○馬淵
委員 今、上方バイアスのお話、
福井総裁からもそういったことはあるんだということのお答えをいただきましたが、ちょっとこの上方バイアスについてお話しさせていただきますと、これはラスパイレス方式ということで、財・サービスの購入数量を基準年で固定して計算される。もうこれは釈迦に説法だと思いますが、これはつまり、二〇〇〇年の購入数量、二〇〇〇年を基準年として購入数量を定めている。つまり、これはどういうことかといいますと、これで、今
デフレ下の中で価格が下がれば、例えば購入者、消費者の立場でいいますと、安くなれば大量に買うという消費行動が発生しがちです。つまり、
物価が低下した製品を相対的に多く購入をするという消費行動が生まれる。しかし、これは実際に取引される
状況の中でこうしたものが
消費者物価指数の中には反映されない、これがこの
CPIの上方バイアスというものであります。
そして、これが大体どれぐらいの数値になるかといういろいろな各地の研究があるわけですが、これは日銀の
金融研究二〇〇一年一月号からも引っ張り出せるんですが、例えば諸外国でいいますと〇・五から一%、そして
我が国におきましては〇・九%という、先進主要国における
消費者物価の上方バイアスの計測例というのが挙げられています。
つまり、ゼロ%とおっしゃっている数値は、実際は、この上方バイアスがかかって、〇・五から一%、あるいは一・五%といった数値として見込まれる。であるならば、準インフレターゲットのようなものであるという言葉、そして、
CPIをゼロという言葉、これを両方考えれば、結局は一%近いインフレターゲティングをされているということにほかならないのではないか、日銀の中で十分そういうことをお考えの上で進められているのではないかということを私は非常に感じております。
お手元の資料をちょっとごらんいただきたいと思うんですが、こうした議論は日銀の中でもされているようでして、
岩田副
総裁の記者会見要旨、二月十八日、これは二〇〇四年、つい最近のものですね、直近。そして、二〇〇三年の十月にも、同様に記者会見要旨というのをきょうお配りさせていただいています。
ここをちょっと読みますと、「
CPIは、
デフレの表現の仕方が過小であると問題があり、おそらく〇・五%から、人によっては一%近い上方バイアスがあると考えている。」と御
指摘されています。「プラス〇・五%とかプラス一%とか、
デフレに戻らないということを考えれば、ある種の糊代を残しておくということを考えれば、一%
程度の
物価上昇率というのが必要ではないかと思う。」このように直近に述べられておられるんですね。
そして、その十月の段階では、下線部ですが、「現在の
消費者物価指数で考えると、おそらく〇・五から一%くらいの上方バイアスが存在する
可能性もあると言えようか」。下の下線部であれば、「ゼロ%であればやはり上方バイアスの問題があるし、直ぐに
デフレに陥るリスクも極めて高いということもあるので、いわば上方バイアスと、直ぐに
デフレに陥らないためのバッファーという両面を考えて、
物価の安定を捉えていくべきではないか、ということが挙げられるのではないかと思っている。」それで、これは私見としてですが、「個人的な見解として、
物価安定を数値的に
定義したらどのようなものかと問われれば、プラス一から二%くらいではないかと以前インタビューでお答えしたことがあるし、議論の整理ということで申し上げれば、今もそのように考えている。」こう会見で述べられているわけですね。
つまり、日銀内でもこうした御
意見がある中で、準インフレターゲットであるとか、インフレ参照値などという言葉を使われているところもありましたが、
福井総裁、そして
岩田副
総裁、これらの発言をされているのを踏まえて、今私が
指摘させていただいた、結局は日銀としても、このインフレターゲティングということについて、これを明確に意思としてお持ちで今進められているのではないかということについてお答えいただけませんでしょうか。