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2004-05-20 第159回国会 参議院 文教科学委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年五月二十日(木曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月十八日     辞任         補欠選任      草川 昭三君     荒木 清寛君      山本 香苗君     山下 栄一君  五月十九日     辞任         補欠選任      谷  博之君     田名部匡省君      荒木 清寛君     草川 昭三君      山下 栄一君     山本 香苗君  五月二十日     辞任         補欠選任      佐藤 泰介君     小林  元君      田名部匡省君     谷  博之君      畑野 君枝君     吉川 春子君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         北岡 秀二君     理 事                 亀井 郁夫君                 後藤 博子君                 鈴木  寛君                 山本 香苗君                 林  紀子君     委 員                 阿南 一成君                 有馬 朗人君                 大仁田 厚君                 大野つや子君                 橋本 聖子君                 伊藤 基隆君                 小林  元君                 谷  博之君                 中島 章夫君                 西岡 武夫君                 草川 昭三君                 畑野 君枝君                 吉川 春子君                 山本 正和君    国務大臣        文部科学大臣   河村 建夫君    副大臣        文部科学大臣  稲葉 大和君    大臣政務官        国土交通大臣政        務官       斉藤 滋宣君    事務局側        常任委員会専門        員        山口 俊史君    政府参考人        文化庁次長    素川 富司君        国土交通省道路        局次長      榊  正剛君        環境省自然環境        局長       小野寺 浩君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○理事補欠選任の件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○文化財保護法の一部を改正する法律案内閣提  出、衆議院送付)     ─────────────
  2. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) ただいまから文教科学委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  昨十九日、谷博之君が委員辞任され、その補欠として田名部匡省君が選任されました。     ─────────────
  3. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 理事補欠選任についてお諮りいたします。  委員異動に伴い現在理事が一名欠員となっておりますので、その補欠選任を行いたいと存じます。  理事選任につきましては、先例により、委員長の指名に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 御異議ないと認めます。  それでは、理事山本香苗君を指名いたします。     ─────────────
  5. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  文化財保護法の一部を改正する法律案の審査のため、本日の委員会文化庁次長素川富司君、国土交通省道路局次長榊正剛君及び環境省自然環境局長小野寺浩君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 文化財保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。  本案につきましては既に趣旨説明を聴取しておりますので、これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  8. 阿南一成

    阿南一成君 おはようございます。自由民主党の阿南一成であります。  私は、まず最初に、我が国の今後の文化財保護政策についてお伺いをしておきたいと思います。  文化財は、我が国歴史において、人間生活の中で生み出されたものであり、非常に貴重な財産というふうに思うわけであります。昭和二十五年に文化財保護法が施行されて以来、文化庁を始め各関係機関におかれまして、この貴重な財産保存保護に向けた取組を真摯にやっておられることを承知をいたしております。  一方、文化財保護法の制定から半世紀の年月が流れました。国民生活様式変化産業構造変化、急激な都市化等々がございまして、そのため文化財保護在り方についても時代変化に適宜対応していくことが必要であると私は考えるのであります。もちろん文化庁におかれましても、こうした社会情勢変化を背景として、今後の文化財保護在り方について審議会等々で様々な検討を進めておられることを承知しております。本日のこの本改正案もそうした日ごろの御努力が結実をされておるというふうに理解をするものであります。  各々、項目については後ほどまた個別にお伺いさせていただきますが、全体としてこの二十一世紀における文化財保護についてどのような基本方針に基づいて取り組んでいかれるのか、まず河村大臣の御見解最初にお伺いいたしたいと思います。
  9. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) おはようございます。  ただいま阿南先生から、これからの文化財保護政策いかにあるべきかという御下問をいただきました。  文化財我が国歴史あるいは文化等を正しい理解をする上で欠くことのできないものであると同時に、将来の文化向上発展の基礎を成します。また、それは我々国民の共通の財産でもあるわけでございまして、それを適切な保存活用を図っていくということは極めて大事なことであると、こう思っております。  現時点におきましては、御案内のように、文化財保護法において、有形文化財無形文化財、また民俗文化財、さらに記念物及び伝統的建造物群、これを文化財という形をもちまして定義をいたしておりまして、この中で特に重要なもの、これを国が指定等を行い保護すると、こういう形を取っておることは御承知のとおりでございます。指定等を行った文化財については、現状変更であるとかあるいは輸出等に一定の制限が課せられる、その一方で、文化財保存、修理、防災、伝承者養成、こうしたものの保護のための必要な助成措置を行っている、こういうことでございます。  今日、我が国をめぐる社会構造国民意識など、文化財を取り巻く環境社会的な環境情勢も大きく変化をしている中でございまして、文化財行政としても、こうした諸情勢を踏まえて、その在り方について積極的な見直しを行うことが必要であると、このように考え、またそれが求められておると、こう思っておるわけでございます。  今回、新たに文化的景観をこの文化財考え方の中に取り入れようと、この考えに至ったのは正にそれでございまして、文部科学省といたしましては、今後とも文化財保存活用について一層充実に努めてまいりたいと、このように考えておるところであります。
  10. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  次に、文化的景観保護に至る経過及び史跡等との関係についてお尋ねをしておきたいと思います。  まず、文化的景観保護でありますが、今回の法改正は、文化的景観を新たに文化財としての保護対象に加えようとするものであります。昭和五十年に伝統的建造物群が法制化されて以来の新たな文化財の創設であります。新たなカテゴリーを設けるのは、従来の文化財概念ではとらえ切れないものがあるということであろうかと思います。例えば、文化的景観の代表的な例とされております棚田につきましてでありますが、既に姨捨棚田、これは長野県にありますが、あるいは白米の千枚田、石川県などが名勝として国の指定を受けております。また、文化的景観は、自然と人間とのかかわり合いの中で形成された空間を示すものであります。エリアとして保護対象をとらえようとする点においては、伝統的建造物群保存地区に近いものではないかと考えるものであります。  そこで、今回新たに文化的景観という概念文化財保護対象に加えられることとなった理由について明らかにしていただきたい。また、史跡名勝天然記念物伝統的建造物保存地区とはどのような点で異なり、またどのような点で共通するものであるか、それぞれの関係についてお答えを願いたいと思います。
  11. 稲葉大和

    ○副大臣稲葉大和君) ただいまの先生の御質問を承っておりますと、もう改めて私どもがお答えする必要がないのじゃないかと思われるぐらい先生の御理解が深いところを今感じ入っているところであります。  せっかくの御質問でありますので、私ども見解を若干お話しさせていただくとするならば、今いろいろな価値観が錯綜しておりまして、その中で特に私たちは、指摘されました棚田あるいは里山、こういった自然とのかかわり合いの中で、我々が日常の生活生業を通じ、あるいは生活の糧としてなりわいの中から創出、作り出してきたこの景観については、今更申すまでもなく、ますますこれから今後にわたって地域歴史文化密接かかわり合いを持ってくる物件だと思っております。こういった物件については、世界的な趨勢として、御指摘ございましたように、世界遺産の中でユネスコの世界文化遺産のリストの中にも既に登録がされている、そして保護対象として保護が進められている、こういう事情が出てまいっております。  我が国においても、この事例に倣って、国内にあります文化的景観、こういう概念を作り出して、さらにその保護対象を広げながら、今後の私たちの後世にこの歴史的な文化、そして知識を残しておかなければならない、こういう要請にかんがみて新たに文化的景観という概念を導き出し、今回導入するに至ったわけです。これは正に時代要請にかなうものと、こう私どもは受け止めております。  後半の部分については次長から。
  12. 素川富司

    政府参考人素川富司君) 文化的景観史跡名勝伝統的建造物群との関係についての御質問で、お尋ねでございました。  国が指定する記念物のうちの史跡につきましては、法律上は貝塚、古墳、都城跡、城跡、旧宅その他の遺跡で我が国にとって歴史上又は学術価値の高いもののうち重要なものということになっておりますし、名勝につきましては庭園、橋梁、峡谷、海浜、山岳その他の名勝地我が国にとって芸術上、観賞価値の高いもので重要なものとなっているわけでございます。また、伝統的建造物群については、周囲の環境と一体をなして歴史的風致を形成している伝統的な建造物群価値の高いものと、こういう定義があるわけでございます。  もとより、この史跡名勝につきましては、先生も先ほど御指摘がありましたように、重要文化的景観の一部として含まれる場合もあるわけでございます。  御指摘のありましたような姨捨・田毎の月、それから白米の千枚田が既に名勝となっておりますが、そういうのも文化的景観としても価値のあるものという部分はございます。でありますけれども文化的景観につきましては日々の生活生業を行った結果生じた土地の様子、さまでございまして、必ずしも歴史上、学術上の価値というものを求めるものではないという点で史跡とは異なるという点があるわけでございまして、また芸術上、観賞上の価値というものを求めるものではないという点で名勝とは異なるという点があるわけでございます。また、天然記念物については対象が動植物という、地質鉱物であるというようなことで、対象とは異なるということがあるわけでございますし、更に加えまして、伝統的建造物群については建造物のグループ、これが対象であるということで、より広い土地のさまであるという重要文化的景観とは対象は異なるわけでございますが、いずれにいたしましても、歴史の営みの中で自然、風土社会生活を反映して継承されたものであるという意味におきまして共通している重要なものであると理解しております。
  13. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  この法案においては、同じく今国会に提出されております景観法に基づきまして、市町村等指定する景観地区景観計画区域の中にあるこの文化的景観のうち、市町村等申出に基づいて特に重要なものを文部科学大臣重要文化的景観として選定するという仕組みになっておるのであります。自治体地区指定を待って国が選定を行うという点につきましては、市町村条例等により伝統的建造物群保存地区と同様のスキームに基づくものであろうかというふうに思います。  こうした選定仕組みにすることでどのようなメリットがあるのか、重要文化的景観について市町村等指定申出に基づく選定仕組みとすることとした理由をお伺いをしておきたいと思います。  また、景観地区等指定は、景観保護等に非常に積極的な自治体とそれから消極的な自治体とでは対応に大きな差が生ずるのではないかと思うのであります。このため、文化庁におかれては文化財保護重要性の観点から各自治体理解をどのようにして促していくかが重要であろうかと思います。景観計画の策定、景観地区等指定、そして重要文化的景観選定という、それぞれの制度運用に当たりまして各自治体文化庁、そして国土交通省などが多くの関係機関で綿密な連絡を持つことが必要であると考えます。重要文化的景観選定解除などの過程において関係機関の間でどのようなやり取りがなされることとなるのか、併せてお伺いをしておきたいと思います。
  14. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  重要文化的景観選定する際に、市町村等申出に基づいて行うこととした理由でございますけれども、まず、重要文化的景観保護に当たりましては、そもそも文化的景観地域における人々生活生業密接関係するということ、また文化的景観の特性によってはその管理方法というものが異なってくる、多様であるということなどの理由からいたしまして、やはり地域人々に身近な行政団体である市町村等による組織的、継続的な取組がまずもって必要であるというふうに理解しております。そういう意味におきまして、市町村等の意向が十分反映されるように、これらの自治体申出に基づきまして、国が重要文化的景観選定するということといたしたわけでございます。  先生指摘のように、市町村自治体取組というものは積極的なところとそうでないところといろいろあるわけでございますけれども、私ども基本的にこの制度につきまして、その趣旨について広く理解していただくように努めてまいらなければいけないと考えておるわけでございますけれども、いずれにいたしましても、市町村等におきまして、まずその所有者地元関係団体とも十分調整を行った上でその申出を行っていただくように促してまいるような努力をしてまいりたいと思います。  また、その選定のほかの解除等に当たりましても、その運用に当たって選定申出を行った関係市町村と十分に調整してまいりたいと思っております。当然、国の関係機関との連携調整も十分図っていかなければいけないということは御指摘のとおりでございます。
  15. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  文化的景観は、長い間、人と自然との有機的な連携がなされてきたあかしとしてとらえられるものであろうと思います。それゆえ、人々生活の中で常にかかわりを持ち、また使ってこそその文化的景観意味があるのではないかと思うのであります。文化的景観の例として棚田里山が挙げられておりますが、山岳信仰対象としての景観生活における用水路なども自然と人間生活との共存共栄の姿が評価されたものではないかと考えます。そのため、選定に当たっては、当該棚田里山などが人々生活の中に実際に活用をされていること、あるいは活用を通じた保存を行うといった視点が重要ではないかと私は考えるのであります。  そこで、重要文化的景観は具体的にどのような基準によって選定されるのか、また選定に当たっては当該棚田などの実際の活用状況などはどのように評価をされるのかにつきましてお伺いいたしますとともに、仮に重要文化的景観選定された棚田がしばらくの間休耕状態となった場合にどのような取扱いがなされるのかということについてもお伺いをしておきたいと思います。  また、人々生活密接にかかわっている文化的景観の性質にかんがみまして、文化財としての選定がなされたことで当該地域住民の方々の生活様式が過度に規制をされるようなことでは問題であろうと思います。この点についても併せて文化庁見解を確かめておきたいと思います。  さらに、たとえ保存に値すると判断される場合であっても当該地域住民が必要としなくなった文化的景観につきましては、必要に応じてその在り方を再検討することも必要ではないかというふうに考えるのですが、いかがでしょうか。  これらの点を含め、文化庁文化的景観の維持、保存在り方についてどのような姿勢で臨まれるのか、お考えをお聞かせ願いたいと思います。
  16. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  まず、重要文化的景観選定基準でございますけれども、具体的な選定基準につきましては法律の成立後に専門的な知見も踏まえて検討することとなるわけでございますけれども、水田とか森林、河川、湖沼等景観のうち、地域生活又は生業及び独特の風土等につきまして、その典型的な形態を顕著に示すものといったような抽象的な事項目でございますけれども、そういったものなどが一つの案になるのではないかとも考えておるわけでございます。  いずれにいたしましても、具体的な物件につきましては、選定基準を設定いたしまして、実地調査を行って候補を特定していくということになるわけでございます。  続きまして、文化的景観につきましては、その活用状況が重要な意味を持つのではないかという御指摘でございます。  御指摘のように、文化的景観地域人々が日々の生活を営む中で作り出してきたものということでございますので、言わば生きている文化財というような表現も使っても間違いではないのではないかと思われるわけでございますけれども、そういう意味におきまして、重要文化的景観選定に当たりましては、現在の活用の姿というものを含めて広く評価してまいるということが重要になってまいると思います。  それから、選定後に例えば棚田休耕状態になった場合の対応いかんということでございますけれども、その休耕状態になった棚田につきましては、例えば、それが長期に、非常に長期にわたって重要文化的景観価値、その価値そのものを相当程度減ずるというようなことが明らかな場合を除きましては、やはり通常文化庁としては特段の対応というのは想定されないわけでございますが、必要に応じてその実態の把握を行うということはしていく必要があるのだろうと思っておるところでございます。  それから、規制に関して過度な程度のものを課すのはいかがかという御質問でございます。  規制に関しましては、やはり先ほど申し上げましたように、地域における人々生活生業密接にかかわっているということから、御指摘のように住民生活を過度に規制するものであってはならないというふうに考えているところでございます。  ということで、例えば保護に当たりましては、滅失、毀損とか現状変更などの場合にも、指定文化財の、他の指定文化財のような許可制ではなく届出制にしているというような緩やかな保護措置基本としているところでございますし、また、その届出につきましても、所有者等に過大な負担を課すことがならないように、通常の例えば農林水産業生産活動といったものを行うというような保存に著しい影響を及ぼすというおそれがない場合には、これは届出義務は生じないというような整理もしているところでございます。  それから、最後の点の、地元が必要としなくなった場合にどういう対応を取るのかということでございますけれども、これは、法律上は、価値を失った場合その他特殊な事由の場合には選定解除をするという規定がございますけれども、これは地元の方で必要としない、すなわち、それによってもう文化的景観価値が損なわれてしまうというような事態に立ち至るというようなことであれば、そういうような解除ということもあり得るのだろうとは思いますけれども、その点につきましては、やはりそのプロセスの中で、地元自治体、それから住民の方の意思というものを十分踏まえながら対応していく必要があろうかと思っているところでございます。
  17. 阿南一成

