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2004-05-25 第159回国会 参議院 国土交通委員会 第18号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年五月二十五日(火曜日)    午前十時開会     ─────────────    委員異動  五月二十一日     辞任         補欠選任      山根 隆治君     佐藤 雄平君  五月二十四日     辞任         補欠選任      櫻井  充君     藤井 俊男君  五月二十五日     辞任         補欠選任      佐藤 雄平君     谷  博之君      大沢 辰美君     池田 幹幸君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         輿石  東君     理 事                 岩城 光英君                 鈴木 政二君                 池口 修次君                 大江 康弘君                 森本 晃司君     委 員                 上野 公成君                 沓掛 哲男君                 佐藤 泰三君                 田村 公平君                 鶴保 庸介君                 藤野 公孝君                 谷  博之君                 池田 幹幸君                 富樫 練三君                 渕上 貞雄君    事務局側        常任委員会専門        員        伊原江太郎君    参考人        静岡県知事    石川 嘉延君        ジャーナリスト        前特殊法人労連        事務局長     堤  和馬君        社団法人日本自        動車連盟(JA        F)理事     林  広敏君        ジャーナリスト  櫻井よしこ君        早稲田大学商学        部教授      杉山 雅洋君        明治大学大学院        グローバルビジ        ネス研究科教授  山口不二夫君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○高速道路株式会社法案内閣提出衆議院送付  ) ○独立行政法人日本高速道路保有債務返済機構  法案内閣提出衆議院送付) ○日本道路公団等民営化に伴う道路関係法律の  整備等に関する法律案内閣提出衆議院送付  ) ○日本道路公団等民営化関係法施行法案内閣提  出、衆議院送付)     ─────────────
  2. 輿石東

    委員長輿石東君) ただいまから国土交通委員会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二十一日、山根隆治君が委員辞任され、その補欠として佐藤雄平君が選任されました。  また、昨日、櫻井充君が委員辞任され、その補欠として藤井俊男君が選任されました。     ─────────────
  3. 輿石東

    委員長輿石東君) 高速道路株式会社法案独立行政法人日本高速道路保有債務返済機構法案日本道路公団等民営化に伴う道路関係法律整備等に関する法律案及び日本道路公団等民営化関係法施行法案、以上四案を一括して議題といたします。  午前は、四案審査のため、参考人として静岡県知事石川嘉延君、ジャーナリスト・前特殊法人労連事務局長堤和馬君及び社団法人日本自動車連盟(JAF)理事林広敏君の三名の方に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつ申し上げます。  本日は、大変お忙しいところ委員会に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。  参考人方々から忌憚のない御意見を伺い、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、石川参考人堤参考人林参考人の順序でお一人十五分程度意見をお述べいただき、その後、各委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることとなっております。  また、参考人方々の御発言は着席のままで結構でございますが、質疑者は、慣例により、起立の上発言することとしておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、まず石川参考人にお願いいたします。石川参考人
  4. 石川嘉延

    参考人石川嘉延君) 静岡県知事石川嘉延でございます。  お時間をいただきましたので、本日は危機管理観点から高速道路整備について意見を申し述べたいと思います。お手元に資料をお届けしてあると思いますので、これに即しながらお話を申し上げたいと思います。  静岡県は東海地震対策を最重点として取り組んでおりますが、その中で高速道路地震災害時に復旧支援に欠くことができない社会資本と認識をしております。また、高速道路我が国経済活動の基盤でありますことから、災害時はもとより、事故時による通行止め経済活動に大きな影響をもたらしております。本日はこうした観点から高速道路整備について意見を申し述べます。  まず、第一ページごらんいただきたいと思いますが、現在、東名高速道路は一日で七万七千台の交通量がございます。この交通量は、東名道路の大部分を占めております四車線容量で、四車線部分容量は四万八千台と言われておりますけれども、これを大きく超えております。また、六車線容量は七万二千台というのが適正容量と言われておりますけれども、これをも上回っている状態でございます。  こうしたことはどういうことをもたらしているかというと、年間五千百回に及ぶ渋滞が発生しているわけであります。また、人身事故年間千百三十件起きている状況で、一キロメートル当たりの事故件数で見ますと、そこの表にありますように、日本高速道路の平均の三・三倍の事故率という状態になっております。  二枚目ごらんいただきたいと思うのでありますが、事故台風などによりまして、この結果、年間六十回もの通行止めが発生しておるわけであります。  最近の大きな事故は、三月二十二日に東名高速道路上り線沼津―御殿場間が事故によりまして七時間通行止めになりました。あるメーカーの例ですけれども、この結果、納入予定部品に最大三時間の遅れが生じ、遅れた部品は四〇%に上っていると。このため生産ラインを約一時間停止せざるを得なくなったということがございます。このような事故台風などによる渋滞とか通行止め日常経済活動にも多大な影響を与えていることがこういう例を通じても御理解いただけると思います。したがって、これの交通円滑化ということが大きな、日本経済にとっても大きな課題であるということは御理解いただけると思うのであります。  三枚目ごらんいただきたいと思うんですが、三ページ、県内企業に対するアンケート調査を見ましても、通行止めになったことによって七割の企業影響を受けると。中でも、甚大な影響があったというのは三分の一を超えているわけでありますし、何らかの形で影響を受けるところが七割を超えているということでありますから、いかにこの現東名道路がいろいろ問題を発生しているかということを御理解いただけると思います。  そういうことを背景にいたしまして、四ページでありますが、第二東名自動車道建設が構想されたわけであります。地元地域といたしましては、そこにありますような三つの点からこの第二東名自動車道役割があると高く評価をしているところでございます。  まず第一点は、先ほどもちょっと述べましたようなサービスの限界を超えた東名を補完する機能を果たすことが期待されるということであります。  現在、東名道路は全高速道路の中の貨物輸送の二二・五%を担っておるような非常に重要な機能を果たしているわけでありますので、これが非常にサービスが悪いということ、これが経済的な被害も発生させているということになりますと、第二東名ができますとそういう問題が一挙に解消するということが期待されます。  二番目は、地震災害重大事故等代替路確保という観点で、この第二東名自動車道の果たす役割は非常に大きいと思います。  阪神淡路大震災の際に、交通路の、高速道路リダンダンシー確保代替路確保ということが大きなテーマであるということが浮き彫りになりましたけれども、大阪、名古屋、東京という三大都市圏を結び付けるこの第二東名自動車道、これがリダンダンシー確保という観点でいくと非常に脆弱なものがございます。後ほどちょっと述べます。  それから三番目でありますが、今ちょっと申し上げました国の大動脈として三大都市圏連携強化を図っておるわけでありますが、第二東名が完成いたしますと更にその機能強化をさせ、日本経済の円滑な運営に資するというふうに思います。  五ページごらんいただきたいと思いますが、東海大地震阪神淡路大震災と比較いたしましても被害を受ける被害想定区域も非常に甚大でありますし、大きいし、また被害程度も、そこの表に被害想定書いてありますけれども、静岡県内阪神淡路大震災の何倍にもわたる被害が発生することになります。本県では昭和五十一年に東海地震説が出て以来、地震対策に鋭意取り組んできたわけでございますけれども、そういう中で今一番心配になっておりますのが、この東海地震の際に東西大動脈が寸断、遮断されるのではないかという、そういう危険性、これに対して今まで国家的な観点からさしたる手が打たれてなかったわけですが、第二東名自動車道がそれにこたえ得るという期待を持っているわけでございます。  六ページごらんいただきますと、本県のちょうど中央部に当たる、静岡市のちょっと東側、由比という地区がございます。広重や北斎の浮世絵で有名な場所でありますけれども、ここがごらんになりますような国道一号線、東名自動車道東海道線、東海道新幹線、ここがほぼ一キロぐらいの間に集約している場所でありまして、写真にもございますように大地すべり地域でございます。建設省、農水省によって地すべり対策、一応の手は打たれておりますけれども、もし東海大地震の際にここにまさかのことが起こった場合に、我が国東西の動脈がここでストップするということになるわけであります。  七ページごらんいただきますと、それに対して第二東名自動車道は現東名道路内陸側五キロから十キロの地域を貫通するということで、現在工事中でございます。現東名と比べますと第二東名想定震度とか液状化危険度が小さい地域を通過いたしますし、また阪神淡路大震災の教訓を生かして最新技術を取り入れた耐震性の高い道路建設されますから、リダンダンシー確保代替路確保という観点で大変大きな役割を果たすものと期待をしております。  また、八ページごらんいただきますと、この第二東名自動車道本県から東に延びてまいりまして、神奈川県の海老名というところで緑色で線を引いてあります首都圏央道連結をいたします。そのことによって、第二東名、第二名神とこの首都圏央道連結をすることによって全国的な高速道路ネットワークが完成をすることになるわけでありますので、少なくとも首都圏の特に東京部東京都心部へ向かっている道路はともかく、そこを通って現在埼玉県とか茨城県とか、あるいは千葉県に行っている道路都心部を経由しないで交通できるということになりますから、東京に対する交通負荷を軽減するという意味でも非常に効果の高い道路だと思うわけでございます。今後の日本経済の発展、円滑な物流、人流確保という観点で、非常に意味のある道路であると思います。  九ページの表をごらんいただきますと、これは日常時あるいは災害時においても、この第二東名自動車道に現在山梨県と静岡県の間を中部横断自動車道という高速道路建設も進んでおります。こういうものもできてまいりますと、いよいよ交通路複数整備ができ上がるわけで、日常的な交通、そして災害時の交通においても多大な役割を果たすと期待をされるところでございます。  十ページをごらんいただきたいと思いますが、そういうようなことでございますが、本県におきましてはこの第二東名自動車道建設に合わせまして、インターチェンジ県内に設けられます十一か所のインターチェンジに向けて県内の各最寄りの地域からのアクセスがうまくいくように着々道路整備をしているところでございます。既に昨年度末、平成十五年度末までに二千億余の投資を行いまして開通に間に合うように道路整備をしているところでございます。  また、このために我々は法人事業税超過課税平成六年から実施をしておりまして、平成十四年度までの九年間で三百四十億円の超過課税財源も投入してこういう整備に当たっているところでございます。  そしてまた、第二東名を活用してインターチェンジ周辺でいろいろな地域開発が進行中でございます。工業団地造成とか区画整理事業、あるいは建設に伴って出てまいりました廃土を利用して谷間などを埋めて農地造成する、生産性の高い農地造成なども並行して進んでおるところでございます。  こういう第二東名道路に対する非常に期待、そしてまたそれを、その効能を地域にも現実化するための様々な取組を行っているところでございますが、このたびの民営化法については、公団民営化のための仕組みについては、債務返済を確実に行うためにコストの縮減、それから民営化移行時点債務総額を上回らないなどの歯止めが設けられておること、そしてまた債務償還期限を四十五年以内と明確にしたことなど、大変評価できると思いますし、また適切な国の関与の下に新会社経営自主性を尊重する仕組みが導入され、着実な整備が可能となるという期待も持てる仕組みになっている、そういう点で評価をいたしております。  また、地方の意見の反映もできるということで、これも我々は有り難い改正だというふうに思います。  さらに、この道路について、高速道路についても国民共有の資産であるという観点から、高速道路機構が所有をして債務返済後に無料化するということが明示されまして、加えてまた、利用者負担を抑えるために高速道路料金に利潤を含めないというようなことも規定されまして、これは大変評価をできると思います。  静岡県を含めて、沿線地域としてはできるだけ早く、この法案の成立によって着実に高速道路建設が進められることを期待しているところでございます。よろしくお願いいたします。
  5. 輿石東

    委員長輿石東君) ありがとうございました。  次に、堤参考人にお願いいたします。堤参考人
  6. 堤和馬

    参考人堤和馬君) レジュメに沿いながら発言をしたいと思います。  私、道路公団民営化委員会設置法案、そして昨年の新直轄高速道路法案、そして今回、高速道路の問題では三回目の参考人ということになりました。私は高速道路専門家というわけではないんですが、以前から特殊法人労連という労働組合特殊法人改革問題に関して様々に提言をしたり、意見を発表したり、いろいろやってきました。そして、ここ十年来特殊法人改革が行われてきたわけですが、それもつぶさに見てまいりました。そして、今回の道路公団民営化に関してもいろいろ意見があったわけですが、最終的に出てきた法案を見るならば、私は非常に最悪特殊法人改革ではないかという印象を持っております。  まず最初に、十年前に特殊法人改革が始まったころ、ちょうど村山政権ができる少し前ですけれども、特殊法人労連として事業問題に関するアンケート調査を行いました。約二千三百人の組合員参加をし、この中には阪神高速道路公団組合参加をしてアンケート調査をまとめました。その中で、やはり特殊法人職員労働組合として、労働者として改革に求めるものは、やはり法人自身自立性強化。賃金問題一つ取ってみても、自分たちで解決ができないような仕組みになっております。そういう意味で、がんじがらめになっているその束縛を少しでも緩和をして自立性強化をする。そしてまた、元々公共的な仕事に従事しているわけですから、改革を通じて更に国民に奉仕できるような機関に変わりたいと。それと、情報公開公共事業の場合は特にそうですが、計画から執行までほとんど国民的な議論がなされないというようなところがあるわけです。そういうものを、少しでも情報公開とかという形を取りながら透明性確保をしていきたい。そして、特殊法人の特徴でありました役員への官僚の天下りの問題については、強い憤りの声がありました。そして、九四年前後ですが、かなり世界的に民営化の風が吹いた時代ですが、民営化は元々、公共的な機関を損益だけで評価をしてしまうようなものは、特殊法人職員としては到底認められないという意見が大半でした。特に、自立性強化公共性強化というのはとりわけ高い数字を示しました。  そういう中で、道路公団改革が始まったころ、じゃ我々はどう考えたのかと。  これは私の意見ですが、やはり道路公団の問題というのは、四十兆円に及ぶ債務を抱えて返済することが不可能になりそうだというところから出発をしているわけです。そういう意味では、今までどおりの造り方ではできないということが明らかになっているわけです。さらに、本州四国連絡橋のように完全に破綻をした法人もあるわけです。そういう中で改革議論をするのであれば、まだ半分しかできていないこの予定路線ですね、そこをどうするのか、整備計画をどうするのかということを含めて議論を開始するべきだというふうに思うわけです。  そして、道路公団だけではないですが、公共事業それ自身見直しにつながるような、計画から執行までいかに透明化を図るかというようなことが議論の対象にならなければならないだろうと。そして、採算性を著しく不明確にしてきました料金プール制、これの見直しがどうしても必要なのではないかというふうに思います。  そして、道路公団は、特にいろいろな汚職事件や疑惑が持ち上がっております。現在でも細田官房長官日本道路興運からの献金問題などが浮上し、こういう問題は道路公団の歴史を見ても様々な形で出てきている。そういう意味で、路線決定から管理部分まで含めて日常的に政治的な介入が行われている。私はいろんな職員から話を聞きましたけれども、なかなかこういう問題で口を開くのは難しいんですが、それでもやはりかなりの工事の発注はほとんど官製談合で行われていますし、様々な路線決定から、先ほど言いました管理部分まで含めて介入が行われているというのが現実であるわけです。  そして、さらに、非常に不明朗な形でファミリー企業が設立されて、このファミリー企業を使って様々な利権争いや政治的な様々な献金やらいろいろなものが起こっていると。  この問題に関して、ちょうど一九九八年ですが、当時の井坂理事が逮捕されたときに、子会社ファミリー企業社長が二人続けて自殺した事件があるんですが、これを後にフジテレビがドキュメンタリー番組を作って追い掛けたんですが、この亡くなった片方の社長さんは正に政治的な争いの中に巻き込まれて自殺をされたというようなことまで報道されております。そういうような、株の持ち合いなどをしながらファミリー企業仕事確保させていくというようなやり方政治家から様々な使い方をされて非常に利権温床になっているという問題から、こういうファミリー企業を解消していくことが大事なんではないかと。  そして、官製談合などを簡単に行わせていく仕組みの中で、やっぱり職員天下りがあるわけです。特殊法人の場合は法律的な規制が一切ありませんので、翌日でも建設会社天下りすることができるわけです。そういうことが積年にわたって行われて、今でも数千人の方々関係の業界の企業などに就職をされているわけです。こういうものがなくならない限り、こういう官製談合だとかそういうものはなくすことができないのではないかというふうに思います。  このような観点から改革を進めなければならなかったはずにもかかわらず、二〇〇一年の十一月、小泉首相古賀誠道路調査会長との間で会談が持たれて、道路公団改革についての基本的な枠組み決定をされました。これがやはり今のこの法案に至る基になっているわけですが、ここで民営化、五十年償還で基本的な計画に変更しないというところで枠組みを作ったことが、抜本的な議論をさせない、そういう仕組みを作ったんだと思います。ですから、後にできた民営化委員会も、当初は盛んにいろいろな計画問題を含めて議論をしておりましたけれども、結局のところ、民営化するだけが仕事だということになってしまい、二転三転していくというようなことになってしまったのではないかと思います。  そして、民営化委員会民営化議論をしている途中から、突然と言っていいかもしれませんが、直轄方式の導入、昨年あの法律が可決され、もう路線が決まっておりますけれども、道路特定財源を使って建設をしていくというようなことが決定をされました。  これは、民営会社がやらない部分、当時の議論でいえば、採算が取れないところは外れていくということから、税金投入路線を先に確保していくというようなことで行われたんではないかと。これは高速道路に対する物の考え方を抜本的に変えるものであるわけです。そういう意味で、もっと慎重な議論が必要だったのではないかというふうに思います。  そして、今回できた法案ですが、上下分離で六社、政府持ち株会社ですが、元々議論されていた採算性だけを基準にした経営の自主権というようなことは確保されずに、結局、政府国土交通省計画にのっとって、一応形の上では拒否する形は持っていますけれども、基本的には今の公団やり方をそのまま受け継いでいるような側面が強いと思います。  そしてさらに、独自に資金調達をするということがほかの特殊法人でもやられておりますが、政府保証を付けた債券を発行して資金調達をするということ、そして形は株式会社という形を取っておりますけれども、これは小泉首相民営化民営化だということを最後まで言ってきたと。一応形式的には民営化された会社になっておりますが、これは私が見るに、ほとんど特殊法人の形を若干変更して、もちろん上下分離だとかいろいろありますけれども、株式会社の形式を持った、ほとんど特殊法人などと大きな違いはないのではないかと思っております。  そして、特に重要なのは、道路公団政官財癒着利権温床になっていると申し上げましたけれども、これがやはり温存をされていく。情報公開法の適用もされない、官製談合防止法入札契約適正化法などが適用されないというようなことになっております。そういう点からいえば、正に政官業癒着の隠ぺい、温存ではないかと。そういう意味では、これは現在の公団よりも更に悪い状況になったのではないかというふうに思います。  そういう意味で、私は、この道路公団民営化法案について、これは最悪特殊法人改革、改悪ではないかというふうに思っておるところであります。  以上です。
  7. 輿石東

    委員長輿石東君) ありがとうございました。     ─────────────
  8. 輿石東

    委員長輿石東君) 委員異動について御報告いたします。  本日、佐藤雄平君及び大沢辰美君が委員辞任され、その補欠として谷博之君及び池田幹幸君が選任されました。     ─────────────
  9. 輿石東

