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松村龍二君 先般行われました
委員派遣につきまして、その
概要を御
報告申し上げます。
去る一月十四日及び十五日の二日間、
司法行政及び
法務行政等に関する
実情調査のため、静岡県及び愛知県を訪れました。
派遣委員は、
山本委員長、
吉田理事、
千葉理事、
木庭理事、
井上理事及び、私、
松村の六名でございます。
まず、一日目は、浜松市の
スズキ株式会社を訪問し、
外国人労働者の
受入れ状況について
概況説明を聴取した後、
工場内の視察を行いました。
スズキ株式会社においては、
従業員一万七千七百三十四人のうち
外国人は千八百七十人で全体の一一%、
工場勤務者に限ると二〇%を占めております。
外国人の九一%は
日系ブラジル人が占め、
勤務年数は、三年未満が八五%で、長期就労者は少ないとのことであります。作業現場では、安全教育には特に力を入れており、
従業員に対する研修の
実施とポルトガル語、中国語、韓国語など各種言語によって、作業や注意の表示を徹底していることなどの
説明を受けました。
続いて、
スズキ株式会社の鈴木会長及び北脇浜松市長と
外国人労働者受入れに伴う企業及び自治体の
対応と
課題等について意見交換を行いました。鈴木会長からは、
外国人労働者は勤労意欲が高く、今や我が国の製造業にとって欠かすことができない存在であること、
外国人労働者は人材派遣会社を通じて受け入れており、賃金は同じ労働であれば日本人と同額であること等の
説明を受け、受入れに伴う子供の教育や
社会保障等の諸
課題には国が総合的に取り組んでいく必要があるとの意見が述べられました。
北脇市長からは、
外国人に対する市の
取組について
説明を受けました。浜松市の
外国人登録者数は、昨年四月現在、二万二千二百十九人で市の人口の三・七一%に達しており、地域経済においても重要な地位を占めております。市においては、
外国人の定住化の傾向を踏まえ、居住
外国人を積極的に市民として位置付け、
外国人市民とのコミュニケーションを深め、他国文化との活発な交流を通じた共生
社会作りを目指して施策を
推進しており、その具体例として、
外国人市民の意見の市政への反映や地域
課題の
解決等のための各種
会議の開催、
外国人の子供たちの就学促進のための日本語とポルトガル語による学習サポート教室の開催等の
説明がありました。
質疑応答では、
外国人労働者の雇用形態と賃金、
社会保険未加入者が多い実情、日本人の失業率が高い現状と
外国人労働者受入れとの
関係等について意見交換を行いましたが、両者からは、近年、
外国人市民の定住化傾向が顕著であることから、ブラジル人学校などへの公的
支援を可能にするための規制緩和、健康保険と年金
制度への加入の分離の必要性、
外国人登録手続の
改善等の諸
課題について国に積極的な施策を求める意見が述べられました。
次に、名古屋高等
裁判所を訪問し、同
裁判所のほか、名古屋地方
裁判所、名古屋家庭
裁判所、名古屋高等
検察庁及び名古屋地方
検察庁から、それぞれ管内の
概況説明を聴取いたしました。
裁判所からは、名古屋高等
裁判所管内では、少年の道路交通法事件などを除いて各種事件とも増加傾向にあり、特に破産事件及び簡裁の調停事件の増加が顕著であり、次いで
刑事訴訟事件及び家事事件の増加が目立っていること、名古屋地方
裁判所では、破産事件の九〇%、不動産
執行事件の七〇%が一年以内に終局していること、
刑事事件の平均審理期間は三・二か月で、近年、
外国人の通訳を要する事件の増加や児童虐待に関する事件も幾つか係属していること、また、簡裁の特定調停事件の平均審理期間は三か月となっていること、名古屋家庭
裁判所では、長引く不況の
影響もあり、生活費の額をめぐって激しく対立するなど近年の
社会情勢を反映した複雑かつ困難事件が増えていること等の
説明を受けました。
また、
検察庁からは、名古屋高等
検察庁管内では、景気の低迷や混沌とした
