運営者 Bitlet 姉妹サービス
使い方 FAQ このサイトについて | login

2004-04-07 第159回国会 参議院 国際問題に関する調査会 第5号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年四月七日(水曜日)    午後一時開会     ─────────────    委員異動  二月十八日     辞任         補欠選任         佐々木知子君     加納 時男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     会 長         関谷 勝嗣君     理 事                 愛知 治郎君                 山崎  力君                 岩本  司君                 田村 秀昭君                 高野 博師君                 緒方 靖夫君     委 員                 入澤  肇君                 河本 英典君                 小林  温君                 椎名 一保君                 西銘順志郎君                 野上浩太郎君                 三浦 一水君                 池口 修次君                 小川 勝也君                 田名部匡省君                 高橋 千秋君                 広野ただし君                 荒木 清寛君                 池田 幹幸君                 大田 昌秀君    事務局側        第一特別調査室        長        渋川 文隆君    政府参考人        外務大臣官房審        議官       西宮 伸一君        外務省経済局長 佐々江賢一郎君        財務大臣官房審        議官       青山 幸恭君        財務省国際局長  渡辺 博史君        厚生労働大臣官        房審議官     皆川 尚史君        農林水産大臣官        房総括審議官   松本 有幸君        農林水産大臣官        房総括審議官   村上 秀徳君        経済産業省通商        政策局通商機構        部長       田中 伸男君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○国際問題に関する調査  (「新しい共存時代における日本役割」の  うち、東アジア経済現状展望について)     ─────────────
  2. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ただいまから国際問題に関する調査会を開会いたします。  委員異動について御報告いたします。  去る二月十八日、佐々木知子君が委員を辞任され、その補欠として加納時男君が選任されました。     ─────────────
  3. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  国際問題に関する調査のため、本日の調査会外務大臣官房審議官西宮伸一君、外務省経済局長佐江賢一郎君、財務大臣官房審議官青山幸恭君、財務省国際局長渡辺博史君、厚生労働大臣官房審議官皆川尚史君、農林水産大臣官房総括審議官松本有幸君、農林水産大臣官房総括審議官村上秀徳君及び経済産業省通商政策局通商機構部長田中伸男君を政府参考人として出席を求め、その説明を聴取することに御異議ございませんか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 国際問題に関する調査を議題といたします。  本調査会は、第百五十二回国会において設置されて以来、調査テーマである「新しい共存時代における日本役割」の下、東アジア経済現状展望及びイスラム世界日本対応につきまして、様々な角度から調査を進めてまいりました。  最終年を迎えまして、そろそろまとめに入る段階に至っておりますことから、本日は、ただいま申し上げました調査項目のうち、東アジア経済現状展望について、これまでの調査を踏まえ、午後二時ごろまでを目途政府に対する質疑を行い、その後、午後三時ごろまでを目途委員間の意見交換を行いたいと存じます。本調査会の成果を実り豊かなものといたしますため、忌憚のない御意見、御提言をお述べいただければ幸いに存じます。  それでは、まず政府に対する質疑を行います。  議事の進め方でございますが、あらかじめ質疑者を定めず、自由質疑方式により質疑応答を行います。  質疑を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って発言を行っていただきたいと存じます。  できるだけ多くの委員方々質疑を行うことができますよう、委員の一回の発言時間は三分程度お願いをいたします。  また、質疑及び答弁とも御発言は着席のままで結構でございます。  なお、理事会協議の結果ではございますが、まず大会派順に各会派一人一巡するよう指名いたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  それでは、山崎力君。
  6. 山崎力

    山崎力君 それでは、政府方々質問したいと思いますが、主に外務省財務省経済産業省の方になろうかと思います。  この問題、東アジア経済現状展望ということになりますと、やはりメーンはどうしても中国になろうかと思うわけですが、今までその中国経済についていろんなことを言われていましたけれども一つは、今までの予想とちょっと違っているところは、一つ消費が拡大するということにおいて、日本からの輸出というものがそちらの面で予想以上に進んでいるという点、それから原料輸入国になったという点、この辺が事前の、数年前の我々の感覚以上に進んでいるということは言えると思うんですが、それと同時に、バブルではないかということで、中国経済、北京のオリンピックあるいは上海の万博ですか、あの辺りはもつけれどもその後はどうなるか分からぬぞという指摘も今なされております。  特に一番問題に、我々に、日本にとって関係してくるのは金融の問題が大きな問題であろうと思いますが、特にそこのところで昨今問題になっている人民元の、レンミンピーですか、の切上げ問題のときがどうなるのか、WTOとの絡みでどうなっていくのか。  それからもう一点は、WTO加盟した、そしてそれに伴う措置を今後何年間にやらなきゃいかぬということがあるわけ、いろんな面でタイムスケジュール的になっているわけですけれども、その辺の中国対応についてどうなのかという点。  それからもう一点、別の観点からいきますと、その中国のべったりのめり込みの産業進出に対する問題意識といいますか、前からあったのかもしれませんが、中国の工場その他の一部を東南アジアに移すと、何割かは移すと。中国がおかしくなっても生産拠点東南アジアのどこかに移しておく、あるいは日本にもう一回引き戻すと、こういう動きも出ているように思います。  その辺についてのそれぞれの御認識を順次、外務財務経済産業の順でお答え願いたいと思います。
  7. 西宮伸一

    政府参考人西宮伸一君) 中国経済現状についてお答えを申し上げたいと思います。  中国経済は今大変な勢いで伸びておりまして、昨二〇〇三年度のGDP伸び率というのが実質成長で九・一%ということになっておりまして、九七年以降最も高い伸びを記録いたしております。その結果、米貨換算いたしますとGDPは約一兆四千億ドルぐらいと。他方、人口が多うございますから、一人当たりのGDPに直しますと千ドルをちょっと超えた辺り、具体的には千九十ドルというふうに中国政府の方から発表されております。  国内経済成長への寄与は、工業部門というのが非常に大きくて、九・一%のうち、第二次産業という計算をいたしますと六・五ポイント分ぐらいが第二次産業ではないかということが言われております。さらに、投資が非常に高い伸び率伸びておりまして、むしろ一部では過剰投資なのではないのか、重複投資なのではないのかということが言われております。むしろ消費は、御指摘ございましたけれども、堅調な伸びという感じでございまして、たまたまでございますけれども九・一%、つまりGDP伸びと全く同じでございますけれども投資が二六・七%の伸びということでございます。  そういった状況を踏まえまして、中国政府ではあくまでも七%成長を目標にやっていくのだということを述べておりまして、この間終わりました全人代に対する各種の報告を通じましても、むしろ建設国債の発行などは少し控え目にしていくということで、あくまでも七%成長でいくということを発表している次第でございます。  原料の逼迫などにつきましては、私、手元にいろんな資料というのを持ち合わせておりませんが、各所で報じられているところでございますし、それからエネルギーの、特に石油の輸入も増えてきております。消費自体がもう日本と同じ消費水準に達しているということでございまして、そういった状況になっておるわけでございます。  それから、原料と直接関係ございませんけれども、短期的に、進出企業お話もございましたので、今進出企業の間で若干話題になっており、問題になっておりますのは、電力の供給が間に合わないといったことも指摘されておるわけでございます。これをバブルと呼ぶかどうかというのはなかなかいろいろございまして、つい二、三年前までは若干デフレだという御意見もあったりしておりますが、中国政府は、申し上げましたように、総じて七%は維持したいけれども若干高めと認識しているのではないかと思われるような政策展開を取っておるというふうに思います。  以上でございます。
  8. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。
  9. 佐々江賢一郎

    政府参考人(佐々江賢一郎君) WTO加盟関係中国がどのようになっているかという関係につきまして、各論は別途あると思いますけれども、ちょっと総論だけ述べさせていただきたいと思います。  先生承知のとおり、中国加盟時に大変多くの約束をしております。これは、国境の措置関税、非関税障壁、それから国内の諸制度を整合的にするということで、各般にわたって約束をしております。その関係で、WTOの場では毎年中国がしっかりこの約束を履行しているかどうかという審査が行われております。今年もその審査が行われているわけでございますが、総じてガット加盟国から、現在の中国履行状況については、完璧じゃない、不十分なところはあるが、しかし全体としては一生懸命やっているというのがジュネーブにおける一般的な相場観であろうというふうに思います。  しかしながら、個別の分野に取っていきますと、例えば関税面での措置の実施、あるいは流通権貿易権、あるいは内国規制透明性等々の分野で必ずしもはっきりしない、どうなっているのかということが多々あるわけでございまして、そういう件。それから、特に知的所有権の問題、財産権の問題につきまして、偽物のたぐいでございますが、これの実際上の取締り、つまり法律はあるけれどもそれを実際上取り締まっているのか、ちゃんとということについて非常に大きな懸念が表明されているということでございます。
  10. 渡辺博史

