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2004-04-12 第159回国会 参議院 行政監視委員会 第3号 公式Web版

  1. 会議録情報

    平成十六年四月十二日(月曜日)    午後一時一分開会     ─────────────    委員異動  三月二十九日     辞任         補欠選任      小林  温君     亀井 郁夫君      松山 政司君     森下 博之君  四月五日     辞任         補欠選任     ツルネン マルテイ君     今泉  昭君  四月六日     辞任         補欠選任      今泉  昭君 ツルネン マルテイ君  四月八日     辞任         補欠選任      森山  裕君     尾辻 秀久君  四月九日     辞任         補欠選任      尾辻 秀久君     森山  裕君      脇  雅史君     愛知 治郎君      西山登紀子君     林  紀子君  四月十二日     辞任         補欠選任      森山  裕君     沓掛 哲男君     ─────────────   出席者は左のとおり。     委員長         松 あきら君     理 事                 田浦  直君                 橋本 聖子君                 岩本  司君                 岡崎トミ子君     委 員                 阿南 一成君                 愛知 治郎君                 沓掛 哲男君                 椎名 一保君                 藤野 公孝君                 松村 龍二君                 吉田 博美君                 大脇 雅子君                 鈴木  寛君             ツルネン マルテイ君                 長谷川 清君                 渡辺 秀央君                 続  訓弘君                 岩佐 恵美君                 林  紀子君    国務大臣        総務大臣     麻生 太郎君        農林水産大臣   亀井 善之君        国務大臣        (国家公安委員        会委員長)    小野 清子君        国務大臣     金子 一義君    内閣官房長官        内閣官房長官  山崎 正昭君    副大臣        外務大臣    阿部 正俊君        環境大臣    加藤 修一君    事務局側        常任委員会専門        員        白石 勝美君    政府参考人        内閣食品安全        委員会事務局長  梅津 準士君        警察庁長官官房        長        吉村 博人君        警察庁生活安全        局長       伊藤 哲朗君        警察庁刑事局長  栗本 英雄君        総務省行政評価        局長       田村 政志君        法務省入国管理        局長       増田 暢也君        外務大臣官房参        事官       鈴木 敏郎君        外務大臣官房領        事移住部長    鹿取 克章君        外務省経済協力        局長       古田  肇君        財務省国際局長  渡辺 博史君        農林水産省消費        ・安全局長    中川  坦君        環境省自然環境        局長       小野寺 浩君    説明員        会計検査院事務        総局第一局長   石野 秀世君    参考人        国際協力銀行理        事        岩下  正君        国際協力銀行理        事        丹呉 圭一君     ─────────────   本日の会議に付した案件 ○政府参考人出席要求に関する件 ○参考人出席要求に関する件 ○行政監視行政評価及び行政に対する苦情に関  する調査  (行政評価等プログラムに関する件)  (政策評価現状等に関する件)  (行政活動状況に関する件)     ─────────────
  2. 松あきら

    委員長松あきら君) ただいまから行政監視委員会を開会いたします。  まず、委員異動について御報告を申し上げます。  去る三月二十九日、小林温君及び松山政司君が委員辞任され、その補欠として亀井郁夫君及び森下博之君が選任をされました。  また、去る九日、脇雅史君及び西山登紀子さんが委員辞任され、その補欠として愛知治郎君及び林紀子さんが選任をされました。  また、本日、森山裕君が委員辞任され、その補欠として沓掛哲男君が選任をされました。     ─────────────
  3. 松あきら

    委員長松あきら君) 政府参考人出席要求に関する件についてお諮りいたします。  行政監視行政評価及び行政に対する苦情に関する調査のため、本日の委員会政府参考人として、理事会協議のとおり、内閣食品安全委員会事務局長梅津準士君外十名の出席を求め、その説明聴取することに御異議ございませんでしょうか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  4. 松あきら

    委員長松あきら君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  5. 松あきら

    委員長松あきら君) 参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  行政監視行政評価及び行政に対する苦情に関する調査のため、本日の委員会国際協力銀行理事岩下正君及び国際協力銀行理事丹呉圭一君を参考人として出席を求めたいと存じますが、御異議ございませんでしょうか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  6. 松あきら

    委員長松あきら君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  7. 松あきら

    委員長松あきら君) 行政監視行政評価及び行政に対する苦情に関する調査のうち、行政評価等プログラムに関する件及び政策評価現状等に関する件を議題といたします。  まず、行政評価等プログラム政府開発援助に関する政策評価及び検査検定制度に関する政策評価について総務省から説明聴取いたします。麻生総務大臣
  8. 麻生太郎

    国務大臣麻生太郎君) 行政評価等プログラム並びに去る四月二日に結果を取りまとめた政府開発援助及び検査検定制度に関する政策評価について御説明をさせていただきます。  まず、行政評価等プログラムは、平成十六年度から十八年度までの三年間の政策評価行政評価監視等に関する取組方針を定めたものであります。  政策評価につきましては、環境問題を始め、統一的、総合的な対応を必要とする重要課題に重点的に取り組みます。また、行政評価監視につきましては、民間団体対象とした補助金等を始めとする行政運営効率化等に重点的に取り組みます。  次に、政策評価の結果について申し上げます。  まず、政府開発援助につきましては、全体的に一定評価は得られているものの、効果を上げ持続させるために、資金協力技術協力などの間や各府省間の連携調整等に積極的に取り組む必要があることなどを指摘をいたしております。  また、検査検定制度に関しましては、今回、初めてコスト分析手法を用いて評価したものであります。今後、関係府省において、この手法を最大限活用してコスト及び効果分析把握を行い、それぞれの制度目的達成に支障が生じないことを前提としつつ、規制改革を更に推進する必要があると指摘をいたしました。  詳細につきましては行政評価局長から説明をいたさせます。
  9. 松あきら

    委員長松あきら君) 次に、補足説明聴取いたします。田村行政評価局長
  10. 田村政志

    政府参考人田村政志君) 行政評価等プログラム並び政府開発援助及び検査検定制度に関する政策評価について、その概要を御説明いたします。  まず、行政評価等プログラム概要を御説明いたします。  評価専担組織としての総務省が行う政策評価については、政府として統一的又は総合的な対応を要する重要課題に関し評価実施することとしております。本年度から三年間に、大都市地域における大気環境の保全やPFI事業に関する政策評価など八件の実施を予定しております。  また、各行政機関政策評価客観性を担保するための評価活動に関し、引き続き、評価の質の向上観点から審査実施することとしております。さらに、各行政機関実施した政策評価のうちやり直す必要があるもの、社会経済情勢変化に的確に対応するため政策評価を新たに行うべきものについて、個々に検討していくこととしております。  行政評価監視については、国民の安全、安心の確保地域の再生、経済活性化行政組織運営合理化効率化、経費の効率的使用等に重点的に取り組むこととしております。本年度から三年間に、根拠法のない共済、政府構造改革特別区域推進本部評価委員会からの依頼を受けて実施する規制特例措置実施状況調査民間団体対象とした補助金等など二十件の実施を予定しております。  次に、政府開発援助に関する政策評価概要を御説明いたします。  この政策評価は、政府開発援助の特性を踏まえ、その全体について、必要性有効性及び効率性観点に加え、効果持続性観点から、一括して、全体として評価したものであります。  その結果、先ほど大臣から説明がありました事項のほか、在外公館等現地機関国際協力機構等実施機関機能・役割の強化援助の仕組みや手続の柔軟性弾力性確保等に積極的に取り組んでいく必要があること、また、あわせて、各府省及び実施機関実施した評価結果に基づく教訓や課題政策立案実施過程に反映させるための機能について一層の充実強化を図る必要があることを、今月二日、関係十三府省に対し通知したところであります。  次に、検査検定制度に関する政策評価概要を御説明いたします。  この政策評価は、すべての検査検定制度対象に、企業活動消費活動に与える影響、特にコスト上昇選択範囲限定等影響が可能な限り小さくなっているかとの観点から、初めてコスト分析手法を用いて統一的に評価を行ったものであります。これにより、検査検定制度に係るコスト等の実態を把握、整理し、コスト上昇選択範囲限定等影響を小さくする上でどのような制度改変が有効であるか、また、それらの制度改変コスト等のどの部分に変化を与えるかというパターンを明らかにいたしました。さらに、今回のコスト分析手法影響帰着先や度合いを明らかにする上で有効であるとの結果を得ることができました。  これらの結果を踏まえ、先ほど大臣から説明がありました事項を、今月二日、関係七省に対し通知したところであります。  御説明は以上でございます。  詳細につきましては、お手元に配付の評価書等を御参照いただければと存じます。
  11. 松あきら

    委員長松あきら君) 以上で説明聴取は終わりました。  両件に対する質疑は後日に譲ることといたします。     ─────────────
  12. 松あきら

    委員長松あきら君) 次に、行政活動状況に関する件を議題といたします。  まず、犯罪減少に向けた行政対応について説明聴取いたします。山崎内閣官房長官
  13. 山崎正昭

    内閣官房長官山崎正昭君) 内閣官房長官山崎でございます。私から、犯罪減少に向けた行政取組について御報告を申し上げます。  我が国は、かつて、世界一安全な国日本と言われてきましたが、昭和の時代に比べ、刑法犯認知件数が著しく増加しており、平成八年以降七年連続で戦後最多を記録してまいりました。昨年は、この刑法犯認知件数減少に転ずるなど、犯罪増加傾向一定歯止めが掛かったところでありますが、強盗を始めとする凶悪犯罪住宅対象の侵入盗の増加少年による刑法犯検挙人員の高水準での推移、来日外国人暴力団などによる組織犯罪深刻化など、治安情勢は依然として厳しい状況にあります。  こうした厳しい状況対応するため、政府では、昨年九月、内閣総理大臣が主宰し全閣僚構成員とする犯罪対策閣僚会議を開催し、治安回復を目指して行動計画を策定することといたしました。  その際、治安回復のためには、国民が自らの安全を確保するための活動支援犯罪の生じにくい社会環境整備及び水際対策を始めとした各種犯罪対策という三つ視点が重要であることを確認しました。  こうした視点前提としつつ、犯罪対策閣僚会議では、十二月に、今後五年間を目途に、国民治安に対する不安感を解消し、犯罪の増勢に歯止めを掛け、治安危機的状況を脱することを目標として、犯罪に強い社会実現のための行動計画を策定いたしました。この行動計画では、現下の犯罪情勢特徴的傾向に即した五つの重点課題を設定しております。  第一に、平穏な暮らしを脅かす身近な犯罪抑止であり、自主防犯活動に取り組む地域住民ボランティア団体支援空き交番の解消と交番機能強化犯罪の発生しにくい道路、公園、駐車場等整備管理等に取り組んでまいります。  第二は、社会全体で取り組む少年犯罪抑止であり、少年補導活動強化による非行少年早期発見早期措置地域社会における教育と少年居場所づくり促進関係機関等連携による少年サポートチーム普及促進等に取り組んでまいります。  第三は、国境を越える脅威への対応であり、水際における監視、取締りの推進不法入国不法滞在対策等推進外国関係機関との連携強化等に取り組んでまいります。  第四は、組織犯罪等からの経済社会の防護であり、組織犯罪に対する有効な捜査手法等の活用、検討暴力団排除活動行政対象暴力対策推進、薬物・銃器密輸水際での阻止等に取り組んでまいります。  第五は、治安回復のための基盤整備であります。以上に掲げた施策を効果的に推進していくため、治安対策に取り組む要員・施設の充実や法制の整備、研究の推進等多角的観点からの基盤整備を進めてまいります。  政府においては、平成十六年度においても、この行動計画に基づき、国家公務員総数純減となる中で、治安入国管理関係職員を増員し、また地方公務員全体を一万人削減する中で、三千人を超える警察官を増員するなど、犯罪対策強化に特段の配慮を行っているところであります。  今後も、犯罪対策閣僚会議の場を通じ、関係省庁が一致協力して、国民事業者地方公共団体等協力を得つつ、計画の着実な実現を図るとともに、治安回復に向けた成果の検証を行ってまいりたいと考えております。  こうした取組により、世界一安全な国日本の復活を目指してまいります。  以上です。
  14. 松あきら

    委員長松あきら君) 次に、これからの行政改革の進め方について説明聴取いたします。金子国務大臣
  15. 金子一義

    国務大臣金子一義君) 行政改革実施状況について御説明いたします。  行政改革につきましては、平成十二年の十二月に閣議決定した行政改革大綱に基づき、平成十七年までの間を一つの目途として、各般改革を集中的、計画的に推進しております。  このうち、特殊法人等改革については、特殊法人等整理合理化計画に基づき、百六十三の特殊法人等のうち約八割の法人について廃止、民営化独立行政法人化等に向けた法改正等措置を講じております。道路関係公団につきましては、平成十六年三月に道路関係公団民営化関係法案国会に提出いたしました。  また、独立行政法人につきましては、特殊法人等からの移行に当たって役員数を約四割削減したほか、役員退職金を以前の約三分の一の水準に削減する等の措置を講じております。さらに、中期目標期間終了時には、各主務大臣において、組織業務全般を極力整理縮小する方向で厳格な見直し実施することとしております。  公務員制度改革につきましては、公務員制度改革大綱に基づき、現在、能力・実績主義人事制度の導入、適正な再就職ルールの確立などに取り組んでおります。職員団体を含め幅広く関係者と話合いを行いつつ、公務員国民全体の奉仕者として職務に専念できるよう、改革具体化を進めてまいります。  行政委託型公益法人等改革につきましては、公益法人に対する行政の関与の在り方の改革実施計画に基づき、国から委託推薦等を受けて行う事務事業、国から交付される補助金等改革を各府省において着実に実施しているところであります。また、公益法人制度改革については、昨年六月に閣議決定した公益法人制度抜本的改革に関する基本方針に基づき、改革具体化のための検討を進めてまいります。  規制改革については、今般、新たに規制改革民間開放推進三か年計画を閣議決定したほか、総合規制改革会議終了後も、総理諮問機関である有識者会議規制改革民間開放推進会議を設置いたしました。また、これと密接な連携の下、並存させる形で、閣僚から成る規制改革民間開放推進本部(仮称)を設置する予定であり、政府一丸となって規制改革を加速し推進してまいります。  電子政府につきましては、電子政府構築計画に基づき、国民利便性、サービスの向上IT化対応した業務改革推進してまいります。  また、行政減量効率化については、毎年度機構・定員の審査過程で、幅広く既存の組織業務見直しを行い、IT化、アウトソーシングの推進等による更なる減量効率化推進してまいります。  この他、三位一体改革市町村合併政策評価等についても大綱が定めた措置を着実に実施しているところであり、改革は着実に進展してまいりました。  今後とも、関係大臣連携を図りつつ、各般改革を積極的に推進してまいります。  以上であります。
  16. 松あきら

    委員長松あきら君) 次に、政府開発援助現状と今後のあり方について説明聴取いたします。阿部外務大臣
  17. 阿部正俊

    ○副大臣阿部正俊君) 本日は、外務大臣に代わりまして、委員会のお許しを得まして私から御発言をさせていただきますので、どうか御理解ください。  本日は、主に、ODA改革とそれから新しいODA大綱、あるいはイラク復興支援、それからODA予算の三点につきまして主に御説明させていただきたいと思います。  まず、ODA改革、新しいODA大綱でございますが、お手元に白いページで政府開発援助大綱と書いてございますが、この考え方に載っておりますのでごらんいただきたいと思いますが、要点を申し上げますと、透明性確保効率性向上国民参加、この三つODAのキーワードにいたしまして改革を精力的に進めてまいったところでございます。これらの改革の集大成として、昨年八月にようやく、約十一年ぶりに政府開発援助大綱を改定いたしまして、閣議決定いたしました。今後は、この新政府開発援助大綱に基づきまして、一層効率的、効果的なODA実施に努めてまいりますけれども、まずはこのODA大綱ポイントにつきまして資料に沿って少し御説明させていただきます。  資料としては、この色刷りでございますが、新政府開発援助大綱ということをごらんいただきたいと思います。  まず、第一番に、ODA目的を明確化させていただきました。我が国ODA目的を「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することである。」というふうにしております。  第二に、基本方針及びその課題の中に、人間の安全保障と平和の構築を新しい重点課題として位置付けることといたしました。  また、重点地域といたしましては、引き続きアジア地域というふうにしながらも、アジア諸国経済社会状況多様性援助需要変化に十分留意しながら、戦略的に分野や対象などの重点化を図るということにしてございます。  さらに、政策立案実施につきましては、これまでのODA改革成果を踏まえつつ、政府全体として一体性一貫性、内外の援助関係者との連携国民参加などに一層努めていくこととしてございます。  次に、我が国が積極的に取り組んでおります平和の構築具体例といたしまして、イラク復興支援について御説明させていただきます。  詳細につきましては、資料二の我が国イラク復興支援という横書きのものにまとめてございますので、ごらんいただければと思いますけれども、ポイントを申し上げさせていただきますと、我が国は、昨年十月にマドリッドで開催されましたイラク復興支援国際会議におきまして最大五十億ドルの支援を表明いたしまして、これまでに約八億五千万ドルの支援実施ないし決定いたしたところでございます。イラク再建は、イラク国民にとって、また中東地域及び我が国を含む国際社会の平和と安定にとって極めて重要であり、イラク再建に向けた国際協調の下で、我が国にふさわしい支援を行うとの観点から進めてきているものでございます。  今後とも、国際社会の一員としての責務を果たすべく、安全には十分な配慮を払いつつ、ニーズに基づき、着実な支援実施に努めてまいりたいと存じます。  これ以外にも、貧困の削減とか、経済の持続的な成長とか、感染症の問題、環境問題などの地球規模の問題への取組など、ODAを通じて行う取組が求められている課題が山積しております。  こうした課題に取り組むために、アメリカ、イギリスなどを中心とする主要援助国は相次いでODA予算の増額を発表しているところでございますけれども、我が国は、資料三にあるとおり、過去七年間で三割の減少となっている現状でございます。  そうはいいながら、今年はちょうど日本経済協力を開始してから、すなわち一九五四年コロンボ計画参加してから五十年目の節目の年に当たります。我が国は、自らが戦後の復興に取り組みながらも、途上国に対する支援に長年にわたり貢献してきておりまして、私は、世界じゅうのこうした日本援助に対する感謝、評価が大変根強いことを実感しておるものでございます。国際社会に対して国力にふさわしい貢献を行っていくために、必要な予算確保につきましてもどうか御理解をいただきたいと存じます。  以上でございます。
  18. 松あきら

