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参考人(
岡田ヒロミ君)
消費生活専門相談員の
岡田ヒロミと申します。
本日、身に余る機会を与えていただきましたことに深く感謝いたします。
私は、昭和五十二年に当時の通商産業省に消費生活相
談員として就職しましたのを機に、本年まで、二十八年を本年迎えたんですけれ
ども、ずっと相談
業務に一筋で専念してまいりました。
そのような私が
司法制度とどういうかかわりになったかということになりますと、私は、
司法制度改革推進本部の法曹
制度検討会の
委員を受けました。法曹
制度検討会と申しますのは、
裁判官、それから検察官、そして
弁護士の
制度の改革を討議するところなんですが、まず私が最初に感じたことは、本当に私自身、司法に関して知識がなかったということと、やはり法曹界というものがとても私たちにとっては驚くことばかりだったということなんです。つまり、私たち
国民にとって
司法制度というのがかなり距離があるという感じをいたしました。しかし、途中から最高
裁判所、そして
法務省、
日本弁護士連合会の司法改革に取り組むその真剣な姿を見まして、司法改革が掛け声だけではないということを感じました。
本日の
総合法律支援法は、正にこの法曹三者の
努力と
協力なしでは実効性はないものと思います。そういうことを考えますと、私は、必ずやこの
法律が成立して、そして法曹三者に加えて地方公共団体又はそれ以外の団体の強力な提携の下に、私たちにとって司法アクセスの強い味方ができるんではないかというふうに期待しております。
本日は、私は消費生活相
談員の視点でこの
法案について
意見を述べたいと思います。
まず、衆議院で修正されたことについて述べさせていただきます。
修正の中で高齢者又は
障害者に対して手当てがされたこと、そして被害者に対して手当てがされたこと、この二つは高く
評価したいと思います。と申しますのは、今、
障害者ないしは高齢者又は
障害者の高齢者が消費者相談の中で大変被害を受けております。悪質商法と言われるものなんですが、元々悪質商法というのは詐欺的であったり、強引であったり、そういう商法で被害を受けるということなんですが、高齢者ないしは
障害者に対しての商法は、もう商法とは言えるものではなくて、正に詐欺であったり、恐喝であったり、強奪であると、そのようにすら感じます。
それでもなおかつ、弱い立場ということと、なかなか消費者
センターとか司法アクセスの道がないということでは、ほとんどの高齢者、
障害者は泣き寝入りしている
状況であります。その身辺にある
障害者、高齢者を
支援する団体も、また司法アクセスの道はありません。そしてまた、そういう被害を救済する方法すら持っておりません。
この方々に関しては、商法の経済的損害だけではなくて、金銭管理の問題、それから成年後見の問題、そして家族の問題という、正に司法的
解決なしでは絶対に
解決しないような問題が山積しております。にもかかわらず、そういう方々を救済する手だてがなかったということに関しまして、今回の衆議院の修正でこういう
支援団体が今回の
総合法律支援の
対象の団体に加えられたこと、それから契約
弁護士に委託する団体に加えられたこと、これはこういう団体にとっては大変喜ばしいことだと思います。さらには、実際に
紛争解決が必要とする高齢者又は
障害者が必要な
情報とか
サービスを受けれない
状況にある場合に、
司法支援センターに対して特別な配慮をすることを義務付けたこと、これは本当に画期的なことではないかというふうに私は思います。
次に、被害者に対してなんですが、これは一番適切、一番というのじゃなく、適切な
弁護士を紹介するということが入っておりますが、このことに関してもどんなにか被害者にとってはよりどころができたんではないかというふうに思います。
私
ども消費者
センターに実際に
刑事事件等で被害に遭った方々が、一体全体私たちを助けてくれる
弁護士さんはどこにいるんだろうか、どこに行けば私たちの声を聞いてくれるんだろうか、そういうことを問い合わせてきます。そうした場合、私
どもとしては
弁護士会を紹介するしかないんですが、多分現状ではそういう期待にこたえる状態ではないというふうに思います。それが、司法
センターのこういう
サービスが受けられることによって、どんなに早く、そして回復、被害の救済ができるんではないかというふうに思います。
次に、司法
センターの
業務に関して申し上げたいと思います。
まず、相談の
部分なんですが、これは
法律相談とははっきりと分けているように思います。というのは、
法律相談の事前の相談というふうに思います。そういうふうに言いますと、そんなことはというふうに思われる方が多いかと思うんですが、私
ども相談を受けていて感じることは、
法律相談以前の相談がいかに多いかということなんです。
国民にとっては、自分の
権利とか義務とか、それすらはっきりしない。また、自分が被害を受けていることすら分からない、そしてどうすれば自分の主張が通るんだろうか、そういうことを聞いてきます。
その証拠に、簡易
裁判所の相談
窓口に行って一番私に適した方法はどれなのかということを相
談員に迫るということを聞いていますが、まあそれが大方の相談といいますか、
