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伊藤参考人 桃山学院大学教育研究所の
名誉所員であります
伊藤と申します。
急な話で、三日前の夜、突然電話がかかってきまして、余り十分に用意できていませんけれども、基本的な私のスタンスを言いますと、今回の
私立学校法の一部
改正については基本的に
賛成であります。
私の個人的な略歴を言いますと、一九七九年、昭和五十四年に
桃山学院の
短期大学の
教員になりまして、
短期大学時代は六年ほど
評議員を経験しましたけれども、
短期大学から
大学の方に移りまして、少し内情が、いろいろな内紛のようなものもありまして、
学部に移れず
教育研究所というところに身を置き、そして
教育の
関係の
研究と
労働運動をやってきました。もともとは
経済原論屋であります。昨年の三月に、三年越しの
案件ということでありましたけれども、
研究所を廃止しまして、
法人の都合にて
退職ということで、現在になっています。
今、
日本は、
私立大学、民主的だと言われています
桃山学院の私学の
経営でさえ、ある手続とある
補償金を積めば
大学の
教授の首も飛ばせる、そういう非情な
状況の中にあって、私に
発言の機会が求められたんだろうと思います。
私の個人的な話はこれだけにしまして、
内容について少し
意見を述べさせていただきます。
私立学校法は大枠を決めた
法律だという
認識のもとで、
文部科学省が出している
改正の概要の三本柱がありますので、その三つについて
意見を述べます。
まず、
財務情報の
公開でありますけれども、これは当然のことだと思っていますし、私が、今、
全国私立大学教職員組合の
中央執行委員長をやっていますけれども、私がかかわったいろいろな
運動でも、
理事会のというか、
理事長の
ワンマン経営、そういうものがありますので、我々の
主張として、
高校以下も含めて
財務情報は
公開しろという
主張でありましたので、この点についてはほとんど
異議がありません。
ただ、「正当な
理由がある場合を除いて、」だと、
関係者に
情報公開するということですけれども、この「正当な
理由」というところをきちんと、
法律の中では明記できなくても、
運用細則か
運用規則か何かのところで具体的な事例を挙げておいた方がいいのではないか。
なお、
大学設置審の報告によりますと、プライバシーにかかわるもの、
退職金が明らかになるようなものだということがありますので、それはどこかで明記した方がよろしいのではないかというふうに思います。
その次に、ささいなことですけれども、四十七条の二項に
財務情報の
閲覧の話が出てくるわけですけれども、この
閲覧がいわば公表であります。これに対して、六十六条の四号でそれに違反した場合の
規則が載っていますけれども、ここのところに、いわゆる
閲覧という項目がなくて、ほぼ旧
規定そのままになっているというのはちょっと解せない。備えつけているんだからいいではないかと言われそうですけれども、そこら辺は少し気になったところであります。
さて、大きな柱の二本目でありますけれども、
私立学校審議会の
構成の見直しという、これが
最初のところに出ています。旧
規定は非常に細か過ぎるというふうにも私も思いますけれども、今回の
改正案は余りにも大まか過ぎるのではないかという気がいたします。「
教育に関し
学識経験を有する者」であれば
知事はだれでも任命できる、いわば
知事に
自由裁量権を与えてしまっていますけれども、これは何らかの形で歯どめをかけた方がやはりよろしいのではないかと思います。
ただ、旧来の
規定のように、
私立学校の
関係者が四分の三を占めるというような決まりは、そこまではなくてもいいのではないか。少なくとも半分か、半分に近いぐらいのところまで
私立学校の
関係者をということだと思います。
きのう初めてもらった
資料なんですけれども、
衆議院調査局文部科学調査室の詳しい
資料をゆうべ読んでいますと、いわゆるこれが出てきた
背景がやっとわかりまして、
総合規制改革会議で出てきたと。新しい
学校をつくるときに、この
設置審議会の
委員構成が障害になって新しいことができないということですけれども、そういう
意見があって、急に出た、