    政府参考人渡辺博史君) 今の御質問のうち、金融及び人民元のところについてお答えを申し上げますけれども、先ほど御指摘ございましたように、中国に対して様々な形で資金が流れ込んでいる状況にあります。それは、直接投資という形で長い固定化された投資もありますし、ある程度将来の人民元の変動を見越したスペキュレーションの形で入ってくるお金もあるわけでありますけれども、それにつきましては人民銀行はかなり強烈に吸い上げをしてはおりますけれども、それでもやはり残った部分というのがございまして、かなり市場におけるマネーサプライというものが増えている状況にあります。  昨年の後半でいいますと、一九%あるいは一八%程度マネーサプライの増加というのが見られておるわけでございますから、そういう意味でいいますと、GDP伸び率が八から九ということに対して約倍の伸び率ということであって、かなり高い伸び率になっております。それを受けまして銀行信用伸びも二〇%を超える状況になっておりますので、これが果たして健全な貸出し先に行っているのかどうかということについては、中国銀行監督委員会が独立して作業を始めておりますけれども、かなり注意をして今見ているという状況にあるわけでございます。  一応、年が明けましてから、少しこういう形での金融伸びが高過ぎるということで、人民銀行あるいは銀行監督委員会相談の下にマネーサプライを一七%ぐらいに抑えてはどうかということで今指導をしているわけでありますけれども、そういうときに、抑えたときに、本来流れるべきところに流れなくなって、農業とか非常にお金を必要としているところが金融がタイトになり、日本でありましたような不動産業のところにお金が流れていくといった形のバランスの崩れた信用が供与されていくという懸念も持たれておりますところで、これを今かなり強烈に人民銀行中央銀行でございますが、これが監視をしているという状況にございます。  にもかかわらず、先ほど御指摘もありましたようにバブルの兆候が見られておりまして、例えば建物不動産価格指数ということで見ますと、大体全国平均で見ますと五%弱ぐらいで過去三年推移しておるわけでありますけれども、例えば上海建物だけを見ますと、二〇〇二年の最後のクオーターが一〇%の伸び、その後どんどん上がってまいりまして、二〇〇三年の最終四半期、十月から十二月でございますが、そのときは二八%の価格上昇率になっているということでございますので、やや日本の八〇年代の後半と似たような形になっているという状況にございます。  それで、先ほども申し上げましたような形で銀行信用伸びているわけでありますけれども、健全な形で伸びているのであれば特段の問題はございませんけれども、御承知のとおり中国不良債権というのは必ずしも楽観できる状況ではございませんで、昨年の十二月末現在におきまして、不良債権比率、トータルの貸出しに対する不良債権比率が一七・八%、あるいは対GDP比で見ますと二〇・九%という数字になっております。  これは今なお銀行の帳簿に残っている不良債権でありますが、これとほぼ同額のものが日本でいいますと整理回収機構に移行されておりますが、これについての処理がまだはっきりしていないということになりますと、悪い見方をしますと四割近くの不良債権についてまだ処理がはっきりしていない状況にあるというところでございます。それを受けまして昨年の末に四百五十億ドルのいわゆる公的資金注入というのを大手の二行にやったわけでありますが、それでもまだ不十分ではないかということで、追加的に措置を取ることについて現在検討中であるというふうに聞いております。  そういう中で、人民元がどうあるべきかということでありますけれども、これはなかなか難しいところがございまして、今申し上げたような経済あるいは金融実態から見ますと、必ずしも今の人民元相場が安いのかどうかというところはいろいろ議論の分かれるところでございます。しかしながら、アメリカとの貿易だけを見ますと、アメリカが膨大な赤字中国に対して持っていることは事実でありますから、アメリカ辺りからは様々な製造コスト問題等から、この為替水準についての是正という議論は出ているわけでございます。  ただ一方で、先ほど御指摘ございましたように、日本あるいは周辺の国でありますと、例えば韓国あるいはタイなどにおきましては、中国に対して部品あるいは生産財を供給する、それを使って中国組立て加工をしたものをアメリカあるいはヨーロッパといった最終市場に送っているという形での相互の関連関係が出ているわけでございますから、周辺諸国の中では、今の中国人民元相場が大きく動くことによって中国成長にそごを来した場合にはかなりマイナスの影響がそれらの周辺国に来るということについての懸念もあるということも事実でございます。  それから、日本との関係でいきますと、やや世の中の印象としては日本中国に対して赤字を相当に抱えているようなことが報道されておりますけれども中国との貿易を見る場合には、香港を経由して最終的に中国に行っているもの、あるいはその逆で動いているものも併せて見る必要があると思いますが、そういうものの全体で見ますと基本的には日本中国に対してまだ貿易黒字を持っている世界でございますので、という意味では、日本が売っているものあるいは日本が買っているものと、その両方のインパクトがあるわけでございます。  ただし、それは五年前、十年前であれば輸出入それぞれが小さかったわけですからそれぞれのインパクトは限られたものでありましたけれども輸出も増え、輸入も増えている中で、その差引き黒字が若干あるという状況にございますから、その輸入に伴って生ずる低価格製品国内での販売、それと競合する方々日本にいるわけですから、そういう面での被害というのも一方ではあるということが事実でございます。ですから、そういう面も全体を含めて考えていかなければいけないというふうに考えておるわけであります。  我々としては、中国が自らの判断でより良い形での為替を整えてくれるということが必要だと思いますけれども、いずれにせよ、今申し上げたような形で、中国が大きな形でその調整を行う、それが中国成長あるいはその周辺諸国に対する影響が大きく出ないような形にするためには、やはり、平ったい言葉で言いますとガス抜きといいますか、徐々に調整を行うことによって、ある日突然急激な調整がないということが望ましいと思いますので、それに向けて何ができるかということについて我々は中国仕事相手と話をしているところでございますし、我々も過去において優れた経験と間違った経験と両方あるわけでございますから、七一年のスミソニアンの当時、あるいは八五年のプラザ当時、その周辺において為替政策金融政策財政政策を何をやってきたかということについて中国とよく話を進めていると、そういう状況にございます。
  11. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) どうもありがとうございました。
  12. 田中伸男

    政府参考人田中伸男君) お答え申し上げます。  先生からの質問三つ主に私どもへの御質問があったかと思いますが、一つ原料輸入問題、原料高の話、それからWTO加盟に伴うその措置是正の問題、それから投資をしている会社が中国以外のところへも出て、今や重点を移しつつあるのではないかと、そういう御指摘。  最初の問題につきましては、確かに中国経済の拡大のお話は今皆様が御説明したとおりでございますけれども中国に対する投資が非常に外資伸びておりますんで、今や最大の外資受入れ国になっていると。そういった中で、生産拡大するといいますと当然私ども日本からの輸出も大きく増えまして、これによって日本経済が潤っている面は非常に大きい点があると思います。しかし、最近非常に活性化をしているのはいいことなんでございますけれども需要が増えて、原料でありますところの鉄鉱石だとか石炭、非鉄金属、こういった原料やら鋼材が大変中国需要が高まって、そのために値段が非常に国際的に上がっているという事態がございます。  これについて、我々の、日本が逆にそういうコスト高をむしろ逆に受けて企業の利益が圧縮されるとか原料の調達が難しくなるとかいう問題が起こり得るのではないかというふうに経済産業省も考えて懸念をしておりまして、いろいろな方面から情報を収集するというために、原材料についての連絡会議を省内に作りまして、一体どういうことが起こり、どういう影響があるのか、それを今じっくり検討しているところでございます。モニターを始めているところでございます。  具体的に、例えば、新聞にも出ておりましたけれどもコークス中国側輸出ライセンスを発給を抑えているんじゃないかというような疑いを持たれておりまして、これについては一体どういうことでやっているのか、一体どういう考えでいつまでそういったことを続けているんだ、実態として日本コークス需要は当然のことながらあるわけでございますので、こういった問題を中国側とも話をしつつございます。我々の産業が順調に経済回復しつつある中で困った問題にならないように、十分注意深く見ていく必要があると考えております。  それから、WTO中国加盟に伴いましていろいろな約束中国がしたわけでございますけれども、それがきちっと守られてきているかということについては、中国も入って今一年ちょっと、二年ぐらい、一年半ぐらいでございますので、まだ大目に見なければいけない面もあるのかもしれませんけれども、その中でも特に知的財産権を十分守っているのか、法制度は随分変えてきたわけでございますけれども、実際に取締りをしてくれているのかどうか。こういった問題については、個々いろいろな問題が起こるごとに中国側にもクレームをし、ミッションも出したり、具体的にどうやればいいかお互いに相談をしたり、こんなことで私ども懸念を伝えているところでございます。  WTO、そのほかにも、実際に輸入ライセンス輸入を拡大するという約束をしているにもかかわらずライセンスが十分出ていないんではないかとか、約束をした関税率が十分守られていないんではないかとか、それからアンチダンピングみたいな措置についてはWTOのルールに従って行う必要があるわけでございますけれども、それを十分守らずに乱発しているんではないかとか、こういったようなコンサーン、心配を私どもしておりまして、この辺のことにつきましては中国に二国間でいろいろと申入れもしておりますし、WTOの中のいろいろなプロセスを通じまして問題提起をしているところでございます。  最近に至りまして、先生御存じのように、半導体について中国側輸入品国産品について増値税の還付の仕方に差を付けているんではないかと、これが内国民待遇違反ではないかという懸念から米国が中国に対してWTO紛争処理メカニズムに訴える措置を取りました。日本もこれに第三国参加をして関心を示し、その是正を求めていくというポジションを取っているわけでございますけれども、こんなものも、中国側に対してこういった形での、紛争処理メカニズムを使った形で中国側是正を求めるというのも一つのやり方ではないかと、必要に応じ使っていくんであるというのが私どもの考え方でございます。  それから、三つ目の点でございますけれども企業中国大変投資をしているわけでございますけれども、SARSの影響があったときには日本へ引き返してくるとか東南アジアに移るとか、そういった議論ももちろんございました。確かに、中国だけに集中するリスクが大変高くなるわけでございますので、各社がそれぞれの戦略においてそれぞれ違った、マーケット特性でございますとか製品特性、技術の特性RアンドDをどこに置くか、そういったようなそれぞれの戦略に基づいて今や複合的にASEAN、中国、様々なマーケットを見ながら投資戦略を作っているというふうに私ども感じております。  政府としては、そういったものを助ける意味でもいろいろな形で、例えばEPA、FTAの御議論もまたこれから出るんだろうと思いますけれども、そういったものを充実して、産業界のニーズ、ハーモニゼーション、いろんな制度ハーモニゼーション、こういったような観点からいろいろな措置を取っていくべきであろうというふうに考えております。  簡単でございますが。
  13. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  続きまして、田名部匡省君。
  14. 田名部匡省

    田名部匡省君 これがやっぱりアメリカと、日米関係でかつては大分差がありましてね、どんどんどんどん日本が発展して貿易摩擦を起こしたと。その後、日本も相当成長してタイにいろんな工場が今度移転していっているという経緯があるんですね。  私は、羽田さんが総理のときに、当時、日本の月給が三十万ちょっと、タイが二万円ぐらいでしたかな、中国がわずか五千円ぐらいでしたかね、という質問をしたんです。このままおくと中国にどんどんどんどん日本企業が出ていきますよという質問をしたことあるんですね、結局そうなったんですけれども。タイは今余り議論になってないんですけれども、何回か私、行ってみたときに日本企業が随分行っていましてね。中国も行ってきましたけれども、今度は中国にどんどん行っているという、何か日米関係が今度は日本とよその関係になってきたという感じがしているんですね。  そこで、どこまでこれが行くのかなと、今のインドにしても中国にしても日本を追っ掛けているわけですから、そうしたときに一体日本はどういうふうにこれから進んでいけばいいのかなと。農業の問題だってこれからどうなっていくか私も分かりませんけれどもね、百万ヘクタール過剰なんですね、大体、今。そうすると、百万ヘクタール過剰な農業を一つ取ってみてもこれは大変なことだなと、減反といったって大変だし。  そんなことを考えていくと、日本の国というのは何か、今までは自分の国の発展を一生懸命、これはどこもそうでしょうけれども、やったのはいいけれども、そのツケがだんだん出てきているという感じがするんですね。したがって、やっぱり相手のことをよく分かった上で次の対策を立てていかないと、このままだらだらやっていたら、これ日本、本当におかしな国になっていくなと、そんな感じがするんですが、この辺を皆さんがどういう判断なすっているのか。FTAがいろいろこれは出てきますけれども、それらをひっくるめて日本の今後の方向というものはこうあるべきだというようなことがあったらちょっと伺っておきたいと思うんですが。順番にどうぞ。
  15. 佐々江賢一郎

