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2004-06-10 第159回国会 参議院 法務委員会 第23号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年六月十日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  六月九日     辞任         補欠選任      中川 義雄君     小林  温君      江田 五月君     平野 貞夫君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         山本  保君     理 事                 松村 龍二君                 吉田 博美君                 角田 義一君                 木庭健太郎君     委 員                 岩井 國臣君                 小林  温君                 鴻池 祥肇君                 陣内 孝雄君                 野間  赳君                 今泉  昭君                 千葉 景子君                 平野 貞夫君                 堀  利和君                 井上 哲士君    委員以外の議員        議員       吉川 春子君    衆議院議員        青少年問題に関        する特別委員長  武山百合子君        青少年問題に関        する特別委員長        代理       葉梨 康弘君    国務大臣        法務大臣     野沢 太三君    副大臣        法務大臣    実川 幸夫君    大臣政務官        法務大臣政務官  中野  清君    最高裁判所長官代理者        最高裁判所事務        総局人事局長   山崎 敏充君    事務局側        常任委員会専門        員        加藤 一宇君    政府参考人        司法制度改革推        進本部事務局長  山崎  潮君        警察庁長官官房        審議官      吉田 英法君        法務大臣官房長  大林  宏君        法務大臣官房司        法法制部長    寺田 逸郎君        法務省民事局長  房村 精一君        法務省刑事局長  樋渡 利秋君        法務省人権擁護        局長       吉戒 修一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○知的財産高等裁判所設置法案内閣提出、衆議  院送付) ○裁判所法等の一部を改正する法律案内閣提出  、衆議院送付) ○政府参考人出席要求に関する件 ○不動産登記法案内閣提出衆議院送付) ○不動産登記法施行に伴う関係法律整備等に  関する法律案内閣提出衆議院送付) ○判事補及び検事弁護士職務経験に関する法律  案(内閣提出衆議院送付) ○児童買春児童ポルノに係る行為等の処罰及び  児童保護等に関する法律の一部を改正する法  律案衆議院提出)     ─────────────
  2. 山本保

    委員長山本保君) ただいまから法務委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨九日、江田五月君及び中川義雄君が委員を辞任され、その補欠として平野貞夫君及び小林温君が選任されました。     ─────────────
  3. 山本保

    委員長山本保君) 知的財産高等裁判所設置法案及び裁判所法等の一部を改正する法律案を一括して議題とし、質疑を行います。  質疑のある方は順次御発言願います。──別に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより両案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、知的財産高等裁判所設置法案採決を行います。  本案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  4. 山本保

    委員長山本保君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  次に、裁判所法等の一部を改正する法律案採決を行います。  本案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  5. 山本保

    委員長山本保君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 山本保

    委員長山本保君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  不動産登記法案不動産登記法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及び判事補及び検事弁護士職務経験に関する法律案審査のため、本日の委員会司法制度改革推進本部事務局長山崎潮君、法務大臣官房長大林宏君、法務大臣官房司法法制部長寺田逸郎君、法務省民事局長房精一君及び法務省刑事局長樋渡利秋君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  8. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  9. 山本保

    委員長山本保君) 不動産登記法案不動産登記法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案及び判事補及び検事弁護士職務経験に関する法律案を一括して議題といたします。  三案について、政府から趣旨説明を聴取いたします。野沢法務大臣
  10. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 最初に、不動産登記法案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  不動産登記制度は、国民生活経済活動の基盤である不動産について、その権利関係などを公示することにより、国民権利保全及び取引の安全と円滑を図るための制度であります。この法律案は、不動産登記制度について、登記正確性を確保しつつ、国民利便性の一層の向上を図るため、インターネットを利用したオンライン申請手続を導入するとともに、片仮名、文語体の法文を現代語化する等の規定の見直しを行い、不動産登記制度高度情報化社会にふさわしい制度にしようとするものであります。  この法律案の要点を申し上げますと、第一は、登記申請手続に関する規定を見直し、インターネットを利用したオンライン申請手続を導入することとしております。これに伴い、従来の書面による申請についても、当事者の出頭主義を廃止することとしております。  第二は、登記済証に代わる本人確認手段として、登記識別情報制度を導入することとしております。現行法では、登記完了時に登記名義人登記済証を交付し、これを次回の登記手続の際の本人確認手段として用いておりますが、これに代えて、オンライン申請においても利用することができるように、登記完了時に登記名義人登記識別情報を通知することとし、これを次回の登記手続の際の本人確認手段として用いることとしております。  第三は、申請人から登記識別情報提供がない場合の本人確認手続について、登記官から登記名義人事前通知を行うことを原則とし、資格者代理人による適切な本人確認情報提供がある場合には、登記官の判断により、事前通知を省略することができることとしております。  第四は、登記正確性向上させるため、登記申請の際に、登記原因を証明する情報を必ず提供しなければならないものとしております。  第五は、紙の登記簿原則とする現行規定を改め、登記簿磁気ディスクをもって調製することとするとともに、登記所に備え付ける地図等についても電子化を図ることができることとしております。また、執行妨害のため濫用されているとの指摘がある予告登記制度廃止等改正を行うこととしております。  なお、この法律施行に伴い、政省令制定等所要手続が必要となりますので、その期間を考慮いたしまして、この法律は、公布の日から起算して一年を超えない範囲内において政令で定める日から施行することとしております。  続いて、不動産登記法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案につきまして、その趣旨を御説明いたします。  この法律案は、不動産登記法施行に伴い、公示催告手続ニ関スル法律外百二十八の関係法律について、規定整備等を行うとともに、所要経過措置を定めようとするものであります。  次に、判事補及び検事弁護士職務経験に関する法律案について、その趣旨を御説明いたします。  我が国においては、内外の社会経済情勢の変化に伴い、司法の果たすべき役割がより重要なものとなり、司法に対する多様かつ広範な国民の要請にこたえることのできる広くかつ高い識見を備えた裁判官及び検察官が求められております。この法律案は、このような状況にかんがみ、判事補及び検事について、その経験多様化のための方策の一環として、一定期間その官を離れ、弁護士となってその職務経験するために必要な措置を講ずることにより、判事補及び検事弁護士としての職務経験することを通じて、裁判官及び検察官としての能力及び資質の一層の向上並びにその職務の一層の充実を図ることを目的とするものであります。  以下、法律案内容につきまして、その概要を御説明申し上げます。  第一に、最高裁判所又は法務大臣は、それぞれ判事補又は検事の同意を得て、当該判事補又は検事弁護士となってその職務を行うものとすることができることとし、この場合においては、最高裁判所当該判事補裁判所事務官に、法務大臣当該検事法務省に属する官職にそれぞれ任命するものとしております。  第二に、弁護士職務を行う期間は、原則として二年を超えることができないものとしております。  第三に、弁護士職務を行う者は、受入先弁護士法人又は弁護士との間で雇用契約を締結し、弁護士業務に従事するものとしております。  第四に、弁護士職務を行う者は、裁判所事務官等としての身分を保有するが、その職務に従事せず、その給与を支給しないものとしております。  第五に、弁護士職務を行う者の服務、及び弁護士職務を行う者に関する国家公務員共済組合法等特例等について所要規定を置いております。  以上がこれら法律案趣旨でございます。  何とぞ、慎重に御審議の上、速やかに御可決くださいますようお願いいたします。
  11. 山本保

    委員長山本保君) 以上で三案の趣旨説明の聴取は終わりました。  これより不動産登記法案及び不動産登記法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案について質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 松村龍二

    松村龍二君 自由民主党の松村でございます。  この不動産登記法及び不動産登記法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案につきましては、先ほど趣旨説明が行われまして、公式には初めて協議するわけでございますが、審議するわけですけれども、先般、知的財産高等裁判所設置法案裁判所法等の一部を改正する法律案審議をしている過程の中で実質的に、自民党を始め各党から百分近く実質的な審議、重要な内容を持つものについて政府に対して問いただしたところであり、我が党からは岩井議員がその専門的な知識で御質問いただいたわけですが、今日、公式に提案がございましたので、一つ、二つだけ私、総まとめ的に質問させていただきます。  私も、大学時代の友達が町内の世話をしておりまして、住宅団地かと思いますが、その団地敷地をはっきりする必要があるということで、隣の土地との側の位置を精査いたしましたところ、どうも一メートルぐらい合わないということで、隣の敷地財務省所有土地であると、何とかならぬかというふうな御相談を受けたことがございます。それで、財務省の方に問いただしましたところ、それはうちの方が間違っていたかもしれませんということで簡単に話が付いたわけですけれども、事ほどさように土地境界をめぐる問題は難しいんだなといったことを実感したことがございます。  そこで、今回の不動産登記法改正によりまして地図電子化されオンライン申請が可能になることは良いことでありますが、一方では、表示に関する登記専門家である土地家屋調査士などからは、連合会などからは、新たな制度の下における地図在り方オンライン申請の場合の表示に関する登記添付書面取扱いについてよく意見を聞いてほしいという声をいただいております。現に、法務省所管地図整備事業促進を図っていただきたい、地図地籍整備に関する国の諸施策において法務省が積極的に協力し登記所備付地図整備を図っていただきたい、上記の諸施策推進については表示に関する登記の担い手として十分な実績と地図境界に関する専門的知見を有する土地家屋調査士専門性活用事業推進にとって最も効率的かつ効果的な手法と考えるので、土地家屋調査士の積極的な活用を要望すると、また登記官による審査迅速性を確保していただきたい、こんな御要望もいただいているわけでございます。  そこで、新たな制度具体化及び運用に当たっては、土地家屋調査士など制度利用者の声を十分踏まえて行うべきではないかと思いますが、法務省の御答弁をいただきます。
  13. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、登記制度を円滑に運用するためには、それに関係する専門資格者方々意見を十分に伺って、現場に混乱のないように、円滑に運用できるようにということが重要であると思っております。特に、表示登記に関しましては土地家屋調査士方々がその専門的な能力を生かして非常に大きな役割を占めておりますので、従来から法務省におきましても表示登記制度について、その運用につきまして、日本土地家屋調査士連合会日本土地家屋調査士会連合会ですね、から随時意見を伺って、それを生かして円滑な運用に努めてきたところであります。  今回の改正に当たりましても、例えば表示に関する登記オンライン申請における添付書面取扱いにつきましては、日本土地家屋調査士会連合会意見を踏まえまして、申請時点ではその写しに相当する情報を送信することで足りると、こういう扱いにいたしております。また、土地家屋調査士が作成する現地調査報告書につきまして、これは任意的な添付書面ではございますが、現実に大きな役割を果たしておりますので、今後省令でその位置付けを明らかにするというようなことを考えております。  今後も登記制度運用に当たりましては各専門職種方々意見を十分伺い、尊重しながら進めていきたいと、こう思っております。
  14. 松村龍二

    松村龍二君 電子化といいますと、電子が示すものは完全であるというふうに錯覚を起こしやすいわけですが、その辺、いろいろと御工夫をいただきたいと思います。  今回の不動産登記法改正は、先般も指摘されましたが、明治三十二年に制定された現行法を全面的に改正する大きな改正でありまして、時代の流れに沿ったものであると考えるわけですが、不動産登記制度に課せられた課題はこれで、法律改正だけで終わったわけではないと、かねてから重要性指摘されている登記所備付けの地図整備や今回の改正制度的に可能となった地図電子化についてはこれからという状況にあります。  また、今回の改正で新たに導入されたオンライン申請制度申請者代理人本人確認情報提供制度等についても、虚偽の登記をできる限り防止するという観点不動産取引実務が円滑に行われる必要があるという観点双方が重要であり、今後の運用に関しては様々な面から常に検討を行う必要があると思われます。  そこで、法務大臣にお伺いしますが、新たな制度の円滑な実施や地図整備促進等、今後の不動産登記制度課題につきまして法務省としてどのように取り組んでいくつもりか、お伺いします。
  15. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 不動産登記制度は、国民の重要な財産である不動産につきまして、国民権利保全を図り、取引の安全と円滑に資することを目的とする制度でありまして、その円滑な運用を図ることは極めて重要な課題であると考えております。したがって、今回の法案に基づく新たな制度につきましては、登記正確性を確保しつつ国民利便性向上を併せて図るという観点から、その施行状況について随時検討を加え、適切に運用していく必要があると考えております。  また、喫緊の課題である地図整備につきましては、いわゆる平成地籍整備の方針に沿って、国土交通省とも緊密に連携を図りつつ、全国の都市部における登記所備付地図整備事業を強力に推進していきたいと考えております。  今後とも、不動産登記制度国民経済活動における重要性を踏まえ、様々な側面から登記制度の一層の充実強化に努めてまいりたいと考えております。  法務省におきましては、昨日並びに本日、二日掛けまして法務局長並びに地方法務局長会議をただいま開催をしておりまして、本法案のこの趣旨を含めまして更なる徹底と合理的運用に関する討議を行っておるところでございまして、今後の日本の更なる飛躍、発展を考えますと、この制度が一層円滑にかつ確実に定着することが必要であると考えまして、今後とも全力を尽くして取り組んでいく所存でございます。
  16. 松村龍二

    松村龍二君 どうもありがとうございました。  以上で終わります。
  17. 角田義一

    角田義一君 民主党・新緑の角田でございます。  先ほど松村先生の方からもお話がございましたとおり、前回、事実上本案について相当多方面にわたってお尋ねをいたしておりますので、その辺のもう重複は避けまして、最後になりますので、ちょっと実務的なことで恐縮でございますが、幾つか詰めておきたいという問題がありますので、御答弁をいただきたいと思う。  一つは、今回のオンラインシステムによって電子署名とかあるいは電子証明とかという問題が改めて大きな問題になってきておると思いますが、昔流に言えば電子証明というのは印鑑証明に当たるんじゃないかと理解をいたします。そして、我々がなじんできた実印というものが、これが電子署名になるのかなと。紙に押された印影を見て、印鑑証明は付いておるんで、これは本人実印確認をすると。電子情報にされた電子署名本人のものであることを確認するのが電子証明であると、こういうふうに理解をしてまずよろしいでしょうか。
  18. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) はい、御指摘のように正に電子署名実印相当し、電子証明書印鑑証明書相当すると、こういう理解でよろしいと思っております。
  19. 角田義一

