○古川元久君 民主党の古川元久でございます。
私は、民主党・無所属クラブを代表して、ただいま
議題となりました
政府提出のいわば
年金不信拡大
法案とでも言うべき
年金関連
法案に対し、質問いたします。
なお、私も、
政府の答弁が不十分な場合には、与えられた時間の範囲内で、さらに
議論を深めるために再質問させていただく可能性があることをあらかじめ申し添えます。(
拍手)
まず最初に、私の質問に入る前に、今の枝野議員に対する
小泉総理の答弁に対して一言申し述べたいと思います。
総理は、
現行制度の延長線上の今の
政府案の中のそうした
改革案が、一元化された新しい
年金制度とあたかも整合性がとれるような、そういう発想をしておられるようでございますが、
制度を一元化するということは
現行制度に竹を接ぐようなものではないわけであります。全く新しい
制度をつくるわけでありますから、そもそも、こうした一元化された
制度と現行のこの
制度の延長線上に立った
政府案が両立することはあり得ないということをまず最初に申し述べたいと思います。
そして最初に、先日東京地裁で出されました、学生無
年金障害者に対し救済
措置が講じられなかったことを違憲とした判決に関して質問いたします。
まず
政府は、この判決を尊重し、控訴を断念すべきだと考えますが、
総理、いかがでしょうか。(
拍手)
この無
年金障害者問題については、
年金の
制度改革が
議論されるたびに常に大きな論点となりながら、抜本的な解決策が示されることなく放置されてきました。今回の判決は、こうした私たち立法府、
政府の姿勢に対し、司法から厳しい指摘がされたものと謙虚に受けとめなければなりません。したがって、
政府は控訴を断念するとともに、直ちに無
年金障害者問題に対し抜本的な
措置を講ずるべきであります。(
拍手)
昨日開かれました無
年金障害者問題を考える議員連盟においても、控訴の断念を求めるとともに、無
年金障害者に対して、今国会において法的な
措置を講じ、障害
年金を支給することが緊急に決議されました。この議連には百四十八名もの議員が参加をしており、その中には
与党も、
自由民主党四十五名、公明党十名が参加しています。
政府は、この超党派の議連によって示された緊急決議を真摯に受けとめるべきであります。(
拍手)
さらに、担当大臣であります坂口
厚生労働大臣は、既に一年半前に、無
年金障害者に対する坂口試案を発表しています。その中で、無
年金障害者は、本人はもとより、その扶養者である両親を初めとする親族等は高齢化が著しく、看過できない事態に立ち至っている、速やかに実態調査をして、これらの人たちへの対応を開始しなければならないと述べておられます。今こそ、その対応を開始すべきときではないでしょうか。(
拍手)
私は、議連の考え方に沿って、まず、
年金制度上欠陥の割合の高い、在日外国人、在外邦人、学生、主婦の四類型を優先し、
年金制度の枠内で、
障害基礎年金水準にできる限り近い
給付水準を設定する形でこの問題の解決を図るべきだと考えます。
総理及び
厚生労働大臣の
見解はいかがでしょうか。(
拍手)
このように考えますと、実は、この無
年金障害者問題に対してどのような解決策を示すかは、
年金制度そのものに大きな影響を与えるものであり、
法案の中身に含まれてしかるべきものであります。しかるに、
政府案には全く無
年金障害者問題への対応は含まれておらず、このままの
法案で
審議を進めれば、後から論理的整合性を欠くことにもなりかねません。したがって、この点をもってしても、本
法案は一度撤回し、この問題に対する解決策をきちんと示した上で出し直すしかないと考えますが、いかがでしょうか。
総理の
見解を伺います。(
拍手)
この無
年金障害者問題に象徴されるように、現行の
年金制度は余りにも多くの問題を抱え過ぎています。
政府案のように
現行制度の維持を前提とした
改革案では、こうした
制度の持つ矛盾や不公平がますます拡大し、
年金制度に対する
国民の不信感はますます高まります。私が今回の
政府案を
年金不信拡大
法案と称するのは、そのためであります。(
拍手)
今求められている抜本的
年金改革とは、
国民の間に蔓延している
年金不信を払拭する
改革です。
政府・
与党は、
負担と
給付の関係が
年金制度の根幹であり、今回の
法案はその部分を明らかにしたから
抜本改革だと言いますが、それは
年金制度上の数理計算の世界でのそろばん勘定の話であります。
年金制度に対し
保険料を払っているのは
国民です。幾ら机上のそろばん勘定が合おうとも、
国民感情として
保険料を払う気にならなければ、予定どおり
保険料は集まらず、結果的にそろばん勘定も合わなくなります。
国民年金の未納・未加入者の割合が四割にも上っているという事実は、まさにこのことを如実にあらわしています。にもかかわらず、
負担増と
給付減でそろばん勘定を合わせようとしているのであります。果たしてこれで、
国民感情として
年金保険料を払う気になるでしょうか。
総理は、この案で本当に
年金制度に対する
国民の不信が解消されるとお考えなのか、
総理の本音をお伺いいたします。(
拍手)
そもそも、
国民感情としてどうしても許せないのは、これまでの国会
審議や私たちの調査で次々と明るみになってきた、本来
年金給付に充てられるはずの私たちが納めた
年金保険料が、余りにもずさんかつ無
責任に使われてきたことであります。(
拍手)
グリーンピアに象徴される
年金福祉施設はもとより、さきの
年金掛金ピンはね継続法
審議で明らかになった事務費への
年金保険料の流用、そして、コンピューター経費まで福祉という名のもとに
