○佐々木(秀)
委員 これはやはりいろいろ問題があると思うんですね。先ほどの
辻委員からもお話があったけれども、高裁
本庁の所在地管轄の
地方裁判所という場合に、例えば東京だと東京地裁になるわけですけれども、東京地裁の
支部の問題もあるんですね。八王子
支部なんというのは本当に大きな、これは
本庁に匹敵する大きな
支部なので、本当はこういうところにだって裁判を起こせるようにしていいんじゃないかという先ほどの
辻委員の
指摘というのは考慮に値するものだと私は思うんですが、それと同時に、高裁の
支部はだめよというあたりがいろいろ、いかがなものかなと思うんですね。
確かに、少なくとも高裁であっても広がったということは、私は評価をいたします。
実は、私の弁護士経験の中でもあったことなんですが、もう十数年前に、私、東京から旭川、地元に戻りまして、弁護士登録をしたら途端に裁判の依頼があったんですが、それは遺族年金の受給についての裁判だったんです。
御承知のように、遺族年金については、正式な配偶者だけではなくて、内縁
関係にある配偶者についても受給権を認められているんです。それで、実質的な内縁
関係にあったというお年寄りのおばあさんだったんですが、その相手さんが亡くなられて、それで請求したら、どうも社会保険庁から却下をされて、例の審査などをやり、再審査も請求して、結局は社会保険庁
本庁から認められなかったものですから、社会保険庁を相手にする裁判を私が担当して、とりあえずは旭川の
地方裁判所に起こしてみたんですけれども、管轄違いということで、東京地裁に移されちゃったわけですね。
ところが、そんなおばあさんですから、経済的な資力なんというのは全くないわけで、札幌の地裁でやれるのであれば、電車で行き来もできますし、日帰りもできますから、何とか裁判もできるわけですが、東京ということになると、とてもじゃないけれども、航空機賃なんというのは請求できるような状態でないわけです。ただ、たまたま私はそのときに日本弁護士連合会の
理事もやっていたものですから、月に一回ぐらい
理事会があるので、これについては弁護士会の方から旅費が出るので、それで、そのときに東京地裁、
裁判所で。ただ、それが日にちが合わないとだめなわけですけれども、
裁判所も大変同情して配慮をしてくれまして、日弁連の用件で来る日に裁判をなるべく入れてくれるようにしていただいて、何回かやったんです。
最終的には私どもの主張をお認めいただいて、
判決ではなくて話し合いで認められたものですから、そんなに長くかからなくて解決したというようなことがあって、私としても、この管轄の狭さ、非常に実感していただけに、今度広がるのはよかったと思っているんです。
それと、実は今から五年前に、私、内閣
委員会で
理事をやっておりまして、いわゆる
行政情報公開法、これをつくったときに、やはり管轄が問題になりました。このときに、
行政情報公開に関する
訴訟も、これは
行政訴訟ですね、
行政庁を相手にするわけですから
行政訴訟の一種なんですが、この
法案の原案では、現在ある
行政訴訟法の管轄に準じる、こうなっていたわけです。だから、これもやはり
裁判所は東京地裁、
本庁所在地、
本庁関係だとすると東京地裁ということになる。これも、情報公開という非常に大事な、それこそ民主主義の要諦だと思われる大事な裁判、
国民の知る
権利ということから考えても大事な裁判を、こういうふうな
訴訟になった場合に狭い、使い勝手の悪いようなことにするのはいかがなものかというので、そこで裁判管轄の問題が
議論になりました。
いろいろ考えた末に、最終的には与野党で合意ができて、それで高裁所在地の
地方裁判所ということになったわけですが、実はそのときに、高裁の
本庁だけでなくて
支部まで入れるべきじゃないかという
議論をお互いに与野党間でやったんですね、院内で。何といっても、それには沖縄のことがあったわけです。
御承知のように、かつて沖縄が日本に復帰した場合に、沖縄にも那覇に高等
裁判所を設けるべきだという
要求があったんですね。地元からも非常に強かった。ところが、残念ながらそれが設けられないで、那覇に
地方裁判所は設けられましたけれども、高等
裁判所は福岡高等
裁判所の
支部ということで、那覇に福岡高裁沖縄
支部というのが設けられたわけですね。私どもは、北海道の場合にはおかげさまで、札幌高裁ということで、札幌の地裁に、管轄になりましたけれども、沖縄の人たちがこの
支部での
行政訴訟、そのときには情報公開
訴訟ですけれども、これが認められないとすると、結局は福岡高裁まで行かなければならないじゃないか、これはまた大変な手間暇がかかるじゃないかということで、何とか特例的に沖縄に認めることができないかということを考えたわけです。
実は先日、この
行政訴訟法の審議で塩野先生がお見えになりましたけれども、そのときにも塩野先生がいらして、現在の
行政訴訟法ではまだ管轄が広がっていないけれども、情報公開法での管轄を広げることはどうかと言ったら、それはもう国会の
考え方でいいんだ、特例として決めることはできるということで、それに我が意を得て、それで管轄の拡大を相談したわけですが、残念ながら、高裁の
支部まで広がらなかったんですね。
今度の
行政訴訟法の
改正の管轄の書きぶりは、まさに情報公開法の管轄についての書きぶりをそのままこっちに写しているように見られてならないわけです。僕は、順序が本当は逆だろうと思うんですけれどもね。これが先になっていたらそれに従ってということを、情報公開法の方でもそうだったろうと思うんだけれども、順序が逆になっているようなことがあるんだが、しかし、これも御承知のように、そういうような非常に真剣な
議論があったあげくに附則がつけられて、それで、情報公開法の四年後見直し、施行から四年後の全面的な見直しになっているんですけれども、その中で、特にこの裁判管轄の問題は優先的に見直すという順位までつけられているわけですよ。
そういうことから考えると、今度もこの管轄に高裁
支部を除いたというのは、どうもその辺からいうと問題があるんじゃないか、特に沖縄の人のことを考えると、特例をつくるということはできたんじゃないかと思ったりするんですが、この辺はどうなんですか。