○
福井参考人 お答えを申し上げます。
少し長い御
質問をいただきましたので、
答弁も若干長くなることをお許しいただきたいと思います。
まず、
日本銀行の一貫した
政策姿勢を申し上げます。これは、CPI、つまり消費者物価指数の前年比
変化率が安定的にゼロ%以上になるまで現在の超緩和、
量的緩和の枠組みを維持する、そして情勢の推移に応じて必要な補強
措置を講じていく、これが一貫した
政策姿勢でございます。
ただ、
日本銀行を取り巻く金融
経済情勢は刻々と
変化をしております。刻々の
変化、しかし、大きくとらえますと、私
どもの感覚では、昨年の夏ごろまでは、
経済が、どちらかというと、ともすれば落ち込もう落ち込もうとするような環境でございました。幸いにも、昨年の夏過ぎ以降は、
経済が少しずつ上向きの
方向に、いわばいい
方向に局面
変化をした、こういう
状況でございます。
日本銀行の
基本的な
政策スタンスは、消費者物価指数が安定的にゼロ%以上になるまで、どんな局面
変化があってもこれを貫くということであります。
政策姿勢は一貫しておりますが、局面はいい
方向に変わっているということでございます。
したがいまして、
政策運営をいたします心構えとしては、昨年の夏ごろまでは、落ち込む
経済に対していかに下支えするか、こういう気持ちで
政策運営に当たる。そして、昨年の夏過ぎ以降、特にことしになりましてから、将来展望が少しずつ明るくなっております。せっかく出てきたこの新しい芽を大事に育てていく、こういう気持ちに気持ちは切りかわります。しかし、一貫した
政策姿勢は、CPIが安定的にゼロ%以上になるまで断固今の枠組みを続ける、そして、情勢の
変化に応じて、必要とあらば追加
措置も講ずる、この姿勢でございます。
現在の
状況に即して申し上げますと、景気は確かに緩やかに回復をしておりまして、先行きにつきましても、当面景気が後戻りしてくる心配はない、これは非常に歓迎すべきことだと思っておりますが、ただ、回復テンポは、まだ過剰債務など構造的な問題が多々残っておりますもとで、緩やかなものにとどまる可能性が強いと私
ども判断しております。私
どもが注目しております物価情勢ですが、これも、下落傾向というものは少しずついい
方向に改善しつつあるというふうに思っておりますが、消費者物価指数の動きを見ておりますと、基調的にはなおしばらく下落基調をたどる、つまりデフレ脱却の展望はなお容易につかみにくいという
状況にございます。
したがいまして、こういう
状況のもとでは、我々の持てるフレームワークのもとで、景気の回復をより確かなものにしていくための必要な
措置というものはタイムリーにやっていかなければならない。それに加えまして、金融・為替
市場の
動向を見ておりますと、折に触れ、長期金利あるいは為替の動きが不規則な動きをする、そうしたことが、経営の最先端に立っておられます企業経営者の心理
状況をどういうふうに巻き込むかというふうなことについても注意深く見ながら、
政策対応をさせていただきたいということでございます。
量的緩和の
効果でございますけれ
ども、今申し上げましたとおり、消費者物価指数の基調は少しずつよくなっている。指数で申し上げますと、あと〇・幾らのマイナスの物価じゃないか、こういう感覚をお持ちになるかもしれません。しかも、景気が少し上向いてきたからには少し気楽に見ていいんじゃないかという気持ちが、ひょっとしたら
経済界全般に少しずつ出始めているかもしれないと私
どもは思っておりますが、しかし私
どもの認識は、残り〇・幾らのデフレを克服していく道、つまりこの最後の一マイル、ザ・ラスト・ワン・マイルはなお非常に厳しい道だ、これが私
どもの
基本的な認識でございます。
この道を克服していくそのプロセスというものは、引き続き、企業部門もそれから金融部門も、やはり、リストラの努力をさらに進めていただきながら、新しい価値創造の過程に早く入っていただかなきゃいけない。そのことを、我々が提供する非常に緩和的な金融
条件、金融環境というものをフルに活用しながら、さらに前進してほしい。つまり、構造改革のさらなる前進、
経済全体としては持続的な成長軌道への復帰、この道筋と
金融緩和の
効果との相乗
効果をより強く出していくことが、唯一、この残り一マイルの厳しい道を乗り切っていくルートであると私
どもは確信しているわけでございます。
量的緩和の
効果というものは、もう御承知のとおり、流動性をたくさんマーケットに供給することによりまして、短期金利のみならず期間の長い金利についても極力低位に抑えて、企業及び
金融機関、特に企業にとっての資金
コストを常に最低限のものに抑える、信用スプレッドについても、非常に幅の狭い、低位なものに抑えて、金融環境を企業にとって有利なものにしていくということのほかに、
金融市場あるいは我が国の
経済にはさまざまなショック要因が今後とも舞い込んでくると思いますが、そのショックを
金融市場の中で極力速やかに吸収してしまう、そういう安定的な金融環境を企業に提供することによりまして、今後とも、リストラ、さらにはより前向きに価値創造に向かっての新しいビジネスモデル構築を支援してまいりたい、こういうことでございます。
経済が落ち込む、ともすれば落ち込もう落ち込もうとする昨年夏ぐらいまでの
状況にあっては、こうした私
どもの
量的緩和のフレームワークというものは、落ち込みを下から支えるという
意味で、つまり、
経済がデフレスパイラルに落ち込んでしまうということを強力にサポートしたと思います。今度は、
経済が前向きに動き始めましたら、その下支えしていた力は、これに伴って後押しをしていくという力になるわけで、
表現は、下支えから後押しというふうに変わるといたしましても、
金融緩和の
効果、実態的な
効果そのものは何ら変わりがない。
私
どもの姿勢も
量的緩和の
効果も変わらない、これは消費者物価前年比
変化率が安定的にゼロ%以上になるまで貫き通す、こういうことでございます。