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村本参考人 御
紹介いただきました
村本でございます。
発言の機会を与えていただきまして大変光栄に存じております。実は、一年半ほど前にも一度お伺いして
意見を申させていただきましたので、余りかわりばえがしないかもしれませんが、御甘受いただきたいと思います。
私も、お
手元にございます簡単なメモに沿ってお話を申し上げますけれ
ども、今、三人の
参考人から各分野についての細かいお話がございましたので、私からは、概括的な様子を私の
立場から申し上げたいというのがきょうの話の趣旨でございます。
中小企業金融というのは、金融の大きな分野の一分野だと考えておりますけれ
ども、現在は、
中小企業金融というのは、資金の中でいうとかなり大きな比重を占めるように実はなってまいりました。全体の
融資が
金融機関全部で五百兆ちょっととすると、現在、その半分以上が
中小企業でございますので、かなり大きな
割合でございます。
その
融資金額もかなり実は最近下がってきているねというのが最初のメッセージでございまして、私の
資料の二枚目の図の一というところで
ごらんいただきますとわかりますように、
融資残高というのはここのところもう一直線に下がってきております。九七年十二月という五年ほど前の
数字と比較しますと、大ざっぱに申せば、七十兆ぐらいへこんできている。これがいわばデフレ経済のもとで、デフレが一番経済の今の問題であるとすれば、その中での大きな課題とすれば、それの大きな影響を受けている部分、特にその赤線で示しました地価との連動がかなり大きい。つまり、
融資というのは地価と連動しておるという意味では
不動産担保の影響をかなり大きく受けているということで、ここを何とかしなければなかなか
融資の問題は解決しないだろうねということが言えるだろうと思っております。
その下に黄色い枠で少し書いてございますけれ
ども、先ほど
水口参考人申されましたように、ピーク時といいましょうか、二〇〇〇年の十二月から比べましても、かなり
融資というのが落ちているねということでございまして、これがなかなか
地域経済に浸透しないという問題の裏返しなのではなかろうかなと思っております。
さはさりながら、貸し渋りと言われた現象も、一枚目のところに少しコメントを書いておきましたけれ
ども、金融庁がつくりました貸し渋り・貸し剥がしホットラインというのがございますが、最初の半年間で六百二十八件、アプライといいましょうか苦情が申し立てられたわけですが、その後半年間に関しては四百七十九件ということで、三カ月ずつに割ってみますと二百五十七、二百二十二ですから、かなり緩和してきている
状況がうかがえます。ほかのアンケート
調査でもそういう結果が出ておりますので、いわゆる貸し渋り問題については、やや峠を越した感じは持っております。
いずれにしましても、そうは申しましても、全体で申せば、
中小企業金融全体はまだまだうまく流れていない、したがって、目詰まりがあると言わざるを得ないわけでございます。
これに関しては、昨
年度でしょうか、かなり
政府レベルでも議論が行われまして、例えば金融庁では、リレーションシップバンキングの機能強化報告を一年前ですが出しまして、それで、
地域金融について、
中小企業金融については二年間集中
改善をしましょうという形で現在動いておるところでございます。例えば、アクションプログラムを作成するといったような形で動いておりますし、検査マニュアルについても、その改訂版を現在作成して、パブリックコメントがかかっておりますけれ
ども、そういうことが実は起きておる。ですから、動きはあるんですけれ
ども、これがどこまで周知するか、徹底するかというのがポイントになるんだろうなという感じは実はしております。
もう一つは、後でもお話ししますが、過度の
担保、
保証に依存し過ぎてはいませんかということで、ここもどうやったら解決できるだろうか、後で申しますが、さまざまな
対応を考えざるを得ない、
多様化ということを考えざるを得ないなという感じがしておるところでございます。
それからもう一つは、産構審がやりました新たな金融機能の創造に向けてという報告が去年六月、出ておりますが、
中小企業金融というのは、基本的には貸し手、借り手の間の情報にギャップがある、これを情報の非対称性と呼んでいるわけですけれ
ども、ここを何とか解決していく必要があるでしょうということで、借りる側の
中小企業の側では、情報をきちっと整備してこれをオープンにしなければいけない。これは会計
制度の問題もございますし、あるいはそれを
評価する
評価機構の問題も実はあるんだろうと思いますが、ここら辺が一つの大きな柱だねということで議論が進んでおりまして、かなり
改善の
状況というふうには
認識はしております。
それから、貸す方の側、
金融機関側でも、これは実は不良債権問題でなかなか手足が縛られているということなのですが、必ずしもリスクを十分に
評価する体制が整っていないのではないかというような形で、矢印のところに、さまざまな
対応策がそこでは議論されたわけでございますけれ
ども、区々には申しませんが、さまざまな議論がそこにはあるということでございます。
三のところですが、それでは、どういう課題を克服すれば当面よろしいかということになります。
一つは、繰り返しですけれ
ども、
中小企業の側では自己資本が非常に少ないので、これを何とかしなければいけないといったような問題が片方にございます。あるいは、貸す方で
担保、
保証もとり過ぎているではないかというような問題がございまして、特に個人
保証の問題でこれが大分議論になりましたけれ
ども、その辺の緩和が必要ではないか。そうしますと、何が必要かというと、これは要するに
