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参考人(藏内
勇夫君) おはようございます。
私は、
社団法人日本動物保護管理協会の
会長を務めております藏内
勇夫でございます。今回は、大変権威と名誉のある参議院の
環境委員会で
参考人意見を述べさせていただく機会をいただいたことを心から光栄に存じ、感謝を申し上げる次第でございます。ただ、私は浅学の身でございまして、十分な
意見を述べることができない点もあろうかと思いますが、その点につきましてはお許しを願いたいと思います。
それでは、
最初に、私
ども日本動
物保護管理協会について簡単に説明をさせていただきたいと思います。
この法人は、
動物の虐待を
防止し、
動物の適正な取扱いと
動物の保護に努め、あわせて
動物の正しい飼育管理の
知識の普及を図り、広く国民の
動物愛護の精神を高揚することを目的といたしております。設立は昭和五十七年四月でございます。所管官庁は
環境省であります。会員は、
日本獣医師会及び四十七都道府県の地方獣医師会、政令指定都市等の八市の獣医師会、それから
動物愛護
団体でございます。
主な事業内容といたしましては、
動物の適正飼養に関することを行っております。犬のしつけのテキストでありますとか、猫の飼い方のテキスト、あるいはNHKビデオ「犬は大事なパートナー」等を作成し、貸出し等を行っております。それから、
動物の保護管理に関する調査と
研究も重ねて行っております。
また、九月に行われます
動物愛護週間におきまして、作文コンクール、絵画コンクール等を行っていまして、特に絵画の部門では全国から小中学校生約五千部ぐらいの参加がございます。これの表彰も含めてこの期間にこういった行事を行っております。
そして、災害活動、例えば阪神大震災、三宅島、有珠山の噴火等でいろんな
団体とともに支援活動、
動物の支援活動を行ってまいりました。また、今日的課題といたしまして、集合住宅における
動物飼育の問題、あるいはペット
動物の購入問題等に積極的に取組をいたしております。
そして、最近力を入れておりますのが、いわゆる飼養者の最終責任をきちっとするための
動物の個体識別を確立するためのマイクロチップの普及推進、これを進めております。これは、財団法人
日本動物愛護協会及び
日本動物福祉協会、
日本愛玩
動物協会、そして私
どもの全国
動物愛護四
団体が全国
動物愛護推進協議会を組織をいたしまして、
動物ID普及推進
会議、通称AIPOと我々申しています、アニマル・アイデンティティー・プロモート・オーガニゼーションでございますが、この協議会の中でこのマイクロチップの普及に努めておるところであります。
このように、私
どもは基本的に
動物の愛護及び管理に関する
法律の趣旨徹底を図るために、この
法律の基本原則でございます、
動物というのは物ではない、命あるものであるということ、それから、人と
動物の共生に十二分に配慮しなきゃならぬということを踏まえ、
動物愛護思想の
普及啓発と
動物の適正飼養管理の徹底を図ってまいりたいと考えております。
そういう活動を行っておる
日本動
物保護管理協会といたしまして、今回提案をされております政府案に賛成をする
立場から
意見を述べさせていただきたいと思います。
まず、
外来生物問題全般に対する概観、つまり問題意識を申し上げたいと思います。
ミドリガメに象徴されるように、
外来生物が大量
輸入、大量消費をされているのが
現状であります。自然な中で在来種を駆逐するだけでなく、ペットを飼う場合は最後まで責任を取るという当たり前のことが、余りにも安易に
取引をされていることからできなくなっているのが
我が国の
現状でございます。エキゾチックアニマルという
言葉に象徴されるように、多種多様な外国産の
生物が
輸入されてペットとして利用されております。しかし、その大半が野外に遺棄され、生き物を物として扱うことが命を大切にしない風潮を作り、子供たちにも大変悪い
影響を与えております。
このような問題意識を基に、
動物愛護の
立場から五点について
意見を述べたいと思います。
まず第一点目。わざわざ外国から
輸入してまでどのような
影響があるのか分からないような野生
