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小野田参考人 私は、社団法人
日本PTA
全国協議会で常務
理事をしております名古屋市立小中
学校PTA協議会会長の
小野田と申します。よろしくお願いいたします。
本日は、
義務教育費国庫負担法及び
公立養護学校整備特別措置法の一部を
改正する
法律案に関して、私たちの意見を述べさせていただく機会を与えていただいたことに感謝申し上げます。
私たち
日本PTA
全国協議会は、
子供たちの健やかな成長を図るためには、家庭、
学校、地域がそれぞれの
教育機能を十分に発揮し、ともに手を携えて連携していくことが不可欠との認識に立って、
全国の一千百万会員が力を合わせて、二十一世紀を担う心身ともに豊かな青少年の育成を目指し、さまざまな活動を行っております。
現在、国や
地方にあっては、
教育の
構造改革の名のもとに、戦後最大とも言われる
教育改革が進められており、私たちPTAも、このような取り組みに大きな期待を寄せるとともに、家庭や地域の
教育力を高めるため、PTAとしての
役割を果たそうと努めているところでございます。
しかしながら、その一方で、一昨年来、いわゆる
三位一体の
改革として国庫補助
負担金の
見直しが行われており、
義務教育費
国庫負担金についても、この廃止をめぐる
議論が行われていることに対しまして、大きな不安を持っております。
きょうは、この
義務教育費国庫負担制度についての私たちの基本的な
考え方を述べさせていただきながら、この
法律案に対する意見を申し上げたいと思っております。
まず、
義務教育費国庫負担制度についてでございますが、申すまでもなく、
教育は国家の礎であり、その中心となる
学校教育においてしっかりとした
教育が行われることが大切であります。とりわけ、
義務教育は、
憲法上の重要な
国民の義務であり、また同時に、
憲法がすべての
国民に対して保障している重要な権利でもあります。
憲法第二十六条は、「すべて
国民は、
法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく
教育を受ける権利を有する。 すべて
国民は、
法律の定めるところにより、その保護する子女に普通
教育を受けさせる義務を負ふ。
義務教育は、これを無償とする。」とし、
教育を受ける権利及び
教育の
機会均等、
義務教育無償の原則を定めていることは御承知のとおりです。
すなわち、この
憲法の要請に基づいて、
義務教育については、
全国のどの地域でも、山間部や離島でも、人口の密集した大都市でも、すべて
子供たちに無償で一定
水準の良質な
教育機会が保障されていなければならないものと
考えております。
このため、
全国のどの地域の
学校にもすぐれた
先生が必要数確保され、
子供たちにしっかりと向き合ってきめ細かい指導が行われるように、国が
教職員給与費の二分の一を
負担する
義務教育費国庫負担制度が設けられているものと
考えております。
しかしながら、残念なことに、現在、この
義務教育費国庫負担制度が危機にさらされております。この
制度は、
義務教育の実施主体である
地方を国が支える
制度であって、決して国が
地方を縛る
制度ではなく、実際にどのような
先生を何人採用し、各
学校に何人の
先生を配置するかはすべて
地方の判断にゆだねられていると聞いております。なぜか
地方を縛るむだなひもつき補助金として一くくりにされ、さらにその
金額が最も大きいことなどから、補助金廃止の
議論の焦点になっております。
この
制度が廃止されれば、
地方財政における
義務教育費の確保が困難になり、
教員数の削減による
教育水準の低下や地域間格差の拡大のおそれがあり、特に
財政基盤の弱い
地方にしわ寄せが行くことは必至です。
改革は大切でありますが、初めに廃止、削減ありきではなく、
日本の
子供たちの未来にとって何が大切であるかを大人の
責任としてきちんと
議論しなければならないと
考えております。
私たち
日本PTA
全国協議会といたしましては、
義務教育費国庫負担制度をぜひとも堅持していただきたいと
考え、昨年六月には、内閣
総理大臣を初めとする関係者に対し、この
制度の堅持を求める要望を行うとともに、十二月には、他の
教育関係団体とともに緊急要請を行っております。
義務教育費国庫負担制度に係る今回の
見直しにつきましては、昨年六月に政府が取りまとめた
経済財政運営と
構造改革に関する
基本方針二〇〇三を踏まえたものであり、政府全体として、国庫補助