担保を、先ほど言いました不動産だけでやりますと貸し出しがどんどん減るわけですから、ここのところを
多様化する必要が実は出てくるわけで、
担保の
多様化といった議論が当然これには伴わなければいけないということになります。
なお、これは四のところの結論にかかってまいりますけれ
ども、先ほど来御
紹介ありました
売り掛け債権担保制度、これは非常に重要な柱でございますし、それ以外に動産、不動産ではない動産を
担保にする手法も、これも必要ではないか。あるいは、設備であるとか在庫であるとか、その動産をいかにうまく活用するか。
売り掛け債権六十二兆円という御議論がありましたが、いわゆる設備とか在庫とかを入れますと百数十兆円の
規模になりますので、こういったものを活用することも今後必要ではないか。あるいは、知的財産をうまく活用することも必要ではないか。こういった
多様化を一つは
担保のような領域で進めていくことが実は必要なのではないかということが一つでございます。
それからもう一つは、プレーヤーとここに書きましたけれ
ども、お金を出す側というのは、従来、
金融機関だけ我々は念頭に置いておりますけれ
ども、実はそうではありませんで、日本で言うノンバンク、ファイナンスカンパニーと呼ばれるものも、これは重要なプレーヤーでございます。海外でもファイナンスカンパニーというのは非常に大きな
役割を持っておりますけれ
ども、この辺をうまく活用できないだろうかねというような議論がございます。あるいは、そういうプレーヤーがうまく参加できるような仕掛けを考えてやることも必要ではないか。
今御議論いただいているのではないかと思いますが、
中小公庫が新しくやりますところの証券化スキームなんというのもそういう中に実は組み込まれてまいりますが、そういった問題。あるいは、
信用保証制度の対象に加えるというようなことも実はあるのかもしれませんが、そういったプレーヤーも
多様化しませんと、目詰まりがなかなか解決できない。最近、日本銀行が、
中小企業の貸出債権を
担保にしようという資産担
保証券のスキームを始めておりますけれ
ども、こういったものもプレーヤーとしては重要な
役割になってくるわけでございます。
こういったところ、さまざまな面で
多様化が実は必要なのだなと私は思っております。一つは、今言った担い手の問題ですね。もう一つは、手法といいましょうか、証券化を含めた手法の問題。もう一つは、リスクにどう
対応するかという意味で
担保の問題といったような整理ができるかもしれませんが、幾つかの局面で
多様化をすることによって現在の目詰まり現象に対する穴をあけていくことが実は必要なのではなかろうかなと考えておるところでございます。
なぜそんなことを申しておるかといいますと、上から三枚目に図の二「貸出金利」というのを一つつけてございますが、これは要するに、日本の貸し出しというのはほとんど同じような金利で行われてしまっているではないか。それが、例えばその絵で紫色のところが、五・五ぐらいでほとんどゼロになってしまいますが、その次どこに行くかといいますと、下の絵でございまして、右側の方の、いきなり商工ローンのような世界に行ってしまう。ですから、ミドルリスク・ミドルリターンと呼ばれるような
金融手法をきちっと整備してやれば、もう少し資金が流れ出していくのではないでしょうか。こういうことがここで申し上げたいことでございます。
それからもう一つは、めくっていただきまして、
資料の五枚目に
中小企業向け貸し出しの根雪化ということをちょっと書いておきました。
これは、
中小企業に対する
融資は、減少したとはいえまだまだ行われていて、それがなかなか、
中小企業にとって見ると、
借り入れがずうっと行われたままになっていて、あたかも自己資本のように、当然のように借りられているものですから、自己資本のようになっている。この部分が、例えて、下の絵でいうと赤い線の部分でございます。つまり、
借り入れがずっと固定化してしまっている。
これはいろいろなところで有利なわけですけれ
ども、ただ、これをやりますと、やはり非常に自己資本のぜい弱性という形でいざとなると問題が発生いたしますから、ここを何とか変えていく手法も必要ではないか。最近、デット・エクイティー・スワップであるとかデット・デット・スワップと呼ばれるような手法ができておりますけれ
ども、そういったものを活用していくことも必要かな。そのためには、いわゆるファンド型のシステムをうまく組み込んでいかなければいけないわけですけれ
ども、こういったものも課題になろうかと思っております。
それからもう一つ、
最後に、一番
最後につけた紙がございますが、ここは
経済産業委員会でございますけれ
ども、私が金融的な側面で懸念しておりますのは、最近かなり
金融機関の淘汰が進んでまいっておりまして、
地域金融機関も同様でございます。参考のところに数も書いてございますけれ
ども、そうすると何が起きるかといいますと、
地域金融機関が統廃合された場合には、アクセスポイントとしてのいわゆる支店等がだんだん失われてまいります。あるいは、支店の機能も下がってまいります。参考二は、職員数を書いておきました。こういったことが起きますと、なかなか、
中小企業金融をしようとしても実際には手が回らないといった問題が出てまいりますので、こういった問題もかなり視野に入れていかなければいけないのかなということでございます。
最後に、そういう意味で、政策の側面でも、プレーヤーとして新たな機能を持つことも今後必要になってくるだろうということで、現在議論されておられますような
中小公庫の証券化問題も、そういう中で議論していっていただければありがたいのではないかというふうに整理をしているところでございます。
以上でございます。(
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