    政府参考人(佐々江賢一郎君) それじゃ、私の方から、非常に大きな戦略的な話を先生の方から御提起されましたので、できる範囲でお答えさせていただきたいと思います。  ここに座っております政府側の者、かなりの多くが実は八〇年代、九〇年代で日米交渉、あるいは日米関係に携わった者が多いと思いますし、その意味先生がおっしゃることは非常にある面で理解できる面があると思います。特に、日本が相当アメリカとの間でキャッチアップをし、高付加価値を進め、その結果、幾つかの産業セクターにおいてアメリカと非常に深刻な摩擦に発展し、更にはその構造的な問題に発展して協議も行ったという歴史があることは先生今おっしゃられたとおりでありますけれども。じゃ、果たして日本中国との間、あるいは日本東南アジアとの間が同じような紛争のパターンでいくのかどうかということについて、私ちょっと、必ずしもちょっとよく分からない面があると思うわけでございます。  例えば、日本アメリカの場合は相当戦略的な産業、例えば自動車とかあるいはハイテクも含めまして、これは半導体のような紛争もございましたけれども、実は、アメリカにとって、繊維とかそういうことで別途競争力に問題のある産業もあったわけでございますけれども、当時のアメリカにとって相当重要な産業分野でやはり日本と競争し、闘っていかなければならないと。そういう意味で、当時、アメリカが非常に自分たちに対して脅威に感じたと。それから、自分たちの経済が非常に率直に言いまして疲弊したと、冷戦の影響もあったと思いますけれども。そういうことで、非常に、政治的にも経済的にも日本に対して非常につらく当たりやすかった土壌というのは当時もあったというふうに思うわけでございます。  その結果として日本がいろんな意味で構造調整し、あるいは市場開放していったという歴史があるわけでございますが、今の中国の場合に、確かに中国に対して日本から投資が行く、あるいは幾つかの分野においてある種の空洞化現象というのが生じておることは間違いないと思いますけれども、じゃ、その基幹的、戦略的な分野において中国が、日本、あるいはこれはアメリカとの関係でもそうでございますけれども、本当に脅かすまでに中国というのが今付加価値の高い産業を競争力を持ってすべてできるようになっているのかと。電気製品とか半導体とか幾つかの分野中国は相当追い上げてきている面もあると思いますけれども、しかし肝心のところは、まだ日本とかあるいは先進国の方で特に技術面、付加価値の高い分野においてはやはり依然として優位を保っているというのが現実だろうと思います。  したがいまして、これなかなか難しいと思いますけれども、私は、日本としては、むしろ日本企業投資する、あるいは貿易を高めるということを規制するような方向に動くのではなくて、やはりこれは自由貿易を基調としながら、できる限り日本側において、キャッチアップしてくるそういう中国、あるいは東南アジアもそうでございますけれども、先に行くようなやはり政策、より付加価値の高い産業、それからもう一つサービスがあると思いますけれども、そういう産業についてのやはり競争力を高めていくような、そういう政策をやっていくことが正攻法ではないかなというふうに思います。  先ほど、アメリカ中国の話出ておりましたけれどもアメリカ中国も恐らく日中に比べて更に貿易赤字が増えておりますので、貿易紛争は拡大する傾向にあります。恐らく今年も、より、選挙の季節もありますし、摩擦は恐らく増えるんではないかというふうに想像しますけれども、しかしその中身、貿易の中身を見てみましても、中国が本当にアメリカの例えば中核的なところにヒットするほどのところになっているかといえば、やはりまだ余裕があるんではないかという気もしているわけでございまして、そういう意味では、全く以前の日米関係と同じような摩擦が米中間に果たして起きていくのかということについては、もう少しやや時間の掛かるプロセスではないかなというふうに思っているわけでございます。
  16. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  次に、高野博師君。
  17. 高野博師

    ○高野博師君 農水省に一つだけというか、ちょっと大きいテーマなんですが、お伺いしたいと思いますが、FTAを進める中で、もうずっとこれは一貫して議論になっていることは、農業分野の構造改革をどうするのかと、あるいは、その農業の国際競争力を高め、一方で食料の自給率も高めなくちゃいけないというようなことをどうするのかと。  いろんな意見を聞きますと、輸入先を多角化すればいいんじゃないかというような意見、いや、もっと何か抜本的というか根本的な解決策はないものかということで、今までの時点で、私、自分は納得できていないんですが、例えば食料自給率、これは、一九七〇年と二〇〇一年比較しますと、先進国で自給率を減らしているのは日本だけなんですね。ドイツは六八%から九九%に上げていると。イギリスは四六%から六一%、スイスは四六から五五%。日本は六〇%から四〇%へ減らしていると。どうしてこんなに減ってしまったのかと。  農業問題の本質は土地と政治だと、こう言われているんですが、自作農主義を取る農地法、これはこのままでよかったのか。恐らく農業政策というのはもう根本的に失敗したんではないかと私は思っておりますが、農業の衰退と環境の破壊というような問題もあります。そこで、日本農業の再生ということについてどう考えているのか、自給率のアップということについてもどう考えているのか。  日本のそのものが、貿易黒字は十兆円なんですが、農林水産物の貿易赤字というのは七兆円も出しているわけですが、世界の水産物の約四割弱は日本輸入していると、もう食料の輸入大国なんですが。そこで、日本のこの食関連の産業というのは五十二兆円もあると。これは自動車産業よりも大きいと。この身近なところに巨大な産業日本にはあるわけですね。そうすると、最近は農産物に対するニーズとか、多様なニーズ、あるいは日本酒なんか見てもブランド化が進んでいるとか、こだわりが相当あるとかと。したがって、この農産物についても、自分の国の市場を考えれば、相当これは産業として成り立つはずではないかと思うんですね。もう一方で、食の安全ということも注目されていると。BSEとか鳥インフルエンザとか、あるいは農薬漬けになった野菜なんかを輸入していると。  こういう状況の中で、農水省に言いますと、三兆一千億円の農業予算というのは、半分以上はもうダムと道路を造っていると、建設業をやっていると、農業の生産というところに本当に使っていないんじゃないかというような意見もあります。それから、農協とか農業委員会の在り方、こういうことも含めて補助金行政どうするのかと。  そういう中で、バイオテクノロジーも相当発達していると。流通機構もそうですし、資本も、人材もいると。そういう中で、農業改革を本格的にやれば、むしろ国際競争力を高めて、FTAを結んだ国に逆に輸出できるのではないかということもあると思うんですね。そういう農業ビジネスということ、そういう視点から日本農業というのを考え直すべきではないかと思うんですが、審議官の御意見を伺いたいと思います。
  18. 松本有幸

    政府参考人松本有幸君) まず、輸入先の多角化等々のお話ありましたけれども、私どもの農水関係の政策転換につきましては、現在、今年度末までの閣議決定を目指しまして基本計画の見直しに取り組んでいるわけでございます。その際には、やる気と能力のある担い手の経営の発展を可能とする施策の充実ということで進めているところでございます。  品目別に今まで価格政策を中心にやってきたわけでございますけれども、今後は、品目別の、例えば麦は麦、大豆は大豆といったような品目別の政策ではなくて、経営体の経営に着目した政策を検討しようということで、現在、審議会を中心に検討しているところでございます。その際には、各国の政策の動向等も視野に入れながら進めていきたいというふうに考えているところでございます。  それから、輸入先の多角化ということがお話あったわけでございますが、私ども、平成十一年に新しい基本法を作りまして、その中で、食料・農業・農村の四つの基本理念ということで進めてきたわけでございますけれども、その中で食料の安全保障という考え方が入っているわけでございます。  我が国、現在、農地が四百七十四万ヘクタールあるわけでございますけれども、自給率は御案内のとおり四五%を基本計画で目指してやっておりますけれども、ここ数年四〇%で横ばいになっているというわけでございまして、言い換えれば、残りの六〇%は外国からの食料に依存しているわけでございます。その依存している部分を農地に換算しますと約千二百万ヘクタールもあるということでございまして、したがって、なかなか一挙に自給率を高めるというのは農地資源の関係で難しい面があるわけでございまして、そういう点では輸入先からの安定的な輸入というものが非常に重要になるわけでございます。  ただ一方、我が国の農業、単に食料の供給ということではなくて、農業が行われることによりましていろいろな多面的効果を持っているわけでございますので、食料の自給というものは私どもとしても重要な位置付けをしているわけでございます。したがって、食料の国内自給と輸入、それから短期的な不足に対しましては備蓄をやっていこうということで進めているところでございます。  それから、各国が自給率上げた中で日本が自給率下げたわけでございます。これは先進国の中で非常に特異な動きをしたわけでございますが、何といいましても、一番ここ何十年かの中での大きな変化の中での我が国の特異な動きとしては、もちろん生産の部分もあるわけでございますけれども、一番ここ三十年の中で大きい変化といいますのは、我が国はほかの先進国にはない、食生活が非常にドラスチックに変化したという部分がありまして、御案内のとおり、米の消費は減る一方で、畜産物、これは畜産物については加工畜産ということで、穀物、飼料穀物を輸入して肉を国内で生産するという加工畜産だったわけで、この部分がかなり輸入に依存せざるを得なくなったということ。それからもう一つ、食品の油でございますが、食用の油の原料が相当、もう九十数%外国からの輸入に依存しておりますけれども、ここの部分の需要が相当増えたというわけでございまして、ここ数十年の一人当たり二千数百キロカロリーの消費量を見てみますと、この三つを合わせますと大体同じなんですけれども、米が減った分、畜産物、油が増えているということでございます。  したがいまして、この消費の変化が大きかったということで、私どもとしては、今後は食育の中での食生活の改善を国民の理解を得ながら進めていくということも含めて、それから、もちろん当然のことながら、生産の部分では足腰の強い農業を作ることによって食料供給力を強化していこうということで進めているところでございます。  それから、環境の部分のお話もありましたけれども、農業、元々は自然に働き掛けて生産をするわけで、本質的には自然に対して影響を与えるわけでございますけれども、できるだけ環境保全に資するような農業をやっていこうということで、これまでも持続的な農業の法律等々を作ってやってきておりますけれども、今後さらに、面で広がった環境保全型の農業に加えて、有機農業を始めとした更に自然環境を保全するようなプラスアルファの農業等に対してどういった政策手段でやっていくか、こういうことも今年度の検討の中で審議会の議論を踏まえて検討していきたいというふうに考えております。  それから、基盤整備、農林水産予算三兆円のうち、かなりの部分あるということでございました。数年前までは農業関係の基盤整備の予算は一兆円を超えるものがあったわけですけれども、ここのところの公共予算の見直しの中でかなり減ってきております。そういった中で、優先順位を付けて、コスト縮減も図りながらやってきているところでございますけれども、そういった中でもうかなり必要な部分はぎりぎりのところまで来ているということでございますので、今回検討の中でももちろん全体の流れは見直しをするわけでございますけれども、そういったことも踏まえて、全体の見直し、検討を進めていきたいというふうに考えております。  以上でございます。
  19. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 何か農業白書を聞いておったような感じですけれども。いいですか。
  20. 高野博師

