○土井たか子君 私は、
社会民主党・市民連合を代表いたしまして、小泉
内閣総理大臣に
質問いたします。(
拍手)
質問に入ります前に、このたびの
北海道十勝沖地震で被災された道民の
皆さん、
自治体の
皆さんに心よりお見舞いを申し上げます。被災された方々の
支援や、破壊されたライフラインの一刻も早い復旧、今後の地震に備えた防災対策の確立を強く
政府に求めます。
さて初めに、疑問と苦言を呈しておきたいと思います。
小泉総理大臣は、
一体何のために今臨時
国会を召集し、
所信表明演説をされたのでしょうか。
演説は、
小泉内閣が始まって以来、最もおざなりで、熱も内容もないものでした。
今
国会の
最大の課題は、テロ対策特措法の延長問題でありましょう。しかし、
所信表明の中でテロ対策特措法に触れた部分はわずか三行、予定された審議日程を見ても、到底、この問題をまともに
議論しようとする姿勢はうかがえません。
最初に解散ありきというのが見え透いているのではありませんか。解散日程の方がこの
国会の審議日程よりも大切だとお考えなのでしょうか。
国会の審議が、解散の日取りのために
削減されたり、不十分な討議しか考えられないような取り扱いに合わせて、
所信表明もおざなりにされたのでしょうか。
その解散も、何ゆえの解散か、大義がはっきりいたしません。それならば、明らかに
国会軽視であり、みずからの権力維持と
与党の都合によって恣意的に解散を行おうとしているのではありませんか。それは
国民の負託を軽視することではありませんか。このような政治手法、政治姿勢こそが改めて
小泉内閣不信任に値すると言わなければなりません。(
拍手)
まず、今
国会の主題であるテロ対策特措法の延長問題について
伺います。
テロ対策特措法は、米軍のアフガニスタン
攻撃を後方
支援するために
自衛隊を
派遣する法律であって、海外派兵を禁ずる
日本国憲法に違反することは言うまでもありません。テロ対策特措法は、米英の艦船に対する燃料補給が目的とされています。しかし、海上自衛艦がインド洋に
派遣されて以来二年間、自衛艦の行動や経費について、
政府はその詳細を明らかにしておりません。この特措法の延長を問題にするのであれば、まずは、この二年間の
活動について検証し、かつ、総括することが不可欠ではありませんか。お答えください。
イラク戦争に参加した米空母キティーホークの艦長は、キティーホークの機動部隊が
イラク戦争中に海上自衛艦から約八十万ガロンの燃料補給を受けたことを明らかにしています。これでは、米軍の
イラク攻撃への間接
支援どころか、直接
支援そのものであって、法の範囲を著しく逸脱することは明白ではありませんか。そのほかにも、ペルシャ湾やインド洋北部でどのような対米軍
支援が行われているのか、その実態は軍事機密を口実に全く明らかにされておりません。これらを明確に説明することが、
国会による
自衛隊の文民統制にとって極めて重要であります。
テロ対策特措法の延長の目的が、
イラクの米軍
支援にもつながる危険性をはらんでいます。
アメリカのラムズフェルド国防
長官は、この五月に、アフガニスタンでの作戦に区切りがついたとの見方を示しています。インド洋に展開する自衛艦は直ちに引き揚げさせるべきであり、法を延長することなど、認められるはずはありません。しかも、このようなときに時間をかけた審議を省略して、この危険な法案延長を自動的に図ろうとする
政府・
与党の物の考え方は、論外であります。
総理の御認識を
伺います。
さらに、ここで、どう考えてみても許されない、
イラクへの
自衛隊の
派遣、派兵について
伺います。
小泉内閣はブッシュ
政権の強い要請を受けて年内にも
イラクに派兵する
方針を固めたと報じられています。この派兵は幾重にも誤ったものであって、
国民の
利益にも反し、将来に甚だしい禍根を残すものだと思います。
総理は、
さきの通常
国会で、
自衛隊の
活動する非戦闘
地域について、「どこが非戦闘
地域でどこが戦闘
地域かと今この私に聞かれたって、わかるわけないじゃないですか。」と開き直った
答弁をされました。今回、派兵の時期を決められたということですから、その非戦闘
地域が見つけられたので地上部隊を中心に派兵すると理解していいのでしょうか。ならば、非戦闘
地域はどこに決定されたのか、お聞かせいただきたいと思います。
また、事もあろうに派兵の時期を総
選挙後に持っていこうというこそくな考え方は、
国民に信を問う誠実な態度とは縁もゆかりもありません。
国民を愚弄するものです。
総理、はっきりお答えください。
そもそも、
イラクへの
自衛隊の海外派兵については、私は、以下五点にわたって申し上げたいと思うのです。
