○長島昭久君 民主党の長島昭久です。
私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま
議題となりました、いわゆる有事関連法案などにつきまして、その中核法案である
国民保護法案を中心に、
関係大臣に質問させていただきます。(
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質問に先立ちまして、イラクで今なお
拘束されている三人の日本人の方々が一刻も早く無事に解放されますことを、心からお祈り申し上げたいと思います。(
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事件が起こって以来、解決のために昼夜を問わず尽力されてきた関係各位に深く敬意を表するとともに、
政府に対しましては、このような事件が再発しないよう、邦人
保護に万全の対応
措置を講じられるよう、改めて強く要望したいと思います。(
拍手)
この事件に際しまして、私たち民主党は、早い段階から、党派を超えて
政府の対応を
支援する方針を打ち出してまいりました。それは、この事件がまさしく有事にほかならないと考えたからであります。
したがいまして、事件が解決した暁には、対イラク政策全般について、とりわけ
自衛隊のイラク派遣の是非について、改めて徹底的な議論をしていくことを
国民の皆様にお誓い申し上げたいと思います。(
拍手)
さて、本題に入ります。
私たち民主党は、結党以来、
緊急事態の
法整備はこれを速やかに進めるべきであるとの立場を貫いてまいりました。有事にあって、
国民の
生命と
財産を守るためとはいえ、超法規的な手段に訴えることは、
憲法秩序そのものの破壊につながるからであります。
その際、特に留意すべき
憲法上の
原則として、基本的人権の尊重とシビリアンコントロールの貫徹を強く求めてまいりました。
その意味で、このたび、与野党の協議機関において、
武力攻撃事態のみならず、大
災害やテロなども含めた包括的な
緊急事態基本法を制定することが合意され、あわせて、民主党が求めてきた
緊急対処事態の
認定に国会を関与させるシビリアンコントロールの
原則を与党側が受け入れたことは大きな前進である、このように評価をしております。
このように、私たちは、有事関連法案の
審議に当たり、議論の入り口から反対しようとは考えておりません。
国民の
生命と
財産を守る上で、より実効性の高い危機管理
体制を構築するために、引き続き法案
審議に対して真っ正面から取り組んでいく決意であることを冒頭に明らかにしておきたいと思います。(
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まず最初に、与野党で合意いたしました基本法づくりの大前提である基本的人権に対する考え方についてお尋ねいたします。
基本的人権の保障は、平時、有事を問わず貫徹されなければなりません。特に、
武力攻撃事態などにおける実力部隊の
活動は、常に人権侵害に至る可能性と表裏一体であります。その際にも、
政府が最大限に尊重すべき基本的人権について、基本法の中に詳細に盛り込んでおく必要があると考えます。
例えば、いかなる事態にあっても、思想、良心、信仰の自由といった内心の自由は絶対不可侵であること、その他の精神的自由権に対する制約も、より重大な人権を守るための必要最小限の
範囲にとどめなければならないことなどであります。
その中でも、特に報道の自由は重要であります。さきの大戦下における大本営発表のような苦い経験にかんがみれば、
政府案で指定公共機関の一つとされた放送事業者の報道の自由、取材の自由に対する具体的な保障
規定は不可欠であります。
この点、昨年民主党が提出した修正案が、放送事業者の「報道の自由、
政府を批判する自由等の表現の自由を侵してはならない」と
規定し、これを受けて、
武力攻撃事態法の成立に際して行われた衆参両院の附帯決議の中で、特に報道・表現の自由への配慮がうたわれたことは周知のとおりであります。
これら基本的人権の尊重について、まず、法務大臣の御所見を賜りたいと思います。その上で、基本法において人権保障
規定をさらに詳細なものとする意思がおありかどうか、有事法制担当大臣の御所見を伺います。(
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また、その他の指定公共機関が行う
国民保護のための
措置についても、各方面から心配の声が聞かれます。
例えば、
保護措置に従事する者の安全
確保や事故が起きた場合の補償問題、労働組合や赤十字などの関係団体との協議、従事者が業務命令違反をした場合の運用
指針の策定、指定公共機関の指定理由、その
範囲や効果の明示など、
政府案では全くうかがい知ることができません。
政府は、このような
国民の懸念に対して、逐一、
説明責任を果たし、理解を得なければ、法案に言う、有事における
国民の自発的な協力は望むべくもないでしょう。
少なくとも、今挙げた幾つかの懸念について
政府がどのようにお考えか、また、
国民の理解を得るためにどのような御
努力をなされるおつもりか、有事法制担当大臣から明確な御答弁をいただきたいと思います。(
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次に、あるべき危機管理
体制づくりに向けた進捗状況について伺います。
民主党は、昨年提出した
緊急事態対処・未然
防止基本法案におきまして、危機管理庁の設置を提唱いたしました。この民主党提案を受けて、昨年の
武力攻撃事態法の附則において、「
緊急事態へのより迅速かつ的確な
対処に資する組織の在り方について検討を行うものとする。」と明記されたことは周知のとおりであります。
数々の実績を誇るアメリカの危機管理組織FEMAの経験からも明らかなように、
