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参考人(
福井俊彦君)
日本銀行、常に先々のことをいろいろと予想しながら、かつ勉強も重ねながら
金融政策をやらせていただいておりますが、当面、引き続き消費者
物価指数の前年比変化率が安定的にゼロ%以上になるまで
量的緩和政策をしっかりと続けるということでございます。
この
流動性をたくさん
供給するという
政策の
効果は、既に繰り返し申し上げておりますとおり、
金融市場の安定性を保つ、そして
企業にとって好ましい
企業金融の環境を提供申し上げる、こういうことでございますけれ
ども、この後者の点、
つまり企業にとって望ましい
企業金融の環境というのは、
経済が次第にその回復の力を強め、そして
物価情勢についてもなおデフレでありましても需給ギャップが徐々に縮まるというふうな方向を想定いたしますと、
企業の将来にわたる採算性向上というものが見えてくる。その中にありましては、その
多額の
流動性供給の下で
金利が低い
水準で安定的に形成され続ければ、
企業にとっては採算性の向上という姿につながるわけでございますので、
量的緩和の
効果はより強めながら作用する、こういうふうに認識しているからでございます。
それから、同時に、
委員御
指摘のとおり、
銀行部門の信用仲介機能がそれでもなお必ずしも万全とは言えない
状況がしばらくは続くということでございますので、
資金が
企業の手元までより流れやすくするような様々な工夫を凝らしていかなければいけない。私
どもはできる限りの知恵をここに払ってまいりたいというふうに思っておりますが、やはりこれは民間の
金融機関と私
どもとの共同作業という面が非常に多いわけでございます。
民間
金融機関の方では、既に
不良債権処理の問題に相当引き続き力を入れておられますけれ
ども、しかし、同時に、将来に向かって新しい
金融ファシリティーの用意ということも始めておられます。もう
委員も御承知だと思いますけれ
ども、シンジケートローンという形での貸出しとか、あるいは中小
企業に対しても無担保無保証のローンとかいうふうにいろいろ新しい
金融のやり方を工夫され始めております。そして、いったん貸出しを行って、貸出し債権という形で
銀行の資産の構成を組んでも、様々な資産を再構成したり、あるいは
市場の中へこれを、流動化可能な形にこれを編成し直したりするような、
つまり銀行のポートフォリオを能動的に形成していくような新しい経営手法というふうなものにも着手され始めております。
私
どもは、今年度から各
金融機関に対して行います考査につきましても、不良債権問題の処理を更に強く促すと同時に、こうした
銀行の新しい融資あるいは
金融サービスの展開に向けての能力向上、業務
範囲及び業務能力の向上という面で、考査の面からもできるだけこれをアシストしてまいりたいと新しい考査方針を出しております。そうしたことが全体としていい
効果を出していけるように
努力をしていきたいというふうに思っています。
さらに、もう
一つ重要な
お尋ねがございまして、長期
金利を中心に
市場が不安定にならないようにすることが非常に大事だとおっしゃいました。私
どもも非常にそれは大事だというふうに思っています。
景気の回復の方向性が強まれば強まるほど、そして
デフレ脱却への最後のゴールに近づけば近づくほど、その長期
金利の問題というのは更に重要性を増していくというふうに私
ども認識いたしております。
日本銀行の力だけで長期
金利を思いのままの
水準にセットするということはできないにいたしましても、できる限り私
どもの情勢判断を明確にし、
市場との対話を密にして
市場の期待の安定化を図っていきたいというふうに
考えております。