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米澤参考人 横浜国立大学の
米澤です。
本日は、貴重な時間をいただきまして、ありがとうございます。
私は、
社会保障審議会年金資金運用分科会の
委員としまして、
年金積立金の
運用の
あり方に関してこれまでいろいろ
議論に参加させていただきました。本日は、この
積立金の
運用に関しまして、
政府案の大きく
二つの点、
予定利率の
水準、それから、これまでの
年金資金運用基金から新しく
独立行政法人に移る、組織が変更される、この
二つの点に関しまして、私の
意見を述べさせていただきたいと思います。
結論を先にまとめてお話しさせていただきますと、
予定利率は、私たちも十分に部分的に
議論をさせていただきましたが、今後の
マクロ経済から見て、大変ではあるが十分妥当な
水準にあるというような
認識におります。それから、もう
一つの方の
独立行政法人に移行するという点も、いろいろ
運用の仕方において
工夫が必要かと思いますが、これから述べる点において、私は、今以上にいろいろ効率的な
運用ができるのではないかと期待しているということ、この二点を
最初にはっきりさせておきたいと思います。
それでは、本日与えられた時間の中で、一枚の
メモを皆様の方にお配りしておりますので、これに従いまして、今述べました話の周辺の
考え方等をお話しさせていただきたいと思います。
これは、右肩の上に
平成十五年三月十三日と書かれておりますが、これは直近の三月ではなくて、ほぼ一年前の三月十三日でございます。この
メモは、さかのぼってその前の秋ごろから、
分科会におきまして、
年金積立金の
運用の
あり方、特に
株式を含める
運用がいかがなものかというような
認識に立ちまして
議論をして、半年間の
議論を経ました
意見書の要約でございます。
この時期を思い起こしていただきますと、皆さん臨場感あるかと思いますが、
日本の株価におきましても、底であってほしいと思いますが、非常に最悪な
経済環境だったわけです。ですので、そこでの
議論、どういう
議論がされたかということは、かなり今後の
資産運用に関していろいろ
ポイントになる点があるかと思いましたので、配らせていただいたわけです。
この
メモに従いまして簡単にお話しさせていただきますと、その非常に
経済環境が悪かったときも、大きな点は、一番に書かれていますように、
二つでございます。
年金の
給付額は
名目賃金上昇率に追随して払うというこの
制度がございましたので、これが大前提で、
運用の際もこの制約に従って
運用していかなくちゃいけないというのが
一つの点でございます。
もう
一つは、これは特に一般的な話でございますが、
資金を
運用する場合には、十分に分散化された、
ポートフォリオという言葉をよく使いますが、それによって
運用する。例えば、債券だけではないし、もちろん
株式だけではなくて、それらをうまくミックスして、しかも、
日本の
年金ではありますが海外の
資産をも視野に入れて、
意図は、十二分に分散されたというのが
ポイントでございます、そういうようなもので
運用していく。これが、現代の
知恵というんでしょうか、
金融工学の教えるところでございます。
この
二つをやはり
基本的に維持していくことが大事ですねというのを、非常に不況なときに再確認をしたわけでございます。
もう少し各論をお話しさせていただきますが、二にございますように、いろいろ過去の人の
知恵におきまして、非常に
経済が悪くなったときに
ポートフォリオの
中身を変えたいという誘惑に駆られるわけですが、それは非常に慎重でなければならない、一たん決めた
基本ポートフォリオというのはよほどのことがない限り変えてはいけないというようなことを教えられて、このときも、その指示に従うのがやはり過去の
知恵から得られるべきものじゃないだろうかということで、
大半の方の
意見が一致しました。
下手にそこのところを変えますと、
株式を組み入れているような
ポートフォリオですと、株が高いときに組み入れ比率を高くして、低いときにもう我慢できなくて低くするということは何を言っているかというと、一番高いときに株を買って一番安いときに売っているという、非常にあってはならないような
運用になるかということでございます。
それから、次にもう一点。必ずこういうときにお話が出てくるのは、でも、
株式というのは本当に危険だよねと。片っ方で、
国債ないしは
財投債があるので、それで全部
運用していったらいいんじゃないだろうかという
議論は盛んに聞きます。これは、
賃金は非常に
物価とも関連していますが、
年金がそういうものに追随しなければ、これは聞く耳を十分に持つ話でございます。もちろん、
御存じのように、今でも
大半は
国債でございます。七〇%
程度国債でございますので、これは誤解のないように。
でも、それを一〇〇%にしなかったということは、
アメリカの結果でも、
国債の
収益率、
利回りと思ってください、ここから
物価上昇率を引いたもの、
実質の
利回りないしは
実質の
収益率で
議論しますと、実は、これは
リスクに関して
株式と逆転するんですよね。
名目は、
御存じのように、
国債を買っていて満期まで持っていれば安定しますが、そこから
物価上昇率を引いた
実質でありますとひっくり返るというのが
アメリカの結果でもありますし、
日本でも、
期間は、サンプルは
アメリカと比べると非常に少ないんですが、ほぼ同様な結果が得られています。ということで、
アメリカのアカデミックなペーパーでも、だれが長期の
国債を持つかというようなタイトルで
議論をされています。
御存じのように、そこから出てきたのが