    角田義一君 そうすると、契約実印が押されてそこに印鑑証明が付いておれば、その時点でこれはもう正当な権限を持っておるということは当然なんですけれども、御案内のとおり、後から裁判で問題になったとしても、これは印鑑証明がある、そして印影があるということで、相当後になってからもその契約有効性ということが裁判で問題になったときに非常に有利に働くだろうと一般論としては思いますし、そういう実務で私どもやってきております。  そうしますと、今度のこの電子署名電子証明というのが昔で言えば実印だとか印鑑証明に当たるということになりますと、これはどういうふうになりましょうか。後から紛争が起きたときにさかのぼってこれどういうふうに活用できるんでしょうか、電子証明とか電子署名電子証明というのは。裁判になった場合、どういうふうになっていきましょうか。
  20. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 電子署名がなされておりますと、電子署名及び認証業務に関する法律の第三条によりまして、本人印鑑を押捺した場合と同様に書面成立推定をされると、そういう機能を持っております。  したがいまして、その電子署名が確実になされている、有効であるということが確認されれば、後の裁判においてもその文書が本人の意思に基づいて作成されたものである、こういうことが推定をされると、こういう機能を果たすということになります。
  21. 角田義一

    角田義一君 現実的には、裁判になった場合は、ちょっと私もこのごろ実務からまた離れておるので分かりませんけれども、どういう形で裁判所に提出できますか、こういうものは。
  22. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 電子的な記録そのものを提出できるかどうかというのは、証拠調べ方法にもよるわけでございますが、どういう形でやるのか。裁判官の目の前で例えばカードリーダー等を利用してその有効性を立証するという形にするのか、あるいは第三者にそれをやってもらって書面化して証拠に出すのか、あるいは、そういう幾つかの方法が考えられると思いますが、これは、それぞれの裁判所の体制と、それから証拠調べに対する裁判官の指揮の在り方に懸かってくるのではないか。  また、現在まだ余りそういう経験がありませんので、そこはこれから工夫をしていくことになろうかと思いますが、いずれにしても、その電子署名が有効であるということがその裁判過程において立証されると。立証の方法については特段の制限はございませんので、目の前でやってもらうとか、あるいは第三者の信頼できる人にそれを確認してもらって文書化してもらうとか、そのやり方は幾つか考えられようかと思いますが。
  23. 角田義一

    角田義一君 いずれにしても、一つ課題としてあるということですな。  もう一つ前回質疑登記代理権が消滅するかしないかという問題と、それから、要するに司法書士さんが受任したときには、受任したときにはその代理権は有効であったんだけれども、いざ登記所へ出すタイムラグがありますよな、タイムラグの間に代理権が消滅しちゃったときにまたもう一遍その代理権を取り直すという必要があるのかないのかと。これが、旧法というか、新しい方じゃなくて、旧法のときに大問題になって、私は、十年ぐらい前にここで議論をいたしまして、ここのところを一体どうしたものだという議論をいたしました。  当時の質疑応答見ておりますと、もう一遍見直しますと、司法書士などが登記代理をするその前提として、売買なら売買成立をし、所有権が移転しているという実体があると。そう決まった権利関係登記する手続なんだから、仮に代理権が消滅したとしても、登記代理権ですよ、消滅したとしても、消滅させないということですね、させない。登記代理権は消滅させないというふうにしても、もう実体は動かないわけですから、動かないわけだから、何ら不利益はないじゃないかと。そして、双方代理という形で委任を受ける構造から見ても、不消滅でいいんじゃないか、こういう指摘をいたしたところであります。  当時の局長答弁になっているのは、私と同じようなことを言っていますけれども、法人資格証明印鑑証明取扱いについても当時の民事局方々が大変な御苦労をされて通達を出しているはずです。その通達によって実務が大変救われているというのは、通達以後ずっとそういう形で来ております。  これが、今度、全然取引が違ってきますわな。インターネットとか、電子証明とかやるでしょう。そういう場合に、ここが一体どうなるのか。この確立された一つ通達というのは今後も生きていくのか、それとも別の方法でやるのか、この辺は大きな課題だと思っているんですが、やはり法務省としてもちょっと知恵を出してもらわぬと、この前のように、ちょっとしゃくし定規にもう一遍出してもらうんだとか、もう一遍やってもらうんだということだけで果たして済むのかどうかという、こういう大きな問題が実務取扱いとして私はあると思うんです。  ちょっと細かな問題で申し訳ないんだが、そこをちょっと是非聞いておきたいし、どういうふうにしていくのか、どういう工夫をするのかということについてお尋ねをしておきたい。
  24. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 御指摘のようなことを考慮いたしまして、平成五年の不動産登記法改正のときに、それまでは依頼者が死亡した場合に、当然委任の終了ということに伴って代理権が消滅するという扱いであったものを、法律改正によりまして代理権が消滅しない、こういうことにしたわけでございます。その扱いは今回の不動産登記法でも変わっておりませんので、本人が、依頼者が死亡した場合でも代理権の消滅が当然に生ずるわけではないということでございます。  次に、問題は、紙の場合は問題が生じない、従前どおりの扱いでよろしいわけですが、電子的な署名の場合に、その有効性確認との関係で問題が生ずるのではないかという御指摘だろうと思います。  これは、電子署名電子証明書の場合、印鑑証明等と違いますのは、正に行使の時点有効性確認ができる、行使の時点有効性確認が行えるという仕組みになっております。これは、例えば現在の紙の印鑑証明書でございますと、例えば印鑑証明書が不正に取られたということが分かっても、その行使を防ぐ手段がないわけでございます。電子署名の場合には、そういう例えばICカードが盗まれたとか、秘密かぎが漏れた、そういう場合には直ちに失効の手続を取ることによって、その電子署名が行使されても有効性確認時点でもう既に失効しているから本人が署名したことではないということが明らかになる、そういう意味で、ある意味では非常に安全性が高まっているわけでございます。  ただ、それは同時に、行使の時点有効性確認をするということになりますので、例えば死亡によって失効してしまった場合に、そのままでございますと、御指摘のように有効性確認ができないということになるおそれもあります。その点について前回も御指摘を受けましたので、私どもとしても、法律的には死亡によって代理権は消滅していないわけですので、何らかの手段で確認できないかということを今検討しているところでございます。  ただ、これは、そういう個人の認証のシステム的な問題とも絡むわけでございます。これは個人認証の安全性をどういう具合に考えていくのか、行使の時点で間違いないものとしてできるだけスムーズに使用するということに力点を置けばその時点でということになりますし、そういう登記のものについてはある程度さかのぼった時点のものを認めるような方向で検討をするということも十分考えられますが、しかし同時に、例えば、一定時点過去のものとしては有効であったけれども現に失効している、それが例えば盗難によって失効しているような場合ですと、過去のものといってもいつ使われたか分かりませんので、なかなか、画一的にどういう形で扱うかというのはなかなか検討相当要する問題があるのではないか、こう思っておりますので、前回指摘を受けて、部内的にも現在も検討をしているところでございますが、私どもとしては、法律代理権が消滅していない以上、手続的にも何とか認める方向で工夫をしたい、こう思っておりますが、個人認証の在り方とも絡みますので、この場で直ちにこうすれば大丈夫だということはちょっと申し上げられないんですが、御指摘を踏まえて更に検討を続けたい、こう思っております。
  25. 角田義一

    角田義一君 これは、局長、大事なことなんで、特に実際に登記を担当する司法書士の皆さんは、これは最大の悩み事になっていると思うんです、今ね。したがって、またそういう関係者はそれなりの知恵を私は持っていると思いますから、法務省としても、そういう実際実務をやる方の意見も聞きながら、一番いい方法、合理的な方法、これをやっぱり探求する必要があるんじゃないかと。そして、きちっとしたものを作り上げていくという努力をしていただきたいと思いますが、いかがですか。
  26. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) ただいまも申し上げましたように、法律代理権消滅していないわけでございますので、何とかシステムにおいて対応できるような方法を考えたい、こう思って検討しているところでございますし、その検討に当たりましては各資格者の方々意見も十分伺って、いい方法を見付けたい、こう思っています。
  27. 角田義一

    角田義一君 あともう二つばかり聞いておきますけれども、前回のやっぱり質疑登記原因証明情報というものについてお尋ねをいたしました。  この登記原因証明情報というのは、御案内のとおり、裁判にもこれは使われるわけですね。この登記原因証明情報は、大変な重大な裁判証拠になるんですけれども、これをどうやって保存するのかと。  保存期間は、聞くところによりますと、添付した他の添付書類と同様に十年というふうに聞いています。だけれども、つたない経験でいうと、この裁判の争いというのは必ずしも十年後に起こるわけじゃないんで、下手すると二十年とか三十年後にすったもんだ起きることもあり得るわけですな。そのときに取り寄せようと思ったら、もう保存期間が切れておってございませんというんじゃ、これは裁判やる方にしてみると大変なことになるわけなんですね。  今までですと、紙でちゃんとあって、存在していたわけだから、ちゃんと保存しておいてもらえばいいんだけれども、この十年という期限、これは果たして合理的なのか。その実務の上からいえば、もっと長く保存しておいてもらいたいという要請は、私はそこのところ強いんじゃないかと思うんですね。  そうすると、それに対してどういうふうに対応するのか。私、技術的なことはよく分からないんだけれども、これだけコンピューターが進んじゃっているわけですから、何とか一工夫すれば十年以上もって、もたせる方法はあるんじゃないかというふうに思います。僕はそういう科学のことは疎いんで分からないんだけれども、でも、これだけ進んだら何とかなるんじゃないかなと思うんだけれども、どうなんですかな。まあ、どうなんですかなという質問はちょっと悪いけれども、どうしてくれるんですかというか。
  28. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 確かに、御指摘のように、裁判証拠として用いられるということまで考えますと、十年と言わず、少なくとも時効期間の二十年程度は保存をしたらどうかという御指摘を受けております。私どもとしても、それなりにもっともな御指摘ではないかと思っているわけでございます。  ただ、今回この登記原因証明情報を必ず必須のものといたしまして、しかも、従来は、出てきた登記原因証書は登記済証としてお返ししておりましたので登記所の方に保存することはなかったわけですが、今回、この登記原因証明情報という形で今後登記所に保存をしていく。で、紙で出たものについては附属書類として書庫に保存をいたしますし、電子的な情報で来た場合にはやはりその磁気ディスク等に保存をしていくということになろうかと思います。紙の場合であれば、その物理的な場所がどの程度要るのかという問題がございます。それから、磁気ディスクに保存する場合に、十年あるいは二十年ということになりますと、特に二十年の長期間になりますと、どのような形で保存するのがいいのかという技術的な検討も必要になります。  そういうことで、当面、現在の分類でいきますと十年ということになりますので、それでスタートをさせていただいて、早急に御指摘のような点を踏まえて、その保存の必要性、あるいはスペースの確保、技術的な問題と、こういうものを検討いたしまして結論を得たいと、こう思っております。  今後、これから登記原因情報については蓄積をいたしますので、極端なことを言うと、十年内に結論が出れば更に延ばすことは十分可能でございますので、まあそんなに掛からないと思いますが、そういうことで保存については検討をしていきたいと、こう思っております。
  29. 角田義一

    角田義一君 それから、あとはちょっと、あと二つばかり聞いておきたいんですがね、今回の新法の特色、特徴というのは、政令で定めることがうんと多いね。うんと多いんじゃないです、うんと多いんです。局長は国会が嫌いかい。  例えば、第三十六条というのを見ると、現行法の第三十六条は、「申請書ニハ左ノ事項ヲ記載シ申請人之ニ署名、捺印スルコトヲ要ス」と、これはまあ昔の言葉ですけれども、これは法律に書いてあるんですよ、三十六条に。それで、不動産の所在とか代理人の氏名とかばっと書いてある。こっち見たら、このオンライン申請書面による、この併用はできるんだけれども、このオンラインのところを見ると、不動産を識別するために必要な事項、申請人の氏名又は名称、登記目的その他登記申請に必要な事項として政令で定める情報と、こう書いてあるんだな。政令で定める情報登記所提供しなきゃならぬというんですよ。今の法律はぴしっと書いてあるんですね。ところが、こっちは、十八条は政令で定める情報だ。  それから四十七条。現行四十七条は申請書の受付というところにちゃんと書いてあるんですよ。「登記官申請書ヲ受取リタルトキハ」、これは昔の言葉ですね、「受附帳ニ登記目的申請人ノ氏名、受附ノ年月日」「受附番号ヲ記載シ申請書ニ受附ノ年月日及ヒ受附番号ヲ記載スルコトヲ要ス」と。文語調だよ。「但同一ノ不動産ニ関シ」「同時ニ数個ノ申請アリタルトキハ同一ノ受附番号ヲ記載スルコトヲ要ス」と。こういうふうにはっきりこれは法律に書いてあるんだよ。こっち、今度は十九条だ。「受付」を見ると、登記官は、前条の規定により申請情報登記所提供されたときは、法務省令で定めるところにより、当該申請情報に係る登記申請を受付をしなきゃならぬと、こうなっているな。これはみんな法務省法務省令だよ。もう切りがないんだよ。  六十条.それから、今の六十条に替わるものですね、これも全部法務省令。それから、本人手続の強化。これはまあ新しい制度だから余り言えぬかもしれぬけれども、ほとんど細かいことは法務省令ですよ。そして、あれだな、新しい法律の二十六条を見ると、この章に定めるもののほか、申請情報提供方法並びに申請情報、併せて提供することが必要な、まあすべてだな、必要な事項は政令で定めるということだよ。お上がやるということだよ。国会は口出すなと、こういうことだな。えらい国会も、まああれだよね、うるせいからもうやめておけということなのか。  どうしてこうなっちゃったんですか。まずそこを説明してください。
  30. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 確かに、今回の法案では相当多くの部分が政令あるいは省令委任されております。  基本的な考え方を御説明いたしますと、やはり国民権利義務に直接関係する事項、それからこの登記制度の骨格を成す事項、これについては法律規定をしていく、それを運用するに当たっての技術的、細目的事項については政令又は省令で定めていくと、こういう基本的な考え方を取っております。  一つは、実際に技術的、細目的な事項を逐一法律に書きますと、条文が多くなって細かくなり過ぎるということが一つと、それから技術的、細目的事項につきましては、特に最近のようにコンピューターを中心とする技術変化が激しい時代に、それに即応して変えていく必要も生ずる場合が多々ございますので、そういう意味では省令で定める方が迅速にそれに対応できるだろうと。そういうようなことから、技術的、細目的事項は主として省令あるいは政令に委任をするという考え方を取っております。  これは、最近の立法例においては大体そういう考え方が取られておりまして、後見登記等についてもそのような考え方で基本を法律で定めて技術的な点については省令委任をしていると、こういう形になっております。そういうことから、今回の法案につきましても、そういう整理をいたしまして、技術的な各項目については省令で定めるとしたわけでございます。  確かに、御指摘のように、法律だけを見ておりますと、省令に任されている部分が多くて分かりにくいということもあろうかと思いますが、現実の運用に当たりましては、当然、政省令、十分専門家方々あるいは利用者方々意見を踏まえて適切なものを作って、利用に当たっては紛れのないような広報、周知活動をしたいと、こう思っております。
  31. 角田義一

