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参考人(
石川嘉延君)
静岡県知事の
石川嘉延でございます。
本日は、
静岡県におきます
ユニバーサルデザインの
推進状況について御
報告をする
機会をいただきましたことは大変有り難く、心から感謝を申し上げます。
それでは、早速御
報告をいたしたいと
思います。
お
手元に、「しずおか
ユニバーサルデザインの
推進」という冊子といいますか、
パワーポイントの印刷物を差し上げてございますので、それに従いながら御説明したいと
思います。
本県は、
平成十一年度、一九九九年から
ユニバーサルデザインの
考え方を県政の基本に据えて
取組を始めたところでございます。そのようなことに至りました経緯、理由は、一ページの下段にありますように四つの背景がございました。
第一は
人権の尊重、これを徹底するという
観点から
ユニバーサルデザインの
考え方の
重要性に気が付いたわけです。
本県では
平成九年から
人権啓発センターを設置いたしまして、同和問題はもとより、
障害者の
社会参加を始め
外国人との共生、
児童虐待、ドメスティック・バイオレンスなど幅広い
人権問題を解消するためにこの
啓発センターを設置をして、何とか
県民意識の覚せい、徹底、これを基に
人権の尊重される
地域を作り上げたいと取り組んでまいったわけでございますが、なかなかそういう問題を
県民の
皆様方それぞれに
自分のこととして真剣に取り組んでもらえるような
状態になかなか行かない、浸透しないと、もどかしさがありました。
それから二番目は、
静岡県でも
平成八年に
静岡県
福祉の
まちづくり条例というものを作りまして、
福祉の
観点から住みやすい
地域社会を作ろうということでいろいろ
取組を始めたわけでありますが、これも
福祉の
まちづくり、
福祉という
言葉が上にかぶさっているためか、いわゆる
民生行政とか
福祉行政をやっている
行政マンとかあるいはそういう
分野にかかわりあるような
分野の
方々はぴんときて、いろいろこの
条例を
きっかけにあちらこちらに働き掛けをしてくださるようになったわけでありますが、その他の
分野、要するに全般的には、あれはもう
福祉の
分野のことだからということでなかなか我々の願いが全県的に広がらないという、これまたもどかしさがありました。
それから三番目は、
障害のある
人たちの自立、これを何とか実現することが非常に大事だということを私どもも
地域におって痛感をしておりましたし、また
障害のある
方々自身もそのような願望を持っておるわけであります。
竹中さんからも随分私ども啓発を受けていろいろやっておったわけでありますけれども、そういうことを進めるに当たって、非常に発信力の強いといいますか、浸透力のある理念とか
言葉が必要だなというふうに思っておりました。
それからまた、最後の四つ目でありますが、男女共同参画
社会がこれまた
本県でも当然のことながら大きな
テーマになっておるわけでありますが、そういうことに加えて、今後の高齢少子化
社会を考えますと、男女共同参画に加えて老若ですね、老若・男女共同参画
社会、これを本当に徹底する必要があるんじゃないかというふうに私は感じておったわけでありますが、これまた老若・男女参画共同
社会、共同参画
社会といっても、大体発音しにくいし長ったらしいということもあって、何かもう少しインパクトのある表現をしたいなと思っておったわけです。
こういう四つのいろいろ私は問題
意識、
課題を抱えておるときにこの
ユニバーサルデザインの
考え方に行き当たりまして、ああ、もどかしさを打破する、あるいは
県民にもっとこの我々が考えていることを徹底するためにはこれがいいなということで、
平成十一年度に県政の基本に据えようということでのろしを上げたわけであります。
二ページの上段にありますが、
平成十一年に全国初の
ユニバーサルデザイン室というものを県庁の中に設けまして、五人のスタッフ、専任スタッフを配置をして取り組むことといたしました。それを庁内外、県内に徹底するために、私を本部長とする
ユニバーサルデザイン推進本部というものを作りまして、まずは全庁的な
取組から始めようということで
平成十一年度スタートいたし、
平成十二年、翌十二年に
ユニバーサルデザイン行動計画を立てまして、
平成十二年から十六年までの五年間の
行動計画を今実行中でございます。
この
行動計画の立案、実行に当たりましては、二ページの上段にありますような
推進委員会、学識経験者や専門家を委嘱しまして八名の
推進委員会を設立し、この
方々の助言、提言をいただきながらこれを政策化していくという体系で進んでおります。なお、具体的な
施策の立案に当たっては、必要に応じてまた各種の専門
委員会を作って取り組んでおるところでございます。
以下、具体的な
取組事例に移りたいと
思いますが、二ページの下段にありますように、普及啓発のためのいろいろ
活動、そしてこれを普及していくためのガイドラインとかマニュアルの作成、そしてさらに、そういうものを一般的に広げる手段としてコンクールが非常に有効だと考えまして、アイデアコンクールなども実施をしてきたところでございます。
そういう実践例から幾つか御紹介をいたしたいと
思いますが、三ページの上段にありますように、まず
ユニバーサルデザインに取り組み始めた
平成十一年に、県の使っております封筒、これを改善いたしました。お
手元にもお届けしてありますけれども、まずは視力の、視覚
障害のある
方々にとってみて触ってよく分かると、あるいは視力の弱い弱視の方にとってもよく見えるようなコントラストのはっきりした
デザインにする、そして凹凸を付けて、
