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参考人(
下村恭民君)
下村でございます。
ODAの
有効性の
改善ということで
お話をさせていただきます。
ODAには、
レジュメにも書きましたけれども、いろいろな問題がございます。今日はこのいろいろな問題についてどんな問題があってどうしたらいいだろうかということについて私の
意見を申し上げますが、その前に、公平に見まして、
ODAにも
日本の
公的部門の
活動の中では優れた
部分、あるいは進んだ
部分があるということを一言補足させていただきます。
ある事業をやるときに、
事前にどうやったらうまくいくだろうか、あるいはどういう問題が予想されるだろうかということをチェックする
評価、あるいは終わった後で実際やってみてどうだっただろうかということを
考える
評価、そういう
事前の
評価、事後の
評価は非常に重要ですが、
日本の
公的部門ではこの点が非常に後れております。
しかし、その中にあって、
ODAにつきましては、二十年以上前からこれらの点について非常に、今、
日本の中では先進的な
仕事をしてきたということを申し上げまして、しかもなお現在いろいろな大きな広範な問題があると、それについてどう
考えたらいいかということを
お話ししたいと思います。
時間の
関係で全体を
二つに分けまして、まず最初に、
途上国の
人々に向けた鮮明な
メッセージを発信する必要があるということを申し上げたいと思います。
援助をしているわけですけれども、今、
荒木参考人の
お話にもありましたが、なぜやっているのか、どういう
考えでやっているのか、必ずしもはっきりしない
部分があります。これにつきまして、いろんな発信すべき
メッセージはあると思いますが、ここでは特に四点に絞って
お話をしたいと思います。
一つは、
日本独自の
援助理念があるということ。
貧困緩和が重要だということについては国際的に共有された
考え方ですけれども、それに加えて
日本には、
途上国が
自助努力で努力していけばいつの日か
援助をもらうことがなくなって卒業できる、それを
支援していこうという
理念があります。この
二つ、
貧困緩和と卒業への
支援を使い分けて組み合わせていくということが重要だと思います。
それから
二つ目ですが、真のオーナーシップの尊重ということですけれども、冷戦が終わってから
国際社会では非常に
先進国あるいは
国際機関の声が圧倒的になりまして、
途上国の声あるいは
意見が圧殺されることが増えております。その中で、
日本は
途上国の声に耳を傾けて、
途上国の
人々の
知恵に学ぶ、こういう姿勢を鮮明にして
独自性を主張するべきではないかと思います。
三番目ですが、
平和国家の資産ということですけれども、テロとか紛争とか、今非常に問題になっておりますが、その
背景には
兵器の拡散がございます。
途上国向けの
兵器輸出の三分の二は西欧の
主要ドナーが輸出しているもので、この点で
日本は非常に優位な立場にあるわけですから、この優位を最大限に生かして
途上国、
国際援助社会において
途上国への
兵器輸出のコントロールを率先して提唱していくことが望ましいというふうに
考えております。
それから最後に、
国益ですけれども、
国益はもちろん重要なわけですが、特に重要なのは、手近で短期的な
国益ではなくて、長期的な視点に立った
国際社会での信頼の構築ではないかと思います。
日本の昔からの
知恵として、秘すれば花という心がありますけれども、決して
国益をむき出しにしないという
知恵も重要ではないかと思います。
次に、二番目の問題に移らせていただきます。
ODAにはいろいろな
問題点があるというふうに申し上げますが、そのうちの
かなりの
部分は、
日本の
公的部門に長い歴史を持って、いろんな
背景を持って複雑に絡み合って存在している制度的な
制約条件だというふうに思います。これは
ODAだけではなくて
日本の
公的部門の
活動すべてに言えることですけれども、そういう
精神論だけでなくて、具体的にどういう制度的な
制約条件があるのか、これを洗い出してきめ細かく
改善していくということが重要ではないかと思います。
いろいろな問題がありますけれども、ここで五つに絞って
お話をしたいと思います。
まず第一番目ですが、同じような
仕事が多くの
組織によって
ばらばらに
実施されているということです。
既に
荒木さんから
お話ありましたけれども、
技術協力は非常に多くの省、多くの
機関がかかわっております。これの
統合、一元化は
急務だと思います。また、これも
指摘がありましたけれども、
資金協力と
技術協力の
有機的関連もなかなか
組織が違うということでうまくいかないと。私は、
資金協力と
技術協力の
関連につきましては、ただ有機的な連関を目指すということにとどまらず、
