○五島
委員 大臣が
国民年金の徴収問題について問題意識を共有していただいたのは、大変ありがたいと思います。
問題は、だから、ここで新たに地域の中で徴収する人を雇えばいいじゃないかということではなくて、もう本当に、
社会保険庁の職員を再度地方自治体に移していく、そして地方自治体が
年金を徴収するということを考えるべきではないかというふうに思います。この問題は、また改めて
議論することがあればさせていただきたいと思います。
問題は、実は、こうした状況の中で、簡単にフリーターやパートの
労働者を常用
雇用に広げてほしい、そういうふうに
お話しになるけれ
ども、今の
経済の状況と、そして
雇用の状態は随分変わってまいりました。一人の
労働者が一つの事業所において、一つでなくてもずっと
厚生年金の適用事業所ばかりで仕事をするということをモデルとして考えることはできない
時代になってきています。
そうなってきますと、いかに
厚生年金の加入
労働者を減らすかということが、企業の経営として、人件費対策としてやはり当然出てくるんだろう。そのことをどう見直していくのかということの
議論をやらなければなりません。これは率直に言って、この問題については、
政府案にも、そして、残念ながら
民主党案の中にも触れていないところです。
しかし、現実問題として、今、
厚生年金の加入者、労使折半という
制度がいいのか。それとも、これからパートの
労働者や派遣
労働者もふえてくるという中において、本人の
保険料は本人の所得において払い、事業主の
負担すべき
保険料については、労災保険のように例えば人件費の何%という形で徴収するという方法も含めて考えていかないと、
社会保険料を
負担することから逃れた事業主は人件費の六%、七%というものが得をする、そういうふうな
制度のままで今の
時代にもっていくのかどうか。私は、残念ながらこの問題について
年金制度の中で
議論していないという状況の中においては、改めて
議論すべき大きな課題ではないだろうかというふうに申し上げておきます。
何よりもこの
年金制度の大きな問題は、この
年金制度、現状においてどのようなシステムをとろうとも、
昭和三十六年から
国民年金ができ、皆
年金制度ができてまいりました。そして、
年金制度というものは、これまで経過した中において、いわゆる賦課方式になってこざるを得なかった。これは、言いかえれば、
制度として積立方式をとろうが賦課方式をとろうが、過去の
日本というのは、繰り返すインフレに対応して
年金制度を守ってきたという形の中では、賦課方式にならざるを得なかったんですね。それは御理解いただけると思います。
ところが、今、インフレの
時代ではなくデフレに入ってまいりました。もう一つは、少子高齢化の
時代に入ってまいりました。少子高齢化の
時代における
年金制度を全く更地に家を
建てるような
議論をするとするならば、賦課方式はなじみません。言いかえれば、この
人口構造の激変に対しては積立方式をとらざるを得ない。
しかし、過去の
制度に対して、それを保障しながら今積み立て方式に切りかえていこうということであれば、少なくとも、現在の
年金の
積立金に加えて、
厚生年金で約四百五十兆、
国民年金で約四十兆という巨額なお金が天から落ちてこない限り、この過去債務というのは償却できない。
とすれば、形態はどういう形をとろうとも、この
年金制度というのは運用としては賦課方式をとらざるを得ない。それが少子高齢化ということに最もふさわしくない
制度であることをわかりながら、この賦課方式という形で運用せざるを得ないというところに、今日の最大の問題があるのだろうというふうに思っています。
そこで、この過去債務の四百五十兆円、あるいは
国民年金を入れて約五百兆のお金をどう処理するか、どう減らしていくかという、それぞれの知恵を絞っておられるんだと思います。
そして、
政府案では、言葉はマクロ
経済モデルだとかなんとかおっしゃっているけれ
ども、
年金の
給付率、これもまた、モデル
年金なんて、もうそんな人おりもしない名前をわざわざ使っているんだけれ
ども、モデル
年金であろうと、あるいは単身の男性の
年金であろうと、共稼ぎ世帯であろうと、一律に現状の
年金の
給付水準を約一五%下げる、それを
計算のカウントで
計算をしている。現在の
年金の
給付額総額からいいますと、一五%下げるということは、そこにおいて約六兆円ぐらいの金が浮いてくるということなんでしょう。
そして、もう一方で、
年金の
保険料の引き上げをやっていく。これは賃金を、何%でしたか、何か二%前後賃金が上がっていくだろうという一つの仮想値の上に立って、年間一兆円ぐらいずつ十四年間で十四兆円ぐらい上げていこうという
数字で、そうなれば、現在の
