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江間参考人 最後に、私からは、当
法案により
企業の
環境報告書は何と財務諸表になってしまう、ならざるを得ないだろうという話を、
環境プランニング学会のスタンスから話させていただきます。
環境プランニング学会とは、
会長に東京大学の磯部教授、副
会長にきょうお見えになっておられます東京大学の
山本教授、同じく副
会長に、今は東京理科大学の方に移られましたけれ
ども、東京大学の板生教授、加えて、東京大学
環境プランニング講座において実務界から講師として参加しておりますISO研修機関の平林
社長、並びに税理士の私が副
会長として構成されております。また、
理事には、大手監査法人の役員の
方々、また早稲田大学の永田教授、寄本教授、並びに
環境プランニング講座を各大学院で担当する教授の
方々、こういう
方々で
理事を構成させていただいております学会でございます。
レジュメに従ってお話を進めさせていただきます。
本日の内容ですが、財務諸表、
報告書との関連において、今回の
法案がどういう内容にまた意味合いがあるか、この話をまずさせていただき、二においては「
環境情報の利用の
促進は
環境教育から実践へ」ということで、
法案の効果を出すためにはあくまで必要な二つの
観点について述べさせていただきます。
東大大学院でやっております実践型
環境教育プログラム、
環境プランナー養成講座ですね、ここにお見えの
山本先生もやっていただいておりますし、
筑紫先生には早稲田大学でもこの講座を御担当いただきました、これに触れた上で、
中小企業の発展はこの法律に基づく
環境対応からしか今後ないのではないかというお話の方に進めさせていただこうと思っております。つまり、
環境対応をすればするほど
中小企業はもうかる、こんな話にこの
法案はつながるというお話をさせていただければと思っております。
この
法案は、各事業年度、
特定事業者とはいえ毎決算ごとに
環境報告書を提出しなければならない、
義務づけるというところに大きく画期的な意味がございます。これは、財務諸表と何と同じ制度になった、ここがポイントですよね。つまり、
環境決算を
企業はしなさい、これがどういう影響を与えるか。
これには必然性があります。まず、
環境問題は今までずっと
規制でした。
規制から始まり、容器包装
リサイクル法、
家電リサイクル法等の拡大製造者責任、波及して、
企業にとって
取り組みの範囲が、今だけクリアすればいいというのから、だんだんそれに付随した大きな動きに変わっていった、拡充していったわけですね。この間、
企業経営から見ると、
環境問題はどういうとらえ方になっていったのだろうか。当然、変化に伴って
企業経営も大きく変化していったわけです。
まず、今回の
法案等にあります
環境報告書を構成する
環境会計から見てみましょう。
これは、
環境に対して
投資したお金がどういう
環境効果をあらわすか、これをあらわす制度なんですね。ところが、この制度自体は、米国で、
アメリカで八〇年代に、今の時代からいったら随分昔に
開発された手法なんです。これは、
環境対策があくまで通常の
投資には合わない、合わないけれ
どもやらざるを得ないというところからの発想で出てきた制度なんですね。その産物なんです。だから、
環境と
経済の両立というのは、この時代の、二十世紀のこの時代を
背景にした言葉なんです、あくまで。つまり、
環境配慮のというこの
配慮のというところ自体、
配慮の
企業行動ということ自体が、まさに
環境に嫌々でも
配慮しなければならなくなってきたことを意味する。つまり、ネガティブ
チェックのコストセンターの時代であったわけです。
しかしながら、
現状ですが、
環境報告書は、
情報公開が当然、
循環型システムの政策
推進の絶対不可欠なツールに変わりつつあります。これはもう、各社、
環境報告書を出していなくても、
環境に対するパンフレットは当然のように出さなければ話にならない。これが、
環境対策が
企業活動の主要な要素となりつつある
状況を示すんです。
実際に、例えば自動車業界を見てください。排気ガス対策、燃費対策、
リサイクル対策は今や自動車メーカーの主戦場ですよ。
環境対策について特別に報告しなくても、それがもう実体の
企業活動そのものになってきているわけです。家電業界もそのとおりですよね。省エネ性能、
