○首藤
委員 この問題に関しては、そういう経済制裁、政策手段の問題もいろいろ言いたいわけですが、私は、最後の
外務大臣のおっしゃったことに大変強い抗議をしたいと思っています。
私は、二年前、十二月に
イラクへ行って、その当時、また戦争になるかもしれないということで、当時のナンバーツーと言われたラマダン副大統領にも会って、戦争を回避する道はないかということを話しました。
そのときヨルダンで私を出迎えてくれたのが、井ノ上さんという若い二等書記官でしたね。彼は何をやっていたかというと、彼が言うには、イージス艦をインド洋に送って以来の今のアラブ社会、中東社会における
日本への疑惑の目と反発というのは物すごい勢いで広がっている、このヨルダンでももう危なくなってきていると。私は湾岸からずっと入っていったんですが、その湾岸でも、ドバイなんかで、地元紙の中には
日本非難というのがたくさんあるので、驚いて、そういう話をしたんです。
井ノ上さんは、本当にそのことを気にかけておられて、イスラム圏、アラブ圏において
日本に対してどれぐらい反発が高まっているかということを、ずっとデータや記事を集めておられました。そして、私にも送っていただいた。それが、その後も何度も会いましたけれども、井ノ上さんに対する私の思い出ですよ。その車の中で話した会話を思い出すと、私は本当に胸が熱くなる思いがするんです。現場に行っている外交官が本当に
日本の行く末を案じて、本当にいろいろ調査をしてやっているということに対してですね。
それは
外務大臣としてそうおっしゃるような言い方しかないのかもしれませんが、私は、違う、今、世界の中では、
日本が築き上げた信用というもの、評価というものはもうがらがらと崩れてきていると。私
自身も三十年前にはアルジェリアで働く商社マンでしたけれども、そのころと今ともう本当にさま変わりです。ですから、私は、まあ
大臣、そういうふうに立場上おっしゃるんでしょうが、ぜひその点は
事態を深刻に
承知していただきたい、そういうふうに思います。
なぜ私がこうしたパレスチナの問題を取り上げているかというと、実は、紛争地というのはこういうものなんですね。例えば、
外国が攻めてきて、敵国、それからこちらは守っている国、こういう形ではなくて、そこでは、さまざまな理由で実は敵味方入り乱れるんです。これは体験してみないとわからないんですが、私が行った紛争地はほとんどそういうふうにモザイク状になってきているんですね。守っている方も決して一枚岩ではないんですよ。一つの民族として、同じ民族なのに、いろいろな理由で実はモザイク化していくんですよ。
ですから、ある
意味で、イスラエルのように、パレスチナとイスラエル、これはある程度民族も宗教も違うからはっきりしているんですけれども、民族も宗教も全く同じでも、実はいろいろモザイク化していくんですね。そして、そこには紛争があり、お互いにスパイがいて、非常に複雑な紛争が行われるというのが現実だというんですね。ですから、私は、その
意味で、この
国民保護法制などにこのイスラエルの現状を見ながら私たちの問題を
考えるというのは、非常に有意義なことだと思っております。
さて、中東において最近大きな問題がありまして、それは
日本人の
人質、特に
武装勢力に拘束された三名の方がまず
解放されたわけですが、この方々たちが帰られたら、
自己責任、
自己責任というふうにおっしゃる方が多くて、それから、お金がかかったんだからお金を賠償しろとか、賠償できないまでも幾らかかったかお金を出して突きつけろとか、こういう
意見がたくさん出てくるわけであります。
私は、これはちょっと違うんじゃないかと思うんですね。例えば、
外務省の不作為というのは何か、
外務省の
自己責任というのは何かということも問われなきゃいけない。
例えば、今まで私も、いろいろ
邦人の
保護にはずっと
外務省と一緒に働いてきました。私たちの悲願は、領事
移住部領事第一課とかそういうふうに言われていたものが、
邦人保護課が出てきている、そしてやがてそれが局になる。これまで、私も微力ながら
外務省の発展のために尽くしたつもりですが、ようやく