社会情勢を背景に
犯罪が複雑・
多様化、凶悪化の傾向を強めていること、名古屋地方
検察庁では、イラン人やブラジル人による覚せい剤等薬物密売事犯に対する集中摘発を行ったこと等の
説明を受けました。
質疑応答の際には、
検察庁の人的
体制の
充実強化、中国人窃盗団に対する刑罰の在り方と刑罰全体の引上げの
検討、本年四月からの人事
訴訟事件の家庭
裁判所への移管に伴う
体制の
整備、
司法制度改革、特に
裁判員制度の在り方等について意見交換を行いました。
次に、愛知県における
司法サービス、
更生保護の実情と
課題について、
弁護士会、
司法書士会、土地家屋
調査士会、保護司会連合会との意見交換を行いました。
弁護士会会長からは、
司法制度改革の理念を
実現するためには、
司法ネットの
充実、国選弁護の
報酬引上げ、
裁判所の
充実強化が必要であること、
司法書士会会長からは、
司法書士がいない奥三河山間地域での相談会の継続的な開催、高校生や高齢者に対する消費者問題等
法律教育に取り組んでいること、土地家屋
調査士会会長からは、
平成十四年十月に全国初となる「あいち境界問題相談センター」を立ち上げて土地の境界紛争
解決に当たっていること、保護司会連合会会長からは、
保護観察活動や
犯罪予防活動を十分に行うには保護司の活動費の
充実強化や研修の
充実、地元自治体の
理解と協力が不可欠であること等の意見が述べられました。
質疑応答の際には、
司法過疎への
取組における
弁護士と
司法書士との
関係、保護司に対する十分な
予算措置の必要性、愛知県における個人破産の推移、
司法予算の
充実強化、
法律扶助
予算の現状等について意見交換を行いました。
二日目は、まず、名古屋
刑務所を訪れました。名古屋
刑務所においては受刑者の相次ぐ死傷事件が明らかになり、今日の
行刑改革論議の契機となりましたことは、
委員御案内のとおりでございます。本
刑務所は、二十六歳以上の
犯罪傾向の進んだ刑期八年未満の者を収容するとともに、名古屋矯正管区内における分類センター及び医療センターとしての役割も担っております。現在、事件後の事務
処理に伴う収容調整により収容人員は
定員まで若干の余裕がありますが、府中
刑務所や大阪
刑務所といった他の大規模収容
施設に比べ独居房が少なく、昨年十一月、二百人規模の独居収容棟が新たに完成し、
処遇困難者や勉学に取り組む者等
処遇上の配慮が必要な者に
対応しております。続いて、所内の視察を行い、新たに作られた保護房は、以前に比べて面積が広く、壁も木で作られ、被
収容者の安全に配慮した
改善が加えられているほか、被
収容者の動静を二十四時間カラー録画するようになっております。また、革手錠に代わる新たな手錠は、従来のものに比べて腰部のベルトがない分、腹部への圧迫感が解消されており、本
委員会における
審議や
行刑改革会議における議論等を踏まえ、
行刑の在り方について
改善が図られつつあるとの印象を受けました。
次に訪れた瀬戸少年院は、十四歳以上二十歳未満の長期
処遇の少年が収容されております。昨今の
矯正施設の
過剰収容が大きな問題となっている中、本院も例外ではなく、収容
定員百六十名であるところ、昨年の一日平均収容人員は二百三名と
過剰収容が極めて深刻になっております。このため、居室に収容し切れない少年は、夜間、折りたたみ式ベッドによって集会室で就寝せざるを得ない実態にあります。収容棟の
増築等施設整備が急務であることを痛感いたしました。院長からは、個々の少年の特性に応じた個別的
処遇計画を作成し、それに基づく教科教育や職業能力開発等適切な
処遇に努めていること、また、本院には名古屋矯正管区内で少年院送致が決定した
日系ブラジル人の少年も収容されており、外部から定期的にカウンセラーが来院し、彼らの心のケアをしていること等の
説明を受けました。
以上が
調査の
概要であります。
最後に、今回の
調査に当たり、御協力をいただきました
関係各位に対し、この席をおかりして厚く御礼申し上げ、
報告を終わります。