    委員長松あきら君) 以上で説明聴取は終わりました。  麻生総務大臣金子国務大臣山崎内閣官房長官阿部外務大臣は御退席いただいて結構でございます。  これより質疑に入ります。  質疑のある方は順次御発言を願います。
  19. 藤野公孝

    藤野公孝君 自由民主党の藤野でございます。よろしくお願いいたします。  当初予定いたしておりました治安対策ODAについての質問をいたす前に、緊急質問ということで、今日は新聞がない日で号外というふうなことでいろいろ「邦人解放進まず」というようなタイトルでこういうものも出ておる。  日本時間で四月の八日の夜、イラク日本人ジャーナリスト等三人の人質事件発生したと。大変今、外務省を始め、官邸始め御努力いただいておるわけでございますが、いろいろ情報が錯綜しております。犯人グループが、カタールの衛星テレビ、アル・ジャジーラを通じて、人質は二十四時間以内に解放するといったようなニュースが流れましたときには、ああ、これは良かったと、国民、私だけではない国民だれもが拍手したと思うんですけれども、今言いましたように、ここにありますように、進まずというふうな状況の中で、なかなかこういう問題というのは対応が難しいということを如実に表しておるわけであります。  新たに犯人側が何か要求を出しているんじゃないかとかいろいろあると思いますし、また、このことに関しましては交渉事でありますので、べらべらべらべらしゃべるような問題ではないということはよく分かっておりますけれども、やはりこの国会行政監視委員会のこの場で、今の状況、これまでの状況、で、今後の見通し等につきまして、御説明いただける範囲で結構でございますので、外務省の方から御説明を願いたいと思います。
  20. 鹿取克章

    政府参考人(鹿取克章君) お答えいたします。  今御指摘のとおり、政府といたしましては、八日夕刻の事件判明以来、事件の迅速な解明、解決に向けて、情報収集、人質救出に全力で取り組んでまいったところでございます。  また、今御指摘でありましたように、様々な情報がございました。昨日十一日の午前三時、犯行グループが二十四時間以内に人質を解放するとの声明をアル・ジャジーラを通じて行いました。しかしながら、その同じ日の十時過ぎに、今度は同じアル・ジャジーラを通じてでございますが、人質解放の情報が否定され、日本政府に対する新たな要求を紹介するイラク人人権擁護連合会長を名のる者の発言が報じられました。  また、その数時間後でございますが、また日本時間で言えば十二日の午前一時、モハメッド・バシャール・アル・ファイディと呼ばれますイスラム法学者協会のスポークスマン、この方が出演されて、イスラム法学者協会としては依然として日本人の人質を取っている同胞たちに対して呼び掛けを継続しており、彼らが約束を守ることを呼び掛けたい、人質が解放されることを希望していると、こういうことを話されました。  このように、我々は今いろいろな情報の中で仕事をしているわけでございますが、外務省といたしましては、御承知のとおり、第一報を受けて外務省の中で対策本部を作りましたし、また現地アンマンにおいては逢沢副大臣をヘッドとしてやはり対策本部を作っております。引き続き、情報収集、また関係国との協議、連携を通じて、できるだけ早期に人質の方々が救出されるよう、また努力してまいりたいと考えております。
  21. 藤野公孝

    藤野公孝君 今、御答弁にもありましたように、大変難しい状況の中で是非是非一刻も早いこの人質の方々の無事解放ということに向けて全力で取り組んでいただきたいとお願い申し上げまして、どうぞ御退席いただいて結構でございます。
  22. 松あきら

    委員長松あきら君) 御退席ください。
  23. 藤野公孝

    藤野公孝君 それじゃ、質問の本チャンに移りますが、先ほど山崎官房副長官からの御説明ありました治安対策でございます。  その御説明にもありましたように、あるいはまた最後の締めくくりに、また世界一安全な国を目指すという締めくくりでございましたが、我が国は本当に先進国の中でも最も安全な国だという認識もありましたし、我々国民もそれを誇りにしておりました。  私自身、約二十五年前にニューヨークに三年ばかり住んでおったときも、まあ何とニューヨークというのはどうしてこんな危ないんだろう、身の危険を何度も感じたことがございます。当時はニューヨークは大変財政も悪くて、麻薬とかそれからいろんな、まあごみも汚いとか、犯罪とかいろいろな社会悪というものの見本市みたいなところでございまして、危ない、デンジャー、暗い、ダーク、それから、汚い、ダーティー、三D、スリーDというふうなことでよく言われていたんです。  そのニューヨークが今、私も去年行きましたけれども、本当にこれがニューヨークかと思うぐらい安全できれいで快適になっているんですね。夜、フィフスアベニューを歩いても、全然女性が歩いても問題ないと。昔の私の経験からすりゃ、もうこれは別の町になったんじゃないかと思うぐらいニューヨークも良くなっておりまして、こういうのを見まして、今の逆に東京がどうだろうと。新宿辺りは昔のニューヨークに近くなってきたのかなと思うような場所もあるように思います。  今日、さっきニュース見ていましたら、東京都の職員が百人、警視庁の方に行ったと。こんな大変、治安のためにここまで地方自治体が警察に協力するというのも大変なことだというふうな報道がさっき昼のニュースでもちょっと出ておりましたけれども、このように、別に東京だけじゃなくて、全国見ましても治安の悪化ということが国民生活を不安に陥れて、安心、安全ということが大変政治的にも大きなスローガンになってきております。  内閣府による世論調査でも、現在の日本状況で悪い方向に向かっている分野、何だろうかという質問をした。治安を挙げた人が約四割に上ったというふうな結果があるようであります。さっき私が申し上げた、ニューヨークにいたころの日本の昭和五十年代後半から六十年代前半にかけては、治安のことを不安材料に挙げた人は一割にも満たなかったそうであります。それがもう四割になっている。もう隔世の感が否めないわけであります。  こういう状況の中で、改めて現在の治安状況につきまして、深刻に受け止められているとは思いますけれども、どのように認識をなさっているか、お伺いいたします。
  24. 栗本英雄

    政府参考人(栗本英雄君) ただいま委員の御指摘のとおり、犯罪は、特に平成八年から十四年までは七年連続で戦後最多を記録すると、極めて憂慮すべき状況であると認識しておるところでございます。  そのような状況を踏まえまして、特に昨年一年間は、全国の警察を挙げまして、国民が特に身近に感じますいわゆる街頭犯罪、侵入犯罪抑止のための総合対策を推進してまいりまして、その結果、昨年一年間では一昨年と比べましてようやく犯罪増加傾向に一部歯止めが掛かったかなという形で、昨年は一昨年より若干トータルとしては犯罪が減りましたし、また検挙率でも若干の向上を見ておりますが、しかしながら、先ほど御指摘のような、治安が良いと言われました昭和期の残念ながらまだ二倍の水準になっていると、こういう状況でございますし、そのような量的に増加したということだけでなくて、中身を見ましても、例えば強盗や住宅対象の侵入盗が非常に引き続き増加しております。  それからまた、少年犯罪が大変深刻化しておりますし、さらには来日外国人暴力団関係者によります組織的な犯罪が広域的に発生をしている。これに加えまして、最近ではいわゆるおれおれ詐欺とかネットオークション詐欺など新手の犯罪も急増しているところでございまして、残念ながら治安情勢は引き続き大変厳しい状況にあると認識しておるところでございます。
  25. 藤野公孝

    藤野公孝君 そのような、今、若干の治安上、悪い悪いといってもどんどんどんどん泥沼で悪くなっているんじゃなくて、少し犯罪件数が、何というんですかね、下げ止まり、止まってはきているのかもしれませんけれども、このように社会犯罪含めて治安状況が悪化したというのは、それなりにやっぱりなぜそうなったのかなということの認識というか分析をきちんといたしませんと、それへの対応というのも、対抗策というんですかね、対応策にも的確な対応ができないということだろうと思うんですけれども、やはり治安情勢が悪化しているその表面的なことの背景にあるその悪化の原因というか要因といったものは幾つもあると思うんですけれども、主なところを、主要なところを説明していただきたいと思うんですけれども。
  26. 栗本英雄

    政府参考人(栗本英雄君) 御指摘のとおり、私ども、治安が悪化している要因につきまして一概にこういうものだという形で申し上げることは大変難しいわけでございますが、もちろん大きな背景としては、経済事情や社会環境変化とか、あるいは国際化の影響、さらには社会におきます規範意識の低下など、こういうようなものが大きな背景とはあろうかと思いますが、具体的に犯罪について見ますと、先ほど申し上げました犯罪の急増してきた大きな要因は、やはりその中でも約八割を占めております窃盗犯が非常に増えてきたと、こういうことが量的にはうかがわれるだろうと。また、質的に見ますと、具体的に検挙いたしました状況を詳しくつぶさに分析をいたしてみますと、次のようなことが言えるんではないかと思っております。  それは、先ほどもちょっと触れましたが、一つには、来日外国人刑法犯の検挙件数がこの十年間で二倍になっておりますし、検挙人員で見ましても一・六倍になってございます。それから二つ目に、近年増加しておりますいわゆる路上強盗という、あるいはひったくりという、大変女子また高齢者の方を対象とするような犯罪、こういうような事件の検挙人員を見ますと、その約七割が少年でございます。そのような少年犯罪深刻化がございます。それから三つとしては、先ほども触れましたが、来日外国人暴力団関係者によります組織的な犯罪、いろいろ薬物の密売もございますし、あるいは自動車盗などもあります。このような組織的な犯罪が非常に増えてきているということが具体的に治安を悪化させている大きな要因になっていると見ているところでございます。
  27. 藤野公孝

    藤野公孝君 今、幾つか重要な点といいますか、この犯罪増加の中身といいますか、質の問題といいますか、そういうものについての分析をお述べいただいて、私もそういうことだろうなという気持ちで聞いておりましたけれども、じゃ個々に少し御質問をいたします。  まず、今悪化の要因ということでその一つに述べられました来日外国人の問題でございます。この来日外国人、私もいろいろな別の観点からはビジット・ジャパンとかいろいろやっておりまして、外国人から来てください、来てくださいというのをあちこち行ってやっているんですけれども、そういう観光交流の拡大というような面から見ても、あるいは将来的には外国人労働者を入れなきゃいけないようなこともあるかもしれない、いろんな要因でこれから交流をとにかく進めていかなきゃいけないということだろうと思うんですが、そういう中で、日本が国際化する中で来日外国人の数はどんどん増えていくように思うわけですけれども、この来日外国人が、これまでずっと統計があると思うんですけれども、犯した、我が国の国内で犯した犯罪状況について何か特徴的なことがあれば御説明願いたいんですけれども。
  28. 栗本英雄

    政府参考人(栗本英雄君) 例えば昨年の、平成十五年でございますが、来日外国人犯罪、これは刑法犯と特別法犯を含んでおりますが、両方合わせまして検挙件数及び人員で見ますと、昨年が件数で四万六百十五件の検挙になっておりますし、人員で見ますと二万七人の検挙になっておりまして、これ刑法犯で見ましても特別法犯で見ましても戦後最多の数になっておると、こういう状況でございます。  また、その犯罪の特徴でございますが、いろいろ細かい点ございますが、次の三点が指摘できるのかなと考えているところでございます。  その一つは、先ほど申し上げました刑法犯の検挙件数、この中でいわゆる共犯事件といいまして二人以上の者によって犯罪が敢行される、こういう事件の比率が大変高いということであります。例えば、今申し上げました来日外国人犯罪での検挙件数のうちの約六割が単独犯ではなくて二人以上、中には四人以上の強盗などの事件もあるわけで、これは日本人が捕まったうちの検挙件数の約三・五倍、すなわち来日外国人による犯罪というのはそういう意味において複数の者によって行われると、そういうような非常に不安を与える形態の事件だということが一つでございます。  それから二つは、特に強盗とか侵入盗というのがございますが、これの検挙件数が非常に増えてきております。具体的に申し上げますと、十年前と比べまして強盗で二倍、侵入盗では七倍になっていると、こういうことでございますし、また、特に注目しなければいけないと考えておりますのは、そのうちの来日外国人によります侵入強盗とか侵入盗の検挙人員のうちのいわゆる不法滞在者の占める比率が非常に高いということでございます。例えば、侵入強盗の検挙人員のうちの半分は不法滞在者、また侵入盗の検挙された者のうちの六五・五%が不法滞在者によって敢行された、こういうような特徴があるということでございます。  それから最後に、その発生地域別に見ますと、かつては東京、首都圏あるいは近畿圏でございましたが、その後、正に全国に拡散をしておるということでありまして、首都圏、近畿圏ではそう大きな急増傾向は見られませんが、その他の地域において非常に増えてきている。こういうことにおきまして、正に来日外国人による犯罪の広域拡散化が図られている。そういう意味におきまして、全国民の方が何か自分もそのような犯罪に巻き込まれているのではなかろうかと思うような事態に至っている、その辺が特徴かと見ているところでございます。
  29. 藤野公孝

    藤野公孝君 自分の恥をさらすようでありますが、私の、ちょっと都内、このすぐ近くなんです、麹町に、ちっちゃなペンシルビルだったんですが、そこに事務所を持っておりましたが、去年の二月、見事にそのビル全体がやられまして、私の事務所も、お金が、お金って大してないからいいんですけれども、もうパソコンとか皆持っていかれました。何かやっぱり聞いてみると、さっき御答弁ありましたように、五、六人のグループだと。日曜日の何か夕方、大体そういう人が余りいないときねらうんだというようなことでございまして、こういう、だれか手引きする者がいるんじゃないかと思っておりますけれども、犯人は捕まらないような状況。  非常に私の身近にもそういうことが起こっているんで、ゆゆしい問題だなというふうに思っておる次第でございますが、今御説明の中ありましたように、不法滞在者、はっきりは知りませんが、よく二十五万人とか二十六万人とかというようなことをよく言われますけれども、この不法滞在者の把握というのもなかなか大変だろうと思うんですけれども、この不法滞在者の人数でありますとか、それぞれの国籍等について、調べの付いている範囲で結構ですけれども、これは法務省になるんでしょうか、御答弁願いたいと思います。
  30. 増田暢也

    政府参考人(増田暢也君) 今年一月一日現在の我が国における不法残留者数でございますが、二十一万九千四百十八人でございます。その中で上位五か国の国籍、人数を申し上げますと、多い順に、韓国が四万六千人余り、中国が三万三千人余り、フィリピンが三万一千人余り、タイが一万四千人余り、そしてマレーシアが八千人余りとなっておりまして、これら上位五か国で不法残留者全体の六〇%強を占めております。  このうち、韓国とタイはここ数年減少傾向にございますが、中国につきましては留学や研修などの在留資格を中心として、前年比約一三%、不法残留者数が増加しました。それから、観光などを目的として短期滞在の在留資格で入ってくる外国人がおられますが、短期滞在で入って不法残留している人について見ますと、フィリピンが約一万四千八百人、タイが約一万三千人に上っております。  なお、御指摘にありましたとおり、今私が申し上げたのは不法残留者数であって、それとは別に約三万人不法入国者がいるものと見られておりまして、我が国における不法滞在者数は約二十五万人に上るものと考えられております。
  31. 藤野公孝

