○岩國哲人君 民主党の岩國哲人です。
質問の前に、去る二十六日に六本木ヒルズで起こった、幼稚園を卒園したばかりの六歳の男の子が自動回転ドアに挟まれて死亡するという痛ましい事故に対して、遺族の皆様そして
関係者の皆様に対して、深くお悔やみを申し上げたいと思います。
さて、ただいま
議題となりました
道路関係四
公団民営化関係法案について、民主党・無所属クラブ、そして日本全国の
道路を愛する
道路族を代表して、
内閣総理大臣及び
国土交通大臣に質問いたします。(
拍手)
去る三月二十三日、いわゆるまちづくり
法案が衆議院本
会議で、我々民主党も
賛成し、成立いたしました。国土交通
委員会の
審議の過程において、三月十九日、まちづくりのあり方について質問した際に、石原
国土交通大臣は、都市再生の成功例として六本木ヒルズをお挙げになりました。
私はこれまで、アメリカに十年、ヨーロッパに十年、世界の各地におりましたけれども、長寿高齢社会にふさわしいのは、しっとりと、ゆったりとしたまちづくりという考えを持っていましたので、石原大臣が、
建設投資だけで二千九百億円、半年に訪れた人が二千六百万人という数字的、経済的な側面を強調されて、稚内から石垣までというサブタイトルのまちづくり
法案における成功例として六本木ヒルズをお挙げになったことに対して違和感を覚えました。さきの六本木ヒルズ事故が起きたのは、ちょうどその一週間後でありました。
人間らしさを忘れたまちづくりや建物が話題を呼び、人を集める現代の風潮を嘆かわしく思うとともに、新しく成立したまちづくり法の十分意を用いた運用を切に望むものであります。この点について、石原大臣の答弁を求めます。(
拍手)
この
道路公団の重要な収入源は
料金収入であり、その営業窓口は
料金所です。私は、三月十六日に、
内閣に対して質問主意書を提出しました。答弁書は十日後の三月二十六日に受け取りましたが、その
内容には驚くべきことがありました。
四
公団が所有する千二百十三の
料金所に対して、当初
設置コストについての回答が、
平成十三年
設置以降のわずか七十二カ所に限られていたことでした。担当者に問い合わせたところ、過去二年間のデータしか提供できず、それ以前のデータについては廃棄しているものさえあるとの回答でした。
民間企業では考えられないことです。ほんの五年前の営業収支に関する重要なデータが整備されていない、こんなことで果たして
道路公団の
民営化ができるのでしょうか。
民営化は、絵にかいたもちというよりも、絵にもかけないもちではありませんか。この点について、石原大臣の答弁をお伺いいたします。
二十兆円から十兆円へのコスト削減と政府は強調しますが、どこのコストが削減されたのですか。コスト削減と言うが、規格を下げただけであって、コスト削減はごまかしではありませんか。石原大臣から、規格を下げずにコストを下げた具体的な路線を挙げて
説明していただきたいと思います。(
拍手)
昨年の国幹
会議では、新
会社による整備、
管理が難しいと見込まれる区間がその対象として
提案されました。しかし、納税者の視点からは当然のことですが、採算性と利用度の低いD区間からではなく、高いA区間から整備を始めるべきです。この点について、石原大臣の見解を伺います。
国鉄は、昭和二十三年から企業会計に準拠し、減価償却制度を導入していますが、
道路公団については、財務諸表の存在さえも疑われています。こんなずさんな
民間企業が将来の上場を目指しているのは、到底考えられないことです。この点は、総理の見解をお伺いいたします。
民営化法案が提出された今日に至るまで、国土交通省からも
道路公団からも、収支見通しについては資料が提供されておりません。これから
民営化しようとするときに、シミュレーションもない
会社が納税者の信頼を受けられると思うのか。総理に、納税者の立場でお答えください。
民営
会社に対して
建設の拒否権を持っていないという点も大きな問題です。不採算路線に対してはっきりとノーと言える枠組みを持っていなければ、