    ○高野博師君 ちょっと一言。  要するに、日本には巨大な農産物、食の市場があるじゃないかと、ここをどうするのかということが聞きたかったんですが、考えてないかと思いますので結構でございます。
  21. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) いや、答えがあるんならどうぞ。
  22. 松本有幸

    政府参考人松本有幸君) 御案内のとおり、農業、第一次産業の生産の部分では十兆円と言われておりますけれども、流通、加工、それから食品産業、外食、こういうことも含めますと、最近の試算では八十兆円の規模がありますので、その辺のところを、できるだけ農家等にもその付加価値が残るような形で流通、特に流通でございますけれども、効率化等々図っていくことで全体の発展を図っていけないものかというふうに考えております。
  23. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  続きまして、池田幹幸君。
  24. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 日本共産党の池田幹幸でございます。  私、外務、農水、それから経済産業省に伺いたいと思うんです。  実は、先月の二十五、二十六日にベトナムのフエで第三回アジア欧州議員会議が開かれました。私、日本の議員団の代表の一員として参加させていただいたんですが、ここで非常に啓発を受けたこともございまして、そのことを中心にちょっとひとつ伺いたいと思うんですが、この会議は政治、経済、文化等々があったんですけれども、テーマ別で経済の問題がありました。  そこで論じられたことは非常に幅広くて、WTO、FTA、それからグローバル化の問題、いろいろあったんですが、その中で最終的には宣言という形でまとめられました。一言で言って、この会議、私、強く感じたのは、アメリカ中心のグローバル化ですね、これに対して非常に批判の声が強かったんです。まとめられた文章はそんなに強い言葉で言われているものではないんですけれども、しかし、ここのところを私は非常に大事にしていきたいなと思っているのは、EUにしましてもEUの拡大、これはもう大事だと。それから、アジアにおいては、東アジア共同体という言葉で言えるんでしょうか、ASEANプラス3ですね、それについて緊密な経済連携を構築しようとするということを、ヨーロッパもアジアもともにこれ歓迎しようという形で共同宣言の基調に据えられたということですね。これ非常に大事な点だと思うんです。  それともう一つは、地域間及び二国間ですね、地域及び二国間レベルでやられるその行動が、ここが大事なんだけれども世界経済システムに対して積み木を積み上げる役割となるように、多国間貿易関係を補完し、強化すべきであり、かつWTOのルールと規律に沿うべきであるということを合意したとあるんですね。ここは一見、外務省のFTAはWTOを補完するものだという考え方、これはこれで間違いじゃないんですが、これを更に突き進めるものになっているんですね。わざわざWTOのルールと規律と並べて、多国間貿易関係を補完し強化するということが並べているんですね。ここに非常に意味があるわけです。  というのは、その次の次に出てくる宣言がそこを意味していると思うんですが、こう言っているんですよね。現在の世界貿易システムは、開発途上国の利益を犠牲にし、依然として不公平かつ不公正である事実に留意したと、これに関して、議会人は、強く、開かれた、透明性のある、公平な多国間貿易システムに対し、コミットメントを低下させないことを表明すると、こうあるんです。  つまり、この二つを併せ考えますと、確かにFTAというのはWTOを補完する方向でやられなければならないんだけれども、しかし、今のWTOはこれは不公平、不公正だよ、これは民主的に改革していかなければならないんだよということをここに意味しているんですね。  事実、その次のまた十六の項目ではこんなことを言っているんですね。二地域間の貿易及び投資の流れを強化しようとする最近の積極的な進展の動きを認識した上で、議会人は、同地域の国民の利益及びより公平かつ公正な貿易システムのために、二大陸間の経済協力を促進するために更に努力するということなんですね。だから、今のままの世界貿易システム駄目なんだという一つの考え方がこの基調に据わってきている。  ですから、私、外務省の「我が国のFTA戦略」を読ませていただきましたが、その中に、こういった世界貿易システムの更なる改革という考え方はこの中には私はないと思うんです。確かに、FTAを大事に考え、WTOを大事に考え、その両方を大事にするんだよという考え方はあるんですけれども、更にそこから一歩進んだ考え方はこの中にはないんじゃないか。  こういう点についてどうやっていったらいいのか。これは外務省だけじゃありません、経済産業省、農水省、それぞれの課題を抱えておられると思うんですけれども、改革の方向というものは考えておられるのか。おられるとすれば、どういった方向で考えているのかということを伺いたいと思います。  それからもう一つ、農水省については特別に、先月、これも三月十三日にマニラでやられた会議がありますね。貿易及び農業政策に関する「協力のためのアジア農業者グループ」共同宣言というのが出されました。これは私、非常に大事なことが書かれてあると思うんです。時間的に余りないので紹介も余りできませんけれども、ともかく農業をただ単に守ろうといった考え方から出発しているんじゃなしに、アジアの、アジア・モンスーン地域の農業者、まあ農業団体ですね、それが一緒に協力し合ってやっていこうじゃないかという基調があって、FTAも大事に進めていこう、FTAを非常に我々は発展のためには必要だということを前提とした会議になっているんです。これ、非常に大事だと思うんですね。ただ単に自国の農業だけを守ろうというふうなことを考えているわけじゃないということ。  この共同宣言に対して、今農水省はどのようにこれをとらえているのか、これを受けて日本の農業、どういった方向に持っていかなければならないというふうに考えているのかということについてお話しいただきたいと思うんです。特に、これの中で言われているのは、FTA交渉では、参加するすべての国の農業の共存が可能とするよう、柔軟なアプローチが必要だと結論的に言っているわけですね。ここのところをどう受け止めるかということをお伺いしたいと思います。
  25. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) それでは、最初の質問は各役所に関係あるんですけれども外務省が代表して御答弁をいただいて、二番目の問題は農林水産省の問題ですから農林水産省から答弁をいただくということでお願いいたしたいと思います。  それでは、外務省佐々江経済局長。
  26. 佐々江賢一郎

    政府参考人(佐々江賢一郎君) それでは、最初の経済グローバリゼーションとWTO、FTAの関係、ないしはアジア地域と欧州、さらにアメリカ大陸との関係についての今の先生お話でございますが、確かに、近年WTOで特に起こっておりますことは、特にアメリカを中心、これはアメリカのプラス欧州、それから日本も入っているわけでございますが、これに対して、今まで世界貿易秩序あるいは貿易ルールというものがやはり先進国に有利にできているんではないかという極めて強い途上国のフラストレーションがあることは事実でございます。  そういう意味において、実は今回のWTOのドーハ・ラウンドの交渉というのは、正に開発ラウンドと申しますか、開発途上国の利益を相当増進して、これをいわゆるグローバリゼーションの負の遺産をできる限りなくするようにやろうじゃないか、これがいわゆる今のドーハ・ラウンドの交渉の目標と申しますか、お題目と言うと怒られますけれども、そういうことでございます。  しかし、御承知のとおり、実態上、いったん個別の交渉に移りますと、なかなか、これが途上国と先進国の対立がどうも実際の交渉においてはなかなか縮まっていかないということでございます。この中でも、特に農業の分野については、後でお話あると思いますけれども、特に先進国と途上国、それから先進国の中の対立も輸出国と輸入国とあるということで、その面について今のところめどが立っていないということでございます。  また、この交渉の中でも、特に途上国は自分たちに特別のルールを適用せよということを主張しておるわけでございまして、そういう意味においても、途上国に対する一定の配慮は必要でございますけれども、完全に途上国とは別のルールを適用するようなことになりますと、世界全体の貿易秩序あるいはルールの面から問題もあるということで、これをどの程度配慮すべきかということが一つの課題であるということだろうと思います。  そういう意味で、このドーハ・ラウンドをできる限り各国が妥協をしながら進めること、これが究極的には、先ほど先生の言われました、グローバリゼーションの負の遺産を一番大きなくくり方で途上国の利益になるように底上げするという一つの正攻法であろうというふうに思っております。  しかしながら、他方で、今のWTOの交渉というのがなかなか、数多くの国もあり利害も錯綜しているということで、なかなか進まないということで、各国、これはアメリカもそうでございますけれども、欧州もそう、それから日本も最近FTAに力を入れているのは、正にグローバルな交渉を右目で見ながら、しかし自分たちにとってやはりWTO交渉では実現できないもの、あるいはWTO交渉を更に超えていくやっぱり有利な関係を特定の国あるいは地域と結ぶべきではないかと。そのことによって、むしろマイナスの効果よりは、投資の促進とか、プラスの経済的な効果をもたらすんではないかと。  そういう観点から、今各国が同時にこの補完するものとしてFTAの作業を進めているということでございまして、この意味において、先生出席されました会議において、特に日本、アジアとEUとの関係、あるいは両国の大陸との関係のやはり貿易投資経済関係の強化についてうたわれる、あるいはそういうことによって世界の体制を補完するという考え方が打ち出されたことは非常に有益だったというふうに思いますし、政府としても、基本的には多国間主義を補強するものとしてのやっぱり二国間主義、地域主義というものを推し進めていくべきではないかというふうに考えております。
  27. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 次に、農林水産省村上総括審議官
  28. 村上秀徳

    政府参考人村上秀徳君) 農業の関係でございます。  WTOの場におきましては、今、佐々江局長から話ありましたように、途上国と先進国の関係、あるいは先進国の中で輸出国と輸入国の間という問題がございますが、日本はいろんなタイプの農業が共存できるような農業の交渉結果というものをやはり求めていくべきであるということで、その中でも食料安全保障とか多面的機能、非貿易的関心事項に配慮した形で、その改革を進めるにしてもその辺を配慮した形で各国が農業政策を継続的に追求できる、あるいは各国の農業が共存できるような形で農業交渉を行うべきである、こういう主張をしてきておりますし、アジア諸国に対してもそのような考え方を働き掛けたり意見交換をしてきているわけでございます。  FTAの関係で、フィリピンでのアジア農業者会議についてお話がございました。  このアジア農業者会議につきましては、WTOの農業交渉をめぐりましても過去何回かこういう会合を持って議論をしてきておりまして、それから今回、マニラにおきましては特に最近交渉が本格化してきておりますFTAの問題に焦点を当てて議論が行われたと、基本的には農業者団体同士の会合でございますけれども。その中で、やはりFTAを進めるに当たって、各国の農業がお互いに併存していけるように、それから各国の農業者がメリットを受けるような形で進めるべきではないかというような線で宣言がまとめられたというふうに聞いております。現在、ちょっと手元に持っておりませんけれども。  もちろん、各国の置かれている農業の事情、それから産品、それぞれの得意な産品についてはかなり違いがございまして、それから先進国である日本に対する市場としての期待というのもかなりございますので、その辺は各国によって多少立場に違いはございますけれども、大筋で、今申し上げましたような基本的な考え方の中でFTAを進めていこうという議論が行われてきているということでございます。  政府としましては、WTO交渉でもそうでございますが、基本的にFTA交渉を進めるに当たって、そういう点を十分念頭に置いて、相手国の事情をよく踏まえ、それから日本の農業においての食料安全保障とか多面的機能などの問題に十分配慮して、他方で改革を進めながら交渉を進めていくという考え方に立ってやっているところでございます。  それから、もう一つ付け加えますと、アジア農業者会議の中で、やはり互いの農家の共存という中で日本ないしお互いの農業分野における協力というようなことについても議論をされておりまして、そういう点も包括した形でFTA交渉の中でも議論していくつもりでいるところでございます。  以上でございます。
  29. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  続きまして、大田昌秀君。
  30. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 時間がございませんので、簡単に質問を一点だけ外務省お願いいたします。  昨年の十二月十一、十二の両日、東京で日本・アジア諸国連合首脳会議が行われ、東アジア共同体構想を盛り込んだ東京宣言が採択されました。同時に、我が国の東南アジア友好協力条約への加入が表明されました。しかし、その翌日、毎日新聞がこのことについて社説で論評しておりますが、その中で、東南アジア友好協力条約への我が国の加入は遅過ぎたんじゃないかと。アメリカばかりに目を向けて、近隣のアジア諸国に対する認識が十分でなかったのではないかという趣旨の論評をしておりますが、経済的な観点からの東アジア政策というのはどうなっているのか、簡潔に御説明いただけますか。
  31. 西宮伸一