    藤野公孝君 なかなか頭の痛い問題と思います。そういう不法滞在者の放置がいわゆる治安の悪化といいましょうか、犯罪の温床といいましょうか、そういうものになっているという認識で入国管理局も、昨今、不法滞在問題に対してこれを本当に根本的に解決すべく努力をいろいろなさっていると思うんですけれども、法制面の対応等含め、何か半減するというようなスローガンもあるやに聞いておりますけれども、その辺の経緯とか今後の対応について御説明お願いします。
  32. 増田暢也

    政府参考人(増田暢也君) 昨年十二月の犯罪対策閣僚会議におきまして取りまとめられた犯罪に強い社会実現のための行動計画におきまして、不法滞在者を今後五年間で半減させるということが盛り込まれたところでありまして、入国管理局といたしましては、治安対策上、強力かつ効果的な不法滞在者対策を多角的かつ総合的に実施していくことが喫緊の課題であると認識しております。  また、入管では、昨年十月に、東京都、それから警視庁とともに、不法滞在者の多くが集中しております首都東京において不法滞在者を今後五年間で半減させることを目指しまして、そのための取組推進する旨の共同宣言を発表しました。  今年はこの目標に向かう最初の年でありまして、入管としては、不法滞在者を確実に削減することを目指して、まず、今、日本にいる滞在者、これを日本にいさせないために、警察を始め関係諸機関との連携強化して、例えば合同摘発を積極的に推進するとともに、関係している国との送還であるとかあるいは旅券発給などについて積極的な交渉を通じて迅速な送還を実現するなどの方策を講じているところであり、これは今後も更に強化していきたいと考えております。  それから、今後、不法滞在を目的とする外国人を日本に来させないため、在留資格認定証明書の厳格な審査であるとか、あるいは不法滞在者を送り出す国に対する厳格な出国管理の要請などの方策を強化することも考えております。  それから、観光客などを装った不法滞在目的の外国人が日本に到着しても日本に入国させない、そのために、上陸審査の厳格化であるとか、あるいは偽変造文書鑑識の強化などの方策を講じているところであり、このように、日本に来させない、入国させない、いさせない、この三本を柱として、関係機関と緊密な連絡を確保しながら不法滞在者対策の一層の推進に努めていくこととしております。  お尋ねの中に法整備のことがございましたので申し上げますと、入管ではこれまでも、不法滞在者対策のために法改正を行ってきたところですが、今国会に入管法の改正案を提出しております。  その概要説明させていただきますと、不法滞在者を減少させるための制度整備として、一つは、不法残留などの刑罰について罰金刑を大幅に引き上げること、それからもう一つは、不法滞在者の中でも悪質な人については上陸拒否期間を現在の五年から十年に延ばすこと、またさらに、他方では、自ら出頭してきた不法残留者に対して、一定の要件に該当する者については簡易な手続で迅速に出国させる制度を設けますとともに、その上陸拒否期間を五年から一年間に短縮するということを盛り込んでおります。  このような法整備に加えて、従来から取っております不法滞在者摘発強化など種々の方策を今後もより強力、総合的に講ずることで大幅な削減を実現していきたいと考えているところでございます。
  33. 藤野公孝

    藤野公孝君 相手が外国人であり、またその裏には外国があるわけですから、いろいろ神経を使わなきゃいけないことも多いとは思います。それで外交関係がいろいろこじれたりというようなこともあると思いますが、どうぞ、とにかく国民がこれだけ治安について不安を持ち、あるいは心配している状況を何とか克服していけるように、引き続き御努力を願いたいと思います。  それから、先ほどやはりこの治安悪化の要因の一つとしてお述べになりました少年犯罪につきまして少しお尋ねしたいと思うんであります。  これも結構身近なもう問題になっております。もう少年とは思えないような恐ろしい犯罪を度々犯しているというか、よく耳にするわけでございますけれども、現在のところといいますか、今分かっているデータで、刑法犯検挙人数に占める少年の割合は四割、それから街頭犯罪に至っては七割、そういうようなことだというふうに承知しておりますが、こういう現状少年非行の現状につきましてどのような認識を持っておられるか、警察の方にお伺いします。
  34. 伊藤哲朗

    政府参考人(伊藤哲朗君) お答えいたします。  最近の少年非行の状況につきましては大変厳しいものがございまして、このところ年々状況は悪化していると言えようかと思います。  平成十五年について申し上げますと、昨年検挙されました刑法犯少年ですが、御指摘のように、人数で十四万四千人余となっておりまして、これは刑法犯で検挙されたすべての人数の約四割を占めておるという状況でございます。また、ひったくりでありますとか路上強盗などの街頭犯罪に至りましては、人数では三万六千人余という者が検挙されておりますが、これはすべての街頭犯罪で検挙された者の約七割という状況になっております。  刑法犯少年と申しますのは、いわゆる十四歳からそして二十歳未満の十九歳までという六年間の年齢層の者が刑法犯少年ということになるわけでございますけれども、考えてみますと、わずか六年間の年齢層の者が全検挙人員のこれだけの割合を占めているという状況になっておるわけでございます。また、刑法犯少年の人口比といいましょうか、千人当たりどのくらいの少年刑法犯で捕まっているかという状況を見ますと、現在一七・五という数字が出ておりまして、これは成人の約七・六倍という状況で検挙されておるという状況が出ております。  こうした刑法犯で検挙に至らないような少年につきましても、警察では街頭で補導をしたりしながらいろいろな非行少年の防止対策というものをやっておるわけでございますが、昨年は約百三十万人の不良行為少年というものを補導をしたわけでございます。この数字というものは年々増加をいたしておりまして、平成に入ってから最高の数字ともなっておりますし、内容的にもいわゆる深夜を徘回しておるというようなことで補導される少年が大変多いという状況でございます。  さらに、昨年の少年の被害といいましょうか、こういった結果、被害に遭うケースも多いわけでございますけれども、児童買春の被害児童数も千五百人を超えたという状況で、大変多くのこうした少年が被害に遭っておりまして、少年が被害者となる凶悪犯、性犯罪というものも増加しております。  少年問題が少年の非行という面とまた被害という両面におきまして厳しい状況にあるということで、私どもとしても大変厳しく認識をしておるところでございます。
  35. 藤野公孝

    藤野公孝君 今の御答弁をお聞きしても、本当にもう何か心が重くなるというか、暗くなるような気持ちで聞いておりますけれども、どうしてこういうふうになったのかなと、これはだれしもそういう今気持ちだろうと思うわけでございますが、いろいろ法律面、甘いんじゃないかとか、それから教育、家庭、何かいろいろ問題あるんじゃないか等、様々な御指摘があり、週刊誌上でもよくそれを目にするわけでございますけれども、警察御当局としてこのような少年非行の現状、招来したというか、惹起してきたその原因というものについての御認識をお伺いします。
  36. 伊藤哲朗

    政府参考人(伊藤哲朗君) こうした少年非行の現状を惹起した原因というお尋ねでございますけれども、やはりその背景といたしましては、少年自身の問題もありますけれども、少年を取り巻く社会全体の問題もあろうかというふうに思います。少年自身の規範意識の希薄化といったようなこともありますし、あわせて社会全体の規範意識というものも希薄化してきているのかなという状況がありますし、さらには少年を取り巻く環境の悪化といったこともその背景になっているのではないかというふうに思います。  具体的に申しますと、少年自身や社会全体の規範意識の希薄化といたしましては、例えば少年自身に万引きや喫煙というものを悪いこととは思わないといった者の数がかなり多いというような少年の意識自身が変わってきているようなこともございますし、また一方、少年の不良行為などの問題行動に対します大人の関心といったものが大変薄いといったような状況でありますとか、そういったことで、家庭や学校、そして地域社会の全体としての少年の非行防止機能と申しましょうか、そうしたものが低下してきているのではないかという感じが一ついたします。  また、少年を取り巻く環境の悪化といたしましては、最近のいろいろな風俗の変化等によりまして、テレホンクラブや出会い系サイトなど性を売り物としますような営業が増加をしてきておる、あるいはMDMAなどの合成麻薬や脱法ドラッグなんかが青少年の間ではんらん、蔓延をしておるというような状況、さらには性や暴力に関する露骨な情報のはんらん、また少女の被害を先ほどちょっとお話ししましたけれども、少女の性を買う大人の増加といったような問題、加えまして、いろいろな町中におきましてカラオケボックス、インターネットカフェなど不良行為を助長するような営業が深夜においてもずっと行われているというような環境の問題が挙げられようかと思います。  こうした問題というものが複雑に絡み合いまして少年非行の深刻化を助長しているのではないかというふうに考えておるところでございます。
  37. 藤野公孝

    藤野公孝君 本当に私も、いろんな町歩いて、個人的にも相当、まあよく言えば自由なんですけれども、一つ間違えばもうこれは犯罪に結び付くなと思うような行為を目の前で見ることはございます。  そういうことで、これ、街頭での取締り等、それだけじゃない、そういう場面だけではなくて、本当に国、自治体あるいは家庭、学校、何か社会総ぐるみでいろいろ対応していかないと、とても目先の対応だけでは、取締りということだけでは、これは対応できないように思うわけでありますが、まあそれはもう釈迦に説法のような話でございますけれども、今後のそういう少年非行防止につきましての具体的な対策がございましたら御説明いただきたいと思いますが。
  38. 伊藤哲朗

    政府参考人(伊藤哲朗君) 現下の先ほど申し述べましたような少年非行の情勢に対しまして、警察では、少年非行対策というものが我が国治安回復のかぎであるというふうに認識をしておりまして、昨年八月に警察の方で策定いたしました緊急治安対策プログラムにおきましても、深刻化する少年犯罪への対応を重点の一つとしているところであります。  また、政府全体におきましても、昨年十二月に青少年育成施策大綱が策定されまして、また先ほどもお話ありましたように、犯罪に強い社会実現のための行動計画犯罪対策閣僚会議の方で策定されたところでありまして、少年非行防止や少年犯罪の防止を政府を挙げて取り組むこととされているところでございます。  警察でも、こうした動きを受けまして、不良行為少年の補導活動強化による少年非行の未然防止あるいは少年犯罪の厳正かつ迅速な捜査、さらには非行少年、非行集団対策の推進といったことをやってまいるつもりでございますけれども、加えまして、少年サポートセンターを中心とした関係機関やボランティアとの連携によります非行少年等の立ち直り支援など、少年非行防止のための総合対策というものを推進してまいりたいと考えておるところでございます。
  39. 藤野公孝

    藤野公孝君 治安対策につきまして最後の質問でございますが、先ほども御説明にありましたように、組織犯罪についての言及がございました。これはもうずっと昔からある話でございます。ただ、最近、非常に連携してやっているとか、何かその質が少し変化してきているような感じをさっき伺っておりましたけれども、このような暴力団等による組織犯罪の多発というものが御指摘のとおり治安情勢の悪化の要因の一つということだろうと思うわけですけれども、具体的に現在のそういう組織犯罪の情勢というものはどのようになっているか、お聞かせいただきたいと思います。
  40. 栗本英雄

    政府参考人(栗本英雄君) 今の、ただいまの組織犯罪につきまして、暴力団犯罪とか薬物銃器事犯とか、そういう観点から若干お話しさしていただきたいと思います。  まず、暴力団犯罪につきましては、従来のいわゆる暴力団組織の威力を背景にした犯罪、これは現在もちろんありますし、資金源的に言いますといわゆる伝統的な資金源と、このような犯罪は今もあるわけでございますが、ここにとどまらず、最近では、先ほども御説明を申し上げましたが、外国人犯罪組織連携した集団密航事件とか、あるいは不法入国目的といたします偽装結婚事件、あるいは異なる暴力団に属する者とか来日外国人等々、正に多種多様な者とグループを構成いたしまして、さらには薬物事犯等、こういうような犯罪を次々に敢行しているということが言えるのではないかと思います。  また、薬物事犯につきましては、残念ながら現在も、特に覚せい剤については現在第三次乱用期が継続しているというように見ておりますし、高度に組織化されました密売犯罪組織が大量の薬物の密輸、密売を敢行していることがうかがえる状況にあるわけでございます。また、このような薬物犯罪組織につきましては、先ほども申し上げましたが、暴力団員のみならず来日外国人、ブローカー的な存在の者が、先ほどのようにいろいろな形で組合せが複雑でございますが、そのような形で犯罪を敢行していると、こういうことが言えるかと思います。  また、銃器事犯につきましては、昨今もいわゆる銃器発砲事件が非常に多く残念ながら発生をしておるところでございます。特に、昨年は暴力団の対立抗争絡みの発砲件数が増加するとともに、相当数のけん銃武器庫事犯が検挙されているわけでございます。このように依然として暴力団が対立抗争等に備えてけん銃を隠匿している状況がうかがわれるなど、正に犯罪組織と銃器犯罪というものの関連性が強くうかがわれるところでございます。  また、来日外国人犯罪につきましては先ほど申し上げたとおりでございます。  今申し上げましたことからも、正に暴力団を始めといたしまして、犯罪組織が相互に複雑かつ密接に連携しつつ犯行を敢行している状況がうかがわれまして、それらの組織犯罪が正に治安悪化の要因になっていると見ておるところでございます。
  41. 藤野公孝

    藤野公孝君 特に今、最後、今御指摘になりましたし、私も冒頭にちょっと御指摘しましたけれども、だんだん犯罪が、何というか、知能犯というか巧妙というか、単純なばかげた犯罪が減って、少し向こうも知恵を付けてきたなというような感じがするわけで、巧妙になってきたという。そうなりますと、やはりそれに対する取締りあるいは検挙というようなことについても、いろいろこれまでとはまたグレードを一つ上げた情報収集を始め密度の濃い捜査等も必要になってくるんじゃないかと思うわけです。  こういう組織犯罪連携といいますか、こういうものに対応してこれからどういう対応を警察の方で取っていかれるのか、お伺いいたします。
  42. 栗本英雄

    政府参考人(栗本英雄君) 正にこのような組織犯罪に対しましては、警察として正に総合的な統合された戦略、戦術に基づいた対策を講じていくことが強く求められていると感じております。  そのような観点から、まず組織的な体制の整備を図ることが大変大事だなという観点に立ちまして今般警察法の改正をいただきまして、警察庁刑事局に組織犯罪対策部を新設したところでございます。この組織の下に、具体的に申し上げますと、組織犯罪情報の集約、分析及び共有の推進、それから二つ目に戦略的な捜査の調整を実施すると。これは各部門、また各都道府県にまたがるものでございますから、そのような意味におきます戦略的な捜査の調整が要るということで、そのような面からの実施をしていきたいということでございます。それから三つ目として、このような対策を講じるためには国内の関係省庁及び特に外国の捜査機関との連携確保を行うことが極めて大事でありますが、そのような施策をより積極的また効率的に行っていきたいと考えているところでございますし、また警察庁のみならず各都道府県警察におきましても、そのような組織犯罪対策の強化という観点からそれぞれ所要の体制の整備を図っているところでございます。  このような組織的な体制の整備、またそれを通じた情報の共有を図ることにおきまして、今後、より組織犯罪対策を効果的また強力に推進してまいりたいと考えているところでございます。
  43. 藤野公孝

    藤野公孝君 今後、やはりこの治安対策というものが本当に政治の面でも大きな国のテーマと課題になってくると思うわけであります。私も自民党の方で言って恐縮ですけれども、まあこれは総理としておっしゃった。小泉総理も、もう一度世界一安全な国になるように、みんなで、政府それから国民一丸となって努力しようというようなことも訴えられておると思うわけでございます。  私自身も、冒頭申し上げましたように、二十五年前には本当に日本に比べて何てニューヨークは危ないんだろうと思って、半分それは日本人としての誇りであったわけであります。今、今度ニューヨークへ行ったら、今度は肩身の狭い思いが、何でニューヨークはこんなに良くなっちゃったのみたいな感じになったわけですけれども。  そういうこともありまして、小野国家公安委員長に、今後の治安対策の総元締というか、いらっしゃいますので、大臣の御決意を伺いたいと思います。
  44. 小野清子

    国務大臣(小野清子君) 国民犯罪の被害に遭うことなく安全で安心して暮らせる社会実現するということが警察に課せられました重要な使命であると、そのような認識を持たせていただいております。  警察におきましては、昨年十二月に犯罪対策閣僚会議というものが構成されまして、そこで策定されました行動計画に基づきまして、関係機関あるいは地域住民の皆様方との連携を図りながら各種の犯罪対策推進することといたしております。  国家公安委員会といたしましても、こうした取組は大変重要である、そのような認識の下に、各種施策が的確に推進されますように引き続き警察を督励してまいりたい、そしてそれによりまして世界一安全な国日本の復活を図ってまいりたいと思っております。
  45. 藤野公孝