    阿南一成君 次に、民俗技術保護についてお伺いをしておきたいと思います。  近年、我が国社会経済情勢国民生活様式は大きく変化をいたしております。長年、地域における人々生活を支えてきた様々な技術が徐々に消滅しつつあるのが現状であります。今回の法改正により、全国各地の希少な民俗技術について保護措置が図られることとなるのは非常に評価されるべきものであり、実効性のある運用が期待されるところであろうかと思います。  民俗技術の主な例として挙げられております杜氏による酒造り、あるいはかじ、船大工などがありますが、一口に民俗技術と言っても、その対象範囲は非常に多岐にわたると思います。民俗技術民俗文化財として指定するに当たりましては、全体として膨大な数の民俗技術の中から民俗文化財としての保護対象になり得るものを選考していくというのはかなり困難ではないかと思っております。  したがいまして、民俗技術とされるものを全国各地からどのように発掘をし、選考審査し、そうして民俗文化財として指定していくのか、その指定に至るまでのプロセスについて簡潔にお答えいただければと思います。
  18. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  まず、指定に至るまでの過程といたしましては、まず一般的に所在状況調査といいますか、どのようなものがどこにあるかということ、一般的な調査が必要でございまして、文化庁は、民俗技術制度化するに先立ちまして、都道府県の教育委員会の協力を得まして民俗文化財関係調査を行っているところでございます。  その中で、例えば七千点ぐらいが調査対象として挙げたわけでございますけれども、いずれにいたしましても、このような中から指定対象となる民俗技術につきましては、専門的な知見を踏まえた指定基準というものを作りまして、さらにそれにふさわしい、適合すると思われる民俗技術につきまして学術的な詳細な調査を更に行いまして、個々の民俗技術が持つ価値というものを把握した上で、文化審議会への諮問、答申を経て文部科学大臣指定すると、これが基本的なプロセスでございます。
  19. 阿南一成

    阿南一成君 今回、新たに保護対象となる民俗技術範囲郷土食調理技術が含まれております。  私も、かつて滋賀県の警察本部長として滋賀に赴任をいたしたときに、生まれて初めてお酒のおつまみに出会い、最初はその味にびっくりをいたしたのでありますが、慣れてまいりますと奥の深い味わいのある郷土食と感じました。いわゆるふなずしなどもその例として挙げられておるようであります。  食事はとりわけ生活の核と言うべきものであることから、それぞれの地域において独自の風土や農産物を生かし、様々な工夫を凝らすことによって多彩な郷土食が生み出され、今日に受け継がれているものと思います。しかしながら、一方、我が国の食生活を取り巻く状況は大きく変化をいたしております。昔ながらの伝統食あるいは郷土食については、その調理技術の後継者を確保することができないために消滅をするということも懸念をされておる今日です。守り伝えていくための措置を講じることは私は重要であると考えます。  しかしながら、全国各地の多様な食文化の中で、特定の郷土食に関して文化財指定がなされ保護対象になりますと、一部の郷土食について文化庁がお墨付きを与えるということに相なるのではないか。優劣を決定し差別化を図るということになってはいけないと思うのであります。  このような誤解を生じさせないためにも、選定趣旨及び判断基準を明らかにするとともに、選定の際に全体のバランスなどに十分に配慮することが必要だと考えます。文化庁見解を求めます。
  20. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  民俗技術といたしましては、大きく、日常生活において使用される一般的な生活技術と、生計を賄うために使用される職業的な生活技術というふうにも分類できるかと存じております。今、先生から御指摘のございました郷土食、特に保存食などの調理技術といいますのはその前者の一般的な生活技術という分類に当たると考えるわけでございますけれども、食習慣の変化等から衰滅のおそれが高く、その保護を図り継承する必要があるという分類の、分野の一部の例ではないかと考えているところでございます。  いずれにいたしましても、民俗技術指定に当たりましては、専門的な見地からの指定基準というものをきちんと定めまして、全国的な調査というものを踏まえましてバランスの取れた指定が行われますように十分配慮しながらその指定の作業を進めてまいるということが肝要かと存じております。
  21. 阿南一成

    阿南一成君 民俗技術は古くから地域人々生活の中に深く溶け込んでいるものであります。その保存については既に各自治体によって独自に取組が進められているケースも少なくないと思うのであります。今回の法改正により民俗技術をきちんと保護していくための体制が整備されることは、私はもちろん望ましいことだと思うのであります。しかしながら、法律によって制度化されることにより、これまで各地域においてそれぞれ進められてきた民俗技術保護に対する取組にいささかも疎外感が出るということではいけないと私は考えております。  そこで、民俗技術保護に当たってこれまで各自治体が行ってきた取組への評価についてお伺いをいたしますとともに、文化財保護行政において国及び地方自治体それぞれに期待される役割は何かということについて、文化庁見解お尋ねしたいと思います。  また、自治体における文化財保護のための取組文化庁による指定が重複する場合にどのような取扱いとなるのか、併せてお答えをいただければと思います。
  22. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  地方自治体における民俗技術保護でございますけれども、今、民俗技術自体が文化財としてのカテゴリーとしてきちんと整理されていないということもあるわけでございますけれども、例えば年中行事において儀礼食なんかがございますけれども、そういうものの調製技術と、調理技術でございますけれども、そういうようなものにつきましては、例えば現在の民俗文化財のカテゴリーであります風俗慣習を構成するものとしてとらえられるというような形で一部その保護が図られているというものが自治体においてもあろうかと思うわけでございますけれども、いずれにいたしましても、このたび民俗技術を新たな保護対象とすることになりますと、やはり民俗技術を、正面からその技術を技として評価することになり、地域に根差した保護の推進が一層図られるものではないかというふうに考えているところでございます。  それから、文化財保護行政におきます国、地方の役割分担ということでございますけれども、やはり国は国全体の観点から文化財価値というものを評価してその保護を図るということでございますし、言うまでもなく地方自治体はその地域の特色のある文化財保護を図るということが肝要かと存じておりまして、民俗文化財につきましては、特にその地域に根差した文化財であるということで、数の面におきましても自治体指定というものがまず多くなるのではないかということでございますし、国は、その中から特に重要なもの、中といいますのはその指定を重複するということではございませんで、指定するということでございます。  そして、御指摘のありました、指定が重複することはないのかということでございますけれども民俗文化財を含めまして文化財指定につきましては、地方公共団体の指定は、国の指定文化財以外のもので地域に所在するものの中から重要なものを指定するというふうに法律上規定、整理されておりますので、その制度上、国と地方公共団体の指定というものが重複することはないというふうに整理しているところでございます。
  23. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  続きまして、文化財登録制度の拡充についてお伺いをしておきたいと思います。  平成八年に文化財保護法が改正をされました。国による指定に比べて規制の緩やかな文化財の登録制度が設けられました。これは、規制を緩めることでより多くの文化財保護対象にしようとするというもので、制度創設以来多数の登録がなされておる現状であります。しかし、この登録制度は、従来、建造物のみを対象とするものでありました。今回の法改正によって美術工芸品など他の有形文化財などにも範囲が広げられることになるのであろうと思います。  文化庁は、登録制度が導入される際の参議院文教委員会での審議におきまして、実は私どもは、内部で相談した段階では、近代の歴史資料でございますとか、あるいは無形民俗文化財でございますとか、様々なもので保護が必要なものというのはあるという認識をいたしておりますと答弁をされております。建造物以外の文化財についても、その当時、登録制度対象に含めていくことの必要性を感じておられたと私は理解をいたすわけであります。  そこで、登録の対象建造物に限ることとし、これまで他の文化財への導入がなされてこなかったのはなぜか、そして今回対象が拡大されることとなったのはなぜか、この両点についてお伺いをいたしたいと思います。
  24. 稲葉大和

    ○副大臣稲葉大和君) 先生から大変御親切な御説明、御指摘をいただきまして、こちらの方からもかえって御礼を申し上げる次第であります。  今御指摘ございましたように、平成八年、文化財保護法が改正されまして、その改正に当たって参議院の委員会において本文に附帯決議が付された経緯は御説明をするまでもないと思っております。その中で、建造物以外の物件につきましても更に範囲を広げよう、こういう御趣旨の附帯決議の一項が付されておりますし、また、引き続いての衆議院の委員会におきましても同様の附帯決議が付されてきたわけです。  この平成八年の改正によりまして、指定文化財としての指定をしよう、こういう趣旨でありますが、さらに、その指定制度を補う、こういう意味を持ちまして、届出制度、さらには登録制度も併せて導入していただきました。その当時は、建造物につきまして、開発に伴って取壊しの危険に瀕するもの、そのほか、一定の対象物件が把握されている、こういう限定が比較的容易だ、そういう趣旨から登録制度として先行導入したんでありますけれども、それ以外の物件についても、附帯決議に付されました観点から、引き続きその保護在り方を当方としましても検討を続けてまいりました。  今、開発が更に進められてきまして、保存活用の措置をどうしても必要とする、急務である、この近代的な要請がここに来て強くなってまいりまして、これらの文化財については、今現在、一定の価値は認められる、しかしながら、まだまだその評価が固定、定着しておりませんものですから、直ちにその文化財保護法に言う指定という対象に加えていくことがちょっと難しい、そういう部分がまだ残されております。しかしながら、今申し上げましたように、やはり保存していかなければならない。  こういう時代要請にマッチさせるために、我々としましては、建造物以外の有形文化財あるいは有形の民俗文化財、そして記念物につきましても登録制度を導入して保護対象にしていかなければならないんじゃないか、こういう観点からその範囲を拡充させていただいた次第であります。
  25. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  最近、薄型テレビあるいはハードディスクDVDレコーダー、それからデジタルカメラ、これが新三種の神器と言われておるそうでありますが、昭和三十年代の三種の神器の一つとして白黒テレビが今回の法改正により新たに登録文化財対象に含められることになると報道で知ったわけであります。  報道によりますと、今回行われる登録文化財対象の拡大によって、白黒テレビのほか、ちゃぶ台あるいは洗濯板など、昭和生活様式を示す用具についても対象に加えることができるということのようであります。また、このような生活の様子を伝える文化財は、単品ではなく一定規模のコレクションとしてまとまることで登録制度対象になるとの解説が付いておりました。  こうしたコレクションの発掘、収集、整理につきましては、各自治体及び教育委員会の積極的な取組が大いに期待されると思います。今回の措置に基づいて文化財の登録を進めていくに当たりまして、各自治体との緊密な連携体制を構築していくことが必要になりますが、具体的にどのような措置を講じていかれるのか、お伺いをいたします。
  26. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 阿南先生おっしゃるとおりで、正にそうした文化財はそれぞれの地域にあるわけでございまして、それを発掘し保存していただくこと、これは地方自治体にお願いをする。その登録制度というのが、正に国や地方公共団体の指定制度を補完する制度として導入をされているという経緯もございます。  既に、各地方に参りますと、民俗文化館、博物館というようなものを持っているところもかなり出てまいりまして、そういうところへ、ちょっと前まで使われておった、正にさっき御指摘のあったようなすきとかくわとか、そういうものを全部そろえて、昔はこういうことでやっていたんだということが今の子供たちにも分かるようになっておりますが、そういうものの中から登録するようにということで、これは登録文化財指定するに当たりましては、当該地域の地方公共団体の意見を聴くということが法改正によって明らかにされておりますし、当然まず地方の意見を聴いて指定をしていかなきゃならぬということでございます。  それから、この文化財保存活用する、これにつきましても、都道府県それから市町村教育委員会文部科学大臣又は文化庁長官に対して意見を具申をすると、こうなっておるところでございまして、地方公共団体は自分たちの区域内の文化財密接に関与しているということから、当然、登録を進めていくに当たっては、これこそ地方公共団体の意見を参考にすることによってその地域の事情が反映できると、こういうことでありますから、そういう認識に立ってこれからも登録文化行政、文化財の登録の推進、これに当たってまいりたいと、このように考えております。
  27. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  これまで、登録文化財に対して国や地方公共団体による文化財指定がなされた場合、当該文化財に対する登録は抹消をされるということになっておったと思うんでありますが、本法律案では、特別の事情があると認められた場合には地方公共団体による文化財指定と登録制度との併存が可能となるというふうに読めます。  今回、併存を認めることとした理由は何か、どのような場合に併存が認められることとなるのか、また、併存が認められた場合に自治体による文化財指定に何らかの影響を与えることとならないか等について文化庁見解をただしたいと思います。
  28. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  地方自治体による文化財指定と国による登録との関係でございますけれども、登録制度は、国、地方公共団体の指定制度を補完するものということで、基本的にそういう制度として導入されているものであります。したがいまして、このような観点からは、登録文化財が国又は地方公共団体の指定文化財ということになりますと、基本的にはより手厚い保護が図られるということでございますので、原則として登録を存続する意義が失われるということで登録を抹消するというふうなことが基本にしているわけでございます。  他方、登録文化財につきましては、評価が定まってくれば将来国の指定文化財になり得るというような性格のものもあるわけでございます。このような観点からは、地方公共団体の指定文化財になった場合においても国として引き続いて調査研究をする必要があるというものがあるわけでございまして、そういう観点におきまして登録を、国の登録を存続する意義というのは必ずしもすべて失われるわけではないわけでございます。  このため、今回の御提案におきましては、登録文化財が地方公共団体の指定文化財になったとき、原則として従来どおり登録は抹消ということではございますけれども、国の指定に向けた調査研究など、引き続いてその保存及び活用の措置を講ずる必要があるという場合には、これは例外的でございますけれども、登録を抹消しないことができるというような規定を設けたいと考えているところでございます。この場合、両方の制度があるということで所有者により大きな負担を負わせることになるということになるとも思いますので、これは所有者の同意というものを法律の規定上不可欠な要件としているところでございます。  実際の運用といたしましては、所有者から登録を、国の登録をこのまま残して国として引き続き調査対象にしてほしいというような御要望があった場合に、その必要性を国が評価いたしましてその登録を存続するというのが現実的な、現実の運用の姿ではないかというふうに考えておるところでございます。  それから、この登録と指定の併存というものが認められましても基本的には地方公共団体による文化財指定というものに影響を及ぼすものではないわけでございまして、いずれにいたしましても、国と地方が連携して、両者にそごがないよう、所有者に混乱を招かないような十分な配慮をしながら文化財保護の推進をしてまいりたいと考えているところでございます。
  29. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  現在、建造物の登録につきましては、原則として建設後五十年を経過していること、当該建造物を再現することが容易でないことなどの基準が示されております。しかし、建造物と異なり、美術工芸品や生活用具などは作成された時期が必ずしも明らかにならないケースも多いと思うのであります。昭和生活用品などは一定の規模や種類が備わっていることが必要とされるなど、建造物と異なる要件も求められております。このため、今回新たに登録制度対象に加えられることとなるこの建造物以外の有形文化財や有形民俗文化財あるいは記念物につきまして、個別に登録基準を示す必要があると私は考えます。  それぞれ、どのような基準によって登録が行われることになるか、もし固まっておればお示しをいただければと思います。
  30. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  登録制度、現在の建造物の登録制度先生指摘のように、原則としては建築後五十年を経過して再現することが容易でないもの、その他幾つか基準ございますけれども、そういうものを、登録基準等をお示しして公表しているところでございます。  今度新しく登録制度を拡充する、拡大するということに伴いまして、当然文化財の種類に応じた登録基準というものを作ってまいらなければいけないわけでございまして、具体的には、この法律ができました後専門的な知見を踏まえて検討することになるわけでございますけれども、やはり基本的には登録制度は、一定の評価は認められるものの、価値を認められるもののまだ定着していないという近代の文化財基本として対象とするということは、建造物であってもその他の文化財であっても基本的な性格はそういうところにあるのかなというふうに考えております。  建造物以外の例えば有形文化財につきましてはやはり、五十年という数字を明示するかどうかは別にいたしまして、原則としてやはり近代以降に作られた系統的にまとまっている歴史資料とかそういったもの、系統的、網羅的に収集されたコレクション、こういったものにつきまして散逸を防ぐという観点から、将来の指定ということも見据えながら、まず登録として、登録制度、登録文化財として認知をしていくという必要があるのではないかと考えておりますし、また、有形の民俗文化財につきましても、やはり近代以降に普及し、その形態とか製作工法につきまして国民生活文化の特色を示すようなもの、先ほど先生の方からちゃぶ台等々というお話もございましたけれども、そういうものにつきましても、基本的にはやはり系統的に網羅的にコレクションされているというようなものを基本的なやはり対象にしていくのがよいのではないかと考えております。  また、記念物につきましても、やはりこれも基本的には近代以降のもので、その地域の例えば造園文化の発展に寄与してきた名勝でありますとか、そういったものにつきまして基本的には対象、代表的な対象というふうにするのがふさわしいのではないかと、このようなことを考えている次第でございます。
  31. 阿南一成

