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参考人(簗
郁夫君)
宇都宮商工会議所会頭の簗
郁夫でございます。このたびは当
委員会で
意見を述べる機会をいただき、誠にありがとうございます。
私は、併せまして
栃木県
商工会議所連合会の
会長と
栃木県
中小企業再生支援協議会の
会長も仰せ付かっております。したがいまして、本日は、
栃木県の
経済界としての
立場から私の所見を述べさせていただきます。
内容は、大きく次の四項目でございます。第一は
栃木県
経済の現状、第二は足利銀行の破綻、一時国有化に伴う現在までの影響、そして破綻の影響に対する今後の対策、
最後に
栃木県
経済の活性化と持続的成長について、以上四点につきまして順次申し上げさせていただきたいと思います。
最初に、
栃木県の規模と位置付けを御理解いただきたく、
栃木県の
経済の現状につきまして説明をさせていただきます。
栃木県の人口は、
平成十五年十月現在で約二百一万人でございます。
産業別の構成比は、一次
産業が約二・一%、二次
産業が約四〇・四%、三次
産業が六一・四%、これはちょっと足して一〇〇を超えますが、これは県民
経済計算からやっておりますので、ちょっと帰属利子等の控除分が入りますために変わる次第でございます。いずれにしろ、特徴的には比較的製造業の比重が高く、二次
産業から近時、順次三次
産業へとシフトする
傾向がございます。
また、最近の主な
経済指標について申し上げますと、製造製品出荷額、これは
平成十四年度速報値でございますが、約七兆六千五百億でございまして、
全国の十位に位置しております。それから農業産出高は、十四年度二千七百億で、
全国の九位でございます。一人当たりの県民所得、これは十三年度しか出ておりませんが、三百十三万五千円で、
全国で六位でございます。また、最近の有効求人倍率は、本年一月でございますけれ
ども、一・一〇倍で、
全国で四位となっております。デフレ
経済の中でございますので、名目数値は減少してございますが、それぞれ
全国での順位を一ランクずつ上げております。
しかしながら、一方、ミクロの指標を申し上げますと、
平成十四年度の申告法人の赤字
企業率は七八・一%に達しておりまして、
全国でワーストフォー、これは
民間の
調査でございますけれ
ども、そういう結果が出ております。また、今いろいろマスコミで報道されております日光、那須、鬼怒川に代表される観光地につきましては、
平成十四年度の入り込み客数、いわゆるおいでいただいた客数は総数で千八百八十九万人ございました。そのうち宿泊客数は七百三十四万人でございまして、かつてのピーク時に比較しまして七四%程度に落ち込んでおりますが、最近減少
傾向に底打ち感が出ているという
状況でございます。
総括的に申し上げますと、
栃木県全体といたしましては、マクロ
経済的には
全国でも上位に位置するマーケットを有しておりますが、ミクロ的にはいまだ厳しい局面が見られるというところでございます。しかしながら、一部には明るい兆しが見えておりまして、本年度の県の法人
事業税、法人県民税は当初予算を約百億円程度上回る見込みでございまして、また
工場立地数も
回復傾向にございますので、
傾向的には景況は若干上向きぎみかと思われます。
このような中で、御
承知のように、昨年十一月末、
栃木県の基幹
金融機関であります足利銀行が破綻処理され、特別危機管理として国有化されるに至ったところでございます。
次に、昨年十一月二十九日、足利銀行が特別危機管理銀行とされました時点から本日までの影響について述べたいと思いますが、足利銀行からの預金の流出、移動は
現実的には発生しておりますが、問題とするほどでもございません。ただし、
金融不安から県内各関係
機関に設置された特別
相談窓口の
相談件数は、いろんな件数がありますのでそれがすべてというわけでございませんが、三月十八日現在で約千九百二十五件ございました。我々の
商工会議所では二百件ほどでございました。
しかしながら、実際的には、昨年末の、年末、また本年この三月末の年度末においても、比較的
金融的には平穏、安定的に推移しておりまして、三月決算もそのまま推移するんじゃないかと思っております。
その理由として考えられますことは、第一に、足利銀行自体が