インフレ連動債だと思います。昨年度、我が国でも初めて発行されましたが、
インフレ連動債は
年金などから見て非常に魅力的な
資産ですが、まだそれが十分に得られないような場合ですと、
リスクの点から見て、やはり
一定の
株式をも含むというのは必然的に出てくる道でございます。
それからもう一点。私
個人が特に大事にしたいのは、やはりこれだけ多額の
お金を、大事な
お金を
運用するわけですので、これは、
運用の目的としては安全に、かつ効率的に
収益を上げるというのはもちろんですが、同時に、マクロ的にこの
資金をうまく
国民経済的に使いたいというのは、私
個人はかなり
意図を持っております。
そのときに、
全額国債ないしは
財投債でいくというのが、果たして
資金の
配分から見て、マクロ的に見て、いいんだろうかと。そもそも、こういう問題というのは
財投改革から出てきた問題でもありますので、私は、なるべくそんな余計な
リスクは負いたくはないんですが、やはり民間の
資金、資本に入れたい。それは、大事な
資金を預かって
運用するという点からは、決して見逃してはならない点だと思います。この点からも、なぜ一〇〇%
国債ないしはそれに準ずるものではないのかという点に関して、おのずと答えが出てくるんではないかと思っております。
以上が、
運用の
あり方に関する
基本的な
考え方でございます。
次に、今いろいろ御
議論されています
財政再
計算に伴います次回の
予定利率ですが、今度は、前回の四・〇%から三・二%に下がったわけです。その基礎的な
議論の際にはいろいろ参加させていただきましたが、私どもは、
年金部会に
提案させていただいた
ケースでは、この値がほぼ
真ん中になるように、前後もう少し
経済がよくなった場合の
シナリオ、それから、もっとそれよりか下になるような最悪の
シナリオという
三つの案を持ちまして、ほぼ
真ん中の
数字が採用されたというふうに理解しております。
この
三つというのはどういうことかといいますと、足元は
内閣府の「
改革と
展望」でフォローして、ただ、それは残念ながら二〇〇七年ぐらいまでですので、今、その後二十年、トータル二十年、三十年で予測するためには、かなり大胆な仮定のもとに
計算せざるを得ません。
その場合に、何がいい
ケースか悪い
ケースかというとき、やはり
技術進歩率、TFP、トータル・ファクター・プロダクティビティーといって、要は、人口の
成長からいくと低
成長を余儀なくされるわけですけれども、その上にどのぐらいオンするかというのは
技術進歩の率なんですね。これはなかなか推測するのは難しいんですが、難しいがそういう
三つの
ケースをとらせていただきまして、それに従って各
予定利率がはじかれてきているわけです。その中で、今回採用されました
数字というのはほぼ
真ん中に相当しているというので、非常に妥当な
水準ではないかというふうに思っております。
かつ、これは余談かもしれませんが、この
計算等をやっていたときは一番
日本の
経済が底、底であってほしいと思いますが、そういうときに行ったもので、決して楽観的な
状況を絵にかいてやっていたわけではない。そういうような
環境ではなかったもとで
計算されたというふうに理解しております。
それから
最後に、
最初の話で、
運用のところはこれまで
年金資金運用基金の方で行われておりました。実は、これもいろいろ問題が多々あることは私も
マスコミ等から存じ上げておりますが、
事運用に関しましては、これほど
透明性のもとで
運用されているところはないぐらい、ここまで出すかというぐらいのところの
透明性を持って
運用されているということは、御確認いただきたいと思います。
ただ、やはり、いろいろな
計算にもよりますけれども、株が下がっているときはそれなりの損失が出ているのは事実でございまして、これをどう
責任という問題に必ず
皆さん方はなるかと思います。
ただ、
基本的なところは、
株式を含めた
資産運用に関して結果で
責任をとらされたら、これはみんな首が毎日毎日飛んでいくというのが実際でございますので、この
工夫も、やはり結果ではなくて、そこで当然負うプロセスをちゃんと踏んで
運用したかどうかというところで
責任を問うというのが常識になってきております。とはいえ、もし仮に大きくずっと損を出しているというようなところは、私、
個人的にはやはり問題なしとはしないと思っております。
今度、
独立行政法人になりますと、まず
一つは、
運用に関するところが、今までは
審議会と基金とに幾分分かれている感じがありますが、それが一体化されます。行政法人の方に一体となりまして、今と同じように
専門家が一体となって
運用するということで、そこで専門性が効率的に発揮されるんじゃないだろうかというのは
一つ期待しております。
プラス一番の大きなところは、
独立行政法人の器がそうでありますように、監督官庁の方でそれを評価することになっています。評価しなくちゃいけないことになっています。ここはやはり、今まで考えてみると必ずしも十分な評価が行われてこなかった点は、若干私もそうかなと思います。
この評価というのは、今後、
独立行政法人へ移りまして、その評価をするときに入ります。これからの
運用次第ですけれども、評価をきちっとしてやれば、それなりの
責任というんでしょうか、いろいろの問題点があればその改善というものが出てきて、それがよりスピード化されるのではないかというふうに思っております。
以上のような視点からまとめますと、
予定利率に関しましては十分可能な
水準だと思いますし、それから、基金の
制度変更に関しても期待が持てるんじゃないかというふうに私は思っております。
以上でございます。(拍手)