    政府参考人西宮伸一君) お答えいたします。  昨年の十二月に東京で日本とASEANの特別首脳会議がございまして、今先生指摘のような、TACと言っておりますけれども東南アジア友好協力条約の加盟の意図表示をいたしました。  これは、条約といたしましてはASEANの関係を作っていくというのが元々の姿でございまして、最近これをASEAN以外の域外国に開放したといった事情がございまして、したがいまして、域外国と元の加盟国であるASEANの関係がどういう条約関係に立つのかといったような点を中心に検討をいたしましておりましたところ、ASEANの方から、去年の十月のバリ島におけます日・ASEAN首脳会議などの場で是非入ってくれということで検討を加速いたしまして入ったわけでございまして、別にアメリカとの関係というのが一部に言われましたけれども、そういったことでは全くございませんで、条約論としていかなる条約かということで検討しておったものに加盟をした次第でございます。  経済を含めましてASEANとの関係につきましては、この日・ASEAN特別首脳会議を契機に、基本的にASEANが自ら共同体意識を強めていこうということを十月のバリ会議のASEAN自身の首脳会議で申しております。これは、一つは政治・安全保障共同体、これは政治・安全保障という言い方をしておりますけれども、軍事同盟ではないというふうにASEANは申しておりまして、基本的にはテロとかそういった国境を越える問題に対応していくということかと思いますが、二つ目が経済共同体、三つ目が社会・文化共同体と。三つの共同体を一緒にしてASEANも共同体意識を高めていこうということを宣言しておりまして、我が国も非常に大きく申し上げれば、こうしたASEANの共同体作り、言い換えれば統合といったようなものに協力していくというのが、経済も含めまして特別首脳会談で我々が述べたことの全体ではなかろうかと存じます。
  32. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 ありがとうございました。終わります。
  33. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 以上で各会派一人一巡いたしましたので、これから本来でございますと自由質疑に入ってまいるところでございますが、予定の時間が参りましたので、ここで政府参考人の皆さんとの質疑は終わりたいと思うんですが、ただ一つ、今日は五つの省から最高の参考人が出席をしていただいておるんですが、その中で一つだけ質問が当たらなかった省がございます。それは厚生労働でございまして、どなたか委員の方で厚生労働に関します質疑があれば是非していただきたいと思います。そうでないと皆川議官も大変寂しい思いをされるのではないかと。
  34. 三浦一水

    ○三浦一水君 進行に協力しまして。
  35. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) じゃ、ありがとうございます。三浦一水君。
  36. 三浦一水

    ○三浦一水君 今WTO、それからFTAの各国との協議の中で、SPSに関することがたくさんございます。やっぱり我が国が過度な貿易外の障壁をそのことを利用して作っているんではないかという各国の批判があるということでありますが、これはやっぱり国民の、いわゆる我が国の消費の在り方、そして食に対する安心、安全への関心というものを背景にきちっとしたやっぱり厚生省もその面では対応を持っていただきたいと思うんですが、その辺ちょっとお答えをいただけますか。
  37. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございます。  どうぞ、皆川議官、お待たせしました。
  38. 皆川尚史

    政府参考人皆川尚史君) ありがとうございます。  確かに、FTA交渉の中でも、SPS、直接間接に言及があるところございますが、今先生おっしゃいましたように、私どもとしては、二国間でも一般原則にのっとりきちっとした対応をしていますし、今後ともしようと思います。そういう中で、FTAでどういう形で相手側が御要請があるかは分かりませんが、基本原則は、SPSについては二国間でこれまでの原則にのっとってきっちりやると、こういう形で今後とも進めてまいりたいと思います。
  39. 三浦一水

    ○三浦一水君 ありがとうございました。  ほかの省庁、もうお帰りになるというので、一つ要望だけしておきたいんですが……
  40. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) じゃ、質疑どうぞ。ほかの方にもどうぞ、いいですよ。じゃ、どうぞ。座ったままで結構ですから。
  41. 三浦一水

    ○三浦一水君 余り機会をいただかないんでつい意気込みました。  今日は本当に、調査会長始め、御配慮で、本当に我が国の各国協議の中で主戦に立っている皆さん方を御案内いただきまして、非常に有意義であったと思っております。  カンクンで一緒にWTOの協議で参加させていただいた皆さん方も多いようでありますが、一つ、今回メキシコとの協議を、あるいは今後に控えたアジア各国との協議を控えまして、私、所感を持ちますのは、もう少し、このFTAに関してでありますけれども、トータルな議論というかイメージというか、それを国民に対してもお示しをいただきながらその是非というものを協議していかなければならないんではないかという印象を持っております。  それは、何か鉱工業の分野でメキシコの場合によく言われましたように、四千億の国益が損なわれているとか、非常に一部だけを見た話でありまして、本来、FTAのここの協議をするに当たりましては、両国がまず双方にメリットがあるということが大きな前提であろうというふうに思います。鉱工業の分野だけを見ても、メキシコ側のいわゆるメリットということも、投資環境が整備をされてそして雇用が図れると、その面では我が国がマイナスになる面もあるわけですけれども国内的な空洞化ということで。そういう大きなメリットをメキシコ側も持っているというところを、鉱工業の分野では往復で、我々は四千億というけれども向こう側のこともよく分析をしながら、往復で貿易量としてあるいは投資の面でどのくらいのイメージになるんだということ、それから農林水の分野ではどのくらいのイメージになるんだと、その大きな視点を持ちながらやっぱりやっていくべきだろう。どうもこれまでの議論の中で、そういう、それに類する資料の提供もいただいたような思いがありませんし、そこのところがもう一つ国民としてこの問題を整理していく中で重要な問題じゃないかなと思っております。  それから、国によってその全体のボリュームが違うということがまずありますね、国によって。そこで、我々が協議の重点をどの辺に置いてどのくらい置いていくべきかということも、当然これは現実的にあると思うんですよ。こういうものも非常に少ない中で議論が続けられているというのは僕はよろしくないと。逆に言いますと、もう各分野の主張だけに終わって、国内世論がそれに向かって統一されていないという状況ができてくるならば、それはもう一番最悪だというふうに思っております。  そこはもう十分お分かりの皆さん方ばかりでありますので、私は要望させていただいて、今後、党の場面もありましょうし、委員会の場面もありましょうから、また具体的にいろいろさせていただきたいと思います。  特にそういう点から、じゃ外務省からその点、御意見がありましたら、ちょっと一言聞かせていただきたいと思います。
  42. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 三浦委員の御質問は、まず外務省の答弁の前に、経済産業省と農水省から、お互いがお互いの立場をどのように考えているのかということが私は大変興味があることではないかと思います。それをお伺いして、後、外務省が総括をするということであってほしいと思います。  それでは、まず経済産業省田中通商機構部長
  43. 田中伸男

    政府参考人田中伸男君) ありがとうございます。大変興味をお持ちいただきましてありがとうございます。  隣の村上とは私もしょっちゅう交渉を一緒にしております。毎日のように、そういう場では連絡を取り合いながら、お互いに何が取れて何が取れない、お互いに何を取るとトータルで得になるのかという相談は、農水省と経済産業省は日々やっております。  先ほど三浦先生から四千億円のお話がございました。ちょっとこの数字が出歩き過ぎまして大変有名になってしまったんでございますが、これは輸入が、メキシコに対しては、メキシコに対する輸出が、メキシコがEC及びアメリカ、NAFTAの中でああいったFTAをやったために、日本のメキシコへの輸出又は投資がずっと減っていってしまったわけでございますね。そのおかげで、本来であればこのぐらいは伸びていたんじゃないのというのが四千億円でありますので、確かに損をしたかどうかというのは、その結果としてはそういう数字があるんでございますけれども、それははっきりしない数字でございます。  ただ、ある国が日本とはFTAがない、その代わり、逆にその近傍であるヨーロッパ、アメリカとFTAを持った、それによるデメリット、その損害ですね、日本に与えた損害が実は相当大きかったという、それを証明するのがこのメキシコのケースでありまして、実は同じことがASEANについても言える可能性があります。それは、ASEANが逆に日本とやらずに中国とやる、インドとやるというふうになった場合に、日本が被る損害はメキシコの比ではないだろうというふうに我々考えておりまして、そういったことを考える一つの指標ということでああいう数字を挙げたわけでございます。  もう三浦先生おっしゃるとおり、両国にメリットがないと意味がない。確かに、FTAがメキシコとできますと日本からの投資もメキシコに対して進むわけでございますので、メキシコ側で雇用を作る、そこで生産が興る、それがまた日本輸出される、そういうことも当然起こってくる可能性はあるわけでございますので、そういったことを勘案すれば、確かに鉱工業の分野においてもメキシコ側が取るものがあったんだろうというふうに考えております。  農業についてはもう村上さんにすべて譲りますけれども、そういったことで、お互いにウイン・ウインになる、いろいろなセクターでウイン・ウインになると。鉱工業においても農業においても、日本から農産品がメキシコに輸出する可能性だってあるんだろうと思いますし、そういったものを全体でこれからよく、国民的議論をするというふうに三浦先生おっしゃいましたけれども、できるだけ明らかにして、ASEANとのFTA、韓国とのFTA、そして東アジア全体との経済統合という議論をしていくべきだろうというのが私どもの考え方でございます。
  44. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  村上総括審議官
  45. 村上秀徳