動物をペットとして飼育すべきではないと、このように考えます。犬や猫などはペットとして品種改良されてきた
動物であります。しかし、野生
動物には未知の部分も多く、
生態的な特性が不明であるにもかかわらず安易にペットとして
導入されています。人の管理から逃げ出した場合に、自然の中で
生態系や農林水産業などの
被害を及ぼすおそれがあるような
生物や人間に危害を及ぼす
生物は
輸入や飼育に、飼養に
一定の
規制を行い、きちんと管理できる
動物園など以外では飼養すべきではないと思います。また、
影響の定かでない
生物についても事前にその評価を行うことが肝要であると考えます。その意味で、問題のある
生物を
特定外来生物として
規制するとともに、
特定外来生物に当たる
疑いのある
外来生物を未
判定外来生物として
輸入に先立っての判定を行う
仕組みを有する政府案は大変高く評価できるものであると考えます。
次に、この
法律は
生物多様性国家戦略の一環として法制化されるものであり、
動物愛護管理法と大きなかかわりがございます。元来、
動物愛護行政とは
地球環境の中で
動物と人間が接触するところには影のように付きまとうものでございます。
動物愛護を所管する
環境省として、命ある
動物を
環境構成要素の
一つとして取り扱う一貫した方針が不可欠ではないでしょうか。
外来生物問題の大部分は、
動物取扱業者の手により入手、
販売された後、ペットとして飼養され、かつ不適切な飼養管理の結果としての遺棄、逸走により生じているのが
現状でございます。
そこで、二点目といたしまして、
外来生物の
規制に当たっては、所有者責任に基づく終生飼養の原則を基本に据え、このため所有者責任規定の整備強化と
動物の愛護及び管理に関する
法律との整合性に十分に配慮すべきだと思います。特に、飼養者の責任を明確にする観点から、マイクロチップの
導入を進めるべきであると思います。
外来種を許可を受けて
輸入又は飼養する者については、所有者責任の遵守を徹底させ、この
法律の
効果を確実なものとしなければなりません。そこで、国際標準ともされるマイクロチップによる個体識別措置の実施を義務付けるとともに、当該
動物の飼養状況を把握するための登録管理
システム、これを構築する必要があると思います。
なお、
動物飼養者の所有者責任に基づく終生飼養の基本原則は、既に
動物愛護及び管理に関する
法律において位置付けられております。したがって、
外来種対策の整備と並行して
動物の愛護及び管理に関する
法律を早急に見直し、
外来種に限らず、飼育
動物に対する個体識別措置の義務化と
動物取扱業に対する許可、登録制の
導入を検討する必要があると思います。
このように、
外来生物問題の中には愛護
動物の適正な飼養管理を目的とする
動物愛護管理法の改正により十二分に
対応できるものが少なくありません。また、そのことは命を大切にする法の精神との一貫性と法体系を簡素化を図ると、こういったことでも非常に
効果的であると考えます。よって、同
法案は
動物愛護管理法との一貫性と整合性を図り、お互いのこの二つの
法律が補完性を持つように十分考慮されるよう
要望いたしたいと思います。
次に、三点目でございます。
外来生物対策の
実効性を確保するためには、
日本獣医師会を始め
動物保護管理に関する公益
団体の果たす役割は非常に大きいものがございます。これら
団体の活動を通じ、
外来生物対策の国民に対する
普及啓発、調査
研究等の新たな
科学的
知見の収集に努めるべきであると考えます。特に、
外来種対策の学校教育
現場を含む国民に対する
普及啓発、新
知見の調査
研究については、
動物医療を担う公益
団体である
日本獣医師会を始め、私たち
動物管理に関する公益
団体の果たす役割は大きいものがあり、
外来種対策の
実効性を確保するためにも、関係する公益
団体の活力を活用した
対策とこのために必要な十分な予算措置を講じられるようにお願いをしたいと思います。
次に、四点目でありますが、
外来種対策に関する権限を行使する国の職員、
特定外来生物被害防止取締官についてでありますが、
動物医療及び
動物の生理、
生態についての
専門家である獣医師資格の持った者の積極的な配置を行うべきだと思います。