    藤野公孝君 今、大臣の決意を本当に心強く思います。どうぞ頑張っていただきたいと思います。  次に、ODAのことについて質問いたしたいと思います。  今日は外務省さん、本当、お忙しいというか緊急な中どうもありがとうございます。  先ほど阿部大臣からの御説明の中にもありましたように、今年二〇〇四年は、コロンボ計画から起算するんでしょうけれども、五十周年というか、日本ODAというものの枠組みに入って援助を始めてから五十年という記念すべき年だというようなことを伺っておるわけでございます。  片や、いろいろ我が国経済というものがこのところ調子も悪いし、納税者の意識も厳しくなってきていると。国内がこれだけ不況で、特に地方なんか行けば公共事業が命なのにそれもカットしている。そういう中で、何で経済成長がどんどん進んでいる中国に円借なんかを続けるんだとか、いろんな、何というんですかね、納税者としての素朴な批判、あるいは、多少言葉が良くないかもしれませんが、どこで、どういう形で、何のために使われておって、それでそれが本当に地元の人たちが日本ありがとうと、こう思ってくれているのかねみたいなところが見えない。不勉強なのもあるかもしれない、見えないというようなことで、そういう若干の疑問、何となく身近に感じられていないというような疑問というようなものもあって、ODAを取り巻く、世界情勢もそうですけれども、国内の環境も今岐路に立っているというような御認識がODA白書等見せていただいてもはっきりと書かれているわけでありまして、私も、そういう認識というものがあればこそ今一生懸命新しい方針等も作って頑張っておられるんだと思うわけですが。  昨年の八月に十一年ぶりにこのODAの基本となる、方針となる大綱が改定され、まあ俗称でしょうけれども、新ODA大綱と言われているようですが、それが改定されたということでございますが、そのODA目的というものにつきまして、先ほども御紹介ありましたけれども、「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資すること」という目的をはっきり規定しまして、人道、環境問題、紛争やテロの予防などの問題解決にODAを活用することが我が国自身にも利益をもたらすということが書いてあるわけでございます。結局、我が国のためになっていないんじゃないかということに、いや、我が国のためになっているんだよということを言わんがためだと思うわけですけれども。  このことにつきまして、これは新たに国益重視のODAと姿勢を転換したんだというような非難というか指摘です、まあ非難でもないでしょうけれども、指摘がある一方で、本来ODAというのは人道主義的なものであって、国益を前面に出すのは適当でないというような指摘もあるようでありますが、そういうことを踏まえまして、今回というか、この新しいODA大綱目的をこのように定義した、決めた、その背景にあるお考えを分かりやすく説明していただきたいと思います。
  46. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。  まず、ODA大綱目的についてのお尋ねでございましたが、その前に、そもそもODAの中身がなかなか見えにくい、あるいは身近なものでない、あるいは国内の現在の経済状況の中でなぜこのようにODAを海外に展開をする必要があるのか等々の厳しい意見が国内にあるという御指摘がございました。  私どもも、昨今、外務省としてタウンミーティング的なものをあちこちで催させていただいておりまして、できる限りいろんな立場の方々の声を伺うべく努力をしてきておるところでございますが、言わば外務省として国内に政策を発信していくということに今努めているところでございますが、そういう中で先生御指摘のような論点がしばしば取り上げられるわけでございますし、私どももそういった厳しい御批判があるということを十分踏まえながら政策あるいは改革に取り組んでいく必要があるんではないかというふうに考えておるところでございます。  昨年、ODA大綱を十一年ぶりに見直させていただいたわけでございますが、これもまたそういった我が国ODA改革の言わば集大成という気持ちで、各層から御意見、御批判をちょうだいしながら現時点でまとめられるものをまとめさせていただいたと、こういうことでございます。  ところで、御指摘ODA大綱における目的の定義付けの考え方の背景でございますが、国益重視かあるいは人道支援かというような議論がこの大綱をまとめていく過程で様々な方々から寄せられたこともまた事実でございまして、今なぜODAかということをめぐってそもそもかなりの議論が行われたわけでございます。私どもとしては、できるだけ広く国民の皆様の御理解を得ることが必要だという考えから、この目的をできるだけ明確に書き込みたいということで、具体的には「国際社会の平和と発展に貢献し、これを通じて我が国の安全と繁栄の確保に資することである。」というふうに書かせていただいておるわけでございます。  また、この大綱の中では、それに加えまして、平和を希求する我が国ODAを通じて途上国の開発支援に積極的に取り組み、我が国政策を内外に示していくことは国際社会の共感を得られる最もふさわしい政策であるというふうに述べておりまして、そういった意味から、ODAは今後とも大きな役割を担っていくべきであるというふうに書いておるわけでございます。国益という言葉そのものは使っておりませんが、ODAというものが国際社会に寄与し、それを通じて我が国自身のプラスになっていくんだという、そういう考え方を出させていただいておるわけでございます。    〔委員長退席、理事田浦直君着席〕  この考え方について、もう一つは、戦後、平和を追求することを国の基本に掲げました我が国が、日本国憲法に示された意思と国連憲章の精神にのっとり国際社会において名誉ある地位を占めるんだといったような考え方、そしてそれにのっとって貢献してきたことを十分踏まえてきたところでございます。
  47. 藤野公孝

    藤野公孝君 よく分かりましたけれども、今後このODAというものを本当に国民がやっぱりしっかり、何というか、関心を持って、外務省がとか関係省庁がやっている仕事だ程度の話じゃなかなか浸透しないと思いますので、そのPR等についてもまた重要だと思います。こういうものを出されている、パンフレットを出されているのも大変そういう意味ではその一助になると思います。  この中にもございますけれども、ODAというのが海外からの評価も高い、それから我が国の外交にとっても大変これは重要な戦略手段であるというようなことで、私自身、いろいろ財政等の制約はあっても、ただ減らせばいいというような問題ではないというふうに考えるわけでございますけれども、どういう国に、どういう地域に主に日本ODAが、何というか、対応しているかというと、こういう資料を見ますと、やっぱり非常に日本の、近隣という意味ではないですけれども、アジアが、これいつの数字か、二〇〇一年ですけれども、五七・六と書いてあるから六割近い分野というか、あれがアジアに振り向けられているということでございます。ある意味じゃ当然といえば当然の部分もあるんでしょうが、片や、冒頭にも申し上げましたように、特に、アジアといいましても、中国というのは非常に大きなウエートを占めるわけですが、中国につきましてはやはり少し見直したらと、こういう意見が強いわけでございます。  私はアジアは重要だと思っていますが、そういう考え方と、中国について非常に厳しく見直したらということとの相関関係というか調整を、どのようにかじ取りを取っていかれるか。特に中国のODAのこれからのポイントを含めて御説明いただきたいと思います。
  48. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。  御指摘のとおり、アジアはざっと六割の私どものODAの被援助国という、援助地域であるわけでございますが、昨年、ODA大綱を改定します際にも、正に御指摘のアジア重視と中国の位置付けというのもまた大きな論点でございましたし、実はODA大綱をパブリックコメントに付したわけでございますが、そのパブリックコメントの中で寄せられた御意見の中で相当数が対中援助の位置付け論でございました。  そういったことを踏まえて、この大綱の中ではアジアを重点地域というふうに位置付けておるわけでございますが、同時に、アジア諸国援助需要変化等に十分留意して、戦略的に分野や対象などの重点化を図るというふうに記しておるわけでございます。そういった観点から、対中国ODAにつきましても、中国の経済発展に伴う援助需要変化、あるいは対中国ODAに対する国内の厳しい見方等を十分踏まえて実施していくことがこのODA大綱の趣旨に合致するものではないかというふうに考えております。    〔理事田浦直君退席、委員長着席〕  対中援助につきましては、二〇〇一年十月に経済協力計画を策定いたしまして、その中で、従来の在り方を大きく見直しまして、環境分野あるいは相互理解の増進等に重点を置くということ、あるいは沿岸部の経済インフラは基本的に中国が自ら実施するものであること、あるいは規模については、従来の支援額を所与とせず、案件積み上げ方式でいくことといったような考え方を明らかにしておりまして、これを現実の具体的な案件処理に当たって適用しておるところでございます。  以来、この計画に基づいて、要請案件を精査の上、対中国ODA実施してきておるわけでございますが、例えばその大宗を占めます円借款について見ますと、近年、供与規模も大幅に縮減してきておりまして、具体的には、ピーク時二〇〇〇年度から比較しますと、二〇〇三年度は五五%減ということでございますし、内容的にも環境案件、人材育成案件に特化したものになっておりまして、今後とも日中双方にとって互恵的な案件の形成と実施という観点から、これらのテーマを中心に、我が国にとっても意義のある対中国ODA実施していきたいというふうに考えております。
  49. 藤野公孝

    藤野公孝君 中国の額も随分、今、対中国関係で減って、大変その中で環境というものがクローズアップされているということで、一つの、何というんですか、選択と集中というか、その一つの方向性ははっきり見えていると思うんですけれども、今後またこれはいろいろ議論をしていかなきゃいけないことだと思っております。  一方、私、このODAと、例えば日本が安保理で理事国になりたいとかというような話を結び付けるのはいかにも、何というか、せこいというか、だけれども、しかし国際社会の中で相手の国民から日本を理解されなきゃその政府日本を支持しないという意味において、やっぱりODAというような地道な日ごろの付き合いがやはり日本の国際的ステータスというものを支えてくれるものだという認識を持っております、お金で買うとかそういう意味じゃなくて。  そういう意味におきまして、ちょっと気になりますのは、アフリカだけじゃなくて、アフリカ、中東の日本のシェアというのが、アフリカがこの資料の中では一一・四、中東が三・八、合わせて一五%ぐらいなんですけれども、これがイギリスは四九%、フランスは六二%なんですね。そういうことから見まして、もちろんウエートの差があっていいわけですけれども、イギリスやフランス並みになれとかという意味じゃ全くないんですけれども、ちょっとかなり少ないねという、ウエートがですね。  そういう観点から、今後やっぱり日本の外交、世界戦略を持つときに、特に今、中東はイラクで大変あれしておる、復興支援、人道支援やるわけで、ODAも付けるわけですけれども、このアジア、アフリカ等につきまして、このままでいいのかなという素朴な疑問を持っておるんですけれども、これについていかがでしょうか。
  50. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。  御指摘いただいたのは、このパンフレットの九ページ、八ページから九ページにかけての各国の地域的配分の図によるものだというというふうに思っておりますが、正にそれぞれの国の歴史的な途上国とのお付き合いの深さ、浅さというものも反映されておるのではないかと思うわけでございますが。  アフリカにつきましては、我が国にとっては、ここにございますように、ざっとまあ一〇%前後のシェアでここ数年推移してきておるわけでございます。もちろん、イギリス、フランスを見ますとアフリカのシェアが非常に高いわけでございますが、そもそも分母が日本の場合には、例えば九〇年代、トップドナーでございますし、ということでございますので、絶対額で見ますと日本がトップドナーであるアフリカの国というのは結構多いわけでございまして、そういった意味で、我が国としてアジアを重視しているからアフリカを軽視しているという、そういう一直線の話では必ずしもないというふうに御理解いただければと思うわけでございます。  度々ODA大綱を引用して恐縮でございますが、アジアを重点地域としながらも、その他の地域についても重点化を図るんだということを指摘しておりまして、アフリカについては、具体的に多くの後発開発途上国が存在している、それから深刻な開発問題、紛争を抱えて自助努力に向けた取組強化している、これに対する支援をするんだと、こういう考え方を出しております。  我が国は、一九九三年から五年に一回TICADというアフリカ開発会議を開催しておりまして、これを中心に、アフリカとのパートナーシップとアフリカの国々自身の言わば自助努力、オーナーシップということの組合せを国際的に議論をしていく、それを日本がその場を提供するということでやってきておるわけでございますが、その柱として、平和の定着、人間中心の開発、経済成長を通じた貧困削減といった三本柱で対アフリカ支援を進めてきておるということでございまして、重点化の中で、かつそういった各国も含めたアフリカ開発全体像を見ながら我が国なりに積極的に今支援をしてきておるということでございます。
  51. 藤野公孝

    藤野公孝君 そういうアフリカとか、日本から遠いと思われておりますけれども、いろんな世界的な視野でいろいろODAというもののバランスを取っていっていただきますようにお願いしたいと思うんですが。  最後になると思いますが、先ほども阿部大臣のお話の中にもありましたが、御説明にもありましたが、ODA予算というのが、平成九年かな、に比べてこの十六年度予算では三〇%削減というか、少なくなっているということでございます。これは諸般の事情でもう致し方ないということかもしれません。九七年が一兆千六百八十七億ですか、この十六年度予算は八千百六十九億円、まあ正しいかどうか、そういうことでございます。諸般の事情で三割も減ったと。外務省にとってというか、関係省庁にとってはかなりショックなことかもしれませんけれども。  ODAも、日本は幅広い国民の支持を形成して、もう今の経済状況が改善すればODA支援量を増加させるように最大限努力をしてくださいというようなお願いも来ているやに伺っておりますけれども、そのことを含めまして、今後のODAの持っていき方、国民の支持、国民とともにあるODAということで、最後にその抱負なり決意をお願いいたします。
  52. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。  御指摘のように、ピーク時、平成年度から七年間で三〇%の削減でございまして、この十六年度予算の水準は十四年前の平成年度予算を下回る水準ということでございまして、我が国ODA予算の減というのは大変顕著なものがあるわけでございます。  これは、我が国の極めて厳しい経済財政状況の下で、外交の極めて重要な手段としてのODA予算につきましても合理化効率化を図りつつ削減するということになったわけでございますが、一方、我が国の国際貢献として真に必要な予算については積極的に確保していくことが重要でございます。例えば、イラク復興支援というものの重要性にかんがみまして、先ごろ御承認いただきました平成十五年度補正予算におきましてはイラク復興支援経済協力費千百八十八億円等を計上いたしまして、当面する課題に対して適切に対応する努力を行っていこうということでございまして、必要なところについてはいろいろと御相談をしながら工夫をしていくということになろうかと思います。  ただ、その前提としては、先生いろいろ御指摘のとおり、ODAについての様々な課題、戦略化でありますとか効率化でありますとか透明性でありますとかいったようなことを重視し、また国民の皆様の目線でこのODAの意義ということを考え改革を実行していくということが予算について御理解を得ていく上でまず大前提でございますので、そういった面で改革を更に推進しながらODAの重要性を訴えてまいりたいというふうに思っております。
  53. 藤野公孝

