○鈴木寛君 今、厚生労働省の御答弁によりますと、医療事故あるいは医療過誤の統計すら役所は把握をしていないということが明らかになりました。もちろん何を医療事故とし、あるいは何を医療過誤とするかという定義が難しいということは私もよく
承知をいたしているつもりではございますが、しかし難しいからといって統計すらないというこの実態が見過ごされていいわけはないというふうに私は思います。
もちろん、交通事故のように今年は九千人だったと、あるいは八千人だったと。これ、もちろん一の単位までですね。これはもちろん命にかかわる話でありますから、約何人なんという表記ではおかしな話でありまして、私は、実は
警察の行っている交通事故死亡者統計すらああした数字で表すんではなくて、本来一人一人のお名前を記して、我々はその尊い命が失われたということに対して敬意を払い、そして、そうしたことが二度と起こらないように最善を尽くすということを毎日のように確認をしながら、あるいは誓い合いながらやっていかなければいけないという問題だと思っておりますが、この医療過誤あるいはこの医療事故という問題がこの日本の国の中でどの程度、どのように行われているのかと、そしてその原因が何なのかということは、やはり命を預かる正に厚生労働省のお仕事としてきちっとその政策の中心に据えて私は取り組んでいただきたいということを
大臣にも強くお願いを申し上げたいと思います。
この医療過誤あるいは医療事故、正に医療安全対策についてでございますが、もちろんこの問題は恐らくずっと隠れた形では存在をしていたんだと思いますが、厚生労働省がこの医療安全対策に本格的に取り組まれたのは、
平成十一年の一月に横浜市立大学で患者の取り違えがあって、そしてその後も十二年、十三年、十四年、十五年と毎年のようにこの医療安全対策について様々な施策を打ってこられております。
更に申し上げると、医療安全の推進週間とか、あるいは医療安全対策検討会議の発足とか、私もこの
質問に当たりまして厚生労働省の方からそれぞれの対策について御
説明を伺いました。もちろん、この医療安全対策というのは、医療過誤による死亡者、あるいはそれによって負傷したりけがをされたり、あるいは後遺症が残られたりするという、そういう方をゼロにするまでやっていかなければいけない問題でありますが、政策としてはこうした政策を打っていくということにならざるを得ないということなのかなというふうに思います。
ただ、今回の、正に
平成十六年の三月に
総務省がお出しになった医療事故に関する
行政評価・監視結果の非常にショッキングなことは、
平成十一年に問題意識を強く厚生労働省がお持ちになって、それ以後も何にもやっていなかったわけではないわけであります。毎年々それぞれに厚生労働省さんは医療安全対策をやってこられたと思います、施策としては。
しかしながら、この
総務省の
調査によりますと、そうした政策を打ってきた、安全対策をそれなりにやってきたにもかかわらず、今回二百十七の機関を対象に
調査をされたということでありますが、
調査をした一年半の間で十七機関で、しかも同じような医療過誤、医療事故がやはり繰り返されていると。さらに、これ詳細を見てみますと、厚生省が設置されていらっしゃいます医療安全対策検討会議のメンバー、
委員のいらっしゃる病院でもこうした過誤、
事件が繰り返されているということが大変にこれショッキングな結果だというふうに私は思います。
私は、これ問題だと、厚生省何とかしろと、甘いじゃないかと、こういうことだけを申し上げるつもりは今日はありません。これ、医療過誤のやはり非常に難しい問題をここに含んでいるんだと思います。正に安全対策会議のメンバーになるような大変に著名でそして立派な医師あるいは専門家がいらっしゃる病院でも、その現場ではこうした医療過誤が起こってしまうという医療過誤の持つ非常に問題の難しさ、あるいは、ヒューマンエラーというのはそもそもそうなんでありますが、恐らくすべての医療従事者、違反をしようと思って、
法令違反をしようと思って、あるいは医療過誤を起こそうと思ってやっておられる方は恐らく一人もいないと思います。それが何らかの理由で、もちろん多忙であったりあるいは慣れであったり、あるいは更に申し上げると未熟、経験がまだ浅かったり、いろんな理由によってこの過誤が起こってしまうと。
私、厚生労働省の方々と御議論をさせていただいて、そして今日の私の一番申し上げたいことは、こうした現場でいろいろなことが、
事件が起こる、それに対しての管理監督体制が役所を含めて甘いではないかと。そして、役所が答弁の中では、あるいはいろいろな施策の中では、きっちりやります、そして現場に徹底します、通達も出し直します、アピールも出します、この繰り返し。これはもちろん必要なことだと思います。必要なことでありますが、それだけではこの問題は解決をされないんではないかと。もっといろんな多角的な
観点から、国会も含めて、厚生労働省さんも含めて、いろんな知恵を出し合う契機にこの
委員会の
質疑がなっていただきたいというふうに思います。
私も実はコミュニケーションというものを勉強をいたしておりまして、そして最近は安全学という学問もできております。結論から申し上げますと、そういうところでいろいろ議論をされている知恵、工夫、方法論と、もっともっとこの医療安全対策の中に活用できるんじゃないかなと。
例えば、同じ霞が関の
行政分野でも、例えば原子力発電所の安全の問題、いろんな、制度的あるいはその安全管理体制、いろんな知恵があります。あるいは消防庁、いろんな現場に立入検査をして、消防署の職員の方々が廊下に物を置いちゃいかぬとか、いろいろな細かな指導もされていらっしゃいます。
更に申し上げますと、最近は役所は全部チェックできません。そういう中で、ISOというのがありまして、昔はISOというのは物の安全性とか品質とか、その管理だけだったんですけれども、最近はサービス分野にこのISOをどんどんどんどん広げていこうという動きがあります。医療というのは究極のヒューマンサービスでありますから、当然、医療に関するISOというのもできています。そして、その一部、私の友人の若い歯科医が集まって、そういう歯科の業務についてISOの基準をどんどんどんどん広げていこうという動きもあります。こうした様々な
観点からの知恵を持ち寄って社会全体としての安全対策をやろうとしたときに、私は、この勧告も含めて、今までの古い安全管理あるいは安全
行政にまだまだ拘泥されているんじゃないかなというふうに思います。
それで、こうした問題でやはり一番重要なことは情報なんですね。その
観点から御
質問を申し上げたいと思いますが、この勧告書の中でも書いておりますけれども、そもそも院内でどういう事故が起こっているかということを院内の医療機関の長に
報告をする院内
報告という制度が、今回調べたのは
特定機能病院とか、要するに名立たる病院二百十七です。その中でも極めてばらばらだという
指摘があります。これはもうこの勧告にのっとって、やはり速やかにまず院内
報告というものをきちっとやっていただきたいということでありますし、それからこの医療事故
報告というものが、要するに医療機関で起こった事故をきちっと、重大事故については厚生労働省なり都道府県にきちっと
報告をするという、これも
平成十一年からこの五年間の中でかなり改善をされていることは私も
評価をしたいと思いますが、しかしこれ私、問題だと思います。
この勧告の中にもございますが、国立病院や国立大学の附属病院では、医療事故
報告、これは毎年マニュアルができて、そして更に言うと
報告義務が付けてということで進化をしています。しかし、すべての病院あるいは有床の診療所に医療事故の
報告が行われているか、あるいは義務付けられているかというと、ここについては行われていないということになっていると思いますが、私はこの点を速やかに、すべての医療機関あるいは有床の診療所における医療事故事例の
報告というものを制度化していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。