そして最後、五点目、防除についてであります。
防除に際しても、殺処分は最小限としていただきたい。やむを得ず殺処分する場合でも、
動物の安楽死に関する国際的なガイドラインに沿って行っていただきたいと思います。防除により捕獲した
動物の取扱いについては、殺処分せずにきちんと飼養できる人物、
団体が引き取って管理していただくのがこれは理想的でありますが、現実にはそうまいりません。やむを得ず殺処分せざるを得ない場合には、
動物愛護の観点から、できるだけ
動物に苦痛を与えない、恐怖を与えないような方法を取るべきであると思います。
今日はせっかくの機会をいただきましたので、お許しをいただきまして、以上、五点の
意見を述べましたが、私たち獣医師がボランティアで行っております野生
動物ヤマネコ保護活動について、少し時間がありますので、お話をさせていただきたいと思います。
この
特定外来生物に関する
法律案は、
外来生物とは、海外から
我が国に
導入されることによりその本来の生息地又は生育地の外に存することとなる
生物と定義をされてございます。しかし、国内においても、限られた地域あるいは島などに人間の手によって持ち込まれた
生物がその地域の
生態系に大きな
影響を及ぼすことがございます。
九州の最北端の島、対馬と沖縄本島から遠く南西に浮かぶ西表、この北と南に位置する二つの島にそれぞれツシマヤマネコとイリオモテヤマネコが生息しております。
日本にいるヤマネコは在来種としてこの二種だけでございますが、太古の昔、大陸と
日本列島が地続きであったことを証明する貴重な
生物で、どちらも天然記念物であり、また国内希少
野生動植物に指定をされております。
このヤマネコが、
環境悪化による獲物、主に野ネズミ等でありますが、の激変や、家猫、人間が飼う家猫からの病気が感染をする、交通事故などによってかなり数が減ってきております。つまり、すべてこれらは人間の活動に起因する原因で、現在生息数百頭を切ると推定され、種の保存法及び
絶滅危惧
動物種に指定をされております。数年前、捕獲されたツシマヤマネコからFIV、いわゆるネコエイズという、ネコ後天性免疫不全症と言いますが、という治療ができない、こういった病気がヤマネコに感染、いわゆる対馬の家猫から感染猫が発見をされ、それがツシマヤマネコに感染をしておったという事実が判明をいたしておりました。この病気がヤマネコの間で蔓延すれば、瞬く間に滅亡へと進むと言われております。
そこで、私
ども九州地区の獣医師が立ち上がり、島に放置されている野良猫を
外来種と位置付け、ヤマネコ保護活動に乗り出したわけであります。具体的には、獣医師がボランティアで島へ渡り、診療所をそれぞれに設置をし、家猫に対する避妊、去勢手術を行い、ワクチン接種や
感染症の抗原・抗体検査、寄生虫駆除などを行い、処置した後に個体識別ができるようマイクロチップの挿入、これら全部を無料で行っております。今後、野良猫へすそ野を広げていかなければなりませんが、これからはやはり行政、地域の理解、それから持続的な資金がなければなかなか難しいと思っております。
申すまでもなく、自然界の
生態系は何千、何万年という時間を掛け築き上げられたものであり、人間の手によって
生態系に急激な変化が加わると、思い掛けない連鎖反応、人間に対するしっぺ返しが起こると思います。
生態系の変化は、気付いたときにはもう手後れであるということが多く、そうなる前に対処すべきだと思います。
野生の動
植物は
生態系の重要な構成要素であるだけでなく、
自然環境の重要な一部として人間の豊かな生活に欠かすことのできないものであります。私たちは、
動物にかかわるエキスパートとして、野生
動物を保護することにより、
動物愛護思想を普及させるとともに、多様な
生態系を維持するために今後とも努力をしてまいりたいと考えております。
以上申し上げましたが、いずれにいたしましても、早期に
対策を講じていくことが、結果として防除より、やむを得ずその命を奪われる
動物の数を最小限にすることにつながると思います。できるだけ早くこの本
法案、政府案を成立させ、具体的な取組を開始することが何よりも重要だと思います。
以上で私の
意見陳述を終わらせていただきます。ありがとうございました。