    角田義一君 今更国会が国権の最高機関で唯一の立法機関だなんということを振り回すつもりはありませんけれども、やはり今までの旧法で、それは法律できちっとされていたものが、それは時代の進化でこういう機械化されていくんだからということかもしれませんけれども、必ずしも僕はそうじゃないと思うんですね。それだけじゃないと思いますよ。やっぱり、法律で定められていたものはできるだけやっぱりそれは移行して、新しい新法でも法律で書くという精神を持っていてもらわないと基本的にはまずいんじゃないかというふうに僕は思いますね。  したがって、省令を、政令を作るときに国会も怠慢でいるわけにいかないから、またしかるべき時期にその政省令のどういう状況になっているかきちっとした報告を受けながら、国会としても、やっぱりあんた方に任せるわけにはいかないところもあるかもしれないからきちっと注文を申し上げていきたいと、注文は申し上げて、付けていくのが私は大事だというふうに思っているんですよ。それはどうですか。よろしいな、別に国会のやることにあんた文句言うことねえやろう、どうですか。
  32. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) もちろん私どもとして、国会の御意思があればそれはそれとして尊重して省令の作成に当たりたいと、こう思っております。
  33. 角田義一

    角田義一君 それとさっき、ちょっとあなたさっき申し上げたけれども、やっぱりこれ、ほとんど実務になっていくと司法書士さんとか土地家屋調査士さんが実際におやりになるわけですね。そういう人たちが、もうこれは政令が、どういう政令ができるか、政省令できるというのは最大の関心の一つだと思うんですね。そうすると、当然のことながら、そういう方々等に、聴取じゃない、聴取というのはお上が聞くことだから私は嫌だと言うんだよ、意見交換と言っているんだけれども、意見交換をしながら実務がスムーズにいくように相当心掛けてもらわぬといかぬと思うんですけれども、いかがですか。
  34. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) その点は御指摘のとおりだろうと思っています。  私どもとしてもどういうことを考えているかを理解していただく必要がございますし、また、実際の実務に当たっている専門職の方々がどういうことを考えているのかは私どもも是非知りたいと、こう思っておりますので、従来から十分な意見交換を行ってきたつもりでございますし、今後の政省令の策定に当たりましても十分私どもも考えを説明したいと思いますし、また、専門職の方々の御意見も十分承って、いい政令、省令を作っていきたいと、こう思っております。
  35. 角田義一

    角田義一君 終わります。
  36. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 前回も若干審議はさせていただきましたが、今回の不動産登記法案は明治三十二年に作られた法律を全面改正すると。もちろん、時代の変化に伴って、オンライン申請の導入に伴って申請手続規定を見直すほかにも、形式面も含めると随分多数の改正項目はあるようでございますが、ともかく根本は、年間約千七百万件もの申請がある、国民にとってのある意味では身近な制度を改めるということになるんだろうと思います。  したがって、国民に向かって是非説明しておいていただきたいのは、今回の改正に当たっては、利用者である国民意見を踏まえるという観点からどのような検討を行われたのかという点を御説明をいただいておきたいと思います。
  37. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 今回の不動産登記法改正に至る経過でございますが、法務省では、平成十三年度と十四年度にこのオンライン登記申請制度研究会を設置いたしまして、そこでオンライン化の法制面あるいは技術面の検討をいたしました。その研究会のメンバーとしては、利用者、学者、専門資格者など各方面から入っていただいて、多方面にわたる検討をしていただきました。  その結果を平成十五年四月にまとめまして、この報告書として公表いたしまして、意見照会の手続を行いました。寄せられました意見を基にいたしまして更に担当者が検討を加えまして、平成十五年の七月に担当者骨子案と、こういうものをやはり公表いたしまして、意見照会をしております。そこで寄せられました意見に基づきまして原案を策定して、法制審議会で御検討をいただいた、最終的に法制審議会の要綱、不動産登記法部会において要綱案骨子をまとめていただいて、それを総会で御承認いただいたと、こういう経過をたどっております。  この法制審議会にも当然、利用者あるいは学者、専門資格者方々に入っていただいておりますので、そういう意味では、各メンバーにそういう登記制度にかかわる多方面の方々に入っていただくということと、意見照会を二回にわたって行っていると、こういうようなことから、私どもとしてはかなり幅広い御意見をちょうだいした上で今回の法案を取りまとめたものと、こう思っております。
  38. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一点は、この法案を見る限りは、高度情報社会に対応するわけですから、法律規定を見るとコンピューター登記簿規定を一本化していくという流れになっているわけであって、ただ、現実を見ると、すべての登記所がコンピューター化されているわけではないわけであって、このオンライン申請をきちんとやろうとすれば当然その登記簿のコンピューター化、これが早期に完成されなければ利用者の利便にも困るわけであって、今、現実にこの登記簿のコンピューター化、現状どうなっているのか、いつまでに完了するのかと、この二点お願いします。
  39. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 現在、大体不動産登記土地、建物を合わせまして約二億七千万筆個ございます。そのうち、約一億九千百万筆個、大体七一%がコンピューター化されております。まだ、そういう意味では残り二九%がこれからということになりますが、今、鋭意移行作業を進めておりまして、平成十九年度末までにはほぼコンピューター化が完了するのではないかと、そのために全力を挙げて頑張っているところでございます。
  40. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうすると、この法案できます、いろんなことでやって、まずはこのオンライン申請登記簿のコンピューター化が終了した登記簿から順次導入されるということになるんだろうと思うんですけれども、ともかく、このオンライン申請ができる登記所ができるだけ早く全国展開する必要があるということなんですけれども。  まず、この法案通ると、当初、いわゆる不動産登記オンライン申請ができる、こういう登記所は、施行当初どの程度を予定しているのかと、そして、これを全国の登記所に導入する、いつごろ、これも確認をしておきたいと思うんです。
  41. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 現在、鋭意開発を進めているところでございますが、この法律成立した場合には、できれば来年の三月には第一庁をオンライン化したいと、こう思っております。これは、何分初めてのことですので、やはり最初は一庁で、そこでいろいろ検証いたしまして、万一不具合があれば直ちに手直しをするということになりますし、問題がなければ順次どんどん広げていくということになろうかと思っています。  全体としては、少なくとも五、六年内にはすべての登記所をオンライン化したいと、こういうつもりで考えております。
  42. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そうすると、まず来年三月に第一庁、これやりますよね。ただ、現実は今七一%ぐらいまでコンピューター化ができているということがありますよね。そうすると、この不具合かどうかというのを見る形を見て、五、六年間とおっしゃいましたが、これは漸次どんどんどんどん増やしていくという格好を取られるのか、一発目がまあいきゃ、今できているところをぼんとやるというような形を取られるのか、どちらを考えていらっしゃいます。
  43. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これは、順次拡大していくという方向になります。
  44. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 是非、そのことをやらなければこの法律の意味はないわけであって、そこもきちんと、また始めるところに関しては、もうさっきから議論になっていますが、もちろん国民に対する周知徹底の問題、さらに、土地家屋調査士の皆さん、司法書士の皆さん、どこから始まるのか皆さんまだ全然分かっていないところもあるわけですから、ここからこうやり、大体こうなりますよということは、それは連携を取りながら、実際対応するのはその方々ですから、それもやっていただきたいのと。  最後に御質問しておくのは、やはり、これも申し上げましたが、国民にとって言わば一番重要な財産であり、経済活動の基盤の不動産権利を、これを公示するものが、今回、登記制度が大きく変わるわけですから、国民に対して、先ほど国民意見も聞きながらやってきましたとはおっしゃいますが、国民にとってみれば突然権利書がこれから消える話でございますから、今度は番号に変わる話でありますから、とにかく周知徹底、これも国民にすることが大事だと思っておりますし、どのような形で法案通った後国民制度内容を周知徹底していこうとされているのか、広報活動、こんなことも考えているというようなことも含めて御答弁をいただいて、質問を終わりたいと思います。
  45. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、従来に比べますと相当登記制度変わってまいりますので、これについては当然、法務省として、新法案内容説明したパンフレットを用意いたしまして、法務局の窓口はもう当然のことながら、関連するところにお配りをする、特に司法書士あるいは土地家屋調査士方々につきましては、これは連合会にお願いをして、その方々にすべてそのパンフレットを配付するということを考えております。  また、特にオンラインということもありますので、法務省のホームページには今回のことについては相当詳細な解説を載せて、そこを見ていただければ分かるようにということをしたい。特に、オンライン化した登記所がどこかというのは、それを見れば直ちに分かるようにということは考えております。  そのほか、登記所の窓口での相談等も更に充実をさせて、新しい手続についても丁寧に説明をするということをしていきたいと。  いろいろな形で今回の法案内容国民方々に知っていただく努力をしたいと、こう思っております。
  46. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  47. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  先ほど不動産登記法案の提案の理由説明をお聞きをいたしました。この法案が、不動産登記制度について、登記正確性を確保しつつ国民利便性の一層の向上を図るためと、こういう御説明でありました。  利便性向上、確かに重要であります。同時に、やはりこうした土地をめぐる様々なトラブル、事件、詐欺などを考えますと、やはり正確性、そしてまた真実性、信頼性の向上と、確保にとどまらず向上ということも必要だと思うんですが、その点で大臣の所見と、この法案がどうなっているのか、まずお願いいたします。
  48. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 最も基本的な問題でございます。委員が今御指摘のとおり、国民の重要な財産である不動産に関する権利保全し、不動産取引の安全と円滑に資するということを目的とする不動産登記制度におきましては、利便性向上だけではなく、登記正確性の確保を図ることが重要でございます。  今回の法案改正事項のうち、まず本人確認正確性確保のためのものといたしましては、まず第一に登記済証と比較して偽造が困難である登記識別情報制度を導入すること、二つ目が登記識別情報提供がない場合の本人確認手段である事前通知手続を強化すること、三つ目に資格者代理人による本人確認情報提供制度の導入等があります。また、登記内容正確性の確保に関するものとしては、四番目に登記原因証明情報提供を必須のものとしていることがございます。  したがいまして、これまで述べましたような今回の改正法案は、国民利便性向上を図るとともに、登記正確性を確保するという観点からも必要な事項を十分盛り込んだものであると考えております。
  49. 井上哲士

    ○井上哲士君 今後、先ほどもありましたように、具体的には多くは政令や省令にゆだねられるということになりますし、様々な現場での運用ということも含めまして、関係団体とかまた登記所職員の皆さんとの十分な意見交換が必要だと思いますし、それは十分にやっていくということが繰り返し答弁がございました。  是非お願いをしたいわけですが、今信頼性の確保を向上させるということを申し上げましたが、その点から幾つかお聞きをしますけれども、十九条の二項で、「同一の不動産に関し二以上の申請がされた場合において、その前後が明らかでないときは、これらの申請は、同時にされたものとみなす。」と、こういう規定があるわけですが、これはどういうようなケースを想定をして、そしてその際の内部の処理、手続というのはどのようになっていくのか、その点をお願いします。
  50. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 不動産に関する登記申請におきましては、順番が問題になることがあります。先に申請されたものが優先するという扱いになっておりますので、そういう順番が大きな意味があるということを踏まえまして、その前後が明らかでないときには同時にされたとみなすという条文をわざわざ置いているわけでございます。  ただ、実際上は、例えばオンライン申請を考えますと、これはオンラインの場合には、もう来ると同時に受付の処理がされますので、同時ということはまず考えられません。それから、窓口に来た場合におきましても、通常は担当者が来た申請について順次受付を行っていきますので、やはりこれも同時ということは普通は考えられない。まあ、何かの事情でたまたまそこが混乱をしたりして順番が分からなくなったと、そういう極めて限られた場合以外には通常は起こらないと思っています。  ただ、今回郵送申請を認めますので、郵送の場合ですと、これは固まりでそれぞれ登記所に来ますので、その同じ一回の配達で来たものは、これはもう同時と考えるしかありませんので、これは同時ということで、今後は郵送に関しましてはこの同時ということが増えてこようかと思いますが、従来のような扱い、窓口できちんと受け付けている、あるいはオンラインで申請をしていただくという場合には、この例外的な場合に当たるのは本当に限られているのではないかと、こう思っています。
  51. 井上哲士

