○谷口
委員 地域の
金融機関にも
資本注入をしようということでございますね。この法案を見ると、そのようなことが読み取れないのではないか、こういうようなこともございまして申し上げたわけでございます。
中塚先生の方は、先日の議論の中でオーバーバンキングについて言及されていらっしゃって、地域
金融機関は残していかなきゃいかぬ、こういうような
お話ですから、そういう
観点で申し上げますと、まさにこの法案は、地域
金融機関を中心にして予防的に
資金を注入しようという法案でございますね、政府提案の法案です。そういうような
観点で考えましたときには、地域の混乱、地域
金融機関に重大な支障が出てくるといった場合には、事前にこれを阻止するために、私自身は、やはりある程度のロットの
資金を注入していくべきだというように考えておるわけでございます。そういう意味では、若干この法案からはそのあたりが読みにくいということを申し上げたかったわけでございます。
それと、次に、五十嵐先生がずっとこの法案の審議の中で、粉飾だ粉飾だということをたくさんおっしゃっておられるわけで、私も公認会計士を以前やっておりまして、この粉飾というのは、
余り、たびたび言うべきことじゃないと思うんです。非常にそのあたりを慎重におっしゃっていただきたいわけで、大多数の公認会計士の人たちは一生懸命監査業務に打ち込んでおられるわけでございます。おっしゃるような粉飾の事例というのは
余りないわけです。
それで、
金融庁の検査が入って、今一番問題になっている税金繰り延べ
資産でぜひ
意見交換したいと思っておりまして、どうもこの税金繰り延べ
資産について誤解があるんじゃないか。というより、むしろ会計そのものに対する誤解があるんじゃないかというように思うわけです。
そもそも企業会計というのは、絶対的な真実性のもとにあるわけじゃないんですね。例えば、企業の損益計算書を見ていただきますと、売り上げがあって利益が出ているわけですけれども、この利益というのは絶対な利益ではありません。御存じのとおり、会計処理の変更が行われますと、この利益が変化する、変わるということはあるわけです。ですから、そういう意味で絶対的な真実性ではない、相対的真実性と言うんですけれども、それを支えるためにいわば継続性の原則というのがありまして、会計処理は継続的にこれを適用していかなければならないというようなことがあるわけです。
それとともに、現行会計は、ゴーイングコンサーンと申しまして、企業が継続する、継続企業の前提に立った会計なんですね。御存じのとおり、商法の会計の考え方というのは債権者保護の立場に立っていますから、企業がゴーイングコンサーンでなくなった場合にどうなるかということなんですね。清算をした場合に企業をどう見るかというような見方が商法の基本的な考え方であります。それに対しまして、現行会計、企業会計はゴーイングコンサーンの立場に立っているということです。
ですから、人間に例えますと、生まれて、いずれ死ぬわけでありますけれども、死んだ段階でこれは亡きがらになって、これはいわゆる企業を一断面で見ている、例えばさっきからおっしゃっておられます一斉検査の問題にしましても、その段階では確定するわけでありますけれども、しかし、ゴーイングコンサーンといいますか、人間がずっと生きている間にはいろいろな人脈もありますし、また、目に見えないような付加的な価値がどんどん出てきたり、目に見えないような負債もあるかわかりませんけれども、そういうようなものだということをよく
認識していかないと。
本来
資産性のないような、例えば繰り延べ
資産というか、会計上では、試験研究費というのがありますけれども、これを
資産計上したりするわけですね。これは、もう既に支払われたんですけれども、効果がこの期だけではなくて将来の期にもあらわれるということですから、現行会計は今言うように発生主義という立場に立っておりまして、当期の売り上げに
対応する費用を当期に上げるんだ、当期の売り上げに
対応する費用が将来にも発生するといった場合には、将来分を負債計上したり
資産計上したりということで当期の損益に反映させないということでございます。そのような現行会計の
対応ぶりをよく理解していかないと、おかしな形になるわけです。
一般的に、利益が例えばあの企業は十億あった、それが会計処理の変更によって、このところ会計ビッグバンというような会計処理の変更がたびたび行われております、そんなことで、会社の方は一生懸命頑張って売り上げは前期と変わらない、ところが、利益が圧縮されたというようなことになるわけですね。会計というのはそういうものなんだということを、ひとつよく頭に入れていただきたいということがまず第一点でございます。
それと、税金繰り延べ
資産のことで、これは五十嵐先生も、先日、会計士協会の監査
委員会報告六十六号のことをおっしゃっていらっしゃいましたが、この監査
委員会報告六十六号というのは、繰り延べ税金
資産について言及しているわけですね。これは一年もしくは五年ということでやっているわけです。この根拠も、五十嵐先生の方はもうごらんになっていらっしゃると思います、極めて多額な損失が出たといったような場合は一年で、あとは大体五年でやっているというのが
一般的なんです。
ですから、そういう意味においては、会計の指針は一年もしくは五年を認めておるわけでありまして、企業がこれを採用してやっていることについては何ら粉飾ではないわけであります。これを粉飾だ粉飾だと言ってしまいますと、また大きな社会的な影響が出るわけでございますので、そのあたりを、私はちょっと慎重に言っていただければというように思っておるわけでありますけれども。
税金繰り延べ
資産が発生するケースが二つありまして、
一つは、商売を行って損失が出る、そういう繰越損失が出た場合に、将来の利益を充当するといった形になりますから、これはこの税金繰り延べ
資産が発生するわけですね。もう
一つは、
銀行のように、
金融機関のように、税法上認めておらない以上に償却を行うといった場合、これは有税償却といいますけれども、有税償却をした場合には、将来、この当該債権が費用化されるときが出てくるわけですね。このときに税金繰り延べ
資産へ落とすということで、この有税の前払い税金のところを税金繰り延べ
資産として上げておるわけでございます。
このような税金繰り延べ
資産について、頭からこれが粉飾だとかこれは問題だというような議論はおかしいんです。というのは、従来は税金繰り延べ
資産というのはなかったんです。これは、税引き前利益がありまして、税引き前利益に対しまして、当期の支払う税金の実額を計算して
法人税等ということを上げまして、それからそれを控除した金額を税引き後利益として上げたわけです。この金額の
対応関係がおかしい場合があるわけですね。いろいろなケースがあります。税引き前利益が百であるのに、その税引き前利益を上回るような税金が出る場合もあるんです。いろいろなケースがございます。これは話すと長くなりますから。
そういうような
対応関係は、先ほども申し上げましたように、現行会計は費用と収益を
対応させるということがございますから、世界的な
一つの流れとして、税引き前利益に対しまして実効税率を上げまして、この実効税率を
法人税等で上げておる、こういういわば広い意味での費用収益
対応の原則に基づいて上げられておるものでございます。ですから、私は五十嵐先生に申し上げたいわけでありますけれども、このようなことだというように申し上げて、五十嵐先生の御
意見をお伺いしたいと思います。