    藤野公孝君 質問終わります。
  54. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 民主党・新緑風会の岡崎トミ子でございます。今日はODA関係について質問をさせていただきます。  マレーシアのパハン・セランゴール導水事業について聞きたいと思いますが、今年に入りまして、二十四団体、百二十四人の個人が賛同しまして円借款供与決定の再考を求める要望書が出されました。この要望書を見たところ、見過ごしにできない内容でありますので、この行政監視委員会で取り上げることといたしました。  この事業は、マレーシアのパハン州というところのケラウ川流域にダムを建設して、八キロメートルのパイプラインと四十五キロメートルの導水トンネルで首都クアラルンプールのあるセランゴール州に一日約二百三十万立方メートルの水を引くという巨大事業でありまして、総事業費は十億ドルと見込まれております。  二〇〇三年三月三十一日、日本政府からマレーシア政府に対して、この事業のために八百二十億四千万円という巨額の特別円借款を供与するとの交換公文が締結されまして、現在、国際協力銀行、JBICとマレーシア政府実施機関との間で借款契約に関する交渉が行われていると聞いております。この供与額は、日本政府開発援助ODAを開始しましてからこれまでの五十年間に行ったプロジェクト借款の中で最大級のものでありまして、他の事業と比べますとこの事業の巨大さが分かります。  どのぐらいかというので、ちょっと私も、東京、日本の中でも見てみました。東京都の水ですね、利根川導水路事業でありまして、この首都圏の水需要の大変に急激な増加にこたえるためにできたものでありますけれども、この一日取水量は五十一億二千三百二十八・七リットルであります。このパハン・セランゴール導水事業は毎日二十三億リットルの水を導水するということですから、この利根大堰で毎日取水している量の四五%ほど毎日流す計算になります。東京の水というのは大変な量を私は使っているというふうに思いますけれども、その四五%、それを見ただけでも大変大きなものだというふうに思われるだろうと思います。  そして、過去十年間の個別の事業をずっと見ましても、十一年度から見ても、やはりこのパハン・セランゴール、この導水事業、断トツでございます。特別円借款のところも見ましても、これまた断トツだということが分かりまして、この要望書はこの巨額の融資に疑問を投げ掛けておりまして、円借款供与決定の再考を求めております。いわく、必要性が疑われる、社会環境への悪影響が重大である、意思決定について情報公開、参加といった観点から問題があるといった指摘でございました。  まず、この事業の必要性について問いたいと思います。この巨額の円借款の必要性について、どのように認識しておられるでしょうか。
  55. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。  本事業につきましては、二〇〇〇年五月にマレーシア政府から特別円借款ということで要請がございまして、以来、様々な検討、あるいはいわゆるモニタリング会合といいますか、環境社会問題に関する住民等との意見交換等々、手続を経まして二〇〇三年三月に交換公文の署名に至ったものでございますが、本件につきましては、マレーシア側において、今申し上げましたような過程の中で、代替案あるいは環境社会配慮を含めまして様々な検討が行われてまいりました結果、今後の水需要に対応するためにはこの事業の実施が必要であるという結論に至ったものでございます。  政府といたしましては、クアラルンプールを擁しますスランゴール州における水需要は今後とも増加が認められていること、さらには、近年、実際に水不足が発生しているにもかかわらず同州における新たな水源開発が困難であることといった観点から、この導水事業の実施が必要であるというふうに判断をし、円借款の供与を決定したものでございます。
  56. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 大変に、この近辺のずっと、マレーシアについての援助ODA関係ではずっとなかったんですね、しかも中進国であるということで唐突だという感じがあるわけなんですけれども、今御説明のように、日本政府ODAとして融資すべき事業と判断したということだろうというふうに思っておりますが、その必要性を判断した根拠となるデータ、これが公開されておりません。  この事業の必要性については水需要予測の観点から判断したと、今も人口増加、水不足というようなことでおっしゃっておりますけれども、この根拠というものはどのようなものなんでしょうか。根拠となった文書を公開すべきだと思っております。
  57. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) 水需要の予測につきましては、マレーシア政府が、対象地域におります居住者の世帯数、それからその地域におきます経済活動、商業、工業、サービス、それから産業等におきましてそれぞれどの程度の水が必要かという需要量、それから漏水等によりますロス、それから水道サービスがカバーする地域、さらにその地域での人口増加率、こういったものを考慮して積算いたしましたものを当行にて確認、検討しております。  マレーシア側の予測の根拠となりますマレーシア国家水資源調査につきましては、マレーシア政府実施機関の事務所におきまして、その機関の職員立会いの下で閲覧が可能となっております。  当行では、その調査結果をマレーシア政府より、当行が公にしないということを条件として受け取っておりまして、検討したものであります。当行がこれをマレーシア側の意に反して公にできないことについては御理解を賜りたいと思います。
  58. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 疑わしいのに公開されない。じゃ、分からないと私たちの方は言わざるを得ないわけなんですね。  つまり、マレーシア政府の方は、今後の水需要予測を理論的根拠に挙げて今のようにおっしゃるわけですね。新たな水資源開発の必要性からこの実施が必要だというふうなことを言っているわけなんですけれども、マレーシア政府の方は、水需要予測の元データとして挙げておりますマレーシア国家水資源調査、今、見ることができるということでありましたけれども、政府関連オフィスの中で担当官同席の上で複写を禁止して閲覧可能であると、非常に限定された公開になっているわけなんですね。また、日本政府も事業の妥当性を確認したと思われますこのパハン・セランゴール導水事業のエンジニアリング・サービスに係る案件形成促進調査、この最終報告書は全く公開されていないという状況であります。つまり、水需要予測の方法論及び算出の基となっている詳細なデータがこれまで明示されていない、水需要予測、ひいては事業が正当なものであるかどうかということを検討することができない、こう言わざるを得ないというふうに思うんです。  日本政府はJBICが事業の妥当性を判断した材料を公開せずにということを今条件にということもおっしゃっておりましたけれども、これ、日本の納税者に対してどのような説明責任を取るおつもりなんでしょうか。
  59. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) こういった書類の入手につきましては、マレーシア政府との間で、先ほど申し上げましたように、公にしないということを条件にして得たものでございます。これは言わばマレーシア政府との間の信頼関係に基づいて行われている行為でございまして、当行が円借款事業の検討調査を行うに当たりまして、今後、当行に対して十分な情報が提供されないおそれがある、あるいは円借款事業の適切な事業に支障を来すおそれがあるということから公開をしておりません。この点については重ねて御理解を賜りたく存じます。
  60. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 こんな手法だったら、どの国に対しても、相手の政府がこれを公開しないことを条件に言っているといって、幾らでもお金を出せるんですよ。しかも、これ、八百二十億四千万、大変な額なんです。ですから、そのような説明ではなりません。  更に続けたいと思いますけれども、この事業のステークホルダーとしてフィリピンの法律で定められております地元の自治体、この事業への反対決議を採択しております。日本政府はこの相手国政府の法律に違反する事業を支援しているのではないかということで、私は事前に質問をさせていただくときに申し上げているところでございますけれども、いかがでしょうか。その後、このクラベリア町のことについての反対決議についてはいかがでしょうか。
  61. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) ただいまの御質問は、フィリピンについての案件に関することでございますか。
  62. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 いえ、間違えました、間違えました。大変失礼をいたしました。こっちが飛んじゃいました。ごめんなさい。失礼いたしました。  この巨大ダムの建設という選択肢に対しましては、水管理政策の包括的見直しが必要だという議論がマレーシア国内でも出されているところでありまして、老朽化いたしました給水パイプの修復あるいは水道料金の改定を通して水の有効利用を図るなど、代替案が検討されてしかるべきだというふうに思っておりまして、ODAはまずこの代替案の検討に向けられるべきだというふうに考えております。  先ほども漏水の問題について触れておりました。私は盗水の問題もあるだろうというふうに思っておりますし、日本の中ではこの水の問題では、かつては本当に蛇口をひねれば水がどんどん出てくる、もしかしたらマレーシアの方々の中にも水はただだということでどんどん使っているという面があるかもしれない、ですから節水の啓蒙ということもしなければいけない。この代替案の検討結果を示す文書を公開すべきだというふうに思っているんですけれども、まずその検討があったかどうか、そしてその公開についていかがでしょうか。失礼しました。よろしくお願いします。
  63. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) ただいま御質問の本事業の代替案の検討結果でございますが、これはマレーシア政府が行いました環境影響評価報告書において記載されております。この報告書を取りまとめる際に、事前にパブリックコメントのプロセスを通すとか、代替案の検討結果はマレーシア政府により一般に公開されていると承知しております。
  64. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 代替案といいますのは、A、B、C、Dまで例えばあるとすれば、その一つ一つについて環境影響がないかどうか、あるいは金額的なものでもなるべく比較的安い方の方法がないか、様々な住民の要求なども含めて住民が分かるような代替案を示し、それら一つ一つにチェックして、それらが公開されて、そしてこれが選ばれたということに関して本当に分かるようにしなければいけないわけですけれども、その代替案ということに関しては十分な公開ということがなされていないというか、チェックしてまた意見を出したところに対してその意見がもう一度返されていないという状況なんですけれども、その辺のことに関してはいかがでしょうか。
  65. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) マレーシア政府が行いました代替案でございますが、環境影響評価、これはマレーシア政府が行っておりますが、それによりますと、事業そのものを実施しない代替案、それからさらに河川からの取水、それから地下水のくみ上げといったダム建設以外の代替案が検討されております。当行におきましても、審査等を通じまして本事業の実施の妥当性について確認を行っているところでございます。  検討した代替案のメリット、デメリットでございますが、この環境影響評価では、ダム建設を実施しない代替案、それから河川からの取水、地下水のくみ上げといった代替案ですが、まず第一に事業そのものを実施しない代替案につきましては、クアラルンプールの首都圏を含みますクランバレーにおいて深刻な水不足が発生いたします。これによりまして社会経済への悪影響、それから住民の健康、福祉にとっての重大な問題が生ずるというデメリットがございます。  それから、ダムを建設しない代替案におきましては、河川から取水するあるいは地下水のくみ上げを行うということが検討されておりますが、乾季あるいは流量が少ない場合には必要な取水ができないということで、水の安定的な供給が損なわれるという問題がございます。
  66. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 つまり、代替案が納得のレベルに達していない現状だということについてまず指摘をしておきたいというふうに思います。  この外務省のホームページで公表されておりますプレスリリースを見ますと、案件概要説明の終わりに、なお、本件計画環境面、社会面への影響については、移転住民への適切な対応、生態系への配慮、この対策が十分に講じられることとなっていると。何となくこの「なっている」という表現が人ごとみたいに感じられるんですけれども、実際にこれはどういう意味なんでしょうか。融資の条件となっておりますでしょうか。それからもう一つ、「適切に講じられること」といった、そのことをどのように担保されますでしょうか。
  67. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) 当行としましては、移転住民の問題、それから生態系への配慮等につきましては非常に重要な問題だと認識しております。  この移転住民、それから生態系への対応につきましては、マレーシア政府一義的な責任でございます環境影響評価報告書、それから今後作成されます環境管理計画の確認を通じまして適切な対応をマレーシア政府に求めていきたいというふうに考えております。また、マレーシア政府が現地NGOや住民代表を招いて開催しておりますモニタリング会合へ当行職員出席したり、現状把握のためのミッションを随時派遣しているところでございます。  今後とも、移転住民、生態系への配慮のための対策が適切に講じられるよう必要に応じ第三者の意見を伺うなど、マレーシア政府取組を確認してまいりたいと思っております。
  68. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 是非丁寧に確認していただきたいなというふうに思いますのは、この移転住民のことに関しましては、例えば水没はしないけれども八十世帯が移転するということになって、どのようにマレーシアの状況なっているかといえば、大体一人一人に対して丁寧にやらなければいけないというのがODAの考え方だというふうに思っておりますけれども、一つの先住民族に対して、リーダーが返事をしてしまったら物も言えない、しかも、もしかしたら移転しなくてもいい条件があるということについては住民の一人一人に知らされていないから、もう承諾をしていかざるを得ない。しかし、その移転先はどのようになっているのか、このこともきちんと相手には伝えられていないから将来についての大変な不安な状況になっているということですから、このことについてはきちんと再確認をしてくださるということについてお約束いただきたいと思います。
  69. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) ただいま先生の御指摘の趣旨に沿いまして対処させていただきます。
  70. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 外務省にもお伺いしたいと思いますけれども、相手国に任せきりにせず、JBIC自身が適切な対策が講じられるように積極的に動くべきではないかというふうに思っておりますけれども、外務省、いかがでしょうか。
  71. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) この件につきまして、最初に御質問のございましたその資料の公開につきまして私どもも外交ルートでマレーシア政府と話をしたわけでございますが、先ほど御答弁のあったような結果でございまして、私どもとしてもあの資料についてはマレーシア政府の考えを尊重せざるを得ないという考えでございます。  ただ、これまでのこのプロジェクトを検討するプロセスにおきまして、マレーシア政府もかなり丹念に手続を取ってきておると思いますし、また日本政府の求めに応じて説明会を開催するなど、慎重に対応してきておるというふうに理解しております。  また、昨年三月に交換公文に署名したところであるわけでございますが、それ以来、マレーシア政府として、この事業の実施に当たってできる限り関係者の意見を聞いて、計画実施に伴う影響にも配慮しつつ進めるということで入念な準備をしておるということから、借款契約締結にかなり時間を掛けておるというふうに理解しております。  先ほどJBICの理事からも御答弁ございましたが、こういった環境面への配慮について、私どもとしても引き続き適切な配慮が払われるよう大いに関心を持って見守ってまいりたいというふうに考えております。
  72. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 よろしくお願いいたします。  それで、先ほど大変失礼いたしました。今度はフィリピンのミンダナオ石炭火力発電所について質問をしたいと思います、もう十分足らずになってしまいましたので。  先ほど質問をいたしました、日本政府は相手国フィリピン政府の法律に違反する事業を支援しているのではないか。といいますのは、クラベリア町というところで、これは二〇〇二年、二〇〇三年、二回に分けてこの石炭火力発電所反対決議を上げております。この点に関して質問をさせていただきたいと思います。
  73. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) このミンダナオの石炭火力につきましては、クラベリアという町で本年二月に反対の決議がなされたという事実はございます。  しかしながら、このクラベリアという町は環境影響の範囲外といいますか、環境影響から離れたところに所在する町でありまして、現段階では、フィリピンの法律上、プロジェクトの実施承認に影響を与えるものではないというふうに考えております。
  74. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 それは大変おかしいというふうに思います。  この町が関係ないのではなくて、この町は環境の問題については大変に関心のある町長が町をきちんと取り仕切っているという方でございます。私は、実は事前にお願いをいたしましたときに、賛成決議に変わったという、そういう御報告でありました。ですから、すぐにフィリピンの方に電話で確認をいたしました。町長、それから評議員ですね、ジョン・レイ・トミネスさん、それからロドリゴ・デュマルアンさん、この方が評議員なんですけれども、そのうちのジョン・レイさんの方に賛成の決議は出されていないということを確認いたしました。  あの席で賛成決議が上がっているというのはどの点から出たのか、私の方に証拠を出していただきたい、見せていただきたいと言ったら、これは民間でやる仕事なので私たちには見せることはできないんだと、そういういい加減な答弁をされておりましたので、直接フィリピンの方に問い合わせをしたということでございますけれども、この辺の辺りの、何とか賛成ということが前提となって物事を進めていくやり方、大変疑問に感じておりますから、その点についての反省の弁をお願いします。
  75. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) 地元の反対ということにつきましては、ただいま申し上げましたように、今年の二月に州評議会の一部の議員が本プロジェクトの反対を表明しております。しかし、これはあくまでも一部議員の意見表明でありまして、州評議会としての正式な決定ではないというふうに承知しております。  また、地元自治体の決議でございますが……
  76. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 私そういうことを聞いていないんです。賛成決議が上がったというふうにあのときおっしゃったので、反対決議でとどまっているんですね。それで、最近賛成に変わったということをおっしゃったので、そのことはうそだったんじゃありませんかということを申し上げているんです。
  77. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) 地元自治体の決議状況につきましては、事実としまして、融資関係先の民間の事業実施主体から確認しております。また、フィリピンの法律上、フィリピン政府の承認が地元自治体の承認を前提にしておるということで、当行としましては、フィリピン政府の承認を書面にて確認していることから、特に問題はないというふうに判断いたしました。
  78. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 問題ないのではなく、賛成決議が上がっているといううそについて申し上げたんですけれども、その時間がありませんので次に行きたいとは思いますけれども、申し上げたいのは、この町に関係がないとしても、この公害に関しましては、水銀そのほかの重金属、砒素、クロム、鉛、この微粒子が高い濃度で廃棄物中に含まれる可能性がありますので、フィリピンのどの地域においても、殊にこの地域におきましては二キロ圏内においては大変な被害を受けるということになりますので、そういうことについて当然クラベリア町ではそのことも考えて多分反対というふうに私はおっしゃっているのではないかというふうに思っております。反対している町があったらそのことは重視して取り組まなければいけない、それがフィリピンの中の法律でございます。確認をしておきたいと思います。  そして、この地元住民との十分なコンサルテーション、この必要性についてはどのようにお考えでしょうか。
  79. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) 今、先生から御指摘のありました地元住民との十分なコンサルテーションでございますが、これは極めて重要であるという認識をしております。当行の環境社会配慮確認のためのガイドラインにおきましても、地域、地元住民の参加の重要性をうたっております。このプロジェクトはこのガイドラインの適用案件ではございませんけれども、地元自治体の代表、住民、それからNGOなどの参加を得た上で、多数のコンサルテーションが行われたことを確認しております。
  80. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 だとしますと、このJBICの出されております環境社会配慮確認のための国際協力銀行ガイドライン、この中で重視されております情報公開の目的、意義ということを改めてお伺いしておきたいと思います。
  81. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) この環境社会配慮確認に係る情報公開につきましては、非常に重要なことだと認識しております。まず、プロジェクトが環境社会面に配慮された上で持続的に運営管理されていくことが非常に重要であります。また、プロジェクトの実施主体、それから当行が説明責任を果たしていく上で非常に情報公開が重要であるという認識をしております。  なお、個別案件の情報公開につきましては、平成十五年十月より施行されております独立行政法人等の保有する情報の公開に関する法律に基づきまして適切な情報公開を行っていきたいと考えております。
  82. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 それでは、その情報公開という意味で是非JBICにしていただきたいことなんですけれども、その趣旨を生かすためには、今ホームページでJBICが行っております情報公開について、英語による公開を促進すべきだというふうに思っております。一つ、案件リストについて、そしてもう一つは環境レビューということ、その結果を是非出していただきたいと思います。  事前に申し上げておきますけれども、これは担当者の能力がなければできないものというふうに私に説明がございました。案件に関して、これが本当に難しい能力が問われるものかと言いましたら、そんなことはないだろうというふうに思って私も出してみました。これを英語で言わなければ、今情報公開をしていろんな人から意見を歓迎するというそのJBICの方針、ガイドラインに沿うものだと、英語で言うことが大事だというふうに思っております。環境レビューにつきましても、これもできない仕事ではなくて、専門的な知識が必要なのではなくて、是非、できるものですので、是非英語でお願いをしたいというふうに思いますけれども、いかがですか。
  83. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) この英語による公開の話でございますが、現在の状況をお話し申し上げますと、当行が融資を開始した際のスクリーニング情報、これ案件リストというふうに御指摘があったかと思いますが、それと、それから契約締結後の環境レビュー、この結果につきましてはホームページを、御指摘のとおり日本語での情報公開を適宜行っているところでございます。  さらに、これに加えまして、プロジェクトにおきます環境社会配慮の主体が一時的にプロジェクトの事業実施者にあるという基本的な考え方から、環境影響評価報告書が地域住民を含めましたプロジェクトが実施される国において現地の公用語又は広く使用されている言語で公開されていること、そして作成に当たりましては事前に十分な情報が公開された上で地域住民等の協議が行われているということでございます。借入人、プロジェクト事業実施者によりこれらのことが十分に確保されるよう努力を図っていきたいと思っております。  これらを併せて参照することで十分な入手は可能ではないかというふうに考えております。
  84. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 ここでもう論争している時間もないので、是非英語で表記してくださるようにということを改めて要望しておきたいというふうに思います。  最後に、何回も住民との、あるいはステークホルダーとのコンサルテーションという重要性について、あるいは情報公開も大事だということについても、言葉ではおっしゃっていらっしゃるわけですけれども、本当に対応状況を、本当に相手に対して非常に大きな影響を与えるのにもかかわらず十分になされていない、相手側がそのように取っているわけです。  重ねて、対応状況をきっちりと融資を決定する前にしていただきたいということをお願いしたいというふうに思いますし、その説明と意見交換ということをしてくださるかどうか。JBICは私は一度もその場所に足を踏み入れていないというようなことも聞いておりますので、その確認をさせていただきたいと思います。
  85. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) 様々な御意見を伺いながら事業を実施していくということは、これは当然のことでございます。環境レビュー、それからプロジェクトの監理におきましても、関係機関、ステークホルダーからの情報提供を歓迎しているところでございまして、これは環境ガイドラインにも明確に記されているところでございます。  提供されました情報を参考にして、融資となる対象のプロジェクトにつきましては適切に環境社会配慮がなされるよう努める一方、説明責任確保のために環境レビュー結果などを文書の形でホームページに公開しております。また、情報提供者の要望に応じまして、個別面談の実施を行う努力をしているところでございます。その点については御理解を賜りたいと思います。
  86. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 もう一つ、この場合にはFoE—Japanが現地のマレーシアのNGOの皆さんとも連携をしながら、本当に住民の皆さんの様々な不安を聞き続けてまいりました。そうしますと、私はやはりそういったNGOにきちんと意見を返す、いただいたものについて誠実に返していくという、このことも大事なことだというふうに思っておりますので、このNGOについても、意見をいただいたらしっかりとそのことについて納得のいくように返していくという、事前にお話合いをさせていただきましたときにも、一〇〇%こたえないと相手の方が納得しないというような言い方でありましたけれども、やはりそこで足らざるを補っているそのNGOに対しても誠実に意見を交換し説明をしという、そうした態度であるということについて確認をさせていただきたいと思います。
  87. 丹呉圭一