    委員長輿石東君) 次に、林参考人にお願いいたします。林参考人
  10. 林広敏

    参考人林広敏君) まず、本日の国土交通委員会におきまして、参考人として意見を述べさせていただく機会を賜りましたことに厚くお礼申し上げます。  私は、自家用乗用車ユーザーの団体である日本自動車連盟の者として、自家用乗用車ユーザーの立場から、このたびの法案に関連して、四公団民営化並びに関連する今後の高速道路整備の在り方などを中心に、ユーザーアンケート調査を交えて意見を述べさせていただきたいと存じます。  私どもJAFの概要につきましては、昨年四月二十三日の本委員会で紹介させていただきましたので、ここでは省略させていただきます。  まず、高速道路整備についてのそもそもの話でございますが、私は大学の四回生でありました昭和三十六年以来、日本高速道路をずっと見続けてまいりました。昭和三十八年夏に我が国最初の高速道路として名神の尼崎―栗東間七十一・一キロメートルが供用を開始される二年前からです。  この昭和三十六年の夏、東京を起点、終点として北海道と四国を除く本州と九州を二十二日間で走行する日本一周学生ラリーが開催され、これにフルコース審判として参画する機会を得まして、主として当時の一級国道を走行する過程で我が国道路事情をつぶさに観察することができました。東京など大都市と東海道を除きますと、中心市街地を抜けるとほとんどの道路が舗装されてなく、砂利を敷いただけでコールタールが吹き付けてあればまだましな方で、おまけに狭いという具合でした。ちなみに、国道一号線が一応の整備を見たとされるのがたまたまこの年の年度末でございました。  一方、同じ年に京都山科のとある地点から、施工が終わったばかりの名神高速道路を見ることができ、一般国道との余りの落差に驚愕した記憶がございます。私は、この京都山科の名神高速道路日本の未来を見た感じがいたしました。  事ほどさように、我が国道路整備は後れておりました。明治政府以来、島国である我が国が、殖産興業の名の下に鉄道と港湾の整備に邁進してきた結果であります。このことはワトキンス・レポートに詳しいので、そちらに譲ります。  この余りの後れを取り戻すためには、一般道路高速道路も同時に並行的に、しかも急速に整備する必要があることから、到底税金だけでは足りず、本来国の基本インフラであることから国費でもって整備すべきところを、有料制を導入して借金で造り、料金収入でもって返済をするという制度ができたと理解しております。  それがいつのころからでしょうか、高速道路については採算性が強く求められるようになり、採算の合わない道路は造るに及ばずとなってまいりました。法律的に詳しくはどのようになっているかは私どもで分かりませんが、本来、基幹的インフラである高速道路は税金でもって整備すべきものであって、それがいつの間にか採算性ありきとなって、そもそもという、国費でもって整備するところというところが、くだりが雲散霧消してしまったように思われてなりません。  次に、本四公団民営化の是非について述べさせていただきます。  四公団民営化につきましては、大筋で国民の認めるところといいますか、もはや既成の事実と受け取っているのも事実であります。これは、民営化委員会議論が、民営化そのものではなく、採算性や財務状況などの何らかの批判を交えた論調が毎回細かく報道されたことによります。  ただ、特定の委員の主張が大きくマスコミに報道される余り、委員会全体の議論の方向性やその流れが一般国民にはよく見えず、木を見て森を見ずという例えがございますが、一般国民はむしろ、断片的に伝えられる個々の情報から、何だか大変なことになっているとの想像をしてきた嫌いがございます。したがいまして、受け取る人によってその想像はおのずから違いが出たのではないかと思われます。  この点は、次の項で御報告申し上げるユーザーアンケートの記述の中に、全体のトーンは料金が高過ぎるという基調は当然ながら、これを批判する語句として、日ごろ余り使われない天下り、子会社道路族という、委員会議論の過程でさんざん露出してきた言葉が多くちりばめられていることでも分かります。委員会途中で委員長辞任されたり長期欠席の委員が出たりと、我々は外野席から一体どうなるんだろうかと気をもんでおりました。  このような状況ではありましたが、自家用乗用車のユーザーの関心は専ら、料金制度がどのようになるのか、どれくらい安くなるのかが最大の関心事でありました。加えて、これも自由記述の中から読み取れることですが、ユーザーは民営化後の道路の維持管理を心配している向きがございます。このことは、高速道路はしっかり管理しないと安全性が保たれないとの意識が強く働いていて、そのための費用として低廉な料金であれば将来とも有料であって構わないとする意見が数多く見られることから推察できます。  アンケートについて申し上げますと、私どもでは折に触れてユーザーアンケートを実施していることは昨年本委員会で述べさしていただきました。本件が国会審議に入ったことを受けまして、自家用乗用車ユーザーがどのように考えているかを知るため、急遽、四月十九日からゴールデンウイークを挟みまして五月五日までの間にインターネットによるユーザーアンケートを実施いたしました。  注目すべき点は、回答者の半分以上が自由記述の中に何らかの意見を述べていたことでありまして、この種のアンケートとしては大変珍しい結果となっておりまして、国民が大きな関心を寄せていることのあかしであると考えられます。  高速道路整備に関するユーザーの考え方は、高速道路はもう十分かという問いに対して、必要な箇所がまだあると思うとの回答が七〇・三%もありました。これに、全く今不十分であるとの答えを足しますと、約八割の方が高速道路整備は必要と訴えております。このことは、ここ数年にわたる道路公団民営化議論の過程で、最近でこそ下火とはなりましたが、もはやこれ以上の高速道路整備は不要とするがごときマスコミのバッシング報道が続いた中にあって、ユーザーはこれらの報道に左右されることなく冷静に自分の考えを持っているあかしであると考えます。  次に、債務返済後の道路資産の在り方についてのユーザーの考えでありますが、およそ半分に近い四九%の方が国の資産とすることに賛成しております。残りの半分を、賛成できないということと、どちらか分からないということが二分しておる、つまり賛成できないとするのは四分の一でございますが、この四分の一の考えが那辺にあるかというのまでは調べておりません。  現在整備中の二千キロの見直しについてでございますが、現在整備中の二千キロのうち七百キロメートルについては国が直轄整備することになっているわけでございますが、これに道路財源が使われることとしたらどうなるかという問いに対して、この道路特定財源高速道路整備や一般道路債務に回すことについては、昨年の本委員会で本四公団の関連法案の中で申し上げさせていただきましたが、少なくとも個人の自動車ユーザーは、道路財源が事道路に使われる限り、その使途には比較的寛容でございます。  以上のアンケートを総括して述べますと、一つ目に、今後とも高速道路整備は必要であるということ。それから二つ目に、債務償還が終わった後、道路資産は国のものとしてもよいという考えでございます。それから三つ目に、整備中の七百キロメートルにつきましては、たとえ道路特定財源を投入してでも国が直接整備することを認めております。ということになって、これは私どもで考えていることとほとんど一致しておりました。  次に、高速道路整備の今後の在り方について述べさせていただきます。  現在、この整備中の中の七百キロメートルについて国の税金が、特定財源が使われることは認めているわけですが、国の税金でもって高速道路整備を行うこと自体は、最初の段階で申し上げましたように、ある意味では本来の姿であると評価できるものであります。これまで通行料金に偏って整備された高速道路に対して、税金による整備区間が加わることでその負担の低下を図ることを考えますと、道路整備のスピードはスローダウンが必要になった時期に来たのかなというふうにも思っております。  また、新たな民間会社は、政府保証による資金調達によって必要と思われる高速道路整備できることから、巷間止めどもない建設に拍車が掛かるのではないかという論評もございますが、幾つもの縛りが入っているとともに、何よりも四十五年後までに無料化という大変重い約束事が含まれておりますので、大丈夫だというふうに考えております。  最後に、道路はネットワーク形成によって初めて大きく機能を果たすものでありますから、利用台数を増やすためには、むしろ新たな整備が必要になる場合もある点を理解する必要があるというふうに私どもは思っております。また、そのためには、整備主体は利用者に対してその道路の将来の像などを示して、ネットワーク形成に対する理解を広く広報する必要があるというふうに思っております。寄せられた意見の中に明らかに誤解している点が多々見られたからであります。  最後に、誤解を恐れずに私自身の考えを申し上げますと、無駄な道路は私は一つもないというふうに思っております。もしそう言われる箇所があるとすれば、それは整備の順番の問題だというふうに思います。  高速道路についても、最初の供用開始からまだおおよそ四十年しかたっておりませんが、それでも急速な整備の結果、約八千五百五十キロメートルの高規格幹線道路整備を見るまでになりました。しかし、まだまだ全国を網羅するまでには至っておらず、今後ともユーザーの負担の低下を図りつつも、たとえこれまでよりスピードを落としてでも着実に整備を進めていく必要があるというふうに考えております。  作家、塩野七生先生のお言葉をおかりすれば、インフラストラクチャーくらい、それを成した民族の資質を現すものはないと言われております。百年先、二百年先を見通し、質の高いインフラストラクチャーを整備することによって、付加価値の高い国土から豊かな国民生活が創設され、世界に大きく貢献できる科学技術大国、文化大国が生まれるものというふうに私は信じております。  これで私の意見陳述を終わらせていただきます。  ありがとうございました。
  11. 輿石東

    委員長輿石東君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  12. 田村公平

    ○田村公平君 三人の参考人の方、今日は貴重な意見を聞かせていただきまして、ありがとうございます。  私、今お話をお伺いしながら、石川知事、危機管理のことをおっしゃいました。私は昭和二十二年生まれでありますけれども、前年に南海大地震がありまして、高知県も大変な目に遭いました。いまだに語り継がれておることであります。そして、堤参考人からはいわゆる汚職の問題、ファミリービジネスの問題、長い組合活動を通じての公団の在り方についてもいろんな驚きを感じながらお伺いをさせていただきました。また、林参考人におかれましては、私、子供のころを思い出しました。  私は、今でこそ町村合併をして名前は変わっておりますけれども、長岡郡久礼田村立久礼田小学校というところから、高知市内の中学校に通いました。十六キロの道を国道三十二号線、朝一番のバスが七時発であります。それで行っても八時半の始業時間に間に合いません。未舗装の道を雨の日も風の日も暑い日も自転車を、今みたいなスポーツカーじゃないものですから、一時間ぐらいこいで、それが国道でした。時たまぬかるみの中にわだちがはまり込んで、しょっちゅうではありませんけれども、転んだりしながら。それが今、南国インターから高知インターまで本当に十分で、高速道路ができて、そして一般国道も随分良くなりました。  そういう思いを持ちながら、実は四全総で一万四千キロの規格の高い高速道路網ネットワークができたらおれの田舎も少しは良くなるかな。例えば、高知県、遠洋漁業が盛んでありますけれども、静岡県の清水や焼津、用宗に本県の船が、マグロ船が随分入港しております。あるいは、関サバ、大変有名でありますけれども、足摺岬がある土佐清水市に清水サバという大変おいしいサバがあるんですが、何せ高速道路はないものですから、高知空港まで四時間掛かります。大体和歌山県も似たようなところであって、かつて私の同級生が、矢野君といいますけれども、道路課長で行っておって、高知と同じところやないうて言うとったのを覚えておりますが、その清水サバ、東京で食べたくても、四時間掛けて高知空港まで行って、一時間十五分飛行機に乗っけてこっちへ運んでも、とても鮮度がもちませんし、もちろん費用対効果のこともあって、全然有名ではありません。何とか有名にしたいなと思っています。  そういう私は地方に生まれ育った人間として、一万四千キロのネットワークができたらどれほどいい国になるかということをずっと期待し夢見てきて、今お三方の参考人の御意見を聞いておりまして、何でこの委員会で、何で民営化せぬといかぬのかな、小泉総理、ちょっと頭おかしいんじゃないかなというふうな、自民党ではありますが、気すらしながら、そんな思いを持っております。  そういうことを踏まえて、交通需要が少ない地方、高知県もそうですが、そういうネットワークとしての一万四千キロ体制、あるいはその危機管理のことを含めまして、あるいは私たちの田舎にはMRIとか立派な診断設備、高度医療を持った病院が非常に限られております。そういうところに、救命救急の観点からいっても、三時間、四時間掛けて行くよりは一時間で行けば助かる率も高い、三十分ならもっと高い、そういう思いをしておりますけれども、もう高速道路はこれ以上要らないかどうか、この民営化方式含めまして、それぞれの参考人方々から御意見をいただきたいと思います。
  13. 石川嘉延

    参考人石川嘉延君) 静岡県で考えてみましても、もう高速道路の必要性は非常に高いと思っております。  先ほどの陳述のときに中部横断自動車道の例を申し上げましたが、そのほかにも本県では愛知県寄りの三ヶ日、引佐という地区から道路を北上させまして、長野県の飯田の方まで三遠南信自動車道という高速自動車道、高規格自動車道の計画もございます。そしてまた、伊豆半島を南下する伊豆縦貫自動車というやはり高規格道路計画がございます。  こういう高規格道路はなぜ計画されたかというと、それを建設することによって道路のネットワークが全国規模のネットワークの中に組み入れられることによって、当然、地域交通円滑化が図れるばかりか、例えば救急医療という観点で考えても、現在、伊豆半島などでは高度な救急医療を受けようと思うと陸上交通では十分な救急医療が受けられないということから、非常に地域のニーズが高いわけです。そのためにドクターヘリの導入もいたしておりますけれども、このドクターヘリは主として日中の気象条件のいいときしか駄目で、ちょっと雨風が強くなると稼働しない、夜間も無理だというふうなことから、非常に救急医療の整備という観点でも問題があるわけであります。  そういたしますと、高速道路並びにそれを利用できる道路網が整備されてくると、救急医療の確保という観点でも地域住民にとって大変大きなメリットが発生しますし、加えて、伊豆半島を始めとして本県内のいわゆる過疎的な地域、中山間地域は他方で一大観光地であります。観光地も来遊客が安心して入り込んでくるためにはいざとなったときの緊急輸送、特に救急医療の場合ですね、それが確保できるかどうかということがこれからの入り込み人口の拡大にとって致命的に重要な要素になってまいります。  そういういろんな要素を考えていきますと、高速自動車道の整備は、既に東名自動車道整備をされて、まだ高速自動車道が開通していない地域からは第二東名自動車道は二巡目の道路という、ある意味では批判めいた指摘も受けるんですけれども、まだまだ高速道路の必要性は我々も現実に日常的に感じますし、ましてや、全国の高速道路ネットワークが完成することによって国土の効率性とかあるいは安心、安全の確保国民生活の安心、安全の確保という観点からも多大な効果が出てくるものと確信をしております。
  14. 堤和馬

    参考人堤和馬君) この問題、前回も森本先生がネットワーク論どうでしょうかということでお聞きになった問題だと思うんですが、この一万四千キロの高規格道、四全総で決まったもの、私はそのことについての国民的な合意はあるのかと。自民党の古賀誠道路調査会長は当時から、これは国民に約束したことだから絶対に約束を守るのが政治家の使命だというふうにおっしゃっておりますが、この一万四千キロの高規格道路建設していくということを知っている国民はどのぐらいいるでしょうか。私は、元々その全総計画ができてくる過程が非常に問題だと思っております。ほとんど国民的な議論がなされないうちに審議会等々で決まっていって、それがいつの間にか高速道路法律になって実施していく土台となっていく仕組みになっています。  今、民営化委員会などのいろんな議論の中で、国民的には高速道路の問題について非常に関心は高まったんだと思います。そういう意味では、ああいう委員会を作って、かなりいろいろ問題ありますけれども、議論をしたということはそれなりに意味があるだろう、そういうできてくる過程で国民的な合意があるもんでもないだろうと。  そしてまた、今まで四十年かかって高速道路整備をしてきて、約、その計画の半分相殺をしたと。そういう中で、今までどおりの仕組みの中では建設することが不可能になってきたということであれば、全体の計画見直していくのが筋だろうと。もちろん、最初から税金で建設するんだということが決まっていればそれは話は別ですが、料金収入、財投の金を使ってやってくるというのが道路公団仕事の在り方でした。そういう点からいえば、それができなくなったということであれば、その計画も含めてやり方を再検討し、いろいろ議論をしていくのが筋ではないかと。  それと、国の財政状態から見てどうなのかと、そして経済的な波及効果との関係でどうなのかと。公共事業のその波及力が弱まっているというのは政府の報告の中でも触れられているくらいです。しかも、モータリゼーションが今後どうなっていくのかということも国際的には様々議論がされるようになっています。  そういう点からいえば、最初から計画ありきではなくて、やはりもう少し今の段階で、このスピードで建設を進めていくことがどうなのかというふうに基本的な点に立ち返って議論をする必要があるのではないかと思います。
  15. 林広敏

    参考人林広敏君) 高速道路の今後の整備の在り方についても少し述べさせていただきましたが、もう少しユーザーから寄せられた意見の中身を見ますと、皆概して今後も必要だと言っているわけですが、自分のところはまだまだ必要であるというのがほとんどでございます。ただし、ほかには造らぬでいいだろうというのがあります。意見を発しているところを全部足しますと、全国皆自分のところのは要ると。しかし、マスコミの報道とかでクマが通るとかタヌキが通るとかいろいろ言われておりますが、そういったことで、ほかにはどうも無駄なところがあるらしいということを重ねて答えているように思われます。  私自身は、道路は人体に例えれば、言い尽くされてはおりますが、血管と同じだというふうに思っております。人体の隅々を血液が潤沢に流れて初めて健康な体が保てると同じように、大小合わせて動脈から静脈まで、あるいは毛細管まで含めて全国津々浦々に道路網がきっちりと敷かれて初めて日本国土の危機管理も、それから国民生活の安定も図られるんではないかというふうに思っておりますので、一万四千とかそういう話ではなくて、道路網というのは今後そのネットワーク形成のために鋭意やはり努力していく必要があろうかというふうに思っております。
  16. 田村公平

    ○田村公平君 私の高知県に初めて高速道路ができるその以前、計画が持ち上がったときに、当時、今のように米が生産過剰じゃなかったもんですから、むしろ旗が立って、自分の家に車もないのに金を払って乗る道路は要らぬといって随分反対運動が起きました。今、一車線車線の対面の真ん中にポール作っている、それがもう大変危ないんで何とか四車線にしてくれといって、本当に人間というのは好き勝手言うなと思って、むしろ旗立てて私のおやじをばかやろう呼ばわりして、先祖代々の田んぼ売ってたまるかといってわあわあ言っていたのが、今度は逆に四車線にせいといって、ああ、この政治という仕事も因果な稼業だなと、こういうふうに思っております。本来、公共事業とは何ぞやという私は信念を持っています。もうからないから公共事業であって。  実は、昭和四十六、七年に地元高知新聞の子会社が、高知県に龍河洞という鍾乳洞があります、空港から比較的近いところで山岳道路を自分で勝手に造りました。有料道路で民間が道路を造った。石油ショックがあってもうからぬようになった。それは地元紙は大変強力な政治力を持っていますよ。県知事に言って、それを買い上げろと。つまり、そのときに私は、ああ、なるほど人間というのは本当に浅ましい部分があるなと。もうかると思ったら自分で道路を造るんですよ。もうからぬと今度は県、国に買い上げてくれ。  私は、本来、公共事業というものはもうからないからやるんであって、もうけようというこの民営化議論。あるいは、国鉄が、我々、JR四国は島でありますが、北海道、九州、四国ははっきり言って大変厳しい経営、本州は大もうけしております。そういうことを考えたときに、この議論、本当にもうかる、もうからない。  そこで、今、利権の話も出ましたけれども、最後に堤参考人民営化してより不透明になっていくとかいう話もありますが、私自身意見もありますけれども、それを踏まえて、この民営化がもしこの法案通って成った場合に、もう一度その危惧だとか情報公開の問題、ちょっとお教えいただきたいと思います。
  17. 堤和馬

    参考人堤和馬君) 民営会社は、要するに特殊法人、独立行政法人の範疇に入らないわけですね。そうしますと、これはそれらの情報公開法というのがありますが、その対象にならないということになるわけです。  そういう意味では、今道路公団で資料請求をすれば、どういう政治家といつどこで飲み食いをしたかというような資料まで取ることができるわけですね。そういうものが出てこなくなるということは、非常に道路公団が持っているそういう癒着の体質といいますか、ということがあるわけですから、これは非常にこの情報公開法の対象にならないということは、そういうものが隠ぺいされるということになろうかと思います。  そして、官製談合防止法入札契約適正化法は、その法人に対して二分の一以上の出資金や補助金などを出していない限りは適用されないということになるわけですから、そういう面で今でも官製談合がまかり通っているというにもかかわらず、そういうものが何も改善をされないと。それどころか、要するにやり得になっていくということになるわけで、その中から政治家への献金だとかに使っているような会社もあるわけですから、そういうもの、政官業癒着の構造が隠ぺいされるということになって、この民営化は今の公団より更に悪いと私は思っております。
  18. 田村公平

    ○田村公平君 もっといろいろお伺いしたいことありますけれども、五分まででということなものですから、一分余り余して終わります。
  19. 大江康弘

    ○大江康弘君 おはようございます。民主党・新緑風会の大江康弘でございます。  今日は、それぞれお三方の御参考人には本当に御苦労さまでございます。とりわけ堤参考人林参考人、昨年も、少し触れられておりましたけれども、この場所で本四公団等の法案のときにもお越しもいただいて聞かせていただいたことを思い起こしておりました。  同時に、石川参考人、衆議院では秋田県と大分県の知事さんが参考人で御出席をされました。当参議院では、地方代表といいますか自治体代表ということで、石川知事さんが全国のそれぞれの地方自治体の総代表として今日はお越しをいただいたんでありますから、石川参考人の御意見が今後の地方の道路の在り方を占うと言ってもこれは過言ではないのかなと、そういう実は思いで、本来ならば石川参考人のような方が民営化委員会の中に入っていただいてどんどん地方の思いを言っていただいたらよかったわけでありますけれども、私も五十年地方に住む一人として、今日は少し個別にそれぞれ違う観点からお聞きをさせていただきたいと思いますが、まず石川参考人に。  参考人は、全国の高速道路建設協議会の会長もされておられるということで、随分この間の流れの中で御苦労も多かったと思います。しかし、今回、この政府案が出てくる過程を見まして、国鉄の改革というのはあれは三年掛けてやられたわけですね。今回これ一年余り、ですからまあ時間の長い短いということは、これは実際中身がどうかということでありますけれども。  いずれにしても、私は小泉政権というのはこの三位一体の流れを見ましても、この交付税が一二%、一三%近くカットをされるということは、これ十数年前に一けたカットがあったわけですね。こんなもう二けたもカットされるというようなことは、これは異常であります。しかも、御存じのように、補助金が一兆円もカットされる、しかし国から地方へはもう七千億弱しか入らないという、もう本当に地方にとっては今は全く大変な状況の中で、特にこの道路というのは、私はやはり国がしっかりと造って管理をすべきだという意見であります。  民主党の中でもいろいろ意見がありました。無料化という、これは後で林参考人にちょっと少し聞きたいなと思うんですけれども、これはやはり非常に無理があった話であります。受益者負担をどうするか、あるいはまた今までお金を払ってきたやつを急にゼロにする。確かにいいことですけれども、これは国民の方から見れば非常に非現実的に取られたということが、あの我々の民主党の無料化案、これは時間もなかったことも確かですけれども、アメリカの、あるいは欧米の道路の在り方を見ても、これはやはりそうあるべきであるという理想でありますけれども、やはり五十年後れておるこの日本道路状況を見れば、なかなかそこまで国民も我々もそんな意識に到達をしておらない。  こういうことの背景を考えてみたときに、やはり地方というのは、これからインフラの一番大事な部分のこの道路というものを、やっぱりこういう今の政府が考えておるような、この今回提案されておられるようなこんな法案の中身の中でのやり方で果たしてこれで地方はもつのかどうか。地方はこれで本当にそれぞれの県民や住民の皆さんの期待にこたえて、いろんなこの道路を使っていく中での地域の活性化というのをできていくのかどうか。ここらの部分法案の流れの中で、ちょっと石川参考人、感じられたことがあったら、ちょっとお聞かせをいただきたいと思います。
  20. 石川嘉延

    参考人石川嘉延君) 当初、道路公団民営化問題が提起されたときに、議論の焦点はもうからない道路はやらないと言わんばかりの議論、そういうものが沸騰しまして、これは私の県だけでなくて全国四十七県知事共通で、それはおかしいんじゃないかと、そんなことでこの高速道路問題を処理されたら困る、大問題だということで立ち上がりまして、その成果かどうかは分かりませんが、おかげさまで少なくとも今高速道路について整備計画対象になっている九千三百四十二キロについては、これは今回の民営化法案の中でも国の直轄道路直轄事業の投入も含めて、どうにかめどが立ったと。  加えて、この民営化問題の議論の発端になりました有料道路の累積債務、これの将来の償還可能性、これについても四十五兆円ということで歯止めが掛かるし、四十五年後に無料化するというような将来に向けての展望も明確になったということから、私は、今回の民営化法案をまとめる過程で固まってきた考え方、これ大変我々は安堵しているところでございます。  今後は、整備計画九千三百四十二キロは今までの整備スピードを落とすことなく整備をしてほしいと、これは強く要望しますし、また計画に、計画対象になっております累計で一万一千五百キロでしたか、これについても是非完成をするように、今後どれだけ直轄にシフトさせるか、これは今後の課題でもありますけれども、いずれにしても、そのような手法も組み合わせて、まずは国土交通幹線ネットワーク、これを完成に向けて国挙げて努力すべきだと。地方もその限りで応分の負担をやむなしということで新直轄制度の導入についても賛意を表しているところでございますので、そういうことを踏まえて、一日も早い国土幹線交通自動車道ネットワークの完成を切望しているというのが、これ、四十七県共通の認識でございます。
  21. 大江康弘

    ○大江康弘君 後で時間があればもう一点、ちょっと知事さん、石川参考人、聞かせていただきたいと思います。  二番目に、堤参考人。  私は、ある部分、もう参考人と全く同じ意見であります。  実は、私は地元は和歌山県でありますけれども、このいわゆる道路公団ファミリー企業もそうでありますけれども、いわゆる道路を造るということに対して地域というのは全く潤っていないんですね。道路が付けばいいわということであるんであれば付けてほしいということではあるんですけれども、例えば、今これだけ経済が低迷しておる中で、公共事業とは何ぞや。先ほど田村先生からもありましたけれども、いわゆる地域が本当に、税金を使うわけですから、いわゆる御飯を食べるはし一本までこれは地域が潤わなければ公共事業ではないということを私もずっと地方議会から言い続けてまいりました。それだけに、このファミリー企業がすべてその地域でやる工事のことまで吸い上げていく、道路公団が吸い上げていく、そういうやはりいろんな利権の構造ということも言われました。同時に、私は、ずっと今日まで作り上げてきた一つの既得権というもの、ですから、和歌山県でいっても、与党の力のある国会議員さんに頼まなきゃなかなか工事参加させてもらえぬわけですね。  ですから、果たしてこういうことが本当に地域を満遍なく潤わす公共事業の在り方かというと、私は決してそうではないと。それだけに、堤参考人のように絶えずそういう、持てる者のこのおかしな部分というものを言い続けてくれるということは、私は非常に感謝をしております。  それだけに、今回、私は、民営化になれば余計に我々国会も、国も関与しにくくなるんじゃないか。民営化、どれほどの民営化会社か我々はちょっとまだイメージがわかぬのですけれども、いわゆる国は民営化と言っている。じゃ、民間会社になったときに、それじゃ、地域仕事をさせてくれよと言ったって、いや、これはもうコストの面で、いや無理ですね、やっぱりと言って、余計に自分たちの身内の、ファミリーの、そういう形の中でいろんなことがやられていくのではないかという、逆にそういう危惧を持つんですけれども、ここらはどう思われますか。
  22. 堤和馬