静岡県のマークであるということを認知をしていただいた上で、これは県から来た文書であるということが分かるようにすると。それから、右側のもう
一つ、県財務事務所、
静岡財務事務所という封筒がありますけれども、これの封をするところが波形になっておりますけれども、これを触手をして波形であるということが分かれば、お金などに関する重要な通知文であるということを弱視若しくは視覚
障害の方でも理解できるようなものになるということで、視覚
障害者の
方々なんかの御
意見も聞きながら、
平成十一年、早速こういうような改善がまず庁内的にはされました。
さらに、三ページの下段にありますように、学校教育においてこの
ユニバーサルデザインを教えるということが非常に今後にとって重要だという
観点から、教師用の研修テキストとか教材、これを開発し、ホームページ、インターネットのホームページなどで公開したり、あるいは小中学校の総合学習の時間にこのUDを授業の中に取り込んでもらうなどなどをやってまいりました。
それから、四ページに参りまして、
ユニバーサルデザインを一般のメディアにも取り上げていただくという
意味で各種大会も
意味がありますので、
平成十三年には、全国の第一回
ユニバーサルデザイン大会を国内に呼び掛けまして、浜松市において開催をいたしました。これは大変反響を呼びましたが、翌年、
平成十四年から県内を
対象に全県の
ユニバーサルデザイン大会を年一回開催をいたすことにいたしまして、昨年十五年、本年度ですね、も二回目を開いたところでございます。
ここでは、NPOやボランティア団体とのコラボレーション、協働を実現しながら、幼稚園児とか小中学校での
取組とか、あるいは各種NPO、ボランティア団体や企業などにおける
ユニバーサルデザインの
取組事例の発表とか様々な展示、そういうものを行っております。
それから、四ページから五ページにかけましては、県の施設整備に当たりまして取り組みました
ユニバーサルデザインの
事例であります。
四ページの左下は、昨年の秋の国体あるいはおととしのサッカーのワールドカップの会場地になりましたエコパという総合運動公園の整備に当たりましては、
ユニバーサルデザインの
考え方に従った施設整備をいたしまして、利用者の
方々から大変好評もいただきました。あるいはまた、いろんな我々が気が付かなかったような苦情とか御指摘もいただいて、こういうものも早速改善をしながら前に向かっております。
右側の五ページの上段、これは県営住宅、既存の県営住宅のUD化の
取組事例であります。こういうものは特段珍しい
事例ではないと
思いますが、もう既にこういうものはどんどんやっておるということであります。
それから、五ページの下は、県立総合病院のサインの
ユニバーサルデザイン化を実行いたしました。施工前と後では、例えば分かりやすくなったという
アンケート調査では、施工後、八六%の来院者が分かりやすくなったと言っておりますし、施工前は院内で迷ったという
方々が約四割おりましたけれども、施工後はこれが一〇%ちょっとに減少するなど顕著な効果が出ております。そのほか、県庁の本庁舎とか出先機関などでも、既に
平成十四年度までに、いろんなサインなどのUD化あるいはトイレなどの改修、これはUD化を完了しております。
それから、六ページでありますけれども、民間におきます
取組事例として、県の工業技術センターと木工企業が一緒になりまして、
ユニバーサルデザインの机、いすを開発いたしまして、今、六ページの上段で女性が座っておりますけれども、これが、この方が立ち上がろうとするときには、ひじ掛けが短くなっておりまして、簡単にそこへ手ついて立てるということにもなりますし、このいす
自身が九十度反転いたしまして、すっと楽に立てるというようなことにもなります。こういう商品が既に売り出されて、二年間で九千百万円の売上げを実施しているところでございます。
それから、下の六ページでありますが、県内の市町村にもこの
取組が拡大をしておりまして、浜松市は、
ユニバーサルデザインフェアというものをやって、ファッションの中にもこういうものを取り入れようということでやっております。
また、同市は今年度、
ユニバーサルデザイン条例、これは全国初でありますけれども、そのようなものを作りまして、
ユニバーサルデザインの普及徹底に努めております。
また、伊豆半島の東伊豆町という町では、
ユニバーサルデザインの
まちづくりをメーンにモニター旅行のボランティア研修をやったり、あるいは車いすのクロスカントリー大会をやったり、いろいろ活発にこの面での
活動を展開しております。
また、
県民、団体におきます反応も顕著に増えてまいりまして、七ページの下にございますように、
ユニバーサルデザインという
言葉や内容についての認知度でありますけれども、取り組み始めました十一年度におきましては
県民の三一%しかこの
ユニバーサルデザインという
言葉が理解されませんでしたけれども、五年後の今日、十五年度では六六%にまで拡大をしております。今年度は、
平成十六年度はこれを七割に持っていきたいというのが我々の
ユニバーサルデザイン行動計画の目標でございます。
また、事業者の
取組もごらんになりますような
状態で増えつつありまして、県の総合計画、
平成二十二年の目標で五割まで持っていきたいと努力をしているところでございます。
八ページに締めくくりとして書いてありますが、今後、
行政、事業者、
県民が一体となった
ユニバーサルデザイン推進に努力をいたしまして、富国有徳の
静岡をつくり上げたいと存じているところでございます。
あとはいろいろ御質問に応じてお話を御紹介いたしたいと
思います。
ありがとうございました。