第一は、米英の
イラク侵攻は
国連憲章、国際法に違反した正当性のない戦争行為です。
米英が
最大の大義名分とした大量破壊兵器は結局見つからず、うその情報、誇張された脅威によって
国民を戦争に駆り立てたとして、今、ブッシュ
政権もブレア
政権も、国内で苦境に立たされています。
イラクの占領は、正当性のない戦争の継続としての占領ではありませんか。
日本からの派兵は、大義なき戦争、不正、不当な占領を認め、それに加担することになります。だからこそ、戦争に
反対したフランス、ドイツ、ロシア、中国のみならず、戦争を支持したパキスタンもインドもトルコなども、派兵を行っていないのです。
国連加盟の百九十一カ国のうち百五十八カ国の多数の国々は、派兵しておりません。
二つ目には、
自衛隊の
イラク派兵は明らかに憲法に違反する海外派兵に当たります。
自衛隊創設のとき、
参議院は、
自衛隊の海外出動を為さざることに関する決議、この決議を
国会決議として行って、海外出動はこれを行わないことを改めて確認しました。海外派兵とは、武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に
派遣することであって、それは自衛の必要最小限度を超えるものと
政府は判断してきたのです。
イラクへの派兵は、憲法も
国会決議も、そして、今までの
政府見解も踏みにじるものであることには間違いありません。
三つ目に、米英占領軍への加担は
派遣される
自衛隊のみならず
日本国民全体を危険にさらします。
テロ
集団による理不尽な
攻撃という一面はあるでしょうけれども、大きな流れとして見れば、
イラク国民あるいは周辺の中東諸国は戦争と占領に激しく反発しており、その結果が現在の
米英軍への連日の
攻撃となってあらわれています。もし占領に加担すれば、
攻撃の矛先は、必ず、
自衛隊のみならず
日本国民にも向けられるでしょう。
これまで、
イラクを初め中東諸国は、
日本に対して好意的でした。それは、中東諸国に対して、
日本は植民地支配や軍事介入などを行ってきていないからです。なぜ、これまでの友好的な関係を裏切り、また、
日本国民を危険にさらす決断をする必要があるのでしょうか。
第四に、海外派兵は専守防衛を信じて
自衛隊に応募した自衛官やその
家族たちに対する契約違反に当たります。
一体、自衛官のだれが、敵意に満ちた
イラクの地に
派遣されると予想していたでしょうか。
派遣されれば、現在の
状況は、
小泉総理も認めておられるとおり、当然、死を覚悟しなければなりません。また、相手を殺すことも十分あり得ましょう。
また、
イラクの国土は、米軍が使用した劣化ウラン弾によって汚染されています。この問題で、
社会民主党は、川口外務
大臣に対して、幾たびとなく、その使用の有無を尋ねてきました。その
答弁は、
アメリカに問い合わせるという一辺倒のものでした。しかし、先日放映されたテレビ番組で、米軍のブルックス准将は、その使用をはっきりと認めています。
また、
イラクは小
規模ゲリラ戦の戦場であることは、元防衛庁教育局長である小池加茂市長が
指摘しておられるところです。
被爆地でありゲリラ戦場である
イラク、そこに送り込まれる
自衛隊員は二重の危険を背負うことになるのではありませんか。私
たちは、そのような場所に
日本の若者を送り出すことに同意できません。
第五に、
イラク派遣は
国民の願いと意思に反します。
ある新聞の調査によれば、
イラクへの
自衛隊派遣を可能にする法整備に賛成はわずか二%、逆に、間違っていたと思う人は四三%にも上ります。
国民の多くは、
自衛隊の
イラク派兵を望んでいないのです。
私は、断固として、
自衛隊の
イラク派兵に
反対いたします。(
拍手)
そこで、具体的に
総理にお聞きします。
十月十七日に、
総理はブッシュ・
アメリカ大統領と首脳会談を予定されています。巷間伝えられているところによれば、テーマは、
イラク復興へ向けた
自衛隊派遣の催促と経費
負担についてだそうです。アーミテージ国務副
長官によると、
日本の貢献が大きいものになるだろうということについて何ら疑問を持っていないと、莫大な
日本の
負担を暗示しておられるのが報道されております。
総理は、この不況のさなかに幾ら経費
負担をするおつもりですか。それは何のための
費用ですか。戦費ですか、何ですか。具体的にお答えいただきたいと思います。また、今後もこの
負担が長く続くと思われますけれども、
一体、
財源はどこから捻出するおつもりなのか、お聞かせいただきたいと思います。
