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馬淵分科員 現在は非常に把握が難しい、このように御答弁だと思いますが、確かにいろいろな取り組みはなされているようですね。
平成十五年の八月二十一日に、例えば、これは医療事故という形で調査された結果でありますが、「医療事故の全国的発生頻度に関する研究班における調査研究の
概要について」、これを厚労省の方からいただきました。医療安全対策を進めるためには、基礎資料としての医療事故の発生頻度を把握することが必要だという御認識を持っていらっしゃる。そして、事実、諸外国では、協力病院などにおいて、診療録、カルテ等ですね、こういったものを抽出調査する方法によって事故頻度の推定を行っている。こうしたことを今後実態把握するためにも調査研究を行っていかねばならぬという御認識はお持ちのようであります。
しかしながら、それが現実的にはできない。私は、このところでもう一度、この医療の質というものの把握について、根本的な
考え方を
整理しなきゃならぬのじゃないかと思います。
お手元にお配りした資料でありますが、これはある医師が、こうした医療の質の向上という部分が実は置き去りにされているということを大変心配し、さまざまな
方々との研究の成果として御提示されているものであります。私は、直接
お話を聞く機会がございました。そして、こうしたまとめの中で非常にこれがわかりやすいということできょうお持ちしたわけでありますが、私自身が
企業経営また病院の経営にもかかわってきたことがございます。その中で、これは本当に実感するものであります。
「クオリティマネジメントとリスクマネジメント」と書いてありますが、この縦と横の座標軸、その中で「診療
サービス」と呼ばれるこの左側の象限、この「診療
サービス」は、大きくは横軸の上は「価値の向上」を示すもの、そして横軸から下に関しては「価値の破壊」。これをいかに、いわゆるロスをいかに少なくするか、ロスをこの座標軸でいえばどんどん下げていくか、そして「価値の向上」ですから、これはベネフィット、利益の部分です、これをどう高めていくかということが経営の要諦になります。
そして、この中に、「診療
サービス」と「診療以外の
サービス」とありますが、例えば、今厚労省並びにさまざまな
医療機関が取り組んでいらっしゃる姿というのは、この「診療以外の
サービス」、「顧客満足度の向上」であったり「コスト削減・生産性向上」や「アメニティーの向上」「ファシリティマネジメント」といった事々、こういったことに対しては積極的に取り組んでいらっしゃる事例も私も多々見受けます。
また、リスクのマネジメント、いわゆるロスを減らしていくという部分においては、「リーガルリスクの防止」「環境リスクの防止」「財務リスクの防止」こういったことを考えてリスクマネジメントという観点で取り組んでいく、これも医療コンサルティングなんかが一生懸命やっておられます。
そしてさらに、「診療
サービス」の方ですね、いわゆる医師の
皆さん方が手技なりあるいは問診なりをしながらやっていく、その中で、ロス、まさに「医療過誤・医療事故」「医師の知識のなさ・技術の未熟さによる問題」こういったこと等々については、これをいかに低減させていくかということは、医師あるいは看護師も含めたさまざまな
皆さんの意識を変えて、そして質を高めていこうという努力がされなければなりません。
しかし、実態としてこの診療の質そのものをどのように上げていくのか、これについては、今の
お話にありましたように、客観的な、定量的な
基準というものが現在ないという
状況である。これについて、私は大変危惧をします。この客観的、定量的な
基準の把握というものがなせない中で、単に医療の質という、いわゆる診療以外の部分も含めた全体で質というものが語られしめてはいないか。
これはどういうことを意味するかといいますと、例えば、私も最近、顧客満足度ということで高い評価を得ているという病院の
事務局長の方とお会いをしました。その方の
お話の中では、顧客満足度、つまり、患者さんやあるいは患者の家族、あるいはまさにそういった病院の御紹介をされた
方々、口コミで紹介をされた
方々を含めて、その地域でのどれぐらいの貢献をしているかという部分について、このことについての把握をしようとされています。しかし、この顧客満足度というのは、定量的な把握をしないと非常に危険であると私は思っています。
例えば、今日常的に使われているコンピューター、大変処理速度が速いものができている。しかし、この処理速度が速いものができて、我々が便利だと感じるのは、実は、その次に次世代の新たなCPUを積んだコンピューターが登場したときに、ああ、前のが不便だったんだとわかるわけなんです。つまり、顧客満足というのは、今与えられた
サービスのレベルまでしかいかない。それを定量的に把握するという行為をしなければ、これを高めていこうというインセンティブが働かない
可能性がある。私自身、この医療の質の把握というものが非常に難しいんだということについても十分理解をします。
しかしながら、諸外国では、既に取り組んでいらっしゃる、そして、それによって大きな成果を上げているという現実がございます。例えば、ニューヨーク州などにおきましては、冠動脈のバイパス手術の例、これを、それぞれ、先ほどおっしゃった、
お話にありました、その患者の状態であったり、さまざまな個別個別の事情があるものを調整しながら、客観的数値で把握していこうという努力をされてきた。そして、ニューヨーク州の中では、こうした情報公開、こうした数値を目標としてやっていこうということをすることによって、全州における病院のレベルがアップしていく。現実には、その州平均のリスク調整後の死亡率というのは実に四割にも低減されたというような
実績がございます。
このように、定量的把握というものに対して、厚労省は、難しいという
状況でとどまるのではなく、これは、ぜひ積極的に、まず定量把握ということをどのような取り組みとして始めるべきかということの議論をされなければならないときに来ていると思います。
さて、今申し上げた私の、この医療の質というもの、施設
基準ではない部分でどのように高めていくべきかということについての御所見を願います。
大臣、お願いします。