外務省の構造改革によって領事
移住部というものが領事局として取り上げられていこうと。
それはなぜそうなのか。それは、今までは、小さい
外務省で、余り
邦人のことも面倒見られませんよ、皆さん、パスポートをなくしたとか、物をとられたとか、事故に遭ったとか、いろいろ言うけれども、
外務省だってもう手いっぱいなんですよという話から、いや、そうじゃない、これからの冷戦後の
外務省というのは、むしろ市民サービス、市民の国際化へのサービスだということで、領事
移住局というものをつくろうという動きになってきたんです。
ですから、まさに市民がいろいろな活動をして、それはある面ではリスクのあるところもある、そういうことをして、それも大きく取り込んでいくというのが領事局でありまして、これに対しては膨大な税金をつぎ込み、もしそういうことが、そんなことは
自己責任で勝手にやれと言うんだったら、では、領事局はもうやめて、もう一回領事
移住部に戻すなり、あるいは
邦人保護課に戻すなりすればいいんじゃないかと私は思うんですね。
退避勧告に関しても、何回も何回も出している、これはお上の発想ですよ。勧告を出せばいいというものじゃないですよ。やはり、実際にそういうふうに行こうという人をとめたら、それはその人へ向かって説得しなきゃいけない。例えば私なんかが
イラクへ行こうとすると、わあっと人が来て、
先生が行くんだったらCPAに通告しますよとか、いろいろおどしをかけてくるじゃないですか。
だから、もしこういう、
アンマンからバグダッドへ行こうという人がいたら、もう
アンマンのタクシープールというのはどこか決まっているんですよ。
アンマンの
日本人が泊まるホテルというのは決まっているんですよ。あるいは国境で、そこを必ず抜けていくんですよ。バスのプールも決まっているんですよ。そこの人に
連絡したら、大使館へ
連絡してくれと言ったらすぐ
連絡が来る。そこで、ちょっと待ってください、もう一週間待ってください、今ファルージャで作戦やっているんでしょう、あなたの通るところはラマディ、ファルージャ、バグダッドのルートですよ、だから一週間待ってくださいと言えば、それはとまらない人もいますよ、私もとまらないかもしれないけれども。今回の若い人だったら、それはやはりもうちょっと
考えようということになるんですね。
ですから、その
意味では、
外務省の不作為というものも非常に大きい。
ですから、ぜひお願いしたいのは、
退避勧告というのは、一般旅行業者、旅行に行く一般旅行業者には
退避勧告で十分なんですよ。あるいは一般旅行会社には、ホームページに書いてあるじゃないかと言えばそれで十分なんですよ。しかし、今こういう社会の中で、CNNを見たり、アルジャジーラを見た人は、それはその地域と一体化するんですよね。そういういろいろな市民がいるところで、
退避勧告だけやっているというのは私は大変問題があると思うんですね。
それから、もう一つここでお聞きしたいのは、では
外務省は、
自己責任、
自己責任とおっしゃいますが、どこまでその解決にやるべきかということですね。
これは実は非常に興味深いのは、二〇〇四年度の外交青書において、人間の盾になられた方に関して、
外務省の方がいろいろ、ちゃんとそのコーナーを設けて、
外務省がどう
対応するかということを書いてあるわけですね。ですから、
外務省は、
自己責任でいこう、もうそんなのは勝手にやりなさいと言いながら、一方では、最後の駆け込み寺としての役割があるじゃないか、ここに
外務省の新しい役割があるじゃないかみたいなことを外交青書にちゃんと書かれているんですよ。
ですから、これからも恐らく出てくると思いますけれども、こういうところの
人質が、拉致事件があったら、一体どこまで、どの程度
外務省は関与に努力すべきかという、その基準をぜひ
外務大臣にお聞きしたい。特に、
人質が
解放されて、バグダッドに残りたいという方もおられましたけれども、そういう方も全部連れてきて、その飛行機代も払えというのはいかがなものかという
考え方もありますけれども、その辺のガイドラインをぜひ
外務大臣にこの際聞いておきたいと思いますので、よろしくお願いします。