さて、一昨日、私は、沖縄に参りまして、宜野湾の伊波市長から、普天間基地を一望できる嘉数高台で説明を受けました。すさまじいヘリ騒音をもたらす基地と隣り合わせで暮らす市民の悲鳴が聞こえてくるようでした。
総理は、今回の
所信表明演説で、日米同盟重視を訴えられていますけれども、肝心の、沖縄にある米軍基地の整理縮小問題、懸案の日米地位協定の改定問題については、一言半句も触れられませんでした。
アメリカに何も注文をつけない、言われたとおりにするというのが
総理の日米同盟の緊密化ということでしょうか。この間、立て続けに米軍の不祥事が沖縄では起きております。沖縄では、
総理の
演説で全く基地問題に言及がなかったことに深い失望がわき上がっているのを私は目の当たりにいたしました。
今回の日米首脳会談で、過重な
負担を強いられている沖縄の米軍基地問題について、
総理は
アメリカに解決を迫るおつもりがあるのかどうか、お答えいただきたいと思います。
次に、
小泉総理は、
所信表明演説で、最近上向きに転じたかに見える
経済動向を、御自身の
構造改革の成果と誇って、
日本再生の芽が出てきたと自画自賛しておられます。
確かに、株はこの夏から上昇して一万円台を回復し、企業の設備投資も増加しているようです。しかし、
国民の
生活実感からすれば、
景気がよくなった、
生活が楽になったなどということは到底言えません。町を走るタクシーに乗りまして運転手さんの話を聞いてみれば、
たちどころにわかります。お客さんが全然乗ってくれないというのです。ラジオが
景気上向きと言うのを、運転手さんはみんな、首をかしげて聞いています。いわば実感なき
景気回復です。
好調なのは輸出であり、株を買っているのは主に外国人投資家です。しかし、輸出は円高によって脅かされています。世界じゅうに投資先が見つからず、安い
日本株に飛びついた外国人投資家も、そう長く買い続けるとは思えません。現在の好調は、いつまで続くかわからない、非常に不安定なものであると私は思います。
本当の
景気回復とは、GDPの六割を占める個人消費が動き始めるところから始まると思います。現在、
最大の問題は、失業率が一向に下がらず、高どまりしていることです。また、
地域経済が疲弊のどん底にあることです。安定した職につくことができ、町が活発に動いてこそ、
国民は財布のひもを安心して緩めることができるのではありませんか。
二年半に及ぶ小泉政治は、
国民生活を悪化させ、安心を奪い、将来への希望を失わせました。
国民の二割が貯蓄を持っていないという最近の衝撃的な調査結果がその象徴です。不平等が拡大しています。正規
雇用が百七十万人も減り、不安定で低賃金の
派遣、パートなど不正規
雇用に移動しました。特に、若い人に
仕事がない
状況は深刻です。これでは、年金が空洞化して破綻寸前に追いやられるのも当然です。
そして、
景気が悪く、格差が拡大して、現在にも将来にも希望が持てない中で、人々はせつな的になって、自殺や犯罪がふえていくのです。これは統計からも明らかです。
日本社会の安全が脅かされ、安心が失われたのは、小泉
構造改革の帰結だと思います。
必要なのは、警察官の増員や入管体制の強化だけではありません。競争だけでなく、信頼と連帯の精神があって初めて安定した
社会が成り立つのではありませんか。信頼できる年金制度、保険制度が求められているのです。
小泉改革は、この信頼の基盤を破壊しました。
総理の御認識を
伺いたいと思います。
また、
小泉総理は、年金
改革について、具体的な構想を何
一つおっしゃいませんでした。支給年齢は引き上げ、給付水準は
引き下げ、そして保険料は引き上げるでは、何の
改革でもありません。
社民党は、まず、約束どおり、基礎年金の国庫
負担二分の一への引き上げを即刻
実現するよう求めます。
総理の御
見解を承りたいと思います。(
拍手)
私は、戦争に対する猛反省から生まれた現在の憲法こそ、
国民が安心して、平和に、豊かに、そして文化的に生きる権利を保障する礎である、この信念から、憲法を政治に生かすことが私が政治家になった出発点です。その私にして、まさか戦前と見まがうような時代に生きるとは、よもや思ってもいませんでした。昨今、新聞を見ますと、投書欄を見たときに、戦前戦中を
経験している世代の方々が、現在の政治のあり方、
社会の風潮に強く警鐘を鳴らしておられます。
平和に生きたいと願う私
たちのまさに対極にあるのが
小泉内閣ではないのですか。
聞こえてくるのは、ワンフレーズと呼ばれる軽い言葉と、将来への
責任を放棄したその場しのぎの
答弁と、慎重さを欠いた武力への信奉だけであります。
総理は
改革推進
内閣と言われていますが、実は改憲推進
内閣というのが当たっているのではないでしょうか。