    参考人堤和馬君) 道路公団工事に関してですが、非常に金額が張る十億円以上とかいうような工事はやはり官製談合といいますか、というような形でやられているようです。そして、大きな工事は、やっぱり大きな建設会社、中央のゼネコンさんだとかがやっぱり受注するような形にどうしてもなりますよね。  やはり小さな工事部分をいかに増やしていくかということが大事なんでしょうが、これも公団職員に聞きますと、技術的には細かく発注していくことはできるんですが、やはり人員的にそういうものが確保されていないととてもできないということもあります。そして、道路公団職員で長年、草創期からずっとやってきた職員などに聞きますと、明らかに最近の高速道路はそこに、地元に対する経済的な波及力が少なくなったというのは、やっぱりやっていての実感だというふうに言います。  今ある本で、構造デフレの時代とかという榊原先生の本もありますが、世界的ないろんな影響から構造的なデフレになっているというような分析ですが、そういうような時代にどういう形でやはり地域が発展をしていくのかということをよく検討した上で、高速道路でないとどうして駄目なのかと、一般の道路では何で駄目なのかというような議論をきっちりしていくことが大事なんではないかと思います。
  23. 大江康弘

    ○大江康弘君 ちょっとくどいようですけれども、この民営化法案が通って、これから三つに全国を分割して、取りあえず六つの会社で出発するわけですね。それをイメージをしたときに、もう一度聞きますけれども、今の道路公団で、ファミリー企業ががっちりとそこを固めて、そしていろんな利権やいろんなものを吸い上げていくという、これはいわゆるもう少し緩やかなものになって、もう少しその部分のたがが外れて、一部のものだけではないということになっていくのかどうか、もう一度ちょっとそれを。
  24. 堤和馬

    参考人堤和馬君) 分かりました。  せんだって、子会社の、ファミリー企業の役員をやっていらっしゃる方、若干お話聞いたんですが、そういう鉄のバリアといいますか、要するに、自分たちだけの共栄圏を作って利益を守れたのはつい数年前だと、数年前までだと。もう今は自分たちが独占的に受注したくても、公団仕事をダンピングをする業者が増えて、とても独占的に受注できるような状況ではなくなったというふうに言っておりました。  ということは、民営化の過程の中で、やっぱりそういうファミリー企業同士の株の持ち合いだとか、これも批判の対象になって、少しずつ解消されておりますけれども、そういうファミリー企業に独占されていたものはある程度分散させられるということになろうかと思います。  しかし、公団はそのファミリー企業を労務政策としてずっと使ってきているわけですね。職員の数を減らしたいと、早ければ四十五ぐらいからどんどん天下りさせたりファミリー企業行かせたり、そして本体の人件費を削減をしてきたわけですね。そういう点では、ファミリー企業は、これ民営化されれば更にそういう合理化の対象として、受皿としてなっていくことも間違いないので、今の段階ではどちらに推移するかというのはなかなか状況を見ないと分かりませんが、その両方の側面で使われていくということは変わりないだろうという感じがします。
  25. 大江康弘

    ○大江康弘君 ありがとうございました。  林参考人にお聞きをさせていただきたいと思います。  昨年、私は、日本人というのはまだまだ車社会というものにどうも順応できておらないのじゃないかということもお尋ねをさせていただきました。参考人は、マイカーという言葉が昭和三十九年に初めて出てきたということの中で日本の、先ほどもちょっと御意見を御開陳されましたけれども、やはり、まず海の船があって、そして鉄道があって、三番手に車、道路というものが来たから、これはそういう歴史の経過があるということを先ほどもお述べいただいて、去年もそういうようなお話も聞かせていただきましたけれども。  先ほどのこのアンケートを総じて申し上げれば、高速道路はまだ十分でないけれども無料化に早くして、民営化にはすべきでないけれども、国が管理をして、そのために、早く整備するのに道路の特定財源、税金を使ってもいいよというのがいわゆるユーザーの大体のお考えかなということをこのアンケートを見せていただいて感じたわけですけれども、今、国は道路の特定財源の一部をいわゆる地下鉄に使ったりとか、そういうちょっと我々から見て、理屈は立つんです、上の、この走っておる道路が込むからという。それじゃ、車やめて地下鉄に乗るかといったら、これはちょっと発想というのか、何か無理やり余ったお金を持っていっているようなことにも考えるわけですけれども、そのいわゆる道路特定財源というものに関して本当にユーザーの皆さんがしっかりと理解をして国に全権、全幅の信頼を与えておるのかという、この部分をちょっと一度お聞かせいただきたいと思います。
  26. 林広敏

    参考人林広敏君) 先生おっしゃいました、まず道路特定財源ということについてユーザーがしっかりと認識しているかという点でございますが、自動車に関連する税は昨年申し上げました九種類ございまして、そのうち六種類がいわゆる道路特定でございます。ほかにもありますので、一般のユーザー、多少研究されている方はお分かりですが、広く皆さんがどれが道路特定であって、いわゆるイヤマークされたものであって、あるいは片一方が一般税かというのは存じていないというふうに思います。  ただ、何となく自分たちの払っている税金が道路に使われておる間は、あるいはこれが例えば高速道路債務償還であろうと何であろうと、道路に使われている限りはやむを得ないというふうな納得の仕方だろうと思いますが、事、今、先生がおっしゃったような地下鉄となると大変だというふうに、はっきりと、もしそういう形で問えば、答えは出てくるんだろうというふうに思います。  ただ、今後、先ほど私は、若干高速道路も一般道路も税金で整備するとなると取り合いというか、配分の方法が問題になりますが、とても道路と懸け離れたところへ回すゆとりはなくなってくるのではないかと。是非、先生方においてもそういう議論でリードしていただきたいというふうに考えております。
  27. 大江康弘

    ○大江康弘君 もう少ししか時間がありません。石川参考人、ちょっと最後に。  私は、静岡県というのはすごく長い距離、高速道路を持っておるのかなと、随分東西に長いですから思っておったら、全国で十二番目なんですね、百八十六キロということで。しかし、やはりこの新道部分というものを静岡県がずっと守ってきていただいておりますから、まあ私個人なんでしょうけれども、そういう錯覚を実は覚えておったんですけれども。私も和歌山で、これ、南海、東南海、東海、どうなっていくのか、これから本当に、という心配をするんですけれども、本当に災害に対してどうしていくのかという部分、このことに関しての第二東名ということも言われましたけれども、もう一度最後に、本当に危機管理としての道路というのはどうあるのか、ちょっと簡単にお答えしていただきたいと思います。
  28. 石川嘉延

    参考人石川嘉延君) 今からもう七、八年前ですけれども、民間のあるシンクタンクが東海大地震で、警戒宣言制度ってありますね、あれが出ると東西交通を一応遮断する。特に、高速道路については、もう通行中の車両は最寄りのインターから全部一般道に下ろしてしまうんですね。それで、遮断するわけです。そういうことも含めて経済活動に大変大きな影響が出ますので、その際にどれぐらいの、何というか、損失ですね、経済活動停滞するか。それを一日八千億という推計を出しているんですね。これが絶対正しいかどうかは別にして、今日の日本の経済規模からいうとそういう被害が発生してもおかしくないなと感ずるわけですね。  そこで、これが、先ほど私も資料でお示ししましたように、本県の特に中部地域の由比というところが一番東西交通の難所でございます。ここを中心にもし交通路が遮断した場合、これは一時的な、警戒宣言による一時的な遮断じゃなくて、復旧までにちょっと計り知れないぐらいの時間、遮断するわけでありますから、もう日本経済に壊滅的な打撃が発生するというふうに考えておかにゃいかぬと思うんですね。  そういう点も考えますと、第二東名自動車道は内陸部に、山間地でありますけれども、今建設中で、これも十分に災害対策という観点の設計をした上で整備されておりますから、大変私は危険度が低くなる。加えて、特に今の本県のサッタ峠という由比町のところを通らないで、その西側から甲府の方、山梨県に向かって中部横断自動車道という、やはりこれも高速道路建設が行われております。これも中部山岳地帯ですけれども、尾根筋を通る非常に災害に強い道路になりますので、こういうものができてまいりますと代替輸送路の確保とか迂回路の確保という観点で多大な私は機能災害時に発揮すると、そういうふうに判断をしております。
  29. 大江康弘

    ○大江康弘君 ありがとうございました。
  30. 森本晃司

    ○森本晃司君 公明党の森本でございます。  三人の参考人の先生方、今日は大変ありがとうございます。また、先ほど来いろいろと御意見を開陳いただきまして、前回も私の考え方を申し上げ、またいろいろ御意見も聞かせていただいたところもあるかと思っておりますが、昨日も考え方を申し上げたんですが、前回と同様でございます、道路というのはつながってこそ、ネットワークがつながってこそ生きるものであるという考え方で九千三百四十二、これはやはりきちんとした実施をしなければならない。それから、いつまでも時間を掛けてやればいいものであるという考え方ではありません。コストダウンすべきものはコストダウンをして、そして技術開発を行って、スピードを上げて私はやはりやらなければならないという考え方であることを最初に申し上げさせていただきまして、道路と命を守るという意味で、昨日の参考人の中に相馬市長さんがおられまして、お医者さんでございました。救急用の、救急という立場から命を守ることの必要性で高速道路のお話を聞かせていただきました。  今日は石川知事がお見えいただいております。先ほど来、危機管理観点からいろいろと第二東名の必要性についてお話を伺いました。二〇〇四年の八月八日の日に私は静岡県へお邪魔をさせていただきました。そして、当時、第二東名が無駄だということで中止しろという声が相当ありまして、マスコミも静岡県の橋脚だけを映してこんな無駄なものがどうだこうだと言っていろいろ報道された時代でございましたけれども、私は直接その現場に寄せていただいて、それで、ちょうど知事はお留守だったんで鈴木副知事といろいろと懇談をさせていただく場がございました。また、公団の技術者の皆さんと現場で話しして、トンネルを掘る一つにしても、あるいは橋脚を造るに、橋げたを造るにしても、コストダウンを今こういう形で図っているんだというお話を伺いました。  その当時、既に費用として、アクセス、周りのアクセスで千八百億ほど静岡県としてはインターチェンジへのアクセス道路整備するためにつぎ込んでいるんだと。あるいは、もう今だと、今日のお話を聞くと二千二十三億円になっているわけでございますけれども、こういう状況で進んできた計画を単に無駄だということでストップした場合の静岡県はどうなりますか。ちょっと、知事さんにその考え方をお伺いさせていただきたいと思います。
  31. 石川嘉延

    参考人石川嘉延君) もう本県内は、第二東名自動車道は、用地買収は九九%完了し、工事着手には九二%の地域で進行中です。加えて、今、森本先生の方からお話しいただきましたように、県内に十一か所のインターチェンジが開設予定で、それとの、最寄りの地域とのアクセスを良くするための道路整備に二千二十億余の投資をして道路整備をしていると。  これ、こういう状態のところで全部やめになるということになりますと、もちろん今までの投資が無駄になるということであるばかりか、既に相当な構築物がまあ未完成の状態で存続するということになると、それが今後思わぬような地元に対して災害の原因にならないとも限りませんから、そういう面の後始末ですね、どういう維持管理をするのかちょっと想像も付きませんが。それから、撤去するのか、そのままに置いておくのか、いずれにしても無用の長物が静岡県内全線にわたって現出するわけでありますから、無駄は直接投資をしたお金以外に計り知れない、とにかく地域にとってもう大変多大なマイナス効果が発生することは間違いないわけです。  加えて、先ほども申し上げましたが、現在の東名道路そのものがもう設計容量をはるかに超えて交通が発生しておって、その結果、日常的に渋滞とか事故多発ということによって経済的なロスが頻発しているわけですね。恒常化しているわけです。したがって、これを放置すれば我が国の経済の円滑な運営に多大なマイナス効果になるわけでありますから、これもきちんと計測を、まだしていませんけれども、すれば、いずれにしても第二東名自動車道をやめるなんという愚かな決定がされるはずはないと信じながら今まで取り組んできたところでございます。
  32. 森本晃司

    ○森本晃司君 大変結構かと思います。  私は、第二東名は是非その危機の、今のもう飽和状態という意味と、もう一つは災害のときの危機を回避するという意味、それから、いろんな物流で、第二東名の、あの名神、雪の名神を今度は回避してということ、あそこがきれいに解消されたら、三重県のところですけれども、それだけでも経済効果は私は物すごく大きいと思うんです。  静岡県知事さんがいろいろと高速道路の責任者をやっていただいて、あるいは東名を主唱されるばかりに、私は大変なお気の毒な面もあるんじゃないかと思うんです。大体、あの静岡県内高速道路静岡の人が使うのは大体三割ぐらいですね。残り七割ぐらいは他の県がみんな通って、他の人たちが通っているわけです。だから、首長、知事さんが第二東名とおっしゃるたびに、何か静岡のことだけ考えているんじゃないかというその責めも受けながら頑張っていただいているんですが、決してそうではない。あそこは、あの道路をきちんとやるのは静岡のためだけではない。正に日本の国のために第二道路は、第二東名は私は必要だと思うんです。  先ほど来出ておりましたサッタ峠、あそこは、私はあの上に立ってみました、実際に。まあ景色は最高です。これは広重がいろいろと絵をかきたくなる、あの富士山の。だけれども、じいっとあそこで立っていまして、もしここに一発、ダイナマイト一発ですよ、あの地滑りのところに、仮に何らかの形で起きたら、私はもう日本じゅうが東西に分かれて、国道、JR、国道の上下、それから高速道路の上下、それから国道一号線、全部ストップしてしまいますね。  私はこの場をかりてお話を申し上げたいんですが、第二東名無駄やと言う人がおられたら、一回、是非あのサッタ峠の上でじいっともう一回考えてもらいたいと思うんです。果たしてそうなのか。ここに何か起きたときにそれを回避する道路がきちんとあってこそ安心して物流もあるしという考え方に立っているんですが、先ほど来、サッタ峠のことについて、由比の地域について知事さんいろいろと主張されておられますが、もう私はあそこに立って一番実感した。  もう一度知事さんの、あそこに何かが起きたときにどうなるのか、そのために第二東名は要るんだという考え方をお聞かせいただければと思います。
  33. 石川嘉延

    参考人石川嘉延君) 第二東名の重要性、そしてまたサッタ峠が致命的な箇所であると、安全確保観点から致命的な場所であるということについて森本先生の方からもう大変的確な御指摘いただきまして、誠にそのとおりでございます。  第二東名自動車道は、静岡県にとって大事であるばかりでなく、日本全体にとってここの東西交通円滑化というのがもう致命的に重要な場所だと思います。そのためにこそ、第二東名自動車道が構想され、また建設されなければならないと思いますし、ましてや、特に東海大地震という未曾有の事態の発生を考えた場合に、現在の東名、国一、そして東海道新幹線、東海道線、これだけに東西交通を依拠した場合にもう計り知れない損害、被害が発生すると。それを回避する上でも、この第二東名自動車道の果たす役割はもう非常に大きいというふうに思います。  したがって、私ども静岡県で第二東名自動車道建設の必要性を訴える場合に、当然、地域のことばかりではありません、日本全体の、口幅ったいようでありましたけれども、日本全体にとっても重要な意味があるということをもう再三にわたって述べてきたつもりでございましたし、森本先生のように、そのことをいち早くもう御理解をいただいてお述べいただいたことは大変我々としても有り難く、心強く思います。これからもそのような考えで我々も頑張ってまいりたいと思います。
  34. 森本晃司

    ○森本晃司君 私、先ほど二〇〇四年と申し上げました、あの視察に寄せていただいた、訂正いたします、二〇〇二年でございます。二〇〇二年に寄せていただきました。  是非、知事さん、日本のために、いろいろ言われても頑張ってください。もう私は、今日はもうむしろ石川知事を激励したいような思いでございます。  それからもう一つ、私は、第二東名と、それからサッタ峠の話のついでですが、中部横断道、これができるといろんな形で変わってくると、物流も全部変わってくるんじゃないかと思うんです。それから、あのちょうど下りたところに清水港がありますけれども、あの清水港、やっぱりすばらしい港ですから、更に生きるんじゃないかと思うんですが、この中部横断道路の持つ経済効果と清水港についてどのように考えておられるのか、お伺いします。
  35. 石川嘉延

    参考人石川嘉延君) 御指摘のとおりでございまして、この中部横断自動車道ができますと、東名、第二東名、そして中央道ですね、これがまず連結をされます。そのことによって、最低限連結されますし、更にこれが日本海、上越市まで延びる構想になっておりますから、こういうことになりますと、日本列島のちょうど中央部日本海と太平洋側が高速道路で結ばれて、北陸自動車道その他の、他の高速道路とのネットワークが完成すると。  こういうことになってまいりますと、清水の港は、長野県の諏訪地域とかあるいは甲府、そして北関東地域ですね、この地域がヒンターラントと考えられるような状態になりますから、そうしますと、今、日本の物流、海上物流の中で東京湾の物流が非常に立て込んで、これが何というのか、円滑な物流を阻害しているということが我が国にとって非常に大きな欠点になりつつありますけれども、その補完の意味東京湾の負荷を、海上物流の関係で負荷を清水へ転換することによって日本全体の海上物流機能の向上に大変多大な効果が出てくるというふうに思います。そういう意味でも、この第二東名自動車道とそして中部横断自動車道、この建設が急がれると思います。  私は、そういう全体の国土のネットワーク形成とそれの持つ経済政策的な観点からの意義、価値、これも私は、政府においてつとにそういう認識があるからこれに着手してもらっておったと思うのでありますので、是非滞りなく建設をすべきものであると。これを私も森本先生と同じように考えて、地域からいろいろ声を出しているところでございますので、今後とも御支援、御指導をお願いしたいと思います。
  36. 森本晃司

    ○森本晃司君 危機とそれから命という問題についてもお話をさせていただきました。だけれども、今、東名は、先ほど来の資料の中にあるように、事故数が非常にやっぱり多い。それを回避していかなければならないということでございますが、一挙に第二東名が明日にでもできるわけではありません。事故が起きたときの対応について、私は、知事さんと、それからいろいろとJAFさんも何かと御協力いただいておるんですが。  知事さん、ドクターヘリ、静岡県はお持ちでございますね。このドクターヘリを私は、この前、愛知で事故があったときに、ドクターヘリが高速道路に下りることができなかったんです。今、サービスエリアとかそういうところに、ドクターヘリはありますが、必ずしもサービスエリアの近くで起きるとは限らない。その場合に、事故が起きた先は車がすいていますね。その代わりに反対車線もヘリが下りるときは止めなきゃなりませんけれども、ドクターヘリが高速道路に下りることができたら相当急を要する人たちの命を救うことができるのではないかというふうに考えているんですが、知事さんとそれから林参考人のお話を聞かせていただければと思います。
  37. 石川嘉延

    参考人石川嘉延君) 第二東名自動車道の場合、たまたま本県内の第二東名自動車道は片側三車線計画で今まで進んできておりますから、当然、森本先生がおっしゃったように、事故の際に路面をヘリポートとして活用することは十分可能だと想像します。  加えて、十一か所あるサービスエリア、これは当然、東海地震も含めた防災用の基地として活用するという発想に立って今まで構想、進んで整備されておりますので、これが完成すると多大なそういう救急という点でも機能を発揮すると期待をしております。
  38. 林広敏

    参考人林広敏君) ドクターヘリにつきましては、たまたま私どもと友好関係にありますドイツの自動車クラブが、ADACと申しますが、ここが州政府の要請を受けて大変大規模に運航をやっておりますので、つぶさに私どもはそれを研究させていただいてはおりますが、いずれにしても、政府ないしは地方自治体がかなりのお金を負担しないことには運航できない仕組みで、我が国でいいますと、最近の省庁再編の結果は存じませんが、前のときでは十二省庁が全部絡むという許認可、いろんな仕組みの中で大変できにくいことで、いまだに一部でしか運航されていないということでございます。  実際に運航されております千葉にございます日本医大北総病院だったでしょうか、伺いまして、そこの先生から伺えば、ドラスチックに交通事故死者は減らせる、数千人のオーダーで減らせるとも申しております。  是非ともこれは今後取り入れていただきたいなというふうに思っておりますが、今、静岡県知事が申しましたように、高速道路に下りるというのはなかなか難しい。仮に路線が空いても、上に電線が通っていたりあるいは高圧線が通っていたりと、その辺のケアが日本ではまだできていないというふうに存じております。  今、ヘリポートという言葉がありましたが、ヘリポートというと、何かしょっちゅう離発着して頻繁に行き来があるために住民に対してうるさいんではないかと、いろんな疑念が生じているのも事実であります、東京都でございましたか。  アメリカの場合を見ますと、ヘリパッドと言っております。もう何の施設もなくて、ただ何かあったときはここに下りますよという、上空からアプローチできる障害のない空間を幾つも作っております。我が国の場合も、ヘリポートではなくて、何かあったら、そこに常時ヘリコプターが待機するのではなくて、何かあったら下りますよ、下りれますよ、下りますよというところが無数にあって、できれば大変有効になるんじゃないかと。高速道路も、整備する段階からそのつもりでやればできるのではないかなというふうに思っております。  以上でございます。
  39. 森本晃司

    ○森本晃司君 時間ですけれども、済みません、堤先生には、参考人にはちょっとファミリー企業の問題いろいろ教えていただきたいと思っておったんですが、時間がございませんので今日は失礼させていただきます。
  40. 富樫練三