緊急事態にあって、省庁横断的な総合
調整権限を持った強力な中核組織の存在は不可欠だと思われますが、検討の状況は一体どうなっているのでしょうか。まさか、平時の縦割り行政を前提とした出向職員の寄せ集めで有事にも十分
対処できるとお考えではないでしょう。有事法制担当大臣、既に一年が
経過しようとしておりますが、危機管理
体制づくりの進捗状況について明確にお答えください。(
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長くFEMAの長官を務めたジェームズ・ウィット氏は、最近行った議会証言の中で、
計画の策定、
訓練や演習、事態
対処に当たっての情報収集、情報共有のすべてにわたり、国と地方が一体となって協力していける
体制づくりが最も重要だと繰り返し強調しております。
法案によれば、地方レベルにおける有事の際の総合
調整は、都道府県及び市町村の対策本部にゆだねられています。しかし、
武力攻撃事態が県境をまたいで広域に
影響する場合、本来が危機管理官庁ではない都道府県庁や市町村の役場などに、
自衛隊、警察、消防など多くの機能、もろもろの機関にわたる迅速的確な総合
調整が果たして可能なのでしょうか。具体的な自治体
支援体制について、総務大臣及び有事法制担当大臣に説得力ある
説明を求めます。
特に、国と地方が一体となって
緊急事態に
対処する上で不可欠と思われるのが、国の現地対策本部であります。
この点について、初動がおくれて大惨事を招きました阪神・淡路大震災の教訓や反省を踏まえて、
法律上の機関として、国が現地対策本部を置くことができるよう、
平成七年に
災害対策基本法が改正されました。さらに、東海村の臨界事故を契機といたしまして
平成十二年に新たに制定された原子力
災害対策特別
措置法においても、同様の
規定が盛り込まれました。
しかしながら、今回提出された
政府案には、国が現地対策本部を設置できる
規定はどこにも見当たりません。これは一体、いかなる理由なのでしょうか。過去の
緊急事態における貴重な教訓や反省が全く生かされていないとすれば、今回の
国民保護法案の致命的な欠陥と言わなければなりません。(
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緊急事態における
国民の
保護に万全を期し、国及び地方の関係機関による
対処措置を円滑に行うためには、現地においても国の対策本部を設置し、現地
対策本部長に、都道府県をまたいだ広域的な状況判断や関係機関を束ねる迅速な意思決定を可能とする一定の総合
調整権限を付与することが極めて有効であり、かつ必要と考えますが、総務大臣並びに有事法制担当大臣の御見解を伺いたいと思います。(
拍手)
次に、今回の法案で、いわゆる民間防衛組織の創設を見送った真意について伺います。
今回、
政府が
承認を求めている
ジュネーブ諸
条約の第一
議定書には、第六章に、
文民たる
住民を敵対
行為や
災害の危険から
保護することなどを任務とする
文民保護について詳細な
規定が置かれております。
にもかかわらず、
政府案においては、
国民の
保護のための
活動を行う組織、
条約の
規定でいえば
文民保護組織を新たに設けることはせずに、
住民の自主的な防災組織やボランティア
活動に期待をし、これを国や地方自治体が
支援するにとどめております。
しかし、地域の自治会や消防団などでは深刻な高齢化が進んでおり、自主防災組織の組織率は、全国平均で約六〇%、しかも、都道府県ごとに見ると、ほぼ一〇〇%に近い自治体から五%に満たない自治体まで千差万別です。このような
対処能力のばらつきは、有事において致命的な結果を招くおそれがあります。
にもかかわらず、なぜ、
政府として全国規模の
国民保護のための組織を設けようとしないのか、総務大臣及び有事法制担当大臣、その理由をお答えください。
また、
緊急事態に当たって、混乱することなく円滑に
避難の
措置などを行うためには、平素から十分な
訓練を行っておくことが極めて重要であります。
政府案には、地方自治体による
保護措置の
実施に対して
原則として国費を充てることになっていますが、他方、平時において最も重要である
住民の
訓練や警報伝達
体制の
整備などに要する経費、あるいは
住民避難のための社会資本
整備など、あらかじめ講じておかなければならない各種
措置に要する経費については、国庫負担にかかる
規定が置かれておりません。
これらの費用は、自治体にとっては相当な負担となることが予想されております。平素における
訓練その他の準備
措置にかかる経費についても国において相応の負担を行うべきであり、その旨を
法律上も明確に
規定すべきと考えますが、総務大臣及び有事法制担当大臣の御所見を伺いたいと思います。(
拍手)
最後に、有事法制をめぐる本質的な問題について一言申し上げたいと思います。
有事法制の本質は、
国民の
生命、
身体を守るため、一時的にではあれ、時の
政府に
国民の権利を制約する権限をゆだねることにあります。それには、
国民の
信頼に足る
政府であることが大前提です。
しかし、小泉政権の現状はどうでしょうか。イラクでとうとい命を落とされた二人の外交官をめぐる情報操作の疑惑や、年金法案の
審議における総理大臣のあからさまな答弁拒否など、立法府が慎重な
審議を行うに当たって不可欠な情報や判断の根拠について、平時においてすら国会や
国民への情報
提供が十分に行われていません。情報がより錯綜する
緊急事態においてをやであります。まさしく、信なくば立たずであります。(
拍手)
私たち民主党は、一日も早く政権交代を実現して、
国民の皆さんが本当に
信頼できる
政府をつくり、私たちの手で
緊急事態法制の総仕上げをなし遂げる決意であることを表明して、質問を終わりたいと思います。(
拍手)
〔
国務大臣野沢太三君
登壇〕