    阿南一成君 ありがとうございました。  今回の措置によって新たに文化財保護対象が私は大幅に増加すると想像をしております。文化庁におかれましては、文化財調査保存、修理などのために従来から補助事業等の措置を順次実施されてきていることを承知をいたしております。さらにまた、平成十三年に文化芸術振興基本法が施行になりまして、文化庁全体の予算はかなりのかさ上げがされました。着実に増加をしております。しかしながら、残念ながら、この文化財保護関係予算は私の見るところ伸び悩んでいるというふうに理解をいたしております。  貴重な国民財産である文化財を後世まで守り伝えていくためにも、文化財保護関係予算の拡充に更に御尽力をいただきたいと思うのでありますが、最後に大臣の御決意をお伺いをいたしまして、私の質問を終わらせていただきます。
  32. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 日本が文化・教育立国を目指す、その中で文化政策を進める上において文化予算というものをしっかり確保していくということ、非常に大事でございます。特に、今御指摘のございました文化財の予算でございます。  確かに、御指摘のとおり、文化庁予算の中の比率の具合が、少しずつ文化財保護が落ちているという傾向もございます。平成十六年度の文化庁予算が一千十六億でございます。その中で文化財そのものの予算となりますと五百九十六億、全体の五八・六、約六割近いものが文化財予算でございますが、平成十一年ごろには、これは全体の比率の中では、文化庁予算そのものも八百九億ぐらいだったものでありますから、文化財が六六%を占めておったということからしますと伸び悩んでいるという御指摘も当たっておると思うわけでございまして、今回、この文化財保護考え方を更に大きく転換をして広く考えていこうと、こういうことにもなってまいりましたので、文化庁予算全体を伸ばすと同時に、その中で特に文化財にも力を入れていかなきゃいかぬ。正に文化立国共通の財産として力を入れていかなきゃいかぬ。  地方公共団体にもいろいろ御努力をいただいておるわけでありますが、国の役割、地方の役割、そういうもの相まって全体的に文化財関係が大きく伸びるように努力してまいりたいと、このように考えております。
  33. 阿南一成

    阿南一成君 概算要求も近づいております。しっかり頑張っていただきたいと思います。  終わります。
  34. 中島章夫

    ○中島章夫君 民主党・新緑風会の中島章夫でございます。  ただいま、阿南委員から、今回の文化財保護法の一部改正の全体的な部分にわたりまして御質問がございました。私は、その今の御質問の中にも、阿南委員の問題意識の中にも諸所に表れておりましたけれども文化財保護行政が広がりを見せていっていると。国が責任を持って重要な国民的な遺産を保存して活用をしていくということの大切さは言うまでもないわけでありますが、今日ここで我々が審議をさせていただいているのは、国と地方とが協力をして、また特に地方の自主性、主体性というものを大事にしながら進めていく新しいタイプの文化財保護行政ないしは文化行政であります。  御承知のように、地方教育行政組織法、地教行法の二十三条には教育委員会の事務として各号列記がしてございます。その第十四号に「文化財保護に関すること。」というのがございまして、たしか十五号がユネスコに関することか何かだと思います。これは、戦後この法律が、昭和三十一年ですが、生み落とされたところから余り変わってないはずであります。  私は、今日、時間的に、同僚の次の質問をさせていただきます谷委員が今国土交通委員会質問をいたしておりまして、こちらに終わったら駆け付けるということになっておりまして、若干予定を、四十分の予定を若干二、三分延長させていただくことがあるかと思いますが、バトンタッチをいたしますまで、焦点を絞りまして、この新しい展開をいたします文化財保護行政の特に地方部局の充実ということに関して御質問をさせていただきたいと思います。  その際、私、実はこの参議院にお呼びをいただかなければ、今ごろ、住んでおります鎌倉で世界遺産登録、鎌倉の世界文化遺産登録の市民の会とか鎌倉風致保存会とか、いろんなそういうボランティアの活動に精を出しておりました。恐らくそれに相当力を入れていたろうと考えております。そのほかにも、同じように、後ほど申します、中世博物館、鎌倉に中世の武家文化を中心とした博物館というものを誘致をしたいと、こういう市民のもう一つの運動を自ら手掛けてまいりました。そんな経験の中から、地方から見ました、つまり地方から見ましたこういう文化行政、文化財保護行政というものについて少し質問をさせていただくことをお許しをいただきたいと思います。  まず、今回の文化的景観あるいは民俗技術あるいは登録制度ということでありますが、都道府県というのはかなり国との連携の下に行政組織が充実をしてきておりますけれども、特に市町村の場合、今回のようにかなりの広範な調査とか、選定作業とか、関係者や関係部局の意見の調整、あるいは都道府県との調整、更に言えば文化庁への申請等、担当する部局はかなりの私は程度の企画調整事務執行能力というものが必要になるというふうに考えているわけでございます。  ところが、市町村文化課ないし生涯教育課などというのは、今日まだ、御承知のように、先ほど地教行法の二十三条十四号で注意喚起といいましょうか、申し上げましたように、何もこの法令に従っているというわけではないんですが、それぞれの都市が埋蔵文化財の整備、開発に追われて、それにどう対応するかということに長い間もう大変苦労してまいりました。特に、文化財部局というのは、それへの対応は、私の住んでおります鎌倉市でもそれへの対応はかなりやってきたように思います。しかし、こういう今申しましたような企画能力、調整能力といったようなことにつきましてはなかなかそうはいかない部分がございます。  そこで、最近の、社会が動いてまいりました過去十年ほどの間に、都道府県とか市町村教育委員会事務局におきまして、文化とか文化財を担当します部局に何か目立った変動といったものがあったのかどうか、そういったことについて文化庁の御認識を伺いたいと思います。
  35. 素川富司

    政府参考人素川富司君) 文化財含めまして文化行政、この近年の変化といいますか、そういう状況ということでございますが、まず、都道府県レベルにおきます文化行政といいますのは、教育委員会で実施しているものと、それから知事部局、首長部局で行われているものというものが両方あろうかと思います。  文化財保護行政については、先ほど地教行法も引用していただきましたように、すべての都道府県において教育委員会基本的に所管しているということになっているわけでございますが、組織につきましてもそれぞれ多様でございまして、文化文化財だけをやっているもの、それから生涯学習と文化文化財というものを一緒に所管しているものと、いろいろ多様な、その地域によっていろんな組織構成というものを工夫されているということがうかがえるのではないかと思っております。  それから、文化行政、文化財行政を担当する職員の数でございますけれども、残念ながら十年前には市町村レベルでの職員数の調査というものはやっておらなかったわけでございますので申し上げられないんですけれども、都道府県レベルで申し上げますと、平成十三年のデータでは、文化行政全体で七千九百六十五人ということでございまして、このうち文化財保護関係でございますと三千百三十七名という数字になっているわけでございます。これは十年前の平成三年に比べますと全体では四百一人の減でございます。地方におきましてもそれぞれ行政改革の影響があるのかもしれませんけれども、そのような数字になっておるわけでございますが、文化財保護行政に関しましては逆に九人増ということで、現状維持といいますか、若干微増しているというようなものが実態でございます。
  36. 中島章夫

    ○中島章夫君 今お話がございましたように、政令指定都市や中核都市のところまでしか調査が及んでいないようでありますが、それでも、手元に持っております資料によりますと、文化財保護に関しては、取りあえず、政令指定都市におきましても芸術文化関係では十、全体としての数が少ないんですが、教育委員会は一に対して市町村長部局で十担当している。国際交流についても教育委員会は二でそれから市町村長部局が十と。同じようなことは中核都市についても言えまして、市町村長部局でこういった、例えば文化行政といったようなものは、市町村長が直接的に手掛けていくというのは大変強力でありまして、何も否定することはないのでありますが。  ただ、文部科学省として、今地方分権ということがこの三位一体改革等においても議論をされているわけであります。先日来この委員会の中でも、学校教育そのものについてももっと地方に主体性を持たせるべく支援をすべきだと、もっと地方が学校教育の政策を自ら判断できるような力を付けるように側面的に支援すべきでないだろうかということを私は申し上げたつもりであります。そしてまた、先日ここで議論をされました著作権法の問題につきまして同じことがございました。いずれもそういう時代であります。つまり、著作権法も文化庁が常に新しい法令を、新しい制度を作って、上意下達というんですか、講習も自ら実施していくという、そういう時代はもう終わったんではないか、もっと都道府県なり市町村がそういうことに主体的に取り組めるような体制を早く作るべく、文部科学省あるいは文化庁の方から支援すべきではないだろうかということを申し上げたつもりであります。私は、今度のこの文化財保護のこの制度も、将来にわたりまして、このような、国が企画をしまして地方がイニシアチブを取って実施をすると、こういうようなものは当然のことながら多くなってくるというふうに思うわけであります。  そこで、この今回の法案改正の基になったと思われます文化審議会文化財分科会企画調査会の平成十三年十一月の「文化遺産を未来へ生かすために」という審議の報告の中に、もうこれは既に御承知のとおりでありますが、今回の基になったことが書いてあります。その中に、各地域においては魅力のある地域づくりを推進する上での文化財の果たす役割を認識するとともに、地方公共団体が主体となって文化財活用した地域づくりを積極的に推進することが必要であるというようなこととか、後ほどちょっと関係がしますが、生活環境博物館の構想とか、地方公共団体の文化財保護担当部局において十分チェック機能を果たすことが必要である、こういう指摘がなされているわけであります。  このような、文化庁が法案を出されるに当たりまして、将来、そういう、三位一体の議論のときと同じように、財務省なりあるいは総務省なり、文化庁が働き掛けまして、税制上あるいは地方財政上の配慮を求めるとか、側面的に地方のそういう部局を強くしていくというようなことをやっていくおつもりはないであろうかと。その辺についての河村大臣のお考え伺いたいと存じます。
  37. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 中島先生文化財文化全般、非常に御造詣深いわけで、いろいろ地元でも御活躍をされておる話、伺いました。  余談でございますが、鎌倉市と私の選挙区であります萩市は姉妹提携をしておりまして、鎌倉市は武士、武家政治を興したところ、萩市は武家政治の終えんの地だと、こういうことになっておりますが、ただ、あれほど大きな、鎌倉市のような大きな広がりがありませんので、萩市も世界遺産にならないかという話は来ておりますが、鎌倉市の動きを見ながらと、こういうことになっておるんじゃないかと思います。  そこで、地方自治体取組文部科学省の方の調査もまだ十分でないと思いますが、教育委員会と知事部局、両方相まってやっている。ちょうど神奈川県も同じように、知事部局も県民の文化課が文化を担当し、教育委員会文化財課を持って生涯学習の中でやっている。山口県も文化財保護課を教育委員会が持って、さらに知事部局も環境生活部で文化振興課を持って、両方相まってやっております。  今回、この文化的景観あるいは民俗技術と、こう文化財に対する概念を広げてまいりますと、特に地域と非常に密接した関係になっていく。そうすると、やっぱりこの文化財保護に当たっては市町村の果たす役割というのは非常に大きくなっていくこと当然でございまして、そういう意味で、市町村文化担当部局、企画調整事務処理能力、これを高めていきませんと、県が中に入っておりますが県だけでは追っ付かない、こういう状況が生まれるだろうと、こう思っておりまして、これをいかに強めていくか、これは地域づくりとも非常に関係をいたしますので、御指摘のように、総務省側とも今後の対応をいかにするかということ、それに対しての支援というものを強く求めていかなきゃならぬと、こう私も感じております。  特に市町村等においての文化財行政に携わる方々のそうした知見を深めていく、そういう意味で職務遂行能力を高めていく、そういう意味で、その職務遂行に必要な基礎的な事項とか実務上の課題に対する研修等も、これは文化財行政講座等を実施をいたしておりまして、これに積極的に御参加をいただきたいと、こう思っております。  また、美術館、博物館、これがより魅力的になるためにも、その中心的な人材としての学芸員、そうした専門的な方々への研修、あるいは運営研究協議会、こうした講習会もやっておるわけでございまして、いわゆる総務省、いわゆる地方自治を担当する総務省側との連携も深めながら、文化財行政担当職員の能力を高める、そのことのために文部科学省も更に一役買う必要があると、このように考えておるところであります。
  38. 中島章夫

    ○中島章夫君 どうか頑張っていただきたいと思いますが、私が心配いたしますのは、どうも悪い癖でありまして、学校教育は何もかも文部科学省からの学校までの直轄と、そういう意識ですよ。地方教育委員会には余りやることはないと。せめて生涯学習部局というんですか、そこは地域と密着をしたいろんな仕事があると、市町村長さんがそういう部分に目を付けて、しかも教育の中立性ということを極めて大事にしながら振興しようというふうに考えていただければ、これにこしたことはないわけであります。  ところが、なかなかそこは必ずしもそうはいきませんで、あるものは選挙用に使われましたりいろいろしてまいります。しっかりとした、やっぱり早めにそこのところの充実体制というものに文化庁ないし文部科学省も目を付けて地方分権を支援をするという体制に大いに力を入れていただきたいと改めて申し上げたいと存じます。  さてそこで、先ほど申しました、私、鎌倉市の世界遺産登録というのが、一九九二年に仮登録リストに鎌倉が、法隆寺とか、あるいはもう既に世界遺産になっております多くの、白鷺城とか、古都京都、それから奈良、そういったものと一緒に登録をされたのを存じておりますが、約十件ございましたそういったものはすべてユネスコのICOMOSの審査等も経ましてめでたく世界遺産になり、その地域の人たちが一緒になって誇りを持ってそれを守り、そして活用していく体制が整っております。  今日までの鎌倉市、もう一つ例外がたしかあるんですが、だけが最初の仮リストの中から取り残されているということの理由を、どんな理由であったかを簡単にお教えいただければ。よろしくお願いします。
  39. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  今、先生指摘のように、世界遺産登録に当たりましては、まず暫定リストというものに登載いたしまして推薦に向けての準備作業を進めるということになっているわけでございますが、平成四年に十件が暫定リストに登載され、その後平成七年に一件、それから平成十三年に三件が暫定リストに追加され、現在はそれを全体を含めまして九件世界遺産リストに登載され、平成十三年のも含めますと五件残っていると。  その中で、今、御指摘のように、平成四年に暫定リストに登載されました古都鎌倉の寺院、社寺というものがまだ登録に至っていないわけでございますが、幾つか考えてみますと、例えば基礎的な調査が不足している部分が事実あったということ、また、資産の中心的な構成要素である史跡につきまして追加指定でございますとか新たな指定というものが必要な部分がございますが、が若干行われているというようなこと、それからその文化資産の中心的な構成要素、周辺の緩衝地域通常バッファーゾーンと呼んでおりますけれども、そういったものの確保が極めて困難であるといったようなことが古都鎌倉の寺院、社寺等については抱えていたというのが主な原因ではないかというふうに認識しておるところでございます。
  40. 中島章夫

    ○中島章夫君 ありがとうございました。  今日までのそういった、幸いにしてといいましょうか、多くのものは国宝であったり、白鷺城とかそれから法隆寺とか国宝であったりということで価値も高いわけであります。焦点化しているわけでありますが、今日まで登録に至りました文化遺産、あるいは白神山地等の自然遺産の案件も含めまして、登録への働き掛けのほとんどが府県の担当部局、先ほど大臣もお触れになりました担当部局あるいは知事、議会なんかの強力な推進体制というものがもちろんあったと思います。市町村が中心になったというようなケースは今まであったかどうかについてお教えいただきたいと思います。
  41. 素川富司