道路建設に歯どめはかからず、引き続き不要な
道路建設が続くでしょう。この点については、石原大臣の見解をお伺いいたします。
七二年十月から高速
料金のプール制が始まりました。政府は、三十年で
返済し、その後は無料と
説明し、七七年三月二十二日の衆議院地方行政
委員会でも、三十年の間には全部償還をして、そのときには無料開放するという
原則は堅持すると答弁しています。その三十年後というのは、二〇〇二年十月のこと。その期限を前にして
民営化を小泉
内閣が言い出したというのは、
民営化という煙幕を張って敵前逃亡することにほかならないと思いますが、総理の答弁を求めます。(
拍手)
この
民営化法案を骨なしの
法案という批判があるが、四十五年という
債務返済の期限を切っているから骨がある
法案に間違いないと、自民党の幹部はテレビ討論で発言しました。
公団でさえ守れなかった約束を民営
会社がどうして守れる保証があるのか。期限があるように見えるだけで、やはり骨なし
法案ではないのか。総理の答弁を求めます。
法案には、不要な
道路建設をとめ
国民負担を最小化とか、
民間企業としての自己責任
原則の確立などという本来あるべき
民営化の理念が全く見られません。四十兆円の償還という制約は緩められ、
建設順位の選択肢は広がり、
民間企業への政府保証という資金調達法も与えられ、まさに、おんぶにだっこに肩車、国の財政は火の車。結局は、現在の四十兆の
債務をさらに拡大させ、
国民負担を増大させるだけであって、名ばかりの
民営化で国民を欺くものであり、改革の名にも値しないものです。この点について、総理の見解を伺います。(
拍手)
毎週末のように介護のために長距離高速を使って帰る中高年夫婦が年々ふえていることを総理は御存じでしょうか。しかし、住宅ローンの
返済を考えれば、お母さんの介護に帰る回数もせいぜい月一回に抑えなければならない。孝ならんとすれば住ならず、住ならんとすれば孝ならず。どのように公的サービスを
充実させようと、家族の親族介護にまさる介護はありません。職を求めて地方から大都市へ、そして、その職を守るためには、その都市に住み続けなければなりません。職を求め、職を守るための都市化現象はとまりません。職を守るか、親を守るか、深刻な悩みです。
長寿化現象と都市化現象の同時進行に政治がいち早く手を打ち、四十三兆円という高い税金を投じてつくった公共財を、
高速道路の「高」の字を親孝行の「孝」の字に変えて、長寿社会にふさわしい「孝速
道路」としてなぜ使えないのですか。貧乏人は一般
道路を使え、金持ちは有料
道路をというのではひど過ぎます。総理の所見をお伺いいたします。(
拍手)
そもそも
道路は、ローマの時代から、
軍隊を運び、国を他国の侵略から守るためのもの。例えば、日本が侵略された場合、
自衛隊をどれだけ早く派遣できるのか、その防衛線に
自衛隊が到着するまで一時間で行けるのか、六時間かかるのかでは、致命的な差が生じます。
道路の役割は、国を守る防衛のためだけではありません。基幹
道路は、災害時の人命を守るためにも必要です。九五年の阪神大震災のときに山陽側の
道路が壊滅したとき、それを救ったのは山陰側の細い国道九号でした。この国道は九州ナンバーや関西ナンバーの車に占領され、地元の車は横断することもできないほどでしたが、こんな状態をまた繰り返していいものでしょうか。
国を守り、人を守るのが
高速道路の何よりも大切な役割とすれば、それにふさわしい
建設優先順位と、それにふさわしい財源のあり方も議論すべきではありませんか。この点について、総理に伺います。
経済の先進国とか民主主義のお手本と言われるアメリカ、イギリス、ドイツでは全国どこでも高速無料となっていることを見れば、
道路を使う人から
料金を取るという日本のやり方が異常だということがよくわかります。海外では無料だからフリーウエー、日本は
料金が高いからハイウエー。(
拍手)
日本の歴史の中でも、江戸幕府は、
道路を整備し、寛永十二年に武家諸法度で通行料を禁止いたしました。
道路通行の