    ○富樫練三君 日本共産党の富樫練三でございます。  三人の参考人の方には、大変お忙しいところ、今日はありがとうございます。  道路公団改革、そしてこの中心は民営化の是非、これが問われているというふうに思います。道路は必要なんだけれども、それが、今、政府が考えているようなすべて高速道路で必要なのか、あるいはその規格はどうかと、こういう点も含めて改めて検討が迫られているのではないかというふうに感じています。  そういう中で、私どもとしては、無駄な高速道路は造らないこと、二つ目に、四十兆円を超える累積債務、これは国民の負担に転嫁しないこと、そして三つ目に、政官業癒着をきちんと断ち切って国民が納得できる透明な道路行政が行われること、こういうことを提案してまいりました。  そういう中で、実は昨日、仙台で公聴会が開かれたわけでありますけれども、その中でも、例えば新直轄の在り方の問題、地方財政との関係の問題であるとか、あるいは中心市街地が疲弊している問題とこの道路行政の問題や、いわゆるストロー現象と言われる問題、こういう点についても大変貴重な御意見を伺ってまいりました。  私は、これらの幾つかある様々な問題の中で、特に今日は、国民道路行政に対して本当に信頼が寄せられる、そのためには、やはり重要な問題の一つである政官業癒着をしっかりと断ち切ること、これがどう民営化によって行われるのか、ここについて三人の方に伺いたいと思います。  最初に質問をさせていただきたいんですけれども、ファミリー企業でありますけれども、このファミリー企業の定義というのは、いわゆる具体的に言えば、公団が半分以上の資本を持っている会社、こういうことでありますけれども、百十六社あるというふうに言われています。このファミリー企業が様々な形で公団の発注する事業を行っているわけです。例えば料金の徴収が四十三社であるとか、あるいは保全の点検業務が二十六社であるとか維持修繕が二十一社であるとか、たくさんあります。公団民営化されることによってここが事実上なくなって公正な競争がしっかりと行われる、こういう環境ができるのではないかという期待が寄せられています。  ここは、今までの公団の方が、むしろそういう意味ではファミリー企業の育成をやめるには好都合だったのではないかというふうに私は感じているわけなんですけれども、公団でなかなかなくすことができなかったこのファミリー企業を今度公団民営化されることによってなくすというふうになるのかどうか、ここのところについて三人の方、それぞれ率直な御意見をお聞かせいただきたいと思います。
  41. 石川嘉延

    参考人石川嘉延君) 私は、公団ファミリー企業の実態について詳しく承知をしておりませんので、的確なお答えいたしかねますけれども、国鉄の民営化、この事態を考えてまいりますと、株式会社組織によって、株主の毎年毎年の経営内容のチェック、このために、例えばこの公団民営化の問題のときにも大変議論になりました財務諸表ですね、財務諸表が官庁会計方式から企業会計方式に切り替わってまいりますと、格段にその運営状況がまあ一般の方にもよく分かるような形で公開されると、そういうことを通じて、私は、いろいろその公社公団方式でやっていることに伴ういわゆる不透明な部分とか、問題だと指摘されているような事態は、私はもう飛躍的に解消されていくんじゃないかと、そういう私は期待を持っております。
  42. 堤和馬

    参考人堤和馬君) 道路公団の元々ファミリー企業というのはどうしてできたのか、どういうやり方を取ってきたのかということをまず最初に申し上げたいと思いますが、元々、道路公団法の中では、自らが出資をする子会社を設立できないことになっておりました。それはつい最近までそうだったと思いますが。それで、高速道路網がどんどんどんどん広がっていくに従って、本体の人員が抑制される。これは、公務員の定数削減、国家公務員の総定員法ってありますよね、それの見合いで、特殊法人にもそういう縛りが掛かって人員を増やせないと。そういう中で高速道路網が広がっていく、それを管理する部門として何らかの措置が必要になってくると。そういうことで、非常に悪いやり方といいますか、元々直接出資はできないわけですから、迂回をした形でそういう法人を作っていったというのが歴史なんです。  ファミリー企業社長さんやられた方などに聞きますと、これは元々公団がやっていた仕事をアウトソーシングしたものだから、何でそれが非難されるのかというふうに言っていらっしゃる方もいますが、やはり非常に不透明な形で子会社を作っていったと。そこに職員を合理化で四十五か五十ぐらいになるとどんどんどんどん人減らしで出していって、そこをそのためにかなり独占的に業務を受注をしていかなければいけないような体質を作っていったと。しかも、ファミリー企業ができたら、ファミリー企業同士で株の持ち合いをやって外からの参入を阻止するというようなことまで行われてきたと。だからこそ、そういう批判を受けてきたわけです。  ここ数年の間、ファミリー企業をめぐる様々な問題もいろいろな形で指摘をされて、やっと五、六年、七、八年ぐらい前からファミリー企業の資料なども公開をされるようになりました。元々資本関係がないということで、公団当局はなかなかファミリー企業だということを認めなかったということです。それがそういう形で公開をせざるを得なくなってきたというのは、やっぱり国民的な批判の力なんではないかと思います。そして、その実態が様々に明らかにされるにつれ、そういうやり方は好ましくないというふうになってきたんだと思います。  そして、今回、民営化でどうなっていくかという話でありますが、かつて民営化委員会議論されているときに、どこかのテレビ局で、諸井さん、地方分権の諸井太平洋セメントの会長さんでしたか、が言っておられましたが、そのファミリー企業の問題というのは民営化したら解決するんだというふうにおっしゃっております。それは、資本系列をきちっとして、更に合理化をして競争的な状況に置くということではないかというふうに思います。  確かにそういう面もあろうかと思いますが、NTTなどでやられているのは、その子会社を使って本体を合理化していくというやり方が取られております。この民営会社ができれば、更に職員の合理化が行われることは間違いありません。そういうためには、やはりその受皿が必要になってくるということになるわけです。そういう意味で、片方ではこういう独占的に利益を図るというようなことができなくなる側面もありながら、合理化の受皿としてのファミリー企業役割もあるという一種矛盾した形の状況になるんではないかなという感じがいたします。  この推移を見てみないと分かりませんが、そう簡単に今までやっていた職員天下りの問題をストップするとかいうことにはならないわけです。しかも、更に合理化するということになれば、当然何らかの受皿が必要になってくるということではないかなと思います。
  43. 林広敏

    参考人林広敏君) 私は、ユーザー団体として、ファミリー企業の実態等をよく存じているわけでは全くございませんので、詳しくは述べることはできませんが、国鉄がJRになる過程から見て、まあ過程というより、なった結果から道路公団の今後のあれを私なりに予測するわけでございますが、まず何より、国鉄が民営化されJRになったときに一番我々が分かったのは、非常に利用者の声を聞くようになったということで、利用者の声がストレートに反映されるようになった、これは大きいと思います。  卑近な例で申しますと、今のJR、どこの駅もほとんどトイレが大変美しくというか、きれいになりました。これはかつてと雲泥の差があろうかと思います。道路公団も、高速道路について今大変美化の方に努めているようでございますが、更に利用者の意見が通るようになるんではないかというふうに思っております。  それから、癒着というか、その構造でございますが、私は、ある友人から聞いたんですが、国鉄からJRになった後、ある大変大きな資材の発注でございますが、これが、まあ慣例的にある特定にずっと流れていたのが、やはりその慣例を打ち破って、いろんなところから入札を取って応札させてやった結果、極端に金額が、これはたしかディーゼル機関車のことではなかったかと思うんですが、ディーゼル車のことだったと思いますが、極端に下がったということで、今までなぜこんなことに気付かなかったんだろうというような声を出したのを聞いたことがございます。  やはり長い間、癒着というより慣習的に特定のところと結び付いている可能性がなきにしもあらずかなと思いますが、やはり民営化によって、民営化というのはある意味では合理の方へ流れますので、それによっていろんな経費の節減等、それからユーザーの声が届くようになるんではないかというふうに考えております。
  44. 富樫練三

    ○富樫練三君 ありがとうございました。  このいわゆる政官業癒着の問題の中に、大変深くその原因の一つになっていることにその天下りの問題があります。今まで公団からファミリー企業に対する天下りというのがかなり厳しく指摘をされて改善をされたと言われておりますけれども、しかしながら、例えば先ほどの百十六社のうち、改善された結果でも四十三人のファミリー企業社長さんは天下りだと。かつては九十七人もいたわけですから、八割以上が天下り社長だったけれども、改善されても三五%ぐらいはやっぱり社長さんは天下りと、こういう関係になっているわけですね。  公団の場合は、国の指導監督がある程度行き届きますから、こういう点が改善される可能性は非常に強いはずだったんですけれども、しかしながら現実はそうではなかったと。改善されたといっても三割以上が社長天下り。例えば社員の場合も、OBの方が二百二十九人も今でもファミリー企業の役員をやっていると、こういうことなわけです。公団の場合でもなかなかこれをなくすことができなかった、こういう状態だったわけですけれども、民営化になったらこれがなくなるのか、天下りはなくなるのかと、ここは国民が非常に関心を持って注目をしているところであります。こういうことが解決されなければ、そこが明確にならなければ、公団改革あるいは民営化というのは一体何だったのかと、こういう疑問も当然国民から寄せられると思います。  そこで、ファミリー企業に対する天下りはなくなるのかという点が一つと、もう一点。実は、総理が四月九日の衆議院の国土交通委員会でこういう答弁をしております。民営化した方がより透明になるんではないか、効率化が期待されるのではないかということで、民営化、決断したわけでありますので、民営化の段階におきましても適正な入札においていろいろな工事がなされるのは当然と私は思いますと、こう小泉総理が答弁をしております。ただ、先ほどの参考人のお話を伺いますと、例えば情報公開法の問題や、あるいは入札契約の適正化法あるいは談合防止法、こういう点から見ると、むしろ不透明になってしまうんではないかと、今までよりも不透明になるだろうと、こういう御指摘がございました。  総理の言っていることと正反対のことでありますけれども、この点で、公団の当時さえ透明にできなかったことが民営化されれば透明になるというこの総理の主張、これが果たして当てはまるものなのかどうか。ここについて三人の方の率直な御意見、余り時間がなくて恐縮ですけれども、端的にお聞かせいただきたいと思います。
  45. 石川嘉延

    参考人石川嘉延君) 私は、透明性とか効率性の問題は、公団民営化されて、少なくとも高速道路建設そのものが株式会社手法で行われることによって、当然この効率性といいますか採算性、これを最大限追求せざるを得なくなる、そういう仕組みになるわけですね。しかも、それを達成するために株式会社、株主総会というものも存在するし、またそこに出される財務諸表も今までの官庁会計式の大福帳式とは違う財務諸表が出てくるということから、結果がどうだったかということについて厳しく追及する度合いが今までよりももっとより明確に行われるんじゃないかと。そのことによって、私は、仮に行政機関に対する情報公開法が及ばなくても、そういう株式会社という存在そのものが効率性、透明性を追求する大変私は大きなてこになるという、これは国鉄の民営化あるいは電電公社の民営化、こういうものを通じて見ても期待できるというふうに私は思っております。
  46. 堤和馬

    参考人堤和馬君) 私は、最初にも申し上げましたように、これは最悪特殊法人改革だと、やはりそういうものは温存されるだろうというふうに思っているからです。  民営化して株式会社になると、株式会社から違う株式会社に移るのは天下りじゃなくて単なる再就職ということに見えるはずです。公団職員は元々天下り規制は受けておりませんが、株式会社から株式会社へ移るときに天下りという言葉はまずもって使わないわけですよね。だから、NTTから、NTTの子会社たくさんありますが、行っている人を天下りと言うかというと、余り指弾されませんよね、物すごい数の方が行っていたとしても。それはこの民営化という名前を使うマジックだと私は思っています。こういうことによって中身が隠ぺいされる。  ファミリー企業に行くのもそういう合理化との関係では温存される側面もありますでしょうし、ファミリー企業以外では、技術系の職員建設会社やコンサルタント会社や関連のそういう会社に再就職しているわけです。こちらの方もそういう形で温存をされていくということになると、正に情報公開法官製談合防止法入札契約適正化法などの適用を受けないということになれば、更にこれが野放しになって表に出てこないと。表に出てこないからなくなったというふうには本当は言えないはずです。これが民営化という名前を冠する小泉首相一流のマジックではないかというふうに思います。
  47. 林広敏

    参考人林広敏君) 私は、先生が御質問されたように、民営化によるいわゆる天下りはなくなるのかと。天下りという言葉が適切かどうかは別といたしまして、やはり移籍は起こるであろうということを考えております。ただ、それも、いわゆる公団におられたときのやり方とは恐らく変わるであろう。つまり、アウトソーシングされているような会社だとしましても、適切な人材が適切に送り込まれるようになるのではないかなというふうに思います。  と申しますのは、やはり公団とか役所というのは、これは言葉は悪うございますが、やってもやらなくても、まあ年次で徐々に上がっていくということで、むしろ勤労意欲のある人の意欲をそいでいる嫌いはあったのではないかなという気がいたしております。これがやはり適正な評価が行われるという民間会社の手法を取り入れますと、職員同士のやはり切磋琢磨が起こるし、それに応じた信賞必罰も当然行われるというふうに理解しております。その結果が、やはり利用者の声を聞いたり、いろんな形で現れてくるんだろうと思っております。  それを背景としますと、道路公団の方といえども大変な私は優秀な方々が非常な難関を通って入られていると思いますので、それが適切に働ける、自由に動ける場を作れば、それなりに威力を発揮するのではないかなというふうに思っております。これは国鉄の場合もやはり散見されたことだと思っております。  以上でございます。
  48. 富樫練三

    ○富樫練三君 ありがとうございました。終わります。
  49. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 社民党の渕上でございます。  三先生方、大変御苦労さまでございます。  今日ほど技術が発達をして、情報社会になってきて、非常に社会は発展をしてきたと思います。しかし、それほど社会が発展をしてきたにもかかわらず、国民の生活は本当に豊かになったと国民が実感しているかどうかというところが大きな問題ではないか。それはなぜかといえば、やはり私は、社会資本の不足というものが国民生活をより豊かに感じさせない一つの原因になっているのではないか。  とりわけ自動車社会になってきているというのは、国民生活をこれほど便利にしたものは私はないと思います。しかし、一方で、渋滞事故、公害という問題を考えると、マイナスの面があることもまた事実でございます。したがって、社会資本の充実ということが最も求められ、とりわけ自動車社会になっておきながら、道路政策というものの後れというものが私は今日のような状況を招いていると思うのであります。したがって、道路は、私は、税金できちっとやはり造っていくことが最も大事なことではないかというふうに思っています。特に、近代社会というものが、衣食住は私は大体事足りてきたし、交通という問題も、これを加えて初めて近代社会で生活をしていく上で、衣食住だけではなくて交通という問題を考えない限り、近代社会の中での生活というのはより充足されないのではないか、このように考えているわけです。  そこで、石川参考人にお伺いをいたしますが、経済の発展、それから災害の問題、事故の問題を中心にしながら高速道路問題の必要性について述べられておられましたけれども、私は、やはり地方から見て、東京の一極集中というものは非常に偏った我が国の発展になっているのではないかというふうに、見ているのではないかというふうに思うわけですが、そこで、やはり経済や災害事故のことを考えてみましたときに、地方の道路の充実こそは非常に重要なことではないかと。そのときに必要なことはやはり陸海空のバランスではないかというふうに思うんですね。  その点、とりわけ地方におられて道路行政を見ていく場合、道路公団民営化することだけで事足りるというふうには考えてはいないと思いますけれども、私はやはり危機管理面から見ても陸海空のバランスということは非常に重要なことだと思いますが、石川参考人はどのようにお考えなんでございましょうか。
  50. 石川嘉延

    参考人石川嘉延君) 社会資本について陸海空三次元でバランスを取って整備する必要があるということは私も全く同感でございます。  本県の場合に限って言えば、そういう観点から、港湾の大型コンテナ機能強化、そして第二東名自動車道は国の事業としてやっていただくということで積極的にこれに協力をし、かつそれをうまく利活用できるような道路体系の整備、これは県が主導で行っております。そしてまた、本県は空港、民間空港がありませんので、これを目下大車輪で整備をしているわけでございます。  こういう陸海空三次元にわたる社会資本整備をなぜやるかというと、これは、私たちなりにいろいろ分析をいたしますと、世界的な傾向として、そして我が国でも共通に見られますが、近代社会においてはそれぞれの交通機関による役割分担が明確になってまいっております。世界の物流の九割が重量ベースで海上輸送、そして陸上の、陸上というか、人の移動については、二百キロ前後、二百キロぐらいを境にして、それより短い距離は自動車、それを超えて五百キロぐらいまでの間、二百キロから五百キロぐらいまでの間は高速鉄道、それで五百キロを超えると航空機というような、大体役割分担がもう顕著になってきております。  そういうことを前提に、それぞれの地域がその持てる特色とか能力を大きいに発揮するためには、この三つの社会資本整備がそれぞれに機能できるように整備していく必要があるということは私どもも感じて取り組んでいるところでございます。
  51. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 次に、堤参考人にお伺いいたしますけれども、堤参考人のお話を聞いていて、これほどすぱっと世の中いけば大変いいだろうなというふうに思いながらもなかなかいかないところが大きな問題でございまして、いわゆる、言われましたように、行政改革というもの、同時にその行政改革を行っていく場合、最も大事なことは情報公開だというふうに言われました。  まさしくそのとおりであろうと思いますが、行革も私は改革半ば、情報公開も十分でない、なおそのときに道路公団民営化していこうと、こういうときに、私、問題になってくるのはやはり債務の四十兆円問題ではないかというふうに思うのでありますが、この四十兆円問題というものをどのように理解するかということは、この道路公団民営化するに当たって最も大事なことではないかと。  その債務が四十兆円出てきた理由と、その責任というものが大体どこにあるとお考えなのか、そしてこの四十兆円問題というものをだれが責任を取るべきだとお考えになっておりますか。以上、御質問申し上げます。
  52. 堤和馬

    参考人堤和馬君) この四十兆円の問題ですが、一番典型的なのは本州四国連絡橋公団ではなかったのかなと思います。道路公団もたくさん抱えておりますが、本州四国連絡橋公団は三兆八千億円赤字を抱えて、年間の収入が八百億円にも満たないというようなことになったと思います。  この特殊法人改革の中の重要な柱として、道路公団民営化問題が議論をされてきましたが、この本州四国連絡橋公団がなぜこのような状況に立ち入ったのかというようなことに対してのきっちりした歴史的な分析なり、そういうものがほとんどされていないと思うんです。特殊法人改革するといっても、特殊法人の破綻した法人があるにもかかわらず、そのことをきちっと分析をしないで次の対策が出てくるはずはないというふうに私は思っております。  中身を分析をしていけば、法人の中の様々な運営の仕方も重要な問題ですが、最初に計画があって、どんどんどんどん湯水のごとく予算を使って借金を重ねていくと。最後は、これ見ていますと、最後は国に面倒見てもらおうということしかないような解決の仕方なわけです。この中で、だれが責任を取られたかといえば、だれも責任を取っていません。そういう中で改革を進めるというのは非常におかしな話だと。やはり失敗したということであれば、その失敗の教訓に学ぶというのが改革の発端、最初でなければいけないはずなのに、ほとんどされていないと。  そういう意味で、中身的には少し違いますが、その道路公団の四十三兆円の借金についても、やはりなぜこれだけ膨らんだかということに対してのメスはほとんど入っていないと。そういう点では、この原因の一つは料金プール制にあるわけだと私は思っておりますが、そういう問題をやはり今度の改革の中できっちりと中身を変えていくということが必要だったのではないかと思っています。個別の路線採算性の問題など含めて、きちっと対応していくことが特に大事なのではないかというふうに思っています。
  53. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 それでは、最後に林参考人の方にお伺いをいたしますが、大変参考になるアンケートを取っていただきまして、大体国民が考えられている意向と余り変わらないのではないかというふうに思っております。  今後の道路公団整備の在り方というところで、参考人のお話によりますと、道路建設はやはり税できちっと造りなさいと、建設した後の運営、ソフトランディングだとかの、それらのいろんな費用の問題については通行料金でやっていく方がいいのではないかと、このように言われたと思うんでありますが、やはり四十五年たちましたら無料にしますと、このように言っていること自体、多少無理があるのではないかとお考えなのかどうか。  私も先生の考え方の方がいいと思うんですね。道路を造った後、必ず補修しなきゃならないと。その費用というのは再度また別なところから持ってくるんではなくて、やはり一定の通行料を負担をする中からちゃんと補修などきちっとやっていくということがやっぱり大事なことだろう。その費用については、やはり利用者が負担を、幾らか安い料金で負担をしていくという考え方には私は賛成なのでありますが、やはりそういう税で建設をしなさいという基本的な考え方の上に立って費用の負担はよかろうと、かなり、だからといって無料というのはそう考えなくてもいいのではないかというふうにお考えになっておられるのかどうかというふうに一つはお伺いをしたいと思います。  それから、今後の道路整備全体についてスローダウンしてもいいのではないか、必ずしも急いで造る必要はないのではないか。私も全国を回ってみまして、必ずしも四車線道路をきちっと造らなければならないのかどうなのかということは、少しやはり通行量全体から考えてみますと、かなり必要性のあるところについては、やはりそういうものを高規格道路でいかなきゃならないと考えますけれども、当座きちっとやるよりも、当面急いでやるべきところと、多少全体を完成していくためにはスローダウンでもいいのではないかというふうに考えられておられるようでありますが、これは一応計画全体を立てた上で二車線で取りあえず造ったら、後、四車線になる分については多少スローダウンしていいというふうに言っているのか。それとも、途中まではきちっと整備するが、それから先については徐々にでもいいのかというお考えなのかどうなのか。ここのところは恐らく地域住民等の考え方だとか利用する方だとでいろいろ意見違うと思うんですね。  私、九州だもんですから、とりわけ新幹線見ると西の方から造ってきていますから、これはもう絶対造らないかぬと、こうなってくるわけですよ。ああいうやり方でいこうとしているのか、ちょっとどういうことなのか、お考えお聞きしたいと思います。  以上でございます。
  54. 林広敏

    参考人林広敏君) 後の方の御質問から先にお答えさしていただきますと、私は、片側一車線で、いわゆる暫定一車ででも、スローダウンというのがそちらと結び付けては考えておりません。やはり私は、これは安全上の問題も含めまして、やはり地域住民の声もありますが、せっかく造るんであれば国策としてやはりフル規格で行われるべきだと。その整備スピードがやはりこれまでのように四十年間で八千五百キロ造るようなスピードにはならないだろうというふうに考えておりまして、あくまで高速道路はフル規格というふうに考えております。  それから、四十五年後の無料についてでございますが、私を始め多くの方がその時点ではもうここにというか世の中におられないのかもしれませんが、恐らくやある時点で大きな議論を国会挙げての議論になるのかもしれないというふうには思っております。それはそのときにやはり議論していただいて、本当に約束どおり無料にするのか、それともある程度の負担して安全を確保するための整備に充てるのかというふうなことを議論する必要があるんではないかなというふうに思っております。四十五年後までに無料にできるだろうということは、私は楽観的にそう思っております。  以上でございます。
  55. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 終わります。
  56. 輿石東

    委員長輿石東君) 以上で午前の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言お礼のごあいさつを申し上げます。  本日は、長時間にわたり有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表いたしまして厚く御礼申し上げます。ありがとうございました。(拍手)  午後一時三十分まで休憩いたします。    午後零時二十五分休憩      ─────・─────    午後一時三十九分開会
  57. 輿石東