憲法とは、その規定に基づいて議員や
政府が立法や行政を行うという、いわば公権力の
国民に対する契約ともいうべき根本法です。公権力は、憲法によって縛られていることを了承して、その限りにおいて
国民から権力の行使を認められているわけです。だからこそ、憲法九十九条で、
総理も私
たち一人一人の国
会議員も、憲法擁護の義務を課せられているのです。私は、今改めて
小泉総理の憲法観を問いただしたいと思います。
繰り返し申し上げます。憲法の軽視は、立憲主義の否定であり、法治主義の破壊であり、民主主義の破綻であります。
小泉内閣の姿勢は、将来に恐るべき禍根を残すでありましょう。(
拍手)
最後に、私は、一九三六年の二・二六事件の直後に
衆議院のこの場所で行われた、斎藤隆夫議員の有名な粛軍に関する
質問演説を各議員、
国民の
皆さんに想起していただきたいと思います。
斎藤隆夫議員は、私の尊敬する議員です。今にして議会史に残る名
演説と言われる、心血を注いだ反軍
演説を命がけでこの演壇で行われました。斎藤議員は、戦後、進歩党を結成し、第一次吉田
内閣の
国務大臣となり、また、
民主党の最高委員でもあったのですから、ただいまの
自民党の
皆さんの大先輩に当たることを申し添えておきます。
一九三六年当時、
日本は、大変な不況のもとで軍部が権力を強めていった時代です。五・一五事件や二・二六事件などを通じて軍閥がばっこするようになった
日本の
状況に対して、
政府と議員の怠慢を強く戒めて、その時々に対応を怠ったならば取り返しのつかないことになるとの警鐘を鳴らした斎藤隆夫議員の
演説です。
その
演説の一節に、このようなことわざが引用されています。「寸にして断たざれば尺の憾あり、尺にして断たざれば丈の憾あり、たとえ一木といえども、これを双葉のときに伐取ることは極めて容易でありますが、その根が地中に深く蟠居するに至っては、これを倒すことはなかなか容易なことではない、」斎藤議員が、古くからのことわざである頼山陽を引用して、このように警告されています。
若い
皆さんには、「寸にして断たざれば尺の憾あり」という言葉がわかりにくいかもしれませんが、寸というのは尺貫法で長さの単位でありまして、一寸先はやみというあの寸です。三センチちょっと、三・〇三センチメートル。尺はその十倍、丈はさらにその十倍を指して言われておりますから、それからいうと、物事は早くそのことに対してしっかり対応しないと、後で手おくれになってからではできることではないということを言われているわけです。
この警鐘を鳴らされた名
演説にもかかわらず、そのうち
日本は、軍を統制することができずに日中全面戦争へと突き進んで、破滅へと転がり落ちていくわけです。
今、ここで、
イラクへの派兵をやめなければ、必ず、次の派兵が準備されます。しかも、特措法や時限法ではなく、これは
イラク特措法、テロ特措法が特措法や時限法であるわけですから、このような特措法や時限法ではなく、
自衛隊をいつでも海外へ
派遣できるようにと、
自衛隊海外
派遣のための恒久法を目指す動きが出てきているではありませんか。
自衛隊が殺し殺されるという
状況が当たり前になれば、
日本社会の変質もまた起こってまいります。今私
たちが当然に享受している、平和的に生きる権利が奪われてしまうでしょう。そして、憲法第九条が消えてなくなるようなことにでもなれば、それこそ取り返しがつかないことになります。いつか必ず、私
たちの息子
たち、あなた
たちの娘
たちが徴兵され、戦地に追いやられる日が間違いなくやってきます。
そのような悲劇を二度と繰り返さないために、私
たちは戦後、平和憲法を掲げ、守り通してきたのです。
小泉政権が行おうとしているのは、反憲法そのものであって、この延長上に待っているのは奈落の底ではありませんか。
悲劇の芽は、双葉のときに刈り取らなければなりません。
各議員、
国民の
皆さんに心から訴えます。
私
たち社会民主党は、新たな
社会への変革を提言いたします。そして、目指すべき新たな基礎に、平和主義、
国民主権、基本的人権の尊重を理念とする
日本国憲法を置きます。
国際間においては、わけてもこの北東アジアに、米国も中国もロシアも朝鮮半島も、同盟国のすべてが席を同じくする多国間の協調システムを確立して、北東アジア総合安全保障機構をつくっていくことを、既に社民党は二十一世紀の平和構想として提唱しています。
社民党は、核も不信も戦争もない北東アジアを
実現するため、当面する
北朝鮮の核
開発問題、拉致問題の早期解決に力を尽くしていくことを申し上げて、私の
質問を終わります。
ありがとうございました。(
拍手)
〔
内閣総理大臣小泉純一郎君
登壇〕