年金保険料を使うことを可能にしてきた
厚生年金法第七十九条等の、我が党の長妻議員いわく何でも福祉法の存在など、調べれば調べるほど、あきれた
年金保険料の使い方が明らかになってまいりました。また、株式市場や債券市場での
年金積立金の運用でも巨額な含み損を出しています。にもかかわらず、これまでだれも何の
責任もとっていないのであります。
総理、一体、この流用、運用損の
責任は、だれがどのように負うのでありましょうか。
抜本改革と言うならば、まずはこの点について、
責任と今後の方策を明確にしてけじめをつけるところから始めるべきだと思いますが、いかがでしょうか。(
拍手)
政府・
与党は、今回の
法案の最大の売りは、
保険料水準を固定し、
厚生年金の
給付水準は
現役世代の収入の五〇%を上回ることを保障するところだと言っています。しかし、これが実現されるのは、これから十四年後、二〇一七
年度以降の話です。果たして十四年後、この約束は本当に守られるのでしょうか。
これまで
政府は、
年金改正のたびに、
負担増と
給付減を
国民にお願いしつつ、もうこれで大丈夫、大船に乗った気でいてくださいと、
国民を安心させて欺いてきました。ところが、次の
年金改正のときになると、済みません、人口推計などの推計が予想と違いました、このままだとこの船は沈んでしまいますから新しい船に乗りかえてください、今度の船こそ大丈夫ですと言って、新たな
負担増と
給付減を繰り返してきたのであります。この繰り返しが、
制度に対する
国民の不信を増幅させた最大の原因であります。(
拍手)
総理、そして坂口大臣、今度の船はこれまでの船と違って、将来穴があいて沈むことはないと、ここで
国民に誓えますか。誓えるとすれば、それはどうしてですか。明確にお答えをいただきたいと思います。(
拍手)
また、そもそも、
保険料を固定することと
給付水準を保障することとは両立し得ないはずです。入り口の
保険料水準を固定しながら、出口の
給付水準も保障するのは、どう考えても論理的にあり得ないと思うのですが、
総理の明確な御
説明を求めたいと思います。
この
法案で
国民にとって唯一確かなことは、これから十四年間にわたって、
保険料が毎年上がり続けるということだけであります。
今後十四年間に及ぶ
保険料引き上げは、
我が国経済、そして
雇用に大きなマイナスの影響を与えるでしょう。
保険料引き上げによる
国民全体の毎年の
保険料負担増は、一兆円から一兆二千億円に及ぶと言われています。好不況に関係なく、毎年これだけの
負担増を日本
経済は受け入れることができるのでしょうか。
保険料の
引き上げは、
厚生年金において、その半分を
負担する企業の
雇用や賃金体系にも大きな影響を与えます。
保険料負担の継続的な
引き上げは、賃下げやリストラ等、企業が社会
保険料負担を回避する動きをますます加速させるでしょう。企業は新規採用を控え、中途採用も一段と厳しくなるはずです。そうなれば、
年金の
支え手である若者が、
雇用機会そのものを奪われてしまう
状況が起きてしまいます。また、運よく働く場所を見つけられても、多くは低賃金に甘んじなければならないでしょう。
そうなれば、
年金保険料を
引き上げても、
年金保険料の収入総額が
政府が予想するようにふえるとは思えません。
政府は、こうした
保険料引き上げが
経済や
雇用に及ぼす影響をどのように分析しているのでしょうか。そして、
政府の
年金財政の将来収支
見通しは、こうした影響を踏まえたものとなっているのでしょうか。
総理と
厚生労働大臣の正確な答弁を求めます。(
拍手)
以上、
政府案の問題点のほんの一部分を指摘させていただきましたが、問いただしたい点はまだまだ数限りなくあります。にもかかわらず、これをもって
抜本改革案と称するとは、まことに笑止千万と言わざるを得ません。まさに
政府案は、
現行制度の維持にいつまでもこだわるがゆえに、みずから
年金制度に対する
国民の不信の連鎖を引き起こしているのです。
これに対して私たち民主党は、早くから、
年金制度に対する
国民の信頼回復のためには、
現行制度にかわる新しい
年金制度を構築するしかないと考えてきました。私たちは、すべての人が一つの
制度のもと、すべての人にとって
負担と
給付の関係が明確で、すべての人に最低保障がある、そんな新しい
年金制度を構想しています。
新しい
年金制度の
創設のためには、幾つかの大きなハードルを越えていかなければなりません。しかし、真の
抜本改革とは、こうしたハードルを高過ぎるから跳べないとあきらめるのではなく、高くても跳ぶという決意を決めて乗り越えることではないでしょうか。私は、新しい
年金制度の
創設は、できる、できないの問題ではなく、やる、やらないという意志の問題だと思います。そして、私たち政治家の役割は、まさにそうした決意を持って困難な
課題を解決することにあるはずであります。(
拍手)
その意味で、今回、司法から突きつけられた無
年金障害者に対する立法不作為という指摘は、立法府に籍を置く者として、私たちは極めて重く受けとめなければなりません。
したがって、
小泉総理は、まず本
法案を一たん撤回した上で、この問題に対する明確な解決策を示し、
年金制度の一元化のみでなく、それをも含んだ
法案を再提出すべきであります。それこそ、さきの総選挙で二〇〇四年の
年金抜本改革を政権公約として出した
小泉総理の最低限の
国民への約束履行であります。それなくしては、この
法案は欠陥
法案として私たちは断固リコールすることをここに宣言して、私の質問を終わります。(
拍手)
〔内閣
総理大臣小泉純一郎君
登壇〕