○原
参考人 原でございます。
それでは、引き続きまして、今度の
都市再生法の改正、それに絡む
まちづくり、市民参加、そうしたことを幾つか所見を述べさせていただきたいと思います。
その前に、若干自己紹介的なことをさせていただきますと、私は、現在は大学の教員をしておりまして、
まちづくり、
都市計画、環境、そうしたことを講じたり勉強しておりますが、実は一昨年までは、自治体職員としてずっと三十数年働いてきたわけであります。
ちょっと申し上げさせていただきますと、一番最初は、東京生まれでございましたこともあって、東京都庁で土地利用、
都市計画、そういう仕事を始め、それから、沖縄県が
日本に復帰をしたのを機会に、
まちづくり技術者として、当時人口四万人の名護市役所で
まちづくり担当者として、企画担当者として働きました。その後、世田谷へ戻って世田谷区でずっと
まちづくりをしてきたということでありまして、自治体の
まちづくり、あるいはそれに絡む諸問題、お金のことなどは、大変苦労、喜びを感じながら仕事をしてまいったということであります。
きょうは、ですから、そういう自治体におった、あるいは
住民としておったという立場から、今回の改正について若干意見を述べさせていただければと思います。
きょう、お手元に、手書きで大変汚い字ですが、四項目ほどお話ししようと思いましたものを配らせていただいております。
都市再生、ともすると、大変大規模開発で、高層の事務所ビルを立ち上げる、そこに海外から来るビジネスマンが走り回る、そんな姿がややイメージとして強くなっておりますが、実はそうではなくて、本当の
都市再生、環境
再生、
地域再生というのは、やはり
地域の生活者の生活
再生でありたい、それに結びつく生活環境の改善及び生活の向上というのを図るのがもろもろのこういう法律の目的でなくてはならないと思っております。
その生活という中で、特に生活環境、物的な基盤
整備というところで今回の
都市再生法が役立ってくれればと願うものでありますが、
基本的に、住む人に対して居住の問題、それから、そこで働く、今
伊藤参考人からも出た雇用の問題、そうしたものをもろもろすべて含んで生活
再生、生活の質の向上ということがなされることが必要であろうと思います。
そうしますと、従来のような大規模クリアランス、スクラップ・アンド・ビルド、そういうものではなくて、恐らく保全とか修復とか、今まであるものの用途の転換とか使いかえとか、そういう、今までは余り手法としては磨かれてこなかったこともしっかり踏まえて、生活の質をつなぎながら、磨きながら向上させていくということがねらいとなるべきではないだろうかと思っております。
二番目ですが、そういうことで
地域が大事であるということであると、やはりそこでの
まちづくり主体としては、
地域自治体、基礎自治体、そうしたところがしっかりコアになって、そこに総合力、技術力、そうしたものをすべて集中させながら、
権限、
人材、お金、そうしたものがそこでの
裁量に基づいてかなり使えるということを保証していくようなものでありたいと思います。
ここで
まちづくり力というような言葉を使いましたが、人々がみずからの環境をみずからの意思と将来の展望に従って力を発揮して協働してつくり上げていく。そういう
地域社会づくりをするために、基礎自治体がコーディネーターになり、リーダーになり、そこで基盤
整備をしっかりさまざまな主体と協働しながらやっていく、そういうことで
まちづくりが進めばと思っております。そして、その
まちづくり事業や
活動に市民がしっかりかかわることによって、
地域のコミュニティーとか
地域社会のさまざまな、今やや分断されたり、なくなってしまっているものをもう一度回復する、そういう手伝いになるような法律にぜひなっていただきたいと思います。
現在、
市町村をめぐる
課題は、御承知のとおり、かなりいろいろなことがあります。分権とか、それから
市町村合併、そういうものがありますが、そういうことを通して、
地方主権といいますか、その拡充ということが力づけられるような
事業になっていきたいものだと思います。
その基礎自治体がみずからプランをしてさまざまな
事業を束ねていくということで、今回の改正で、従来の
行政の縦割り、国がやる、
都道府県がやる、
市町村がやるという縦割りをやや超えるようなことが少し述べられていることは
評価をしたいと思っているところであります。
例えば、国道、
県道、
市町村道というものが従来それぞれの主体の都合によってばらばらにつくられてきて、結果的に環境基盤づくりとしてはややそごが生じたというようなこともなかったわけではない。それを、今回、
市町村がイニシアチブをとることによって、
市町村の、
地域の道路ネットワークとして、交通ネットワークとしてしっかりもう一度組み立てていくということができるようになりたい。
それにあわせて、例えば河川沿いの、河川敷の道路などがありますが、これは国が管理をするというようなことだと、今まで、国の道路と河川と
市町村の道路というのは全くばらばらに
整備をされて、せっかく線的な、リニアな基盤であるにもかかわらずそれがばらばらであった。よそから来る人は大変わかりにくい、使いにくいというようなことが生じていた。それをぜひ、歩行、自転車、そういうものをもう一度
地域の交通手段としてしっかり考えるのであるならば、そういうものをしっかり
市町村がリードして、例えばサインの統一のシステムをつくるだとか、要らない看板を取って美しい町につながるようなことを