リサイクル性能、及び
商品差別化の重要な課題として
環境問題を必ず取り上げて
商品戦略、マーケティングを行っております。つまり、
環境対策が
企業活動の主要な要素となった
状況にふさわしい
環境報告書と法律が必要となってきたわけです。もちろん今回は
特定事業者のみといいながら、これが
民間に与える影響ははかり知れなく大きいと意識しております。これによって、
環境に
対応する
企業経営は、
中小企業を含んで大きな変化をせざるを得ない。
まして、排出権取引という
市場メカニズムが入ってきました。これは何と、お金で
環境を買ったり売ったりすることですね。つまり、お金が動けば財務諸表に直接載ってきます。買えば資産、売れば損が出たり利益が出たり、まさに
環境報告書と財務諸表は、排出権取引の
京都議定書が発効されることを前提としますけれ
ども、それによって、ほぼ同体、両方見なければ何もわからない状態というのが発現してくるわけです。
米国においては、このようにもう既に、今反対していますけれ
ども、硫黄酸化物とか窒素酸化物とか、シカゴ
商品取引所で一トン百ドル、あるいは地域
市場においてやっているわけです。この方が
環境の対策についての保全効果があることが、
経済的手法の方が効果があることが立証されているわけです。英国の気候変動税もしかり。身近なところで、例えば今回の産業
廃棄物の改正法についても、自分のところで
投資をして
廃棄物を減らすか、あるいは業者に発注するか、ここにおいても同じようにお金が動いて
環境を左右する
状況が生起しているわけです。
そこで、今
法律案をきっかけに、
環境報告書と財務諸表というのは、同一事業年度においてその関連性を読む
重要性というのが非常に増してきます。つまり、ここで、
環境会計、
環境報告書の
作成において、設備
投資をするか排出権取引をするか、あるいはその組み合わせをポートフォリオで考えるか、あるいはリスク、
環境のこういうリスクに対して
保険やデリバティブ等の
金融手法を使っていくか、いろいろな、今まで
経営に使っていたあらゆる手法を
環境に絡めて使わざるを得ない事態が現出してくるわけです。
まして、排出権取引は、
市場メカニズムで動きますから、日々値段が変わるわけです。これは、決算書に載せるときには、
評価の問題として出てきます。あるいは、先物、スワップ、こんな形で財務諸表に契約として載ってくる以上、これが、
環境と財務諸表の区別というのが、厳然として分けることが本当に今後可能なんだろうかと、ある意味では
専門家として思うところもあるわけです。
ですから、今まで
規制時点において最もよい効率の対策をしていたものが、将来に向かっての対策に大きく変動するのがこの
環境報告書の
義務化を発端にあらわれると思われます。これによって、
財務報告書と列記される
環境報告書なんですが、今まで、内部管理及び
外部への
情報公開のみの意味合いが強かったんですけれ
ども、今後は、
企業経営上どうしても必要不可欠、
経営そのもののツールへと変貌せざるを得ないきっかけとなってまいりました。この
環境報告書が
企業経営のツールとして機能するためには、やはり教育、あるいはそれに伴う
中小企業の動きというのがどうしても必要となります。
これは
環境プランニング学会の学会誌からのコピーですが、東京大学の
環境プランニング講座、これを例として提示します。
括弧内の大書きのところですが、大学院でも、
社会の即戦力となる学生が
企業等に行って、
環境報告書を読み、書き、
作成する力を携えてもらう、あるいは
環境の
観点からいろいろな
企業活動をしていただくための教育を今始めまして、大好評で、昨年までが、大学院なのに六十名、ことしは百二十名で出発しております。
続いて、
環境プランニングの活性化も期待。このプログラムを終了すると、
環境プランナーという資格が取得できるため、ある意味では、
環境系の学生にとって大変励みになっている。また、東京大学は、大学初の
環境プランナー養成機関として、ますますこれからこのカリキュラムを充実していこうと思っております。
ほかに、慶応大学の丸の内講座、早稲田大学の
環境総合研究センター、法政大大学院、芝浦工業大学大学院、東京理科大大学院等が、この
環境プランニング講座を
環境教育として始めている実態があります。そのカリキュラムについては、次のページのとおりです。左下の
環境プランニング基礎論のように、