    政府参考人村上秀徳君) FTAを進めるに当たりまして、まずある国とやる場合におきまして、やはり全体としてどういうメリットがあり、どういうデメリットがあるのかということ、これはそれぞれのセクターもございますし、それから単に経済的な問題ではなくて政治的な問題も恐らくあると思いますが、そういうものを全体として国民の皆さんによく説明をしていくということは非常に重要だと思います。  特に、農業の関係でいきますと、基本的にはFTAをやる場合に我が国からの取るものというのはほとんどない場合が現実の問題としてはほとんどでございまして、そういう中でFTAをどういう、進めていくか。FTAを進めるときに農業を除外して進めるわけにはまいりませんので、その中でぎりぎりの対応していくわけですけれども、そういう中で国内的な理解を得ていくためには、全体としてどういう利益があるかというようなことについて十分政府部内でも議論をする必要がありますし、国民の皆様に示していく必要があるというふうに思っております。  もちろん、今後のアジア諸国とのFTAの交渉などにおきましても、またメキシコにおいても全くその輸出の可能性がないというわけではございませんので、そういう視点も入れて今後交渉に当たっていきたいというふうに思っております。  それから、交渉の中では政府間で相当いろんな議論をいたしますので、時々不協和音のように聞こえる場合もあるかと思いますが、交渉に当たっては一体となって一つの交渉方針の中でやっているということを付け加えさしていただきたいと思います。  以上でございます。
  46. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございます。  そのように、両省で日々お目に掛かっておるようでございますが、それを続けて、しっかりと、国益のため、それとやはり今のグローバルの時代ですから、相手国のことも考えて引き続きお願いします。  そして、厚生労働省が来ていただいておりますのも、FTAの関係で来ていただいておるわけでございまして、それはなぜかといいますと、人的な問題でございます。ですから、その三省庁、連絡を取り合って、よろしくお願いします。  総括を外務省。佐々江経済局長、どうぞ。
  47. 佐々江賢一郎

    政府参考人(佐々江賢一郎君) 始めと終わりだけ登場するのはややあれなんでございますが。  既に言い尽くされているような気もいたしますが、私、最後に申し上げたいと思うのは、交渉上のギブ・アンド・テークの問題と申しますか、例えば通常の交渉、メキシコもそうでございますが、ASEANとの交渉でも、我が国の主要関心事項としては、工業製品関税撤廃とか、投資自由化の促進とか、特定サービスについて自由化するとか、政府調達市場とか、知的財産権とか、手続を透明にするとか、ビジネス環境を良くすると。これはすべて相手国の市場に対して我が国が有利にするように要求するという、そういう意味ではテークの話でございますけれども。なお、これに対して向こうの方からは、基本的には日本に対する輸出についての関心、これは農産物がかなり多いわけでございますが、それに限らず工業品もある、韓国の場合は工業品もあると思いますけれども、それと基本的には人の移動の話と、それにプラス日本がどういう技術協力をしてくれるのか、各分野で協力してくれる、主としてこの三つの分野が非常に要求される側としては多いわけでございますけれども。  これそれぞれについて、やはりもちろん交渉でございますからギブ・アンド・テークということ、常にあるわけでございますけれども、他方で、我々が交渉の、より一層先進国の立場としてアジアとの交渉でつらい目に遭うというのは、やはりアジアの諸国は日本を先進国として見ていると、したがって、なかなかギブ・アンド・テークといっても、アジアから見れば自分たちは開発途上国なんだから、より先進国である日本が大きな懐を見せてほしいと、譲歩してほしいと、それがアジアにおけるリーダーシップだろうと、こういう感じが常にあるので、ここがややアジアとの関係においては交渉上難しい局面もあるということだろうと思います。  他方、このギブ・アンド・テークの結果だけを一つ一つを取って、それがバランスしているかということを見るのが果たして日本の中長期的な国益、将来にとっていいのかということについてはまた別の視点が必要であろうというふうに思います。特に、もちろん日本側にとって特に多くの関税は下がっておりますし、難しいものが多いということでございますので、その分だけ、国境措置等を引き下げるということは日本にとって倍加する痛みがあるということは当然であることでございますけれども、しかし同時に、途上国にとって高い関税をゼロにするようなことは日本以上の痛みがあるということも同時に理解しなければいけないことで、その辺を勘案しながら、実は双方の中でお互いに痛みをしながら、どうやって競争力を付けていくかと、お互いにすみ分けをするかと、こういうことを一緒にやるということに、やはりこの自由貿易協定あるいは経済連携協定の本質的な政治外交上の意味がそこにあるというふうに思っております。  ちょっと総括になったかどうか分かりませんが、以上でございます。
  48. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  それでは、政府参考人との質疑はこの程度といたしたいと思います。  大変参考人の皆様方は、すばらしい御意見をいただきましてありがとうございました。どうぞ御退席いただいて結構でございます。ありがとうございました。  それでは、続きまして、委員間の意見交換を行います。  議事の進め方でございますが、これはいつものとおりでございますが、あらかじめ発言者を定めず、自由討議方式により意見交換を行います。  発言を希望される方は、挙手の上、私の指名を待って発言を行っていただきたいと存じます。  できるだけ多くの委員方々発言できますよう、委員の一回の発言時間は五分程度お願いをいたしたいと思います。  また、御発言はすべて着席のままで結構でございます。  なお、これも理事会のいつもの協議の結果ではございますが、まず大会派順に各会派一人一巡するよう指名いたしたいと存じますので、よろしくお願いをいたします。  それでは、まず最初に小林温君。
  49. 小林温

    ○小林温君 自民党の小林温でございます。  私も三年目に議員になってなりましたが、この調査会でイスラム社会の問題、そしてこの東アジアの問題について取り上げていただいて、大変貴重な議論をさせていただいたりいろんな参考人の御意見を拝聴させていただいて、こういうテーマ設定をしていただいた会長始め理事の皆様にまずもって御礼を申し上げたいと、これは常々思っていることでございますので、重ねて申し上げたいと思います。  議論の中でもFTAについて何度か討議をさせていただきました。今日は少しそのFTAに絞って私の意見を表明をさせていただきたいと思うわけでございますが、今、メキシコとある程度の合意を見て、これから年内中に数か国との協議を残しているわけでございますが、どうもよく言われるのは、我が国のFTAへの取組が受け身であるということでございます。しかし、今の現実の国際社会の流れを見ていると、国際社会が流れているからそれに合わせて日本も追っ掛けていかなければいけないという取組では到底間に合わない、あるいはそのFTAに積極的な意義を見いだすこともできないというのは明白でございまして、今こそ、こうした我々の議論も踏まえて、FTAというものがこの日本経済社会においてどういう影響を持っているかということ、それを論理的に構成していく必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  先ほど、政府の参考人の皆さんの意見もいろいろいただいたわけでございますが、やはりこれはよく指摘されることでございますが、各役所の所管の業界の、あるいはその産業の利害の調整ということがFTAの各国との交渉の現場においても現実的には露呈されてしまう、あるいはその役所自体の利害というものもそこで実は大きな障害になる可能性もあるわけでございます。今日はこうして参考人の方々もいなくなったわけでございますので、政治家の立場で主体的なFTA戦略というものを議論すべきだろうというふうに思います。  それで、その際の私なりの留意点というものを考えてみました。まず、やはり我々政治の立場でこのFTAの問題を考えるときに、まず担保しなければならない第一の点がその質だろうというふうに思うわけでございます。  各交渉の中では例外規定が当然盛り込まれるわけでございますし、あるいは原産地規則というものもその条件の中に入るわけでございますが、これをいかに例外を少なく、そして透明性を持たせていくかということを、まず質を担保するという意味で実現していかなければならない。それと同時に、スコープを大きくする。これは地理的なもののみならず、FTAに対してEPAという言葉があるわけでございますが、FTAというのはどちらかというと貿易、物の貿易を中心にした概念である中で、EPAというのはもう少し広い部分を取り扱う概念でもございますので、関税の撤廃や貿易投資の自由化だけじゃなくて、例えば制度の構築であるとか経済技術協力、それからその交渉ルールにおいてもその枠組みを作っていくという意味で、このEPAという概念自体をこれから我々はもっと深めていく必要があるんじゃないかというふうに思うわけでございます。  それともう一つは、先日、予算委員会の視察で九州に行ってまいりましたが、かつて空洞化が叫ばれていた各種の情報家電を中心とする産業の今工場誘致が、実は九州のみならず全国各地で活発になっているわけです。家電メーカー中心に数百億あるいは一千億を超えるような投資にも今踏み切っているわけで、これは、高付加価値の製品の核となる部分はやはり日本国内で生産をしようと、こういう流れが実はあるわけでございます。こういう部分を例えば投資貿易の補完関係という観点から考えますと、アジアの域内において日本企業の国境を越えた分業というもの、それからその中間財の貿易というものの重要性を増しているわけで、こういう部分もこれから日本の国際戦略を考える上でこのFTAの中にどう盛り込んでいくかということが私は実は重要なんだろうと思います。  これは、将来的には例えばASEANあるいは東アジア全体の経済統合を日本がどう支援していくかという、これはある意味でいうと、このFTAを日本が推進していく一つのゴールにもなり得べきテーマだと思いますが、こういう点にもつながっていくんじゃないかというふうに思うわけでございます。  そして、もう一点私が強調させていただきたいのは、やっぱり政治的なコミットメントの必要性ということでございます。今ほどもメキシコとの交渉における省庁間の縦割りの弊害等についても議論があったわけでございますが、この政治的なリーダーシップを各交渉の中でどう担保していくかということも大変重要だろうというふうに思います。  これは、この調査会の中でも議論が何度か出ましたが、日本版USTRの創設あるいは通商担当の専任大臣の任命ということは、これは政治の側からの働き掛けとして是非報告書等の中にも盛り込んでいただきたいと、こういうふうに思うわけでございます。このFTAの積極的な政治側のコミットメントが結果的にいろいろな改革をリードするということも現実のものでございますし、この調査会の中での議論で農業についての言及もいろいろあったわけでございますが、例えば今、総合的な農業政策の中で所得補償というものを現実的に考えるべきだという議論も今あるわけでございますが、これも例えばFTAの交渉を通じた議論の深まりの中でそういった考え方がある程度公になってきたという部分も私は否めないんだろうというふうに思います。  そういう意味で、政治の側のリーダーシップをこのFTAの交渉の中でどう生かしていくかということについて、また是非今後議論を深めていただきたいということをお願いを申し上げまして、私の意見の表明とさせていただきたいと思います。
  50. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  では次に、高橋千秋君。
  51. 高橋千秋