    委員長輿石東君) ただいまから国土交通委員会を再開いたします。  休憩前に引き続き、高速道路株式会社法案独立行政法人日本高速道路保有債務返済機構法案日本道路公団等民営化に伴う道路関係法律整備等に関する法律案及び日本道路公団等民営化関係法施行法案、以上四案を一括して議題といたします。  午後は、四案審査のため、参考人として、ジャーナリスト櫻井よしこ君、早稲田大学商学部教授杉山雅洋君及び明治大学大学院グローバルビジネス研究科教授山口不二夫君の三名の方に御出席をいただいております。  この際、参考人方々に一言ごあいさつを申し上げます。  大変開会が遅れたことをまず冒頭おわびを申し上げます。  本日は、大変お忙しいところ委員会に御出席をいただきまして、誠にありがとうございます。  参考人方々から忌憚のない御意見を伺い、今後の審査参考にいたしたいと存じますので、よろしくお願い申し上げます。  本日の議事の進め方でございますが、櫻井参考人、杉山参考人、山口参考人の順序でお一人十五分程度意見をお述べいただき、その後、各委員質疑にお答えいただきたいと存じます。  なお、御発言の際はその都度委員長の許可を得ることとなっております。  また、参考人方々の御発言は着席のままで結構でございますが、質疑者は、慣例により、起立の上発言することとしておりますので、よろしくお願いいたします。  それでは、まず櫻井参考人にお願いいたします。櫻井参考人
  58. 櫻井よしこ

    参考人櫻井よしこ君) 櫻井よしこと申します。  私は、道路専門家でも会計の専門家でもございませんけれども、取材をする記者として、この道路公団関係改革の論議のプロセスをこの何年間か取材してまいりました。その結果感じることを率直に申し上げてみたいと思います。  鳴り物入りで成立をしようとしておりますこの道路関係公団民営化法案は、私は失敗であったというふうに考えております。  小泉首相は、構造改革をおっしゃり始めたときに、多分二つのことが念頭にあったのではないでしょうか。それは、合理的な判断を超えて非合理の次元で無駄な道路を借金をしながら造り続けていくということの点ですね。これは政治の介入を許してしまったということにあったと思います。もう一つは、それを支える、国民の目には見えないお金があったと思います。これは特別会計のお金のことでございますけれども、このような国民の目に見えないお金を使って、不合理な判断でもって借金を重ねて高速道路を造り続けることの問題を小泉総理は指摘をして、特殊法人のゼロベースでの見直しということをおっしゃったのではないでしょうか。なぜ特殊法人なのかといえば、この政官癒着介入及び国民の目に見えないお金によって支えられているのが特殊法人だと私は思うからです。  その小泉構造改革の先行事例として、道路関係公団民営化ということが言われました。日本道路公団一つ取ってみましても、今二十八兆円の借金がございます。なぜ返し切れないような借金を重ねてきたのかということを見てみますと、主に三つの理由が挙げられると思います。  それは、既に申し上げましたけれども、族議員及び官僚の介入の余地を残してきたために不必要な道路が造られたということですね。それから、プール制と呼ばれるどんぶり勘定の中で、どの道路が合理的な財政基盤の上に立っているのかどうかということが見えないで造られ続けてきたということがございます。もう一つは、民間にはなじみのない返済の方法で、お役所で使われる言葉に償還主義というのがございます。例えば今回の場合は、四十五年後に借金がゼロになるということですけれども、その返済のプロセスというものがほとんど明らかにされていない。つまり、ごまかしの利くこの償還主義があったわけでございまして、以上申し上げた三つの要素によって道路公団の現在の窮状というものが導き出されたと思います。  では、政府のこの法案の中で、今、以上申し上げました三つの要素がどれだけ直されているのかということを見なければならないわけですけれども、政治及び官僚の介入の余地を残すということは、いわゆる上下分離体制の中でそのまま担保されてしまいました。  上下分離というのは、保有・債務返済機構が四公団すべての資産及び債務を保有して返済を一括して行うということでございます。その上に六つの民営化会社ができますけれども、この民営会社には資産も借金もありません。そして、既にこの法案によって約二千キロの高速道路を造るということが決められているわけでございます。その費用は七・五兆円に収まるという計算でございますけれども、これがいかなる理由で民営化会社と言えるのでありましょうか。  民営化会社、小泉さんがおっしゃった民営化というのは株式上場ということを最終目的にしていたわけでございます。株式を上場してその株を市場に評価してもらえる会社というのは良い民営化会社でございます。自分で判断する、効率の良い経営をする、無駄を省く、必要な道路は造る、必要でないならば造らない、こういった判断を民営会社の自律的な判断によって行わなければならないわけですけれども、こうした大きな枠組みが既に作られているところに真の意味での民営化会社というのは存立し得ないと私は思います。  次に、プール制、どんぶり勘定でございますけれども、これは、日本道路公団を三つの会社に分けるのでどんぶりが小さな茶わんになったという議論民営化委員の中からも生まれてきておりますけれども、これは全くの間違いでございます。プール制は現在のプール制よりもかえって大きくなります。それは、現在は日本道路公団高速道路だけを一つのプールにするという意味でのどんぶり勘定でございますけれども、今回できる保有・債務返済機構は、日本道路公団高速道路のみならず、一般有料道路も引き受けます。加えて、阪神高速公団の資産及び債務、首都高速公団の資産及び債務本州四国連絡橋公団の資産及び債務も併せて引き受け、それらすべての債務、四十兆円を一括して保有・債務返済機構返済するわけですから、プール制は、拡大はされますけれども縮小はされません。  ですから、一本一本の道路が収支が合っているのかいないのかということを示すことにつながるいわゆる事業別の口座というものを作らなければならないわけですが、それがない。その上にプールが拡大するということで、このどんぶり勘定の弊害は更に拡大されていくだろうと私は考えます。  そして、もう一つの欠点でありました償還主義ですけれども、これは、民営化委員会で二〇〇二年十二月に出しました意見書では、元利均等、長期固定の返済方式ということを書き込んでおりましたけれども、政府案にはこの元利均等、長期固定という言葉が抜けております。そして、四十五年後に返済、借金をゼロにして、この償還、つまり返済が終わった段階で無料開放するというふうに書かれております。となれば、償還主義は、あしき償還主義はそのまま残ることになったわけです。  こうして見ますと、民営化委員会の当初の目的は、借金をこれ以上重ねて無駄な高速道路は造らないようにしましょうという目標があったわけですけれども、終わってみれば、政府保証によって借金をこれからも重ね、無駄かどうかの議論は既に行う余地もなく、二千キロの道路をとにかく造り続けるという仕組みになってしまいました。これでは、この結果できる会社民営化会社ではありませんし、この結果導き出される法案は、改善ではなく改悪だと私は感じます。  取材して感じたことは以上のとおりでございますけれども、この法案の成立過程を見ますと、私は、余りにも多くの偽りと背信と誤った情報が国民に対して与えられてきた。このような民主主義の根本に反するような議論の中で、情報操作の中で生まれてきた民営化法案を我が国の国会がこのまま許すとしたら、私はこれは後世に残る汚点であろうかというふうに感じております。  今日、私は参考人としてこちらに参りました。客観的に考えれば、私がここでいかなる意見を述べようとも、この法案が成立するという大きな流れは変えようもないということは当然判断できます。しかし、取材をして現場を見て多くの人々の意見を聞いて様々な資料を集めてそれなりに分析してきた一人のジャーナリストとして、私はこの国会の場において、私が見てきた真実と私が感じることを正直にそのまま記録に残したいと思います。  この道路公団改革は、二年若しくは三年のうちにも失敗が明らかになる事案だと私は感じております。そのときに、議員の皆様方がどのような良心を持って、どのような信念を持ってそのときに御自分のお立場を説明なさるのか、これは今日ただいま問題が終わってしまったから良いということではなく、この国の将来を考えるときに国民を代表する政治家としての皆さん方にもよく考えていただきたい問題だと思って、私は証人としての出席を了承いたしました。  以上でございます。
  59. 輿石東

    委員長輿石東君) ありがとうございました。  次に、杉山参考人にお願いいたします。杉山参考人
  60. 杉山雅洋

    参考人(杉山雅洋君) 早稲田大学の杉山と申します。  道路政策を論ずるに当たりまして、目下、社会的に大きな関心事となっております高速道路は、国民にとってドア・ツー・ドア・サービスを実現し得る極めて貴重な社会資本であるということの基本認識をまずしておきたいと思います。  社会資本の特徴といたしまして、採算性には長期的な視点が必要とされること、規模効果、ネットワーク効果が大きいこと、したがってリスク発生の可能性が回避しにくいこと、市場原理による採算計算では評価され得ない外部経済効果が存在することが指摘されております。高速道路整備には、これらの特徴を踏まえた対応が必要と考えます。短期的視点では適切な対応がなされ得ない高速道路について、国民にとって将来に禍根を残さないように政策論を展開しておくことが重要だと考えています。  私は、高速道路政策を樹立するに当たりまして、我が国高速道路ネットワークを量的、質的にどのように整備すべきかの政策理念を論じ、そこで導き出されたネットワークを確保する上で、整備手法として、有料道路方式、公共事業方式、合併施工方式等をどう活用していくのか、その上で、整備された高速道路を効率的に運営するためにはいかなる方法が好ましいのかといった順序で検討することが必要だと考えています。  この点で、民営化推進委員会は、設置法で道路関係公団に代わる民営化を前提とした新たな組織及びその採算性確保に関する事項について調査審議し、内閣総理大臣に意見を述べると規定されたことから、政策論議の視点を狭められたと考えております。  現在、審議されております道路関係公団民営化関係の四法案は、昨年十二月二十二日にまとめられました政府・与党申合せの基本的枠組みをベースとしておりますので、同枠組みに沿って意見を述べさせていただきます。  以下はレジュメの3から8に対応いたします。  民営化の目的では、民間にできることは民間にゆだねるとの基本原則に基づき三点が示されております。この三点には異論はありませんが、冒頭申し上げましたように、私自身はこの前に政策理念が論じられるべきであったと考えております。  民営化に向けた有料道路の対象事業費の見直しでは、九千三百四十二キロの扱いが所与のものでなく、いわゆる中村基準による見直しが行われるとされており、そこには路線採択の厳密性が期待できると思われます。ただし、ネットワークとしての一万一千五百二十キロ、九千三百四十二キロの整備理念は常に新しい目で検証していく必要があるものと考えます。  その点で、新直轄方式の導入は負担を伴う地域の声を反映することになりますので、無料区間と有料区間が併存するという料金面での整合性の問題を別にすれば評価できると判断いたします。  また、事業費の半減、管理費の平成十四年度比で三割縮減は民営化により実現され得るもので、大変結構なことだと考えます。その際、長期的な資産の劣化を招かず、安全性の確保など、サービスの質が損なわれないような対応が必要とされるのは言うまでもありません。  新たな組織とその役割に関してですが、新たな組織としての会社機構のいわゆる上下分離方式、私は、これを狭義の上下分離方式と呼んだ方が世間では誤解がないんではなかろうかと考えておりますが、この上下分離方式が議論を呼んでおります。  英国のレールトラック社の経営破綻が上下分離の失敗例だとの指摘もありますが、英国政府は、同社が利潤を重視した余りの投資不足のための破綻との見解を示しておりますことから、上下分離方式が即問題ありとするのは短絡的だと考えます。私は、上下の連携をスムーズにすれば、上下分離方式にはそれなりの意義があると考えています。  上である会社が資産の保有、買取りをしないのは、地域独占となる可能性の高い高速道路の私有は適切ではない、償還後無料開放の大原則から、本来管理者に直接移管した方が自然であるという点から妥当だと考えます。下である機構債務返済への懸念が寄せられておりますが、民営化から四十五年後の債務完済が明記されておりますこと、これは機構法でございますが、さらに有利子は高速国道、本四関係分は非拡大とされておりますことから、歯止め処置が講じられていると解釈されます。  また、機構の解散が民営化推進委員会の提唱とは異なっておりますが、さきに述べました会社道路資産保有問題、現行の固定資産税の非課税処置の扱いからすれば、債務完済時の方が適切だと考えます。  会社が、道路管理、料金徴収だけでなく、道路建設を行い、完成後、機構債務を移管することによる問題点も指摘されておりますが、債務会社機構を通じて返済するのと同じスキームとされておりますので、上下の連携は保てると判断されます。新規建設には会社の自主性が尊重されること、その資金調達は自己調達であることもその裏付けと考えられます。  会社の三分割、これはJH系についてでございますが、三分割に関しては会社相互間のヤードスティック競争が期待できるという点で評価できると考えます。ただし、どのような地域区分が適切なのかは、客観的な経営シミュレーション分析を参考にすべきではないでしょうか。  機構高速道路債務を三社一体として管理することについては、三社の置かれた市場条件の収益力の差を考えるとやむを得ないと考えます。このような方式には問題点ばかりではなく利点のあることも忘れてはならないことを指摘しておきたいと思います。実際問題として、鉄道における新幹線リース方式での線路使用料、新幹線資産の売却料にも収益力調整といった方法は取られております。  料金の性格とその水準では、貸付料と維持管理費から成る料金には利潤は含めないとされております。この点では、通常の公益事業の料金のケースとは様相を異にいたします。独立行政法人である機構が保有する道路資産は国民共有の財産であり、料金は債務償還のための原資となるものとの位置付けからすれば理解し得るものです。会社企業努力が利益損失に反映させる仕組みが具体的に用意されるのであれば、民営化の視点にも合致すると考えてよいと判断いたします。  高速道路料金の一割引下げ、別納割引制度廃止を踏まえた更なる引下げは、利用者にとっては好ましいことですが、高速道路サービスの性格を勘案し、民営に移行する会社が社会的便益の最大化を目指すとの観点で、多様な料金政策を行うことによってこのことを着実に実現することを大いに期待いたします。  一般論として、需要の料金弾力性の議論がありますが、基本料金の一律一割引下げではないといった工夫で対応可能であると考えます。そのため、平均一割の料金引下げによっても四十五年償還が可能となる仕組みを用意することが重要です。  建設管理、料金徴収では何より会社の自主性が問われますが、従来の国からの一方的命令の枠組みの廃止、複数協議制、社会資本整備審議会の判断の導入といった仕組みが用意されていますので、民営化の趣旨が損なわれないと考えます。  なお、繰り返しになりますが、高速道路地域独占となる可能性が否定できませんので、他の公益事業にも見られるように、利用者保護の観点から国の最小限の関与は必要だと判断いたします。  建設費調達の社債に政府保証を付けることが民営化にそぐわないとの批判がございますが、市場の評価が安定するまでの期間は、事業費上昇による国民負担の増加を防ぐという点で政府保証には意義があると考えるべきでありましょう。現実には、期間の差はございますが、JR、成田空港、中部空港、関西空港でも政府保証は付けられております。役員選任等の認可、株式の政府保有割合は他の公益事業と比べると最小限であることが確認されます。  承継する資産、債務の内容につきましては、道路資産を機構が承継すること、SA、PAを会社が承継することになっておりますが、これまでの経緯から見て妥当だと判断いたします。会社の保有となりますSA、PAが堅実に収益増をもたらすことを期待いたします。  以上のことから判断いたしまして、私なりの付言はございますが、道路関係公団民営化法案には賛成であるというのが私の考え方です。  以上です。
  61. 輿石東

    委員長輿石東君) ありがとうございました。  次に、山口参考人にお願いいたします。山口参考人
  62. 山口不二夫

    参考人山口不二夫君) 明治大学大学院グローバルビジネス研究科の山口です。  私は、公会計を含む会計と経営分析の専門家です。本日は、道路公団の現在の財務状況と将来の収益力、さらに債務返済可能性について意見を述べさせていただきます。  まず、道路公団の現在の概要を簡単に述べ、そして分析対象についてお話をさせていただきます。  本四連絡橋公団については、現在、債務超過であり、過大な利子負担で独立はなかなか難しいところでございます。今後も追加支援の可能性が非常に高いと考えられます。阪神高速道路公団についてはかなり厳しい状況でして、ただし、本四公団ほどではありません。これらについては詳細な分析は今回は避けさせていただきます。今回は、これらに比べて規模が大きくて、そして今後更に路線拡大の可能性の高い日本道路公団を中心に意見を述べさせていただきたいと思っております。  なお、今話し忘れました首都高速公団については恐らく独立は可能であるというふうに考えられます。  さて、的を絞ります、日本道路公団の財務状況についてですけれども、道路公団については数種類の財務諸表があることが知られております。一つは、現行方式である償還準備金方式、そして民間並みの財務諸表、そして民間並みでも連結のもの、そして幻の財務諸表といったものも知られております。  よく問題にされるのは、これらのうちどの財務諸表が正しいのかということですけれども、結論を申し上げますと、会計理論的にはどれもあり得るということです。結局、出資者の意図が何であるかと。使い切りであるのか、維持更新を期待するのか、そして資産の実体というものをどう考えるのか、耐用年数はどうであるのか、永久資産なのかどうかと。ということで、会計方式が違うということは十分あり得るわけです。  では、問題は何かといいますと、経済実態との乖離が財務諸表の中にあるんじゃないかということが実は問題でして、それのことを我々は通常、粉飾と言っております。現行方式での粉飾の可能性というのは、実は財務諸表に記載されている道路資産に実体が伴うのかということです。それは、既に譲渡されたものが載っているであるとか、そして実際は価値が非常に減価されたものがそのまま載っているかなどということです。  ただし、民間企業並みでも粉飾というのは可能性は残されております。それは、減価償却率であるとか耐用年数であるとか、そして減価償却の方法が実態に即したものであるかどうか、適正なものであるかどうかという点です。また、もう一つは、道路の更新費が過大ではないか、また過小ではないか、若しくは道路更新費自体が資産に算入されているのではないかという可能性です。  じゃ、本当に粉飾はないかどうかについては、実体は分かりません。実は、それはここに一つ問題あるんですが、やはり公団の会計ということに問題があったのではないかという気がいたします。それが国鉄改革のときとは少し違う点でして、国鉄改革では、会計担当者と会計の責任者というのは非常に誇りを持って、そこでは議論のたたき台というものがあり、分割民営化に際しては国鉄の出した資料の下での検討というのがきちんと行われることができたと。そこがちょっと違うところでございます。  では、これらの財務諸表というのに粉飾がある、若しくは実体が分からないというときに分析ができないかといいますと、そうとも言えません。というのは、現在重要なのは、実はその公団の将来の収益力というのが実は重要なわけです。そうすると、その分析のためには、現在、我々はキャッシュフロー計算書というのを重視しております。これは資産の実体が明らかでないときに有用な分析方法であります。そして、現在のキャッシュフローというのは将来も続く可能性が高いデータでありますので、将来予測に十分使うことも可能です。  平成十四年度の日本道路公団では、実は豊富な営業キャッシュフローを生み出しております。特に、利子を支払う前の営業キャッシュフロー、本業のキャッシュフローですね、これは一・七兆円に上り、大変にすばらしい金額でございます。しかし、一方で非常に重い利子負担を負っております。五年前で九千億円、現在は六千億円です。結果として営業キャッシュフローは、利子負担を除きますと約一兆円ですね。それに対して、投資キャッシュフローはマイナス一・三兆円。これはほとんど新規建設でございます。そして、財務キャッシュフロー、これは新たに資金を調達するということです。それは三千億円以上ということです。  つまり、豊富な営業キャッシュフローを全部新規の投資につぎ込んでいて、それでまだ足りないので新たに財務的に調達しているという状態でございます。このような営業キャッシュフローを超えて新規投資を行うということは民間企業では異常な状況でございます。  では、どうしたらそういう状況が許されるのかといいますと、それは、唯一許される状態は、非常に有利な投資先があるという場合にはこのような投資行動というのも許される。つまり、有利な投資ならばこのような財務行動は十分納得できるところでございます。しかし、現在建設中あるいは今後建設される道路の投資というのは非常に採算性が低いものであるとすると、今後、公団経営の足を引っ張るおそれというのは十分あると考えられます。  それでは、将来のキャッシュフロー、そして収益の方向性をもう少し探ってみます。そのためには損益計算書を見ていくことが重要です。  実は、日本道路公団経営は、償還準備金繰入れ前の利益で見ますと、この六年間、非常に安定しているように見えますが、その内実に実は変化が生じています。金利負担で見ると、この五年間、大幅に減少しています。先ほど申し上げたように、九千億円台から六千億円台へ下がっております。これは低金利というのが反映しているわけです。実は、一方で業務収入は減少傾向であり、利子負担前の業務利益というのは確実に減少しているわけです。つまり、道路公団の利益が安定的であるというのは、ここ何年間かは利子負担が減少しているということが背景にあり、本業の方では業績悪化の兆しがもう見え始めているということなわけです。つまり、交通需要の減退と不採算道路増加のツケがもう既に回ってきているということです。  もう一つ、将来キャッシュフローの予測として使いますものが道路別の収支状況の表でございます。これはもう広くインターネットその他で公開されております。その表を検討いたしますと、大都市圏を除いては昭和六十年代以降の開通線は収支率が一〇〇%以上、つまり採算は取れていないということでございます。逆に言うと、もうかる路線大都市圏か昭和六十年以前の開通路線です。ということは、今後建設される地方路線の収支率は非常に高い、つまり赤字は必至であるということです。  これまではプール制によって超優良、優良路線が不採算路線を支えてきました。超優良路線は二〇%、三〇%の収支率ですので、極端に言うと五分の一の料金に下げても平気だと、そういうような超優良路線がたくさんあったわけです。今後どこまでその超優良路線が不採算路線を支えることができるかと。つまり、今公団経営は曲がり角に来ているのではないかというのが私の意見でございます。  さて、道路公団債務返済については、既に四月の九日に国土交通省から道路関係公団債務返済イメージの試算例という書類が公表されております。この書類については私の資料で添付させていただきました。ちょっと読みにくいものではございますが、お許しください。  これを検討いたしますと、まずこの試算例の機構の方ですと、債務返済はほとんど後半に行われております。つまり四十五年で返済するということですね。最初の十八年では五兆円しか返済できませんが、後半では三年で五兆円を返済しております。この理由は、十六年間の追加建設の行う期間には実は実質的に返済ができないということです。そのために幾つかのからくりを作ってありまして、初期は非常に低い金利でむしろ出資を増やしているということです。  恐らくこの出資というのは金利が付かないお金ですので、金利の付かない資金を増やして建設を初期では行っていこう、そうしないと実は返済どころか債務がどんどん増えていってしまう、そうすると表の上で非常にイメージが悪いという考えがこの作成者にはあったんだろうと思います。つまり逆に、追加建設を行わなければずっと早く、私の試算では恐らく十年から二十年の間ぐらいですね、つまり追加出資額を幾らにするかによってこれが違ってくるんですが、十年から二十年早く返済ができるだろうと思います。ただし、この返済というのは、次のように、会社の方、六会社の将来の収益試算予測が正しい場合でございます。  この資料での次のページの収益試算予測でございますけれども、ここでは、まず特徴としまして料金収入が二十年程度増加を仮定しているということですね。実は、もう既に、路線は、距離数は増えていますが、減少傾向がもうもはや見えているのでございます。実は、ここ数年収益は停滞、減少傾向にある、しかも新規建設は、低採算路線が多いところから収益は増えない、支出ばかり増える可能性というのが極めて高いということです。  もう一つの問題点は、更新経費、道路の更新経費、道路は四十兆から五十兆円あるわけですが、毎年一千億円しか見積もっていない点でございます。道路の維持管理をこのような僅少な金額で可能であるのかというのは非常に疑わしいところでございます。つまり、資産の実質減価が進んでいる場合、高額の維持更新経費が今後必要になる。つまり支出の増える可能性が非常に高いだろうということです。  しかも、ここでの私の分析では日本道路公団を中心にしてまいりましたが、実はそのほかに本四架橋の公団があります。そちらの方は恐らく橋、そして海という性質上、維持更新経費というのが膨大に掛かる可能性があり、それらの支出の増加を見ますと、このような返済計画というのは非常に難しいのではないかと。  結論としましては、例示のように、例示というのは実は最も楽観的において債務返済ができると。実は常識的に考えると無理なのではないかと。今後、本四架橋に追加の支援が必要な可能性を考えると、状況は更に悪く、会社はリース料の支払ができなくなり、機構債務返済が行えなく、その分国民の負担が更に発生する可能性が非常に高いと思われます。  そもそも債務返済というのはなぜ必要なんでしょうか。コーポレートガバナンス、つまり企業をきちんと監督するという観点からは、むしろ債権者や投資家がいて監視した方が効率的な経営が行えるはずです。私は、高速道路は受益者負担、永久有料制、そして債務をむしろ残す、若しくは資本を残した方がいいのではないかと考えております。資本調達や借金は、むしろ健全な経営を行い配当と利息を支払っている限りにおいては資金を生かすことであり、社会的にむしろ貢献していることでございます。  債務償還原則による楽観的な机上の空論よりも、実現が十分可能であり、組織の行動の指針となるような永久有料制の方が社会的に有用な組織となるのではないかというのが私の意見でございます。
  63. 輿石東