    参考人丹呉圭一君) ただいま御指摘いただきました大変貴重な御指摘につきましては、それを踏まえて適切に対処していきたいと思っております。
  88. 岡崎トミ子

    岡崎トミ子君 よろしくお願いいたします。
  89. 岩本司

    ○岩本司君 同じく民主党・新緑風会の岩本司と申します。  国民の皆様方に分かりやすい質問をさせていただきますので、分かりやすい御答弁、どうぞよろしくお願いいたします。  私もODA中心の質問をさせていただきます。  まず、バングラデシュの水揚げ・貯蔵施設建設事業、またチッタゴン苛性ソーダ工場の修復事業についてお伺いします。  まずは水揚げ施設建設事業でございますけれども、これは十三億四千二百五十万円の無償資金協力により、水揚げ、また貯蔵施設を建設したものでありますが、この名のとおり水揚げと水揚げした魚を貯蔵する施設でございますけれども、これ当初の計画では三万四百七十五トンと見積もっているんですね。しかし、平成年度は四千百九十五トン、また十二年、何とこれ九百七十八トンで、十三年度は八百三十三トンなんですね。  これは計画が三万四百七十五トンで平成十三年八百三十三トンでございますけれども、ちょっとこの経緯といいますか、何でこういうふうになったのか、外務省、お願いします。
  90. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。  御指摘の事業でございますが、バングラデシュの重要な漁業基地でございますチッタゴンのモノハカリ地区において、既存施設を改善し水揚げ作業の効率的利用を図るため、桟橋、荷さばき施設、製氷施設等の整備を行うためのプロジェクトということでございます。  で、平成年度の決算の検査報告の時点でいろいろ御指摘がございました。本来この施設に水揚げされるべき漁獲物が違法な民間施設に水揚げされてしまっていること、それから乱獲による水産資源の減少に起因する漁獲量の減少といったようなことから、御指摘のように同施設の水揚げ量が計画を大幅に下回っておりました。  この平成年度の決算検査報告を受けまして私ども日本政府から働き掛けをいたしましたところ、バングラデシュ政府としては、この施設の水揚げ量を増やすために、違法な民間施設の取締りの強化、法運用の強化に乗り出したわけでございます。ただ、違法操業が大幅に減少したと言えるところまで必ずしも行っていないという実情でございます。加えて、従来からの乱獲や度重なるサイクロンに起因する環境変化、特に河川からの土砂の流出等による水産資源の減少が大変大きく、現在に至るまで、御指摘のように当初計画水揚げ量三万四百七十五トンに対しまして、平成年度四千トン強、それから平成十二年度、十三年度と一千トンを下回っておると、こういう事態になっておるわけでございます。
  91. 岩本司

    ○岩本司君 これは、サイクロンとおっしゃいましたけれども、日本でも台風は吹くわけですよね。その大きなサイクロンっていつあったんですか。
  92. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) ちょっと今、私、手元に具体的なクロノロジーを持ち合わせておりませんので、申し訳ございませんが改めて御報告させていただきたいと思いますが、バングラデシュ政府との協議の中でそういった話が出てきたということでございまして、日本の台風ももちろんあるわけでございますが、先方の説明では、河川からの土砂の流出が漁場に大きな影響を与えたということを言っておったということでございます。
  93. 岩本司

    ○岩本司君 あと、今回の調査でも、政府所有の水揚げ場から一定範囲で今おっしゃったように民間水揚げ施設の営業を制限する、また漁場管理条例の取締りを強化していくと。  この民間水揚げ施設、これは違法と言いましたけれども、これ、例えば日本、今の政府は民間でできることは民間でと言っているわけですけれども、これ民業圧迫になるんですか、大体。なるんじゃないですか。これ、民間の施設で営業しちゃいけないって制限どんどんしていって、これいいんですか。これ、日本国民の皆さんもすごい、非常に関心があると思うんですけれども。
  94. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。  今の御指摘の点につきましては、バングラデシュにおきましてはこれを取締りをする法規が存在をしておりまして、それにのっとって政府が法運用を強化しておるというふうに承知しております。
  95. 岩本司

    ○岩本司君 いや、ですから、私がお伺いしたいのは、おっしゃるのは、現地の条例では民間の水揚げ施設を造っちゃいけないというふうになっているわけでしょう。しかし、そのこと自体が、日本政府がお金をこうやって無償で出して、その水揚げ施設を守るために規制をしているんじゃないかというふうに聞いているんです。
  96. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。  水揚げ施設の建設なり運用をどのような制度の下で行政として考えるかというのは、これはバングラデシュ政府のお考えでございまして、バングラデシュ側としてはこれは法にのっとって運用しておられるというふうに理解しておるわけでございます。  一方、このプロジェクトを立ち上げます際にそういった違法な民間施設を前提にしておらないわけでございますので、このプロジェクトを守るために民間施設を規制するということではなくて、そもそも、民間施設を規制するということ自身がバングラデシュの法制度の在り方であるということで、このプロジェクトを立ち上げます際にはそういった違法な民間施設の存在を前提としておらなかったというのが実情でございます。
  97. 岩本司

    ○岩本司君 要は、これ当時想像できなかったという御答弁が今あったわけですね。だから、もう予想しなかったからこういうふうになってしまったんですけれども、改善できる見込みはあるんですか、今後。
  98. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 率直に申し上げまして、資金供与時の計画が、計画水揚げ量三万トン強という数字が果たして今から振り返ってみまして適切であったかどうかということについてはいろいろと議論があろうかと思います。  私どもといたしましては、水産資源の減少という環境変化を現実の問題として受け止めながら、可能な限りこの施設の有効利用が図られるようにバングラデシュ側と協議あるいは必要な助言をしていきたいというふうに考えておりますが、恐らくその具体的な在り方としては、当初想定しておらなかった、かつ法律上きちっとした規制対象となっておる民間水揚げ施設の違法操業の取締り強化というのも一つの道ではないかと思っております。  ただ、御指摘のように、三万トンという当初の計画と現実の三けたのトンのオーダーとのギャップがそれで果たしてどこまで埋まるかどうかについてはいろいろと考えるべきところがあろうかというふうに思っております。
  99. 岩本司

    ○岩本司君 当たり前の話なんですが。  じゃ、ちょっと戻って申し訳ないんですけれども、これ三万トンって、何で三万トンというふうに計画したんですか、見込んだんですか。当初は何万トンぐらい水揚げされていたわけですか。
  100. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 大変恐縮でございますが、ちょっとそのデータ、今手元に持ち合わせておりませんので、改めて御報告させていただきます。
  101. 岩本司

    ○岩本司君 一応私も、この水揚げ施設質問しますとこれちゃんと通告していますから、そのぐらいのことは、やっぱり責任者ですから、ちょっと頭に入れておいていただかないと困るわけですけれども。  大変これ厳しい状況だと思うんですね。改善されない場合の対応はどのように考えていらっしゃいますか。
  102. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 当面のところは、先ほど申し上げましたような、可能な限りこの施設の有効利用を図る方向でバングラデシュ側と対応を協議していくということでございます。
  103. 岩本司

    ○岩本司君 これは以前は一兆円以上の予算があったわけですからね。これ十三億だからってそういうふうに、どういうふうにお考えになっていたのか、当時の担当者の方よく分かりませんけれども、今もう国内でも大変厳しいんですよ、年間三万人以上の方が自殺して亡くなられているわけですから。これ十三億でも、一社に百万円ずつ有償という形で国内に支払ったら千三百四十二社の会社にお金を払うことできるんですよ。  先ほども、冒頭、副大臣が、予算がだんだん、ほかの国は増えているのに日本ODAは減っているとおっしゃっていましたけれども、そうはいっても、やっぱり今までのこういう失敗ですね、はっきり言ってこれ失敗ですから、それをしっかりと検証していかないと、また同じことを繰り返しちゃいけませんから強く申し上げているんですが。バングラデシュ政府と今から話していくとおっしゃいましたけれども、次の苛性ソーダの工場もありますから、ちょっと苛性ソーダ工場についてお伺いします。  これは工場の老朽化と、あと苛性ソーダ需要が増えてきたと。そういうことですね、これね。老朽化と需要が増えてきたからODA二十一億円日本としては援助したと。これトータル二十八億円というふうになっていますけれども、七億円はバングラデシュ政府が支払ったんですか。
  104. 岩下正

    参考人岩下正君) お答え申し上げます。  円借款の部分以外は基本的に先方政府の方で負担したと承知しております。
  105. 岩本司

    ○岩本司君 私も理工系の学部を出ておりますので趣旨は理解できますけれども、これも平成十四年度の決算報告書では、会計検査院の、これ工場閉鎖するんですよね、これ。ちょっと外務省、経緯、これ説明していただきたいと思います。外務省、お願いします。
  106. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。  この事業は、今御指摘ございましたように、操業開始後約二十年間にわたって稼働を続けた工場の改修、それからこれを通じた環境対策ということを主な目的としておったわけでございます。二〇〇二年十二月に事業継続の経済的合理性が失われたということを理由に閉鎖されております。  このプロジェクトを行いました時点の、特に環境対策という観点から申し上げますと、円借款を通じた設備の更新によって塩素ガスの漏えいがなくなり大幅な環境改善がなされたこと、苛性ソーダの製法転換によって水銀が必要とされなくなったことといった意味で、環境対策の観点からはこの事業の目的は達成されたものというふうに評価されておると思うわけでございます。  一方、この工場の経営の悪化の問題でございますが、これは一九八八年に交換公文、それから借款契約を結んだわけでございますが、その後九二年から九三年にかけまして、バングラデシュにおきましてパルプの輸入自由化措置が取られておりまして、その結果として苛性ソーダ工場の大口需要家である国営パルプ工場が経営不振に陥ったということ、それから不安定な電力供給といったような問題から販売量の減少に陥ったわけでございまして、その結果として、先ほど申し上げましたように、二〇〇二年十二月には、民営化を図るべく努力をしたようでございますが、応札価格が想定価格よりも大幅に低いこともありまして、最終的に経済合理性が失われたということで閉鎖に至ったわけでございます。
  107. 岩本司

    ○岩本司君 これ、販売量の伸び悩みから六〇%の稼働率だったというようなことなんですけれども、これ、二十一億円のうち幾らか戻ってきたんですか、日本に。
  108. 岩下正

    参考人岩下正君) お答え申し上げます。  返済の方は、契約の予定どおり、これまでのところ滞りなく順調に行われております。ただ、当初の契約どおりといたしましても、まだ完済時期は来ておりませんので、当然のことながらまだ完済には至っておりませんけれども、これまでのところ返済はきちんと予定どおり行われておるということでございます。
  109. 岩本司

    ○岩本司君 工場は閉鎖することになったけれども、お金は返していただいているということですね。それ、確認取らせていただきたいと思いますけれども。閉鎖して売上げないのに、これは政府が払うんでしょうけれども、これ本当に返していただけるんですか、二十一億円。どうでしょうか。
  110. 岩下正

    参考人岩下正君) 私どもといたしましては、そのように対応していただけるものと想定をいたしております。
  111. 岩本司

    ○岩本司君 本当に返していただけるんですかね。何か疑問でございますけれども。それは今理事さんからお伺いしましたけれども。  先ほど冒頭申し上げましたけれども、水揚げ施設、この苛性ソーダの工場、復旧施設ですけれども、これ今後、こういうことが起こっているんですけれども、バングラデシュ政府に対して今後ODAのプロジェクトとか何かあるんですか。今後の事業が計画されているんでしょうか。
  112. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 今、手元に具体的な案件リストはございませんが、バングラデシュ政府からは様々なODAについての要求が出てきておりまして、円借款であったり無償であったり、一つ一つ案件ごとにその内容を詰めさせていただいておるということでございます。
  113. 岩本司

    ○岩本司君 様々な案件があるということですけれども、こういう無償で十三億四千二百五十万協力して、結果的にこれがもう本当に水揚げ高が八百三十三トンになっていたり、またさらに円借款で二十一億円援助して工場が閉鎖されたり、そういうことを無視しながら、こういうことをきちっと清算しないで、確認しないで、バングラデシュ政府と、それでも今までどおりのやっぱり援助を続けていくというのは、私はそれは援助をしちゃ駄目と言っているわけじゃないんですよ。しかし、こういうのをきちっきちっとやっぱり政府に対してはっきり言って、約束して次に進めなきゃいけないと思うんですけれども、これ、いかがですか。
  114. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 先ほども水揚げの問題について率直に申し上げましたけれども、資金供与時の計画の数値の取り方についていろいろと今から振り返りますと問題があったというふうに思うわけでございまして、そういった意味で、御指摘の二つの案件踏まえますと、やはり円借であれ無償資金供与であれ、その援助効果が十分に発現されるように、需要見通しを含めて、将来考えられる様々な要因について更に詳しく、更に幅広く検討をし、またバングラデシュ政府ともその点についてはきっちりと詰める必要があるんではないかということを一つの反省として考えております。
  115. 岩本司