市町村がやっていくことができるかもしれません。そういうことを保証するような
制度、枠組みになればと思っております。
あるいは、自治体が基盤になりたいと言いましたが、時には隣接する自治体がそれぞれ手を合わせて、そういう線的な
施設というのは自治体をまたいで
整備されることが多いわけですから、それが隣接自治体としっかり協議が進めば今度の
交付金が少しプッシュアップできるというようなこともあると、自治体同士のつながりということも力を増すことになるかもしれません。そうしたことを通して市民参加を促すというようなことをぜひ今度の
事業の中でやっていければと願っております。
地方に力をということを申し上げたいわけであります。
それで、基盤の
整備をするだけではなくて、例えば道路
整備というのは、交通管理者というのがありまして、道路管理者と交通管理者というのは主体が違って、大変
地方、
地域ではその
整備が、場合によってはそごを来すというようなことも多い。せっかく歩行者道路をつくりたいと思っても交通管理者からイエスが出ないというようなこともあったりするので、今度の物的
整備を促すこの
制度が
地域に主体を与えるということであれば、交通管理者その他さまざまな主体との協議というのももう少し緩やかにやれるような、そういう促しがあってもいいのではないかと考えます。
三番目で、今回の主たる
内容である
まちづくり交付金について少し所見を述べます。
これも、今申し上げたように、
地域の独自性、個性、そうしたものが発揮できるような、その場だけの、あるいは短期間だけの問題解消ということではなくて、長期間に使い得る
地域ストックづくりに資するようなことを促すようなものでありたい。
今回の目玉の一つとしては、かなり総合的、複合的なことが
市町村主体でできる、自由な組み合わせができるということがやや保証されつつありますが、それをさらに広げて、さまざまな複合が、今気がつかないようないろいろな複合が出てくることを
期待して、そういう複合のいろいろな仕組みを支えるようなものになっていきたいと思います。
さらに、建設をする、箱をつくるというだけではなくて、建設に向かうさまざまな準備、例えば、いろいろ
まちづくり協議会というのをつくる、その
支援ですとか、場合によっては建設のための設計コンペティションというようなことをやることができれば、そういう準備の、さまざまな啓発
事業というようなことに対してもお金が出るような、そんな幅広いシステム
支援というようなことも考えられたらいいなと思っております。
さらに、この
交付金でありますが、当然
市町村もある負担をしなきゃいけないわけですが、優先的に起債措置をこの
まちづくり交付金を得る場合にやっていただくとか、あるいは、もし市民が、ある
施設をつくるときに市民債を組むというような動きがあれば、その市民債を組む、市民参加というのを促すということを
評価して少し
交付金のアップをする、そんなインセンティブをとるようなこともあると、
住民がみずからの町にもっと目を向けるという機会になるかもしれません。
それから、手続の問題ですが、私は自治体におりまして、
補助金行政というものの中でどっぷりいろいろ事務を担当しておりました。
補助金の申請からさまざまな
都道府県協議、国の協議、それから年度の末には、ちょうど今ごろの時期ですが、会計検査ということで、大変そういうのに翻弄されるということが
市町村の建設
事業の実態でもありました。
そういうことをしないで、なるべく
市町村の、パワーが少ないと先ほど
伊藤参考人が言われましたが、パワーが少ない
まちづくり職員、技術職員がパワーが発揮できるようにするためにも、手続をできるだけ簡単にするということも考えていきたいと思います。
最後、四番目ですが、この
制度そのものの
目標として、短期的な景気浮揚とかそういうことではなくて、持続的な
地域ストックをしっかりつくっていく。環境型、循環型の社会ということが求められている今、それを支えるような
制度になっていく必要があるだろう。だとすると、
都市再生事業全体のポリシー、ビジョンというものもこの
事業主体としては考えたいところであります。
これは
市町村が独自に考えろということかもしれませんが、せっかくこの
事業に対して国費を、税金を原資とした国費を投入するわけですから、これを長期的に各地に投資することで大変さわやかな
地域社会ができる。
例えば、屋上緑化は必ず義務づけるとか、そういうことをみんなでやるとか、徹底したバリアフリーをこの
事業でつくる
施設はやるだとか、あるいは建物の省エネ化とか環境共生型の
施設をつくるとか、それが安心、安全の
まちづくりにつながっていく、美しい
まちづくりにつながっていく、そういうことを
基本ポリシーとして幾つか筋を通すことが大事なことではないのかと考えます。
単なる財政措置にとどまらないで、新しい時代の
地域づくりに新しいポリシー、これを通して新しい
地域の環境ができる、
地域社会ができる、そんなことも
期待したいところであります。そして、それを通して、あるいはそれを担当する者が、
人材、技術力を磨いていく、
地域に
まちづくりパワーがしっかりできていく。さらに、それが
まちづくり学習というような広がりを持って、人々がもっと
地域社会やら環境に目を向けて
責任を持つ、そんな機会になるような
制度になっていけたらなと感じております。
以上で、最初の所見を終わります。
ありがとうございました。(拍手)