    ○井上哲士君 郵送の場合とオンライン、窓口、それぞれの前後というのはどの段階で判断をすることなんでしょうか。
  52. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) これは、その登記所に届いたときに受付をすると、こうなっておりますので、登記所のシステムの方にオンラインで来たものと、それから窓口で受け付けるときにも受付をして、同時にその順番が分かるようにするという予定になっております。したがいまして、オンラインで登記所のコンピューターに入るのと、それから窓口に来たのを職員が来たということでそのコンピューターの方に登録をする、その順番で決まりますので、これも同時ということはなく、必ず順番が分かるようにする予定でございます。
  53. 井上哲士

    ○井上哲士君 郵送、郵送の方は。
  54. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 郵送の場合も、郵送で来た時点で職員がその処理をいたしますので、ですから、ただ郵送で一括して来たものについては同じ順番ということにはなります。
  55. 井上哲士

    ○井上哲士君 次に、二十四条一項の件ですが、これは登記官による本人確認の問題です。申請人となるべき者以外の者が申請していると疑うに足りる相当な理由があると認めるときは出頭や質問などで申請人申請の権限の有無を調査しなければならないと、こうなるわけですが、この疑い得るに足りる相当な理由というのは具体的にはどういうケースなのか。これまでも利用者から登記済証とか実印が盗難にあったので受理しないでくれと、こういうような連絡があって、現にそういうような運用をされてきたと思うんですが、こうしたこれまでの内部処理基準との整合性ということも含めてお願いします。
  56. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 基本的に、例えば所有者の方から登記済証あるいは実印が盗難に遭ったというような形で盗難届を添えてこちらに連絡があると、そういうような場合であれば、これはそれを用いた登記申請がなされた場合には当然疑うに足りる相当な理由があるということになろうかと思います。  また、警察が捜査をしている過程で、どうも詐欺事件としてこういうことがありそうだというようなことで登記所の方に連絡がある場合もございますが、それは警察がそれなりに捜索をして、捜査をして事情を把握した上で連絡をしていただいたような場合には当然疑うに足りる相当な理由があると、そういうことになろうかと思います。  大体、以上のようなものが典型例として考えているところでございます。
  57. 井上哲士

    ○井上哲士君 じゃ次に、二十三条の四項第一号の問題ですが、この申請代理人によってなされた場合に、登記官が当該代理人から法務省令で定めるところにより当該申請人が第一項の登記義務者であることを確認するために必要な情報提供を受け、かつ、その内容相当と認めるときは第一項の事前通知規定は適用されないと、こうなっているわけですが、ここで言うこの法務省令で定める事項、これは具体的にはどのようなことが想定をされているんでしょうか。
  58. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) この事項につきましては、まず当然のことながら登記申請を業とすることができる代理人であると、そういうことを言っていただく必要がありますが、そのほかに、まず本人確認情報の具体的な内容といたしましては、例えば本人と面談等をした際の状況、それから資格者がその申請人と面識があるというときにはその旨と面識が生じた経緯及び時期、それから資格者が申請人と面識がないときは、資格者が申請人本人確認した際に利用した身分証明書等の本人確認資料の種類及び内容、多分典型的なものとしては免許証とかパスポートがあろうかと思いますが、そういった具体的内容を定めるということを検討しております。
  59. 井上哲士

    ○井上哲士君 もう一点、六十一条で言う登記原因を証明する情報、これは具体的にどのようなものをお考えで、その真実性を担保する方策というのはどのように取られているのか、お願いします。
  60. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) この六十一条の登記原因を証する情報といたしましては、登記の原因となった事実又は法律行為及びこれに基づく物権変動の生じたことを証する情報ということでございますが、例えば売買契約に基づいて所有権移転を申請するという場合でございますと、その売買契約の存在、それから当該売買契約に基づく所有権移転があったということ、そういうことが分かるような情報、したがいまして、具体的にいつだれとだれとで売買を結んだと、で、代金の定めがあると、そういうようなことが必要になろうかと思っております。  これの真実性の担保ということでございますが、これは登記面上不利益を被る者、すなわち所有権を失ってしまう立場にある売主、この方が登記原因証明情報に文書でいえば署名押印、あるいは電子情報でいただく場合には電子署名をしていただくと、そういうことによってその真実性の担保をするということになろうかと思います。  また、単独申請の例えば相続というような場合には、客観的にその内容を証明するに足りるもの、例えば相続であれば戸籍謄本と、こういうようなものを付けていただくことになろうかと思いますので、その証拠の種類によって真実性の担保が図られると、こういうことを考えております。
  61. 井上哲士

    ○井上哲士君 この方法によって権利書がなくなるということがずっと議論になっているわけですが、これまでは売買契約登記申請に必要な最重要の書類として代金決済と引換えに交付されているという慣行があったと思うんですね。ですから、金は払ったけれども登記はされないと、こういうような事態が起きないために非常によく機能をしていたと思うんですが、こういう機能については今後はどう代替をされていくんでしょうか。
  62. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 権利証が代金決済の際の重要な役割を果たすというのは、権利証を渡すことによって登記が可能になるということに着目して実質的な同時履行の関係を維持するという役割を果たしていたんだろうと思います。今後は、登記識別情報を利用する場合には、その登記識別情報が同じような機能を果たせるということになろうかと思います。  ただ、この登記識別情報は、権利証と違いまして、中身を見せるわけにはいかないものですから、仮に書面でやる場合にはやはり封をした形で相手に渡すしかない。その前提としては、まず有効性確認をしていただいて、登記識別情報であるという有効性確認した上で、これは有効なものですと、ただし中はお見せするわけにはいきませんと、そのような形でお渡しいただくというやや面倒な手続にはなろうかとは思いますが、そのような形を取れば実質的には同じ機能を果たせますし、またオンラインで申請をするのであれば、正にオンラインのそのときに受付まで行きますので、逆に実質的な同時履行というのはかえって従来よりも確保されるのではないかと、こう思っております。
  63. 井上哲士

    ○井上哲士君 最後に、この権利書がなくなる関係で、やはりしっかりとしたものとして確認をしておきたいというのは随分感情としてもあるわけですね。  そこで、いわゆる登記完了通知というものを完了証というような形にしてはどうかと、こういう強い意見もあるわけですが、この辺はどのように検討をされているんでしょうか。
  64. 房村精一

    政府参考人(房村精一君) 御指摘のように、従来の登記済証につきましては、次の登記申請に必要ということもありますが、それと同時に、この登記を本当に終わっているんだと、そういうことをほかの人に分かってもらうための証拠として用いられていたという御指摘もございますので、今回の登記識別情報にしてしまいますと、これは人に見せるわけにいきませんので、そういう役割を果たせないということがあります。  そういうことから、従来の登記済証の持っておりました登記が終わったということをお知らせする機能として登記完了通知というものを考えておりますが、これも単なる通知書ではなくて、御指摘のように、ほかの人たちに登記が終わったということを分かっていただくのに使えるようにということで登記完了証ということにして、その当該登記官登記官印を押して、ちゃんとした言わばそういう証明書として使えるようなものを発行するということで考えております。
  65. 井上哲士

    ○井上哲士君 終わります。
  66. 山本保

    委員長山本保君) 他に御発言もないようですから、両案に対する質疑は終局したものと認めます。  これより両案について討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  まず、不動産登記法案採決を行います。  本案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  67. 山本保

    委員長山本保君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、角田君から発言を求められておりますので、これを許します。角田義一君。
  68. 角田義一

    角田義一君 私は、ただいま可決されました不動産登記法案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党及び日本共産党の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     不動産登記法案に対する附帯決議(案)   政府は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。  一 本法におけるオンライン申請手続の導入に当たっては、広く国民各層に周知徹底を図り、国民不動産等に関する権利が一層保全されるよう適切な運用に努めるとともに、登記識別情報電子署名などの情報が、個人の権利及びプライバシーにかかわる重要情報であることにかんがみ、万全な情報管理体制を構築すること。  二 本法の施行に必要な政省令の制定に当たっては、専門資格者の団体から十分な意見聴取を行い、その専門的知見を十分活用し、本法の立法趣旨と適合するよう配慮すること。  三 オンライン申請においては、登記手続と当事者間の代金決済が同時履行できるよう、登記代理権不消滅の規定の実効性を確保し、関係者の電子署名電子証明書有効性検証の権限を資格者代理人に認める等、万全な基盤整備に努めること。  四 登記手続の適正かつ円滑な実施に資するため、オンライン申請においても、無資格者が業として行う登記申請行為を調査するための適切な措置を講ずること。  五 新たに導入される本人確認に関する登記官の調査権限の運用については、不動産取引及び登記手続等に支障を来さないよう、十分に配慮すること。  六 公示制度の信頼性を確保し、不動産取引の安全を図るため、登記原因証明情報内容の長期保存をすることができるよう適切な措置検討すること。  七 登記所備付地図の一層の整備促進を図り、そのための十分な人的物的整備に努めるとともに、それを利用する者にとってより利便性の高いものとするため、専門資格者の団体から十分な意見聴取を行い、その在り方について検討すること。  八 表示に関する登記申請における添付書面及び事実関係を疎明する書面等の取扱いについては、登記官による審査迅速性を確保し、国民の負担を軽減するため、資格者代理人制度活用を図ること。  九 不動産取引及び登記実務等の重要性にかんがみ、本法の施行状況、今後の技術進歩等について常に注視するとともに、改善の必要が生じたときは、速やかに所要措置を講ずること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いいたします。
  69. 山本保

    委員長山本保君) ただいま角田君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  70. 山本保

    委員長山本保君) 全会一致と認めます。よって、角田君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、野沢法務大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。野沢法務大臣
  71. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) ただいま可決されました附帯決議につきましては、その趣旨を踏まえ、適切に対処してまいりたいと存じます。
  72. 山本保

    委員長山本保君) 次に、不動産登記法施行に伴う関係法律整備等に関する法律案採決を行います。  本案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  73. 山本保

    委員長山本保君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、両案の審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  74. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  75. 山本保

    委員長山本保君) これより判事補及び検事弁護士職務経験に関する法律案について質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  76. 松村龍二

    松村龍二君 自由民主党の松村議員でございます。  判事補及び検事弁護士職務経験に関する法律案について質疑を行いたいと思います。  二年間にわたりまして司法制度の改革について政府において鋭意検討いたしまして、その一環として最後にこの法務委員会においてこの法律案について審議するわけでありますが、考えてみますと変な法律だなというふうに思う人もいるんではないかなと。といいますのは、一つの職業に就く人がほかの職業に二年間武者修行してこないと一人前でないということを自ら言っているような法律でありまして、そのこと自体がまずおかしいなと。  話に聞くところによりますと、アメリカ等では、判事になる人は弁護士経験を経て人生の酸いも甘いも心得た人が判事になると。全部が全部そうかどうかは知りませんが、そういうような制度であると。国の仕組みが違いますので初めから判事として採るということも分からぬではないわけですけれども、しかし、巷間言われておりますことは、判事さんが余り司法試験に苦労して世の中のことを勉強する暇がなかった、それで法律しか知らぬ、あるいは社会的常識を欠けるというようなことが指摘されて、そのことをこの法律によって補おうというのかなというふうにも感じるわけです。  それから、いろいろ武者修行してくる場合に、民間会社では会社員を、まずその社長、ワンマン社長が自衛隊へ行ってこいと言って自衛隊で汗水垂らして集団生活を経験させて、それからその会社で使うというふうな、よそで経験させるということもあるわけですが、それじゃ判事が自衛隊へ行って、まあイラクへ行けとは言いませんけれども、自衛隊へ行くということではなくて、なぜ弁護士の事務所へ行くのかなといったことも感じるわけです。  それから、私も長い間ある役所におりましたけれども、その採用の新任教育を受け持たされたことがありますが、人事課長の方針で、よその省庁に負けるな、少しでも国家公務員試験で一番から十番に合格したような人を採りたい、そしてよその省庁とのステータスを競うというふうな人事課長もいましたし、そういうことでは治安官庁として具合悪いんじゃないか、もっと運動部等を経験して人間性が豊かな人を入れた方がいいんじゃないかという人事課長の方針でそういう人を中心に採用していた時代もあるわけでありまして、かといって今の判事の選任がそのように自在に選べるわけでもないということからこのような制度を持つのかなと。  それから、外国ではやはりこういうようなこともやっているのかどうかということを含めまして、このような制度を設ける目的、意義。それから、判事補のみならず検事、判事が世間から隔絶された、焼き鳥屋にも行けない、まあ例外もあろうかと思いますけれども、そういう方が多いと。検事さんの方は必ずしもそうでもないじゃないかなというふうにも思いますが、検事も併せてこの制度弁護士経験をさせるということがどのようなことなのかなということで、この制度を設ける目的、意義、あるいはこの経験することのメリットについてお伺いします。
  77. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) ただいま委員のいろいろ御意見賜りました。これは、法律を設ける理由がございますので御理解を賜りたいと思います。  まず、裁判官検事、いずれにいたしましてもやっぱり事件を通じて世の中を見る、こういう制約があるわけでございます。そういう点からいけば、どうしてもその見る視野が非常に狭くなる、あるいはその事件の関係でという、そちらの側面から見ていくということで見方が一方的になるおそれがあるということでございまして、そういう点につきまして、もう少しやっぱり社会の実態をよく見た上で、その上で冷静な判断、正しい判断をしていく、これが現在も望まれていると、こういう時代でございます。  したがいまして、一度、事件ということではなくて、民間に出て、あるいは弁護士をやれば事件そのものではなくて事件の紛争予防という点もございますし、それ以外の活動もあるわけでございます。そういうものについて実際に触れることができると。で、実際の社会はどう動いているか、これをよく実感した上でその経験職務に生かしてほしいということでございます。  それともう一つは、大事なことでございますけれども、自らの組織を外からきちっと見るという経験でございまして、どこの組織もいいところと悪いところがございますので、その悪いところはしっかり見て、こうあってはならないということをよく学んだ上で元へ戻るということ、これは非常にやっぱり有意義なことだろうということでございます。  したがいまして、他職経験のこの法律でございますけれども、この弁護士になることだけではございません、それ以外にもいろいろな外部的経験をした上で最終的にいい裁判をしていこう、いい司法を実現していこうと、こういうことになるわけでございます。そういう目的を持ってこの制度を作らしていただいたということでございます。  それで、これ外国の制度についてでございますけれども、このような制度は、ちょっと私ども調査している限りではございません。我が国特有のものということになると思います。  それから、検察官について、裁判官とは違うじゃないかということでございます。  確かに、検察官は生の事件のときに実社会に触れながらその捜査を行っていくという点では裁判官と違うということはそのとおりでございます。ただ、私、先ほど来申し上げていますように、それはやっぱり事件というフィルターを通して物を見るということが常でございまして、その事件以外の社会をどういうふうに見ていくかという点はやはり足りないということにもなりますし、外から自分の組織を見直していく、あるいは国民司法に対してどういう期待を持っているかと、こういう点についてやっぱり自ら経験をして、それを持って仕事をやっていただくという点ではこれは同じ問題だろうと、こう考えておるわけでございます。
  78. 松村龍二