    ○岩本司君 どうぞよろしくお願いします。またこれ質問しますからね。もし担当者が替わっても、局長も来ていただきますからね。よろしくお願いします。  次に、アフガン難民の女性協会料理裁縫ショップの拡充計画についてお伺いいたします。  これ、カザフスタン共和国のアルマティ市においてアフガン難民の女性の方々の職業創出のために、料理器具ですとか裁縫器具、またこういう料理裁縫ショップの拡充を目的として日本援助したということになっているわけでございますけれども、これ、一部の機材が別の団体に引き継がれていたり、お金が本当に行き渡っていたかどうか分からなかったというような会計検査院の報告なんですけれども、経緯の御説明お願いします。
  116. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 御指摘のカザフスタンにおけるアフガン難民女性をサポートするプロジェクトといいますか、ございますが、これにつきましては二百四十万円の草の根無償資金ということで、冷蔵庫、皿洗い機、電子レンジ等の料理器具でありますとかミシン、アイロン等の裁縫器具等を購入する資金として、言葉の問題等のために定職を得ることが困難となっていたカザフスタンにおけるアフガン難民女性の収入源を確保するための職業訓練を行うということを目的として行われたプロジェクトでございます。  御指摘のとおり、平成十四年の決算検査報告では供与機材の大部分が確認できない、目的に沿って使用されているとは認められないという御指摘をちょうだいしておるわけでございます。  この案件の採択に際しましては、被供与団体から申請書が提出されましてから、被供与団体代表者からのヒアリング、あるいはその団体の活動状況の視察、それから見積りの確認、カザフスタンにおけるNGO登録証の確認等々を行っておりまして、この団体がこのプロジェクトを遂行する適格性があるんではないかというふうに判断したわけでございます。  また、この贈与契約を締結してから約六か月後に大使館員が同団体の活動を視察しておりまして、計画どおりに機材を購入してベッドシーツやアフガン料理を作りまして、それを売った収入によりましてアフガン難民女性が収入を得ていろいろと活動しておったということも確認されておるわけでございます。それから、その後も被供与団体から報告書も提出されておりますし、またこの団体が行います様々なイベントに大使館員も招待されておったという経緯がございます。  しかしながら、この報告書が提出されましてから約十か月後以降、この被供与団体との連絡が付かない状態になりまして、その後、この代表者がカナダに移住したという情報を得まして、この代表者に対して電話等によって事情聴取をした次第でございます。この代表者によりますれば、自分がカナダにアフガン難民として移住するに際して、供与機材の大部分を売却して、その資金で衣類や食料を購入してアフガン難民に送ったということでございました。  いかなる事情があったにせよ、被供与団体の代表者が日本側の了解もなく一方的に、アフガン支援の物資購入と言っておるわけでございますが、そういったものに充てるため供与機材の大部分を売却をしたということは誠に遺憾に思うわけでございます。それから、売却しておらない残りの機材につきましては、特に皿、食器類があるわけでございますが、これはこの後継団体でそれなりに使用しておるということでございました。  るる申し上げましたとおり、プロジェクト初期におきましては確認、活動視察等をしておるわけでございますが、その後の活動のモニタリングが十分であったかどうかといったことにつきまして、いま一度留意して見る必要があるんではないかというふうに思っております。
  117. 岩本司

    ○岩本司君 ちょっと今本当に長いもう御説明いただきましたけれども、ちょっと国民の皆さんに分かりやすく二百四十万円分の、その冷蔵庫とか食器とかそういうのは二百四十万円分というふうに確認できたわけですか。  それで、これ、カザフスタンは九七年にアルマティからアスタナへ首都が変わっているんですけれども、日本は、政府はこれ、出張所というか事務所を設置していますよね、アスタナに。それ、ちゃんとそういうふうに二百四十万円の、何というんですか、鍋ですとかそういうのがちゃんと買われていたという、その出張事務所ですか、アスタナの、そこでちゃんとチェックはされているんですか。ちょっと簡潔にお願いします。
  118. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。  大使館員が具体的に物の確認、それから領収書の確認もいたしております。
  119. 岩本司

    ○岩本司君 間違いないですね。はい。  次に、もう時間が五分ですから、今度はセネガル共和国でございますけれども、職業訓練センターの建設計画についてお伺いします。  これ、八百六十七万円をこれは寄附しているんですかね、日本政府がセネガル共和国に。これ、お金が私の調べでは渡っていないんじゃないかと。実施団体ですね、相手先は日本が八百六十七万円を贈与する契約締結日の翌日に、これは建設予定地の変更を決定していると。これちょっと確認取らせていただきたいんですけれども、外務省お願いします。
  120. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。  これもまた草の根、いわゆる草の根無償資金協力案件でございまして、御指摘の八百六十七万円はセネガル共和国のルガ市にございます連帯・開発・平和のための協会に対して供与いたしておるということでございます。  それから、経緯といたしまして、合意ができたその翌日に当協会の代表が御指摘のような建設予定地の変更を決心したというふうに承知しております。
  121. 岩本司

    ○岩本司君 というか、私がお伺いしたいのは、これお金を払ったんですけれども、これ、職業訓練センターの建設に対してお金を払っているんですよね。しかし、お金を払った次の日に予定地が変更されていまだに建設されていないということですよね。この確認をさせていただいているんですが。
  122. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) 御答弁申し上げます。  御指摘のとおりでございます。
  123. 岩本司

    ○岩本司君 このお金、どこに行ったんですか。
  124. 古田肇

    政府参考人(古田肇君) このお金につきましては、現在セネガルの、まず一つは大使館の方からセネガルの首都ダカール裁判所の執行吏を通じまして資金返済請求を一方で行っております。他方、セネガルの捜査当局が事情聴取に入っております。当該被供与団体の代表は既に日本ODA関係コンサルタントに返却したと言っておりますが、私どもはそのような事実は承知しておらないわけでございます。
  125. 岩本司

    ○岩本司君 でしょう。確認していないわけでしょう。お金、どこか行っちゃっているわけでしょう。  私が、もう時間が来ましたから、最後に申し上げたいのは、これもっとお金を出す前にきちっと確認、どこの建設予定地で、ちゃんと現場で確認してお金出さないと、これ税金ですからね、本当に。今後こういうことのないようにお願いして、終わります。
  126. 続訓弘

    ○続訓弘君 先ほど、当委員会の冒頭で山崎内閣官房長官から、世界一安全な国日本をつくるために小泉内閣を挙げて取り組んでいるんだと、こういう力強いお話がございました。それに水を差すかのごとく、実は警察における不正経理問題が各所に発生しております。中でも、北海道、静岡、福岡の各警察本部はそれぞれ事実を認め、またも国民の皆様に警察不信の念を起こさせております。  私が総務庁長官在職当時にも、神奈川、新潟、埼玉等、全国各地の警察においてあってはならない警察不祥事案が相次いで発生し、当然ながら国民の皆様からも厳しい批判が浴びせられました。  もちろん、国会でも、第百四十六、第百四十七回国会で延べ四十数回に及び各党から厳しい追及がございました。また、当然のことながら我が参議院行政監視委員会でも各党が熱心にこの問題を議論され、平成十二年五月の二十二日に参議院行政監視委員会は警察の信頼回復に関する決議を全会一致で採択をした、こういうこともございました。  これらを踏まえて、人事制度組織管理、職員の定数管理及び行政監察を所管する責任者として、総務庁は国家公安委員会及び警察庁に対し平成十二年四月から監察を行い、同年十二月に国家公安委員長に対し勧告を行いました。  そこで、まず総務省に伺います。  この行政監察を行った背景と勧告の概要について御説明ください。
  127. 田村政志

    政府参考人田村政志君) ただいま御指摘ございましたように、平成十一年九月の神奈川県警本部における覚せい剤事案の隠ぺい事件以降、全国各地において警察の不祥事案の発生、発覚が相次いだことを受けまして警察庁では種々の対策を講じたところでありますが、その後も新潟県警察などで不祥事案が相次いで発生、発覚をしたわけでございます。  こうした状況を踏まえまして、平成十二年四月に警察庁が講じている一連の不祥事案対策の実施状況調査し、その実効を確保する観点から、行政評価監視、当時で行政監察でございますが、監察を実施しまして、その結果に基づき、同年十二月、国家公安委員長に勧告をしたところでございます。  勧告の概要でございますが、第一に不祥事案に係る処分の適正化、迅速化、第二に不祥事案の積極的な公表、第三に不祥事案の未然防止対策の適切な実施、第四に特別監察の厳正な実施、第五に国家公安委員会の運営の在り方の見直しと、こういった内容でございます。
  128. 続訓弘

    ○続訓弘君 今、総務省から御答弁がございました。その中で一つ二つ確かめさせていただきたいと思います。  警察内の不祥事案はすべて積極的に公表することとし、公表基準の指針を示して各県警察を指導すること、この指針の中には、懲戒免職事案はすべて公表を義務付け、その他の懲戒処分及び諭旨免職の事案については原則公表することとされておりますが、警察庁としてこの勧告を受けどのように措置されたのか、お答えください。
  129. 吉村博人

    政府参考人(吉村博人君) お答えを申し上げます。  警察庁におきましては、ただいまの総務庁の当時の勧告の趣旨を踏まえまして、平成十三年の一月に懲戒処分の発表の指針を制定をいたしました。これを都道府県警察に対し、当該指針に基づき、処分後速やかに懲戒処分の発表を行うよう指示をしたところであります。  同指針におきましては、職務執行上の行為及びこれに関連する懲戒処分については原則公表し、私的な行為に係る懲戒処分についても停職以上のものは公表することとしているところであります。なお、諭旨免職につきましては、平成十三年の四月以降、その運用を廃止しているところであります。
  130. 続訓弘

    ○続訓弘君 次に、特別監察の厳正な実施に関連して伺います。  勧告では、不祥事案対策を徹底するため、一つ、総合的な監察を新たに実施すること、二つ、総合的な監察は各警察全部局を対象とすること、また対象警察署数を増加させること、三つ目、新たな総合的監察に当たってはあらかじめ一定の合理的な評価基準を定めておくことの三点を勧告いたしましたが、この実施状況はいかがでございますか。
  131. 吉村博人

    政府参考人(吉村博人君) 警察庁と管区警察局におきましては、勧告の趣旨を踏まえまして、早速平成十三年度の監察実施計画におきまして、その第一・四半期と第二・四半期で不祥事案対策の推進状況等に関する監察をすべての都道府県警察に対して実施をしたところでございます。  また、十三年の三月には、監察の実施要領を作成をいたしまして、その中で職務倫理教養の推進でありますとか身上把握の徹底等すべての部署に関係する事項については、原則すべての部署を監察対象として、以後同様の方針で対応をしております。  警察署の選定に関しましても、特定の地域あるいは規模の警察署に偏らないように、できる限り複数の警察署を対象とし、その対象数の増加を図っているところでありまして、その結果、近時では、警察庁、管区警察局及び県警察による監察はいずれもその実施回数が大幅に増加をしているところであります。  最後の三つ目でございますが、毎年度監察の実施要領を策定してございますが、その要領におきましては、評価の区分を四区分、極めて良好と認められるから、今後改善を要すると認められるまで四区分を定めているところでありまして、監察の結果及び評価につきましては、四半期ごとに国家公安委員会にも報告をし、意見をいただいているところでございます。
  132. 続訓弘

    ○続訓弘君 次に、特別監察の厳正中立性の確保に関連して伺います。  総務庁が行った監察の結果では、特別監察の任に当たるメンバーが監察を受ける県警察からの出向者であった例が見受けられましたので、勧告では、厳正中立性を疑われかねないことは直ちに是正すべきだとしておりますが、是正されたでしょうか。お答えください。
  133. 吉村博人

    政府参考人(吉村博人君) 今お尋ねの関係につきましても、勧告の趣旨を踏まえまして、ただいまも申し上げましたが、毎年度、監察実施要領というものを定めております。  この中で、監察従事者につきましては、ほかに代わるべき者がいない場合を除きまして、監察を受ける県警察からの出向者及びそれを前任者とする者を充てないこととしておりまして、警察庁と管区警察局で実施をしております監察については、これに基づきまして監察従事者の選定を行っているところであります。さらに、実施要領の中で、疑いを抱かれかねない会食の禁止等につきましても規定をしているところであります。
  134. 続訓弘

    ○続訓弘君 特に新潟県警の問題に関連をして、実は国会でいろんな議論がございました。  その議論の中にこういうことも勧告してあります。監察後の会食や懇親会等の禁止、それと監察を受ける県警察の公用車の利用の禁止、これらは当然だと思いますけれども、このことを厳守しておられると思いますが、このことについてもお答えください。
  135. 吉村博人

    政府参考人(吉村博人君) 先ほど申し上げました監察の実施要領、これ毎年出しておりますが、ほぼ同じ内容でございまして、このように規定をしてございます。  監察の実施に当たっては、監察を受ける都道府県警察及びその職員が利害関係者となることから、国家公務員倫理規程の趣旨を踏まえ、特に次の事項に留意するものとすると二点決めてございまして、一点は監察を受ける都道府県警察の職員とともに飲食し又はともに遊技をしないこと、二点目が監察を受ける都道府県警察から提供される公用車は監察の対象となる警察署等の周囲の交通事情その他の事情から相当と認められる場合を除き利用しないこと、この二点を定めておりまして、現在はこの要領にのっとりまして実施をしているところでございます。
  136. 続訓弘

    ○続訓弘君 次に、警察の不正経理問題に関連して伺います。  平成十二年に続発した警察の不祥事案対策のため、国家公安委員長の下に設置されました警察刷新会議の緊急提言にも、警察の人事制度、とりわけ警察官の処遇問題が取り上げられました。私は、これまで内部告発で明らかにされた数多くの不正経理問題は、現場で働く警察官の不満が原因の一つであるのではないだろうか、こういうふうに考えます。そこで、現場で働く警察官の処遇問題を真剣に考える必要があると思いますが、これらに対する改善策はいかがでしょうか。
  137. 吉村博人

    政府参考人(吉村博人君) お答え申し上げます。  全国の警察職員は、警察の使命であります国民の生命、身体、財産を保護し、公共の安全と秩序の維持に当たるという使命を認識をし、日夜を分かたずそれぞれの職務に取り組んでいるものと承知をしております。第一線で非常に厳しい勤務に従事をしている警察職員のこの労苦に報い、士気の高揚を図るためには、先生おっしゃったとおり、警察職員の処遇改善は最も重要であろうと思っております。そのため、警察におきましては、例えば各種手当の新設や増額、あるいは信賞必罰の徹底、適時適切な表彰、能力、実績の適正な評価、あるいはまた適材適所の人事配置などに努めてきたところでございますが、よりきめ細かくこの処遇改善につきまして今後も改善を図ってまいり、職員の労苦に報いることとしたいと思っております。
  138. 続訓弘

    ○続訓弘君 先ほど申し述べましたように、我が参議院行政監視委員会平成十二年五月二十二日の警察の信頼回復に関する決議の中でも全会一致でこんなふうに決議をしております。第一線において職務に精励している警察職員の士気の向上配慮すべきだと、こういう決議もございますので、今お答えございましたような第一線の警察官の処遇に配慮していただきたいと思います。  最後に、小野国家公安委員長に伺います。  去る四月八日の読売新聞によりますと、この数年間に日本治安が悪くなったと思う人は過去最悪の九四%に上り、一方、警察を信頼しているという人は過去最低の六五%になったとのことであります。  不正経理問題など警察不祥事案を国民の皆様の期待にこたえて厳正に処理される方針と、国民が最大の関心を寄せている治安問題に対してどう対処されるのか、小野国家公安委員長の所見を伺わせてください。
  139. 小野清子

    国務大臣(小野清子君) 北海道警察、静岡県警察におきまして不適正な予算執行が判明いたしましたことは誠に遺憾でございます。  警察活動国民の信頼と協力によりまして成り立っていくものでございまして、国家公安委員会といたしましては、一日も早く国民の警察に対する信頼を回復するために、関係道府県と連携をいたしまして早急にこの事案を解明いたしますと同時に、会計経理の透明性を高めるということ、それから予算執行の一層の適正化を進めるように警察庁を督励してまいりたいと考えております。  また、治安に対する先生の御懸念の分野でございますけれども、国民犯罪の被害に遭うことなく安全で安心して暮らせる社会実現するということは私ども警察に課せられました大変重大な使命であると、そのように認識をいたしております。警察におきましては、昨年十二月に犯罪対策閣僚会議で策定をされました行動計画に基づきまして、関係機関あるいは地元の地域住民との緊密な連携を図りながら各種の犯罪対策推進することといたしております。  国家公安委員会といたしましても、こうしました取組は大変重要であると考えておりまして、各種の施策が的確に推進されますように、引き続き警察当局を督励いたしまして、世界一安全な国日本の復活を図ってまいりたいと、そのように考えております。
  140. 続訓弘

    ○続訓弘君 小野国家公安委員長のせっかくの御努力をお願い申し上げます。  それで、最後に、これはお願いでございます。  警察庁におかれましては、今私が質問申し上げました、総務省がせっかく勧告を申し上げたその点をやはり十分踏まえながら対応していただいているという御答弁ではございましたけれども、なおなおこの点に努力をしていただきたいと。  あわせて、総務省にお願いします。やはり行政監察の目はいかなるところでも目を光らせていただいて、国民の側に立って努力をしていただくことをお願い申し上げまして、質問を終わりにします。  ありがとうございました。     ─────────────
  141. 松あきら

    委員長松あきら君) この際、政府参考人出席要求に関する件についてお諮りをいたします。  行政監視行政評価及び行政に対する苦情に関する調査のため、本日の委員会外務大臣官房参事官鈴木敏郎君の出席を求め、その説明聴取することに御異議ございませんでしょうか。    〔「異議なし」と呼ぶ者あり〕
  142. 松あきら