    政府参考人素川富司君) 世界遺産登録への準備作業、これは国、自治体、それからその文化財所有者などの関係者の間で協力の下に行われるという姿が必要であるわけでございます。このうち、都道府県や市町村自治体におきましては、必要な条例の制定とか各種の調査による実態の把握、地権者層の調整、推薦書の作成などを担当するわけでございますけれども、やはり都道府県と市町村で適切に役割分担しつつ行われてきたものだろうと思うわけでございます。  その中で、都道府県か市町村がどちらがリーダーシップといいますか主体になってきたかというのは個々のケースで、一概には分析するのは難しいわけでございますけれども、例えば必要な条例を制定したかどうかというようなところを取ってみますと、やはり市町村レベルで必要な条例を作ったところもございますし、県レベルで新たなそのための条例を制定したところもあるということで、やはりそれぞれの文化遺産の広がりとかその性質によって、自治体の中で都道府県か市町村がどちらがリーダーシップを取ってきたのかというものがその特色に対応して分かれてきているのではないかというふうに理解しているところでございます。
  42. 中島章夫

    ○中島章夫君 先ほど大臣から萩市と姉妹都市ということで鎌倉市を見習ってとおっしゃっていただきまして、これは大変、今、私、これから見習っていただいては困ることをちょっと幾つか申し上げようと思っておるんでありますが、むしろ、鎌倉の方が萩市のような品格のある町と一緒に姉妹都市をというのは大変誇りに思っているところでございます。    〔委員長退席、理事亀井郁夫君着席〕  さて、実は、今の問題につきまして、鎌倉の世界遺産登録が進みませんでしたことにつきまして私なりに問題視しておりますのは、一つは中心テーマがはっきりしなかったということであったと思います。  最初は鎌倉の社寺ということでありました。これは奈良、京都よりは五、六百年歴史時代が下っております。私は、後ほど申しますが、時代的に下っておりましても歴史的な意味の度合いというのは極めて高いということを申し上げたいと思っているんですが、いずれにしても、建物ということに関しましては戦によりましてほとんど焼け落ちまして、江戸の建物というものが多いということも考えますとなかなか難しい。  その後、中世城塞都市という概念を持ち出しました。これは文化庁にどういうふうに通っているかどうかは別にいたしましても、七つの切り通しがあり、切り岸とかあるいは掘り割りとかというような、もう格別の城郭が造られております。これもヨーロッパにもある話でございまして、なかなか、世界遺産ということとはなかなか多くの人たち理解を得るには難しい。  むしろ、正にこれから申し上げる、鎌倉に新しい文化がここから始まったと。先ほど武家の終えんのとおっしゃっていただきましたけれども、正に武家の社会がここから始まるということでありまして、それまで大陸文化を中心とした中世の文化から、しかも西の文化から、東西、東の庶民、それから農民、武士、こういった人たち、庶民といったものが加わって、東西が大きな歴史の輪の中に入っていったという意味で極めて大きいことでありますし、しかも鎌倉新仏教ということが次々と興ってまいりまして、その後の我が国社会に大きな、今日の我々の生活様式考え方にまで影響を及ぼしていると。  こういったことを含めまして、古都、武士の古都鎌倉という、その中に栄えた文化とその価値というものに焦点を当てる必要があるんじゃないかと、市民運動でもその辺を盛んに議論をいたしまして、実は今週の日曜日でございますが、十六日、地元の神奈川新聞の一面にこのことが取り上げられたのでありますが、そういう中心テーマというものを、これから鎌倉市が世界遺産登録を進めていくときの中心概念をもう一回改めてみんなで考え直そうということで、鶴見大学の大三輪教授、あるいは東大の五味教授等々にも、専門家にも加わりをいただいた市の文化財専門委員会におきまして概念が生まれまして、そのことが一面に大きく取り上げられておりました。これは県民一体の大きな希望を示す一面であろうと、こう考えておるのでありますが、私は問題点として、そのバッファーゾーンもございますが、一番大きかったのは、事務局体制の不十分さということが文化庁からも指摘をされております。  それは、埋蔵文化財をきちんと整えてそれに対応していくという、ある意味で古いタイプの体制には相当程度こたえてきたわけですが、これに対しても市長がその重要性を認識するところとなりまして、その新聞記事になりましたのは、正に市長に直轄のそういう文化財推進部局長を置き、そして新しい、その下に数名以上の体制を整え、そして教育委員会文化財課との連携、それから県との連携まで整えてきたと、こういう体制を作ったと、こういうことであります。  そういうことから申しますと、この経験から申しまして、市にそういう新しい文化財保護、そして市民への呼び掛け、そして市民活動を吸い上げていくという、我々、実はその市民活動として世界遺産登録を進める市民の会というのを、平成十一年から今日までもう十一回にわたって円覚寺の方丈その他を年に二回借りまして、永井路子さんから、それから今は亡くなられましたけれども石井進さん、五味さん、それから西村さんと、もうあらゆる、考えられる中世鎌倉に関する研究者等々をお呼びをしたその講習会、市民講習会を持ち、というような市民としての活動は盛り上げてきたんでありますが、なかなかそれを焦点化してつなぐというところがどうしてもできてこない。  そこで、今回の、たまたま、こういう文化財保護法の改正の問題にたまたま逢着をしたものでありますから、最初に申し上げましたような問題意識で、是非、市の体制というものを充実をさせるということについて、税制上あるいは地方財政上、そして、先ほどもおっしゃいましたいろんなトレーニングのいろんな機会を設けるということも結構でありますが、こういった今回のような新しい保存の体制を作るときにいろんな市町村と交渉ができていくと思いますので、そういうときに、そのモデル的な市町村というものを開発をし広げていただくような、いろんなそういう様々な努力を更に続けていただきたいと、こういう気持ちを持っているわけでありますが、改めてその辺についてお考えがあったらお聞かせください。
  43. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) おっしゃるとおりで、世界遺産につきまして、各都道府県、市町村取組、これはやっぱり県と市と一体となって連携を持ってやっておるように思います。    〔理事亀井郁夫君退席、委員長着席〕  特に、市町村における文化財保護関係知見を深めていく、能力を高めていく、これをやっぱり支援をしていかなきゃならぬわけでございまして、先ほど税制のお話もございましたが、これは総務省に対しては地方交付税あるいは特別交付税、こういう措置もあるわけでございまして、これまでは市町村に対する文化財保護関係の普通交付税は社会教育費の内数ということで人口十万人を規模にして出しておる、こういう形になっておるようでございます。それから、特別交付税に関しても、これ、文部科学大臣指定等に係る文化財市町村の条例によって指定された文化財の区分において積算すると、こういうことで、重要文化財については一件当たり六十九万、あるいは市町村によって指定された文化財一件当たり三十五万、こういう積算もあるようでございますが。  こういうものを今からどういうふうに強めていくかということと相まって、先ほど申し上げました文化財の行政講座であるとか、いろんな機会、それから情報交換、そういう形、それから学芸員の研修等々、そういうものを高めながら、地方がやっぱり主体的にこの文化財行政に取り組めるような仕組み、これはもう国が丸投げとかなんとかじゃなくて、実行部隊が地方にあるということ、これをやっぱり我々は重視して、そしてそれを支援する体制というものをこれから強めていこう、今御指摘をいただいた点を踏まえて取り組んでまいりたいと、改めてそういうふうに思っているわけであります。
  44. 中島章夫

    ○中島章夫君 ありがとうございました。  もう一点、先ほど申しました博物館について一つだけ意見を申し上げさせていただきたいと思います。  国は、国立博物館、あるいは奈良の、京都の国立博物館、そして佐倉の歴史博物館、そして、今、九州太宰府に国立博物館等々、非常に大規模な博物館を造って、運営を、まだ九州はこれからでありますが、そういう規模のものでなくて、実は私も大阪の生まれで、歴史というと奈良、京都を考えていたんですが、古都法の中に固有名詞で出てくるのが、京都、奈良と並んで鎌倉が出てまいります。  つまり、鎌倉というものが歴史上非常に、歴史的には先ほども言いました五、六百年、奈良、京都よりは時代は下りますけれども歴史的に極めて意味のある、しかもここには年間二千万人以上の人が訪れまして風化が非常に激しいということも考えますと、是非国が手を入れてこれに保存の体制の一つの核を作ってほしいという希望を強く持っておりまして、ちょうどこの十月には丸十年になるのでありますが、中世博物館建設の夢を語る会というグループで大変熱心に検討を続けてまいりました。おととしなどは十三世紀の鎌倉の地形模型というものを作って、市役所から市内の六つの中央公民館から八つの中学校全部を回った、つまりこれは大変評判がよろしゅうございまして、回ったという、そういうこともございましたが、いずれにいたしましても、鎌倉へ来ましても、修学旅行の生徒であっても何であっても、中世というのはどういうものだと、大体、頼朝を教わって、そして承久の乱があって、蒙古が攻めてきて、あとは一三三三年に新田義貞のあれで滅んだという、その程度の歴史でありまして、その文化的な意味とか今日までの意味合いというのはほとんど学校でも理解が進んでおりません。  そういうことから、コンパクトな博物館というものを、特に研究能力の高いものは国でひとつ是非考えていただく必要があるんではないかと。大規模な建物は避けまして、できるだけフィールドミュージアム的な、センター館はコンパクトなものを建てますけれども、それを中心にして地域が協力をして盛り上げるような、そういう構想を考えてはどうかと。そして、今日のデジタル機能等を使いながら等々、いろんなことを構想をいたしました。  こういうものを中心にいたしまして博物館構想を立てていたのでありますが、ちょうど昨年の六月には、約十六万ヘクタールの鎌倉の中心の山の上に野村総合研究所というところが市に寄附をされたという好条件も重なりました。こういうことを含めて、是非、中規模の博物館というものを、しかもテーマを絞った、例えば古都鎌倉というような、中世鎌倉というような、そういうものから歴史考えていくような、そういう地域と協力をしたような博物館というものを国が考えていくというようなことを今後お考えいただく余地はないであろうかということを考えているのであります。  これは今までそういうことがなかったことですから、国立博物館調査費を付けて、もう何十年も掛かって、あるいは場合によっては何百年も掛かって博物館構想ができていくということはございますけれども、そういったことをも今後、今回我々が議論をいたしてまいりましたこういった博物館行政の広がりの中で、地域でのこういう保存活用というものの核として今後考えていく余地があるかどうかについて、これはもう陳情にとどまっても結構ですから、ひとつお考えがあればお聞かせをいただきたいと思います。
  45. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  その鎌倉の中世における役割の重要性、意義の重要性というお話をいただきました。  国立博物館といたしましては、御案内のように現在三館ございます。東京、京都、奈良という三館ございまして、先ほどもお話ございましたように、平成十七年度の開館に向けて九州国立博物館の整備を進めているところでございます。この九州国立博物館につきましては、地元自治体との協力を、従来とは違った観点で協力をいただきまして、博物館を整備するというような構想で今準備を進めているところでございます。  このような状況でございまして、今非常にコンパクトなというお話でございましたけれども、なかなか今の段階で新たな博物館への動きというふうなことは残念ながら今厳しい状況ではないかと、事務的にはそのように理解しているところでございます。
  46. 中島章夫

    ○中島章夫君 それはなかなか簡単なことではないと思っておりますが、この法案が出てまいりました、先ほどもちょっとこの抜粋の中から御紹介をしました文化審議会文化財保護分科会等におきますひとつ議論の中に是非そういうタイプのものも含めて、この中にも生活環境博物館の構想というものはあるわけでありますし、そういう御審議の中にも是非加えていただきたいと、そういうことを考えます。  そして、阿南委員と同じように、文化庁予算が先日一千億を超えましたとある幹部の方から聞きまして、その幹部の方は大変満足そうでありましたが、時系列を見たらそうなるのかもしれませんが、どうもこれは私は不十分であると、皆さんで大いに頑張っていただきたいということをもう一度私の方からも申し上げて、質問を終わらせていただきます。     ─────────────
  47. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) この際、委員異動について御報告いたします。  本日、田名部匡省君が委員辞任され、その補欠として谷博之君が選任されました。     ─────────────
  48. 谷博之

    谷博之君 文化財保護法のいわゆる施策に生物多様性の観点を取り入れるべきではないかということで、まずお伺いをしたいと思います。  この文化財保護法というのは昭和二十五年にできた古い法律ですけれども、その後、いろんな時代の変遷の中で、その文化財保護あるいは天然記念物、こういうふうな規定については、いろいろその時々の要素というものあるいはその概念というものが加わってきているというふうに思います。  そんな中で、まずこの天然物の定義ということで、その定義を見ますと、我が国にとって学術価値があるもの、こういうふうに定義されておりますけれども、これは非常にあいまいな定義ではないかというように我々は認識をしております。  そういう意味で、今申し上げましたように、いろんな時代の流れの中で、様々な学術上の価値が加わってくる中で、特に現在では生物学的、生態学的な価値というものもやはり含まれるべきではないのか、このように考えておりますが、冒頭、この辺についての御見解をお伺いしたいと思っております。
  49. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  天然記念物定義に関します学術上の価値ということについてのお尋ねでございます。  天然記念物学術上貴重なものということでございますが、その学術価値につきましては、先生指摘ございましたような生物学的、生態学的、またさらには遺伝学的とか進化学的、幅広い学術上の価値がその中に含まれているものというふうに理解しているものでございます。
  50. 谷博之

    谷博之君 そういうことからすると、生物多様性というふうな概念も含まれてきているというふうに我々は理解をしておきます。そして、文部科学省の告示の中に天然記念物指定基準というものがございますが、この指定基準の中に、例えば、今の御答弁を踏まえるとすれば、日本の生物多様性の保全上貴重な動植物という、こういう一つの一項目を新たに加えてもいいのではないかというふうに思いますが、どのように考えておられましょうか。
  51. 素川富司

    政府参考人素川富司君) 今御指摘ありました希少性のあるものというようなことは、明示的な文言はございませんが、基本的には、生物多様性を踏まえた希少性ということは、私ども、その指定に当たっての価値判断の観点ということでは十分含めて考え対応しているというところでございます。
  52. 谷博之

    谷博之君 続きまして、文化的景観指定の問題をお伺いしたいと思いますが、今回の法改正でいわゆる文化的景観指定ができるということになったわけですけれども、そうしたことを受けて、天然記念物保護との関係でこうした指定というものを十分活用すべきだというふうに思っています。  例えば、いろいろ私も関心があるわけですけれども、トキとか、あるいはコウノトリとか、あるいはまたイリオモテヤマネコ、あるいはアマミノクロウサギ、あるいはジュゴン、ヤンバルクイナ、こういうようないわゆる希少の動物、鳥類も含めて、こういうようなものを、言うならば天然記念物として指定を受けているこういう動物というのは、そのかなりの部分がいわゆる種の指定ということになっていまして、生息地を守るという、いわゆる生息地域指定というふうにはなっていない。したがって、こうした非常に希少動物の保護というものがなかなか全体として十分できないというふうなことがあります。  例えば、そういう中で、ヤンバルクイナとかアマミノクロウサギだとかって、そういうふうな希少動物を保護するとすれば、その島なら島全体を言うならば生息地の指定ということでしなければ、本当の意味保護はできないということになるわけですね。  そういう点からすると、この文化的景観という新たな枠組み、こういうものを活用することによって、例えば佐渡島でいえば、トキがその水田地帯に例えば自然にそこにすむような形、これ将来の話、そういうすばらしい夢を持っているわけですが、そういうようなものの、トキのいる例えば田園とか、そんなようなことができてきて、そしてそこの農業を営むそういう地域の人たちもそういうふうな生息のための協力をするとか、そしてそれは例えば中山間地域指定されておりますけれども、中山間地域等の直接支払補償制度、こういうふうな制度ども新たに作るなどして、そういう生息地全体の保護、それと文化的景観指定地域と、これをドッキングさせるという、こんなようなことも実は考えていってもいいのではないかというふうに思っています。  そこで、今回、そういう意味で、特に重要文化的景観については、今申し上げたような生物多様性という観点から、どのように選定して指定をしようとしているのか、保存をしようとしているか、お答えいただきたいと思います。
  53. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 大事な指摘をいただいたと思います。  今回のこのいわゆる重要文化的景観、いわゆる文化的景観をいわゆる文化財として保護し、守っていき、将来に残していこうという、この文化財保護概念を広げてまいったわけでございます。そういう観点から立ちまして、また国土交通省関係省庁から出ております景観法、これが一般法として全体の網を掛けてまいります。その中で、市町村申出があった中から、国が特に重要と思われるものについて重要文化的景観という指定をしていくわけでございます。  そんな中で、今、谷先生指摘ありましたように、いわゆる天然記念物保存保護といいますか、その景観地域の中に天然記念物があった場合の配慮の問題、これ私は非常に大事なことでありますから、当然その市町村等が策定してまいります重要文化的景観保存管理計画の中にこの天然記念物保護を言及し、これに配慮する、こうした管理が行われるべきであろうと私も考えておりまして、そういうものが出ていない計画についてはこちらからまた助言をしなきゃならぬと、こう思っておりますが、これ正に市町村からの申出によって国の方でということでありますから、当然そういうものが入ってくるだろうというふうに私は考えておりますが、そういう視点が大事でありますから、既に事前の調査等々によってどういうところがあるか、百八十ぐらいのところが事前にそういう候補として上がったりしておりますが、その中にも既に天然記念物がおるところもあるわけでございます。  今後、そういう問題必ずあるという前提に立って、十分その点を配慮して、天然記念物保存保護、そういうことも配慮しながら全体のその景観指定というものに取り組んでまいりたいと、こういうふうに思います。
  54. 谷博之

