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政府特別補佐人(
竹島一彦君) 幾つかの点、御質問いただいたんですが、まず最初に申し上げたいのは、行政処分と刑事処分ということになるわけですが、
公正取引委員会が行っておりますのはすべて行政処分でございまして、課徴金の命令も行政処分でございます。一方、同じ独禁法の中に、悪質で
社会的に大変重大な影響を及ぼすというものにつきましては、
公正取引委員会が専属告発権に基づいて告発をし、その結果、司法の場で刑事罰が科されると、こういうことになっておりまして、両方が併存しているということも事実でございます。
ただ、この問題を
考えるときに大事なのは、日本における刑事司法というのはあくまでも個人が
中心でございまして、個人がまず違法行為を働く、それが極めて悪質であるということが大前提でございまして、それが社員の場合には
企業として監督責任等が問われて両罰規定によって
企業に罰金が科されると、こういう仕組みになって
運用もそうされておるわけでございます。
ただ、そういう中で、ただといいますか問題なのは、独禁法
違反事件というのは典型的な
企業犯罪でございまして、当然、社員が関与するわけでございまして、中には悪質な行為というものもあるわけでございまして告発に至りますけれども、圧倒的な事案というのは行政処分で済まされるというのが現実でございます。
企業犯罪であって社員は正に黙々と前任者から引き継いでカルテル、談合をやっていましたと。そのこと自体、もちろん違法行為でございますけれども、それよりもむしろ
企業としての犯罪行為という側面が非常に強いわけでございます。これを刑事処分ですべて処理をするというのは、今申し上げたような個人
中心主義の日本の刑事司法の体系からいって、ミスマッチと言うと言い過ぎかもしれませんが、それは現実的ではないと。したがって、私どもは刑事処分にすべてを依存するわけにはいかない、行政処分でできることは行政処分できちんと対応するということが現実的に必要であるというふうに
考えております。
そこで、じゃ現実的に課徴金を含めた今の独禁法のいわゆる措置体系というものが独禁法違反を思いとどまらせるに十分な抑止力を持っているのかということになるわけですが、残念ながら私どもはそうは思っておりません、見ておりません。その証拠に、いろいろ指名停止とかいろんなことも重なってあるわけでございますけれども、にもかかわらず独禁法
違反事件というのは、増えることがあっても減ることはないという現実があります。したがって、きちんとした公正かつ自由な
競争を日本の
経済取引において定着させるためにも、独禁法
違反事件というものは割に合わないものだというようなことに行政処分上もしていく必要があるという基本的認識に立っておりまして、そのために課徴金の引上げが
一つ必要であるということでございます。
課徴金を引き上げると、従来の不当利得の剥奪といった
説明からいたしますと、不当利得の剥奪以上の金銭的な要するに不利益を与えなけりゃいかぬということでございますので、課徴金の性格がより行政制裁ということになるということでございますけれども、そうはいいましても、さっきおっしゃったように、二重処罰、憲法の禁ずる二重処罰の
禁止に当たるかということについては、基本的にはそれは当たらないと
考えるのが
法律家の、私は、見るところ、多数説ではないのかと。あくまでも目的も性格も違うと、やり方も違うということであって、制裁性を増した、また行政上の制裁と言い切ってもいい課徴金ということになりましても、罰金との
関係で二重処罰にはならない、基本的に別なものであるというふうに思っておりますが、ただ、これから先はいろいろな議論がまだありまして、それはやはり実質的にどうなんだというような議論もあります。私どもは、基本論としては、今申し上げておるとおりで、それぞれ別問題であるから、併存してよろしいと。かつまた、圧倒的に課徴金だけで処罰が付くんであって、ごく少ないケースが悪質、重大だということで刑事告発されて、刑事罰も掛かると。
そういう確率的には低いケースにおいて両方が科されるということがあるわけでございまして、その場合に、ぎりぎり議論したときに、憲法の二重処罰の
禁止規定に触れないようにするために、言ってみると、
政策的判断も込めて調整規定を設けた方がいいだろうという議論をずっとしてまいりまして、その結果として、半分を、罰金も科されるようなケースの場合には罰金相当額の半分を課徴金から差っ引くという調整規定を設けたらいいんではないかという
考え方に今なっているわけですが、その
考え方は、刑事罰というものは、正に懲罰機能と同時に、予防
効果といって、そういうことをしちゃいかぬのだということを抑止する機能もあるというふうに言われているわけでございまして、その抑止機能、予防
効果という側面は行政処分の目的と共通するものがございますので、その機能を半分と
考えまして、半分を差っ引くという
考え方でございます。
以上申し上げて、御質問の二重処罰の問題、制裁金になるではないかという問題、それから半分の調整の問題、それから、いずれか一方にすべきではないかということは日本の体系では非現実的ではないのかということで答弁申し上げます。