    委員長輿石東君) ありがとうございました。  以上で参考人からの意見の聴取は終わりました。  これより参考人に対する質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言願います。
  64. 藤野公孝

    ○藤野公孝君 自由民主党の藤野公孝でございます。  櫻井先生、杉山先生、山口先生、三参考人方々には、本当に貴重な御意見を一生懸命自分の言葉でしゃべっていただきまして、語っていただきまして、私、感銘をもって聞いておりましたが、誠にありがとうございます。  二十分という時間を与えられておりますが、考えようによっては大変短い時間でございます。質問によってそれぞれ御回答いただく方を変えていくというのもなかなかあれなので、お三方に、一々申しませんけれども、お三方にそれぞれの質問について手短に御意見なり御感想を伺いたいと思いますので、よろしくお願い申し上げます。  私は、いろんな御意見法案審議の中も含め、あるいは昨日、仙台で地方公聴会、行ってまいりました。地方の首長さん、あるいは道路建設に今環境面等でいろいろ問題提起されている方も含め、幅広く御意見を伺ってきたわけでございますけれども、しかし総じて、やはり地方の高速道路、もちろん中心とした話でございますけれども、道路に対する、やはり造ってほしいという気持ちは大変強いものがございますし、道路というものが本当に地域の発展、二十一世紀の国の形を考えるときに必要不可欠な国の一つの枠組みとしてまだ大変熱い期待を持たせているものだということを痛感したわけでございます。  しかし、幾ら道路が必要であり、造らなきゃいけないといっても、現状の公団方式を今後、じゃ続けていいのかという話になりますと、先ほどの先生方のお話の中にもありますように、膨大な債務がありますよと。このまま今の問題点を抱えた公団方式で内部改革が本当にほっておいても自主的になされるんであれば、それはどうぞという、それを監視する手もありますけれども、なかなか自己改革というのも難しいということになると、やはり荒療治といいましょうか、民主化、民営化ということが必要だということは、もう私もこれはどうしてもやらなきゃいけない改革だというふうに思うわけであります。  片や、道路の高い公共性あるいは地方のそういう熱い思い等を考えますと、会社ということになりますとやはり採算性を度外視した会社なんてあり得ないわけですから、何でもかんでもめちゃくちゃに造ったらいいなんということは絶対あり得ないわけで、また何といいましょうか、微妙なところの判断についても、公団ならやってもらえたのに、会社、いわゆる民間会社だったらちょっとやり切れないんじゃないかというような具体的な路線も幾つもあるわけであります。  そういう中で、片や造ってほしいという気持ちと、債務がどんどん累積するような形では、やはり考えないと、後そういう負債を子々孫々に残していくというのはいかがなものかというバランス論の中で本当にこれは、トレードオフと言ったら言い過ぎかもしれませんけれども、そういう問題だろうということを認識、要するに民営化すればいいという問題でもないという両方の要素があって、そこでお尋ねいたしたいわけでございますけれども、政府も、四十兆円に上る債務をもうこれ以上増やしてはいけない、増やさないということで、はっきり法定して、四十五年でこれを完済するということを目的として今回の民営化に踏み切り、また片や、じゃ何でも造らなきゃいいんだという話でもありませんから、真に必要な道路というものを、民営会社を主体にしつつ、新直轄も入れて何とか最小限の国民負担の下で造るということのために民営化に踏み切ったということでございますけれども、この民営化という手段が、今申しました四十兆円の債務の完全なる四十五年での完済ということと、それから必要な道路は造っていくということとの目的と手段という観点からどのように、それが妥当なものであるかどうかということについてお伺いいたします。
  65. 櫻井よしこ

    参考人櫻井よしこ君) 民営化が妥当かどうかということについては、これは意見が分かれると私は思います。私も、必ずしも民営化でなくても問題解決が図れるのであればよろしいのではないかというふうに思っておりますけれども、しかし今までの国会での議論、それから道路行政を見ますと、これは、とても今のままの大きな枠組みの中で改善していくことは難しいだろうということがあるんだろうと思うんですね。  例えば、日本には、ほかの国々にはない会計として一般会計予算のほかに特別会計というものがございますよね。一般会計予算の規模が大体八十兆円規模であるのに対して、特別会計が三百七十兆くらいもあるんだというふうに思いますけれども、これは隠れた会計でございます。例えば旧ソビエトのような国でも、こんなに国民の目に見えない大金が流れている国というのはないわけでございまして、日本国のこのお金の流れ方そのものが非常に疑問符の付くものであるということがまず言えると思います。  道路行政の無駄などはこの特別会計の仕組みの中でこそ可能であったのであって、そしてこの中に郵便貯金を始めかなり赤字になってしまっているのではないかと思われるお金が含まれているわけですよね。ですから、この日本国のお金を健全なことにするということを考えなければならないわけで、道路はその重要な一つの柱だというふうに考えているんですね。  ですから、私は、道路公団の在り方は、ただ単に道路公団独りの在り方ではなくて、日本国のお金の在り方、お金というのは善きにつけあしきにつけその国の性格を現すものです。それが公正なものか公明なものなのか、それともずる賢いものなのか、他人の目で見て恥ずかしく思わなければならないものなのか、こういったことを考えますと、私は、今、日本は大きく制度を変えていくべき時期に来ているんだろうと思います。その一つの事例としてこの道路公団を考えますときに、今回の民営化の方針というのは根幹の問題に全く触れていない解決策であるというふうに考えます。
  66. 杉山雅洋

    参考人(杉山雅洋君) 私は、民営化によりますコストの削減というのは大前提であるというように思います。これは、公団方式よりも民営会社の方がそれへの対応力はあるというように考えます。  ただ、そこで考えなければいけないのは、私のレジュメの二のところに書いてございます。これは先ほど時間の関係で申し上げなかったんですけれども、道路を造るということに当たっての投資基準、これは二つあると思います。  一つが効率性基準でありまして、ちょっと私どもの専門用語で申し訳ございませんけれども、生産者余剰、企業にとっての利益、それから消費者余剰、消費者にとっての取り分、さらに準外部経済効果、これが効率性として挙げられるわけですけれども、民営会社になりますとこの中の生産者余剰だけが目的になってしまうことは十分あり得ます。それで果たしていいだろうかという問題がございます。多くの民間会社は効率性基準で動きますけれども、その効率性基準の中にもそのような問題があります。  それに加えて、もう一点が公正の基準というのがあろうかと思います。社会的ミニマムをいかにして達成するのか、また市場や交流への参加の機会の均等というものをどうやって担保していったらよろしいのか、これらはほとんど採算性計算には乗ってきませんけれども、このこともやはり今後の道路整備においては当然要請されることになってくるんではないだろうかなと思います。  したがいまして、民営化によるコスト削減を大前提に、その上でいかに広い意味での効率性基準、公正基準というものをそこに満たしていくのか、これがこれからのポイントになってくるんではないか、そのように考えております。
  67. 山口不二夫

    参考人山口不二夫君) 議員のおっしゃったように、道路の問題はやはり採算性や効率性だけではなくて地方の必要ということがあると思います。それを解決するために、実は公団方式というのは意外に良かったのではないかと。ですから、実は公団方式も私は悪くないと思っております。ただし、そこでその必要性と採算、効率性との調整というのがうまくいかなかったというので、この改革が始まり、動き出してしまったのだろうと思います。  それならば、もはやこれはもう民営化の方向しかないだろうと。民営化の方向で考えるならば、私の意見は、JR、NTTにできたことがなぜできないのかということです。もう市場に放出しろと、株式。市場で、そして決定させろということですね。そうすれば、今度は市場との兼ね合い、つまり市場に任せまして、そしてそこで必要性、採算性を考えながら道路への投資を行い、資金の調達を行う、そちらの方がいいと。そのためには、実はこの上下分離方式が問題で、やはり一体化して責任を持たせるというところまで会社を追い込まないといけないんだろうと思います。それが私の意見です。
  68. 藤野公孝

    ○藤野公孝君 どうもありがとうございます。  ちょっと今の問題を少し掘り下げたいんですけれども、私は、何でも道路を造らなきゃ、要望があれば造らなきゃいかぬとかというようなことをここで言うつもりなんかは毛頭ございませんけれども、生活、例えば昨日の公聴会でも、緊急時、救急時の高速道路の果たす役割、あるいは災害時のリダンダンシーの問題、いろいろ、もっと言えば軍事だってあるかもしれない。まあそこまでは言わないにしても、単に採算性の、経済的なことだけではないということは今も御指摘いただいて有り難いんですけれども、本当に真に必要なものが何かという判断というのは、かなり、ですから数字でなかなか書き切れないような基準になってしまうわけですけれども。  今回、採算性はもちろんありますけれども、費用対効果、BバイCというような言い方をよくしておりますけれども、それから外部経済効果、何かそういうものを指標にしまして、既にそういうものの指標化のあるいはされている動きもあるわけですけれども、整備する必要があるかどうかという基準を決めて、それを有料道路方式で今後だったら民間会社を含めてやるか、あるいは新直轄で税金でやるかというようなことを判断することとしたんですけれども、そういう採算性だけではなくて、いわゆるもっと広くBバイC、それから外部経済効果含めてトータル、トータルといいますか、新基準で必要性を判断するという考え方につきまして、これは感想でも結構ですけれども、お伺いしたいと思います。
  69. 櫻井よしこ

    参考人櫻井よしこ君) もちろん、私も道路採算に合わなければ造ってはならないという立場ではございません。必要な道路は造っていかなければなりませんし、それが国家としての役割だというふうに思っております。  しかし、私たちがこの道路関係公団の問題を取り上げたそもそもの理由は、もしかして返し切れないくらいの債務を抱えながら、しかもどんどん造っている。その規格が本当に、例えば四車線が二車線で足りるんじゃないかとか、又は高知県のように一・五車線にすれば十分足りるんじゃないかというふうな工夫がどうも見られない。しかも、道路建設につぎ込まれているお金そのものが極めて不透明なお金である、特別会計からのお金ですべてそこに行ってしまう、財投からも行ってしまう。国民の目に果たしてそのお金が正しく使われているのかどうかということが見えないということが問題になったわけですね。  ですから、私は、必要な道路はもちろん造ればいいんですけれども、今のこの特別会計の在り方そのものからやはり根本的に正していかなければならないのでありまして、特別会計の在り方を再検討するということはこの国の財政投融資を再検討するということにつながるわけで、小泉総理がおっしゃっている郵政改革につながるわけです。それは、もっと大きく言えば、この国のお金の流れを国民の目にさらして恥じることがないものにすることができるかどうか、公正なお金の使われ方がしているかどうかという日本人の心にかかわってくることだというふうに思うんですね。  ですから、私は、必要な道路であるならばそれはきちんと論議をして、それこそ、この特別会計をなくして一般会計の中から払っていくような本来は大改革というものを私たちの代表である議員の皆さん方に考えていただかなければならないんだと思うんですね。  この特別会計の仕組みそのものが、非常にある一時期は一定の役割を果たしたと思うんですけれども、果たして二十一世紀の日本にとって必要なシステムなのかどうなのかということも含めて国民の代表である皆様方に考えていただきたい。そのような問題を含んでいるのがこの道路関係公団改革問題なんだろうというふうに私はとらえております。
  70. 杉山雅洋

    参考人(杉山雅洋君) 今、藤野議員が言われましたことは、私が冒頭申し上げたことと関連しているというように思います。と申しますのは、やはり我が国道路を量的に、質的にどのように整備していったらいいのかという政策理念、それが欠如をしている。  私は、現在の公団方式の最終目標である一万一千五百二十キロ、これを含みます高規格幹線道路、これは一万四千キロ構想でございますけれども、この構想自体は決して非現実的なものではないというように考えます。例えば、フランスではTGV、あるいは高速道路にアクセスする時間が四十五分以内、また五十キロというような基準が挙げられております。一万四千キロ構想の場合は、どこに住んでいても最寄りのインターチェンジまで一時間でアクセスできるということを盛り込んでおりますので、これはフランスに比べても決して大き過ぎる数字ではないと思います。また、JRにいたしましても、幹線系は一万三千キロでございますので、それともかなり似た数字です。  ただ、問題は、その一万四千キロあるいは一万一千五百二十キロ、これをすべて公団方式でやれるかというと、決してその限りではない。したがって、もし必要な道路というように判断されて、なおかつ民間企業になじまないということであれば、これは公共事業方式でやるとか、はたまた合併施行方式でやるとかというような手だてが考えられなければいけないんではなかろうかなと思います。  したがいまして、これ民営化した場合には、やはり民営化会社がいかに自分で責任を持ってやれるのかといったその担保を十分重視するということが重要ではないかなというように考えております。
  71. 山口不二夫

    参考人山口不二夫君) 道路についての政策理念であるなり、その論議が足りない、それをすべきだというのは大賛成です。きちんとやはり議論し、話し合うということがやはり一番必要なことなんだろうと思います。  ただし、ある種の貨幣以外の指標を使ってその道路の必要性を測定するということには非常に危険があることを御指摘したいと思います。というのは、私の専門は会計でして、いわゆる貨幣会計、貨幣による会計です。そのフロンティアの分野としまして、非貨幣会計、ノンマネタリー・アカウンティングというものが、私、今提唱しております。ところが、そこでは貨幣以外のいわゆる便益で評価をしていこうという考え方なのですが、実際は非常に難しいのでございます。  実際の政策でそれを使っていくには、それは余りにも誤差であるとか、仮定が一方的であるとかというのがありますので、非貨幣的な指標で一律的にこれは造るべき、造らないべきというふうに持ってくるのは非常に危険性が高い。やはり政策理念を持ち、論議し、話し合うということが大前提だろうと思います。
  72. 櫻井よしこ

    参考人櫻井よしこ君) 済みません、ちょっと補足でよろしいですか。
  73. 輿石東

    委員長輿石東君) はい。櫻井参考人
  74. 櫻井よしこ

    参考人櫻井よしこ君) ありがとうございます。  今、杉山参考人の方から、民営化会社が責任を持ってやるべきであって一万一千五百二十キロのみならず一万四千キロも必要だという御意見がございました。今回の政府法案で果たして民営化会社が責任を持ってやれる体制になっているのかといえば、私は民営化会社は責任を持ってやれる体制にはないというふうに解釈をしております。  それは、上下分離の中で、保有・債務返済機構がすべての会社の資産を持ち、債務を引き受けるわけでございますね。新しい道路をこれから造っていくことになるわけですけれども、その新しい道路ができた段階で、新しくできた道路資産も、及びそれに掛かったコスト、費用ですね、債務も、これは保有・債務返済機構が引き受けるという形になっております。そうしますと、民営化会社、六つの民営化会社は、入口のところでは銀行から確かにこの会社がお金を借りるわけですね、建設費用そのほか。しかし、この道路ができ上がった段階で、保有・債務返済機構道路資産を引き受け、ついでにこれに掛かった債務も引き受けるわけでございますから、実際に六つの民営会社はこの道路建設に係る債務については事実上の責任を負いません。責任を負うのは保有・債務返済機構機構は独立行政法人でございますけれども、実体としての国だと考えてよろしいかと思いますので、ここには私たちが民営会社によるチェック機能として期待した市場原理というものは働かないわけでございますね。  ですから、私は、一万一千五百二十キロまで必要、一万四千キロも必要であるというお考えにはいささか異を唱えるものでございまして、本当に必要な道路ならば、ここまで来たからにはむしろ一般会計の中で議論をして、ここにはこれだけの道路が必要なんですと、これだけのお金掛かりますと、今までのように特別会計の中で国民の目によく見えてこない不透明なお金を使って道路財源をここにぶち込んでいくのではありませんよと、もっと公正な形で、国民の目に見える形で造っていきましょうという道路であるならば、私はこの道路建設に何ら反対するものではございません。  以上です。
  75. 藤野公孝

    ○藤野公孝君 時間ですから、終わります。
  76. 大江康弘

    ○大江康弘君 民主党・新緑風会の大江康弘でございます。  今日は、三人の参考人の先生方、本当に御苦労様でございます。お一人ずつちょっと観点を変えて聞かせていただきたいと思いますので、よろしくお願いを申し上げたいと思います。  まず、杉山参考人にお聞きをしたいと思います。  私も地方の出身ですから、やはり道路が必要だという実はそんな立場であります。これは後でまた櫻井参考人にお聞きしますけれども、実はあるところでこれを言ったら、櫻井参考人に、それじゃ政治家は駄目だわよと、昔何かそんなことをおしかりを受けたことを、実は、今もっと勇気を持って言わな駄目だということも言われましたんですけれども。少し話がずれましたけれども。  先ほどこの法案を非常に評価をするというお考えでありました。日本はやはり、道路の使い方というのはまだなかなか下手でありまして、造り方も使い方も下手な国である。それはやはり、午前中も議論もありましたけれども、やはり海から入って、そして線路のこの電車に入って、そしてやっと三番目に車に入ったという順序でありますから、五十年欧米に比べて後れておると。アメリカに公共経済学という、そういう分野があるそうですけれども、アメリカではやはりこの公共財というものの中にこの道路がしっかり組み込まれていると。公園、公共財、そして防衛というこの三つだそうでありますけれども。いずれにしても、やはりこの公共財ということになりますと、経済効率だけではいかないのではないかというようなことにもなるわけです。  私は、大変残念なのは、先ほど山口委員参考人が言われましたけれども、この財務諸表の中で、私は、今回出てきたのは四十兆円、四十五兆円という赤字、それならこれ、国、地方を合わせて七百兆円のこの膨大な赤字をまずどうするんだと。それに比べればこれ、道路は四十から四十五兆円の間の債務であります。それだけに、どこから私は出てきた話かというと、やっぱりこれは政治家も含めて、官僚も含めて、これスキャンダルだと思うんですね。  今、公共事業が悪だとか、けしからぬと言われるこの道路というのは一番分かりやすい国民にとっての部分ですから、結局、政治家も、そしてまた官僚もだらしがなかった部分があった。こういう部分がやはり国民の目から見てけしからぬではないかという、やはりそういう延長線上の中でこういう今もろもろの、先ほど櫻井参考人も言われましたが、戦後もう六十年近いいろんなうみが出てきている。それをやっぱりどうしていくかという、その部分の一つが私は道路公団あるいはこの道路行政の話であると思うんですけれども。  私はやはり、グランドデザインとしてやはりこのネットワークという、道路というのはしっかり国が管理すべきじゃないか、国が造って国が管理をすべきじゃないかという立場の人間であります。  それだけに、この法案を良しとされておられますけれども、私はむしろ、杉山参考人のお考えを聞いておりますと、いろんなものを読ませていただきますと、むしろ国がしっかりすればそれでいいんではないかなと、むしろ私自身が思っているような考えに近いんではないかな。なぜこういう、今回の分からない、もやもやしたようなこんな法案が出てきたことを評価をされておられるのか、ちょっとお聞かせください。
  77. 杉山雅洋

    参考人(杉山雅洋君) 一点、ちょっと専門的な立場から言わせていただきますと、道路が公共財であるかと、これは、一般道路については私は公共財の要件が非常に満たされていると思います。  実は公共財の定義というのは学会でもまだはっきりしておりませんで、ある種の定義がかなり有力であるということなんですけれども、その一つが排除不能性といいますか、例えば料金を支払わない者には使用をさせない。公園の場合には料金を支払わなくても公園に入ることができますね。その場合はもう公園は公共財だという位置付けになりますけれども、有料道路の場合は料金を払いませんと使用ができませんから、その観点からいきますと公共財の要件は必ずしも満たしていないんではないかというように思います。  したがいまして、そこにはやはり民間企業の視点というものも当然出てくるんではないかなと。その点では、民間企業方式でやった方が公団方式よりもより弾力的な運営ができるのではないかなというように考えております。  私自身も、今、議員の言われましたように、ネットワークは国の責任であるということについては前々からそのような考え方を持ってまいりました。  ただ、その国の責任をどういう観点からとらえるのか。私は先ほど公正という、フェアネスという言葉を出しましたけれども、これは実は価値判断を伴う問題でございまして、私がいいと思っても別の方はそうではない。しかし、どちらが正しいのかという判定をするのが非常に難しいところではないだろうか。その点で、やはり国民の多くの方々が納得し得るような、そういう議論が前提に来るべきではないだろうかなというように考えております。  先ほど櫻井参考人の方から一万四千キロ造るべしというようにとらえられましたけれども、実は私は、その一万四千キロすべて必要かどうか、これは今後ちゃんと考えていくべきではないかなと思います。  ただ、一万四千キロを出しましたのは、全国どこに住んでいても一時間で最寄りのインターチェンジまで行けるという公正、これを世間の人々がどう評価するのか。いや、そんなものは要らないよ、いや、それはどうしても必要なんだよと、そこの議論、これが出発点であるべきであったのが、実はそうではなかったと、この民営化推進委員会ではそうではなかったという点で、その議論の出発点に対して私は異論があったわけでございます。  そのようなことを考えまして、民営化推進委員会議論、一つ一つフォローしたわけではございませんけれども、これが一部否定されたような形になっております。総理の言葉をかりますと、八割は取り入れたけれども二割は取り入れることができなかったという、その二割の解釈の仕方によるべきではないかなというように思いますけれども、私自身は、そもそも出発点は、広い意味での効率性基準、それから公正の基準、両方でいくべきだというように考えておりましたので、民営化推進委員会の考え方の土台とは相入れないものがあったということでございます。  それに対しましていろいろなことが指摘されておりますけれども、この四法案に関しましては、民営化推進委員会の考え方を取り入れつつも、なおかつ、やはり必要な道路と判断され得るようなところまで造り得るような余地を残しておいた、その点で評価をしていると、こういうことでございます。
  78. 大江康弘