    谷博之君 どうも大変ありがとうございます。是非、そういうことで御検討いただきたいと思っています。  それから、今日、環境省から小野寺局長にもお見えいただいておりますが、実は私ども国会議員の中でラムサール条約の登録湿地を増やす議員の会という会がありまして、清水嘉与子先生に会長を就任いただきまして、百名を超える議員の会ができております。現在、ラムサール条約の日本の登録湿地は十三か所、これを二〇〇五年までに何としても倍増しようということで、これは国際条約の一つですからスイスに本部がありまして、そこに申請をして登録の指定を受けるということになるわけですが、そういう意味の、今環境省を中心にしたそういう準備作業に入っていると、そういうことでありますけれども。  いわゆるこのラムサール条約の登録候補地にはいわゆる棚田とかあるいは水田、水郷など、いわゆる人工的な湿地も当然含まれておりますね。そこで、ラムサール条約の登録に当たっては、こうした今出ております重要文化的景観もいわゆる国内要件の一つの要件と言うとちょっときつくなりますが、指定をするための一つの判断の基準になる、このような形でこれから考えていってもいいんじゃないかなという気がしているんですが、これについてはどのように考えておられますか。
  55. 小野寺浩

    政府参考人小野寺浩君) 委員指摘のとおり、棚田、水郷といった人工的湿地についてもラムサール条約に定義されている湿地の概念に含まれるというふうに我々は考えております。  一方で、ラムサール条約の規定、あるいは指定実態というものを見てみますと、定期的に多数の水鳥の生息場所となっていること、絶滅のおそれのある種の生息であることなどの生物学的な基準を満たすことが求められているところでございます。  御質問重要文化的景観として選定された地域がこのような生物学的な基準を満たし、かつ保護のための担保措置が取られていればラムサール条約の登録の候補になり得ると考えております。  もう一度重ねて言いますと、地域人々と自然が長い年月の中で調和した日本独特の自然環境というのは非常に重要であるというのが我々の認識でありますので、今後ともそういう観点で保全に努めてまいりたいと考えております。
  56. 谷博之

    谷博之君 今後、こうした課題については、いろんな意味で議論をさせていただきたいというふうに思っております。  最後になりますけれども、日本は昔から非常に木の文化、いわゆる木材、樹木ですね、これが非常に誇れる国であるというふうに思っていまして、それに関係をしまして古事の森構想についてひとつお伺いしたいと思います。  古事の森というのは、昔の古事記の古事ですね、古いというのに仕事の事と書きますが、古事の森。これは、実は私も栃木県の宇都宮、昨日、今日と暴力団の騒ぎで大分有名になりましたけれども、その地元でございますが、そこで、作家の立松和平さん、同じ年代で、小さいころからずっと一緒に活動してまいりました。彼が提唱しまして古事の森構想というのを実は今実現をしようということで取り組んでおります。  これはどういうことかというと、日本には非常に何百年何千年と続く古い神社仏閣がございます。こういう建物というのは、大体、専門家の話を聞きますと、短くて二百年、長くても四百年で、どういうふうに途中修理をしてもこれは建て替えざるを得ないというようなことが言われておりまして、そういう二百年から四百年、将来の先に向かってヒノキを中心としたそういう日本のすばらしい木をみんなでどう育てていくのかということで、いわゆるボランティア活動としてこの古事の森構想がスタートしました。  そして、今から三年前に京都の鞍馬で、林野庁の御協力もいただきながら国有林を第一号の指定にしてスタートしました。そして、昨年は、茨城県の八郷町など四件、今年度は岡山県と岐阜県で同じくやはりヒノキの植樹が、植林が予定されていると。こういうことで、小修理については五十年に一遍ぐらいで手を加えていけば対応できるけれども、全体の建て替えについてはそういうことをしないと日本の幾ら建造物といってもそれはもたないというふうなことを言われています。  こういうことの中で、私どももそういう活動に参加をさしていただいているわけでありますけれども、しかし、そのときに、林野庁のこの事業に対する具体的な取組というのはどうなっているかということでちょっと予算を調べてみたわけですけれども、初年度のみの予算が付いておりまして、これもイベント用等に使う予算も含めてわずか数百万円程度の予算しか付いていない。つまり、もう木の苗木ぐらいの予算しか付いていないというわけですね。  これは、四百年というと、もう何代も続くそういうふうな社会的な事業でありまして、一人の人間が亡くなって、その次の代が継いで、そして更にその次の代が継いでということで、何代も続いてそういう日本の伝統文化を守る、そういうふうな木材を育てていくということですから、これはもう気の遠くなるようなそういう事業だと思うんです。  今申し上げたように、こういうふうな貴重な森林を後世に引き継いでいくためにも、文化庁としてももっと積極的にこういうふうな活動にも協力をしていく必要があるだろうと。そして、なおかつ、重要文化的景観選定対象としてこういうふうな古事の森を指定をするということも私は非常に大きな意味があるというふうに思っておりますが、そのお考えをお聞かせいただきたいと思います。
  57. 稲葉大和

    ○副大臣稲葉大和君) 今、谷先生の御質問の中にもございましたように、古事の森構想、この構想に基づいて鞍馬山の国有林が平成十四年、この植樹をされ、また十五年におきましてもほかの地域においても植樹されている経緯がございます。  私どもとしましても、いろいろな報道あるいは文献によりまして、日本の古来の文化であります神社仏閣あるいは仏像、木造の仏像等について様々な修復のフィルムを拝見しております。近年では、特に法隆寺の復元あるいは東大寺南大門の金剛力士像の修復、復元、こういう事案にぶつかるたびごとに、その部材をどこから調達してきたのか、またその調達すべき部材が存在するのか、こういうことが大変気掛かりになっております。  こういうことも含めまして恐らく古事の森構想というプランができ上がったものと存じているわけでありますが、いかにも、今三年を経過したときに、どれだけの生育度があるのか。特に今、先生がおっしゃられるように、大事な、重要な材木であります、部材であります森を大切にしよう、林を大切にしよう、こういう観点からしましても、また、この重要文化財重要文化的景観、この定義からしましても、自然とのなりわいの中、生業の中、生活の糧の中で人間が作り出してきたその景観について保護対象にしよう、こういう目的を持ったプランでございますので、ある程度の年月というものはこれの中に自然と条件化されてくるのかなって、そういう気もしてなりません。  いずれにしましても、これからの具体的な指定物件につきましては、市町村から申出を受ける、あるいは審議会において審議をする、実地調査をする、こういう過程を経まして具体的に候補者の選定をしてまいる、こういうことになっておりますので、当然、先生が御指摘の案件につきましても、今後、その選定の候補の中に加えさせていただきながら、選定基準を図ってからなるべく選定できるような、そういう方策を検討してまいりたいと思っております。
  58. 谷博之

    谷博之君 時間が来ましたから、もう最後に一点だけ要望さしていただきますが、私どももいろんなところで勉強さしていただいておりますと、日本は確かに木の国ですけれども、意外とそういう、有名なそういう神社仏閣の建て替えのときの今おっしゃった部材、こういうものが、やっぱりいいものがなかなか少なくなってきているということですね。それをやっぱり意識的に四百年後、二百年後、四百年後まで見据えてというのは、これも気の遠くなる話ですが、やっぱり今から後世にそういうものを届けていくということが大事だと思いますし、そしてそれは当然人手が必要です。これは国有林を今使っていますけれども、当然それは民間の森林ボランティアの人たちが中心になって、この森の管理から、それから植林から全部やっているわけですね。こういう意味では、この地域の中からそういう、遠大なやっぱりそういう活動を広げていくというこの構想は、やはり私は非常に大事なことだと思っておりますので、今、副大臣からも御答弁ありましたけれども、是非何らかの形で今回の法案のこのいわゆる重要文化的景観の中に位置付けていただけるような、そんなような検討を前向きにしていただきますようにお願いをしまして、私の質問を終わります。  ありがとうございました。
  59. 草川昭三

    草川昭三君 公明党の草川でございます。  最初に、今回の文化財保護法の改正は従来の保護対象の拡大が提案をされているわけでございますが、例えば文化的景観というところに絞って質問をしたいと思うんですが、これは具体的にどこのどの場を指定するかということになりますと、先ほど来からの御意見もあるんですが、大変難しい問題が出てくると思うんです。  現行法では、例えば有形文化財の美術工芸品、この中では絵画、彫刻、工芸品等具体的に明示をされているわけでございますが、文化的景観という抽象的なくくりになりますと当然広範囲にならざるを得ません。地方自治体からの申出によりまして選定をするということになっていますけれども、その基準はどういうものを示されるのか、文科省として地方自治体にどのようなものが提示をされるのか、お答えを願いたいと思います。
  60. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  文化的景観につきましては、先生指摘のように、非常に範囲も広い、種類も多様であるということで、その選定基準をいかに作るかということが非常に重要になってくるわけでございます。専門家の知見も踏まえながら選定基準を検討することになるわけでございますけれども、やはり地域生活生業や、独自の、独特の風土等の典型的な形態を顕著に示すものでございますとか、よく旧態、古い状態を残しているもの、こういったものが一つ考えられるのではないかと思いますけれども、具体的にはその専門家のお知恵もいただきながら検討し、さらにそれを推薦される地方自治体に対しましてよく理解していただきますように工夫をしてまいるということが必要かと存じております。
  61. 草川昭三

    草川昭三君 今の答弁は何となく分かりますけれども、さあ現実ということになりますと、典型的なものとして何が典型的なものになるのかなとか、地方自治体によってはそれぞれのアピールをしたいものもあるわけですから、これは今後やはり分かりやすい指導を是非していただきたいと思うんです。  それで、二番目でございますが、文化的景観ということについては、今答弁がありましたように、地域における人々生活又は生業及び地域風土、こういうものによって形成された景観地、例えば棚田里山、用水路等があるというように説明をされていますけれども、現行の記念物指定された遺跡、名勝地とどう違うのか、これもひとつ分かりやすくお答えを願いたいと思います。
  62. 素川富司

    政府参考人素川富司君) 文化的景観史跡名勝地の違いでございますけれども史跡名勝地におきましても、文化的景観的な価値を持っているものということで、その重なり合う部分というものは現実にもあろうかと思うわけでございますが、文化的景観につきましては、日々の生活とか生業を行った結果生じた土地の様子、さまであるわけでございますので、必ずしも史跡のような歴史上や学術上の価値がなければいけないというものではないわけでございます。また、名勝とは異なりまして、芸術上、観賞上の価値を求めるものではないということで、一部その文化的景観の中に史跡名勝のようなものが入るということはありましても、基本的なその定義の面では違いというものがあるわけでございます。
  63. 草川昭三

    草川昭三君 確かにダブるところはあるけれども、少し、ソフトというんですか、判断は国民の皆様がと、指定というんですか、要望するものが対象になるというように思うんですが。  さて、そこで、今も各委員から出ております、国土交通省、農水、環境省が提案をしております景観法案の関係なんですが、景観法案には町並み保存等の規制があります。国土の開発、地域の産業振興というものの関連で見てまいりますと、本法案の関連はどのように受け止めるのか。何か、基本法的なものがあり、そしてその一部のものとしてこの法案が提案されているというのが先ほどの答弁であったようでございますが、ちょっとこれはダブりますけれども、もう一回お伺いしたいということであります。  それからもう一つは、この景観法案の方は、かなり予算が明確に計上されているわけですよ。例えば、景観形成事業推進費の創設で予算額が二百億、一方では付いておりますし、あるいは税制関係でも、景観法関連で所得税、法人税あるいは相続税等の対象として千五百万円の特別控除等が同時に提案されておるわけでございますが、こちらの方にはそのものについては触れられていませんね。そういう点は、今後の問題も含めて、予算はどのように提案をされるのか、お答え願いたいと思うんです。
  64. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 現在、国土交通省を始めとする三省で景観法案出していただいております。  そこで、今御指摘のように、良好な景観の形成を促進するための行為規制等を行うと、こうなっておるわけでございます。これを受ける形になるわけでありますが、重要文化的景観、これを文部科学大臣が都道府県あるいは市町村申出によって景観法で定める景観計画区域又は景観地区の中にある文化的景観のうち特に重要なものを選定すると、こうなっておりまして、その結果、文化庁長官に対する現状変更届出等の保護措置を講じると、こうなっておるところでございまして、この重要文化的景観人々生活生業に非常に関係が深い地域になるわけでございますので、地域における国土の開発とか地域の振興を図りつつ保護するという視点を持ってこの指定をやっていかなきゃいかぬと、こう考えておるわけでございます。  ただ、御指摘のように、予算的な措置の問題についてはこれから検討をしなきゃならぬわけでございまして、人員の要求の問題もございます。それから保存計画、保存管理計画の作成、それから管理、修理、そういう支援をしていかなきゃいかぬと、こう思っておりまして、これから文化的景観の事務体制の問題もございまして、全体の事務量を見ながら検討していかなきゃいけない課題でございまして、確かにそういう意味では十七年度予算編成においては正にこれから検討をしなきゃいけない課題だと、こう思っておりまして、いずれにしても、この法案を通していただくわけでございますから、重要な文化財価値のあるものについての経費の一部補助等も含めて、前向きに取り組んでまいりたいと、このように考えております。
  65. 草川昭三

    草川昭三君 では、次に移りますが、今回の改正で、従来の民俗文化財に、地域において伝承されてきた生活や生産に関する鉄、木材等を用いた用具、用品、いわゆる製作技術である民俗技術というのが追加をされているわけですね。  具体的には、例えば特殊なくぎだとか、建築物を組み立てる際に使用されているくさび形の留め道具、あるいは古来から使用されているウ飼いの船、和船、こういうものを製造する船大工さんなんかが想定をされているわけですが、この対象は作業者、すなわち船大工なのか職人さんなのか、あるいはその人が持っている技術対象とするのか。これなかなか、さあ実行するということになると難しい問題があると思うんですが、どんなものでしょう。
  66. 素川富司

    政府参考人素川富司君) 民俗技術につきましては、これは生活、生産に関する用具、用品等の製作技術というものがその中心になろうかと考えております。そういう意味におきまして、技そのものを指定するということがこの制度の本旨であろうと考えておるところでございます。
  67. 草川昭三