    松村龍二君 それに加えて、人権擁護というような観点は、違う弁護士の立場から見るということがプラスになるのかなというふうに思いますが。  次の質問は、私も治安官庁におりまして、今、国会周辺で警備している警察官の数見ましても非常にふんだんに人的パワーは使うわけですが、いざ政治家になって自分の事務所で秘書一人雇うか雇わぬかということになりますと、本当に一人一人が大変なことになるわけ、数の感覚が違うわけですね。  このような制度を作りまして、弁護士職務経験する判事補及び検事の数の見込みについて、最高裁及び法務省にお伺いします。  それと、先般も法務委員会で質問したことあるんですが、私の北陸の小さな県では検事さんが五人しかいない。検事正が一人、次席検事が一人、この方はデスクワーク、あとの三人が事件の処理と公判廷の維持ということをやっていますと大変な、その一人がまた故障ということになったりしますと非常に大変な状況ですが、そういう中からこういうふうに弁護士事務所に経験に行くということになって地域のそういう体制が弱体化するという心配がないのかどうか、お伺いします。
  79. 山崎敏充

    最高裁判所長官代理者山崎敏充君) 私ども、この弁護士職務経験制度、非常に意義のあることだという具合に考えております。この制度を実り多いものにしていかなければならないわけですが、そのためには判事補がやはり主体的かつ積極的に取り組むということ、これが必要であろうと思います。  そういうことで、私どもも多くの判事補がこの制度の意義を理解して積極的に希望を申し出てくれるということを期待しておるわけでございます。ただ、何分ここで法案審議いただいておるというこういう段階でございまして、判事補からどの程度具体的に希望が出てくるかというのは現時点では判然としないところがございます。そういう意味では、明確にどれくらいの数ということを申し上げるのは難しゅうございますが、ただ、判事補の希望の状況ですとか、ただいま委員が御指摘になられました事件処理の体制の確保、これも非常に重要なことでございますので、そういったことを考慮しつつ、制度のスタート時点では少なくとも二けたに乗る規模で実行したいという具合に考えておるところでございます。
  80. 大林宏

    政府参考人大林宏君) 弁護士職務経験させる検事の数につきましては、受入先となる法律事務所がどの程度確保できるのかという見込みや、検事に対する研修、教育の在り方を踏まえて決定する必要がございまして、具体的にはまだ決まっておりませんけれども、本制度運用が定着した段階では毎年数名から十名程度となることを想定しております。  もう一つの地方における検察庁の業務に支障を与えるおそれはないかというお尋ねがございましたが、この派遣につきましては計画的に行い、そういう事務処理に影響を与えないようにこれも十分配慮していきたい、このように考えております。
  81. 松村龍二

    松村龍二君 最後の質問ですが、判事補なり検事さんが弁護士事務所へ行って、判事さんの場合は元々判事になりたいという気持ちで、決意で判事になったんでしょうからそういうことは少ないかと思いますが、弁護士事務所へ行って、ああ、この仕事はもうかるなと、それじゃもう弁護士になっちゃおうかということで、せっかく制度が取り入れられたところで何か次々に検察あるいは判事、裁判所から人材が流出していくというようなことのないようにひとつ見張っていただきたいと思いますが、いかなる制度もその成否はこれをうまく動かすことができるかに懸かっているかと思います。本制度目的を十分達成するために、本制度運用に当たる最高裁また法務大臣の御決意をお伺いします。
  82. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) この制度は、判事補検事弁護士としての職務経験することを通じまして裁判官及び検察官としての能力や資質の一層の向上職務充実を図ろうとするものでございます。広く、かつ高い見識を備えた裁判官及び検察官を育成する上で大きな意義を有するものでございます。  法務省といたしましては、本制度を円滑に運用し、その目的を十分に達成するため、日本弁護士連合会と密接に連携を図りながら環境条件の整備等に努めてまいりたいと考えております。裁判がより的確に、そしてまた人間味にあふれた結果が得られることを期待をいたしておるものでございます。
  83. 山崎敏充

    最高裁判所長官代理者山崎敏充君) この制度の意義につきましては、ただいま法務大臣答弁なされたとおり、私どももそのように考えているところでございます。  この制度目的を十分に達成するためには、先ほども申し述べましたが、判事補がやはり主体的、積極的に取り組むという、こういうことがどうしても必要でございます。そのためには、弁護士事務所の職務判事補にとって魅力的なものでなければならない、これが大事なポイントになろうかと思います。  そういうこともございますので、最高裁判所といたしましては、判事補の積極的な意識の醸成に努めるとともに、日本弁護士連合会と密接に連携協力いたしましてそうした環境条件の整備を図るなど、この制度の円滑な運用に努めてまいりたいと思っております。
  84. 松村龍二

    松村龍二君 終わります。
  85. 角田義一

    角田義一君 民主党・新緑の角田です。  私の敬愛する松村先生から、この法律は変な法律だなと冒頭一発かまされたんで、えらいことになったなと思っているんですけれども。  まあ、私は大分現場離れちゃっていますから余り偉そうなこと言えませんけれども、やはり、特に裁判官の皆さんはある程度料理されたごちそうを法廷に持ってきていただいておるわけで、生の素材というのは、これはもう弁護士なり検事検察官なりが生の素材を料理するというか対応して、そしてある程度皿に乗せて裁判所へ持ってくるわけなんで、裁判所は余り血の滴るようなステーキは乗ってこないわけですよ。だけれども、我々は、弁護士というのは本当に生の事件というか現実と接触するわけで、その中で果たしてどういう事実をどういうふうに認定をして、そしてどういうふうに法律構成をしていったらいいのかというところに非常に苦労する面もあるし、それから、私のつたない経験でいうと、生の人間と正にぶつかるわけですから、そこの人間の喜怒哀楽というか、そういうものをまともに受けるわけですよ。そういう中で、今回の法律目的であります一つの豊かな人間性とかあるいは高い見識だとかいうものは、そういう生の事実と数多く直面する、対面をするという中から自然に養われていくものじゃないのかなというふうに私はつたない経験から申し上げたいわけで、是非、松村先生にも御理解をいただきたいというふうに思っておりますが、そういう意味では、ある意味では画期的な制度ではないかというふうに思います。ただ、これを運用するに当たっては、ちょっと後からお尋ねしますけれども、いろいろ難しい問題もあるように思うんですが。  衆議院で大臣が、この制度は法曹一元の一里塚だということをお話しになって、これが一里塚発言というんでえらく有名になっちゃって、それが独り立ちして走っているような感じもしないわけではありませんけれども、この制度について法務大臣としてのお気持ちをまず聞いておきたいと思います。
  86. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 衆議院での御議論を踏まえてのお話と承りますが、司法制度改革審議会におきましては、法曹一元という言葉は多義的でございまして、この文言にとらわれることなく、二十一世紀の我が国の社会における司法を担う質の高い裁判官を確保する等の観点から、判事補裁判官職務以外の多様な経験を積ませる制度整備、また弁護士任官等の進言等が提言されておるところでございます。  政府といたしましては、このような提言に沿って必要な方策を講じているところでございますが、本法案もその一環として立案、提出させていただいたものでございます。判事補裁判官職務以外の多様な経験を積むことを通じて、知識経験が豊かで広い視野を有し、国民の要請にこたえることができる高い資質を有する裁判官が得られるものと考えております。  このような質の高い裁判官を得ようとする判事補経験多様化は、いわゆる法曹一元化の目指すところと共通の目標に立っていると考えるものでございまして、今後とも国民が求める質の高い裁判官を確保するために必要な方策を講じてまいりたいと考えております。
  87. 角田義一

    角田義一君 よく分かりました。  これは、そういうのは難しい問題なんですけれども、弁護士事務所と雇用契約を結ばれる判事補さんなり検察官は、この法律によれば、国家公務員としての立場というか、身分というか、地位というものは持ったまま行かれるわけですね。これはどうして持ったまま行くんでしょうかということをまず聞いておきたいんですね。
  88. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) まず、この制度と似ている制度といたしまして、公務員が身分を保有したまま会社等に行ってまた戻ってくるという制度、官民交流制度がございますけれども、これにおきましても公務員の身分は残しているということでございます。  この位置付けは、やはり公務に役に立つという前提ではございますけれども、やはり研修的なそういう要素がある、それで戻ってくると、これが前提なわけでございます。それに倣ったというのが形式的な理由でございます。  それと、実質的な理由でございますけれども、これは、ただいま申し上げましたように、この経験裁判官検察官職務に生かすということが目的で、また復帰をするということが前提になりますので、したがいまして、弁護士職務を行うに当たりましても公正性を保持し、裁判や検察に対する国民の信頼を損なわないようにする必要があるということでございますので、したがいまして、公務員としての一定の服務規律に服するのが相当であるという点が第一点でございます。  それから、身分保障がある判事補あるいは検事を自らの意思でその官を離れてもらうわけでございますので、その場合にはやはり大きな不利益がないように周辺の整備をすべきであるということでございまして、そういうことを考えた場合に、その身分を残すということにすれば大きな不利益を被ることがないと、そういうような環境整備を行うと、この二つの理由でございます。  ただ、裁判官あるいは検察官そのままの身分では、これは弁護士職務といろいろ相反する場面もあるわけでございますので、そこは辞めてもらうということで、裁判所の事務官あるいは法務事務官等の身分は残すと、こういうことでございます。
  89. 角田義一

    角田義一君 局長の言うことも分からぬではないんですけれども、特に前半の問題について私はちょっと疑問があるんですね。  若い裁判官なり検事さんが、先ほどの松村先生のお話ですと武者修行に出るわけですから、それはそれでいい、帰ってくるということですから。うんとはっきり言うと、年金だとか退職金だとかという問題をこれは無視はできないですね。そういうものは無視してまでおまえ行けといっても、なかなか私は行けないと思いますから、それはそれなりの私も理解はできますし、そうしてやらなくちゃいけないんじゃないかというふうに思いますが。  先ほど事務局長がおっしゃるように、公務員としての規律維持というのか、そういうものをちゃんとやらなくちゃいけないということ、これはちょっと、必ずしもそういうものなのかなと思う。僕は、やっぱり二年なり三年なり弁護士事務所に行くということになれば、やはり心構えとして弁護士としての気概なりそういうものも学んできてもらいたいと思うんですね。  だって、弁護士というのは、こんなこと言うと私はちょっと荒っぽいかもしれぬけれども、これは国家権力と対峙し、対決するわけなんで、そういう精神なり根性というものを持ってもらって、それがまた例えば帰ってきたときに生きるわけなんです。ある意味じゃ、幅広いさっき言った見識になるわけなんで、片一方でやっぱり何かひもが付いていて、国家公務員ですよおまえさんはというのではちょっといただけないなと。その辺は免除するというか、そういうことでなく、実利的な面では私はいいと思うけれども、精神的な面においてはそこのところは解放してやるべきでないんですか。そうでないと、弁護士事務所へ行ったって、何となくおれは半分公務員でというような意識でやられたんじゃ困るんだよね。困るんじゃないかと私は思う。どう思います。
  90. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この法案でも明言しておりますけれども、公務員の身分は持っておりますけれども、職務には従事をしないということでございますので、そういう意味では全く公務に従事するわけではございません。それで弁護士登録をするわけでございますので、一人前の弁護士として活動をしていただくということでございます。もちろん、そこには意識が、きちっとした意識がなければならないということは当然でございますけれども、そういうことになっております。  それからもう一つは、例えば公務員、純粋公務員のままでいた場合でも、何か非常に懲戒に当たるような大きな不始末をやるといった場合に、本当にじゃそのままでいいのかということがあるわけでございますので、仮に弁護士になったといたしましても、国家公務員法上から見てあるいは懲戒処分に当たるような、そういうような行為を行った者に対して何もなしということで果たしていいのかどうかということが大いに問題になるわけでございますので、それは、その点についてはきちっと対応をせざるを得ないというふうに考えておりまして、そのことと、ふだん行動を行うということについては、公務に従事しておりませんので、この自由はきちっと残っているということでございます。
  91. 角田義一

    角田義一君 余りあってはならない話だからしたくないんだけれども、一応弁護士登録もちゃんとして弁護士さんとしてのお仕事をされるわけですから、懲戒のようなことになっちゃ困るんだけれども、仮にそういうようなことになったときにはじゃどうなるんですか。二重処罰になるんですか。弁護士会の懲罰ですね、実質的な懲戒と、それからあなたがおっしゃる国家公務員としての懲罰というか、それはどういう形、併用されるんですか、どういうふうに処理するんですか。
  92. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) これは公務員の身分と弁護士の身分、両方持つわけでございますので、公務員の立場から見て懲戒事由に当たるといえばそちらからの懲戒があり得る、それから、弁護士としての立場から見て懲戒事由に当たるということであればその懲戒に当たるということですので、どちらが優先ということもございませんし、双方で必要な懲戒、必要というか、失礼しました、懲戒事由に当たるということであれば、相当であるということになれば、両方から懲戒処分を受けるということにもなります。
  93. 角田義一