大学設置審の方では審議されていないものが出てきている、そこに少し疑問を感じます。たとえ
総合規制改革会議で案が出たとしても、ここまで
自由裁量を与えるという必要はないのではないかというふうに思います。
三本柱の三番目、
最初の柱で、今、
安西先生も詳しく言われましたけれども、いわゆる
管理運営、
学校法人における
管理運営構成についてであります。これについても、基本的に
賛成であります。
現行法は、
理事会、法定化されていませんのを法定化したということは非常に意義があるということだし、各
担当理事を
理事の
担当領域を決めて、それを担保にとって登記するという形をやるのも、
責任の所在をはっきりするという
意味で非常にいいことではないかと思っています。また、
監事が旧
規定では
評議員を兼ねられましたけれども、今回は兼職を禁止したということも
監事の
機能を高める上で非常にいいことではないかと思います。
そういう
意味で、今度の
法改正は、
私立学校の
経営上のガバナンスといいますか、いわゆる
責任体制を明確にしたという
意味で評価できるというふうに思っています。
反面、最近、
国立大学法人法の
改正でもそうでしたけれども、
教授会について何も触れないということがいささか気になっていることであります。旧
規定も
教授会については何も触れていませんけれども、
管理運営面の強化をうたったとすれば、反面、
教授会の軽視につながるのではないかという
意見、批判は必ず出てくるのではないかというふうに思っています。この問題についても考えていただきたいということであります。
最大の問題は、いわゆる
私立学校で、我々が
運動をやっていき、好んで
運動をやっているわけではありませんけれども、どうしても
労使紛争というのが多発していまして、だれかが
救済に行かなければならないから
救済に行くわけですけれども、そのときに、特に、
大学というよりは
高校のレベルのところで、
理事長ワンマン経営、
同族支配、
世襲支配と言われている、これに対して
チェック機能が働くのかということであります。
今度の
法改正によって、
外部から
理事を入れ、
監事を入れ、
評議員を入れる。しかしながら、そこで、
外部者による
チェック、
監事による
業務監査で
チェックをする、
評議員会のところで
チェックするということがありますけれども、
外部からの
人間で果たして
チェックがきくのか。つまり、その
人選が
理事長及び
理事会の
有力者によって決められた場合には、
チェックがきかないのではないかという懸念があります。つまり、
人選の問題があります。
大学の
評議員会で、
桃山の場合は、私は大変よかったと思っています。自分も
評議員やりましたので、それほど問題があるとは思っていませんけれども、いろいろなところで聞いた話、体験した話で言うと、
同窓会支配によって
評議員が事実上
機能しなくなる、そういうところがあるわけで、
同窓会の、いわゆる卒業生から必ず選ぶという
規定がありますけれども、そこら辺、つまり、どういうふうにやってもうまくいかない面はどうしても残る。そういう
意味におきまして、何らかの形の
公的チェックがやはり必要なのではないか。これは
私立学校法の中で書くか書かないかは別にしても、そういう問題は必ず起こるだろうというふうに思います。
なお、
財務情報の
公開でありますけれども、これは大変結構なことですけれども、新しい事態としては、今
定員割れを起こしておる
大学で、合格者数も言わない、
入学者数も言わない、秘匿して
情報を流さないと言われておるところがありまして、ここが
財務情報が流れることによって、どれだけの
入学者があったかということが明らかになってきて、悪くなるところは、ますます
定員割れのところは
定員割れになるだろうというふうに思います。
したがって、それに対してはどうするのかということも、やはり
法律の
議論を超えて政策を立てる場合には考えていただきたい。
労使紛争の問題を
文部科学省に持っていきますと、必ずうちの話ではないというふうに言われますけれども、世間の人は、
設置認可をしたんだから、解散の権限を持っているんだから、その間の
紛争のところも何か処理してほしいというふうな要望がたくさんあるということだけお伝えいたします。
時間をオーバーしましたけれども、これで終わりにします。(
拍手)