○井深丹君 私から、政府系の
金融機関の存在の話と死の谷の話、二つまとめてお答えさせていただきます。
まず、
政府系金融機関ですが、TAMA—TLOという会社にとってどういう意義があるかということを
お話しいたします。
TAMA—TLOは文部科学省と経済産業省の認可団体でございまして、承認TLOという名前をいただいております。したがって、
最初は多分運営に非常に
金融的に苦しいだろうということで、政府系の
金融機関からの融資を考えておりました。しかし、現実には、先ほど申しましたが、公的資金による産学官連携研究の
仕事がどんどんふえましたので、それに使うお金という方が多くなりまして、これがいわばつなぎ資金ということになります。
つなぎ資金には二種類ございます。公的資金で行う研究には、全額政府が出すいわば委託研究と、それから三分の一から半分
企業が出す補助研究と二つございます。
全額政府が出す委託研究については、TLOの名前でつなぎ融資を受けますから、割と楽でございます。政府系の
金融機関も都市銀行も
信用金庫も
かなり貸してくださいます。それは
大臣の名前の採択通知書というのが出ますので、これは担保と同じくらい価値がございます。ですから、その紙さえ出れば、安心して貸していただける。
ところが、問題は、半分は
企業が負担しなきゃいけない研究、三分の一は負担しなきゃいけない研究については、その
企業には
大臣や局長からの採択通知は出ないわけでございます。あくまで元請のTLOに出るだけでございます。
ですから、小さな会社が三千万自己負担して六千万のお金を国からもらって研究するときに、その三千万の融資というのはどこから受けるかということになると、やはり
取引銀行や
取引の
信用金庫から受けるしかないわけでございます。普通にいっては、これはなかなか受けられません。
そこで、TAMA—TLOが一緒に研究するんだ、国からこれだけのお金が出ているのでお願いしますということを
金融機関や
信用金庫にお願いすることになります。そのときは、政府系の
金融機関と
取引している
企業にとっては借りやすいということは聞いております。しかし、現在はそういう
企業が負担して研究開発する制度が非常に普及しておりまして、どこの
金融機関も大変御
理解が上がってきまして、そう不自由なくお金を借りることができるようになったということでございまして、政府系の
金融機関とほかの
金融機関の区別というのは、TLOではほとんどついていない状態でございます。
それから、死の谷の話でございますが、研究開発はできた、製品のちょっと格好悪いものはできた、さてこれをどうやって製品にして売るかということになると、これは非常に難しいのであります。以前は、大学の先生が研究した、しかしこれが製品にならない、何とかしろというのが
一つの死の谷だったわけですね。
ところが、国の大きな
方針で産学官連携が進んでから、エンジニアリングモデルといいますか、
企業が達成するようなものは大学と
企業で一緒につくれるようになりました。そうすると、見て、ああすごいなというものが
かなりできてきているわけですね。ところが、それが
中小企業の手にかかって製品になると、それがなかなか難しい。何が難しいかといいますと、研究成果というのはほんの一部でございまして、たくさんの周辺技術があって製品ができてくる、その周辺技術がいわゆる製造技術とか生産技術と言われまして日本のお家芸と言われたところでございますが、それがハイテク部品、新しい分野の研究では、まだそこの生産技術がないのでございます。それで、我々、今一番よくやっているのはナノテクとかマイクロ加工とか、それからバイオ系の小さな分析計とつくっておりますが、これは研究ででき上がった、しかし、
中小企業ではそれをつくる製造設備は何百億という設備投資をしないとできないというところが泣きどころでございます。
TAMA協会でも、インキュベーションオフィスということで家賃の安い研究施設を用意しました。これは入れ物の話でございまして、一番大事なのは研究を製品に持っていく工場をどうするかでございます。これについては、近年、非常に新しい進展が出てきまして、大手
企業が半導体とか微細加工の生産設備をオープンにし始めました。これをファウンドリーサービス
事業と言っておりまして、まとめて来るものがあればどこからでも受けて、その大手
企業の製造ラインがつくって提供いたします。先ほど岡崎から説明のあった富士電機の東京工場もそれをやっているわけです。あそこには半導体のセンサーとかアクチュエーターの製造工場がありまして、まとめて来たものはそこでつくって提供します、そのつくる前の試作もいたしますということになっております。
八王子にある大手
企業は皆さんそれをやりたがっています。看板の上では、例えば沖電気さんは半導体LSIのファウンドリーサービス
事業をいたします、それから、オリンパス株式会社さんは光
関係の微小部品のファウンドリーサービス
事業をいたしますというふうにちゃんとカタログに載せております。
私
どもが考えているのは、大学と
中小企業の共同研究成果をそこに入れられないかということを今考えているところでございます。入れるには一工夫要ります。それは、
中小企業の技術者と大手
企業の半導体技術者が仲よく相談をして一緒に設計しなければできないのであります。それをやるためのシステムをつくらないと、これは成功しない。これにはお金がかかります。それは装置のお金じゃなくて、建物のお金でもなくて、結局、大手
企業と
中小企業の一緒に相談する技術者の人件費を出してあげないと、これはうまくいかないわけであります。
現在、TAMA協会、TAMA—TLOでは、
中小企業のためのファウンドリーサービスセンターをつくりたいというふうに考えておりまして、これが
一つのハイテクにおける死の谷を越える方策ではないかと今考えておるところでございます。
以上でございます。