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政府参考人(
吉武民樹君) いわゆる
年金の
給付と
負担の倍率あるいは
世代間格差の問題というのは非常にいろいろなところで御
議論がございますが、時々、これは特に若い方に少し誤解があるんではないかというふうに思っておりますのは、例えば、今から、六十五から受給をしておられるわけですけれ
ども、その先輩の
世代ほど
年金の
給付が非常に大きいんではないかという誤解があるんではないかと思います。
その点について申し上げますと、十三年度の
厚生年金の男子の平均
年金月額、これは
基礎年金部分も含んでおります、奥さんの分は含んでおりませんが、これで申し上げますと、八十歳の方が二十万六千円でございます。七十五歳の方が二十一万八千円、七十歳の方が二十万七千円、六十六歳の方が二十万五千円という形でございます。
御案内のとおり、六十一年
改正で、全体の安定のために
厚生年金の
給付を徐々に徐々に少し抑制をしておりますので、そういう
意味では先輩の方の方が
給付は若干手厚いわけですけれ
ども、そんなに大きな違いはない。
象徴的に申し上げますと、最大の違いは、
厚生年金で申し上げますと、戦前から
厚生年金が、昭和十七年に発足をいたしておりますが、昭和十九年の
保険料率は一一%でございます。これは戦争中でございまして、この一一%の
保険料を御
負担をいただいております。そして、戦争が終わりまして、昭和二十三年から
保険料率を三%にいたしております。これは、非常に厳しい経済状況の中でもちろん一一%という
保険料を御
負担いただくということは無理でございましたし、日本自体が戦後の復興といいますか戦後の混乱の中から復興していこうというところで三%ということで、言わば
保険料の凍結に近いような形の御
負担をいただきまして、その後、昭和三十年代が三・五%、それから四十年代に入りまして五・五%という形でございます。ですから、そういう経済の状況の中で、戦後、もう一度低い
保険料率から設定をいたしまして、経済発展の中で
保険料の
負担をお願いするというところがこの
給付・
負担倍率の問題に出ておるんではないかと。
私
どもは、この御
議論は、そういう歴史的な経緯でありますとか日本の社会あるいは経済の発展の中で御
議論をしていただきませんと、どうも先輩の
方々が非常に過大な
給付を受けておられるとか非常に得しておるんではないかという
議論はいかがかというふうに思っております。
なぜかというふうに申し上げますと、今申し上げたようなことのほかにも、
年金を受給しておられる、特に年齢が相当上の方は、その方の親が老後を過ごされたときは実は
年金制度はなかったわけでございます。ですから、そういう
意味では、お一人お一人かどうかは別にしまして、家族なりあるいは兄弟姉妹で何らかの
意味で親の
負担をやってこられた。それから、先ほど
大臣から
お話がございましたように、現在、
仕送りというのは〇・五%でございますので、基本的には、親に対する
仕送りというのは数量的にはほとんど今の日本の社会ではウエートが低くなってきているということで、このことが一つあるんではないかと。それから、先ほど、全体としてやはり少子化、長寿化が進んでおりますので、これは
年金だけではございませんで、トータルの分野でやはり
現役世代の経済社会を
支える
負担というのはやはり高まってきているということはこれは否めないということでございます。
それから、先ほどの
保険料でちょっと申し上げましたけれ
ども、日本がやはり、先ほど申し上げました経済復興、それから
池田内閣のときの
国民所得倍増計画、その後の経済発展という形で、今申しました昭和二十年代あるいは三十年代の初めに比べますと所得水準が上昇していることは間違いがございませんので、そういう
意味で、当時に比べまして
保険料負担を担っていただく余地は大きくなってきているということだろうというふうに思います。こういうものを含めて
検討していく必要があるだろうというふうに思います。
ただ、私
ども、今回のこの
改正法案では、しかしそうはいいますものの、やはり若い
世代の方はこの問題について非常に敏感でございますので、
給付・
負担倍率のようなものができるだけ拡大しないようなものを
検討する必要があるだろうということで、今回御提案申し上げております
保険料の上限、それから
給付水準の下限、それから国庫
負担割合、
基礎年金の国庫
負担割合の引上げの道筋をきちんと付ける、それから
年金を
支える力の変化に対応した
給付水準調整を、これをこれから
年金を受けられる方だけではなくて、今
年金を受ける方についても同じようにお願いをするというようなことで、
給付と
負担の関係の格差が広がらないように配慮をしてきているところでございます。