    角田義一君 ちょっとその辺は調整する必要が私はあるんじゃないかというふうに思いますが、問題提起だけにしておきます。  最高裁にお尋ねしますけれども、まだこの法律できていないからどの程度の人が希望されていくか分からぬということですが、それは建前はそうですよね。そして、できればスタート時点で二けたとかおっしゃったね。二けたといったって、二けたたくさんあるんですね。十一人も二けたで、五、六十人も二けたですよね。およそどの程度のこと、希望というか、このくらいの人が、さっき言った、二けたといったって、十一人も二けただし、五、六十人も二けただし、二、三十人も二けたですよ。どの程度の人が行っていいか。あるいは、それは先ほどもお話があった、耐えられるか、裁判所としてこの程度の人間は出しても耐えられるかということを聞きたいんですよ。それは、だって、受け入れる方の弁護士さんだってそうでしょう。十一人来るんだか三十人来るんだか、受け入れる弁護士の事務所の体制だって考えなきゃならぬじゃないですか、どうなんですか。
  94. 山崎敏充

    最高裁判所長官代理者山崎敏充君) 明確な数字を申し上げられないことにつきましては申し訳ないことと思いますが、いろいろ変数がございまして、先ほど判事補の希望の出具合ということを申し上げました。それとともに、受入れ事務所としてどの程度の事務所が名のりを上げていただくかというような、そういうことも一つ関係してまいります。  さらに、先ほど少し申し述べましたが、事件処理要員の確保ということも考えていかなきゃいけないものですから、これはスタート時点から更に制度が進行するに従って増やしていくという、こういうイメージを持っているわけでございます。そういう意味で、私、先ほど申し上げましたのは、スタート時点では二けたに乗るということは十以上と、こういう趣旨で申し上げたわけでございます。  一方、私どもは、判事補に、すべての判事補にこうした多様な経験をさせたいということを考えておりますところ、現在、いろいろな経験をさせておるのが一年間で同期の判事補の間の大体半数ぐらいという状況でございます。そういうことからいたしますと、すべての判事補にいろんな経験をさせるためには、実はこの制度というのはやはり大きな柱にならなきゃいけないという、こういうイメージを持っております。  そういうことでございますので、今申し上げたような様々な要素を考えながら、将来的に少しずつ増やしていければという具合に考えておるところでございます。
  95. 角田義一

    角田義一君 これは今日は、法案の性質上、弁護士会の人に来ていただいているわけじゃないんだけれども、受け入れる弁護士事務所というのも私は大変だと思いますよね。  ちなみに、ちょっと最高裁判所に聞いておきたいんですが、大体行く予定の方の年俸というのは、うんと粗っぽくていいですよ、例えば五百万から一千万の間とかね、ぴたっとじゃなくて粗っぽく、どのくらいの年俸ですか。
  96. 山崎敏充

    最高裁判所長官代理者山崎敏充君) ちょっと今数字を持ち合わせておりませんが、私の記憶で恐れ入りますが、一つイメージしておりますのは、新任判事補期間を終えまして第一回目の異動期というのがチャンスであろうかと思います。そうしますと、判事補になって二年半たってこういう経験をすると、そういうケースですと、大体年で六百八十万ぐらいの報酬であったかという具合に記憶しております。
  97. 角田義一

    角田義一君 そうすると、事務局長、あれでしょう、これから弁護士会といろいろお詰めになると思うんだけれども、待遇を落とすわけにいかないでしょうね。そうすると、今言った程度の年俸を弁護士事務所に保障してもらわにゃならぬ、そのことをお願いするというふうに理解してよろしいですか。
  98. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この点につきましては、最高裁と日弁連、それから法務省と日弁連、それぞれで運用について協議をいただきまして運用要領的なものを作成していただくということになろうと思いますけれども、その段階で、給与のレベルをどのぐらいにするかということも当然きちっと打合せをしていただきたい。考え方は、先ほど最高裁の方からも答弁ありましたけれども、その判事補が何年目で出ていくかという年次にもよるわけでございますけれども、現在もらっている給与、それの、相対的にはその付近になるように弁護士会の方にもお願いをしてまいりたいと。  是非、これは弁護士会にも非常に御協力をいただかなければならない問題でございますので、今後、運用上きちっと詰めてまいりたいというふうに考えております。
  99. 角田義一

    角田義一君 これは将来帰ってくるわけですから、帰ってきたときの年金だとかあれに全部通算されていくだし、お金のことですから余り判事さんもそういうことを言うのは嫌だかもしれないけれども、現実問題として、うんと大事なことですよね、希望するかしないかという、月給まで下げられて行くというのはよほどの人じゃなきゃ行かぬわけだから。  そうすると、今言ったように、七百万程度のものをその弁護士事務所が保障するというのは、相当力のある事務所じゃないと、その人がずっといてくれるんならいいですよ、先ほど松村先生言うように、いてくれるんならいいけれども、これ修行させて送り出すわけですから、広い意味で国家国民のためになると思って出すわけだけれども、大変な負担ですよね。私のつたない経験からいえば、七百万の年俸を払って、修行させてもらって、送り出すというのは、これは相当弁護士会の理解が得られないと現実問題としてはできないと思う。  と同時に、私が心配しているのは、そういう者を払える事務所というのは、例えばうんとでかい事務所だとか、あるいは渉外関係やっている、もうけの激しいと言っちゃ、私の弟、渉外事務所にいますけれども、そんなこと言うとちょっとなんだけれども、稼ぎがいいというかな、収入のうんとある、そういう力のある法律事務所しかもし行けない、採れないということになったら、せっかくの修行に出しても国際取引だとかそういうことしか勉強してこないで、さっき私が言った、生の血だらけの材料を処理するようなところでないところにもし集中して行くようになったら、これは本来の制度趣旨から私は離れると思うんですね。  そうすると、いろいろな事件を、やっぱり生の事件を取り扱うような事務所に出さなきゃならぬわけですよ。そうすると、受け入れる方のこれは事務所も私は率直に言ってなかなか容易じゃないと思うんで、この辺は日弁連とよく話してもらわぬと、この制度、いい制度になるかもしれないけれども、生きないということになる、生かされないということになるおそれもあるわけね。  そうすると、局長、どうなんですか。でかい渉外事務所ばかり行っちゃって、そこでもって外国取引ばかり勉強してきたって、それは無駄だとは言いませんよ、無駄だとは言わないけれども、この出す趣旨にはちょっと違うんじゃないかと思うんです。そういうところへ行く人もいてもいいと思うけれども、そればかりじゃ困るんじゃないの。どういうふうに思いますか。
  100. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 御指摘の点は正にそのとおりでございまして、やはり広い、幅広いいろいろな経験をしてもらわなきゃ意味がないわけでございますので、日弁連の方にもお願いして、限られるかもしれませんけれども、なるべく幅広い経験ができるようなそういうところを御紹介いただくという形を取らざるを得ないだろうと思います。やっぱり特定の分野だけということは好ましくないというふうに思っております。
  101. 角田義一

    角田義一君 先ほど最高裁の局長の方から、今の判事補さんの半分ぐらいはいろいろなところへ武者修行へ出る、将来はできればこういう経験をさせたいということで、私は非常に結構なことだと思うんですね。結構な発想だと思いますし、日弁連が言っている弁護士研修制度というようなものも判事補になるときに全部やっていただくと。  ただ、そういう戦略的な目標があるときに、これは大臣お尋ねしたいんですけれども、本当に日弁連だけで、今言った七百万も出すような弁護士事務所がすべて、かなり多くの、確保できるか。  ちょっとちなみに聞きますけれども、何人ぐらい判事補さんは毎年なるんですか、ちょっとそれ、ちょっと聞いておきましょうか、質問と違うけれども。
  102. 山崎敏充

    最高裁判所長官代理者山崎敏充君) これは年度によって違うわけでございますが、おおむね百名程度でございます。
  103. 角田義一

    角田義一君 そうすると、おおむね百名程度といったら、将来、ロースクールもできて、そして法曹人口も増えるにしても、仮に百名の方々にそういう事務所へ行ってもらうということになったら、これは受け入れる弁護士会は大変だと思うんです。  そうなると、将来的に、これは一つの問題提起として申し上げておきますけれども、必ずしも弁護士事務所に出して、弁護士さんのところから七百万全部出してもらうのがいいのかどうなのかという問題がある。弁護士会の方にしてみれば、独立精神を養ってもらいたいから自分たちで何とか工面して百人なら百人の者を受け入れようといったって、これは理想論かもしれないけれども、現実問題としては容易じゃないと思う。そうすると、そういう制度がいい制度であって、それが国家国民のためになるんだとすれば、例えば半分国が持たなきゃならぬというようなことも私は将来あってもいいのではないかというような気もしないではない、それは一つの大きな課題だと思うんですね。  私の時間も来ていますから、大臣、ちょっとそのことだけ聞いておきたいと思うんです。
  104. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) これは十分弁護士会の皆様とも御協議を申し上げ、また、今百人というお話がございましたが、一度に全部というわけにもいかないと思いますので、逐次お話ができたところから実行に移していくということかと思っております。  また、弁護士のみならず、他省庁なり外国への出向、派遣等も併せ考えますと、全員が全員この仕事を経験できるということにはいきなりにはならないと思いますので、今の委員指摘の費用負担のことも併せまして、弁護士業務の独立性という大原則と併せ考えながら、この制度運用がより目的を達成できる形にしっかりとこれから見守って、育てていきたいと、こう考えております。
  105. 角田義一

    角田義一君 終わります。
  106. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 判事補及び検事の皆さんに弁護士職務経験していただくという法律でございますが、これも先ほどから議論あっているように、身分を、それぞれ法務事務官、裁判所事務官という身分を保有して行くわけですね。その理由については局長答弁されたようですが、その国家公務員のやっぱり身分を有するということによって、弁護士業務が制約されたり、弁護士業務に支障が及ぶことというのがやっぱりあるんじゃなかろうかと一瞬思うんですけれども、その点は大丈夫なのか、まず答弁をいただいておきたいと思います。
  107. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 先ほど申し上げましたけれども、身分は保有いたしますけれども公務には従事をしないということでございますので、その限りでは、公務員の形式的身分を持っても実際上の公務員の活動はしませんので、純粋に弁護士業務が可能になります。  したがいまして、受任する事件につきましても、一切これでなければならないということもございませんので、例えば刑事事件の弁護も結構ですし、国賠あるいは行政事件訴訟、こういうのを起こすのも結構だということでございますので、そこは自由に活動していただけると、こういうことでございます。
  108. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 じゃ、例えば弁護士になって刑事弁護活動を行う過程でその関係者にいろいろ話を聞くと、その関係者が他の犯罪行為に関与していることも知るということも起こり得るわけですよね、これ十分。もしそうなった場合、公務員という身分があるわけですね。公務員には犯罪を告発する義務というのがございますね。これ刑事訴訟法の二百三十九条の二項です。そうすると、公務員の身分は有している、弁護士活動をやっている、その活動の中で犯罪事実を知った場合というのは、例えば公務員としての犯罪告発義務というのはどうなるのか、御説明いただきたいんです。
  109. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 刑事訴訟法の二百三十九条二項に公務員の告発義務が定まっているわけでございますけれども、これは公務員としての職務に従事しているということが前提になっております。この本法の関係では、身分を保有するけれどもその職務には従事をしないという形になっておりますので、告発義務はないということになるわけでございます。
  110. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 そういうふうにやっぱり身分を有することでどうなんだろうという行く側の人の問題や意識の問題を整理していくと、こういうことをきちんと分かった上で行っていただかなくちゃいけないだろうと思うし、本当にきちんとその間は修行なんだな、修行、武者修行という話がありますが、そういう期間の間は徹底してそれをやるんだというこの徹底が必要だろうと、こう思います。その辺は行く方々にもある意味ではよく理解をしていただいて行かないといけないなという気持ちがありますので、これは御要望をしておきたいと思います。  そして、今回のこの法律では経験する期間原則二年でございますね。ただ、特に必要があると認めるときは三年まで延長と、こうなっています。一応何で二年なのかと、特に認めるときというのは一体どんなことなのか、具体的に、これも聞いておきたいと思います。
  111. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 二年にした理由でございますけれども、最近の事件、運用の努力でかなり一件の終結まで短くなっておりまして、そういう関係からいけば、受任して大体二年以内には結論は出ていくだろうと、これが通常であろうということをまず考えたわけでございます。したがいまして、二年ということを決めさせていただきました。  ただ、物によっては途中から入っても非常に得難い経験をするものもあるわけでございます。問題は、それを原則にいたしますけれども、三年という例外も設けているわけでございますが、やはり事件を受任をいたしまして、その担当している事件、これを引き続き担当してきちっとある程度の結末が付くところまで見届けた方がいいというものもあり得るわけでございますので、そういう点を配慮したということでございます。
  112. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 ということは、二年やってみて、さっきの話じゃないですけれども、面白いと、もう少しきちんと経験したいと、そんなことで延ばされるというわけでなく、特に認めるという、三年というのを特例で認めているのは、一つの事件を受任したと、その事件をやりながら二年間、途中からやり出して、この二年の途中の場合にこれはちょっときちんと仕上げた方がいいと。ある意味じゃ、弁護士活動をやっている事件の中身とかかわって三年認めるときがあるというように考えればよろしいわけですか。
  113. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 確かに、一般的に面白いからもう少しやらしてくれということではなくて、やはり弁護士業務としてきちっとある程度始末が付くところまできちっとやった方がいいというようなものもあり得ると。そういう点については例外的に三年で延ばしてきちっとやっていただくと、こういうことを考えているわけでございます。
  114. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 もう一つ、今回の法律では、最高裁や法務大臣は必要に応じてこの弁護士職務経験中の者に対して職務条件や弁護士業務の従事状況についての報告を求めることができるというのが六条三項にあります。報告制度を求めている趣旨を含めて聞きたいし、具体的にどんなことの、というのは、要するに弁護士業務に制約される、支障が及ぶことがないのかという問題ともかかわってくる問題だと思うんですよね。だから、報告させるということであれば、ある意味じゃ自由なことができないじゃないかというようなことにもかかわってくるんじゃなかろうかと心配をいたします。したがって、具体的にもし報告を求めるならどんなことなのか、具体的な中身も含めて御答弁いただきたいと思います。
  115. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) これは念頭に置いているのは勤務条件でございまして、例えば勤務時間の実態ですね、どういう勤務時間になっているか、あるいは給与の支払状況とか、あるいは弁護士業務への従事の状況ですね、そういう全体のことを報告させるわけでございまして、個々の事件の内容ではございません。この点につきましては、弁護士法二十三条の守秘義務がございますので、その職務上、弁護士職務上知り得た秘密、こういうものについて報告するということはないということでございます。
  116. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 私の質問できるのは今国会ではもうこれが最後になりまして、まあこの司法制度改革について今国会多くの法案が出されました。裁判制度を始めとして本当に重要な多くの法案が出されて、与野党、本当に司法制度改革について国会としてきちんと議論をして理解をいただいて、ある意味ではほとんどのものが今日で総仕上げになるということでございます。私自身も非常に意義深いものも感じますし、こんなことを言ってどうか分かりませんが、野党の皆さんにも本当に心から私は感謝を申し上げたいと。ともかく、でもこれはあくまで法律の仕組みを作っていくと、仕組みができたわけでございまして、もうこれさんざん各法案議論しましたが、本当に実効性ある問題にするためには、これからの運用問題ということが各法案について議論をされました。  ある意味では目標から、司法制度改革法案がほとんど通るという結果を迎えた、さあこれからスタートだと私は思いますし、その意味ではスタート地点に立って、大臣から全体含めてのそういう御決意を伺って、質問を終わりたいと思います。
  117. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 大事な御質問をいただきました。  社会の複雑多様化あるいは国際化等がより一層進展する中で、行政改革を始めとする社会経済の構造改革を進め、明確なルールと自己責任原則に貫かれた事後チェック・救済型社会への転換を図り、自由かつ公正な社会を実現していくというのが今回の司法制度改革の精神ではないかと考えておるわけでございますが、そのための基礎となる司法制度を新しい時代にふさわしく国民にとって身近なものとなるよう改革していくことが何よりも基盤作りとして大事なことと考えております。このような意味で、今般の司法制度改革につきましては、歴史的にも極めて重要な意義を有する改革であると認識しております。静かではありますが、社会のありようを根本的に変える力を持ったものと理解をしておるところでございます。  今国会におきましては、既に司法制度改革関連の多数の法案委員の皆様の御協力によりまして成立しておりますが、司法制度改革は総仕上げの段階に入っていると考えておるところでございます。私は、司法制度改革推進本部の副本部長として、また司法制度を所管する法務大臣として、この司法制度改革の具体的な実施とその更なる進展に最大限の努力を尽くしてまいる所存でございます。このような立場と任務をいただきましたことは大変光栄でございまして、今後の実行につきまして大きな責任を痛感しておるところでございます。  先日、裁判制度成立に際しまして、法務省の記者クラブの皆様から心境を聞かれましたが、その際、御披露いたしましたことが一つございます。与謝野晶子の歌でございますが、「劫初より作りいとなむ殿堂にわれも黄金の釘一つ打つ」、「草の夢」という歌集からいただきましたが、皆々様の御協力と併せまして私の今の気持ちを申し上げ、今後とも御指導、御鞭撻をよろしくお願い申し上げまして、答弁といたします。  ありがとうございました。
  118. 木庭健太郎