    草川昭三君 技というお話がありましたが、失われていく地域の伝承された民俗技術保護するためには、当然のことながら、伝承者というんですか、技を持つ職人さんの養成が必要になっていくわけですよ。当然、その養成をするというのは最低生活保障を考えてあげなきゃいかぬわけでありますが、最低生活ができないからそういう方々が少なくなっていくわけです。  この技術伝承者の経済的な支援をどのように考えるのかということが一番私の聞きたいところですが、これはちょっと無理かも分かりませんけれども、例えば旧労働省の技能訓練支援給付金というのがあるんですよ、旧労働省に、今の厚生労働ですが。あるいは、能力開発という局があって、能力開発給付金というのもあるわけですね。それで、いろいろと、経営者の方にも使用者側の方にも補助金を出したり、いろんなことをやっているわけです。  その技能者個人の技量や腕前の向上を目的としてこれがあるわけですが、これはいささか今の文科省が提案しているものとはなじまない、違う世界だと私は思うんです。思いますけれども、それを何か少し縦割り行政の穴を開けて、余り旧労働省の方も使いやすい給付金になっていないんですよ。若干使いづらい状況になっていますし、一部では不用額もあるやに聞いておるので、そこら辺りはこれをうまく使えないかどうか、お伺いしたいと思うんです。
  68. 稲葉大和

    ○副大臣稲葉大和君) 草川先生が御指摘される点については、私も個人的には何かないかなと、そういう願望を持っておる一人であります。  ただ、御指摘のように、いろいろな伝統工芸品あるいは職業訓練校の、伝統工芸品等の技術の伝授あるいは向上には職業訓練校等あるいは技術短大等あるわけでありまして、そこに、その施設の設備の中での事業展開については確かにいろいろな補助施策を講ずることができるわけでありますけれども、こういった民俗技術につきまして、その個人個人の技能者あるいはそういう方々に対する生活の安定、また生活が安定しませんとその技術を伝授していくこともままならないという、そういう現実とのはざまの中で、いかにして、今後どういうふうにプランニングしていけるかどうかというのは、私も大変悩んでいる者の一人であります。  ただ、この体系といいますか、この今回の法改正のその趣旨からして、またその延長上に仮に置くとしましても、今現在、先生が御指摘されるような案件についてもう少し検討を加えられる必要があるなというのが私の実感であります。
  69. 草川昭三

    草川昭三君 今後の問題でございますから、是非一生懸命頑張っていただきたいと思うんです。  次の質問になりますが、文化的景観でございますが、棚田里山など、人と自然のかかわりの中で作り出された景観が今回の法対象の拡大になっているわけですが、選定を行う候補対象地というのは現在どの程度あるのか。非常にまだ難しい段階ではございますが、検討対象を明らかにしていただきたいと思います。
  70. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  文化庁に設置いたしました農林水産業に関連する文化的景観保存・整備・活用に関する検討委員会というものがございまして、ここが昨年の六月に調査研究報告を出しております。そこにおきましては、これは農山漁村地域景観に限っておるわけでございますけれども、百八十の文化的景観というものを重要地域として調査対象として取り上げているところでございます。  ただ、これは調査研究の対象として取り上げたということでございまして、この中に含まれていないからもう重要文化的景観選定の可能性はないというものでは決してございませんし、先ほど申しましたように、これは農山漁村地域ということを念頭に置きましたものですから、これ以外の分野、やや都市的な景観というものを含めまして、そういうものが工業的な景観というようなものも含めまして概念としてあるわけでございますので、必ずしもこれには限られないわけでございますが、一つの目安、調査検討対象の目安としてはこのような百八十の地域があろうかと思います。
  71. 草川昭三

    草川昭三君 今、目安として百八十ぐらいだというお話ですが、これは、法律が成立していろいろと雑誌あるいはマスコミ等で紹介をされるようになりますと、町おこし、村おこしで大変これ希望が私わっと出てくると思うんですよ。その場合の推薦はもちろん市町村から上がってくる、あるいは専門家の方々から上がってくるということになりますが、具体的に推薦手続というのはどういう順番で上がってくるのか、窓口は一体どこなのか、ついでながら、あるいはまた告知方法ですね、文科省として、文化庁として告知をどうされるのかお伺いしたいと思います。
  72. 素川富司

    政府参考人素川富司君) 文化的景観の推薦といいますか、そういうプロセス選定までのプロセスお尋ねでございます。  これは、重要文化的景観につきましては、都道府県、市町村申出に基づいて、景観法で定める景観計画区域等の中にある文化的景観のうちから重要なものを選ぶということでございますので、まず都道府県、市町村景観法に基づく区域設定をされる、そして地元関係機関所有者等の意見をお聴きになりながらその申出をされるということになるわけでございます。  その申出があったものにつきまして、文部科学省文化庁におきまして所定の手続、すなわち文化審議会に諮問してこれを選定するということになるわけでございますが、いずれにいたしましても、文化的景観、先ほども指摘ございました選定基準を告示する、周知するということから含めまして、制度趣旨も含めまして、その趣旨というものを前広によく広報していく必要があると思います。  また、その告知というお話でございました。これは選定された場合にはどうなるのかということにつきましては、これは官報で告示するとともに、その所有者等に通知するということで、全体に告知するということにいたしているところでございます。
  73. 草川昭三

    草川昭三君 次に、環境省へお伺いをしますが、ユネスコで世界の文化遺産及び自然遺産の保護に関する条約が採択をされたのが一九七二年、日本も九二年に加入をしているわけですが、これも先ほどどなたかの質問の中にありましたように、屋久島あるいは白神山地等、日本で全部で十一ですか、何かの登録をされているわけですが、私、どうしても疑問に持つのは、日本で一番自然の遺産として誇るべきは、富士山のようなものが一番あってしかるべきではないだろうかと思うんですが、富士山は何ゆえ自然遺産として登録をされないのか、これちょっとこの説明をしていただきたいと思うんですがね。
  74. 小野寺浩

    政府参考人小野寺浩君) 世界自然遺産の登録要件を大まかに申し上げますと、世界的に見て特異かつ典型的な自然を持っていることというのが一つでありますし、二番目に、その自然が将来にわたって保護される何らかの法的な担保措置、指定などがされているということが最も望ましいわけですけれども、その二つが要件と考えていいと思います。  それで、昨年、専門家を集めて、環境省の事務方で全国的なデータベースの整理をして六百か所程度に候補地を絞って、それを更に専門家の議論を踏まえて十九地域を候補にいたしまして、それを更に絞って最終的にということをしたわけですが、その十九地域の中には富士山は入っておりました。その中で十九を最終的には三か所に絞ったわけですが、知床、小笠原、奄美・沖縄の琉球諸島、その三地区が最終的に国内の候補になって、今年の一月に条件の整った知床をパリの世界遺産委員会に政府として提出している最中ということであります。  そういう作業の観点あるいは専門家の議論から申しますと、富士山は、まず、担保要件として国立公園の特別保護地区という世界遺産基準を満たしている保護措置が五合目以上なんですね。五合目以上というのは生物的には比較的貧弱であるというのが生物学者の大体の言っているところで、生物的なことを併せると、むしろ五合目以下の樹海を含めた部分が非常に特徴的で、世界遺産として出すならばそこも含めてではないかということが一つあります。したがって、保護地域の線引きの問題ですね。  それからもう一つは、御案内のとおり、富士山というのは物すごく人気のある山で、言ってしまえば、山岳地域も含めてやや過剰利用的なものがあって、それが、例えばトイレのし尿の問題でありますとかごみの問題でありますとか、担保された地域にあっても、人気のある山であるだけにそういう問題が、一方管理上の問題があって、その二つを併せて、今の段階ではまだ、日本政府の中で幾つかに絞って推薦する条件にはまだ早いのではないかということで、専門家の意見を中心に見送ったというのが経緯でございます。
  75. 草川昭三

    草川昭三君 よく分かる答弁でございますが、今世界で複合遺産というのは七百五十四件あるというのが説明でございますけれども環境破壊が非常に深刻で、我々も現地へ行ったこともありますが、ごみとか空き缶の捨場がなくて大変散乱をして、地方自治体も困ってみえるわけですよ。是非私は、世論喚起だとかキャンペーンを、これは環境庁がやっていただくのか地方自治体がやっていただくのか、私、国民運動を行うべきではないかということをかねがね思っているんですよ。  地方自治体の首長さんなんかとこの話をしますと、是非我々もそうしたいんだが、実は草川さん、聞いてくださいと。あの富士山の周辺でどこの町村が線引きで責任を持つのかというのは何もないんですよと。もちろん、大きい部分は防衛庁の演習場もあるわけですし、それから、静岡県なのか山梨県なのか、あそこに浅間神社ですか、何とかの宗教法人が持つ土地もある、全く分からぬのですよと。だから、不法投棄があっても、それを取り締まるということについても、立て看板だけで取り締まるというだけなので、これは放置をされているというわけなんです。  これは是非、どこの役所が中心になるかといっても、やっぱり環境省が、大変迷惑かも分かりませんけれども、日本の国の代表的な山を、本当に世界に誇るべき、新幹線の中で見れば外国人が一番喜ぶ風景ですから、それが今のようなことではいささか我々にとっても恥ずかしい限りだと、こう思うので、是非そのキャンペーンを、環境庁、頑張ってやっていただきたいという、これは要望なんですが、どのようにお答えになるか、お伺いしたいと思います。
  76. 小野寺浩

    政府参考人小野寺浩君) 御指摘の問題は、先ほどの答弁の中でも申し上げましたように、あるということは十分認識しております。  それで、我々の事業の中でも、直轄でトイレの整備をしたり、あるいは山小屋、民間の山小屋に対してトイレを再修理というんですかね、リニューアルする場合には補助金を出したり、あるいはごみその他の散乱には、グリーンワーカー事業というふうに言っていますが、環境省で人件費を出してそういうごみを片付けるようなことを重点的にこれまでもやってきているところであります。また、一般の登山利用者その他のマナーの問題もありますので、富士山のカントリーコード、これはある種のモラルの呼び掛け基準みたいなものですけれども、作って配布をしたりしているところであります。  また、この問題は相当前から、それこそ環境庁が発足したころから言われている問題でもありまして、昭和五十三年に当時の環境庁が呼び掛けて、富士山クリーン作戦という、ある種の国民運動と言っては大げさかもしれませんが、やって、今に至っております。  それが、最初環境省だけがどちらかというと頑張っていたんですが、山梨県と静岡県、あるいは最近はNGO、NPOというのがかなり多く参加していただいておりまして、両県の協力もあって、そういう何か地域運動のネットワークも形成されつつあるところでございます。  しかしながら、委員が御指摘のとおり、世界に冠たる日本の代表的な富士山として足るべきある種の国民運動的なものが十全になされているかということについては、これからもっと大きくしていく責任が我々にあると思っておりますので、関係省庁あるいは関係県、自治体にも働き掛けて、より一層運動を展開してまいりたいと思っております。
  77. 草川昭三

    草川昭三君 もうこの一問で時間が来たので終わりたいと思いますが、環境庁さん、是非頑張っていただきたいと思うんです。  この文化財をめぐる国際的な状況を見ますと、武力対立や内戦によって破壊、略奪をされた文化財が後を絶っておりません。我が国として、国際社会の一員として文化財に関する協力を積極的に行うべきと考えていますが、先ほど来から、アフガンのバーミヤンの問題もありますし、イラク等の文化財の国際協力も進んでおると思うんですが、現況はどうなっておるのかお伺いをして、質問を終わりたいと思います。
  78. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 日本の国際貢献の一つとして、こうした文化の発展また文化財保護、これは大きな役割をこれまでも果たしてまいりました、これからも果たしていかなきゃならぬと、こう思っております。また、世界からの要請もいただいているところでございます。  今御指摘いただきましたアフガニスタンあるいはまたイラクの問題、特に、まず文化庁におきましては、アフガニスタン、この文化財保存、修理、国際的な協力を行うための総合的な対応在り方について検討を行うために、アフガニスタン等文化財国際協力会議、座長に平山郁夫東京芸大学長にお願いをしておりますが、開催をいたしまして、その報告書が昨年八月十九日に出ておりまして、このアフガニスタン人専門家のためのトレーニングワークショップや有名なバーミヤン遺跡の保存を目的とした地下遺跡探査、これを行ったところでございます。  また、今年に入りまして、この会議は発展的に解消したのでありますが、文化庁の中に文化財国際協力等推進会議を置きまして、政策的な観点から、文化財の分野における国際協力等を行うための総合的な対応在り方、これからどうするという問題について更に検討を進めておるところでございます。  また、イラクの文化財保護につきましても、昨年八月の、ユネスコと共同いたしまして、東京でイラク文化財保護国際会議を開催をさせていただきました。  また、今年の予算におきましても、新たに文化財保護国際貢献事業として、文化庁において、各国からの要請等に応じて専門家等現地調査研究、招聘を行う、こういうことを進めておりますし、さらに、西アジア文化遺産保護緊急協力ということで、独立行政法人文化財研究所の運営交付金の中にアフガニスタン、イラクの文化財保存、修理に関する人材養成等を行う、こういうことを予定をいたして予算を組んでおるわけでございます。  今後とも、ユネスコを始めとする国際的な支援体制を踏まえながら、関係機関相互の有機的な連携を図りつつ、我が国のこれまで持っております専門的な知見あるいは技術等、こういうものを生かしまして、国際貢献の一環として、正に国際交流、文化交流を行ってまいりたいと、このように考えております。
  79. 草川昭三

    草川昭三君 終わります。
  80. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 午前の質疑はこの程度にとどめ、午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十九分休憩      ─────・─────    午後一時三十分開会
  81. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) ただいまから文教科学委員会を再開いたします。  委員異動について御報告いたします。  本日、佐藤泰介君及び畑野君枝君が委員辞任され、その補欠として小林元君及び吉川春子君が選任されました。     ─────────────
  82. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 休憩前に引き続き、文化財保護法の一部を改正する法律案を議題といたします。  質疑のある方は順次御発言願います。
  83. 吉川春子

    吉川春子君 日本共産党の吉川春子です。  文化財保護法改正案について質問をさせていただきます。今回の改正案文化財概念を広げ保護対象を拡大するものであり、私たちは賛成です。  文化的景観保護の問題で伺います。  農水省と文化庁が行った農林水産業に関する文化的景観保護に関する調査報告書では、千枚田、棚田の例も挙げられています。棚田景観保存するためには、そこで農業を営み生活し後継者を育てていくことが必要です。中山間地の農家に対して、その地域で暮らしていけるように国として支援策を充実していくべきだと思います。農山村農業の荒廃を防ぐための中山間地域等直接支払制度は農家を励ましております。文科省としてもこの制度の存続、充実を支援していくべきではないでしょうか。
  84. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  今お話ありました中山間地域等直接支払制度は、生産条件が不利な中山間地域の傾斜の農用地において、農業生産活動の維持を通じて耕作放棄の発生を防止し多面的機能を確保する観点から農業者等に直接支払を行うものでありまして、中山間地域に多く存在します棚田の保全につきまして大きな役割を果たしているものと認識しているところでございます。  今回の文化財保護法の改正は、棚田を含みます文化的景観文化財と位置付け、この文化財保護の観点から様々な保護措置を講じようとするものでございますけれども、これは御指摘制度等と様々な施策と相まって棚田保護の推進に大いに寄与していくものと考えているところでございます。
  85. 吉川春子

