○佐々木(憲)
委員 最終的に常用
雇用、安定した
雇用へつなげていくということが大事だということは、私もそうだと思うんですね。そのためには、やはり
企業自身の経営戦略といいますか、あるいは
企業自身が社会的責任をどう自覚して取り組むかということが大事だと思うのでありまして、どうも、私
どもの見る限りは、
日本の大
企業はその点が極めて不十分であるというふうに思うんです。やはり、これは
日銀の責任ではございませんが、
政府の責任としてそういう点を、
政策的にも
企業に対してしっかりと、
雇用の拡大、賃金の引き上げということを要請すべきだ、あるいは、制度的にも法的にもそういう仕組みをつくるべきだというふうに我々は
考えております。
さて、それで、次に貯蓄
動向でございますけれ
ども、先ほ
ども少し
議論になっておりましたが、GDP統計で見ますと、
日本の家計貯蓄率というのは一九七〇年代半ばには二〇%を超えていた時期がありました。しかし、二〇〇〇年代に入ってから貯蓄率が急速に低下をしまして、二〇〇二年度には六・四%、過去最低を記録したわけです。二〇〇三年度になりますとさらに落ち込んだのではないか、こう言われているわけです。
日銀の資金
循環勘定で家計の資金過不足を見ますと、二〇〇三年には一兆円の資金不足である。これは、これまで経験したことのない事態だということでございます。
なぜ貯蓄率が急速に低下したかということでありますが、これはいろいろな要素があると思うんですけれ
ども、例えば、
政策的な
要因というのが非常に強いというふうに
民間の研究所で分析をしておりまして、これはニッセイ基礎研究所
経済調査部門のレポートですけれ
ども、こういうふうに書いているんですね。
「高齢者の貯蓄取り崩しの拡大には、厚生年金定額部分の支給開始年齢が、二〇〇一年度以降徐々に引き上げられていることが
影響していると
考えられる。」要するに、定年になって以後、すぐ年金はもらえないものですから、その年齢が引き上げられる間貯蓄を取り崩すというのが急速にその時点で起こった。
「厚生年金定額部分の支給開始年齢引き上げのスケジュールでは、二〇〇一年度以降に六十歳となる男性の支給開始年齢が六十一歳に引上げられた。この
影響は二〇〇一年度と二〇〇二年度に表れ、」「二〇〇四年度以降は支給開始年齢が六十一歳から六十二歳に引き上げられるが、この
影響が二〇〇四年度と二〇〇五年度に表れるために、世帯主年齢六十歳以上の世帯の貯蓄率のマイナス幅がさらに拡大する
可能性がある」、こういうふうに言われております。
さらに、それだけではなくて、こういう
指摘もされております。今回、年金制度の改正案が、強行されたと我々言っているわけですけれ
ども、参議院で通った。そうしますと、「十月からは厚生年金保険料が毎年引き上げられる」ということになり、これに加えて「配偶者特別控除の廃止による税負担の
増加が二〇〇四年末には明確になるなどの負担増から、可処分所得の伸びは限られる。」こういうことで、高齢者世帯もそうでありますが、現役世代の負担増というものがこれから確実に現実化していく。そのことが、従来は
日本は貯蓄率は高かったわけですけれ
ども、それが急速に低下していく
要因になっているのではないかというわけであります。
これまでは、将来不安が強まりますと、当然、貯蓄をしなければということで、貯蓄率が高かったわけですけれ
ども、最近は、将来不安はますます不安になるんですけれ
ども、しかし現実の生活の面で、貯蓄をするよりも貯蓄を取り崩さなければ毎日の生活が支えられないという
状況に転化している。つまり、
状況が、これまでと極めて重要な
変化が起こっているというふうに見なければならないのではないか。そうなりますと、これは単純に一時的な現象ではなくて、その背後にはもちろん高齢化という大きな構造
変化があります。同時に、今のような
政策要因が加わって、貯蓄率の急速な低下が起こっている。
そうなりますと、現在、
日本財政の赤字というものが依然として非常に拡大しつつある、そのときに、例えば
国債の最終的な消化というのはどういうふうになっていくのか、あるいは、資金の流れがうまくいかないために急速に
金利の
上昇ということもあり得るかもしれない、現に
国債の
金利上昇が、
長期金利の
上昇が起こっている、そういうことを
考えますと、今の貯蓄率の低下というのは大変重要な、単に一時的ではない構造的な問題を抱えているのではないかというふうに思うんですけれ
ども、その点で
総裁の御認識はいかがでしょう。