環境会計、
環境報告書、財務会計、排出権取引、今私がお話ししたようなことを非常に体系的にカリキュラムとして組み込んでいる。それに加えて、すべてのサステーナビリティー、
環境経済、ビジネス、
環境システム、こういったものを取り込んで教育を行っておる次第です。
次のページの
環境プランナーの資格制度についてはあくまで参考程度ですが、大学院だけではございません。中央青山監査法人PwC並びにISO研修機関テクノファ、こんなところが一般
社会人に対する
環境教育を進めております。多くの会計事務所も、この資格をこういう研修機関で取って、
環境プランナーとして活動を始めております。
最後に
中小企業の発展ですが、この
法案の効果は必ず
中小企業にあらわれると申しますのは、この辺からですね。
環境対策がこれから
中小企業へ展開され、
取り組みを迫られます。というのは、大
企業は、
環境経営強化に向け、グループ
企業、下請
企業に
環境対策を要請するでしょう、主戦場ですから。国は、施策
推進、
循環型
社会の構築、地球温暖化対策において、
中小企業に
取り組み強化を働きかけます。これはエコアクション21についても、我々も十分に御協力させていただきたいプログラムです。国、地方行政自身も、
グリーン購入法で
環境対応企業を優先していく、法律で決められているわけですね。
これにより、
日本の
循環型
社会の構築、
京都議定書の数値
目標達成は、九〇%を占める
中小企業を巻き込まなければ実現できないのは明白な事実じゃないですか。としたら、いかにして
中小企業を動かすかということを我々は考えていかなきゃならない。
環境が
企業の新たな
評価基準となるようにしなければならない。このためには、
中小企業の
環境化は、やはり
市場の自主管理という王道、まさに原則に任せるべきだと考えております。
中小企業の特性、これは、
取引先、売り上げのためなら、
環境対応だろうが
環境報告書の
作成だろうが何でもやる。資金調達、もともと財務諸表というのは、ファイナンスといいまして、お金をどういうふうにつくり出すかということで発展してきた制度ですが、同じように、
環境報告書が効果があるとなるならば、何でもやります、資金調達のためなら何でもやりますと。これは別に悪いことじゃなくて、これが
日本の
中小企業の活力、強さ、
日本経済を支える
中小企業の原点なんです。ここに
環境問題をうまく入れ込むことが、この
法案の活性化につながるわけです。
まして、
環境関連法規、これは行政も確かに関連法規がいっぱいございますけれ
ども、なかなか、
中小企業すべてを法律でコントロールすることの難しさは、皆さん御承知のとおりです。ですから、
経済の活性化を、
経済的インセンティブをどう入れるか、これに対して学会では、現在、研究をして、
推進している事項がございますので、御
紹介申し上げます。どうすればいいのか、地域との連携において、次の諸点を施策として振興しております。
自治体との連携におきまして、まずは、先ほどの
金融機関、
中小企業に大きな影響を与える
中小企業対応の
金融機関が、あるいは損保、生保もそうですが、
環境対応している
中小企業に対しての優遇と指導をマーケティングとして行う、こんな施策が始まり、かつ、
中小企業の集合体である組合、事業協同組合を使って、集合的に産廃を処理したり、集合的に
環境対応をしたり、あるいは集合的に研修をして知識
対応をして、あるいは
グリーン購入、グリーン調達に備える、こんな動きを活発化させていきたい。
かつ、
中小企業の相談相手として今ナンバーワンであります全国の会計事務所の
グリーン化。会計事務所が税法、会計だけではなくて
環境に対する知識をマスターしていただくことにより、
中小企業は、みずからの売り上げ、利益の貢献、こんなことに対することを決算の作業並びに税務申告の作業とともに御指導されることにより、より
企業の発展を生むという好
循環を生みたいわけです。
このように、当
法律案は、
企業を育成しながら、結果として、
環境対応の持続可能性を
促進するという
環境報告書の目的と相まって、つまり、
環境報告書作成、
公表が財務諸表に好影響を与え、みずからの業務を発展に導くと同時に、
環境貢献に役立つということになります。これによってこれ以上の幸福はないと、強く、深く、また共鳴する次第であります。
これにて私の発表を終わります。ありがとうございました。(
拍手)