水準でいって約二十兆円ふえるという単純な話なんですが、実際に見てみますと、二〇〇五年から二〇二五年の間に、
政府の
計算でいいますと一三・五八%から一八・三%に
保険料は上がってまいります。
一方、二〇〇五年から二〇二五年の間に、いわゆる、これは
政府統計を使っておりますから十五歳から六十五歳という
数字ですが、その
数字を見ても一七%の
人口減があります。したがいまして、この保険の
保険料の引き上げが、現在
水準に直して約三四・七%の
負担の増になったとしても、トータルなその
人口の減ということを換算してみますと、トータルで一四%の現在
水準における
収入増、すなわち、それだけで
計算すると約二兆三千億円。
しかし、その間における六十五歳以上の
人口は四三・五%ふえていきます。それを
計算して、さらにその六兆円の
給付の削減を入れたとしても、二〇二五年の
段階において保険財政全体を眺めた場合、現在と全く変わらないんです。現在よりやや悪化しているかもしれない。
それは、なぜそういうことになるかというと、やはり少子高齢化という問題に対して、これをどうするかということについて十分な
議論をなさっていないから。
確かに、
政府は、
人口減が一・一四%ぐらいになるだろうということで、
推計している合計特殊出生率を一・三九として仮置きの
数字で
計算しておられます。ところが、その一・三九の出生率を維持するためにどうするのかということについての具体的な政策は全くありません。このことは極めて重要でございます。
すなわち、賦課方式でやっていくのであれば、この
人口問題に対してはどう対応するんだ。マクロ
経済モデルでは、一五%の
給付を減らすのに、現役世代の
人口の減に対して〇・六、高齢者の平均余命の伸びに対して〇・三ポイントという
数字を当てていますが、私は、もう長寿化といいますか、平均余命の伸びというのは大体生物学的にいってそれほど大きくこれまでのように伸びていかないんだろうと思っておりますが、現状における少子化の問題というのは、これは非常に変わってくるんだと思っています。
大臣もこれが変わると大変だというふうに
発言されておりますが、ここで私が指摘しておきたいのは、
人口問題あるいは出生率の問題というもの、何かたまたま起こってくる
数字であって、努力
目標ではないかのような
議論がされていることです。
これは、実は少子化
社会対策
基本法の
議論の中でも
議論された内容でございますが、一つのモデルの問題でございまして、それはたまたま、そのとおりになるかどうかはわかりません、わかりませんが、モデルとして出されたものとして、二〇〇〇年に
人口研から一つの
データがございます。
このモデルに基づいて
計算しますと、保育の機能を
社会が五〇%上昇させると、出生率を一・六前後まで上げる効果がある。それに加えて、家賃や教育費の
水準を三〇%低下させると、出生率をさらに一・七まで上昇させる効果がある。さらに、それに加えて、出生率の
労働力抑制効果、これを弱体化させる、すなわち、女性が結婚してキャリア性が失われたり、仕事の継続ができないということを何とか
社会全体として改善するならば、出生率を一・八七と一・九八まで上昇させる効果がある、こういうふうに書いてある。
この
数字のとおりになるかどうかはわかりません。しかし、少なくても南欧を除く欧米諸国、それから、この間急激に進んできているアジアの少子化の問題、これを加え比較して考えた場合に、
一定のこうした政策
目標というものを立てて、どのような出生率を維持するかということは、これからの
厚生労働の行政として非常に大きな課題であると思っている。
そこのところに裏づけをされていないような中において、いずれの
制度をとろうとも、賦課方式という、インフレ、ハイパーインフレでもつくろうというのなら話は別です、そうじゃない限り、賦課方式、
人口が減れば間違いなくデフレです。
今の
計算で二〇五〇年の
人口で九五%の危険率の中において、
人口は一億二千万から八千万、その差四千万になる。一つの国、北朝鮮が二つ、それぐらいの
人口が減るか減らないかというこの課題がある。その大きな要素をどうするのかということを政策的に追求せずに、
年金制度を安定させられるはずがない、理屈の上で。
そうだとすれば、この
年金議論で、与野党で、何か、早いこと採決せい、百年もつんだなんてでたらめ言っていますし、そんなことをするよりも、やはり
雇用の問題、あるいはそういう出生率を改善するための政策、そういうものをきちっとした裏づけの中において
議論していかない限りは、この
年金問題、本当の
意味において決着はつかないのではないか、そのように思うわけですが、その点について
大臣の御
意見をお伺いしたいと思います。