金融庁の業務適正化命令に従いまして従来の
融資姿勢を継続したことにあります。加えて第二に、危機回避に万全を期した
栃木県は、セーフティーネット
融資資金枠を二度にわたりまして拡大を図りまして、合計六百億円が準備されました。加えて、各
市町村でもこの対応にプラスして合計七百七十億円、
市町村をプラスしまして七百七十億円の
融資資金が準備され、
市町村も補完する処置が取られたために、このような危機が回避されたものと思っております。また第三に、
政府系の
金融機関及び市中
金融機関においても適正な処置が講じられたことによりまして、比較的安定的に推移したものと思われます。
その例として、
栃木県信用保証協会の保証の推移を申し上げますと、保証件数は前年比で申し上げまして、十二月が一五四%、一月が一二七%、二月が一〇七%でございます。それから保証金額で申し上げますと、前年比で十二月は二九七%、約三〇〇ですね、それから一月が二〇〇%、二月は一四二%、順次鎮静化しておりますけれ
ども、この中でセーフティーネット六号認定
案件は七百九十億円に達しております。その七百九十億円のうち足利銀行扱いは四七・八%でございますので、足利銀行自らの
努力も先ほど申し上げたように相当見られたというふうに言えると思います。これらのセーフティーネット機能が有効に働いた結果、
倒産件数は毎月十件前後で推移しまして、破綻前とほぼ同水準を保っております。
以上申し上げましたように、比較的平穏に推移したことは、関係
機関の的確な処置が講じられた結果と考えられまして、大変有り難く、感謝申し上げる次第でございます。
しかしながら、
栃木県
経済の不安定化見込みの報道が
全国に伝わりまして、いわゆる風評被害をもたらしているものは相当ございます。地元
経済界の最も懸念しておりますことは
企業間信用の収縮でございますが、足利銀行をメーン銀行というだけで信用が落ちて、手形・小切手の決済行を変更してくれとか、あるいは手形の決済期間を短縮してくれ、あるいは手形決済から現金決済への変更をしてくれとか、あるいは取引保証金を積み増してくれとか、あるいは売掛金残高の枠を少し縮めてくれとか、そういうような様々な
取引先の債権確保の
強化が行われているということを耳にしております。そのために、温泉地ホテル、旅館等も苦境に立たされているということも言えると思います。
以上が今までの影響でございますけれ
ども、それに対する今後の対策でございます。
足利銀行の破綻、国有化による影響は、株式の毀損によるものと今後の不良債権処理によるものが今後考えられております。足利銀行破綻、国有化により株主責任が問われた結果、ほぼ無価値化した株式の金額を正確には
把握できませんが、少なくとも増資分の七百二十七億円は既に毀損しております。また、足利銀行の
平成十五年度中間期、九月期のディスクロージャー誌によりますと、要管理債権以下の
金融再生法の開示債権総額は五千四百四十一億円に上っております。また、同誌によりますと、足利銀行の
地域への貸出し比率は九〇・〇%でありまして、そのうち
中小企業向け貸出金比率は八四・八%に達しております。
したがいまして、先ほどのような不良債権処理が足利銀行の健全化の過程で行われるわけでございますが、オフバランスのいかんによっては、
栃木県を
中心として群馬、茨城、埼玉、
栃木県に隣接する
地域での投資と
消費に大きな影響が出る試練のときをこれから迎えるものと言わざるを得ません。我々
経済界としても、影響を最小限に食い止めるには、一に
企業再生でございますし、二にも
企業再生であると考えております。
そのために、まず、先ほど
藤原参考人からもお話がありましたように、
栃木県
中小企業再生支援協議会の体制の
拡充につきましては、
中小企業庁の御
支援の下に、本年一月には
常駐専門家について従来の四名の体制から十名にしました。また、
支援専門家も十三名から三十名への増員としまして、全体で約二・五倍の体制を整えました。本件につきましては、関係各位に深く感謝を申し上げる次第でございます。
既に足利銀行と
栃木県
中小企業再生支援協議会との連携協議を定期化しておりまして、今後の
案件数によっては、機動的に増員する
予定であります。さらに、
産業再生機構、整理回収機構との連携の枠組み作りも図っているところであります。また、