    ○高橋千秋君 私の方もFTAの話にかかわってくると思うんですけれども、過去のこの論点整理を、今日いただいたやつ見させていただいても、ずっと論議がFTAとWTO等についての話がずっとされているわけですが、私は、その中で非常に重要になってくるのは知的財産権の問題があるなというふうに思っていまして、今日も日経の一面には富士通がサムスンを提訴したという話が出ておりましたけれども、皆さんもよく、東アジア等、特に中国等へ行かれたときに感じているのは、例えば最近ですと、車とかバイクとか全く日本車と同じようなものが中国の中を走っていたり、今中国の中で一番売れている車やバイクというのはほとんど中国製ですが、どう見ても日本製のように見えるようなものがたくさん走っていたりするわけです。  今日のその富士通の提訴の話にもかかわってまいりますけれども、どうもこれまで日本がそういう部分についての取組が甘かった部分があるんではないか。それから、そういう認識が非常に低い、中国側の方も当然低いんですけれども、我々の方としても非常に低かったんではないかなということを懸念をしております。  今日の新聞の報道を見ますと、攻めに転じてきているというような話ではありますが、国として、もう外務省の方帰られましたけれども、どうも弱腰のような感じがしております。例の尖閣諸島の話ではありませんが、日本として、もう少し国として主張すべきところはもっと主張すべきだと思いますし、圧力も掛けてもいいんではないかなというふうな感じがしております。  その車の話でいえば、例えばつい最近、トヨタがトヨタのロゴマークを、全く同じものを中国で登録をされておりまして、これに対して裁判があった中で、トヨタ側が中国の裁判では負けております。それで、中国ではそのトヨタのマークを中国の会社が堂々と使っていいということを国がお墨付きを与えているという形でありますので、これについては国際法上どうなるのか、ちょっと私も専門分野ではありませんので分かりませんが、そのようなことがまかり通っていくと、せっかく今、ITで日本が復興しようという取っ掛かりに来ている中でそういう部分もどんどんどんどんそがれてしまってはこの日本の復興ということもあり得ないというふうに考えておりまして、是非とも、今日、政府の方お見えになりませんが、そういう部分、これは与野党問わずやはり取り組んでいくことではないかなというふうに思っています。  それともう一つは、先ほども厚労省の方に会長の方からお話がありました、その人的な問題。  これも、私の地元なんかで工場が多い地区行くと、日系ブラジル人とか日系ペルー人の方がたくさんおられまして働いておられます。地域のショッピングセンターなんか土曜日の夕方とか行くと、ここはどこの国だと思うぐらい今一杯いるんですね。そのような状況の中で、今、日本のこの少子高齢化の中で、どんどん人口がこれから減り始めるという中で、よくちまたに言われているのは、今の経済日本経済のボリュームを維持しようと思うと年間六十万人ぐらいの海外の移住を受けないとこれを維持できないという、そういう統計が出ております。そのときにネックになるのは、やはりそれを受け入れられる日本の土壌があるかどうかになってくると思うんですね。  今日、難民認定法の話も本会議でありましたけれども日本側がいかにそこを割り切れるのかどうかというところになってくるんだろうと。いろいろ犯罪の問題や文化の問題、いろいろありますけれども、将来の経済を取るのか、そういうもう、今までと同じように日本という文化やそういう国民性を重視していくのかという相反する部分がありますけれども、ここはどこかでやっぱり割り切らないといけない時期が近いうちに来るんではないかなというふうに思います。  これらについて、もうほとんどがやっぱり東アジアが中心になってくると思いますので、ここのところ、今、FTAで看護婦の問題やマッサージ師の問題が出ておりますけれども、どうも厚労省の答弁を聞いておりますと、例えば看護婦のフィリピンからの要望に対して、日本日本の資格を取らなければいけない、それすれば受け入れますよという話でありますが、それだとそもそもの目的とまた違ってくるわけで、その辺の割り切りをどうしていくのかということを、非常に乗り越えなければいけない壁がたくさんあるんではないかなと。ほうっておくと、今までの日本でいいんだというようなことでほうっておくと、どんどんどんどん、中国やほかの東アジアのいろんな国がどんどんどんどん自分たちのやり方でやってこられて、気が付いたら日本はもうどうしようもないというような状況になってしまうんではないかなということを危惧をしております。  これは、法務省のビザの発給の問題も出てくると思うんですが、先日も予算委員会で質問させていただいたんですが、小泉首相がいろんなアジア諸国のCMに出てビジット・ジャパンの、一千万人観光客を誘致するという話をしておりますけれども、それについても、一方でビザの発給をどうするのかという問題があります。このビザの発給については、先ほど申しましたように、日本側がそれを受け入れられるのかどうかという、その考え方をどこで切り替えるのかというのが非常に大きな焦点になってくると思います。これは、役所だけの問題ではなくて、政治家だけの問題でもありませんが、日本人全体が考えていかなければいけない、そういう岐路に来ているんだろうと。  その意味で、ここ数年のところで中国があれだけ大きく成長している中で、やはりどこかで政治家も割り切らなければいけないでしょうし、もう一つ、国民に対してきっちりと説明をする必要があるんだろうと。気が付いたら周りは外国の方ばかりという状況に、それも違法な状況でなっているというよりも、やっぱり法整備をきっちりした上でそういう受入れをしていく。それから、町の外国語の表記の問題やら英語教育の問題やら様々な問題がありますけれども、そういうことに対して政治がやっぱり他のアジア諸国に引けを取らないように先進的にやっていく必要があるというふうに私は考えております。  その意味で、このFTAの交渉は今後どういう方向に行くのか、さっきの損得の話がありますけれども、やはりどこかで得をしようと思えばどこかで損をしなければいけないところも当然出てくるわけでありますが、その辺をやっぱり政治としてリーダーシップをきっちり取っていくべきだろうというふうに私は考えております。  ともかくも、毎日のように出てくる問題は、この中国問題であったりFTAの問題であったり、特にアメリカへ行っても今チャイナ・プロブレムといって、中国問題というふうなことを言うとすぐ分かるような状況になっておりますが、日本もやはりその辺について真剣にやっていかないといけないんだろうと、そういうことを私はずっとかねがね思っております。  過去にずっとこの論議をされてきた中身見ましても、中国の問題、FTAの問題、何度も何度もいろんな方から調査の報告を受けたりしておりまして、なかなかそう簡単に結論が出るものではないと思いますけれども、この調査会を通じて是非ともそういうことを、政治家として皆さんが与野党超えた中で日本の国益を考えた方向性をやっぱりそろそろ出す、結論を出していくことに寄与できるように是非とも皆さんのお力をお願いを申し上げたいということを申し上げて、私の意見としたいと思います。
  52. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  高野博師君。
  53. 高野博師

    ○高野博師君 私は、FTAとの関係では、今同僚議員からもお話があった外国人労働者をどうやって受け入れるのかということと、農業の構造改革、この二点に関心がありまして、外国人労働者の受入れについては、今同僚議員が言ったお話、私はほぼ同感でありますが、外国人、FTAと関係なくしても、外国人というのは日本の憲法も全く想定していない、憲法上の規定というのは何にもないんですね。そういう意味ではきちんとこういう位置付けもしてもいいんではないかと思っておりますし、外国人受け入れる場合に、そのいろんな国の固有の文化を大事にするという、同化主義ではない、多文化主義という考え方が私は必要ではないかと思っております。  それからもう一つは、少子高齢化の中でこれから外国人を受け入れる中で、日本の新しい国づくりのパートナーという位置付けを、きちんと外国人に対して位置付けをするということが必要ではないかと思っております。  もう一つ、農業の構造改革ですが、これも先ほど質問の中で言ったように、申し上げたように、食料自給率が何でこんなに日本は、六〇%から四〇%、ほかの先進国はみんな二〇から三〇%自給率を引き上げているのに、日本だけこの自給率を下げてきたと。これはやっぱり農業の政策の明らかな失敗であるし、きちんとした展望も政策もなかったということではないかと思いますし、農業をやることがそもそも収入にならないという根本的な問題があって、土地の問題、高齢の問題、あるいは宅地との問題、こういう問題があると思いますが、今、先ほども申し上げたように、巨大な食の関連の産業があると。農産物の消費市場が、膨大な消費市場が我が国の中にあるということはもう一回着目をし直すべきではないかと。そして、資本も人材も、正にバイオテクノロジーも含めて、新しい農業ビジネスというか農業改革というのを日本はやらなければならないんではないかと。  農業については簡単に市場原理を入れればいいということではないと思いますが、しかし、ある程度の競争原理、例えば株式会社方式で農業を経営するとか、フランチャイズ方式というようなことも、これも言われております。いろんな形でこれは抜本的な見直しをする必要があるんではないかということで、これも、日本の農産物の国際競争力は相当高めることができるという、私は思っておりまして、これはこれから私自身も研究をしたいと思いますが、今のままの農業基本法的な考えでは衰退するばっかりだと、衰退する一方だと、こういうことだと思います。  以上であります。
  54. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  次に、池田幹幸君。
  55. 池田幹幸

    ○池田幹幸君 私、先ほど質問した問題点なんですけれども外務省の方には何か同義反復みたいなことで、結局回答をいただいてなかったなという気がしているんです。  非常に、つくづく感じるんですけれども、ここ数年来、やっぱり世界的にこのFTAの問題、WTOの問題を含めて貿易システムの、どうやっていくかという点では非常に進んできていると思うんです。EUも含めその二十二か国参加した会議の中で、議会人が、途上国とそれから先進国を含めて同じ認識を持てるという場があるわけですよね、政府間の場合にはそれができないということになるわけですけれども。やっぱり今の貿易システムは不公平、不公正だという認識をまず一致させたということは非常に大きな意味があると思うんです。そこからどう進んでいくのかということが一つ問題だと思うんですね。  今のFTAにしても、大体大きく二つの流れがあると思うんですね。大体アメリカンスタンダードを拒否して、ともかく公平公正な自由貿易交渉をやろうじゃないかという方向でのFTA。ですから、このFTAはWTOを補完するものだという考え方が基本にあります。これは正しいと思うんですね。ところが、今までWTOを中心に進めてきたアメリカが、ゼーリック通商代表などは、もうWTOは国連と同じだ、意味のある話合いなんかできなくなった、だからFTAだと、こう言っているんですね。こうなってきますと、WTOはもう要らぬ、FTAだという考え方に近いわけで、そういう方向に行くのは明らかに間違いだろうと思うんです。そういった本当はもうWTOを補完するんだよという考え方が基本にありながら、なかなかそこへ進まない。  先ほどの外務省の答弁でもドーハ会議ということを言われているんですけれども、じゃ九九年のシアトル、それから去年のカンクンですね、どちらも決裂したと。これはやっぱりWTOの中に、今のWTOのルールは大事だけれども、今のままのルールではとてもじゃないけれども公平公正には進まないんだという考え方があるわけですから、ここに手を付けない限り、やっぱりドーハも同じ道を歩んでしまうことになるんじゃないか。だから、そこを本当に考えていかなければならないところだと思うんですね。やっぱり途上国にどうこたえていくのかということは、これはもう途上国にはODAで何とか処置しときゃいいよというものではないんだということをちゃんと認識する必要があると。そこを外務省に聞きたかったんだけれども、なかなかないんですね。外務省戦略読んでも、言葉だけで、FTAはWTOを補完するものだと。これだけじゃ何の答えにもなっていない。やっぱり更に突き進んだ追求が必要になってくるなというふうに思っているんです。  そういう点と、もう一つは、今、高野さんから出されていた農業問題なんですけれども、本当に大事な問題だと思います。先ほど私が紹介したアジアの会議なんかは、農水省は農業者のために云々と言っていたんですけれども、これは単に農業者のためだけと言ってないんですよね。農業者並びに消費者という形で、農業者の団体の会議でありながら農業者、消費者の両方の生活水準の発展向上、利益、それを追求するということを基本にして物を言っていますので、その考え方というのは、その農業者、消費者というのは何も一国のということじゃなしに、お互い、全アジア地域のそれぞれの国の消費者、農業者を指しているわけですから、非常に何といいますか、グローバルな視点に立った漸進的な内容を、建設的な内容を持っているんだと思うんです。  これは、こういった考え方は大事にして追求していかなければならないんじゃないかなというふうに私は思います。これは去年も同じように会議やられているんですけれども、去年から今年にかけては大きな変化は、このFTA問題をどう考えるかというこの基本的な考え方を打ち出したという点でかなり高く評価し、こういった考え方を追求していくべきじゃないかなと私は思っています。
  56. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) 大田昌秀君。
  57. 大田昌秀

