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両角参考人 皆さん、こんにちは。私は、東北大学の大学院におります
両角と申します。どうぞよろしく
お願いします。
お手元にレジュメを用意させていただいていますけれ
ども、私の
農協に関する思いといいますか
意見というのをこの
機会をかりて述べさせていただきます。
まず、今回の
農協法の
改正案を拝見しますと、昨年出されました
農協のあり方に関する
研究会、今村さんが座長をされていましたようですけれ
ども、それを踏まえてつくられているということで、私は、今後の
農業、
農村の
発展を考える上では非常に大事な
法案であるというふうに思います。しかし、今の
農業、
農村を取り巻く状況ということを考えますと、まだまだ非常に不
徹底といいますか、これからやることがかなりあるのではないかということで、私の考えておりますところを一応、きょうは三点ほど申し上げて、皆様の御
参考になればというふうに思います。
まず一点は、
農協というのはその時々の目標、目的というのがあって今まで存在感を持ってきたということです。
今の
農協は、大体現在の
農協の形になったというのが、
昭和の戦前期ですね、
昭和十年代ぐらいなんですけれ
ども、そのときに今の
農協の形ができています。その形というのは、農家が一〇〇%
農協に入っているということ、それから、もう
一つは総合
農協、いろいろな
事業をしているということですね。これは、一九三〇年代に、日本の農家が非常に貧しい時期、貧困問題にあえいでいる時期に
農協を確立して、そこから脱出しようとした。
その後、高度成長に至るまで、日本の
農協の最大の
課題というのは、ないしは日本の
農業問題の最大の焦点というのは、農家の貧困ということであったわけですね。これは高度成長のときにほぼ解消しまして、そして、その後に問題になったのが、
昭和五十年代以降問題になったのが、今日新
農業基本法で問題になっております自給率の低下とか
担い手の不足とか中山間
地域の衰退とか多面的
機能の後退、こういうことです。
この問題は、かつての農家の貧困問題に比べると、より深刻な問題なわけですね。それは、日本に
農業が維持できるかどうか、そういうことをあらわした問題というのが今日の問題であります。この問題に
農協がどう
対応するか、そもそも
農業そのものがなくなってしまう、これに
対応するのが今日の
農協の使命になるのではないか、これが第一点でございます。
それから第二点は、
農業というのは、工業の論理と違って本当に自然に優しい、そういう生産をできる、もともとそういう性格を持った産業なわけです。しかし、今は工業の論理に従って、
農業もほとんど工業と同じような状況になっている。例えばお米をつくるにしても、昔は太陽の恵みでお米をつくったわけですけれ
ども、今はそうではなくて、石油の恵みでつくっているわけですね。
今の
農業に使っているエネルギーの七割、八割は石油を使ってやっております。そして、
農業に投じたエネルギー以上のエネルギーが本当は
農業から出るはずなんですけれ
ども、今はその逆で、
農業に投じたエネルギー以下のエネルギーしかとれない。これは機械化とか化学化とかを進めた結果でありまして、早くこういうことから脱しなければ、
農業も工業と同じように、地球の環境問題の悪化を助長する、そういう産業にならざるを得ないというのが現状です。
それで、積極的に
農業は今の環境問題を解決する。例えば、
農業というのは、今最大の特技は、
農業が自然エネルギーを供給できる。バイオマスエネルギーというのは石油の十倍あるんですね、地球上に。これはただ、広く存在しているために非常に
コストがかかります。ですから、とても石油にかなわないわけですけれ
ども、本当に人類がこれから存続していこうとすれば、例えばバイオマスエネルギーを使う、それによって地球の温暖化を防ぐ、こういうことをしなければいけないわけですけれ
ども、
農業というのは、そういうことにもし真剣に取り組めば、世界の環境問題は解決できる、特に自然エネルギーを供給することによって解決できるというふうに考えます。これが第二点目です。
それから、第三点目なんですけれ
ども、今、
農協法の
改正で、
基本的には総合
農協を前提にして
改正を進めておるわけです。総合
農協は、
先ほど申し上げましたように、既にこの形態は
昭和戦前期に大体
基本的にできたわけですけれ
ども、どうもこの形ではやっていけないのではないか。
部門別採算性ということで
経済事業を黒字にしようという努力は大変高く私は評価しておりますけれ
ども、ただ、現実にはこれはもうほぼ難しいというので、相当大幅にこの
体制を変える必要があるだろうというふうに思います。
私は、このレジュメにちょっと書いて、後で御興味があれば私の書いたものでも読んでいただければいいんですけれ
ども、
基本的には、今の総合
農協は一緒にどんぶり勘定でやっているのを、分けようというのが今の考え方なんですけれ
ども、それをさらに、もっと
基本的に分けてしまう。
農協を
事業農協とコミュニティー
農協、地区
農協みたいなものですね。日本の
農協というのは集落をベースにしておりますので、集落をベースにして活動する
農協、これをコミュニティー
農協と言っていいと思いますが、今の
合併農協でいえば、旧支所とか昔の
事業所みたいなものに当たるぐらいの単位、小学校の単位ぐらいを考えておりますけれ
ども、そういう活動をする
農協と、それから県単位ぐらいの大きさで
事業をする
農協、こういうふうに分ける。
そして、そう分けることによって農家は参加意識を持つことができますし、分けることによって
事業の効率を求めることもできるということで、それをネットワークで結んでいくような、決してばらばらにするということじゃありませんが、それを
一体にして
運営する。しかし、
基本単位をきちっと決める。そういう
意味で、
事業農協とコミュニティー
農協、イメージ的にいけば、
一つの県ぐらいの単位の中に二十とか三十ぐらいのコミュニティー
農協があって、
一つか二つ、ないしはそれぞれ
事業ごとにあってもいいと思いますけれ
ども、
事業農協を設ける、そんなようなことを組み合わせて
事業をしていく。
これは、スペインにモンドラゴンというおもしろい協同
組合がありまして、百八十ぐらいの協同
組合が
一つの協同
組合ネットワークをつくっておりまして、これは町そのものが協同
組合なんですね。そういうものがありますけれ
ども、そういうものを形態的には
参考にできるんじゃないか。この中には御存じの方がいらっしゃると思いますけれ
ども、私は、形態としてはそういうものを少し
参考にしてこれからの
農協のあり方を考えてはいかがかなと思います。
それで、私は、
農協をこういう
体制に持っていけば、
先ほど申し上げましたような、
農業の新しい役割、
農業からエネルギーを供給して、そして環境問題を解決する、こういうことに積極的に関与できるのではないかと思います。
実は、私は今、岩手県環境ネットワークというネットワークを主宰しておるんですけれ
ども、その仕事を本当は
農協にやってもらいたい。
農協が、本当に元気のある
地域をつくっていくというところの中核になってもらいたい。そのために、新しい目的をしっかり定めて、そして
体制を整える、こういうことを
長期的に考えていただきたい。今回の
改正をその一歩として高く評価しております。
以上でございます。(
拍手)