企業再生ファンドの早期創設も検討中でございまして、四月には何らかの取りまとめができる
予定でございます。
以上、るる申し上げましたが、それ以外でもできる限り私的整理のスキームを活用して
企業再生に努め、
地域経済への影響を最小限に食い止める所存でございます。
栃木県では、いわゆる三位一体改革によりまして厳しい財源の中にあるにもかかわらず、
平成十六年度予算編成に当たりまして、県の財政調整基金を取り崩し、前年対比一〇五%の予算規模を確立いたしました。特に、県単独での需要創出や
融資対策を図っております。さらに、雇用安定
支援対策としまして、来月五日には学生や若者から中高年の離職者までを見据えまして総合的な就職
支援を目指す「とちぎ就職
支援センター」をスタートさせることになっております。また、
地域再生の
提案として、
栃木県
経済新生構想を
提案し、
地域金融の円滑化、
中小企業の
再生、
地域産業の活性化、
地域雇用の確保の重点
施策を展開することとしております。
以上、現在
実施いたしております
取組の一端を御案内申し上げましたが、これらはあくまで
栃木県
経済の下ぶれを起こさないように講ずる
施策でございまして、これからの
栃木県の発展を期すとは言えるものではありません。
そこで、
最後になりますが、今後の
取組につきまして考え方等を述べさせていただきたいと思います。
経済活性化、
地域経済の活性化と持続的成長のためには、家計すなわち雇用と所得が伸び、内需
産業が成長することが必要と考えております。次の世代の豊かさと幸福は、新しい商品やサービスの出現によってもたらされるものと言って過言でないと思います。新
事業の展開や効率化を図る経営革新やベンチャー
企業や第二創業など、ニュービジネスの
企業起こしも欠かすことはできません。これをより積極化するために、産学官の連携・交流促進やニュービジネス育成ファンドの創設も考えなければならないと思っております。そのためにも、県内預金の四〇・八%、貸出金の四九・〇%を占める足利銀行が一日も早く
再生を果たし、必要なリスク資金の貸手となることが期待されているところでございます。
現在、
栃木県内、あるいは各県でも同様かもしれませんが、各地では
中心市街地商業の地盤沈下、建設業の不振あるいは温泉地の集客
低下等様々な
課題を抱えておりますが、それらの解決策は、経営環境の急激な
変化にどのように対応するかということであろうかと思っております。対応する
課題は個々の命題によりまして異なりますが、いずれの
ケースであってもその解決のためには、一度相当完全にセットをし直して、根本的に出直す覚悟が求められているのが現状かと思います。
地域経済を基本的に支えているのは、御
承知のとおりコミュニティービジネスや小規模、中小零細の土着
企業群でございます。県内に豊富にある
地域資源を有効活用した
地域密着型ビジネスの推進や時代ニーズに対応した観光地作りが不可欠と考えます。
是非、
小規模企業の経営
支援を手厚く行う
施策を必要と思いますので御検討いただきたいと思います。
一方では、
地域経済を牽引していく
地域の
産業資本家、主に中堅
企業の
経営者でございますが、この
役割も見逃せません。それぞれの
企業が、各々社会的使命を自覚して自立した情報を発信できる
企業となることが肝要であると思っております。各
企業が産学官の水平ネットワークを組むことによって足腰の強い
経済が生まれるものと思いますので、それらを結び付けるコーディネーターの存在が大切でございますので、この辺の
施策も御検討いただければ大変有り難いと思っております。
足利銀行の破綻・国有化によりまして、旧来のもたれ合いの取引構造から脱皮し、市場原理と
経済合理性を踏まえて、リスクテーキングで緊張感のある取引へと
変化するであろうことが各
企業、銀行とも認識されておりますので、今後の発展に期待しておる次第でございます。
以上、
地域経済再生のための所見を申し上げましたが、足利銀行の一時国有化を足腰の強い
地域経済を創造する絶好のチャンスとしてとらえて、
改善に取り組む所存でございます。
本
委員会に
出席させていただきましたことに対し、深く感謝を申し上げますとともに、
地域経済の活性化のために御示唆賜りますよう
お願いを申し上げまして、私のつたない所見を終了させていただきます。
誠にありがとうございました。