    委員長松あきら君) 御異議ないと認め、さよう決定いたします。     ─────────────
  143. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 私、最初にイラクでの民間人人質事件について伺いたいと思います。  今回の民間人人質事件は卑劣極まりない行為であって、どんな理由があろうと決して許されません。ましてや、今井さん、高遠さん、郡山さんはイラクの子供たちや住民のために一生懸命に支援活動をしている方々であります。日本国内はもとより、イラク国内でも多くの人々が三人の無事解放を願って行動に立ち上がっていると報道されております。  ところが、政府は最初から自衛隊の活動を正当化して、自衛隊を撤退させないことを繰り返し強調しています。外務大臣のメッセージについて、家族の皆さんが人質にリスクがあるので自衛隊の派遣を正当化する部分を削除してほしいと懸命に要求したのに無視をして、そのまま世界に流してしまいました。このことについて、三人の命はどうなってもいいと政府は考えているのかと国民の多くが衝撃を受けております。私もその一人です。三人はまだ解放されておりません。政府が自衛隊派兵の正当性を強調すればするほど、人命最優先の解決を遅らせます。  家族の皆さんの願いにこたえて、政府は三人の命最優先で行動すべきだと考えます。その点、いかがでしょうか。
  144. 鹿取克章

    政府参考人(鹿取克章君) 今御指摘のとおり、今回の人質の事件は我々としても非常に卑劣な許すことのできない事件と考えております。我々としては、あらゆる努力をして人質になられた方々を早期に解放する、そのための努力を続けているところでございます。政府としては、テロに屈することなく、また人命の、また人質の生命の安全を最優先すべき、そういう観点から引き続き努力をしてまいる所存でございます。
  145. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 しっかりやっていただきたいと思います。  次に、遺伝子組換え生物の問題について伺いたいと思います。  外務省はもう結構でございます。
  146. 松あきら

    委員長松あきら君) では、外務省の方、どうぞお下がりください。
  147. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 生物多様性への遺伝子組換え生物による被害を防止をする法律、いわゆるカルタヘナ条約の国内法が二月十九日から施行されました。現在、日本はトウモロコシや大豆、菜種などの遺伝子組換え農作物の最大の輸入国です。組換えトウモロコシ、スターリンクのように、使用が認められていない遺伝子組換え作物が輸入トウモロコシに混入していることが市民団体の調査で明らかになって大きな問題になったことは大変記憶に新しいところでございます。  農水省は水際でこれらについてどうチェックをしているのでしょうか。
  148. 中川坦

    政府参考人(中川坦君) お答え申し上げます。  まず、いわゆるカルタヘナ法によりまして、承認を受けていない遺伝子組換え作物が我が国に輸入をされたり、あるいは我が国の中で流通あるいは使用されるということはこれで禁止されることになるわけでございます。したがって、まずは、それぞれの輸出国におきまして、我が国に輸入される可能性のある遺伝子組換え作物が開発され、商業生産をされるというその前に我が国での承認を受けるように、こういった開発企業にあらかじめきちっと指導していくということがまずもって大事なことだというふうに思っております。  それから、水際での措置でありますけれども、輸入農産物に未承認の遺伝子組換え作物が含まれているかどうかということをきちっと水際でチェックをすると。これ、植物防疫所がございまして、ここの検査を行うことによりましてその辺をチェックをしていくということをやりたいと思っておりまして、既に人員なり分析施設、分析のそういった施設の整備など、体制整備は行ってございます。  こういった検査に加えまして、さらに、輸入農産物の中に未承認の遺伝子組換え作物が混入する可能性が高いというふうに判断をされる場合には、あらかじめどこの国の何という作目というふうに指定をいたしまして、そういった作目を輸入する場合にはあらかじめ輸入の届出を義務付けると。それからまた、具体的にその作目につきまして、生物検査というふうに私ども呼んでおりますけれども、きちっとしたいわゆる命令検査を行いまして、未承認の遺伝子組換え作物が含まれていないかどうかということをきちっとチェックをして、確認をして、問題のないものだけを国内に入るようにと、そういう措置を講じるというふうにいたしております。  こういった措置によりまして、きちっと未承認の遺伝子組換え作物が我が国の生物多様性に悪影響を与えないようにということで万全を期してまいりたいというふうに思っております。
  149. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 穀物の輸入はほとんどばらで入ってきます。  茨城県鹿島港で穀物の輸入状況を私、見てまいりました。鹿島港は農水産品だけで年間六百二十七万トン扱っていて、トウモロコシだけでも四百万トンに上ります。貨物船のハッチからバキュームあるいは機械で搬出をして、ベルトコンベヤーでサイロに運ばれています。あるいはトラックで搬出されています。近くの方に伺いますと、沿道沿いにトラックの屋根などから穀物がこぼれて鳥が群がっているということがよくあるということです。  こういう状況は恐らく鹿島港だけの問題ではないはずです。遺伝子組換えの穀物がこぼれれば、輸入港周辺の生態系に影響を及ぼすことは当然考えられます。農水省として防止する手だてを取っているのでしょうか。簡単にお答えください。
  150. 中川坦

    政府参考人(中川坦君) 輸入港の周辺で輸入をされた遺伝子組換え作物がその輸送の途中でこぼれ落ちる可能性、それ自体は否定できないというふうに思います。  ただ、こういったこぼれ落ちた遺伝子組換え作物が生育をして、農家が圃場で栽培をしておられる従来の非遺伝子組換え作物と交雑をする可能性というものにつきましては、花粉の飛距離ですとかあるいは交雑率等これまでいろいろと知見を持っておりますけれども、こういった知見や組換え作物の流通などの実態から見まして、極めてその可能性は低いものというふうに私どもは思ってございます。  また、現に現場においてそういった問題が具体的に生じているということは私どもまだ把握をいたしておりません。
  151. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 つまり、農水省としてはチェックをする気はないということですね。  輸入している会社の話を伺いますと、鹿島港に入ってくる菜種のほとんどが遺伝子組換えだということです。アブラナ科は特に交雑しやすいということです。  種がこぼれれば周辺の野生の近縁種と交雑が起こる可能性が大きいわけですが、周辺の野生生物について交雑が起きていないかどうか、環境省としてチェックをする体制を取るのでしょうか。
  152. 加藤修一

    ○副大臣(加藤修一君) 遺伝子組換え生物の一般環境での使用を承認する際には、その生物がこぼれ落ちて自生化した場合の影響も含めて生物多様性への影響評価し、野生生物の種又は個体群、その維持に支障を及ぼすおそれがないと判断されるものについて承認することとしているわけでございます。  さらに、環境省では、一般の環境の中における遺伝子組換え生物の状況把握していく観点から、いわゆる関係する省とも連携してこういった必要な調査を行っていくことと考えておりますので、こういった面についての御理解もよろしくお願いをいたします。
  153. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 最初は非常に被害が小さいように見えても、それがかなりわっと広がっていく。特にアブラナ科というのは交雑があるわけですから、その点についてちゃんとウオッチをして対応していくということなんですね、関係の省庁と相談しながら。その点、もう一回確認さしてください。
  154. 加藤修一

    ○副大臣(加藤修一君) ただいま申し上げましたように、野生生物の種又は個体群の維持に支障を及ぼすおそれがないと判断されたものについては輸入を許可していくことになるわけでありますので、それに違うことになっているものについては当然事前にチェックを十分していかなければいけないと、こういうことになります。
  155. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 ちょっとよく分からないんですけれども、その影響を及ぼすというのは、要するに、外来種法今やっていますけれども、これ、遺伝子組換えも一つのそういう外来種みたいなものですよね。それが個体群に何か重大な影響を与えるかどうかということよりも、むしろ変化をもたらすわけですから、そういう点について、これはカルタヘナ条約で変化を及ぼすものについてちゃんとやっていかなきゃいけないというふうになっているわけですから、そこのところは私は当然、良いか悪いか、影響がいい影響が出るかどうかということは別にしても、ちゃんと調査をするということは環境省としてやっていかなければならないのではないかというふうに思っているんですね。そう受け止めているんですが、どうですか。
  156. 加藤修一

    ○副大臣(加藤修一君) そういうことも含めまして調査をやっていくことになるわけでございます。ですから、支障があるかないか、こういったことについては十分考えなければいけないと。
  157. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 遺伝子組換え生物による問題というのは生物多様性への影響だけではありません。農家が一生懸命非組換え作物を栽培している田んぼや畑で組換え作物との交雑が起これば、取り返しが付かない大変なことになります。  カルタヘナ国内法による遺伝子組換え生物の規制は農作物への影響対象となるのでしょうか。
  158. 小野寺浩

    政府参考人(小野寺浩君) いわゆるカルタヘナ法では、野生生物、野生動植物の種あるいは個体群への影響を及ぼすかどうかということで環境影響評価をしておりますので、御指摘になった農地で栽培する農作物への影響については対象となっておりません。
  159. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 つまり、カルタヘナ法では野草などの野生生物に影響を与えないようにするというだけなわけですね。遺伝子組換え生物の農作物に対する影響を防止する法律はあるのでしょうか。
  160. 中川坦

    政府参考人(中川坦君) 直接農作物への影響を防止する法律というのはございません。  さらに、ちょっとだけ付言をさせていただきますと、遺伝子組換え作物については、食品との関係で見ますと食品衛生法でチェックができておりますし、また、えさとして使う場合には飼料安全法によってチェックができていると。また、今御議論の野生生物等にはカルタヘナ法という形でそれぞれ安全性やその他の影響についてチェックができているという仕組みでございます。  具体的な在来の非遺伝子組換え作物、従来型の作物との関係につきまして、これを法律上何か手だてをするということは、別に安全性には問題がないということから、そこまでは今措置されていないということでございます。
  161. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 今説明あるかなと思ったんですけれども、要するに安全性に問題がないからということで規制はないけれども、しかし栽培生物への影響の防止ということでは、組換え作物の実験栽培についての指針、つまりガイドラインがあるわけですね。その点、どうですか。
  162. 中川坦

    政府参考人(中川坦君) 安全性という点では、ここは事前の承認の際にそれぞれの観点からチェックがされておりますけれども、何といいますか、そういった遺伝子組換え作物に対する国民の方々の理解という点も配慮いたしまして、具体的に圃場で作付けをする場合、あるいは実験をする場合ということにつきましては、農林水産省の方から通知を出しまして、住民の方々の理解が得られるようにといった視点から十分現場でもって手だてをするようにと、相談をし、あらかじめ了解を取るようにといったような措置は講じているところでございます。
  163. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 このガイドラインというのは、適切に管理された農地で栽培されて適切に処分されるということを前提としたものなんですね。例えば、公園とか市民農園とか個人の家の庭とかベランダなどで十分管理されない状態で栽培されるような場合にはガイドラインは適用されません。結局、その輸入農作物がどこでどんな形で栽培生物に影響を与えるのかということをチェックをする仕組みは現状では全くないんですよね。したがって、現状では、GM、遺伝子組換え農作物が栽培作物に交雑しないという保証は全くないわけですね。  ですから、農水省として、私は、これは安全とか安全でないとかということもありますけれども、表示について言えば、GM農作物の表示について言えば、これは安全か安全でないかという議論ではなくて、いわゆる選択ということでそういう表示制度があるわけですね。そういう点から見て、やっぱりここのところはきちっとしておくべきだと思います。  そこで、大臣に伺いたいんですが、やはり実験栽培について、ガイドラインで済ますんじゃなくて、きちんと法制化をする、これが一つです。そして二つ目に、GM農作物について、輸入の際はもちろんですけれども、その後の利用の実態をきちんと把握をする、そして在来の非組換え農作物への影響被害、これを防止するための法律的枠組み、これをきちんとすべきだというふうに思いますけれども、その点、いかがでしょうか。
  164. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 今、局長から答弁しておりますとおり、遺伝子の組換え作物につきましては、食品の安全性につきましては食品衛生法、また飼料の安全性、このことにつきましては飼料安全法、さらには野生動植物の種の保存、こういう面での影響、これらはカルタヘナ法、これに基づきましていろいろやっておるわけでありまして、この科学的な評価を行い、また問題のないもののみが流通、栽培されておるわけでありまして、そういう面では問題ないと。しかし、作物の栽培に当たりましては周辺農家、そういうところでの理解が必要なことでありまして、この遺伝子の組換え作物の交雑、こういう点につきましてはやはり混乱を防ぐこと、これは重要なことと、このように認識をいたしております。  しかし、やはりそれらは周辺農家のいろいろの理解、こういう中でいろいろ行われると、こういうことが必要でありますので、その交雑防止等の措置の徹底、このことは必要なことでありますし、さらには栽培実験、これらにつきましても交雑防止措置や情報の提供、こういう面での、先ほどもお話がありましたが、栽培実験指針を策定と、これらをいろいろ理解をしていただく、そういう中でこれらの混乱がないような形を作っていく、またそのような中で今いろいろ実施をしておるところであります。
  165. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 全然よく分からなかったんですけれども、要するに、私は今やっていることについて、いろいろ農家の理解が得られない問題があるから、だから法制化すべきじゃないかということを大臣に申し上げたわけで、やっぱり法制化して、法治国家ですからきちんとした基準を決めて、それに従ってやっていくということになれば、その後の対応というのは非常にスムーズにいくわけですから、そこのところをちょっとお答えいただきたいと思ったんですが。
  166. 亀井善之

    国務大臣亀井善之君) 現状、それぞれの部門で安全性、このことを確保していろいろの努力をしておるわけでありまして、実は私も今日午前中、ある食品の研究所に参りまして、この遺伝子の組換えの問題、想像以上にいろいろの装置をし、研究所が研究をされている、このことを見てきたわけでありまして、そのようにそれぞれの分野で、生産の現場におきましてもやはりそういう中で取組がなされている、そういうことを私ども農水省としてもいろいろ支援をしていく必要があると、このように思っております。
  167. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 法律できちんとやるべきだということを再度強調しておきたいと思います。  あとちょっとありますので先に進みたいと思いますが、遺伝子組換え作物の安全性の評価に関する考え方、これは、組換え作物は組み換えた遺伝子により導入された性質以外は成分、形、生態特性に変化がなければ組換え前のものと実質的に同じ、つまり実質的同等性だから大丈夫だという概念があるわけですね。  ところが、国立環境研究所のGM植物の遺伝子レベルでの検証で、遺伝子組換え生物の実質的同等性が崩れたという、そういう実験結果が出ました。概要を簡単に説明してください。
  168. 小野寺浩

    政府参考人(小野寺浩君) シロイヌナズナという植物を用いて遺伝子組換え体を作って、影響について研究を行っているところであります。その結果、遺伝子組換えが行われた個体において遺伝子発現に違いがあり、形態に現われてはいないが、遺伝子レベルで影響を受けている可能性があるということが示されました。  この結果は、遺伝子レベルのものであり、植物の生理、生態にどのような影響が生じるかは、影響の有無も含めてまだ明確になっていないところでございます。
  169. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 今回の実験結果は、遺伝子レベルでは明らかに実質的同等性は成り立たないということが分かった、私はそう理解をしております。これはもう実質的同等性については当初からずっと議論になっているところですので、これが今言われたみたいにどういう影響が出るのかというのは分かってはいないにしても、とにかく遺伝子レベルでははっきりしたということです。遺伝子組換え作物が、私は、その結果、実質的に同等だから安全だと単純に言えるかどうかということに疑問を投げ掛けた重要な研究だと考えます。  今後の対応をどうするのか、環境省並びに内閣食品安全委員会にそれぞれ簡潔にお答えをいただきたいと思います。
  170. 加藤修一

    ○副大臣(加藤修一君) 遺伝子組換え生物による生物、生態系への影響の予測あるいはその評価については、やはり最新の科学的知見に基づき実施しているところでございます。しかしながら、遺伝子組換え生物による生物多様性への影響については、今後更に科学的な知見の充実が必要な分野と認識しております。  国立環境研究所の研究成果は、この分野における新たな知見の一つになり得るものと考えておりまして、今後この関係におきます影響について更に調査研究を進め、法に基づく影響評価がより一層的確になされるように最大限努めてまいりたいと、このように考えております。
  171. 梅津準士

    政府参考人梅津準士君) 御指摘のシロイヌナズナについての御質問は、今、局長から御説明がありましたとおり、遺伝子機能の発現過程を調べたところ、元の植物と遺伝子組換え後の植物の間でいわゆる意図しない変化が見られたということと承知しております。  私ども、今年の一月、遺伝子組換え食品(種子植物)の安全性評価基準を定めまして、これに基づいて遺伝子組換え食品、種子植物の安全性の評価を行うこととしておりますけれども、この基準におきましては、その第四の三で、今、委員指摘の「意図的及び非意図的な形質の賦与又は変化によってもたらされる事象に関して、毒性学的及び栄養学的観点から個別に評価し、さらに、食品としての安全性を総合的に判断する」というふうに書いてございまして、同等とみなせること自体が直ちに安全を意味するものではないというふうに考えております。
  172. 岩佐恵美

    ○岩佐恵美君 終わります。
  173. 松あきら

    委員長松あきら君) それでは、本日の調査はこの程度にとどめ、これにて散会いたします。    午後四時八分散会