    吉川春子君 私も長野県で育ちまして、田毎の月ということも子供のときから見ておりますが、中山間地域等直接支払制度の充実、拡充の声が広がっています。  この制度は二〇〇〇年度から行われていますけれども、荒廃農地の解消に効果を上げ、棚田の体験ツアーに取り組むなど都市住民との交流も進められています。今年度から構造改革の対象とされて地方向けの交付金の削減が行われています。こういう交付金を削減するのではなくて、制度自治体や農家が利用しやすいように条件の緩和を図るなど、改善、拡充を図っていくことが棚田などの景観保存していくことになるのではないでしょうか。  文科省においても是非そういう立場で頑張っていただきたいと思いますが、大臣、いかがですか。
  86. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) おっしゃるとおり、そうしたものを大事にしていく、いこう、これがこれからの文化財考え方の概念の中に入ってきたということ、私は意義があることだと思っております。特に、こういう文化的景観ということになりますと、人と自然とのかかわりの中で、その日常の生活の中でこういうものが作り出される、これを大事にしていくというのは、正にその文化とそして歴史、そういうものが一体となったその地域の固有の風土的特色を出す文化的な資産であり、いわゆる国民の共有の財産ということでありますから、これを大事にしていかなきゃいかぬと、こう思いますし、あわせて、これを、公的な支援をいかにするかということ、これも必要なことだと思っております。  今回の改正案におきましては、地方公共団体が行います保存のために特に必要と認められる物件の修理とか管理とか、そういうことは支援すると、こううたっておるわけでございます。こういうことでありますから、これから文部科学省といたしましても、地方の公共団体の意見も十分踏まえて、具体的な支援についても更に検討してまいりたいと、このように考えております。
  87. 吉川春子

    吉川春子君 是非よろしくお願いしたいと思います。  それで次に、私は、高速道路建設と平城宮、平城京の埋蔵文化財の問題を質問いたします。  平城宮を含む奈良の世界文化遺産の登録のその根拠、それについて御説明いただきたいと思います。
  88. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  平成十年に、東大寺、春日大社などとともに、平城宮跡、古都奈良の文化財として世界遺産に登録されたわけでございます。  登録に当たっては、世界遺産委員会の方で一つの基準というようなものがやはりございまして、それには、顕著な普遍的価値が証明されること、それから国内における法措置が万全に図られていることというようなことがございまして、その二つの要件をクリアしたものについて世界遺産の審査、登録が行われるということでございます。  この古都奈良の文化財につきましては、社寺の建造物や仏像、工芸品などとともに、その平城宮跡の遺跡が一体となって残っているということに大きな意義を認められたものと考えておるところでございます。
  89. 吉川春子

    吉川春子君 今御説明がありましたとおりで、地下遺構はほぼ完全に保存されている。八世紀社会、経済、文化をつぶさに語る木簡などの文字史料に関する豊富な遺物が良好な保存の下に埋蔵されており、遺跡の持つ歴史的、考古学的価値は極めて高いということでございます。  世界文化遺産登録の本遺跡が、実は高速道路建設計画で危機にさらされています。この問題を以下聞きます。  京奈和自動車道路、これは奈良、京都、和歌山を南北に結ぶ高規格幹線道路で、大和北道路有識者検討委員会は、平城宮、平城京跡に四車線の地下トンネルを掘る計画を進めようとしております。トンネル入口で遺跡を大規模に破壊し、排気ガスなど、酸性雨等による自然と県民生活文化に及ぼす影響が危惧されると日本共産党の県委員会も声明を出しておりますが、さらに、その地下には歴史の第一次史料である木簡が埋蔵されております。歴史学者や地質学等の専門家からは、高速道路によって地下水が変動、枯渇し、木簡が失われてしまうのではないかという懸念が指摘されております。  まず伺いますけれども、現在まで木簡がどの程度平城宮跡から発掘されているのか、またその木簡というものの価値についてどのようにお考えか、大臣にお伺いします。
  90. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 木簡は当時の社会の様子を直接伝えるという史料、また後代に編さんされる文献とは異なる意味学術上高い価値を有していると、このように考えております。特に平城宮跡における発掘調査で見付かった木簡の中には、奈良時代の官司、当時の役所ですが、あるいは年代、それから役人の勤務評定等が記載されているものがございまして、当時の歴史の実態を解明する上で非常に貴重な史料であると、こう思います。  文部科学省といたしましても、平城宮跡の発掘調査を継続するとともに、木簡を始めとする貴重な出土遺物については重要文化財指定を既にやっておるところでございまして、三十九点、実は木簡の指定をいたしたところでございまして、その保存に努めてまいりたいと思っております。まだこの平城宮跡の発掘はまだ三分の一ぐらいでございまして、これからまだ相当いろんなものが出てくるんではないか、期待もいたしておるような状況でございます。
  91. 吉川春子

    吉川春子君 何万点ぐらい現在発掘されていますか、その数だけで。事務局で結構です。
  92. 素川富司

    政府参考人素川富司君) 平城宮跡の中では約五万点というふうに承知しております。
  93. 吉川春子

    吉川春子君 平城京そして長屋王邸から合わせて十七万点ぐらいというふうに私は聞いております。今、一部限られた地域でおっしゃいました。  それで、「世界遺産平城宮跡を考える」という本によりますと、佐藤先生が、今大臣がおっしゃられたように、木簡というものは第一次史料で歴史の一番の証人だと、古代史研究には不可欠だということも指摘をされています。この日本の古代社会の日常を示す貴重な史料の木簡が日本各地に眠っていると考えられますけれども、ほとんどほかからは出てこないのは保存状態が木材にとって都合よくなかったためだと、このように指摘されています。  地下水の絶妙な働きで木簡が千三百年も保護されてきたと指摘されているわけですが、大臣はその木簡保護のための地下水の役割についてはどのようにお考えでしょうか。
  94. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) この地下水に浸っておるということは、空気中の酸素が直接その遺跡、遺物ですか、これに触れないために、いわゆる腐食に関する、腐食をしていく細菌がほとんど付かないと。このことが比較的この木簡を原形にとどめておくことができた。水分が木の細胞壁内に入っていくと、こういうこともあるようでございまして、そういう意味で地下水が木簡にとって良好な保存状態の維持に大きな役割を果たしてきたと、このように聞いております。
  95. 吉川春子

    吉川春子君 平城宮ですから千三百年、千年を超える長い時間が経過しているのにもかかわらず、非常に良好な状態で木簡が保たれてきたというのは、今、大臣指摘のように、地下水の働きが非常に大きいわけです、大きいと言われています。  石部五條市博物館館長で考古学者は、木材や木の実、木の葉のような有機質の物質でも、バクテリアがいない清潔な水中で空気と太陽光線から遮断されていれば、何千年たってもそのままの姿と材質をとどめてくれると。しかし、いったん外気に触れると同時に変色し、変質し、分解してしまう。トンネル工事で万一地下水位が変化し、たとえ極めて短時間でも平城宮跡の地下に汚れた空気がわずかでも入り込めば、その瞬間に木簡を始め豊かに残存していることが確実な植物・動物質の文化遺産は完全に消失してしまうおそれがあると指摘されています。  この大和北道路の建設による地下水位の変動、移動、枯渇などで木簡や遺構などが破壊される危険については、どのように文科省としては認識していますか。
  96. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  昨年十月にまとめられた、先生先ほど指摘されました大和北道路有識者検討委員会の提言におきましては、引用させていただきますと、「平城宮跡の地下水位は季節・気候によって変動しており、地下道路を建設することによる水位の変動の可能性はそれに比べて微少である」というようなくだりがあるわけでございます。この提言は、地下水についての専門家から成る地下水検討委員会調査結果に基づいて検討されたものと理解しているところでございます。
  97. 吉川春子

    吉川春子君 その地下水検討委員会がもう二センチぐらいしか変動がないと、こういう答申を出して、多くの専門家からそんなことがあるはずがないという危惧の声も上がっているんですけれども、それは、引き続き今これからお聞きしますけれども、我が党の石井郁子衆議院議員の質問に対して文化庁政府参考人は、ゼニタニとお読みするのか、固有名詞ですから間違っていたら済みません、建設当局と文化財当局が十分に連携をして、道路建設によって世界遺産価値に影響が及ぶことがないように取り組んでいきたいと答弁しました。  平城宮、平城京跡の埋蔵文化財は、地下水位が予測を超えて変動、移動、枯渇が起きた場合、世界遺産価値に影響が及ぶどころか消滅してしまう危険があるわけですね。埋蔵文化財保存に責任を持つ文化庁としては、大和北道路の地下トンネル建設によって地下水位の予測を超えた変動は考えられないと、そういうおっしゃる根拠は何ですか。
  98. 素川富司

    政府参考人素川富司君) 文化庁として独自の調査をしているわけではございませんけれども、この問題につきましては、国土交通省におかれまして地下水の委員会それから文化財の方の委員会等を設けられ、昨年の十月に大和北道路の有識者委員会から報告があったわけでございます。この提言によりましては、文化財、埋蔵文化財への配慮を重要な課題と位置付け、地下水のモニタリングを始めとする現状把握調査を工事着手前より継続的に行いまして、木簡等の埋蔵文化財に与える影響について細心の注意を払うというふうにされているところでございます。  文化庁といたしましては、この計画の検討、国土交通省におきます計画具体化の検討に当たりましては、この委員会の検討結果に基づきまして貴重な文化財保存が図られますように要望してまいりたいと考えているところでございます。
  99. 吉川春子

    吉川春子君 国土交通省にお伺いいたします。  地下水検討委員会でトンネルを建設したときの地下水の状態を計算し、観測を予測したシミュレーションを行っております。その基礎となる地下水の実態を表すデータは、観測井戸、観測井は何か所ですか。それによって得られたのは、基本的な、東西方向、南北方向、それぞれ幾つの断面でしょうか。数をお示しください。
  100. 榊正剛

    政府参考人(榊正剛君) 今回の地下水検討委員会におきましては、平城宮周辺約四十五キロ平方メートルの検討範囲につきまして地質と地下水を把握して解析を行ったということでございまして、その際に、三次元グリッドモデルの構築に必要な地下水位の現況については、五百メートル間隔ごとに十六か所でボーリング調査を行ったということでございます。
  101. 吉川春子

    吉川春子君 東西方向、南北方向、それぞれ幾つの断面かという数字はお答えになれませんか。
  102. 榊正剛

    政府参考人(榊正剛君) 申し訳ございません。  実は、その断面で南北幾らかというのは出てこないんですが、南北双方とも、合計、五百メートルごとに十六か所やったということでございます。
  103. 吉川春子

    吉川春子君 東西方向に四断面、南北方面に三断面というふうに私は聞いております。  それで、引き続き伺いますけれども、奥西一夫京都大学名誉教授、国土問題研究会の理事長でいらっしゃいますが、は地下水検討委員会の報告書について、基礎となる地下水の実態を表すデータが基本的に東西方向に四断面、南北方向に三断面しか得られていない、本件の場合、数値シミュレーションでは対象地域を東西方向にも南北方向にも百以上に分割する細かいメッシュを設定している、最低でも、最低でも観測井の分布も東西南北とも十分割できる程度は必要であると指摘しています。  シミュレーションの基礎となる地下水の実態を表すデータ、観測井を十六か所に限った理由は何ですか。
  104. 榊正剛

    政府参考人(榊正剛君) 使用いたしました三次元グリッドモデルの信頼性につきまして、過去の降雨データを入力した際の地下水位の変動とその際の実際の地下水位の変動とを比較して、この信頼性の確認を行った上で、十六か所の地下水の調査点を調査をして把握したということでございます。
  105. 吉川春子

    吉川春子君 地下水検討委員会の結果というのは私はちょっといろいろ問題だなと思うんですが、でも、検討委員長の大西先生が、平成十五年二月十六日、大和北道路シンポジウム、有識者委員会の主催なんですけれども、で、このようにおっしゃっています。いろんな制約で非常に重要なところの地下の状態が分からない、ボーリング一本掘らしてくださいと言っても多分そんなところは駄目だと拒否されますし、例えば、皆さんの健康診断をやる場合、少しサンプルを取って調べようということに対して、そんなことはやらずに、体に何も触らずに診ろと、そういうことでありますので、できれば現状を何とか把握したい、地下水に関して、過去のデータが欠落しておったり、場合によってうまく測れていないところもございますので、これから工事をやるとしても、少し時間がありますから、それまでどういう地下水がどういうふうに変動しているか、どういう影響で、本当に雨の少ないときに地下水が低下しているのかということをきちっと信頼できるデータをためていく必要があるのですと。オーケーと言った委員長もこういう御発言をされているわけですね。だから、地下水の現状を把握し切れていないというふうにおっしゃっているわけなんですよ、一番の責任者が。  そういうことを考えると、この地下水検討委員会の結論というのは、信頼性については大変大きな疑義があるのではないかと思いますが、国土交通省、どうですか。
  106. 榊正剛

    政府参考人(榊正剛君) 先ほども申し上げましたように、先生指摘のように、例えば百メートルメッシュごとに深いボーリングを掘るということが文化財との関係で大変難しいということもございますので、過去の降雨データを入力をいたしまして、その際の地下水位の変動と実際の地下水位の変動を比較をして、今回のものが有効性があるかどうかという確認をいたしたということでございます。  その検討結果のまとめの方でございますけれども、今回検討した検討モデルですけれども、現在、そういう関係から、現地の地下水位の挙動をよく再現しておって、道路建設と地下水位挙動との関係を予測評価することは信頼できるモデルと考えられるというふうに私どもは聞いております。  それから、道路建設と地下水位を予測した結果といたしまして、地下水位の変動自体が、年間を通しました季節変動というのが大体四十センチから一メートル五十センチございますので、今回の私どもの予測は大体最大二センチ程度という予測結果が出ておりまして、四十センチ—百五十センチと比べれば相当小さいものだというふうに考えておるところでございます。
  107. 吉川春子

    吉川春子君 要するに、千三百年、奇跡的に保存されていたこの木簡、遺構を地下水が守ってきた。この地下水が道路のトンネルを掘ることによって枯渇されるかどうか、もう決定的な意味を持つわけですね。だから、十分なデータで調査をしなくてはならないものが、地下水検討委員長も認めるように、いろいろ文化財があったり十分なボーリングができないんだと、だから体を触らないで患者さんを診察したようなものなんだということをシンポジウムという公の場でおっしゃっているわけなんですね。そういう不十分なデータをいかにコンピューターに落としてみても、それで万全だということが言えないと思うんですよね。  文化庁、むしろ大臣にお伺いしたいと思うんですけれども、斎藤、近畿大学の先生なんですけれども、有識者検討委員会委員長ですけれども、三つの委員会に共通するテーマは地下水でございまして、これが最も今回の重要なキーワードになったわけですと、地下水に関する専門家の皆さんは大丈夫だとおっしゃっているわけでございます、これが推奨案の中身に大きな影響を与えたということが言えると思います、つまり、地下水が大丈夫ということでゴーサインが出ようとしているんですけれども、しかしそのデータにいろいろ疑義があるということを当事者を含めて言っているわけで、そういう下でトンネルでも掘ってしまって埋蔵文化財が一瞬にして失われるようなことがあれば、これは文化庁自身の責任が問われるんじゃないですか。こういう問題については、文科大臣、いかがお考えでしょうか。
  108. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) 吉川先生指摘の点、これは世界遺産、古都奈良の文化財、これをいかに守っていくか、特に特別史跡になっております平城宮跡を、この文化財を守る、この留意点からいえば大事な視点だと思いますが、これまで文部科学省といたしましても、先ほど説明いただきましたが、国土交通省に対しても、文化財保護の観点からこの課題についてこれまで説明もやってまいりましたし、また文化財の専門家からの意見聴取を踏まえて慎重な検討をお願いしたいと、この要請を行ってきたところでございまして、地下水の問題、いろんな検討がなされておるようでありますが、文化財保護に万全を期すという視点で国土交通省とも十分な調整を図ってまいりたいと、このように考えております。
  109. 吉川春子

    吉川春子君 要するに、世界遺産にも登録された古都奈良の埋蔵文化財が公共事業によって破壊されるというような事態はどうしても避けたいと、文部大臣、こういうことですね。
  110. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) この問題についてはユネスコ世界遺産委員会ともやり取りをしながら進めておるところでございまして、ユネスコに対しましてもこの自動車道の検討状況を報告をさせていただきながらこの問題に今取り組んでおるわけでございますから、そういう思いでこの大事な文化財を守る、そういう思いで国土交通省とも更に検討を図ってまいりたいと、このように思っております。
  111. 吉川春子

