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参考人(
吉川弘之君) 御
質問の産
業技術総合研究所におきます基礎研究の
お話でございますけれども、産
業技術総合研究所は、公的な研究機関として広く社会の人々の期待にこたえる、科学技術の研究の能力をもってこたえるという、そういう立場で研究を続けているわけです。
人々の期待と申しますのは、安全で安心できる豊かな
国民生活を実現することであり、また新規
産業の創出あるいは雇用の創出、
国際競争力の強化といった様々な問題点があると理解しております。このようなことにこたえよということでありますけれども、特に
産業の力を強くするということは当研究所として非常に重要な観点なのであります。
どういう
産業がこれから出るべきなのか、
考えますと、これは、ただ単に
産業競争力が強くなればいいというだけではなくて、現在、地球的な、あるいは人類として受けております大変重大な問題、これは南北問題もありますし
環境問題もありますし、さらには、様々な新しい、人類にとって問題になるようなことが起こっている。そういったものをどうやって解決するかということでありますが、これは人類としてやはり
産業の力を付ける、特にその中で先進工業国としての日本は、
産業の力を付けるということによって国際貢献しなければいけない、そういう立場にあるんだろうと思います。
さて、そう
考えた場合、この
産業というのは、従前のように従来の知識を使っていい
製品を作るということだけではなく、新しい人類の課題に処すために、例えば
環境問題というのを取ってみますと、これは全く今までの基礎知識では解けないような様々な問題が起こってきているわけでありまして、したがって、
産業に貢献すると一口で言いますけれども、そのためには、従来にない新しい知識を創出するということを通じて新しい
産業を起こす、新しい種類の
産業技術を作るということが必要になると
考えております。
したがって、伝統的な知識を使うというだけではなくて、新しい知識を作りながら、同時にそれを使って
産業技術に貢献するということは、私どもはその非常に基礎的な、新しい知識を生み出す基礎的な研究と
産業に役立つ研究を一緒にした、そういうのが
一つのグループになって研究する、私どもそれを本格研究と、こう呼んでいるんですが、その本格研究を実現する、そういう研究所になりたい。そのためには、多様な仕事の種類が出てまいりますので、現在進行中の、現在
考えております非公務員化というのも多様な職業を提供できる研究所となるためには非常に必要なことで、基礎研究というのがますます振興できるんではなかろうかと思っております。
現在、私どもの研究所にはノーベル賞候補者も何人かいるわけでございまして、基礎研究は決しておろそかにしないということを申し上げたいと思います。