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山崎参考人 本日はお招きをいただきまして、大変ありがとうございました。
それでは、ちょっと議論に入る前に
一つ、ある本の一節を、最初のところを読ませていただきたいんです。
明治百年を
一つの節目にして、都市集中のメリットは、今明らかにデメリットへ変わった。
国民が今何よりも求めているのは、過密と過疎の弊害の同時解消である。高速
自動車道の
建設などをてこにして、都市と農村、表
日本と裏
日本の格差は必ずなくすことができる。昭和四十七年六月、田中角栄、「
日本列島改造論」。
私、今回訴えたいのは、私はこの趣旨に大変賛成です、
国土の均衡ある
発展を目指して、そして、田中角栄先生を初めとしたいろいろな方がつくられた制度。しかし、結果どうなっているのか。三%の
国土に八千二百万人が住むような国になってしまっている。新規上場
企業の四分の三が東京からしか生まれない。明らかにこの田中角栄さんの目標は破綻をしております。
三十年前には非常に有効であった制度、今も同じような形で継続して続けていいのか、そのあたりから、しかし、きょうは天下国家論を語りに来たわけでは必ずしもございません。
ただ、具体的に、実現可能性として、もともとはこの
高速道路の
建設、戦前のドイツのアウトバーン、戦後の
アメリカのインターステート、いずれも国運を左右し、それによって国力が大
発展して
地方分散になった。単に
道路公団という
組織の経理問題、会計問題を超えた国の形そのものの議論じゃないか、そういうふうに思っております。
もともと想定していた制度は何であったのか、どうしてこうなったのか、そのあたりからきちんと議論した上で、しかも将来何が起きるか、これを検証したい。
もともと、先生方御存じだと思いますが、
道路公団ができたときは、
道路財源はわずか二百億しかない。名神、東名をつくるのに四千六百億円、つまり二十三年分もかかるから、
アメリカから
技術も、そして世界銀行からのお金を三分の一導入し、そして、財投で名神、東名をいわば担保つき金融として、特別措置として
料金を取り出した。世銀にしてみれば、お金をちゃんと返してもらわなきゃいけないから、
料金を取ることを認めましょう。借金を返せばただにします。だから、
道路整備特別措置法であって、朝、
佐藤先生からもあったように、
道路はまさしく公物であり、無料で提供する、これは
日本の今も厳然とある制度であり、すべて成り立っているものだと思います。
ですから、では、借金を返したのはいつか、一九九〇年に返しております。ところが、名神、東名で取っている
料金というのは、これは七兆円を超えております。四千六百億円のなぜ十五倍も取るようになってしまったのかというところをお考えいただきたいと思います。
お手元に資料がございますので、詳しいお話は質問のところでまたごらんいただきたい、こちらの方でございます。
かいつまんで
政府の
民営化案についてお話をさせていただき、また、選択肢として今般
岩國先生外の先生方が出しておられる無料化案、これは、私がここに書いておりますのはあくまでも私の考えのところが反映しておりますが、その比較をいたしております。
まず、
政府の
民営化案につきまして、さまざまな
問題点をはらんでおります。
一つは、まず、
道路公団という
組織は完全に
民営化とは言えない。いわばサービスの独占
企業、鉄道でいえばキオスクの上場、
民営化であって、機構というのはそのまま残る。しかも、機構というのは国そのものですから、機構が借金を返さなければ、これは
国民負担になるわけですね。
今、
道路公団は借金を返さなければ
国民負担になるという構成になっていないにもかかわらず、今回これによって
国民負担が発生する
構造が初めてできる。平たく言えば、借金の飛ばしでございます。
四十兆円の借金を持っている
企業は
日本国に
一つもありません。
日本の冠絶するような大きな借金を抱えた、今はこれが国の特殊法人の債券を、果たして
民間企業が持てるんですか。すべての
民間企業が一年間に出す社債、これは年間七兆円です、すべての会社を含めて。どうやって四十兆円の借金を、
国債が出せないとおっしゃるんですから、
一体民間企業債を出せるんですかということです。
政府保証をとるんであったら、これはリスクとしては、
国民負担としては
国債と全く同じです。事業債が出せないんだったら、これは
民営化と言えないということです。
ただ、それよりももっと大きいのは、この四十五年の借金はいかなる性格を持っているのかということです。
今、財投からお金を借りております。十年ごとの借りかえ、事業債も十年未満です。ということは、十年ごとにお金は金利を変更していかなきゃいけない。金利が上がったときどうなるんですか、この試算は示されておりません。今の超低金利の時代において成り立つような四十五年間、四%、こういうシナリオに基づいた数字が出されているだけの話でございます。
私の資料の五ページをごらんいただければ、いかにこの仮定がかなり非現実的か、五十年、四十年というところをとっていただきますと、
日本でも、ついこの間、バブルの崩壊前は何と金利は八%です。しかも、これから少子高齢化が言われ、
日本は双子の赤字になると言われています。かつて
アメリカが双子の赤字になったとき金利は幾らになったか、一六%です。
