇%程度に、名目成長率も三年ぶりのプラスが見込まれます。また十六年度についても、引き続き緩やかな回復過程をたどり、実質で一・八%程度、名目でも〇・五%程度の成長を見込んでおります。  一方で、財政健全化に向けて着実な動きが始まりました。内閣府の試算によれば、財政健全化を図る上で最も注目される基礎的財政収支、すなわち過去の借入れに対する元利払いの影響を除いた財政収支は、国と地方を合わせて十六年度にGDP比おおむね〇・八%程度の改善が見込まれるところです。このような堅実な収支改善ペースを続けていけば、二〇一〇年代初頭の基礎的財政収支の黒字化が可能となります。正に、政府構造改革民間努力によって、景気と財政健全化が両立するという新しい姿が現れ始めたのです。まだまだ困難な道ですが、小泉内閣は断固とした決意で改革路線を堅持し、これを加速、拡大してまいります。  以下、構造改革の進捗、更なる改革課題、そして今後の経済財政の展望について順次申し述べます。  今、構造改革の芽は着実に出始めています。経済に関するこうした改革の芽は主として三つの分野に現れ始めました。  第一は、金融システムの強化であります。十五年九月末の主要行の不良債権残高は、その一年半前に比べ三五%減少しました。十六年度に不良債権問題の正常化を図るとの目標の実現に向け、着実に進捗しています。また、昨年は、預金保険法第百二条に基づき、金融危機を未然に防ぐための的確な対応が行われました。さらに、金融機能の強化のための新たな公的資金制度の整備を図るなど、金融システムの一層の強化に取り組んでまいります。  第二は、企業部門の再構築です。企業の過剰債務削減の取組や企業再編の活発化等を受け、企業収益は改善を続けており、設備投資も五・四半期連続で増加をしています。また、企業収益の改善が適切に株価に反映されるという状況が生まれつつあります。こうした中で日本経済の国際的評価も高まっております。世界経済フォーラムによる世界の競争力比較ランキングでは、我が国の競争力は、十三年に二十一位まで低下した後、十五年には十一位に回復しております。  第三は、財政の健全化、効率化に向けた動きです。十六年度予算においては、さきに述べたとおり、基礎的財政収支の黒字化に向けて重要な一歩を進めました。また、予算手法の改革に取り組むこととし、政策目標の設定や複数年度にわたる執行、厳格な事後評価を行うモデル事業を試行的に導入するとともに、構造改革予算の連携を強化するため政策群の手法を活用しました。こうした取組により、予算の効率性の向上と歳出の質の更なる改善を図ってまいります。  これに対し、今後立ち向かうべき更なる課題があることについても、小泉内閣は明確に位置付けております。  その第一は、デフレ克服に向けた政府、日銀一体となった取組の強化です。デフレ克服のため、構造改革による経済活性化を進める中で、強固な金融システムの構築と金融政策の波及メカニズムの強化等を通じ、資金供給が拡大していくことが重要です。政府、日銀は、デフレ克服という政策目標を共有し、一層の協力を図ってまいります。  第二は、民間にできることは民間に、地方にできることは地方にの徹底です。このため、企業地域といった現場の知恵を信頼して任せ、これを最大限活用する分権改革を徹底的に推し進めることにより、出始めた改革の芽を地域中小企業に浸透させ、雇用環境の一層の改善を図ってまいります。  こうした観点から、デフレの克服と民需主導の経済成長の実現に向けて、経済を活性化するための改革工程表を取りまとめてまいります。  第三は、国民の安心と生活の安定を支える社会保障制度の確立です。このためには、次世代育成の支援を進めるとともに、少子高齢化が最も進んだ場合でも、家計、企業財政が負担に耐えられる水準に社会保障負担を抑制することが重要であり、この方針の下、持続可能な社会保障制度の確立に取り組んでまいります。  今年、経済財政諮問会議では、経済の面で「この国のかたち」を問い、更に大きな制度改革に取り組みます。その基本にあるのは、市場メカニズムを重視しながら小さくて効率的な政府を実現し、公的な部門が取り込んできた分野を大胆に民間開放することです。  