    ○大田昌秀君 私は、自分の意見を述べるというよりか、三井物産の戦略研究所の理事長をしております寺島実郎さんが書いている論文を見て問題提起みたいなことをしたいと思います。  それは、どういうことかといいますと、人口増加の問題なんですね。それで、寺島さんが書かれている論文の中で、最近の中国の人口増加、それと日本の人口増加の問題、あるいは人口減少の問題と比較しながら述べておられるわけなんですが、以前に中国の学者をこちらにお招きして中国経済状態についてお聞きしたときに、大体、日本では中国脅威論なんかもあるけれども、まだまだ中国日本に比べると三十年ほどは後れているという趣旨のお話がございましたけれども、最近の統計なんか見ますと、非常にそれとは違うような印象を与える中国経済伸びがあるわけなんですね。一体その原因は何だろうかというふうに考えますと、いろいろあるでしょうけれども、寺島さんなんかのお考えによりますと、人口の問題じゃないかということを言っておられるわけですね。  どういうことかといいますと、例えば現在、中国の人々の年収は二十万だと言われておるわけなんですが、その人たちがホンダのアコードという四百万円もする自動車を四百万台くらい買っていると。それで、中国の人口は現在十二億七千万人いるわけなんですが、そのうちの二、三%がもう今日富裕層になっている、豊かな人々になっているというわけですね。そうすると、十二億七千万の二、三%というと大体五千万人くらいの人が富裕層に変わっているということになるわけです。仮に富裕層が一%としても千三百万人くらいが富裕層になっていて、東京の人口を上回る数の富裕層が生まれているというわけですね。その人たちが一人当たり一千万円以上の貯金をしていると。そうすると、中国の物価は日本の二十分の一から三十分の一だから、平均して二億から三億くらいの貯金を持っていると。だから、今のお話し申しましたホンダ・アコードを四百万円しても買える層が五千万人もいるというわけですね。  これはもう大変な問題でして、現在日本は一億二千七百万人の人口を抱えているわけですが、二〇〇六年になりますと、このピークが二〇〇六年で、それから年間平均して六十万人ずつ減っていくと、そして二〇五〇年には日本の人口は確実に一億を減ると言われるわけですね。で、二一〇〇年になると日本の人口は二千万人台になるということまで言われているわけですね。ところが、中国はどうかといいますと、現在の十二億七千万人が十七億に増えるというわけですね。  さて、そこで私が問題提起、人口問題で問題提起したいと思ったのは、実はアメリカのアーミテージ国務副長官とかジョセフ・ナイとか、そういうアメリカ世界的な問題について詳しい人たち十六人が、国防大学の方から二〇一五年、ザ・グローバル・トレンドという二〇一五年の世界情勢について分析した本が出ているわけですが、それを見ますと、日本は二〇一〇年までに憲法を変えているだろうと、それから二〇一五年までに核兵器を持っているだろうと言っているわけですね。その理由として挙げているのが、実は、中国では二〇一五年までに戦争のできる世代が急激に増えると、ところが日本は逆に戦争のできる世代が急激に落ち込むから、日本の現在の、中国に対するある種の反発と脅威論というのがある日本のナショナリズムが、これじゃいけないということで脅威論が出てきて核兵器を持つまでになるんじゃないかということを書いているわけです。それが果たして事実になるかどうか分かりませんけれども、そのような分析がアメリカの専門家たち十六人の書いた本の中に出ているわけですね。  ですから、経済問題についても、中国のこのような人口増加の問題について将来どういうふうに経済が変わっていくのか、それから我々が本当に共生という、一緒に生きていくということを考える場合には、妙な形の日本のナショナリズムが起こるのでなくて、日ごろから関係を緊密に平和裏に作っていくということが非常に大事じゃないか。  沖縄県はそういう歴史的な背景もあって、実は以前に福建省との間で福建・沖縄友好会館という十二階建ての友好会館を造って現在活用しているわけなんですが、この人口問題というのはこれからの日本にとって決しておろそかにできない問題じゃないかということで問題提起として申し上げたいと思います。  以上です。
  58. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  先生方のすばらしい御意見をいただいて、本会議での報告に、また参考にさせていただきたいと思います。  あと十分ばかりございますが、どなたか御意見ございましたら。
  59. 愛知治郎

    ○愛知治郎君 一点だけ簡単に、問題提起というか私自身の考え方を申し上げさせていただきたいんですが、FTAとODAの関係なんですけれども、私自身はFTAとODA、全くどっちか一方というか二者択一の問題じゃなくて、両方活用していくべきだとは思うんですが、ただ、FTAをしているときに全く目的を、使途を限定せずに、取りあえずODAという援助、包括的な援助をしてしまうと、農業問題にしてもそうですけれども日本の弱いところにFTAの締結国が戦略的に投資をしてそこの技術開発なり産業育成をしてしまうと、これはいたずらに日本の国益を害する形にもなってしまうので、やはりそのODAの使い方、援助の仕方というのも考え直さなくちゃいけないんじゃないか。相手国が体力を付けていく、開発を援助していくこと自体は全く問題はないと思うんですけれども、また人道的なもの、社会的なインフラ整備とか、そういったものにある程度限定をして、戦略的にそのODAの有効活用もしていくべきじゃないか。全く目的を限定せずにただ上げてしまうとか、ただ援助するというのではなくて、そちらも含めて戦略を立てていかなければならないんじゃないかというふうに思います。  以上です。ありがとうございました。
  60. 田名部匡省

    田名部匡省君 農業問題、今いろいろお話ありましたけれども、私も交渉を三年やりました。なかなか難しいんですよね。何が難しいかというと、日本の農業というのはやっぱりもうからないと。もうからないところに後継者が育たない。なぜもうからぬかというと、規模が小さ過ぎるんですね。ですから、もうかる農業になっていかない。ところが、これは選挙が怖いものですから、皆守りに入っちゃうんですね。それで、結局はもう手付かずでずっと来ちゃった。  ということは、私が大臣のときにも株式会社、法人、集落ごとに、あの新農政のときに、僕これ入れろというので大げんかしたんですよ。とうとう入れましたけれどもね。それは何で入れたかというと、経営感覚というのがまずない、困れば金もらえると思うものですから。そうすると五百万の機械買ってどのぐらいやっているかというと、二、三反歩しか持っていないのに五百万の機械買ってやっているわけですよ。それじゃ、もうとても普通の商売なら倒産しますよ。そういうことを平気でどんどんやると。そうして、減反と。さっき言った百万ヘクタールも過剰ですから、減反するとお金がもらえると。こういう仕組みを本気で手を加えてやれるのかというところが非常に私は問題で、これやれなかったら議論幾らやっても、やっぱり選挙で落ちちゃ困ると思うからそっちの方に乗っかっていた方がいいという限りは、なかなか日本の全体の経済のことへ入っていっても変われないと。  別に悪いことじゃ、私は所得補償方式に大臣のときにしろと。これはもう駄目だった。しかし、今の、今年のような、冷害があったとき、その分はもう完全に国が補償しますよと、こういうことだったら補償するよという仕組みか何かやってやらないと、これも成り立たぬと。どうぞ、それぞれの国にいろんな条件があって、私は、アメリカ関税五〇〇%で、その代わり一定量のミニマムアクセスと。これも反対されたんですからね、国内で。  それから、今後どうしていくかという問題がまだまだ残っているので、その前に日本の農業体制をどうやっていくのかということを、基本をしっかりしておかないと、どこと話ししたって私はもう持っていけないなと、こんな感じがしてますがね。  一言。
  61. 三浦一水

    ○三浦一水君 今の田名部先生の話とも関連しますし、今日は高野先生、池田先生からも関連する話がありましたんですが、私は、この調査会で数次行われまして、各国と今通商の協議が進んでいる中で、WTOやFTA、その中で我が国の、今お話がありました農業改革というものが非常に喫緊の課題だということを非常に浮き彫りにしたということでは非常に意味があったんではなかろうかというふうに感じております。各参考人から異口同音の発言があったと。その中でも、やっぱり政策的に直接支払を今後どう日本が実現をしていくかと。また、そのことが、日本がそういう形で農業改革を進めておかなければ、FTA、WTOの交渉の場で一つの交渉の材料を持つことができないんではないかという見方が強かったと思います。私ももう全くそのような感じを持っております。  その中で、ただ、国内的に見ますときに、我々が農業改革をやっていくときに、食料安全保障という点と多面的機能は、対外的にも主張しておりますとおり、国民のサイドからも一番の期待であるというふうに感じております。  ただし、この特に食料安全保障、多面的機能を国家的にどのような位置付けができているかというと、先ほどちょっとお話がありましたが、そのことを示されたかどうか、高野議員のお話は分かりませんが、農業基本法だけでそのことを位置付けをしているということはもう非常に限界があるような感じがいたします。やはり、国家安全保障法は我が国にはありませんが、総合安全保障という考えの下に安全保障委員会というものも設置をされるわけでありますから、そこあるいは最低閣議でこの我々の食料安全保障というものを少なくともどう位置付けるかということを、全省庁的な一つの理解が要るんではなかろうかというふうに思います。  そういう中で、今農林省の話になりますと、そういう状況でありますから、どうも改革、いわゆる基本計画としての見直しの方向がどうしてもWTOとの規則との整合を図るために、日本の高関税であります米、麦、大豆、この部分をどうするかというような非常に限られた話になってきているような気がしてならないわけでありまして、下手をすると、いわゆる経営局だけの予算の中でのやりくりだと、農林水産省の中の予算のやりくりすらもできないでこの農業改革というのが論じられなければならないんではないかという状況懸念されます。  そういう意味では、国家的なやっぱりひとつ関心の中にそういうきちっとした位置付けというのを、今後国会の議論の中でも求めていく必要があるんではないかという点で意見を申し上げたいと思います。
  62. 関谷勝嗣

    会長関谷勝嗣君) ありがとうございました。  他にございませんか。  それでは、本日の調査はこの程度といたしまして、散会いたします。    午後二時五十九分散会