この四十五年間の金利が仮に
政府想定の四%であったとしても、これは借金の
返済総額は八十四兆円です。八%になれば百三十四兆円、この増加額だけで年間の国家予算、
一般税収を突破します。さらに、これが一四%に上がったといたしますと二百二十五兆円、公的年金の
積立金はすべて吹き飛びます。これを全く考えていない。
政府保証するということは、金利上昇したときのリスクはすべて
国民が負担をするということを確約するに等しいわけです。
しかも、この
道路公団の
組織、私が先ほど申し上げたような、例えば名神、東名の四千五百七十三億円、こういったこともわからないと言っている。そういう
組織が果たして上場できるのか、債券を出せるのか。私は、限りなく無理である、株式の上場、これは不可能であろう、どうやってこれを
民営化するのか、そちらの方がわからないということです。
そして、もっと大事なことは、これによって世界一高い有料の
高速道路制度がこれからさらに五十年存続する、今まで五十年、百年そういうことをやっていって、この過密と過疎の
構造は永久化されるのではないかということです。
それに比較をいたしまして、私は、本来、田中角栄さんも想定をしていた、なぜそう言えるか、田中角栄さんと非常に親しい方がおっしゃったんです、角栄さんが今生きていたらあなたの言うとおり無料にするんですよ、それで表
日本と裏
日本の格差をなくせるんですからとおっしゃるわけです。
どうしてそれができるのかということを申し上げますと、二つあります。
まず、
国債での借りかえ、今も国が実質的に貸しております。財投です。財投債を
発行しておるんです。
日本国、年間
国債が幾ら出ているか、百六十二兆円です。よく三十兆円の枠とか言っていますが、あれは新規財源債だけのお話、借りかえ債券と財投債を合わせれば年間百六十二兆も出ておって、四十兆の借金というのは四分の一にすぎない。しかも、財投債で借りているものが
一般国債にかわるだけの話であって、先ほどの、
民営化すれば七兆円しかないマーケットに行く。百六十二兆ですから、どちらが借金の借りかえができるかということは明白であります。
しかも、それによって今の低金利で固定金利で
発行ができる。つまり、今の
政府案は、四十五年の変動金利の住宅ローンを借りているようなものです。これを固定で固めてしまいましょう、一番金利が低い今の時期に。しかも、
日本国で一番安い金利で出せるのは
政府なんですから、それで固めてしまえば幾らぐらいになるのかというのが十三ページの試算でございます。
注意をいただきたいのは、確かに
発行するときの金利が上がればこれは
コストは上がりますが、年限が短いですから、どの想定で見ても、
政府の今の想定の四%、八十四兆円を大きく下回るということですね。将来に金利が上がろうと、これは影響を受けないということですから、むしろこれしか
高速道路を無料にしていく手段はないと申し上げられます。
政府は、四十五年で必ず機構は解散すると言いましたが、ではそのときに、二百兆円、仮に、
料金は今二・五兆円です、四十五年間で百二十五兆円、百兆円だれが返すんですかということの答えがなくして、どうして機構を解散できるのか、どうしてその借金をなくせるのか、何の答えもないわけであります。無料化案は、それに対する答えです。
そして、では、これから
道路建設はできないのか、そんなことはありません。
受益者負担で、ただで、要するに、
高速道路をただにしてやるというのに
税金を使うというのは
受益者負担に反する、そんなお話があったんですが、
日本の今の
自動車関連財源は大体九兆二千億あります。これは、特定財源と
一般財源に入っている消費税それから保有税、こういうものもあるんですね。何と九兆円以上の
税金を
自動車ユーザーが払っておるんです。
そのうち、
高速道路で使っている
税金は、例えばトラック、四五%が人キロでいえば
高速道路を使っています。税額で計算すると、大体三割は
高速道路を使っている
自動車ユーザーの
税金なんです。
普通の国は、このお金も使って
高速道路をつくります。つまり、年間三兆円近いお金を
高速道路ユーザーから既に取っておるわけですね。それがどこに行っているか。基本的にすべて
一般道路に行って
高速道路に使われていないから、さらに二・六兆円も
料金を取らなきゃいけない。つまり、今の制度が
高速道路ユーザーから二重取りをしているだけのお話でございます。
先ほどの
国債の
発行、これは二十二年間年間二兆円、後の十年間は一兆円を使えば、これできれいにこの
国債はなくなってしまいます。そうしますと、今大体九兆円から十兆円の
自動車関連財源がある。つまり、七兆か八兆、
国債を全部返してしまっても、借金四十兆円きれいになくしてしまってもお金は残るわけです。
私の
提案は、これをすべて知事さんに配ったらどうだというふうに思っております。
国は執行の監視をし、そして
計画を立てる、実行は知事がする、つまり、経営でよく言う執行とそれから監視の分離、この二つを実行していくこと、そして、お金が余ればその県が自由に使う、こういうことで三位
一体の実行というのもできるのではないかと思います。
短い時間でございますが、以上でございます。
ありがとうございました。(
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