    吉川春子君 最後に、政務官国土交通省の政務官伺いますけれども大和北道路の建設をまだ決めたわけではなくて、三つの委員会の報告を受けて、これから建設の是非を検討していくという段階にあるというふうに伺っていますが、そういうことでしょうか。  そして、国の公共事業によって世界遺産である重要な文化財が失われる危険性も指摘されているんですが、そういうことがあってはならないと思います。木簡を保存する上で地下水の変動、移動、枯渇の予測が重要なので、こういう地下水検討委員会の報告を批判している専門家の意見も是非聞いていただきたい、そのことを最後に政務官質問します。
  112. 斉藤滋宣

    大臣政務官(斉藤滋宣君) ただいま委員からお話のあったとおりでありまして、今、検討委員会等で、有識者委員会で二つのルートを提示されておりますけれども、その是非についてはこれから検討したいと思っております。  それから、ただいま文科大臣からお話のありましたとおり、公共事業を進めるに当たりましては、やはり文化財の保全や環境の保全を図っていくということは当然のことでございますから、これからも文部科学省と打合せをしながら、文化財の破壊等がないように進めていきたいと思っております。  今御指摘のありましたとおり、国土交通省としましては、この検討委員会、さらに有識者委員会で検討していただきましたものを土台にしながら、今後とも、奈良県の都市計画審議会の中に環境影響評価検討委員会を設置しておりますし、更に検討を進めていきたいと思っております。
  113. 吉川春子

    吉川春子君 いろんな意見を聞くということですか。
  114. 斉藤滋宣

    大臣政務官(斉藤滋宣君) はい。いろんな意見を聞きながら進めていきたいと思っております。
  115. 吉川春子

    吉川春子君 終わります。
  116. 山本正和

    山本正和君 午前中の草川委員の御質問の中で政府側の見解が述べられたんですけれども文化的景観ということについての、これの定義といったらおかしいんですが、どういうものをもって文化的景観というかと。先ほどちょっと御説明があったんですけれども、もう一遍ひとつ確かめておきたいと思いますから、説明をしてください。
  117. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  文化的景観は、法律の二条に定義を置いているわけでございます。地域における人々生活又は生業及び当該地域風土により形成された景観地で我が国生活又は生業理解のために欠くことのできないものと、これが法律上の定義でございます。
  118. 山本正和

    山本正和君 そのことをもっと国民が読んで分かりやすく説明してくださいと、こういう意味なんでね。文章を読めという意味じゃないんで、ひとつもうちょっと分かりやすいやつ。
  119. 素川富司

    政府参考人素川富司君) お答え申し上げます。  具体的にはいろいろあるわけでございますけれども、やはり一般的には、棚田里山、漁港、河川、湖沼を含む自然と人とが相まって作り上げられてきた土地の有様というようなことと言えるのではないかと思うわけでございますが、やはりそれはその地域に住む人たち生活のさま又は生業のさま、そういうものが非常に典型的に表れているものとして文化財として位置付けられるのではないかというふうに考えているところでございます。
  120. 山本正和

    山本正和君 今、棚田の話が出たんだけれども、文教委員会で鹿児島県に視察行ったときに、我々も棚田を見て、ああ、これはまたすばらしい景観だと思ったんだけれども、要するに、人間が長い間住んでおって、あるいはそこで生活しておって、その中でいろいろなものが、苦労の、何というか、人の働きの中ででき上がったものがあると。そういうものが美しいなと、すばらしいなと思うようなものを文化的景観と、こう言うというふうに言っていいですか。
  121. 素川富司

    政府参考人素川富司君) 美しいと自然に私どもは思うというのは普通だと思うわけでございます。定義上は、美術上の価値ということは必ずしもここには文言としてはないわけでございますけれども、そういった過去からの生活、その中で作り出してきた景観というものは普通美しい、感動するということで、これからも継承していかなきゃいけないということを我々に改めて自覚させるような文化資産であるということで美しいものであるというふうなことでございます。
  122. 山本正和

    山本正和君 法律というのはきちっと書かなきゃいけないから、なかなか書き方は難しいんだけれども、しかし、それを実際に例えば一般の人に説明する場合とか、あるいはもっと言えば、ここは文科省ですから、児童生徒にもいろいろ教えるとなるわけで、そういうときに説明する言葉としてどういう言葉を使ったらいいかといえば、人間が長い間生きてきて、その中でいろいろなものを作ってきたと。その結果でき上がったものがみんなが見てすばらしいな、あるいは美しいなと思った、そういうものを我々としては文化的景観というふうに言うんですよと、こういう説明を一般の人にしても間違いないだろうと、こういうんですが、どうですか、そこは。
  123. 素川富司

    政府参考人素川富司君) 御指摘のとおりでございます。今の説明で十分意を尽くされていると思っております。
  124. 山本正和

    山本正和君 それでよく分かりました。  それで、私は実は今から五十年ぐらい前に三重県の太平洋側の、紀伊半島の太平洋岸から尾鷲のちょっとこっち側のところから、高等学校の生徒ですけれども、二年生の子を三十人ぐらい連れて、五万分の一の地図一枚と磁石だけ持って、あとはみんなでめちゃくちゃに作ったビニールのテント持って三泊四日の計画で行ったのが四泊五日で、あの大台ヶ原を上って、そして奈良へ下りていった、吉野山の千本桜見ながらね。  そうすると、何にもない自然だろうと思ったんだけれども、大変ないわゆる人の営みの跡がある。この私は日本列島というのは、そういう意味でいうと、日本人がずっと長い間作ってきた正にすばらしい文化的景観そのものだろうというふうに私は思う、この日本の国はね。  ところが、それが、何というか、一時の乱開発でぐちゃぐちゃにされて、特に昭和四十年代、五十年代に、もうかりさえすりゃいいというんで、もうゴルフ場を造れというんで、三重県は七十何か所ゴルフ場造られちゃった。大変な景色の荒廃を来たらしたようなところもあったんですけれども、私は、そういう意味でいって、この今度の政府案の文化的景観という言葉が出てきたというのは大変うれしい思いで一杯なんです。  ですから、今のことでやっとこれは政府がこうやって取り組み始めたと、私は大変高く評価したいんですけれども、ただ、悲しいことに、今日の午前中の論議にもあったんですけれども、これに伴う実効措置としてのお金の問題があるんですね。それから、他の省庁がいろんなことをやっている。農水省は農水省でやっている、あるいは建設省と言ったらおかしいか、今の国土交通省ですか、これはこれでまたいろんなことをやっている。そうすると、各省庁間の連携も含めて、要するに文化的景観という立場から各省庁に対してもチェックし得る力を持っているのかいないのかと、これが大変気になって仕方がないんですよ。  これは今直ちに答弁できることじゃないと思いますけれども、特に文化庁という文化に対して責任を持つ省庁として、そういう調整も含めて、また予算の問題も含めて、これからどういうふうな構えで取り組もうとしているかということをちょっとお聞きしておきたいんです。特に予算面ですね。これ、恐らくこの法律通ったら、全国の自治体から一斉に、我がところにはこういうのがありますよといってだあっと上がってくると思うんですよね。まずそれに対して様々な要望が国に対して来ると思う。そういうことに対して、文科省としてはこれから、来年度予算もあるし、あるいは何年か計画というのもあるんだろうけれども、どういう構えで取り組もうとしているかと、その辺のこともちょっと聞いておきたい。
  125. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) これから正に検討しなきゃいけない課題になってきております。これまで有形民俗文化財等の修理とかなんとか、そういうようなケースで支援をするということで補助対象経費を見たりいたしておりまして、こういうのが一つの、我々としては一つの参考にしながらということになると思います。  特に、文化的景観、よく棚田棚田と言われますが、こういうものがほっておくと景観を失いそうになるようなケース、それをどう保護していくかとか、いろいろな問題が出てくるんではないかと、こう思いますし、そういう点でどこまでやれるのか、またどういうことを地方自治体は望むのか、そういう意見をしっかり聞いて具体的な支援策を考えていかなきゃいかぬと、このように考えております。
  126. 山本正和

    山本正和君 ひとつ是非本腰を入れて取り組んでいただきたいと思いますし、実は文化財というものが、これがあったがために乱開発が大分免れたというところが非常にあって、だから、それぐらい文化財の分は大きく我が国を守るのに貢献したと思うんだけれども、と同じように、というより、それより以上に今度の法律によって文化的景観というものが大事にされるということによって守っていただくように、是非ともひとつ大臣、これからも十分な御検討をひとつこれは要望をしておきたいと思います。  その次に、民俗技術の問題でちょっとお聞きしたいんですけれども、これも定義が非常に難しいんで、ちょっと一応その説明をしてください。
  127. 素川富司

    政府参考人素川富司君) この民俗技術は、地域において伝承されてきました生活とか生産に関係しますいろんな用具とか用品、これらを作る製作の技術でございます。これらは、やはりその地域生活、その変化、推移というものを見る上で非常に重要なものであるということで、新しく民俗文化財の一つの位置付けをしていきたいと考えているものでございます。  少し区分して御説明申し上げますと、民俗技術としてとらえられるものといたしましても、日常生活において使われる一般的な生活技術というものがございますし、他方、生計を賄うために使用される職業的な生産技術という、大きく二つ分かれるだろうと思います。  最初の一般的な生活技術として、よく例に出して説明させていただいておりますけれども、伝統的な保存食を調製する技術でございますとか、例えば豪雪地帯におきます防雪のための生活技術というようなものがございましょうし、また二番目の職業的な生産技術としては、よく説明させていただいておりますけれども、和船の船大工の技術とか地域の伝統的な紡織とか染色の技術、こういったものが一つの例として挙げられるかと存じます。
  128. 山本正和

    山本正和君 それでいいんですが、これは別に自分が住んでいるところで例にして言う、別に宣伝するという意味じゃないけれども、松阪木綿というのが三重県松阪市にあるんですね。この松阪木綿というのを基にして今の三井財閥ができた。三井高利さんという人は松阪の人なんですけれども、この人が江戸へ来て、江戸で越後屋という店を開いて木綿を売るところから、もちろん両替商もやったんですけれども、そこから始めた。  この松阪木綿というのがなぜできたかといったら、昔は、日本の国はどうも麻でみんな着物を、衣類を作った。木綿が韓国や、朝鮮や大陸から渡ってきて、こんないいものはないというので一斉に木綿を着ようとした。ところが、なかなか木綿が、今度は中国や韓国から、韓国というか朝鮮ですけれども、そこから来なくしちゃった、何か日本にそんなものをやるのやめておけというような話があってね。それで何とかしなきゃいけないというので一斉に、木綿を作ることについて我が国の先人が苦労した。それが伊勢の国と河内の国、大阪ですよね、それから大和と、そういうところから綿業が始まっていって、そして一生懸命作っていって、ただそれだけじゃいかぬので、今度は更にそれをどう美しくするかというので、藍染をするのに大変な苦労の中でやったんですね。  しかし、これは、移り変わりがありますから、一時ばんと廃れちゃったんです。どんどん着るものができる、いろいろな歴史の中でね。それがまだずっと残っておって、今また改めて、若い、特に美的感覚は男よりも女性の方がどうも優れているだろうと、そう言えるかどうか分かりませんけれども、若い女性の中からもう一遍松阪木綿を見直そうというような空気も今生まれつつあるんですね。ところが、それを作る技術というのはずっと続いているんだけれども、なかなかそれを受け継ぐのに苦労する。  同じような意味で、我が国全国各地に、至る所に、そういう長い二千何百年という歴史の中で、日本人が生きてきた歴史の中でそういうものがたくさんあるだろうと思うんですね。それをひとつ大事にしようというのがこの民俗技術というふうに私は受け止めたいんだけれども、そういうふうな意味で受け止めてもよろしいですね、これは。
  129. 素川富司

    政府参考人素川富司君) 先生御案内のとおりでございます。
  130. 山本正和

    山本正和君 そこで、これは是非、これもお願いなんですけれども、こういう法律ができましたよ、したがって全国各地でずっと伝わっているすばらしい技術を掘り起こしてくださいと、こういうことも文科省としては全国に一斉に各自治体に訴えていただきたいと。そして、我が国が、長い間生きてきた人間が持っているすばらしい技術をもう一遍見直しましょう、掘り起こしましょうと。  私は思うんだけれども、あのジーパンなんというのは世界じゅうをぶっともう広めてしまって、若い人はみんなジーパンはいていますよね、格好いいとかいって。あれはしかし、聞いたら、元々は自動車の流れ作業の中でやっておった職工さんが着たやつが始まってジーパンになった。わざわざ破ったりなんかしてね。しかしそれを、ジーパンを物の見事に生かしたのが今世界じゅうを制覇しているでしょう。  私は、だから、日本の国にある、長い間で生まれてきたところの技術というものがずっとあるだろうと思う。そういう意味で、その辺のこともひとつ是非とも自治体に対してもひとつハッパを掛けていただくことをお願いいたしまして、民俗技術しっかり頑張るようにお願いいたしまして、質問を終わります。
  131. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 他に御発言もないようですから、質疑は終局したものと認めます。  これより討論に入ります。──別に御意見もないようですから、これより直ちに採決に入ります。  文化財保護法の一部を改正する法律案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  132. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 全会一致と認めます。よって、本案は全会一致をもって原案どおり可決すべきものと決定いたしました。  この際、鈴木寛君から発言を求められておりますので、これを許します。鈴木寛君。
  133. 鈴木寛

    ○鈴木寛君 私は、ただいま可決されました文化財保護法の一部を改正する法律案に対し、自由民主党、民主党・新緑風会、公明党、日本共産党及び無所属の会の各派共同提案による附帯決議案を提出いたします。  案文を朗読いたします。     文化財保護法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(案)   政府及び関係者は、本法の施行に当たり、次の事項について特段の配慮をすべきである。  一、文化的景観保護に当たっては、地域住民生活密接にかかわるものであることから、住民の自主性を尊重し、適切な配慮を行うとともに、市町村や都道府県に対する支援措置の充実に努めること。    また、自然環境の保全、景観の形成等関連諸施策との関係についても、関係省庁と十分連携・調整を図り、文化的景観保護を進めるとともに、景観法に基づく地域以外の文化的景観保護在り方について検討を進めること。  二、民俗技術などの民俗文化財保護に当たっては、生活の発展に伴う変遷・変容が著しいことにかんがみ、次世代への継承を図るため、保護団体への支援、記録の作成などによる適切な保護に努めること。    また、指定対象となり得る民俗技術について、その実態や変遷といった基礎的情報の全国的調査を更に進めること。  三、新たに登録制度対象となる、建造物以外の有形文化財、有形の民俗文化財及び記念物について、登録を円滑かつ着実に行うとともに、修理に対する補助、技術的指導等支援措置の充実に努めること。    また、登録の対象となり得る文化財について、その所在や保存状態といった基礎的情報の全国的調査を更に進めること。  四、文化財保存活用の充実を図るため、地方公共団体における文化財保護の体制の整備を行うとともに、文化財関係予算の拡充、税制上の優遇措置などの支援の充実に努めるほか、文化財保存・修理の技術の向上・普及にも留意すること。  五、国民文化財に親しめる機会を拡充するため、国及び地方公共団体における有形・無形の文化財の総合的な情報システムの整備、博物館・美術館等の充実を通じた文化財の積極的な公開・活用やボランティア活動の奨励・支援に努めること。    また、児童生徒が学校や地域において文化財に身近に接し、学習する機会の充実にも努めること。    右決議する。  以上でございます。  何とぞ委員各位の御賛同をお願いを申し上げます。
  134. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) ただいま鈴木君から提出されました附帯決議案を議題とし、採決を行います。  本附帯決議案に賛成の方の挙手を願います。    〔賛成者挙手〕
  135. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 全会一致と認めます。よって、鈴木君提出の附帯決議案は全会一致をもって本委員会の決議とすることに決定いたしました。  ただいまの決議に対し、河村文部科学大臣から発言を求められておりますので、この際、これを許します。河村文部科学大臣
  136. 河村建夫

    国務大臣河村建夫君) ただいまの御決議につきましては、その御趣旨に十分留意をいたしまして対処してまいりたいと存じます。
  137. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) なお、審査報告書の作成につきましては、これを委員長に御一任願いたいと存じますが、御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  138. 北岡秀二

    委員長北岡秀二君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。  本日はこれにて散会いたします。    午後二時十八分散会