負担金について国として真に
負担すべきものに限定していくという
方針により、
国庫負担の
対象経費から
退職手当と
児童手当を除こうとするものと承知いたしております。
この
退職手当と
児童手当につきましては、その性格において他の
給与と異なるものであり、これを
国庫負担の
対象外としてもすぐれた
教職員を必要数確保できるという判断をされたと聞いておりますが、一つだけ懸念されたことは、
退職手当等に見合う分につきましてきちんと財源措置がなされるかということでございます。
しかしながら、
退職手当や
児童手当に要する
経費については、
総務省が
創設する税源移譲予定特例交付金によって、都道府県が支給するために必要な額の全額が措置されるということでありますので、その適切な運用を信じ、今回の
法案につきましては、政府全体の
方針に沿った措置として容認できるものと
考えます。
また、
義務教育費国庫負担制度の
改革として、平成十六年度から総額裁量制という
制度が導入されると聞いております。説明を伺う限り、
教職員給与費の二分の一を国が
負担するという
制度の大枠はあくまで維持した上で、
負担金総額の範囲内でその使い道を都道府県にゆだねるものであります。これにより、
教職員の
給与や配置についての
自由度が高まるとのことであり、私たちも、
地方の実情に合わせたきめ細かな
教育ができるということについて大きな期待を寄せております。
鳥取県の片山知事が、これまで
地方の自主性を阻害するとして批判してきた
義務教育費国庫負担制度が総額裁量制により非常によいものになった、廃止にならないから
改革が進んでいないというのではなく、本当に
地方の自主性を増すような
改革であればそれを評価して受け入れたらいいという旨の発言をなさっていると聞きました。まさにそのとおりだと
思います。
昨年十一月に、
全国知事会として、この
義務教育費
国庫負担金の廃止を含む提言を取りまとめられました。私たちは、そのことに対し、強い危惧の念を持ったところでありますが、その後、総額裁量制の導入が明らかにされ、各都道府県知事のお
考えも昨年とは大分変化してきたのではないか、片山知事の発言はその一つのあらわれではないかと少し安心しております。
もともと
三位一体の
改革は、
地方がみずからの創意工夫と
責任で政策を決め、自由に使える財源をふやし、自立することができるようにすることにその
目的があります。その
意味においては、総額裁量制はまさに
三位一体の
改革の
目的に沿ったものと言え、
改革の名に十分値するものと
考えられます。
ぜひ、
義務教育の
水準に必要な
教職員給与費の総額を確保しつつ、使い道を
地方にゆだねるという総額裁量制を
実現し、
制度の
充実を図っていただきたい。そうすることによって、
義務教育費国庫負担制度の必要性について、都道府県知事、市町村長の理解が得られるものというふうに
考えております。
最後になりますが、現在、
義務教育費に係る
経費負担のあり方については、中央
教育審議会において
義務教育制度のあり方の一環として検討が行われているとのことですが、私たちが望むことは、中央からの高みに立った
視点、統計上の数字だけではなく、離島や僻地の
学校で学んでいる
子供たち一人一人のことも忘れずに、慎重に検討を行っていただきたいということでございます。
もとより、
全国組織であります
日本PTA
全国協議会の
立場からも、現行の仕組みを完全と言うつもりはなく、地域や
学校の創意工夫を生かした
教育をより一層可能にする柔軟な
負担金
制度に
改革していくこと、そして
教員の資質を一層向上させることは必要と
考えますが、
義務教育費を確保するという国の
責任を放棄し、すべてを
地方の
責任に押しつけてよいというのは大きな問題ではないでしょうか。
子供たちは、育ち学ぶ場所をみずから選ぶことはできません。
教育政策を選択することもできません。夢ある
子供たちの未来へ
責任を持つことは、私たち大人の義務です。我々
日本PTA
全国協議会としては、
義務教育費国庫負担制度をぜひとも堅持していただきたいと
考えております。
昨年十一月、
全国知事会が
三位一体の
改革に関する提言を取りまとめるに当たって、梶原会長から、拙速でまとめなければならない旨の発言があったと聞いておりますけれ
ども、国においては、決してそのようなことがないように、慎重に慎重を重ねて十分に
議論をしていただいた上で結論を出していただくことを切に要望申し上げまして、私の意見を終わらせていただきたいと
思います。
どうもありがとうございました。(拍手)