原則無料が確立したわけです。江戸時代には、大小合わせて全国に五十三の関所しかありませんでしたが、すべて無料で通行できました。ただし、山の中では通行
料金を取る人がいました。その人たちは山賊と呼ばれていました。もうそろそろ日本の
道路族も、山賊とは違うのだということを無料化を宣言してはっきりさせるべきではありませんか。(
拍手)
高速無料化によって、日本列島の中で最も付加価値の高い、いわば最もおいしい国土の背骨の部分が国民のメニューとして開放されることになれば、特に高失業率とミスマッチに悩む若い世代にとっては、最も働きたくなるような場所が
高速道路沿線部分であり、業を起こす起業対策、雇用対策として極めて効果的です。若い人の職場をふやし、子供や孫の就職に悩んでいる祖父母や両親の心配を減らすことこそ、見方を変えれば、国が高齢世代に対して実行できる最大の親孝行ではありませんか。
国を守り、人命を守り、親孝行のための介護の道を守り、若い世代の職を守るために
高速道路を活用し、親孝行の「孝」、「孝速
道路」に転換する、それこそが日本の親孝行の道ではありませんか。この点について、総理の所見をお伺いします。
この
民営化法案は、収支見通し、
債務返済の期限、将来の資本構成に対する考え方もあいまいであり、国民の大切な財産を委託するには抜本的改革と言うにはほど遠く、問題点が多過ぎます。抜本、抜本と強調される割にはバッテンが多過ぎるバッテン改革ではありませんか。(
拍手)
私だけが厳しい評価をしているのではなく、
提案をしている総理自身も、抜本的改革と言いながら、バッテンをつけておられます。岩手県遠野市で行われたタウンミーティングで、郵政は百点、
道路は一点という厳しい評価をされました。何が足りなくて九十九点の減点をしておられるのか、御
説明ください。
百歩譲って、総理の一点ぐらいという評価を民主党は受け入れるのにやぶさかではありませんが、
民営化推進
委員会の迷走、分裂、
機能停止という
事態を見ると、まさに二転三転、合わせて五点ぐらいの評価はあってもいいと思いますが、総理の意見をお伺いいたします。(
拍手)
内閣総理大臣が落第点をつけている
法案を国会に提出し、
審議させるのは、国会に対する侮辱ではありませんか。過去に
法案提出者がこのように落第点をつけた
法案の前例があったかどうか、衆議院
議長にお伺いしたいところですが、かわって総理に、御答弁ください。
次に、石原大臣にもお尋ねします。
二月二十八日の総理発言以後の閣議で、あなたは総理に抗議をしましたか。石原大臣の評価は何点ですか。あなたは合格点をつけますか。総理と大臣で意見が違う、閣内意見の不一致なら、
審議はできません。しかし、不一致でなく、大臣もこの
法案について総理と同様に落第点という同じ意見であれば、閣内意見の不一致は解消されますが、そのような
法案では、これまた
審議に入ることはできません。石原大臣の答弁を求めます。
この
民営化法案が矛盾だらけそのままに
提案されているのは、
道路に対する哲学に欠けているからです。
道路を単に経済的側面や採算性からだけとらえていることが、いわば、つくって何ぼという発想しかなく、使って何ぼという発想がない。そこに、有料制というしがらみから脱却できない原因があります。
日本経済が大きな転機を迎え、新しい国際競争の中で国民の仕事と暮らしを守っていかねばならないときに、これから四十五年間という長きにわたって五十兆円の公共資産を有料制という鎖につなぎ、千二百十三カ所の
料金所で囲い込み、日本の活力をそぎ落とそうとするこの
民営化・有料
法案に、我々は断固として反対するものであります。(
拍手)
我々民主党は、つくった
道路はみんなが自由に平等に使って元を取る、自由・民主を
道路で描けばこのようになるということを示す
高速道路基本
法案を自由民主党にかわって今国会に提出することをお約束して、私の質問を終わります。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小泉純一郎君
登壇〕