    ○大江康弘君 ありがとうございました。  山口参考人、私はもう会計学、財政学なんてちょっと頭痛くなってあれなんですけれども、道路公団が、これ何でどんぶり勘定でこんなことになってきたのかという流れの中で、先ほど公団のこのやり方というのは決して悪くはなかったというようなこともおっしゃられました。  そうしたら、そういういわゆる財務諸表も含めて、私は、今、公共財の少しお話もありましたけれども、いわゆる公共財としてとらえたときに、こういうバランスシートだとかこういう財務諸表だとかいうのはどこまでなじむのかという話もあるんですけれども、いわゆる公団がこういうどんぶり勘定できた中で、今回国がやろうとしておるいわゆる民間会社にしたときに、そういうすべてのものが是正をされるのか、きっちりされていくというふうに、そんなシステムになっていくのかという、ここちょっと、参考人、教えていただけますか。
  79. 山口不二夫

    参考人山口不二夫君) 実際になるかどうか私も知りたいところで、していただかなくては困るというふうに思います。  私は、財務諸表、特にバランスシートの分析ができないと言いましたけれども、できないからほったらかしていいんだということは別なんですね。というのは、やはり説明責任というものがございますので、やはりルールを決めて、そのルールに沿ってきちんと財務諸表を公開し、そして説明していくということが必要だろうというふうに思います。その上で、現在そして今後の会社状況というのについて議論を重ねていくということが必要だろうというふうに思います。
  80. 大江康弘

    ○大江康弘君 どうもありがとうございました。  最後に、ちょっと櫻井参考人にお聞きをしたいと思います。  道路が必要な部分では少し意見が異なる部分もあろうかと思うんですけれども、いつもいろんな、先ほども触れましたけれども、戦後日本の歩みの中で、今、政治やあるいは役所、あるいはいろんな分野が抱えている問題に対して鋭い切り口で批評されておられることに快哉を叫ぶときもあるわけでありますけれども。  残り時間九分ほどあります。櫻井委員として、今回のこの一連のいろんな公団民営化法案が出てくるまでの間の中で、言いたいこと、言い残したこと、これだけはどうしても議事録に残しておきたい、そういうことがあれば、残りの時間九分で、ちょっと短いかも分かりませんが、言っていただけたら有り難いと思います。
  81. 櫻井よしこ

    参考人櫻井よしこ君) ありがとうございます。  杉山先生と山口先生に後でしかられるかもしれませんけれども、では時間を使わせていただきます。  その前に、先ほど杉山先生の方から、今回の民営化法案は、民営化委員会意見の八割を聞いたと、二割の解釈の問題であるという御趣旨の発言がございましたけれども、私はこれを明確に否定いたしたいと思います。  御承知のように、政府・与党案が十二月二十二日、昨年、出されましたときに、委員長代理の田中一昭先生、JR東日本の松田昌士さんが辞任をいたしました。そして、事実上、マッキンゼーのシニアアナリストの川本裕子さんも事実上の辞任をしております。お三方がなぜこのような行動に出たのかということを見ますと、小泉総理がおっしゃいました民営化委員会意見の八割を聞いているということは事実とは全く異なります。民営化委員会意見書を根本から否定するものが十二月二十二日に出された政府・与党案でございました。なぜ民営化委員会のそれまでの議論の中で明確に否定された案が国土交通省の作成した政府・与党案として出てきたのか、委員方々は納得がいかないために辞任をしたわけでございまして、かりそめにも、私たちがここで参考人としてあの政府・与党案が民営化委員会意見を八割方尊重したものであるとの前提に立って議論を進めることは私の良心が許しません。  したがって、八割は聞いて、八割は民営化委員会意見書を尊重しているのでは全くなくて、政府・与党案は民営化委員会議論の経過の中で明確に否定され、取り下げられ、そしてこれは駄目だというふうに決められた法案でございます。そのことをまず明確にしておきたいというふうに私は思います。  私は、この道路関係公団民営化案というものを小泉総理がお出しになったときに、確かに、先ほどどなたかから御指摘がございました、なぜ民営化というふうに最初から決めてしまったのか、それは入口を狭めたことではないかという議論が杉山先生の方からあったというふうに思うんですけれども、私もそれは同意いたします。なぜ民営化でなければならないのか、日本国を除く世界の国々を見ますと、必ずしも民営化されているわけではございません。  しかし、日本民営化されなければならなかった理由は明確に存在すると思います。それは、内側からの改革が無理であるというふうに小泉総理が御判断なさったゆえの民営化に対する提案だったと思うんですね。例えば、今回、保有・債務返済機構というものができました。そして、上下分離という形になりました。その上に六つの形ばかりの民営化会社が作られました。そして、残ることは何かといえば、これまでの流れでいうと、私たちの郵便貯金、簡保を原資としたいわゆる財投資金がそのまま残るということですね。そして、特別会計の仕組みがそのまま残るということですね。日本道路公団単体を取ってみましても、二十八兆の借金がございますが、そのうちの約二十五兆円が財投資金からの借金でございます。これは私たちの郵便貯金であり、簡保のお金であると思います。  しかし、その大半がと言ってはいけませんけれども、学者によっては二割から八割が不良債権化しているということをおっしゃる方もいらっしゃるわけでございまして、私たちは、この道路関係公団の借金を本当に明るみに出したときに、一体どれだけが不良債権化していて、どれだけが返済可能なのかということが分からないわけですね。それは余りにも取り組むには深刻な問題であり過ぎるという側面もあろうかと思いますけれども、しかし、問題の解決は実態を明らかにしない限り未来永劫不可能なのでございまして、私たちは勇気を持ってこの道路関係公団債務を含めて再建にはどのようなことができるかということを考えなければならない時期に来ているわけです。  しかし、今回の政府・与党案はこうしたことに一枚も二枚も幕を掛けて実態が見えないような形にして、そして上下分離という形にして、実際の経営責任を民間会社が取ることなしに、これまでの道路公団方式と全く変わらない隠ぺい体質の中で道路建設を進めていこうというのが今回の法案でございます。  しかし、この法案は改悪か改善かというふうに問われますと、私は明確に改悪であるとしか言いようがございません。その理由は、例えばさっき三つの理由を私は言いました。族議員や族官僚の介入の余地は残ったかどうか、そしてどんぶり勘定の弊害は排除されたかどうか、そして償還主義はどういうふうになったのか、この三つがそれぞれ拡大された形で今回の法案には残っております。  この法案の不幸な成り立ちをちょっと皆様方に思い出していただきたいというふうに思うんですね。民営化委員会は二〇〇二年十二月に、明確に、上下分離ではあってもそれは最初の十年をめどとするということを決めました。そして、料金収入はそれをもって道路建設をするということには充てない、料金収入は一にも二にも返済に回すのであるということを決めました。しかし、今回の政府・与党案を見ますと、この二つの点ともにすべて否定されております。  どんぶり勘定、さっき言いましたプール制は拡大されて残りましたし、そして拡大されて残った上に、四十五年後には債務は一括してなくなりますと、そのときにすべての道路は無償開放しますということが言われたわけですけれども、では、東日本、中日本、西日本と分けたときに、東名などを持っている中日本が成績が良いであろうというのは当然予想が付くわけでございますけれども、では、この中日本だけでもなぜ先に無料開放できないのか。それはプール制で中日本で上げた利益を東日本若しくは西日本若しくは本州四国連絡橋公団若しくは阪神高速公団そのほかに回して、全部の債務がゼロになったときに初めて無料開放するということでございますね。ですから、どんぶり勘定はすごく大きくなりましたし、それから健全な財務を図る手だてというものがなくなったわけでございます。  私は、この道路公団道路関係公団民営化法案は歴史の中でどのように位置付けられるだろうかということを時々考えるんですけれども、国民に対して開かれた社会である日本国でこのようなあからさまな背信が行われてよいのかというふうに私は義憤を感じております。民営化委員会意見書の八割を尊重したと小泉総理はおっしゃいましたけれども、二人の委員が憤慨してお辞めになったことを見ましても、そして今回の政府・与党案を見ましても、民営化委員を根底から覆したのは今回の政府・与党案でございます。そして、この政府・与党案でうまくいくかどうかというのを見ますと、これは必ず近い将来、先ほども申し上げましたけれども、私は破綻が明らかになるんだろうと思うんですね。  そして、このことが日本にもたらす損害は、ただ単にお金の問題だけではなくて、私たちの心に、次の世代を担う子供たちの心にも非常に大きな傷を残すのではないか。なぜならば、偽りの民営化をもってこれが民営化である、改悪策をもってこれが改善策であるということを国会議員の皆さん方、国民の代表である皆さん方が国会で議論をして、そしてそれを通してしまうということを、あと、後世といってもあと二、三年、三、四年の問題でございます。そのときにどういうふうに説明するのかということを考えますと、私は本当に、日本の国政を預かる皆さん方の良心とジャーナリズムの世界にいる私自身の良心も含めて、何か非常に落ち着かないものがあるんですね。  ですから、私は、本来ならばこの法案はもう一度作り直すべきだという立場でございますけれども、しかし、事ここに至っては、いかに反対の論陣を張っても、それは数の論理で恐らく無理なんでございましょうから、私は、取材し報道するという立場からこの問題を追及し続けたいと思いますけれども、何年か後にこの問題がやっぱり駄目だったということになったときの国民負担は、今四十兆円と言っておりますね。でも、近藤剛道路公団新総裁は、いや、四十兆と言うけれども、実は、政府出資金とかいろいろ考えると、実際には四十五兆の債務があるんですとおっしゃいました。これがあと二年、三年、五年たてば五十兆になるかもしれませんし、もっと増えるかもしれません。そのときのことを考えると、今こうした時点できちっとした主張をしておかなければ、一体日本ジャーナリストはどうしたんだと、国会はどうしたんだと言われることになるのではないかと思いまして、このように今日は意見を申し上げました。  今回の政府・与党案、道路公団民営化法案に関しては、私は、合理性からも、そしてモラルの点からも非常に多くの疑問を感じております。このような法案改革だと言って通すとしたら、それは私は日本国にとっての恥ずべきことだというふうに申し上げたいと思います。
  82. 大江康弘

    ○大江康弘君 ありがとうございました。
  83. 森本晃司

    ○森本晃司君 公明党の森本でございます。  今日は、三人の参考人の先生、御多忙の中お見えいただき、また貴重な御意見を賜っておりますこと、感謝申し上げ、またそれを我々の心にもとどめてまいりたいと思っております。  ただ、先ほど来、櫻井先生の意見が非常に時間が、大江先生がたっぷりと述べてくださいということで思いのたけを述べていただいているのではないかなというように思いつつも、私は、今度のこの法案を作る政府・与党案に賛成の立場でやってきた者として、いささか先生と意見が異なるところがあると私は思っております。ただ、それは異なるところがあっても、それはそれぞれの立場でございますから、異なるところは異なるところでお互いが認め合っていく必要があるのではないかと、このように思っております。  高速道路というのはやっぱり国の骨格を作るということで大事なことでございまして、今日まで有料方式で果たして来てこの道路ができ上がったこと、これは国の経済とか、あるいは人の交流とか、あるいは先ほど来あるいは昨日来話がございました救急医療の問題あるいは災害対策の問題、そういった角度から考えてくると大きな役割を果たしてきたと思います。  一方、櫻井参考人からの御指摘があるように、変な介入があった、国会議員があったとするならば、それはやっぱり改めるべきことであると私は思っておりますし、これからの道路建設についても、国会議員が意見を言っちゃいかぬということではなしに、勝手に道路を曲げたり、あるいはその道路建設に国会議員が口出しして国会議員の懐を膨らますというようなことがあっては、これは今までも駄目なことであるし、これからも駄目なことだと思っております。  今度の法案の中に、国会議員のあるいは官僚の介入があるから駄目だということについては、そういうことをなくすための私どもは今度の法律を作ったと思っておりますので、その点については少々意見が異なるということを申し述べさせていただきまして、私は、九千三百四十二というのは造るべきものであるということ、それから高速道路という問題は決して採算性だけで物を考えてはいけないというふうに思っております。御指摘のあった国会議員の在り方については、我々自身もこれから今度の新しい制度の中で襟を正しながらやらなければならないことはごもっともなことでございます。  そこで、今度のこの民営化法案でこの国の在り方というものを同時に考えることになりました。制度的に有料方式とそれから新直轄方式というものを、この二つを採用していくという考え方に今度は立っておりますが、この点について三人の先生方の御意見を聞かせていただきたいと思います。
  84. 櫻井よしこ

    参考人櫻井よしこ君) 今おっしゃいましたその新直轄方式なるものをもって、本来ならば採算が合うことはほとんどないだろうと思われた一番収支の見通しの悪いところから既に何か所も着工されているのは御存じのとおりでございます。  私は、森本さんのおっしゃるように、必要な道路は造らなければならないということにいささかの異論も抱いてはおりません。私たち国民が問うているのは、その道路を造るか造らないか、どのような規格で造るのか、どのくらいのお金を費やして造るのかについて余りにも不透明なことがあるということを指摘しているんですね。そして、道路を造るにしても、その道路を造ったお金は借財で造るとしたら、その返済ができるのかどうか。その返済ができないときには一般会計予算の中から造ればいいんじゃないか、いろいろな方法があるというふうに思いますけれども、今の高速道路建設の在り方というのは、五・七兆円、年によっては五・八兆円にもなりますけれども、五・八兆円分ぐらいの道路特定財源とそのほかのものを入れて二〇〇四年度は大体十・五兆円分ぐらいが道路に入っているわけでございますけれども、この道路特定財源道路のためだけに使われるというふうな状況の中でお金を回していっていいのかどうか。  それは、先ほど申し上げた特別会計の話になってくるわけでございますけれども、私たち国民の目には特別会計のお金の流れというのは本当に見えてこないんですね。なぜならば、それは国会で論議されることがほとんどないからですね。道路特別財源というのは国土交通省道路局が所管していると言ってもよろしいのではないかと思います。三十一もある特別会計を流れるお金の総額は三百七十兆円でございます。一般会計を流れるお金は八十兆円でございます。八十兆円のうちの真水の歳入は四十兆円でございます。残りの四十兆円は借金です。半分を借金で一般会計を賄っている国において、三百七十兆円ものほかのお金が、国民が払う税金及び郵便貯金、年金なども含めて、そうしたお金が三百七十兆の規模で回っている。そして、その三百七十兆円の規模のお金の使われ方について私たち国民は実態としてチェックできません。あえて言うならば、国民の代表である皆さんにも事実上のチェックはできないわけですね。そういった状況の中で……
  85. 輿石東

    委員長輿石東君) 簡潔にお答えください。
  86. 櫻井よしこ

    参考人櫻井よしこ君) はい。そういった状況の中で今のような形で道路行政を続けていってよいのかというのが私の疑問でございます。
  87. 杉山雅洋

    参考人(杉山雅洋君) 私は、ネットワークという視点を強調すべきではないかなと思います。一本一本の道路採算性、これで見れば悪いけれども、ネットワークとして機能するようになれば全体が生きてくる、そこも考えなければいけないんではないかなと思います。  その中で、新直轄方式を考えますと、これは先ほど私も申し上げましたように、地方の負担を伴っております。ですから、もし地方の負担が伴わなければ、地方から次から次へと要求が出てきてどんどんどんどんネットワークが拡大してしまうと、この懸念はありますけれども、地方の負担を前提としている限り、そこの歯止めというのは利いてくるんではないだろうかなと思います。  その観点からいきまして、そのネットワークを整備する、しかしながら、その一部区間につきましては採算計算をすると乗ってこない、そこを新直轄でやるというのは私は意味があるものというふうに考えます。  それから、先ほど櫻井参考人が言われた特定財源の話ですけれども、その特定財源議論をする場合には、現在適用されております暫定税率、これをやはり問題にすべきではないだろうかなと。もし特定財源をほかに回すというようなこと、はたまた一般財源化するというような議論が出ました場合には、現在、ガソリン税ですと本則税率の倍、暫定になっておりますから、ここをいったん本則に戻してみて、その上で納税者がどう考えるのかというようなプロセスを踏むことが必要ではないかなと思います。  以上です。
  88. 山口不二夫

    参考人山口不二夫君) 端的に申し上げますと、新直轄の方式には反対です。  どうしてかと申し上げますと、新直轄の対象の道路というものの決め方が非常に不透明だというふうに思うからです。やはりきちんと議論をして、国民の同意、そしてそれだけの資金を投入する必要性がどれだけあるのかというのをもうちょっときちんと話し合ってからでないといけない。ですから、この方式というのには問題点があるというふうに考えます。
  89. 森本晃司

    ○森本晃司君 次に、上下分離方式についてでございますが、今度は民営化道路建設管理、こういったことについては民営化して、その民間のノウハウを生かすという方法、それから一方、やはり道路国民共有の財産だという考え方に私は立っております。  そういった意味で、保有機構がきちんとそれを持つという、こういう上下分離という考え方に私はそれを進めていくべきだと考えておりますが、先ほど来、櫻井先生は十分その上下についてはこの時間の中で御意見を賜りましたので、大変恐縮でございますが、両先生方、杉山参考人、山口参考人の方から上下分離についてどういうお考えを持っておられるのか、お伺いさせていただきます。
  90. 杉山雅洋

    参考人(杉山雅洋君) 先ほど申しましたけれども、通常、上下分離といいますと、インフラと運営の分離というのが一般的なイメージです。例えば鉄道は、鉄道線路、それから運行は鉄道会社ということで、一種事業者はこれ一体でやっておりますけれども、二種事業者、三種事業者は違うわけです。多くの人たちはそこを上下分離というように考えがちで、今回の高速道路の場合にはインフラの上下分離ですから、そこが混同するんではないか。したがって、鉄道のようなケースの上下分離とそれから今回の道路上下分離というのは、言い方を分けた方が国民の間に誤解を避けるんではないかなというように思います。  それはさておきまして、私はその上下分離、基本的に賛成です。ただ、問題点もございます。その上下の責任関係がどうなるのかということなんですけれども、やはりそこには連携性が保てなければいけない。  私が賛成だといたしましたのは、一つはリスクの問題です。上下一体としておりますとリスクを負う可能性が大きくなりますけれども、これを分離しておけばリスクの分散ができるんではないかという点、これが一点でございます。  それからもう一点は、下が独立行政法人であるがゆえに国の介入温床ではないかという指摘があるんですけれども、よくこの法案を読みますと、会社が新線建設の場合には申請でやると。それで、その申請が受け入れられない場合は社会資本整備委員会の判断にゆだねるというような形になっておりますから、これはあくまでも必要のない道路を次から次へとその中に入れていくんではなくして、会社の判断によって道路資産を造り、そしてその資産が機構に移されると、こういうことで、そしてその機構債務も行く行くは貸付料を通して会社がそれを返済していかなきゃいけないと、こういうスキームになっているというように私は解釈しておりますから、その限りで賛成だというように申し上げます。
  91. 山口不二夫

    参考人山口不二夫君) 私は上下分離方式には反対です。  上下分離をすることによって相互チェックを働くという意見もありますけれども、むしろ実態は逆で、コーポレートガバナンスの考え方から見るならば、上下分離することによってむしろ相互の逃げ道ができるということになります。恐らく投資する方、会社の方はリース料を払えばいいだけですので、造った後で実際はそのリース料が払えないということになる可能性が非常に高いと。その場合に、もうからないものは払えないということでどうにかしてくれと。恐らく機構の方は、向こうが造ったものがこちらが引き受けて、そして支払ってこないんだからどうしようもないと。政府国民に支援を仰ぐということに必ず行き着くと思います。コーポレートガバナンスの観点から、これは非常に危険な方式だと思います。
  92. 森本晃司

    ○森本晃司君 時間が迫ってまいりましたので、最後に山口参考人にお伺いしたいんですが、参考人のお話の中で、道路公団の概要と分析をされました。それぞれの中で、本四についても私は非常にこれはそのとおりだと思っておるんですが、阪神がかなり厳しい、難しいという御意見を述べられました。  私は関西におりますので阪神高速は絶えず利用しているわけですけれども、非常に、更に更にあの阪神高速の込み具合、渋滞をもう改良していかなければならない、またネットワークでつないでいかなきゃならないところもあるかと思っておるんですが、先生の御意見で、どういうところが難しいというふうにお述べいただいたのか、さらにそれをどうすれば解消していくことができるのか、いや、もうそれはできないんだという考え方なのか、その点についてちょっとお伺いしたいと思います。
  93. 山口不二夫

    参考人山口不二夫君) 一言で申し上げて、投資に対してキャッシュフローが少な過ぎると。つまり、収益性がはっきり言ってちょっとほかの公団に比べて低いと。ほかというのは、日本道路公団、首都高速に比べて低いという観点です。  では、どうしたらいいのかといいますと、これについては、いわゆる民間の経営努力をして、そして極力合理化を図っていくという方策以外は今のところアイデアはありません。
  94. 森本晃司

    ○森本晃司君 民間の方法をこれから取り入れようとするんですが、その中で、特にどの分野ですか、阪神高速がやらなきゃならない分野。
  95. 山口不二夫

    参考人山口不二夫君) やはり基本は経費の削減でございます。  それともう一つは、更新投資、更新の費用というのが掛かりますけれども、更新の費用というものを適切な業者に発注して適切な値段で行うということが重要だろうというふうに思います。
  96. 森本晃司

    ○森本晃司君 ありがとうございます。
  97. 富樫練三

    ○富樫練三君 日本共産党の富樫練三でございます。  三人の参考人方々、本当に今日は忙しいところ、ありがとうございます。  道路公団改革ということで、民営化の是非が問われているのが今度の法案の審議でありますけれども、必要な道路は造るとしても、それが全部、今、国土交通省が言っているような高速道路でなければならないという理由はどこにもないわけで、これらについても改めて検討は必要だろうというふうに私どもは考えております。  私ども、三つ提案をしているんですけれども、一つは無駄な高速道路は造らないこと、二つ目に四十兆円を超える累積債務国民の負担に転嫁しないこと、三つ目には政官業癒着を断ち切ること、これらのことがこの民営化によってきちんと達成されるのかどうか、ここに国民期待を寄せている、あるいは今度の法案を見てがっかりしているということがあるだろうというふうに思っています。  今日、参考人の皆さんにはこの三つのうちの二つ目の問題、四十兆円を超えるこの累積債務国民の負担に転嫁しないこと、この点について特に絞って伺いたいと思います。  そこで、まず最初に山口参考人に伺いますけれども、今日は参考資料として「道路公団キャッシュフロー試算 償還期間と可能新規建設」という資料がございますけれども、この分析の結果どういうことが言えるのか、この点についてまず御説明をいただけると有り難いのですが、よろしくお願いします。
  98. 山口不二夫