実施体制の再検討も視野に入れて、原点から
考えていくということが重要ではないかと思います。
それから、次に移りますが、
アップストリーム業務と俗に言っておりますが、国に対して、あるいはテーマに対してどういう
援助をやっていったらいいかという
知識、
知恵の
部分の
計画作り、いろいろやっておりますが、これが
各省、各
機関に非常に小規模な
予算が配分されておりまして、しかも短時間にやらざるを得ないと。これが
予算が
統合され、ある程度
統合され、もう少し時間が与えられれば、
アップストリーム業務の、つまりこの
知恵の
部分についての
業務の水準も大幅に
改善できるのではないかと思います。
二番目ですが、
ばらばらに
実施されている一方で、同じような
仕事が重複して
実施されているという問題が古くから目立っております。
例えば立法府と行
政府、例えば
中央官庁と
援助実施機関、例えば
東京と
現地、この三つ挙げましてもそれぞれ、それぞれに
役割分担をはっきりもう一回再確認して、
権限移譲できるところは移譲するということが重要だと思います。特に、
中央官庁から
援助実施機関、
東京から
現地へ
権限と
責任を大幅に移すと、
現場に移すということが重要だと思います。他方、ただ委託する、委任するだけでは丸投げになってしまいますから、チェック・アンド・バランスの
体制をきっちり構築するということが重要であろうと思います。
三番目ですが、
人材が
不足だということをよく聞きます。
確かに、特に
途上国の
現場に行きますと、ほかの
ドナー、
国際機関とかほかの
先進国に比べて
日本の
援助要員は非常に
不足しております。ただ、これは必ずしも
人材が
不足しているということではなくて、
かなりの
部分、
定員が
不足しているという要因によるところが大きいと思います。実際には、相当な
能力を持ち、相当な経験を持った
人たちが遊休化して
仕事になかなか就けないという
状況がございます。これは
定員不足ということなんですが、これは
行政改革の
流れの中で
定員をやたらに増やすというわけにもまいりませんから、例えば
一つの
知恵として、
期限付の職員、今たくさんいろいろなポストを転々としておりますが、こういう
人材をプールして、仮に
期限付であっても連続して
ODAのために活躍してもらい貢献してもらえるという
体制を整備できれば、
人材面のハンディキャップも相当補えるのではないかと思います。
それから四番目ですが、この
予算単
年度主義ですが、
先ほどアップストリーム業務で時間が短いという話をいたしました。これも
一つの例ですけれども、現在、
ODAの中で
有償資金協力、
円借款につきましてはこういう
制約がございませんが、多くの場合、
無償資金協力あるいは
技術協力につきましては、これは若干の例外もございますが、多くの場合単
年度で
仕事を処理するということが原則になっております。また、先ほど申し上げた
知恵の
部分、
アップストリーム業務についてもそういうことが言えます。
現在の
予算の仕組みでいいますと、
仕事が、
予算が確定して
仕事に掛かれるのは秋口になってからですから、一年といっても十二か月でなくて、半年弱で
仕事を片付けなければいけないと。いろいろな拙速による問題も出てまいります。それから、それに伴って、制度上
入札をもう一回やり直すとか毎年やり直すとか、そういうロスも出てまいります。この点の見直しは
急務だと思っております。この
予算単
年度主義については少しずつ
改善が進められているというふうに思いますが、更に抜本的な
改善が必要かと思います。
それから、最後になりますが、
NGOの国際協力の強化ということですけれども、
ODAは基本的に
途上国の
公的部門、
途上国の
政府あるいは行政機構とパートナーになって
仕事をするという仕組みです。ですから、二人三脚で
途上国の
政府と一緒に
仕事をするわけですが、
途上国の
政府は当然のことながらまだ
能力が十分でないところがあります。特に、
途上国の地方の草の根に近い
部分の行政機構というのは非常に弱体です。したがって、
途上国の
公的部門と二人三脚で
仕事をする
ODAにはハンディキャップがあるわけですが、そこを全く違った立場から
NGOの
活動が貢献し補強するということは今までにも既に相当
効果が上がっております。
ただ、残念ながら、国際的に見て
日本の
NGOは、
途上国の
NGOと比べても国際
NGOと比べてもまだいろんな点で不十分な
体制になっていると。ここの
部分の国際競争力を強化するということが結果的に
ODAの
効果の
改善、
有効性の確保につながるのではないかというふうに思います。
取りあえず、時間の
関係もありますので主な点だけ申し上げまして、またいろいろ御
指摘、御質問いただきたいと思います。
ありがとうございました。