このため、第一に、規制改革や官業の民間開放等を抜本的に推進すべく、総合規制改革会議の後継機関との連携を図りつつ、取組を強化します。そして、官業改革の本丸である郵政民営化については、平成十九年に実現するという小泉総理の方針を踏まえ、経済財政諮問会議の場で幅広い国民的議論を行います。既に公表した五つの原則、すなわち活性化原則、整合性原則、利便性原則、資源活用原則、配慮原則にのっとり、本年春ごろに中間報告を、本年秋ごろに民営化の基本方針を取りまとめます。  第二に、地域の自立と再生に向け、抜本的に取組を強化します。三位一体の改革を推進し、地方の権限と責任を大幅に拡大します。十六年度においては、国庫補助負担金の一兆円の廃止、縮減等、税源移譲の具体化、交付税総額の抑制を図りました。この実績を踏まえ、更に改革工程を加速、強化し、改革の全体像をお示しできるよう、政府一丸となって取り組んでまいります。また、地域再生推進のためのプログラムにより、行政サービス民間委託の推進、建設業を始めとする地域の基幹産業における事業転換等の経営革新、観光や食料産業等の地域特性を生かした産業、事業の創出に向け、地域が主体となった取組を進めます。  第三に、社会保障制度については、年金、医療、介護、生活保護等を個別に議論するのではなく、社会保障サービスを利用する国民立場に立って、また持続可能な制度を確立国民の安心を確保しながら社会保障給付費の伸びを抑制するという観点を踏まえ、総合的かつ一体的に改革することが必要です。今年は年金制度改革関連法案が提出されることとなっておりますが、今後とも、経済財政諮問会議で、医療、介護等の改革に向けた議論を行い、持続可能な社会保障制度の確立を目指します。  その他、アジアを中心に諸外国との経済面での連携を深めることが必要であり、WTO等の多国間交渉やFTAを含む経済連携の積極的な推進と対日直接投資の拡大に努力してまいります。また、近年、企業の不祥事が、企業内部からの通報により明らかになる事例が相次いでいることを踏まえ、公益のために通報した従業者が解雇等の不利益な取扱いを受けないようにする法案を今国会に提出いたします。  日本経済の中期的なシナリオは、既に「構造改革経済財政の中期展望―二〇〇三年度改定」においてお示しいたしました。構造改革路線を堅持し、これを加速、拡大することによって十八年度以降はおおむね名目二%程度あるいはそれ以上の成長経路をたどると見込まれます。また、財政構造改革を忍耐強く続けることによって、二〇一〇年代初頭には基礎的財政収支を黒字化させ、持続可能な財政の姿を取り戻します。  日本経済は、極めて高い潜在力を有しています。にもかかわらず、バブル経済が崩壊した一九九〇年代以降、不本意な低迷を続けてきました。しかし今、不良債権が目に見えて減少し、企業部門の強化が進むなど、自律的で持続的な成長軌道に本格復帰する重要なチャンスを迎えております。  もちろん世界経済日本経済を取り巻くリスク要因は依然として存在しており、これらに対する十分な目配りが必要であります。しかし、こうしたリスク要因に打ちかっていくための方策は、更なる構造改革を進めること以外にはありません。  構造改革の着実な進展の下で、私は今、日本経済再生の確かな手ごたえを感じております。集中調整期間が終わる来年度末には、主要行の不良債権問題を終結させ、財政の基礎的収支の改善も進めること等を通じ、日本経済再生のための基礎固めを終えます。そのためにも、平成十六年を更なる飛躍に向けた極めて重要な年と位置付け、断固たる決意で構造改革に取り組んでまいります。  国民皆様議員各位の御理解と御協力をお願いし、所信の表明といたします。  ありがとうございました。(拍手)
  18. 倉田寛之

    議長倉田寛之君) ただいまの演説に対する質疑は次会に譲りたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  19. 倉田寛之

    議長倉田寛之君) 御異議ないと認めます。  本日はこれにて散会いたします。    午後五時散会