法律相談の大
部分をそういう相談が占めているんではないかと思います。せっかくの
法律相談でありながら、そういう入口の相談がたくさん押し寄せるということは、本当に
法律相談を受けなければいけない人たちが相談を受けられないという
状況になっていると思います。その
意味では、この
支援センターの相談の意義というのは大変高いんではないかと思います。
ここで私は一つ申し上げたいことがあります。この
支援センターの相談の中では、被害の救済、そういうものに関しての方法、有益な方法の
情報提供、それから
弁護士会の活動の
情報提供というのが挙げられております。もちろん、自分がどういう方法を取ればいいのかという、そういう相談というのは今までは余り得ることができませんでしたから有効だと思いますが、もっと私たちが求めているのは、自分にとって一番適切な
弁護士さんはどこに行けばいるか、いらっしゃるかということなんです。いわゆる
弁護士さんの専門分野、それを是非とも私たちに
情報提供していただきたいと、そういうふうに思います。被害者の弁護に関して適切な
弁護士さんを紹介するということが入っているわけですから、それ以外の問題に関しても専門分野の
弁護士さんの
情報が
提供されればどんなにか私たちにとっては使い勝手が良くなるんではないかというふうに思います。
これはもちろん
弁護士会の
協力あってのことなんですが、もうそろそろ
弁護士会は、個々の
弁護士は独立しているんだということではなくて、また個人商店的な形ではなくて、やはりそれぞれ専門の
弁護士さん、そういう
情報を
国民に是非とも
提供していただきたいというふうに思います。
次に、
法律扶助の問題なんですが、消費者
センターにもこの
制度を
利用したいという相談はたくさん寄せられます。確かに、年度初めはかなり
利用することができるやに思います。ところが、年度末になりますと、もう
予算がほとんどないとかなくなってしまったということでなかなか
サービスを受けられない
状況になっております。今回、将来お金が入ってくるから必ずや
弁護士費用とかそういうものを払いますよということを約束した人に契約
弁護士を紹介するということになっておりますが、これは大変助かることではないかと思います。
次に、この
業務の
範囲で研修とか講座というものが入っております。これに関して、先ほ
ども山本先生の方からありましたが、是非法教育というものに力をかしていただきたいと思います。
実は私、今朝、消費生活
センターからこちらへ駆けました。朝からがんがんと電話は掛かってきました。そして、来訪者もあるんです。何かと申しますと、七十過ぎのお年寄りに対してアダルトグッズや有料サイトの
情報の請求のはがきが届いたということなんです。全く何が何だか分からない。でも、そこには訴訟にするとか顧問
弁護士を間に入れるとか、専門の回収業者を自宅まで行かせるとか、そういうことが書かれているわけですから、お年寄りにとってはもう大変なことなんですね。もう不安で不安でしようがなくて
センターまで駆け付けてきたということなんですが、覚えがない、全く心
当たりがない請求、そういうことにおびえてしまう消費者というのは一体全体何なのかということを感じます。自分の
権利とか義務とか、そういうものが明確になるような教育を今まで全く受けてきていないんではないかと思います。
法教育に関しましては、学校教育で既にスタートしております。ですが、
社会人にとっても差し迫った必要性があるのではないかと思います。是非とも、
社会人又は私
ども相
談員に対しての法教育の機会を与えていただきたいというふうに思います。
最後になりましたが、今回のこの
支援法の中で大きな役割をするのが地方公共団体だろうと思います。私は、鳥取県の片山知事のお話を伺う機会があったんですが、あの方のお話を聞いていますと、正に司法と行政というのはこういうかかわりをするのかという目をみはるものがありました。ですが、あの方は特別としても、ほかの方々もそういう考えを持っていらっしゃる方は多いかと思います。でも、まだまだ司法と行政というのは境界線がはっきりする必要があるんだという考えの公務員も多いかと思います。ですが、この
法律が成立した場合は、そういう考えは是非とも捨てていただいて、司法と行政がパイプを持つことによって住民がより司法の
サービスを受けれるような、そういう考え方を持っていただきたいと思います。で、そのためには、今までのように上から物を、ぽんと資料を投げるんではなくて、現場の私
どもないしは相談の担当者に対して
意見交換ないしは研修、そういうものをやっていただくことによって現場から上を変えていくような、そういうことも必要かと思います。
それと、最初に申し上げました高齢者、
障害者の問題に関しては、一番今見守りがないのが元気でお一人住まいで自立している方々なんです。ところが、そういう方々はある日突然判断力が付かなくなります。そういう方に関して一番
情報を持っているのが消防署ないしは警察だというふうに思います。個人
情報保護とか守秘義務とか、そういうことにとらわれないで、是非ともこういう方々が安心して暮らせるようなそういうことを考えた上で、司法
サービスの方へ誘導することに
協力していただけるような、そういう考え方を持っていただきたいと思います。
ありがとうございました。