    木庭健太郎君 終わります。
  119. 井上哲士

    ○井上哲士君 日本共産党の井上哲士です。  まず、最高裁にお聞きをいたします。  司法制度改革審議会の意見書では、「原則としてすべての判事補裁判官職務以外の多様な法律専門家としての経験を積ませることを制度的に担保する仕組みを整備すべき」としております。今回の法案はこれに基づくものでありますが、これで弁護士職務に就く法的整備が整って仕組みが整備されたということでありますから、先ほどの答弁確認ということになるわけですが、今、半分程度ということを聞きましたが、この制度を土台にして、原則としてすべての判事補が他職経験をするという方向に踏み出していく、それを目指していくんだと、こういうことでよろしいわけですね。
  120. 山崎敏充

    最高裁判所長官代理者山崎敏充君) ただいま委員のおっしゃられました司法制度改革審議会の意見等を踏まえまして、最高裁判所といたしましては、原則としてすべての判事補裁判官職務以外の多様な経験を積む機会を得られるようにしていきたいという具合に考えております。  そのためには、現在、今委員おっしゃられた、様々なメニューがございまして、そういったものを一層充実していかなきゃいけないと思っておりますが、それとともに、今回新たに設けられます弁護士職務経験制度を十分に活用していきまして、その環境条件の整備等積極的に推進して実施していきたいと思っております。
  121. 井上哲士

    ○井上哲士君 一方で、今回の法案でも本人の同意というものが必要でありますし、身分の保障というものがあります。それはそれで尊重しつつ、一方で、すべての判事補に他職経験をしてもらうという、そこの担保といいましょうか、それはどのようにお考えでしょうか。
  122. 山崎敏充

    最高裁判所長官代理者山崎敏充君) ただいま申し上げました判事補経験の多様化というもの、我々は、これは多様で豊かな知識経験を備えた視野の広い裁判官を確保するための制度として、判事補の人材育成のシステムの一環として位置付けておりまして、先ほど申し上げましたとおり、原則としてすべての判事補にその経験を積む機会を与えるということを考えておりまして、そのことを最高裁判所裁判官会議で議決いたします。そういう措置を講じるなどいたしまして、この制度の創設、運営を言わば制度的に確立するということを考えております。  それからもう一つ、下級裁判所裁判官指名諮問委員会というものが設けられましたわけですが、その委員会におかれまして、判事補経験の多様化というこの制度が言わば制度的に完備された後は、その制度による多様な経験を積んだことが判事指名の検討の上で重要な考慮要素とすると、そういうお考えを示されておりますので、こういった点も制度的担保の柱になるものと考えております。
  123. 井上哲士

    ○井上哲士君 法案の第二条では、その他事情を勘案して、相当と認めるときはと、こうなっているわけですが、この相当と認めるときというのは具体的にはどういうことなんでしょうか。
  124. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) この二条のその意味でございますけれども、この点につきましては、例えば職務経験を行うかどうかにつきましては、他の経験をしている者もいるわけでございますので、そういう者について更にその弁護士職務経験させるかどうかと、そういう必要性、まず判断をするということでございます。  それから、これに伴う事務の支障の問題もございます。余りたくさん出てしまっては裁判の方が十分にいかないという場合もあり得ますので、そういう点も考慮をするということになります。それから、その他の事情といたしましては、例えば判事補あるいは検察官検事の、本人の希望等もございます。こういうものを総合的に認めて、その上で相当と認めるときということを言っているわけでございますので、あらゆる事情をよく総合的に考えて判断をすると、こういうことでございます。
  125. 井上哲士

    ○井上哲士君 今も他の職務を既に経験をしている場合というお話がありましたが、いただいた資料を見ますと、例えば判事補の民間企業派遣などは、これまでの例でいいますと四か月というのもありますし、それから判事の場合でしょうか、数週間というのもあるわけですね。この程度のものも含めていわゆる他職経験というふうにお考えになるのか、それとも、この二年という今回枠を決めたわけですが、この程度を必須とするのか、その点はいかがでしょうか。
  126. 山崎敏充

    最高裁判所長官代理者山崎敏充君) ただいま委員のおっしゃられました民間企業研修のうちのごく短期の部分、これは判事ということでやっておりますものですから、これは少し別のものとお考えいただいた方がいいかと思います。  四か月というのを判事補についてやっておりましたが、実はこれも最近のことでありますけれども、一年コースの方がいいのではないかということで切り替えておりますので、現在ございますのは一年ないし二年というのが中心的なものという具合にお考えいただければと思います。  ところで、先ほど申し上げましたすべての判事補にこういった経験をさせるというのは、実は第一ステップと位置付けておりまして、第二ステップといたしましては二年程度そういった経験をさせたいということを考えておるわけでございまして、その方向で努力したいと思っております。  現実の個々の派遣先の派遣期間どうするかということになりますと、これは受入先の事情等もお伺いしなければいけないわけでして、これから検討していかなきゃいけないということでございます。ただ、場合によっては、一人の判事補について複数のプログラムをこなしてもらって、二年程度経験してもらうというパターンもあり得るだろうという具合に思っております。そういったことで、いずれにせよできるだけそういう派遣先を多数確保しなければいけないという具合に考えておりまして、その方向で努力したいと思います。
  127. 井上哲士

    ○井上哲士君 先ほど、法曹一元化への一里塚だという話もございました。  司法制度改革審議会の意見書では、裁判官職務以外の多様な法律専門家としての経験は、判事補裁判官の身分を離れて弁護士検察官等の法律専門職の職務経験を積むことが基本になるべきであると、そしてそれに加えて、こうした職務経験と同視できる程度に、裁判官の資質向上のために有益であると認められる経験も含まれ得ると、こういうふうにしているわけですね。ですから、ここで言っているのは、やはり弁護士検察官職務経験を積むことが基本だということでありますから、先ほど、あれ、いろいろなメニューがあって、それも充実させながらということもありましたけれども、やはりこういう制度が作られた以上、この弁護士職務経験というのを、あれこれの柱の一つということじゃなくて、やはり最も中心的な柱、大きな柱として位置付けていくべきだと思うんですが、その点はいかがでしょうか。
  128. 山崎敏充

    最高裁判所長官代理者山崎敏充君) 委員のおっしゃられるとおり、審議意見書ではそのように書いてございますので、私ども、その趣旨を受け止めてやっていかなければならないと思っておりますが、裁判官の資質向上のために有益であると認められる経験というものにどういうものがあるのかということについては、更に検討が必要であるという具合な意見になっておったと理解しております。  この点につきましては、司法制度改革推進本部の法曹制度検討会において検討がなされたようでございまして、海外留学、あるいは行政機関等への出向、民間企業等への派遣といったものはそういうものに含まれるんだという取りまとめがなされたという具合に伺っておるわけでございます。  そういうこともございますので、私どもといたしましては、多様な経験ということで、弁護士職務経験以外の経験もこれは当然想定されているということでございますので、現に先ほど来出ておりますように既に相当の派遣を行っておりますので、そういったものももちろん活用しつつ、今回新たな制度として弁護士職務経験制度ができました。これは非常に重要なものだという具合に私は思っておりますので、その点につきましてもできるだけ多くの判事補がその経験ができるようにしていきたいというふうに考えております。
  129. 井上哲士

    ○井上哲士君 法曹一元という流れから考えましても、やはり弁護士を基本にというこの審議意見書の方向で取り組んでいただきたいと思います。  もう一つ、公務員としての身分が残ることの関係で幾つお尋ねをしますが、先ほど、弁護士の守秘義務と刑事訴訟法上の公務員の告発義務の関係についてもお尋ねがありました。  こういう場合はどうでしょうか。弁護士を終えて判事補として復帰をした、その際に、弁護士当時に知ったことにかかわる事件が発覚して、ああ、あのときに、なるほど、こういう違法行為があったんだと後になって例えば分かる、元に戻ってから分かったと、こういう場合の告発義務というのはどういう取扱いになるんでしょうか。
  130. 山崎潮

    政府参考人山崎潮君) 先ほど、弁護士になっている間の告発義務について申し上げましたけれども、これは公務に従事しておりませんので、ないと申し上げました。  ただいまの御指摘の点でございますけれども、終了した後ということでございますけれども、これは、裁判官検察官に復帰した後においても、公務員としての職務に従事していないときに知った犯罪事実につきましてはやはり告発義務が生ずることはないというふうに考えております。それから、当然、弁護士法二十三条でも、その職務上知り得た守秘義務というものもあるわけでございますので、そういう関係からも告発義務はないというふうに考えております。
  131. 井上哲士

    ○井上哲士君 公務員としてのいわゆる服務規律と弁護士会などの様々な活動との関係についてお聞きをするんですが、例えば日弁連や各地の弁護士会にいろんな委員会があります。例えば、今も敗訴者負担制度反対の委員会というのがあるわけですね。言わば、政府の方針とは違うような課題を掲げた委員会もあるわけですが、そういうところの委員会に参加をしたり、またそういうところが主催をする集会に参加をしたりすること、このことは構わないと、こういうことでよろしいでしょうか、検察官の場合に行かれるとか。
  132. 大林宏

    政府参考人大林宏君) 弁護士会の委員会委員としての活動内容委員会の実態につきましては具体的に承知しておりませんが、政治的行為の制限に関する国家公務員法第百二条やこれに基づく人事院規則等を見る限りにおきましては、お尋ね委員会委員になることや委員会に参加すること自体が政治的行為に該当するとされることは通常はないんじゃないかというふうに思われます。  ただし、委員としての活動や委員会の活動には様々な形態があり得ますので、具体的にはその事案に応じ、種々の要素を考慮して政治的行為に該当するかどうかの判断がされることになるのではないかと、こういうふうに思います。
  133. 井上哲士

    ○井上哲士君 弁護士業務をした場合に、国を相手にした国家賠償請求にかかわることもあると思います。また、そういう国家賠償請求のいろんな原告団の交流会等に参加することもあると思いますが、この点ではどうでしょうか。
  134. 大林宏

    政府参考人大林宏君) これは、今も申し上げましたけれども、様々なやっぱり形態が予想されますので、それは具体的にその事案に応じ判断されるということになろうかと思います。
  135. 井上哲士