    参考人山口不二夫君) 最初の十五分でお話しすることができなかった資料でございます。  この「参考資料」というのは、三月まで私が在籍しておりました青山学院大学の助教授の福井義高さん、私の友人でありますけれども、が作成した資料で、それに私が幾つかの字句を訂正してあります。  この表というのは、①から⑥まで六つのケースを想定してありまして、道路公団の方の提出した資料、国交省ですか、国交省の資料では、返済のケースというのが四十五年に限られていると。で、このケースでは幾つものケースが同時に見ることができるようになっております。つまり、これ①から⑥というのは、それぞれの①から⑥の左のところで、成長率と、資本コスト、言わばこれは利子率と考えてくださって結構です、それがそれぞれ異なっております。つまり、①の場合には、今後、道路の需要を料金から見て、料金収入が増えていかないという状況。そして、資本コストというのは、三%というのは、これ借入金利と思ってください。それを②のケースでは成長率が一%下がる。③のこの楽観案では一%上昇して、かつ金利のコストが三%。④の方では、成長率は〇%ですけれども、金利の、資本コストが四%。それから、⑤の悲観案では、マイナス一%の成長で、資本コストが四%。そして、⑥の案では、平均成長率が一%で、資本コストが四%という。一%から二%の内外の差というのがどれだけ将来のキャッシュフローに影響が及ぶかということです。  そして、この表の右の方は償還期間が三十年、四十年、五十年、無限ということです。つまり、現在あるこの債務というのを三十年で返済する、四十年で返済する、五十年で返済する。それで、無限大というのは、これは返済しない、つまり永久有料制ということですね、の場合にはどうなるかということです、の場合に新たな投資がどれだけ可能であるかというのをこの表では算出しているわけです。  そうすると、実はこの表で国交省の出したのに一番近いのは①若しくは⑥の案なわけですね、①か若しくは⑥の案です。つまり、平均成長率ゼロ%で資本コスト三%で五十年で新規建設可能額が十一兆円と。⑥の案だと、一%成長して、多少資本コストは高くて四%、それでそのケースでもやはり五十年で十一兆円造ることができるということです。実はこれよりも楽観的な案がありまして、③の場合には、成長率が、道路の料金収入が一%の毎年増加を続けますと新規建設は二十兆円可能で、ずっと永久に有料化のままですと五十一兆円まで新たに建設が可能であるということです。一番悲観的な案ですと⑤の場合で、マイナス成長ですね、これから道路の料金収入が減っていく、かつ資本コストが四%、これは実は国交省の前提に近いものです、の場合ですとマイナス一兆円、つまりほとんど建設はできないということです。  実はこれが、この表というのはある種のもろ刃の刃の側面がありまして、つまり、うまくいけば場合によっては二十兆円、五十兆円だって造ることができるんだよと読んでいただけるとこれはまずいわけで、私の意図としては、いかに前提条件によって異なってくるかということをこれで見ていきたいと。つまり、一%、二%の差で建設可能額若しくは債務返済の可能性というのが全く異なってくるということです。  実は、将来の予測というのは極めて難しいわけです。では、そういう将来の予測にこういうかかわる問題はどうしたらいいかというのは、まずリスクを考える、最悪の場合にはどうなってしまうのかということを考える。そしてもう一つは、最悪の場合に、若しくは悪くなるということが分かったときの弾力性を確保するということだろうと思うんですね。そうなったときに新たに、つまりこのシナリオの中の今どのシナリオを行っているのかと。そうなってくると、全く新規建設は無理だし、返済も不可能だし、むしろ債務が膨らむばっかりだしということが明らかになったときに、弾力性の持てるようなそういう会社機構で、そしてそういう法案でなくてはならないということを言いたいがためにこの資料を出させていただきました。
  99. 富樫練三

    ○富樫練三君 今のこの資料で新規建設がどれほど可能か、あるいは不可能かということだと思うんですけれども、その上に立って伺いたいと思います。  国土交通省の試算によりますと、今度の承継債務については、新たに会社から受け入れる、これは機構が受け入れる借金ですけれども、十五兆円というのがプラスされています。ですから、今ある借金が大体四十三兆八千億というふうに、まあ一口に四十兆と言われていますけれども、実際には四十三兆八千億ぐらい、これに新たな事業が十五兆ぐらい加わると。最終的にはそれを四十五年間返済をしようと、こういう計算を政府はされているようであります。  そこで、次の点について三人の方にそれぞれ御意見を伺いたいわけです。  今度、法律で、四十五年という絶対的な期限を法律の条文で決めると、こういうことになっています。借金を返済する場合は、これはこういう返済機構が民間の会社が作ったものを全部、資産と一緒に借金も受け入れる、で、銀行にそこから返していくという格好になります。その原資は道路の、有料道路の有料の料金でこれを返済すると、こういうふうになります。  そうなった場合に、四十五年で返済できるかというのは、一つは金利がどのぐらいになるかというのが重要な要素になります。もう一つは、入ってくる原資がきちんと安定して確保されるかどうか、ここのバランスがきちんと取れるかどうかということだというふうに思います。これは、誤解を恐れずに大胆に単純化すれば、入ってくるお金と出ていくお金のバランスがちゃんと取れるかと、こういうことです。出ていくお金について言えば金利が一番大きな要素を占めると、こういうことになろうかと思います。そこで、金利については、これは保有機構が金利を決めるわけにいきません、銀行が決めることになります。ですから、勝手に四%と、こう言っていますけれども、これが五になる、六になるということも当然あり得るだろうということがあります。  それから、一方の有料道路の通行の料金ですけれども、これも保有機構や今度公団から民営会社になったこの会社が車の台数を勝手に決めるわけにはいきません。経済情勢によってこれは変化します。現在の試算では、二〇二〇年をピークにしてこれはだんだん下降線をたどるだろう、この下降線も一応計算に入れた上で計算をしている、返済計画になっていると、こういう計画になっています。ただし、これは計画以上に、予定以上に下降線をたどればそれだけ収入は少なくなる、したがって返済は困難になると、こういうことになろうかと思います。  そこで伺うわけですけれども、四十五年後というとちょうど二〇五〇年になります。二〇五〇年の段階で本来ならば借金はゼロになるはずなんですけれども、それがゼロにならないで一定の借金が残るということも絶対にあり得ないということはない。ある可能性はあるということです。その場合にどういう方法が取れるかということです。  一つは、その時点で法律を変えて、四十五年の返済期限を五十年、七十年、百年に延ばすという方法も、これは法律を変えれば可能だろうというふうに思います。しかし、今この法案審査している中で、将来は法律を変えますなどということは、これは絶対に言えないだろうというふうに思いますけれども。  もう一つは、かつてはプール制の拡大をやりました、例のアクアラインのように。それで、そこでカバーをするということをやりましたけれども、今度のこの方式は全国のを全部プールしちゃいますから、どんぶり勘定がどんぶりじゃなくて洗面器になってたらいになるんだという議論もあったようでありますけれども、そういうふうになればこれ以上プールを拡大することは無理と。そうなれば、結局はそこで税金でカバーするためにその借金を国が全部そっくり受け止める、今度の本四公団やり方はその一部でありますけれども、そういう方法になるのではないかと。  こうなった場合に、やはり税金の投入が限りなく増えていくという可能性がある、したがって、民営化するけれども、その目的は、所期の目的は達成されないのではないかという心配の声がありますけれども、これについて三人の方々、それぞれどのようにお考えなのか、お聞かせいただきたいと思います。
  100. 櫻井よしこ

    参考人櫻井よしこ君) 今、富樫さんのお話を伺っていて、御質問の前提そのものがかなり危ういところがあるのではないかというふうに私は思うんですね。例えば、本当にこれは民営化なのか。民営化ではないと私はそもそも思っておりますし、それから二〇五〇年まで今の形で続いていって何兆円か残るのかもしれないというその前提そのものが、私はそれよりもはるかに早い前で、はるかに手前で破綻が明らかになるのではないかというふうに考えているんですね。  それで、四十五年で返済します、つまりこれは先ほど申し上げました償還主義でございます、四十五年後にはゼロになるということで。これまで道路公団の歴史を見ますと、常にこの償還主義でやってきて、そして無理だったわけですね。当初三十年で返しますという償還主義だったのが、無理だと分かってそれが四十年になりました。それでも無理だと分かって、五十年後にはゼロにしますと言いました。それでも無理だからというので本四連絡橋公団は七十年後ということになっているわけですね。  ですから、幾らこの法案で決めたからといって、法律に合わせて現実が変わってくれるのではありませんから、私は四十五年後に借金がゼロになるということはそもそも不可能で、恐らくどこかの時点で、それが不可能だという言い逃れがもうできなくなったときに、国会議員の皆さん方はそれを、計画を変更なさるかどうかを迫られるんだろうというふうに思います。  私は、この法案そのものが国民に対して正直ではない、強い言葉で言えば背信だというふうに考えておりますので、今の富樫さんの御質問のお気持ちも分かるんですけれども、こういった数字そのものを前提にすることがやはりおかしいのではないかというふうに感じております。
  101. 杉山雅洋

    参考人(杉山雅洋君) 四十兆円を国民負担としないこと、これはそうしなきゃいけないと思います。ただ、言葉の上の議論で恐縮でございますけれども、国民というのは一体何を指すのか。利用者なのか、納税者なのか、はたまた地方自治体なのか。これはすべて国民でございます。したがいまして、私は、負担をさせないというためには、やはり受益者負担原則からいって、利用者に負担をゆだねて、そして納税者には基本的には負担をゆだねない、こういう方向を目指すべきではないだろうかなというふうに思います。  そうなりますと、料金政策、これに懸かってくるわけでございますけれども、櫻井参考人意見では、これは民営化でないということなんですけれども、これ民営化という立場から話をさせていただきますと、従来、公団方式でやってきました料金規制に対しまして、民間企業になりますと多様な料金政策を取ることができる、その多様な料金政策で対応していくべきではないか。  例えて言いますと、これも幾分専門的な言葉で恐縮でございますけれども、ラムゼイ価格というのがございます。これは、収支均衡した上でもって需要の価格弾力性の逆数に応じた形で料金を掛ける、こういうことですから、すべてのところにおいて二十四円六十銭というような画一の料率でなくして、地方とか都市圏とかでもって料金を変えていって、そしてその収入を確保するということが必要になってくるんではないかなと思います。四十五年償還でございますけれども、やはりこれには用地費は除外すべきだというふうに私は思います。  はたまた、従来投入されておりました三千億の国費がこれ打ち切られたわけでございますが、実はその三千億の国費というのは高速道路を利用する人たちのガソリン税相当分ですから、そのガソリン税プラス料金という形になりますと、これ二重取りです。ですから、そこの三千億というのも実は利用者が負担しているわけですから、これも償還財源というように考えるべきではないだろうかなというように思います。  そして、もう一点、償還後どうなるのか。これは姿が見えてきておりませんけれども、私は、やはり維持管理有料という制度を取るべきではないだろうか。ですから、償還は行う、償還が終わった次の段階で維持管理費は利用者負担とすべきであると、こういう考えでございます。
  102. 山口不二夫

    参考人山口不二夫君) 結局、五十年後に返せない可能性が高いんですが、そうなると、そこの時点で、また今度は再び資金を民間から調達して、株として放出するということになる可能性があります。ただし、その時点では収益性がすごく低下していて資産も劣化していますので、実際にその株が売れないとなります。それで非常に低い価格になると。そうすると、そのままやっぱり国民負担として残る可能性があると。もしも現在ならば、まだ資産は劣化していませんし、収益性非常に高いですので、株式として放出しても、それを非常に高額で買う投資家というのは非常にたくさんいると思います。  ですから、そういう意味では、本当の民営化というのは、櫻井参考人意見からあったように、やはり多様な料金政策ができるということだけではなく、コーポレートガバナンスの観点からも、株式として放出して、民間がきちんと、株主がコントロールするというのが本当の意味民営化ではないかというふうに思います。
  103. 富樫練三

    ○富樫練三君 ありがとうございました。終わります。
  104. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 社会民主党の渕上でございます。御苦労さんでございます。  今、御三方の御意見を聞いていて一体どういう法案を審議しているんやろかと、こういうような疑問が出てきましたし、なぜ今民営化しなきゃならないのか、する必要があるのかどうなのかということなんです。  本来、やはり私は、社会資本というものは国、地方自治体がきちっと造るべきである。そして、今のような自動車社会になってきておるときに、とりわけ道路という問題が非常に立ち後れているのではないかというふうに思います。それぞれ交通関係、空、海、陸と三つありますが、バランス良くやはり発展をしていくということも大事なことだろうというふうに思います。特に私は、空と海は比較的同じような条件でやれるかもしれないけれども、道路の場合は、日本の地形からしてなかなか難しいのではないかというような感じがいたします、投資の仕方がですね。ですから、いろいろ違ってくるのではあろうと思うんでありますが。  したがって、そういうような日本の地形からくるような問題として、建設費用が多大に掛かる道路のところの問題というのは、これから先造ろうとする新線なんかは特に地方ですから、採算性問題は考えられないところでございまして、私は、なぜ今公共財である道路というのを民営化しなければならないのか。民営化することによって、先ほど櫻井参考人の方がお話ありましたように、どんぶり勘定がなくなるかもしれない、償還主義の問題もなくなるかもしれない、そして族議員の利権構造もなくなるかもしれない、そういうお話ございましたけれども、一体、すべて民営化すればうまくいくというふうに、ちょっと参考人御三方、お思いなんでしょうか。  なぜ今、道路公団、もう少し行政改革きちっとやってみたり、そのものを改革していった方が良かったのではないかというふうに、だんだんそういうふうに思ってきたものですから、なぜ公共財である道路を民間会社にするのか、どういう御認識なのかをお答えいただきたいと思います。
  105. 櫻井よしこ

    参考人櫻井よしこ君) 私は、渕上さんのお気持ち、非常によく分かります。道路はなぜ民営化されなければならないのか、なぜそもそも小泉総理は民営化ということをお決めになったのかという点だと思うんですね。  ほかの国々を見ましても、必ずしも道路民営化されているわけではございませんで、むしろ政府とか州政府管理しているところというのは非常に多いわけですね、もちろん民営化されているところもありますけれども。  私は、日本でこの道路民営化が出てきたのは、現状の中では、例えば国交省の中とか族議員の皆さん方の中から、もっと効率の良い道路造りをしましょうと。一千億円で済むところを何で一千三百億円、これは大体三割方高いんですね、掛かるのかと。何で道路公団本体は二十八兆の借金を抱えていながら、子会社、約二百社は全部黒字なのか。それは、そこに天下りが行くからですね。天下りの二千万円ぐらいの年収を担保しなければならないから、子会社を全部黒にして、親会社道路公団は赤字にして、道路公団には特別会計のお金が入る、政府からの補助金も入るから、赤字になっても構わないわけです、だれも責任を取らないから。そのような仕組みがあれば、いかに合理的な考え方を持つ人たちが数人いても道路行政は良くなりませんから、そこを御存じだった小泉総理大臣があえて民営化ということをおっしゃったんだろうというふうに思います。  私も、道路はお金がちゃんと採算が取れるから造るべきだということだけではないと思うんですね。やはり日本全国どこにでも必要な道路はありますけれども、今のような道路の造り方では、例えば北海道などでは、ほとんど車が通らないところ、四車線の物すごく立派な高速道路があるんですね。どうしてそこは、県道をもっと広げることによってちゃんと整備しないのか。二車線にしなくても一・五車線にすれば済むところ、たくさんあるんですね。そういった工夫が内側から今まで何十年という間生まれてこなかった。だから、民営化ということを成し遂げて、市場、マーケットという外の力を加えなければ、そういうふうにした、自律した、自分で律する、そして自ら責任を取るような道路行政ができないということで、あえて民営化ということが出てきたんだろうと思います。  ですから、中側からの改革ができるのであれば、だれも民営化しなければならないということは言わないと思います。それができない時代が何十年も続いてきて、四十三・何兆円の借金があって、このままいけばもう返すことができないというところまでせっぱ詰まってきた。四十三兆というのは七百兆円の借金のごく一部であるという日本国全体のことを考えれば、あえて今民営化ということが必要なのではないかというふうに私思います。
  106. 杉山雅洋

    参考人(杉山雅洋君) 再三申し上げておりますように、私が書きました投資基準からいたしますと、これは民営化してすべてうまくいくかというと、そうではないというふうに私は思います。やはり民営化にはなじまない部分が出てくるものですから、その点に関してはやはり別の手段を取らなければならないというふうに思います。  それから、度々の言葉で恐縮でございますけれども、一般道路は公共財の要因がありますけれども、有料道路高速道路の場合は料金を払わないと利用から排除されますから、その点では、私の理解では公共財ではない。公共財ではないということからいたしますと、やはりそこにはその民営化の視点はあってもいいんではないか。民営化すれば、従来、公団方式であったよりは、より弾力的な経営、より弾力的な料金政策ができるからではないかというように思います。  蛇足までに申し上げますと、実は民営化しないまでも道路に料金を課すというのは諸外国でやっておりますし、また東京都でもロードプライシングという形を検討しておりますので、通常、公共財と言われていた道路にも、実はその料金を払わなければ使えないというようなことの状況が出てきているということは否定できません。その点では、議員の言われるところはよく分かります。
  107. 山口不二夫

    参考人山口不二夫君) 公団の費用に関して適正な入札と入札価格というのが保証され、それと新規建設というのが適切に議論されて適切な新規建設ができるということが確保されるならば、公団方式で全く問題はないというふうに私は思います。  ただ、もうこの法案として民営化というのが走り出したからには、その組織としてどういう形が一番適切であるかというので、私は、ここまで来たならば株式を放出するまで、場合によっては上場するまで民営化を進めた方が、この期に及んでは、適切なコーポレートガバナンスの観点から、適切な会社管理と、そしてひいては道路管理もできるのではないかというふうに考えます。
  108. 櫻井よしこ

    参考人櫻井よしこ君) 済みません、一つ補足させていただいてもよろしいでしょうか。
  109. 輿石東

    委員長輿石東君) はい。櫻井参考人
  110. 櫻井よしこ

    参考人櫻井よしこ君) 今の山口参考人のお言葉の中に、株式上場を目指すべきだということがございました。私も、本来の民営化であるならば、それが正しい方法だというふうに考えております。  しかし、今回の政府・与党の法案を読みますと、債務償還返済が終わった四十五年後には道路資産は全部政府が持つわけですね。民営会社に持たされているのはSA、PAくらいなものでございますよね。そうした場合に、株式上場というのは一体、その実態はどこにあるんだろうと思うんですね。これは、株式上場ができない法案でございます、実態として。  小泉総理大臣は、民営化せよ、最終的に株式上場を目指せとおっしゃいました。その方向に沿ってこの法案は作られているはずなんですけれども、ふたを開けてみたら、総理大臣のおっしゃっていた株式上場は事実上、実態として不可能だということになっております。ですから、物すごく自己矛盾に満ちた法案なんですね。私も、株式上場すべきだと思いますけれども、こんなSA、PAくらいしかない会社の株をだれが買うだろうと思います。  ですから、株式上場は、この法案を見る限り不可能だということを付け加えておきたいと思います。
  111. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 山口参考人にお伺いいたしますけれども、先ほど御説明のございました、将来の収益性の問題のところのお話がございました。なるほど、これから先は少子高齢化社会ということになれば、結果的に、自動車の台数はあったにしても、自動車を運行する人たちはだんだんだんだん減ってくるということになれば、乗る方が非常に少なくなるということになるわけですね。結果として有料道路の利用者が減ってくる、で、収益が減ってくるというようなお話がございましたし、結果、交通需要というものが少なくなってくるというと、結果的には不採算路線というのが拡大をしていく。  思い起こせば、国鉄の民営化をしていく段階でも、地方ローカルの不採算路線を切ることによって成り立っているというような状況も出てきているわけでございますが、そういうことが今回の高速道路建設に当たっても起きてくる可能性というのは私は十分にあると思います。  したがって、ここで書いてあるように、約四十兆と言われる債務を四十五年で返済をしていく。先生のお話を聞いていると、このことすらもう既に破綻しているというふうに先生の分析では聞こえるわけでございますが、本当にそうなのかどうなのか、もうちょっと詳しく御説明いただければというふうに思います。
  112. 山口不二夫

    参考人山口不二夫君) 結論からいって、私の分析では、このスキームはもうほとんど既に滑り出しから破綻しているというふうに思います。  というのは、結局、会社からの、会社の収入、若しくはそれはリース収入がかなり伸びるということを予想しているけれども、現状でもう減り出していると。  しかも、実はこの返済イメージには新規建設をしない場合の返済イメージというのもあるわけです。その場合ですと、その表を見て驚いたのは、新規建設をしない場合にリース料が、つまり収入が三兆円減るということなんですね。ということは、新規建設分が、逆に新規建設をすると、ごめんなさい、〇・三兆円ですね、〇・三兆円増えると。すなわち、今後の新規建設分がもうかるというふうにこの返済イメージでは踏んでいるわけです。  到底、この将来の建設、今後の建設は不採算路線なのに、それすらもうかるというような仮定で作られたこの返済イメージの試算例というのは、到底実現は不可能で、机上の空論以外の何物でもないというふうに考えます。
  113. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 杉山参考人にお伺いしますけれども、結果的には、最初高速道路を造っていくときは全部税金で造ったはずですね、全部……
  114. 杉山雅洋

    参考人(杉山雅洋君) 税金というよりは借入金ですね。
  115. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 ええ、借入金、失礼しました、借入金で造ったはず。で、それは全部補てんを、借入金で造ってくる。そして後、運営は通行料でやっていくというようなことになってきたわけですが、その場合、今度造っていくときは地方も負担をするということになりますね。その場合、やっぱり私は道路というのをネットワークということに考えてみると、そこで利用料金を払うか払わないかによって、先ほどは払うから払わない人は排除されるじゃないかという理論だったが、そこら辺のところはちょっと私、すとんと落ちないんですが、もう少し分かりやすく御説明いただけますか。
  116. 杉山雅洋

    参考人(杉山雅洋君) 公共財というのは、通常、料金を払わなくてもその利用から排除されることがないと、代表的には公園のサービスですね。ところが、高速道路の場合はインターチェンジでもって料金を払わなければ、高速道路を使うことができませんから、そこで排除されてしまうと。ですから、排除原理という観点から見て公共財の要件を満たしていないと、こういうふうに申し上げたんですけれども。まだ不明でございましょうか。
  117. 渕上貞雄

    ○渕上貞雄君 終わります。
  118. 輿石東

    委員長輿石東君) 以上で午後の参考人に対する質疑は終了いたしました。  参考人方々に一言お礼のごあいさつを申し上げたいと思います。  本日は、長時間にわたって御出席をいただき、有益な御意見をお述べいただきまして、誠にありがとうございました。委員会を代表しまして厚く御礼申し上げます。本当に長い時間ありがとうございました。  本日はこれにて散会いたします。    午後三時四十九分散会