    ○井上哲士君 弁護士職務経験をするということの趣旨には、個々の事件と同時に、そういうような活動を通じて様々な経験、見識を身に付けるということは私、必要だと思うわけで、日弁連や地方弁護士会の様々な、この会内の業務などに参加することがちゅうちょされるというようなことでは趣旨に反すると思うんですね。  ここはやはり柔軟に広く解釈をして、そうした派遣をされた方がそういう活動にやっぱり自由に参加をできるということが必要だというふうに思いますし、そういうことを強く求めまして、終わります。
  136. 山本保

    委員長山本保君) 他に発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  判事補及び検事弁護士職務経験に関する法律案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  137. 山本保

    委員長山本保君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  139. 山本保

    委員長山本保君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  児童買春児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童保護等に関する法律の一部を改正する法律案審査のため、本日の委員会警察庁長官官房審議官吉田英法君、法務省刑事局長樋渡利秋君及び法務省人権擁護局長吉戒修一君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  140. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  141. 山本保

    委員長山本保君) 児童買春児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童保護等に関する法律の一部を改正する法律案議題といたします。  提出者衆議院青少年問題に関する特別委員長武山百合子君から趣旨説明を聴取いたします。武山衆議院青少年問題に関する特別委員長。どうぞ。
  142. 武山百合子

    衆議院議員武山百合子君) ただいま議題となりました児童買春児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童保護等に関する法律の一部を改正する法律案につきまして、提案の趣旨及び主な内容を御説明申し上げます。  児童買春児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童保護等に関する法律は、国内における援助交際や東南アジアにおける買春ツアー等が社会問題となっていた中、児童買春児童ポルノに係る行為を処罰し、児童を保護するため、平成十一年に議員立法により制定されたもので、同法附則においては、施行後三年を目途として検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものと規定されております。  同法の施行状況を見ますと、児童買春に係る事件が大幅に増加しているほか、児童ポルノに係る事件も後を絶ちません。  また、同法の施行後、国連において児童売買児童買春及び児童ポルノに関する児童権利に関する条約の選択議定書が、欧州評議会においてサイバー犯罪に関する条約がそれぞれ採択されるなど、児童権利の擁護に関する国際的取組がより一層進展しております。  本案は、このような状況を勘案し、これらの行為について、厳格な処罰を行うことができるように法定刑を引き上げる等の措置を講じようとするもので、その主な内容は、第一は、児童権利の擁護に関する国際的動向を踏まえた立法であることを明示するとともに、児童権利の擁護を目的とすることをより直接的に表現することとしております。  第二は、児童買春及び児童ポルノに係る犯罪の法定刑を見直し、懲役刑及び罰金刑の上限を引き上げるとともに、新たに一定の類型について懲役刑と罰金刑を併せて科すことを可能にすることとしております。  第三は、条約上の義務に対応し、電気通信回線を通じて児童のポルノを記録した電磁的記録等を提供する行為及び特定かつ少数の者に対して児童ポルノ提供する行為並びにこれらを目的として児童ポルノを製造、所持等し又は児童のポルノを記録した電磁的記録を保管する行為、児童に姿態を取らせて児童ポルノを製造する行為等を新たに処罰することとしております。  第四は、この法律は、公布の日から起算して二十日を経過した日から施行することとしております。  第五は、この法律施行後三年を目途として、改正後の法律施行状況児童権利の擁護に関する国際的動向等を勘案し、検討が加えられ、その結果に基づいて必要な措置が講ぜられるものとすることとしております。  以上がこの法律案の提案の趣旨及び主な内容であります。  何とぞ、御審議の上、速やかに御賛同くださいますようお願い申し上げます。
  143. 山本保

    委員長山本保君) 以上で趣旨説明の聴取は終わりました。  これより質疑に入ります。  この際、お諮りいたします。  委員議員吉川春子君から児童買春児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童保護等に関する法律の一部を改正する法律案についての質疑のため発言を求められておりますので、これを許可することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  144. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認めます。  それでは、吉川春子君に発言を許します。吉川春子君。
  145. 吉川春子

    委員以外の議員(吉川春子君) 日本共産党の吉川春子です。  法務委員会委員長、理事、委員の皆様のお許しをいただきまして、質問の機会を与えていただき、本当にありがとうございます。  児童買春・ポルノ処罰、児童保護法改正案について質問をいたします。  この法改正に取り組みました衆議院の皆様方に敬意を表したいと思います。そして、過日、参議院の方からもドメスティック・バイオレンスの改正案が送られて成立いたしましたが、子供や女性の人権について国会が審議するという、こういう傾向は大変歓迎したいと思います。  まず最初に、警察庁にお伺いいたしますけれども、平成十一年、議員立法により本法が成立いたしましたが、それ以降の児童買春事件及び児童ポルノ事件の検挙の状況を御報告いただきたいと思います。
  146. 吉田英法

    政府参考人吉田英法君) 児童買春児童ポルノの事件の検挙状況についてのお尋ねにお答えいたします。  児童買春児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童保護等に関する法律に基づき検挙した者のうち、同法第四条、第五条及び第六条の児童買春事件につきましては、法施行から平成十五年末までに合計で六千四十八件、三千九百十四人を検挙しております。その年次別検挙件数は、平成十一年が十一月及び十二月の二か月間で二十件、平成十二年が九百八十五件、平成十三年が一千四百十件、平成十四年が一千九百二件、平成十五年が一千七百三十一件となっております。  また、同法第七条の児童ポルノ事件については、法施行から平成十五年十二月末までに合計で七百四十三件、六百七十一人を検挙しております。その年次別検挙件数は、平成十一年が十一月及び十二月の二か月間で十八件、平成十二年が百七十件、平成十三年が百五十二件、平成十四年が百八十九件、平成十五年が二百十四件となっております。
  147. 吉川春子

    委員以外の議員(吉川春子君) 引き続きまして、法務省にお伺いいたしますけれども、この事件の起訴、有罪の統計を取っておられたら御報告いただきたいと思います。
  148. 樋渡利秋

    政府参考人樋渡利秋君) まず、起訴件数について申し上げますと、平成十一年は児童買春に係る事件が十八件、児童ポルノに係る事件が二十五件、平成十二年は児童買春に係る事件が五百十一件、児童ポルノに係る事件が百四十六件、平成十三年は児童買春に係る事件が八百八件、児童ポルノに係る事件が百三十一件、平成十四年は児童買春に係る事件が千二百十三件、児童ポルノに係る事件が百七十一件、平成十五年は児童買春に係る事件が千百五十六件、児童ポルノに係る事件が二百十四件であったと承知しております。  また、全国の第一審裁判所において有罪とされた人員につきまして当省で把握しているところを申し上げますと、平成十一年は児童買春に係る事件が七件、児童ポルノに係る事件が二名、平成十二年は児童買春に係る事件が三百四十一件、児童ポルノに係る事件が七十三名、平成十三年は児童買春に係る事件が四百七十八名、児童ポルノに係る事件が六十二名、平成十四年は児童買春に係る事件が八百八十七名、児童ポルノに係る事件が九十三名、平成十五年は児童買春に係る事件が九百四名、児童ポルノに係る事件が八十九名でございました。
  149. 吉川春子

    委員以外の議員(吉川春子君) 法務大臣にお伺いいたします。  私も、この立法がなされた当初、こんなにもたくさん犯罪が起きる、そして検挙されるということは予想できませんでしたけれども、毎日、新聞を見まして、社会面に連日のようにこの事件が報道されております。  大臣は、この犯罪件数の多さというものの原因はどこにあるとお考えでしょうか。そして、子供の人権を尊重することとかあるいは条約に沿って政府として行うべきことがもっとあるのではないかと思いますが、その点についてのお考えを伺いたいと思います。
  150. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 委員指摘のとおり、児童買春児童ポルノに係る事件の防止という観点からも子供の権利に対する認識を深める啓発を行うことは極めて重要であると考えております。事件の数が特に最近累増しているという状況にかんがみまして、やはりこれに対しての取組については、もちろん政府もしかるべく対応せねばなりませんが、大人がやはり子供たちに対してどう向き合うかという基本的なところからやはり考えていかなければならない大きな課題と考えております。  私も、法務大臣就任のときに小泉総理から特命をちょうだいした一つが、犯罪をとにかく減らす世の中にしてほしい、安全、安心な国に戻してくれという特命をちょうだいしておりますが、その中でも少年犯罪とかあるいはこういった児童ポルノの問題、あるいは外国人犯罪、こういったものが大変重要な役割を占めているということから関心を持ってまいりましたが、今般このような形で、議員立法の姿で御提言がございましたことについては、私どもも大変これは有り難いことと受け止めまして、この法律趣旨に沿いましてしっかり取り組んでまいるつもりでございます。  法務省といたしましては、特に人権擁護という立場から子供の人権を守ろうということを掲げまして、全国におきましてポスターの掲出やパンフレットの配布、あるいは講演会、座談会、映画等を開催いたしまして啓発に努めておりますが、さらにテレビ、ラジオなどの各種のマスメディアを活用した啓発活動も大事なことと考えております。  いずれにいたしましても、このような対策に対しましては、何としてもこれを減少させるべく努力をしていかなければならないという認識でございます。
  151. 吉川春子

    委員以外の議員(吉川春子君) それでは、提案者の方にお伺いしたいと思いますが、児童買春、同勧誘罪など法定刑が懲役三年から五年に引き上げられましたけれども、その意味についてお伺いいたします。
  152. 武山百合子

    衆議院議員武山百合子君) それではお答えいたします。  先ほど警察庁の方からも、年々大変数が増加しているということは、今お聞きしたとおりだと思います。  それで、まず法定刑の引上げですけれども、児童買春に係る事件がどんどん増加していると、それで児童ポルノに係る事件も後を絶たない、こういう現実があるということをまずきちっと把握しなければいけないと思います。そして、この現実の悪質な事案に対してはより厳しい刑罰を科すことを可能にするということですね。それとともに、社会に対しても児童権利を著しく損なうこれらの犯罪が強い非難に値することを明らかにするということも大変法定刑を上げたという理由でもあります。  それから、その効果についても答えたいと思います。  まず児童買春児童買春の周旋ですね、それから勧誘、これらについて法定刑の上限が三年から五年に引き上げられました。これによって三年を超える宣告刑というものが可能となって、その場合は法的に執行猶予が付けられないということになります。そして、このことによって公訴の時効期間についても三年から五年に引き上げられるということになります。  以上です。
  153. 吉川春子

    委員以外の議員(吉川春子君) ほかの刑とのバランスが崩れるほどの重い処罰はすべきでないという意見が日弁連等からも出されておりまして、ここはなかなか難しい問題であろうかと思いますが、私としては、非常にこういう犯罪が増える中、ある程度の法定刑の引上げはバランスを失しない範囲において必要だったのかなというふうに受け止めております。  続きまして、単純所持の禁止処罰が見送られたわけですけれども、これについても立法当初から議論をしてまいりましたが、今回見送った意味はどういうところにあるんでしょうか、お伺いします。
  154. 葉梨康弘

    衆議院議員(葉梨康弘君) いわゆる単純所持の問題についてお答えいたします。  国連の例えば児童売買児童買春及び児童ポルノに関する児童権利条約の選択議定書などの国際約束でも、各国に単純所持の犯罪化を義務付けるまでには踏み込んではいないんですけれども、諸外国によっては単純所持をしっかり処罰している国ということを承知しております。  ただ、児童ポルノについては、実は国によって、例えばコミックですとか、あるいは大人が児童に成り済ましたポルノの問題、これに対しても厳しいといったように、運用在り方、あるいは社会悪である児童ポルノに対する接し方が多少違いがあるのは事実です。やはり、私どもの国においても、しっかりと運用を積み重ねて、国民意識の高揚を図りながら処罰化の是非の議論を詰めるべきと判断して、今回は罰則なしの禁止規定については法文化はしなかったわけです。  しかしながら、児童ポルノの所持が児童に悪影響を与えることは明白です。そして、今回の法律案でも、提供目的の所持を禁止するなど要件の拡大を図っています。児童ポルノが大きく児童権利を侵害するものであること、これをしっかりと教育、啓発することに努めて、そしてその中で議論を詰めながら、例えば三年後には必要な見直しを図っていきたいというふうに考えております。
  155. 吉川春子

    委員以外の議員(吉川春子君) 児童買春・ポルノの処罰・保護法は国外犯も規定しているわけですけれども、日本人がアジア諸国に出掛けていって少女買春を行い、また児童ポルノ提供などの犯罪を犯すことも多いと報告をされています。こうしたことを減少させていかなくてはならないことはもちろんです。  そこで、法務大臣にお伺いいたしますが、国際的な捜査共助について今回の法律改正案には盛り込まれていないわけですけれども、国際会議などでは特に捜査共助の要求が外国のNGOから出ることも多いのですが、この点について大臣はどのように取り組んでいかれようとされておるんでしょうか。
  156. 野沢太三

    国務大臣野沢太三君) 海外で本法に違反する行為を行った日本人の処罰を行うに当たりましては、外国の捜査機関との連携を深めながら、外交ルートを通じた捜査共助や国際刑事警察機構、いわゆるICPOでございますが、これを通じた情報提供活用していくことが重要であると考えております。  現在までにも、児童買春児童ポルノに係る国外犯につきまして、犯罪他国との連携を図りながら捜査を進められた結果、我が国において起訴され、有罪判決まで至った例が五件ほど既に出ておりますが、今後も外国の捜査機関等との連携が密となるよう努めていくものと承知をいたしております。
  157. 吉川春子

    委員以外の議員(吉川春子君) 以上で質問を終わります。  どうもありがとうございました。
  158. 山本保

    委員長山本保君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  児童買春児童ポルノに係る行為等の処罰及び児童保護等に関する法律の一部を改正する法律案賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手
  159. 山本保

    委員長山本保君) 全会一致と認めます。よって、本案全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  160. 山本保

    委員長山本保君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後零時三十三分散会